特許拒絶査定不服審判
2023-019686
金属誘電体光学フィルター、センサーデバイス、および製造方法
- 審判番号
- 2023-019686
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-033480
- 請求日
- 2023年11月21日
- 審決日
- 2025年08月22日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】杉村 光嗣
- 【請求人代理人】福井 敏夫
- 審判長/審判官
- 審判長 小宮 慎司
- 審判官 松永 稔
- 審判官 小川 将之
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 33480「金属誘電体光学フィルター、センサーデバイス、および製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月 1日出願公開、特開2021-100138〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月18日を国際出願日とする特願2016-570349号の一部を、平成31年4月2日に新たな特許出願(特願2019-070828号)とし、その一部をさらに、令和3年3月3日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 3月31日 :手続補正書の提出
令和4年 5月20日付け:拒絶理由通知書
令和4年 8月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年12月23日付け:拒絶理由通知書
令和5年 3月24日 :意見書の提出
令和5年 7月14日付け:拒絶査定(原査定)
令和5年11月21日 :審判請求書の提出
令和6年 8月14日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和6年12月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年 2月 5日付け:拒絶理由通知書
令和7年 7月10日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、令和7年7月10日提出の手続補正書の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1の記載は次のとおりである。(以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】
基板上にフォトレジスト層を塗布するステップと、
前記基板の領域を囲む前記フォトレジスト層において、前記領域を覆わないように前記フォトレジスト層をパターン化することによってオーバーハングを形成するステップと、
前記オーバーハングを覆うコーティングを破断させることなくリフトオフを提供するように、前記フォトレジスト層を外すステップと、
を含み、前記オーバーハングを形成するステップは、前記フォトレジスト層の上部が前記フォトレジスト層の底部よりも遅く現像されるように、前記上部を化学的に改質するステップを含み、
前記領域はフィルター領域であり、
前記コーティングは多層積層コーティングである、方法。」
第3 当審における拒絶の理由
令和7年2月5日付けで、当審において通知した拒絶の理由は、「この出願の請求項1~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
第4 当審の判断
1 引用文献、引用発明等
(1) 引用文献6、引用発明
ア 引用文献6の記載
当審における拒絶の理由で「引用文献6」として引用した特開2012-169489号公報には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すために当審において付加した。)
「【0102】
図12は、本発明にかかる実施形態1において、赤外カットフィルタ300を形成する製造方法を示す図である。
【0103】
ここで、図12は、赤外カットフィルタ300する各工程を順次示している。
【0104】
本実施形態においては、図12に示すように、(a1)~(a3)の各工程を経て、ガラスウエハ301Wに赤外カットフィルタ層311を形成する。つまり、リフトオフ法によって、赤外カットフィルタ層311を形成する。
【0105】
具体的には、まず、図12(a1)に示すように、フォトレジストパターンPRを設ける。
【0106】
ここでは、ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域の上方に位置するように、フォトレジストパターンPRを形成する。
【0107】
たとえば、ガラスウエハ301Wの上面に感光性樹脂膜(図示無し)を成膜後、フォトリソグラフィ技術によって、その感光性樹脂膜(図示無し)をパターン加工することで、フォトレジストパターンPRを形成する。
【0108】
本実施形態では、ガラスウエハ301Wに近い側が狭い幅であって、ガラスウエハ301Wから離れるに伴って幅が広がった断面形状になるように、フォトレジストパターンPRを形成する。つまり、断面が逆テーパー形状になるように、フォトレジストパターンPRを形成する。
【0109】
たとえば、下記の条件になるように、フォトレジストパターンPRを形成する。
[フォトレジストパターンPRの条件]
・厚み:6.5~11μm(赤外カットフィルタ層311として、30~60層を積層して形成する誘電体多層膜よりも厚くする必要がある。誘電体多層膜の各層は、1/4λの厚みが必要なので、平均すると、厚みが150nmである(600nm/4)。よって、誘電体多層膜は、厚みが、4.5~9μmであり、フォトレジストパターンPRについては、これよりも、2μ程度厚くすることが好適である。)
・傾斜角度:87~89°
・材料:リフトオフ用レジスト
・各フォトレジストパターンPRの間の距離:50~800μm(ダイシング後の残り幅が接着強度で必要なため。ダイシング前は、ダイシングストリート幅30~100μm+(min50~300×2)となる)
【0110】
つぎに、図12(a2)に示すように、赤外カットフィルタ層311を成膜する。
【0111】
ここでは、フォトレジストパターンPRが形成されたガラスウエハ301Wの上面を被覆するように、赤外カットフィルタ層311を成膜する。これにより、ガラスウエハ301Wの上面と共に、フォトレジストパターンPRの上面に、赤外カットフィルタ層311が成膜される。
【0112】
具体的には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することで、赤外カットフィルタ層311を成膜する。
【0113】
たとえば、TiO2、Ta2O5、Nb2O5等などの材料を用いて、高屈折率層を形成する。そして、SiO2、MgF2などの材料を用いて、低屈折率層を形成する。そして、高屈折率層と低屈折率層とについて、たとえば、30~60の層を積層することで、赤外カットフィルタ層311を形成する。たとえば、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着、イオンプレーティング法、スパッタ法などの物理的成膜法で高屈折率層と低屈折率層を成膜する。
【0114】
つぎに、図12(a3)に示すように、フォトレジストパターンPRを除去する。
【0115】
ここでは、上記のように、赤外カットフィルタ層311が上面に成膜されたフォトレジストパターンPRを除去する。これにより、ガラスウエハ301Wの上面に、赤外カットフィルタ層311が所望のパターンで形成される。すなわち、図3に示したように、ガラス基板301がセンサ素子100に貼り付けられたときに、ガラス基板301が対面する面のうち、画素領域PAに対応する部分と周辺領域SAの一部とを被覆するように、赤外カットフィルタ層311が形成される。
【0116】
図13は、本発明にかかる実施形態1において、赤外カットフィルタ層311が形成されたガラスウエハの上面を示す図である。つまり、図13は、ダイシング前における赤外カットフィルタ300の上面を示している。図13では、赤外カットフィルタ層311が形成された部分を黒色で示しており、赤外カットフィルタ層311を形成しない部分を白色で示している。
【0117】
図13に示すように、ガラスウエハ301Wの上面において、複数の固体撮像装置を設ける領域CAのそれぞれに、赤外カットフィルタ層311が設けられる。複数の赤外カットフィルタ層311のそれぞれは、間にギャップを介在するように形成される。
・・・(中略)・・・
【0157】
<3.実施形態3>
(1)製造方法など
図16は、本発明にかかる実施形態3において、赤外カットフィルタ300を形成する製造方法を示す図である。図16は、図12と同様に、断面を示している。
【0158】
図16に示すように、本実施形態では、赤外カットフィルタ300を形成する製造方法が、実施形態1と異なる。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、実施形態1と同様である。このため、重複する部分については、適宜、記載を省略する。
【0159】
本実施形態においては、図16に示すように、(a1)~(a3)の各工程を経て、ガラスウエハ301Wに赤外カットフィルタ層311を形成する。本実施形態においても、リフトオフ法によって、赤外カットフィルタ層311を形成する。
【0160】
赤外カットフィルタ300の形成においては、まず、図16(a1)に示すように、フォトレジストパターンPRを設ける。
【0161】
ここでは、ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域の上方に位置するように、フォトレジストパターンPRを形成する。
【0162】
本実施形態においては、第1フォトレジストパターンPR1と、この第1フォトレジストパターンPR1よりも幅が広い第2フォトレジストパターンPR2とを順次積層させることによって、フォトレジストパターンPRを設ける。
【0163】
たとえば、第1フォトレジストパターンPR1が第2フォトレジストパターンPR2よりも、0.5~5μm程度、狭い幅になるように形成することが好適である。また、第1フォトレジストパターンPR1については、赤外カットフィルタ層311として成膜する、30~60層の誘電体多層膜よりも、厚い方が好適である。誘電体多層膜の各層は、1/4λの厚みが必要なので、平均すると、厚みが150nmである(600nm/4)。よって、誘電体多層膜は、厚みが、4.5~9μmである。このため、第1フォトレジストパターンPR1と第2フォトレジストパターンPR2とを合わせた厚みが、この厚みよりも、2μm程度、厚くすることが好適である。
【0164】
つぎに、図16(a2)に示すように、赤外カットフィルタ層311を成膜する。
【0165】
ここでは、実施形態1の場合と同様に、フォトレジストパターンPRが形成されたガラスウエハ301Wの上面を被覆するように、赤外カットフィルタ層311を成膜する。これにより、ガラスウエハ301Wの上面と共に、フォトレジストパターンPRの上面に、赤外カットフィルタ層311が成膜される。
【0166】
つぎに、図16(a3)に示すように、フォトレジストパターンPRを除去する。
【0167】
ここでは、上記のように、赤外カットフィルタ層311が上面に成膜されたフォトレジストパターンPRを除去する。これにより、ガラスウエハ301Wの上面に、赤外カットフィルタ層311が所望のパターンで形成される。」
「【図12】
[図:0001431533000001.jpg]
【図13】
[図:0001431533000002.jpg]
」
「【図16】
[図:0001431533000003.jpg]
」
イ 引用発明6A
(ア)a 実施形態1
上記アの段落0102、0104、0106、0108の記載によると、引用文献6には、赤外カットフィルタを形成する製造方法の実施形態1として、「ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域の上方に位置するように、断面が逆テーパー形状になるように、フォトレジストパターンPRを形成する」との工程を経て、リフトオフ法によって、赤外カットフィルタ層311を形成する方法、が記載されているといえる。
b 実施形態3
同様に、上記アの段落0157、0159、0161、0162の記載によると、引用文献6には、赤外カットフィルタを形成する製造方法の実施形態3として、「ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域の上方に位置するように、第1フォトレジストパターンPR1と、この第1フォトレジストパターンPR1よりも幅が広い第2フォトレジストパターンPR2とを順次積層させることによって、フォトレジストパターンPRを形成する」との工程を経て、リフトオフ法によって、赤外カットフィルタ層311を形成する方法が記載されているといえる。
c 小括
上記a、bによると、引用文献6には、「ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域の上方に位置するように、断面が逆テーパー形状になるように、又は、第1フォトレジストパターンPR1と、この第1フォトレジストパターンPR1よりも幅が広い第2フォトレジストパターンPR2とを順次積層させることによって、フォトレジストパターンPRを形成する」工程を含む「リフトオフ法によって、赤外カットフィルタ層311を形成する方法」が記載されているといえる。
(イ) 上記アの段落0111、0112、0165の記載によると、引用文献6の「リフトオフ法によって、赤外カットフィルタ層311を形成する方法」は、「ガラスウエハ301Wの上面と共に、フォトレジストパターンPRの上面に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することで、赤外カットフィルタ層311を成膜する」工程を経るといえる。
(ウ) 上記アの段落0115、0167の記載によると、引用文献6の「リフトオフ法によって、赤外カットフィルタ層311を形成する方法」は、「赤外カットフィルタ層311が上面に成膜されたフォトレジストパターンPRを除去する」工程を経るといえる。
(エ) 上記(ア)~(ウ)によると、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明6A」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号を示す。)
「ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域の上方に位置するように、断面が逆テーパー形状になるように、又は、第1フォトレジストパターンPR1と、この第1フォトレジストパターンPR1よりも幅が広い第2フォトレジストパターンPR2とを順次積層させることによって、フォトレジストパターンPRを形成し(上記(ア)c)、
ガラスウエハ301Wの上面と共に、フォトレジストパターンPRの上面に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することで、赤外カットフィルタ層311を成膜し(上記(イ))、
赤外カットフィルタ層311が上面に成膜されたフォトレジストパターンPRを除去する(上記(ウ))ことで、
リフトオフ法によって、赤外カットフィルタ層311を形成する(上記(ア)c)
方法。」
(2) 引用文献5、及び公知技術
ア 引用文献5の記載
当審における拒絶の理由で「引用文献5」として引用した特開2007-305276号公報には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すために当審において付加した。)
「【背景技術】
【0002】
従来から、金属配線等の微細パターンを形成する方法としてリフトオフ法が広く使われている。リフトオフ法においては、非特許文献1に示すように有機溶媒浸漬法が広く利用されている。
【0003】
図5は、従来の有機溶媒浸漬法による微細パターン形成方法を示す断面図である。
【0004】
まず、図5(a)に示すように、基板101上にフォトレジスト層102をスピンコート法等により成膜し、光ビーム4をフォトレジスト層102に照射する。
【0005】
この後、図5(b)に示すように、フォトレジスト層102に対して、クロロベンゼン等の有機溶媒を接触させ、表面のみを難溶性に改質し、難溶性の変性層103及び非変性層104を形成する。
【0006】
この後、図5(c)に示すように、有機溶剤等の現像液を用いて現像を行うことで、変性層103と非変性層104との溶解性の違いから、オーバーハング構造のホールパターン105を形成する。
【0007】
このようなパターンに対して、金属等のパターン形成層106を堆積させると、図5(d)に示すように、フォトレジストの変性層103上に堆積したパターン形成層106a及び基板101上に堆積したパターン形成層106bが得られる。
【0008】
また、ホールパターン105はオーバーハング構造を有しているためにパターン形成層106は、フォトレジストの変性層103上にパターン形成層106aと、基板101上にパターン形成層106bとに分離して形成される。
【0009】
最終的に、図5(e)に示すように、フォトレジストの変性層103及び非変性層104を一般にストリッパーと呼ばれる有機溶剤等により溶解させることで、変性層103上に堆積したパターン形成層106aも除去され(リフトオフ)、基板101上に堆積したパターン形成層106bのみが基板101上に残留しパターンが形成される。
【0010】
上述したように、パターン形成層106bは、パターン形成層106aとは分離して形成されているため、リフトオフを行った後にパターンのエッジ部分にバリ等が形成されにくくなる。
【0011】
このように、従来、リフトオフ法に適したオーバーハング構造を得るために、有機溶媒浸漬法を用いたパターン形成が行われている。」
「【図5】
[図:0001431533000004.jpg]
」
イ 公知技術
上記アによると、引用文献5には、従来技術として、リフトオフ法において広く利用されている有機溶媒浸漬法として、次の技術(以下「公知技術」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。)
「基板101上にフォトレジスト層102をスピンコート法等により成膜し、光ビーム4をフォトレジスト層102に照射する(段落0004)ステップと、
フォトレジスト層102に対して、クロロベンゼン等の有機溶媒を接触させ、表面のみを難溶性に改質し、難溶性の変性層103及び非変性層104を形成する(段落0005)ステップと、
有機溶剤等の現像液を用いて現像を行うことで、変性層103と非変性層104との溶解性の違いから、オーバーハング構造のホールパターン105を形成する(段落0006)ステップと、により、
フォトレジストの変性層103及び非変性層104を一般にストリッパーと呼ばれる有機溶剤等により溶解させることで、変性層103上に堆積したパターン形成層106aも除去(リフトオフ)(段落0009)するための、オーバーハング構造のホールパターン105を形成すること。」
2 対比・判断
(1) 本願発明と引用発明6Aを対比する。
ア 引用発明6Aの「ガラスウエハ301Wの上面」における「赤外カットフィルタ層311を形成する領域」は、本願発明の「フィルター領域」である「前記基板の領域」に相当し、引用発明6Aの「ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域」は、「前記基板の領域を囲む」といえる。
そして、引用発明6AのフォトレジストパターンPRは、「断面が逆テーパー形状になるように、又は、第1フォトレジストパターンPR1と、この第1フォトレジストパターンPR1よりも幅が広い第2フォトレジストパターンPR2とを順次積層させることによって」形成されるから、オーバーハングが形成されるといえる。
そうすると、引用発明6Aの「ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域の上方に位置するように、断面が逆テーパー形状になるように、又は、第1フォトレジストパターンPR1と、この第1フォトレジストパターンPR1よりも幅が広い第2フォトレジストパターンPR2とを順次積層させることによって、フォトレジストパターンPRを形成」する工程は、本願発明の「前記基板の領域を囲む前記フォトレジスト層において、前記領域を覆わないように前記フォトレジスト層をパターン化することによってオーバーハングを形成するステップ」に相当する。
イ 引用発明6Aは、「リフトオフ法によって、赤外カットフィルタ層311を形成する」方法である。
ここで、本願明細書の段落0023には、「図9Aおよび9Bを参照して、コーティング903が基板910およびパターン化フォトレジスト層940上で連続していると、その後に行われるフォトレジスト層940およびその上のコーティング903部分のリフトオフにおいて、コーティング903が、パターン化フォトレジスト層940の底縁で破断し、コーティング903から成る光学フィルターのエッジ、特に、光学フィルターの金属層のエッジが環境に露出する。露出エッジは、高湿度・高温露出等の環境攻撃の影響を受けやすく、図9Cの銀含有光学フィルター900に示すように、腐食につながる。」と記載されている。
そして、引用文献6の図12、図16には、赤外線カットフィルタ層311が、ガラスウェハ301W及びフォトレジストパターンPR上で連続していないことが示されているから、引用発明6Aにおいても、フォトレジストパターンPRを除去する際に、赤外線カットフィルタ層311は破断することがない。
そうすると、引用発明6Aの「赤外カットフィルタ層311が上面に成膜されたフォトレジストパターンPRを除去する」工程は、本願発明の「前記オーバーハングを覆うコーティングを破断させることなくリフトオフを提供するように、前記フォトレジスト層を外すステップ」に相当する。
ウ 引用発明6Aにおいて、赤外カットフィルタ層311は、「ガラスウエハ301Wの上面と共に、フォトレジストパターンPRの上面に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することで」成膜されるから、引用発明6Aは、「前記コーティングは多層積層コーティングである」といえる点で、本願発明と一致する。
エ 以上を踏まえると、本願発明、引用発明6Aとは次の点で一致し、相違する。
(ア) 一致点
「基板の領域を囲むフォトレジスト層において、前記領域を覆わないように前記フォトレジスト層をパターン化することによってオーバーハングを形成するステップと、
前記オーバーハングを覆うコーティングを破断させることなくリフトオフを提供するように、前記フォトレジスト層を外すステップと、
を含み、
前記領域はフィルター領域であり、
前記コーティングは多層積層コーティングである、方法。」
(イ) 相違点
本願発明が「基板上にフォトレジスト層を塗布するステップ」を含み、「前記オーバーハングを形成するステップは、前記フォトレジスト層の上部が前記フォトレジスト層の底部よりも遅く現像されるように、前記上部を化学的に改質するステップ」を含む点を特定しているのに対し、引用発明6Aがこれらの点を特定していない点。
(2) 相違点の判断
引用発明6Aの、リフトオフ法において、その上面に成膜された赤外カットフィルタ層311とともに除去される、「ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域の上方に位置するように、断面が逆テーパー形状になるように、又は、第1フォトレジストパターンPR1と、この第1フォトレジストパターンPR1よりも幅が広い第2フォトレジストパターンPR2とを順次積層させることによって」形成される「フォトレジストパターンPR」は、オーバーハング構造のホールパターンが形成され、その上に堆積したパターン形成層を除去(リフトオフ)するためのフォトレジスト層といえる。
そうすると、引用発明6Aの「ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域の上方に位置するように、断面が逆テーパー形状になるように、又は、第1フォトレジストパターンPR1と、この第1フォトレジストパターンPR1よりも幅が広い第2フォトレジストパターンPR2とを順次積層させることによって」形成される「フォトレジストパターンPR」の形成方法として、「リフトオフ法におけるパターン形成方法」という共通する技術に関する公知技術を採用する動機付けは存在するから、引用発明6Aに公知技術を採用し、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るといえる。
3 請求人の主張
(1) 請求人は、令和7年7月10日提出の意見書4ページ5~39行で、上記相違点である認定5について、「引用発明6Aの課題は、製造効率の向上、コストダウン、信頼性の向上、小型化の実現が可能な、固体撮像装置、および、その製造方法、電子機器を提供することにあります。
・・・(中略)・・・
さらに、引用文献5には、上記有機溶媒浸漬法では、リフトオフ法に適したパターンを得るためには工程が多くなる問題があったこと、一般的に、フォトレジストにおいては光酸発生剤(PAG)等が必要とされ、露光光源の波長に応じたフォトレジストの開発が必要であったこと、上記のような従来の微細加工法においては、感光部がパターンとなるため、光ビームの集光スポット以下のサイズでパターンを形成することが難しいこと、例えばDeepUVレーザ(波長:257nm)を光源とし、NA0.9の集光レンズを用いる場合、得られる円形パターンの直径は最小でも150nm程度であり、より微細なパターンを形成するために、電子線による露光等の開発が進められているが、電子線源は真空チャンバーを必要とするほか、露光における線速が遅く、開発コストやプロセスコストが肥大化してしまうという問題点があったこと、が記載されております(段落[0013]~[0015])。
こうした引用文献5の記載に触れた当業者であれば、引用文献5に記載された有機溶媒浸漬法を引用発明6Aに適用すると、製造効率が低下し、コストが上昇し、小型化が困難になることは容易に理解できます。したがって、引用文献5に記載された上記公知技術を引用発明6Aに適用すると、引用発明6Aの課題を解決することができなくなります。よって、引用文献5に記載された公知技術を引用発明6Aに適用する阻害要因が存在します。」(下線は意見書のとおり。)と主張する。
(2) しかしながら、主引用発明に関連する技術分野の技術手段の適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であるから、上記2(2)のとおり、引用発明6Aの「ガラスウエハ301Wの上面において、赤外カットフィルタ層311を形成する領域以外の領域の上方に位置するように、断面が逆テーパー形状になるように、又は、第1フォトレジストパターンPR1と、この第1フォトレジストパターンPR1よりも幅が広い第2フォトレジストパターンPR2とを順次積層させることによって」形成される「フォトレジストパターンPR」の形成方法として、「リフトオフ法におけるパターン形成方法」という共通する技術に関する、広く利用されている従来技術である、公知技術を採用する動機付けは存在する。
(3) 引用文献6に記載された課題について
ア 引用文献6には発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段、及び発明の効果について次の記載がある。
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
・・・中略・・・
【0014】
このように、多層膜からなる赤外カットフィルタ層が設けられたガラス基板を用いた場合には、装置の製造が容易でなく、製造効率の向上が困難な場合がある。また、装置の信頼性が低下する場合がある。その他、装置のコストダウンや、装置の小型化が困難な場合がある。
【0015】
したがって、本発明は、製造効率の向上、コストダウン、信頼性の向上、小型化の実現が可能な、固体撮像装置、および、その製造方法、電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の固体撮像装置は、透明基板にフィルタ層が形成されている光学フィルタと、前記光学フィルタに対面するように配置されており、前記フィルタ層を介して入射する光を受光する画素が半導体基板の画素領域に複数配列されている固体撮像素子と、前記光学フィルタと前記固体撮像素子との間に設けられており、前記光学フィルタと前記固体撮像素子とを貼り合わせている接着層とを有し、前記フィルタ層は、高屈折率の誘電体層と低屈折率の誘電体層とが交互に複数積層された誘電体多層膜であって、前記透明基板において前記固体撮像素子に対面する側の面のうち、前記画素領域に対応する部分と、前記画素領域の周辺に位置する領域の一部とを被覆するように形成されており、前記接着層は、前記固体撮像素子と前記光学フィルタとが対面する面の周辺部分において、前記透明基板にて前記フィルタ層で被覆されていない部分と、前記フィルタ層の周辺部分とに、少なくとも接するように設けられている。
【0017】(省略)
【0018】
本発明では、透明基板において固体撮像素子に対面する側の面のうち、画素領域に対応する部分と、画素領域の周辺に位置する領域の一部とに誘電体多層膜を被覆させることで、フィルタ層を形成する。そして、透明基板にて半導体基板に対面する面の周辺部分であってフィルタ層で被覆されていない部分と、前記フィルタ層の周辺部分とに少なくとも接するように、接着層を設けることで、光学フィルタと固体撮像素子とを貼り合わせる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製造効率の向上、コストダウン、信頼性の向上、小型化の実現が可能な、半導体装置、および、その製造方法、電子機器を提供することができる。」
イ 上記記載によると、引用文献6における製造効率の向上、コストダウン、信頼性の向上、小型化の実現という課題は、「前記フィルタ層は、・・・前記透明基板において前記固体撮像素子に対面する側の面のうち、前記画素領域に対応する部分と、前記画素領域の周辺に位置する領域の一部とを被覆するように形成されており、前記接着層は、前記固体撮像素子と前記光学フィルタとが対面する面の周辺部分において、前記透明基板にて前記フィルタ層で被覆されていない部分と、前記フィルタ層の周辺部分とに、少なくとも接するように設けられている」こと、つまり、「フォトレジストパターンPR」の形成方法とは別の構成によって解決するものであるから、公知技術の「フォトレジストパターンPR」の形成方法を採用することを阻害する要因にはならない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-019686