特許拒絶査定不服審判
2024-018372
SiOC薄膜の形成
- 審判番号
- 2024-018372
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-093216
- 請求日
- 2024年11月18日
- 審決日
- 2025年10月08日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
- 【請求人代理人】小野寺 隆
- 審判長/審判官
- 審判長 小宮 慎司
- 審判官 綿引 隆
- 審判官 今井 聖和
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 93216「SiOC薄膜の形成」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 8月16日出願公開、特開2023-113827〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年5月8日(パリ条約による優先権主張 2016年5月6日 米国(US)、2016年11月28日 米国(US))に出願した特願2017-92684号の一部を、令和3年7月28日に特願2021-123166号として新たな特許出願とし、さらにその一部を、令和5年6月6日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 5年 6月 6日 :手続補正書の提出
令和 6年 5月14日付け:拒絶理由通知書
同年 7月30日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月 3日付け:拒絶査定
同年11月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 7年 6月 6日付け:拒絶理由通知書(以下、本拒絶理由通知書で通知した拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
同年 7月22日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和7年7月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
反応空間内の基板上にシリコンオキシカーバイド(SiOC)薄膜を堆積させる方法であって、
前記基板の表面を、窒素を含まず、酸素を含む気相ケイ素前駆体に接触させるステップと、
過剰の前記気相ケイ素前駆体及び反応副生成物がもしあればそれらを除去するために、前記基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップと、
水素を含む第2の反応物に前記基板の表面を接触させるステップと、
ここで、前記第2の反応物がプラズマによって生成された少なくとも1種の反応種を含む、
過剰の前記第2の反応物および反応副生成物がもしあればそれらを除去するために、前記基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップと、および、
所望の厚さのSiOC薄膜が形成されるまで、前記気相ケイ素前駆体に接触させるステップと前記第2の反応物に前記基板の表面を接触させるステップとを繰り返すステップと、を含む、
ここで、前記SiOC薄膜は少なくとも0.1原子%の炭素を含む連続膜である、方法。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由のうち、本願発明に対する引用文献1に基づく理由2の概要は、次のとおりのものである。
理由2(進歩性) 本願発明は、以下の引用文献1に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2016-42576号公報
第4 引用文献1の記載、引用発明及び引用文献1記載事項
1 引用文献1の記載
当審拒絶理由において引用した引用文献1(特開2016-42576号公報)には、以下の記載がある。(なお、下線は当審において付加した。以下同じ。)
「【0012】
一態様では、細孔封止層を形成するための方法であって、
a)反応器中に多孔質低誘電率層を有する基材を提供する工程、
b)前記基材を、・・・有機ケイ素化合物と接触させて、多孔質低k誘電体層の表面の少なくとも一部の上に吸収有機ケイ素化合物を提供する工程、
c)前記反応器をパージガスでパージする工程、
d)前記反応器中にプラズマを導入して前記吸収有機ケイ素化合物と反応させる工程、並びに
e)前記反応器をパージガスでパージし、細孔封止膜の所望の厚さが前記表面上に形成され、封止された誘電率層が得られるまで工程b)~e)を繰り返す工程
を含む方法が提供される。・・・
【0015】
この方法では、損傷した多孔質低k層を有する基材を反応器又は堆積チャンバーに入れる。次いで、例えばエッチングされたビアの水平面などの損傷した多孔質低k誘電体層の表面の少なくとも一部分を、本明細書中で述べる式A~Gからなる群より選択される少なくとも1種からなる有機ケイ素化合物と接触させて、表面の一部分に吸着有機ケイ素層を設ける。次に、この低k多孔質層を、紫外(UV)線と、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、水素(H)、アンモニア(NH3)、及びその組み合わせから選択される少なくとも1種を含むプラズマから選択される少なくとも1種を含むプラズマとから選択される少なくとも一方、又は両方で処理する。この接触及び処理の加工の工程を、細孔封止層の所望の厚さがその多孔質低k層の表面の少なくとも一部分で形成されるまで繰り返す。結果としてその多孔質低k層中の開口気孔が封止される。多孔質低k誘電体層の表面の少なくとも一部分に細孔封止層を形成するための堆積法の実例には、限定されないが、プラズマ強化原子層堆積(PEALD)、プラズマ強化サイクリック化学気相成長堆積(PECCVD)及びプラズマ強化ALD様プロセスが挙げられる。
【0016】
本発明の他の実施形態では低k層の表面を、式A
【化2】
[図:0001432779000001.jpg]
を有する少なくとも1個のアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物で処理する。式中、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、C1~C10の直鎖のアルキル基、C3~C10の分岐のアルキル基、C3~C10の環状のアルキル基、C5~C12のアリール基、C2~C10の直鎖又は分岐のアルケニル基、及びC2~C10の直鎖又は分岐のアルキニル基から選択され、R4は、C1~C10の直鎖のアルキル基、C3~C10の分岐のアルキル基、C3~C10の環状のアルキル基、C3~C10の直鎖又は分岐のアルケニル基、C3~C10の直鎖又は分岐のアルキニル基、及びC5~C12のアリール基から選択され、m=0、1、又は2である。式Aを有する化合物の実例には、これらに限定されないがトリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシビニルメチルシラン、ジメトキシジビニルシラン、ジエトキシビニルメチルシラン、及びジエトキシジビニルシランが挙げられる。損傷した多孔質低k膜を式Aの有機ケイ素化合物と接触させて、吸収有機ケイ素化合物をその多孔質低k膜の表面の少なくとも一部分に形成する実施形態では、次いで基材を、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、水素(H)、又はこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種を含むプラズマで処理する。プラズマは反応器中に導入されて反応をさらに促進し、またより多くのSi-O-Si結合を形成させる。有機ケイ素化合物を多孔質低k層の表面の少なくとも一部分と接触させ、かつプラズマで処理するこのプロセス段階は、細孔封止層の所望の厚さが得られるまで繰り返される。結果として、下にある多孔質低k層中の開口気孔が封止されて、封孔された多孔質低誘電率の、すなわち多孔質低kの層が得られる。
・・・
【0038】
多孔質低k誘電体膜の少なくとも一部分の上に高度にコンフォーマルな細孔封止層を与えるALDに似た方法を本明細書中ではサイクリックCVDプロセスと呼ぶ。細孔封止層は、アモルファスケイ素、ケイ素酸化物、炭素ドープトケイ素酸化物、炭窒化ケイ素、ケイ素窒化物などのケイ素含有膜からなることができる。幾つかの実施形態では細孔封止層は、5%以下の不均一度、1サイクル当たり1Å以上の堆積速度、又は両方を有する。
【0039】
本明細書中で述べる堆積方法は、1種類又は複数種類のパージガスを伴うことができる。未消費反応物及び/又は反応副生成物を取り除くために使用されるこのパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。・・・幾つかの実施形態ではArなどのパージガスを反応器中に約10~約2000sccmの範囲の流量で約0.1~1000秒間供給し、それによって反応器中に残っている可能性のある未反応材料及び任意の副生成物を取り除く。
・・・
【0042】
幾つかの実施形態では本明細書中で述べる方法は、PECVD/PEALDプラットホーム上でサイクリックプロセスを使用して行われる。シリコンウェハーサセプタを、約100~約400℃、又は約200~約400℃の範囲にある1又は複数の温度に保つ。液状有機ケイ素化合物を、真空下で50~5000mg/分(好ましくは200~300mg/分)の流量で、チャンバーの絞り弁が閉じた状態で反応器中に送り出す。化合物の液体の流れを止めた後に、ウェハーを、反応器中で1~8トル(好ましくは2~4トル)の圧力で前駆体蒸気と一緒にその化合物すなわち「浸液」と接触させる。続いて、不活性ガスが約10~約300秒、又は約30~約50秒の範囲の時間のあいだパージした状態で絞り弁を開く。次いでウェハーを、反応器中でUVと、N2、He、Ar、H2などの反応ガスを含むプラズマと、不活性ガスを含むプラズマ(He、Ar)とで処理して、その吸収有機ケイ素化合物を活性化し、反応させ、一方で次のパルスとの反応、すなわち有機ケイ素化合物との接触のための成長する膜の表面を準備する。この処理の工程におけるプラズマの電力は、10~60秒、好ましくは15秒のプラズマ曝露時間で50~3000W、好ましくは200~300Wの範囲である。この一連のイベントにより1プロセスサイクルが完了し、これを10~30回繰り返して細孔封止層を得る。
・・・
【0052】
細孔封止層の10サイクルの堆積(例えば、前駆体に曝し、パージし、次いでプラズマに曝す)をまた、パターン化されたOSG低k膜上で実施し、続いてALDによりTa2O5を堆積させた。図1A及び1Bは、基材の側壁を示すTEM画像であり、1は炭素層、2はTa2O5層、また3は多孔質低k誘電体層である。部材2と3の間の細孔封止層は薄すぎてTEM画像上に示されない。図1A及び1Bは、下にある低k誘電体膜中へのTaの拡散のない良好な細孔封止効果を示した。図1A及び1Bに示すようにTa2O5層と低k誘電体層の間に明瞭な界面が示される。図2B及び2Cは、図2A中で示した側壁上の様々な領域から得られたEDXを示し、これは多孔質低k誘電体層3中には検出し得るTaが存在しないことを確証する。」
2 引用文献1に記載された発明
(1) 上記1の【0015】の「この方法では、損傷した多孔質低k層を有する基材を反応器又は堆積チャンバーに入れる。」との記載、及び、上記1の【0016】の「次いで基材を、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、水素(H)、又はこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種を含むプラズマで処理する。プラズマは反応器中に導入されて反応をさらに促進し、またより多くのSi-O-Si結合を形成させる。」との記載から、【0016】に記載の「基材」は、多孔質低k層を有するものであり、反応器中に入れて処理されるといえる。
(2) 上記1の【0015】の「この方法では、損傷した多孔質低k層を有する基材を反応器又は堆積チャンバーに入れる。・・・この接触及び処理の加工の工程を、細孔封止層の所望の厚さがその多孔質低k層の表面の少なくとも一部分で形成されるまで繰り返す。・・・」との記載、及び、上記1の【0016】の「有機ケイ素化合物を多孔質低k層の表面の少なくとも一部分と接触させ、かつプラズマで処理するこのプロセス段階は、細孔封止層の所望の厚さが得られるまで繰り返される。」との記載から、引用文献1には、細孔封止層を形成する方法の発明が記載されているといえる。
(3) 上記1の【0016】、上記(1)及び(2)によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「反応器中に入れられた多孔質低k層を有する基材の表面を、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシビニルメチルシラン、ジメトキシジビニルシラン、ジエトキシビニルメチルシラン、ジエトキシジビニルシランからなる有機ケイ素化合物で処理して、多孔質低k膜を有機ケイ素化合物と接触させ(【0016】及び上記(1))、
次いで基材を、水素(H)を含むプラズマで処理し(【0016】)、
有機ケイ素化合物を多孔質低k層の表面の少なくとも一部分と接触させ、かつプラズマで処理するプロセス段階を、細孔封止層の所望の厚さが得られるまで繰り返す(【0016】)、
細孔封止層を形成する方法。(上記(2))」
3 引用文献1に記載された事項
(1) 引用文献1記載事項1
上記1の【0038】によれば、引用文献1には、以下の事項(以下、「引用文献1記載事項1」という。)が記載されている。
「細孔封止層を、炭素ドープトケイ素酸化物からなるものとすること。」
(2) 引用文献1記載事項2
上記1の【0012】及び【0039】によれば、引用文献1には、以下の事項(以下、「引用文献1記載事項2」という。)が記載されている。
「細孔封止層を形成するための方法は、
b)前記基材を、・・・有機ケイ素化合物と接触させる工程、
c)前記反応器をパージガスでパージする工程、
d)前記反応器中にプラズマを導入する工程、
e)前記反応器をパージガスでパージする工程、
細孔封止膜の所望の厚さが前記表面上に形成され、封止された誘電率層が得られるまで工程b)~e)を繰り返す工程を含み(【0012】)、
パージガスを反応器中に供給することによって、反応器中に残っている未反応材料及び任意の副生成物を取り除くこと(【0039】)。」
(3) 引用文献1記載事項3
上記1の【0038】、【0042】及び【0052】によれば、引用文献1には、以下の事項(以下、「引用文献1記載事項3」という。)が記載されている。
「細孔封止層は、1サイクル当たり1Å以上の堆積速度を有し(【0038】)、
1プロセスサイクルを10~30回繰り返して細孔封止層を得ることができ(【0042】)、
細孔封止層の10サイクルの堆積により、下にある低k誘電体膜中へのTaの拡散のない良好な細孔封止効果を示すこと(【0052】)。」
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明との対比
(1) 引用発明の「反応器」内の空間は、本願発明の「反応空間」に相当する。
(2) 引用発明の「多孔質低k層を有する基材」は、本願発明の「基板」に相当する。
(3) 引用発明の「トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシビニルメチルシラン、ジメトキシジビニルシラン、ジエトキシビニルメチルシラン、ジエトキシジビニルシラン」は、本願発明の「窒素を含まず、酸素を含む気相ケイ素前駆体」に相当する。
(4) 上記(1)~(3)を踏まえると、引用発明の「反応器中に入れられた多孔質低k層を有する基材の表面を、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシビニルメチルシラン、ジメトキシジビニルシラン、ジエトキシビニルメチルシラン、ジエトキシジビニルシランからなる有機ケイ素化合物で処理して、多孔質低k膜を式Aの有機ケイ素化合物と接触させ」は、本願発明の「前記基板の表面を、窒素を含まず、酸素を含む気相ケイ素前駆体に接触させるステップ」に相当する。
(5) 引用発明の「基材を、水素(H)を含むプラズマで処理し」は、本願発明の「水素を含む第2の反応物に前記基板の表面を接触させるステップ」、「ここで、前記第2の反応物がプラズマによって生成された少なくとも1種の反応種を含む」に相当する。
(6) 本願発明の「所望の厚さのSiOC薄膜が形成されるまで、前記気相ケイ素前駆体に接触させるステップと前記第2の反応物に前記基板の表面を接触させるステップとを繰り返すステップ」と、引用発明の「有機ケイ素化合物を多孔質低k層の表面の少なくとも一部分と接触させ、かつプラズマで処理するプロセス段階を、細孔封止層の所望の厚さが得られるまで繰り返す」とは、「所望の厚さの薄膜が形成されるまで、前記気相ケイ素前駆体に接触させるステップと前記第2の反応物に前記基板の表面を接触させるステップとを繰り返すステップ」である点で共通する。
また、本願発明の「反応空間内の基板上にシリコンオキシカーバイド(SiOC)薄膜を堆積させる方法」と、引用発明の「細孔封止層を形成する方法」とは、「反応空間内の基板上に薄膜を堆積させる方法」である点で共通する。
(7) 以上によれば、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
「 反応空間内の基板上に薄膜を堆積させる方法であって、
前記基板の表面を、窒素を含まず、酸素を含む気相ケイ素前駆体に接触させるステップと、
水素を含む第2の反応物に前記基板の表面を接触させるステップと、
ここで、前記第2の反応物がプラズマによって生成された少なくとも1種の反応種を含む、
所望の厚さの薄膜が形成されるまで、前記気相ケイ素前駆体に接触させるステップと前記第2の反応物に前記基板の表面を接触させるステップとを繰り返すステップと、
を含む、方法。」
[相違点]
[相違点1]
本願発明は、「少なくとも0.1原子%の炭素を含む」「シリコンオキシカーバイド(SiOC)薄膜を堆積させる方法」であるのに対して、引用発明は、「細孔封止層を形成する方法」である点。
[相違点2]
本願発明は、「過剰の前記気相ケイ素前駆体及び反応副生成物がもしあればそれらを除去するために、前記基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップ」、及び、「過剰の前記第2の反応物および反応副生成物がもしあればそれらを除去するために、前記基板をパージガス及び/又は真空に暴露するステップ」を含むのに対して、引用発明は、そのような構成となっているか明らかでない点。
[相違点3]
「SiOC薄膜」について、本願発明は、「連続膜である」のに対して、引用発明は、そのような構成となっているか明らかでない点。
2 判断
(1) 相違点1について
上記第4の3(1)のとおり、引用文献1には、引用文献1記載事項1が記載されている。
また、「炭素ドープトケイ素酸化物」として、少なくとも0.1原子%の炭素を含むものは、特殊なものではない。
したがって、引用発明において、「細孔封止層」を、少なくとも0.1原子%の炭素を含むシリコンオキシカーバイド(SiOC)からなるものとし、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2) 相違点2について
上記第4の3(2)のとおり、引用文献1には、引用文献1記載事項2が記載されている。
したがって、引用発明において、「反応器中に入れられた多孔質低k層を有する基材の表面を、・・・有機ケイ素化合物で処理して、多孔質低k膜を有機ケイ素化合物と接触させ」る工程、及び、「基材を、水素(H)を含むプラズマで処理」する工程の後に、それぞれパージする工程を行い、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(3) 相違点3について
上記第4の3(3)の引用文献1記載事項3によれば、引用文献1には、1Å以上の堆積速度を有する1プロセスサイクルを10回繰り返すことにより、10Å以上、すなわち、1nm以上の膜厚の細孔封止層を堆積することが記載されているといえる。
そして、この細孔封止層は、下にある低k誘電体膜中へのTaの拡散のない良好な細孔封止効果を示すものであるが、細孔封止層が多孔質低k膜の表面を局所的に被覆した不均一なものであるとすれば、Taの拡散を防げないことは明らかである。そうすると、1Å以上の堆積速度を有する1プロセスサイクルを10回繰り返すことにより堆積される、1nm以上の膜厚の細孔封止層は、「連続膜」と解するのが相当である。
したがって、引用発明において、「細孔封止層」を、1Å以上の堆積速度を有する1プロセスサイクルを10回繰り返すことにより、下にある低k誘電体膜中へのTaの拡散のない良好な細孔封止効果を示すものとし、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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