特許拒絶査定不服審判
2024-012647
光源装置とその製造方法
- 審判番号
- 2024-012647
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-080784
- 請求日
- 2024年08月02日
- 審決日
- 2026年06月22日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日亜化学工業株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 東松 修太郎
- 審判官 波多江 進
- 分類
- P18 .121-WZ (H01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 80784「光源装置とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 8月 8日出願公開、特開2023-109876〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年9月26日に出願した特願2018-180796号の一部を令和5年5月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 7月20日付け:拒絶理由通知書
同年 9月 7日 :面接
同月22日 :意見書の提出
同年11月28日付け:拒絶理由通知書
令和6年 2月 2日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 5月14日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和8年 2月26日付け:拒絶理由通知書
同年 4月22日 :面接
同月27日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
1 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和8年4月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。
<本願発明>
「底面と、前記底面を囲む内側面と、により規定される凹部を有するパッケージと、
前記底面に配置されたレーザ光源と、
前記パッケージの上側に前記凹部を塞ぐように配置されたリッドと、
前記レーザ光源から出射された光をリッドの方向に反射する反射面と、
前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの内面側あるいは外面側において、前記反射面で反射された光が1つのレンズ面に入射するように配置された、凹型の第1レンズと、
前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの前記第1レンズが配置される側とは反対側に配置された、第2レンズと、を備えており、
前記リッドは、前記パッケージと接合する平面である下面、及び、前記下面の反対側に位置する平面である上面を有し、
前記第1レンズは、前記リッドの上面よりも下方、かつ、前記リッドの下面よりも上方に配置され、
前記第1レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きく、
前記第1レンズから出射される光は、少なくとも前記レーザ光源から出射された光のファーフィールドパターンの長軸方向または短軸方向の一方において、前記第1レンズに入射する光よりも発散し、
前記第2レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きいことを特徴とした、光源装置。」
2 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Kまでに分説する。また、参考図として、本願の【図3】及び【図6B】に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
(構成A)底面と、前記底面を囲む内側面と、により規定される凹部を有するパッケージと、
(構成B)前記底面に配置されたレーザ光源と、
(構成C)前記パッケージの上側に前記凹部を塞ぐように配置されたリッドと、
(構成D)前記レーザ光源から出射された光をリッドの方向に反射する反射面と、
(構成E)前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの内面側あるいは外面側において、前記反射面で反射された光が1つのレンズ面に入射するように配置された、凹型の第1レンズと、
(構成F)前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの前記第1レンズが配置される側とは反対側に配置された、第2レンズと、を備えており、
(構成G)前記リッドは、前記パッケージと接合する平面である下面、及び、前記下面の反対側に位置する平面である上面を有し、
(構成H)前記第1レンズは、前記リッドの上面よりも下方、かつ、前記リッドの下面よりも上方に配置され、
(構成I)前記第1レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きく、
(構成J)前記第1レンズから出射される光は、少なくとも前記レーザ光源から出射された光のファーフィールドパターンの長軸方向または短軸方向の一方において、前記第1レンズに入射する光よりも発散し、
(構成K)前記第2レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きい
(構成X)ことを特徴とした、光源装置。
<本願参考図1(図3を基に作成)>
[図:0001438728000001.jpg]
<本願参考図2(図6Bを基に作成)>
[図:0001438728000002.jpg]
3 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願の明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を「(別記1)」に抜粋した。なお、図面を関連する記載のある箇所の次に適宜挿入して示した。
本願発明の目的とする効果は、本願明細書の【0005】及び【0007】等によると、「レーザ光源から出射される光のファーフィールドパターンの長軸方向及び短軸方向において、所望のアスペクト比の光を出射可能な小型な光源装置を提供すること」である。
第3 当審において通知した拒絶の理由の概要
本願発明は、本件補正前の請求項2(令和6年8月2日にされた手続補正後のもの。)に係る発明を補正したものであるところ、当審において令和8年2月26日付け拒絶理由通知書で本件補正前の請求項2に係る発明に対して通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次に示すとおりである。
(進歩性の欠如)この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2007-27716号公報
引用文献2.特開平5-273492号公報
引用文献3.特開2002-230823号公報
第4 当合議体の判断
当合議体は、以下に示すとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3に例示される周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。
1 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献1に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由で引用した、本願の出願前に発行された引用文献1(特開2007-27716号公報)には、「(別記2)」に摘記した事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものであり、図は適宜関連する記載の近くに挿入して示した(以降の他の文献についても同様である。)。
イ 引用文献1に記載された事項から当業者が把握できる事項
(ア) 【0078】の「その種のカバーボディを備えたレーザダイオード素子1を図3~図5に示す。これらのレーザダイオード素子1はレンズ61を備えたカバープレート6を有している。」との記載、及び、【0079】の「その他の点では、図3~図5に示したレーザダイオード素子は、先に図1および図2を参照しながら説明した実施例のレーザダイオード素子に類似している。」との記載から、当業者は、図1~図2に示される実施例についての記載のうち、カバープレート6以外に関する記載は、図3~図5に示される実施例についても該当すること(以下「認定事項1a」という。)を把握することができる。
(イ) 【0078】及び【0088】の記載とともに、図4及び図5を観察すると、レンズ61は、カバープレート6の光出力側の面上に配置されていること(以下「認定事項1b」という。)を把握することができる。
【図4】 【図5】
[図:0001438728000003.jpg]
ウ 引用発明の認定
認定事項1aを踏まえると、「(別記2)」に摘記した引用文献1に記載された事項及び認定事項1bを総合すると、引用文献1には、図3~図5に示される実施例に係るレーザダイオード素子1について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。
<引用発明>
「レーザダイオード素子1であって、(【0078】)
レーザダイオード素子1は担体21と保持装置22とを備えたパッケージ2を有しており、(【0058】、認定事項1a)
保持エレメントとも呼ばれる保持装置22はパッケージ2のためのフレームとして形成されており、フレーム状に形成された保持装置は担体21の表側(表面)の中央の領域を、キャビティが形成されているように包囲し、このキャビティ内には端面発光型のレーザダイオードバー3が配置されており、(【0059】、【0080】、認定事項1a)
保持装置22はリフレクタ斜面222を有しており、リフレクタ斜面222または保持装置22全体は、良好に反射する層、例えば金層を有しており、それにより、リフレクタ斜面222は変向エレメントとして素子パッケージ内で役立つことができ、その結果、素子は特に端面発光型のレーザダイオードのためにも適しており、端面発光型のレーザダイオードは、その活性域が実質的に担体の主延在平面に対して平行に方向付けられているようにパッケージ内に実装され、(【0075】、認定事項1a)
パッケージ2がその表側で完全にカバーボディによりカバーされ、(【0077】)
その種のカバーボディを備えたレーザダイオード素子1はカバープレート6を有しており、レーザダイオード素子1はレンズ61を備えたカバープレート6を有しており、(【0078】)
レンズ61は、カバープレート6の光出力側の面上に配置されており、(認定事項1b)
端面発光型のレーザダイオードの電磁放射はパッケージ内でリフレクタ斜面により放射方向へと変向されることができ、(【0025】)
カバーボディは有利には少なくとも1つのビーム透過性の窓を有しており、カバーボディと、カバーボディに結合された光学的なエレメントとが特に精緻にレーザダイオードに対して相対的に調整され、(【0037】)
光学的なエレメントは少なくとも1つのレンズを有しており、(【0038】)
端面発光型のレーザはしばしば、強い異方性のビーム横断面を有するレーザビームを放出し、このビーム横断面はしばしば楕円形の形状を有しており、光学的なエレメントが、ビーム横断面の異方性を明らかに減じるために適している、(【0040】)
レーザダイオード素子1」
エ 引用文献1技術事項の認定
認定事項1aを踏まえつつ「(別記2)」に摘記した引用文献1に記載された事項を総合すると、引用文献1には、引用発明におけるカバープレートの異なる実施例として、次の技術事項(以下「引用文献1技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献1技術事項>
「カバープレート6は、光学的なエレメント61を備え、光学的なエレメントは多数の構造エレメント62を有しており、(【0083】)
構造エレメントはカバープレート6の光入力側及び光出力側に配置されており、構造エレメントは両側で同種にまたは異種に構成されていることができること。(【0088】)」
(2) 引用文献2に記載された事項及び引用文献2技術事項の認定
ア 引用文献2に記載された事項
当審拒絶理由で引用した、本願の出願前に発行された文献である引用文献2(特開平5-273492号公報)には、「(別記3)」に摘記した事項が記載されている。
イ 引用文献2に記載された事項から当業者が把握できる事項
第2実施例についての記載である【0023】の「本実施例は、レンズ20の代わりにレンズ25が用いられているほかは第1実施例と同様の構成となっており、その効果も同様である。」との記載から、当業者は、第1実施例についての記載から、第2実施例について次の事項(以下「認定事項2a」及び「認定事項2b」という。)を把握することができる。
(ア) 認定事項2a
半導体レーザー光源が、半導体レーザー10,レンズ25及びそれらを固定するボディ50から成っていること。(【0013】)
(イ) 認定事項2b
レンズ25は、ビーム光強度分布補正用レンズであり、2つのシリンドリカルレンズを互いに軸方向が直交するように接合した構成をとっており、一方のシリンドリカルレンズ(軸がY方向)に相当する部分の半導体レーザー10側の面が第1円柱面S3であり、他方のシリンドリカルレンズ(軸がX方向)に相当する部分のレーザービームLB出射側の面が第2円柱面S4であること。(【0015】)
ウ 引用文献2技術事項の認定
「(別記3)」に摘記した引用文献2に記載された事項及び認定事項2を総合すると、引用文献2には、図3に示される第2実施例に係る半導体レーザー光源について、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2技術事項>
「半導体レーザー光源において、(【0001】)
半導体レーザー10,レンズ25及びそれらを固定するボディ50から成っており、(認定事項2a)
レンズ25は、ビーム光強度分布補正用レンズであり、2つのシリンドリカルレンズを互いに軸方向が直交するように接合した構成をとっており、一方のシリンドリカルレンズ(軸がY方向)に相当する部分の半導体レーザー10側の面が第1円柱面S3であり、他方のシリンドリカルレンズ(軸がX方向)に相当する部分のレーザービームLB出射側の面が第2円柱面S4であり、(認定事項2b)
第2円柱面S4がレーザービームLBの出射側で凹面となっており、(【0023】)
レンズ25通過前のレーザービームLBの遠視野像P3は、X方向に長い楕円状であるが、レンズ25を通過することによって、Y方向に発散され、レーザービームLBの広がり角が大きくなり、一方、遠視野像P3は、X方向については収束されてレーザービームLBの広がり角が小さくなり、よって、遠視野像P3は、リモートネットワーク等に適した真円状の遠視野像P4に変化することになること。(【0024】)」
(3) 引用文献3に記載された事項及び周知技術1の認定
ア 引用文献3に記載された事項
当審拒絶理由で引用した、本願の出願前に発行された文献である引用文献3(特開2002-230823号公報)には、「(別記4)」に摘記した事項が記載されている。
イ 周知技術1の認定
「(別記4)」に摘記した引用文献3の記載事項(特に【図4】参照)に例示されるように、次の技術事項は本願の出願前の周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。
<周知技術1>
「出射窓の面に凹状表面を有するレンズ」
【図4】
[図:0001438728000004.jpg]
2 対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点
構成Xは、「光源装置」の発明であることを特定するものである。
「光源装置」の発明である本願発明と「レーザダイオード素子1」の発明である引用発明は、次の点において一致する。
「光源装置」の発明である点。
イ 構成Aの観点
構成Aは、「底面と、前記底面を囲む内側面と、により規定される凹部を有するパッケージ」を備えていることである。
(ア) 引用発明における「パッケージ2」は、本願発明における「パッケージ」に相当する。
(イ) 引用発明における「パッケージ2」は、「担体21と保持装置22とを備えた」ものであるところ、引用発明においては、「保持エレメントとも呼ばれる保持装置22はパッケージ2のためのフレームとして形成されており、フレーム状に形成された保持装置は担体21の表側(表面)の中央の領域を、キャビティが形成されているように包囲[する]」ものであり、当該「キャビティ」は、本願発明における「凹部」に相当するとともに、担体21の表面と、当該表面を包囲する保持装置の表面により形成されることが理解できる。したがって、引用発明における「パッケージ2」は、本願発明でいう「底面と、前記底面を囲む内側面と、により規定される凹部を有する」ものであるといえる。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Aの点である次の点において一致する。
「底面と、前記底面を囲む内側面と、により規定される凹部を有するパッケージ」を備えている点。
ウ 構成Bの観点
構成Bは、「前記底面に配置されたレーザ光源」を備えていることである。
(ア) 引用発明における「端面発光型のレーザダイオードバー3」は、本願発明の「レーザ光源」に相当する。
(イ) 引用発明においては、「フレーム状に形成された保持装置は担体21の表側(表面)の中央の領域を、キャビティが形成されているように包囲し、このキャビティ内には端面発光型のレーザダイオードバー3が配置されて[いる]」から、前記イ(イ)も踏まえると、引用発明における「端面発光型のレーザダイオードバー3」は、本願発明でいう「前記底面に配置された」ものであるといえる。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Bの点である次の点において一致する。
「前記底面に配置されたレーザ光源」を備えている点。
エ 構成Cの観点
構成Cは、「前記パッケージの上側に前記凹部を塞ぐように配置されたリッド」を備えていることである。
(ア) 引用発明における「カバープレート6」は、本願発明における「リッド」に相当する。
(イ) 引用発明においては、「パッケージ2がその表側で完全にカバーボディによりカバーされ、その種のカバーボディを備えたレーザダイオード素子1はカバープレート6を有して[いる]」から、前記イ(イ)も踏まえると、引用発明における「カバープレート6」は、本願発明でいう「前記パッケージの上側に前記凹部を塞ぐように配置された」ものであるといえる。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Cの点である次の点において一致する。
「前記パッケージの上側に前記凹部を塞ぐように配置されたリッド」を備えている点。
オ 構成Dの観点
構成Dは、「前記レーザ光源から出射された光をリッドの方向に反射する反射面」を備えていることである。
(ア) 引用発明における「リフレクタ斜面222」は、本願発明における「反射面」に相当する。
(イ) 引用発明においては、「端面発光型のレーザダイオードの電磁放射はパッケージ内でリフレクタ斜面により放射方向へと変向されることができ」、「カバーボディは有利には少なくとも1つのビーム透過性の窓を有して[いる]」から、引用発明における「リフレクタ斜面222」が本願発明でいう「前記レーザ光源から出射された光をリッドの方向に反射する」ものであることは、明らかである。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Dの点である次の点において一致する。
「前記レーザ光源から出射された光をリッドの方向に反射する反射面」を備えている点。
カ 構成E及びFの観点
構成Eは、「前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの内面側あるいは外面側において、前記反射面で反射された光が1つのレンズ面に入射するように配置された、凹型の第1レンズ」を備えていることである。
構成Fは、「前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの前記第1レンズが配置される側とは反対側に配置された、第2レンズ」を備えていることである。
(ア) 引用発明においては、「レンズ61を備えたカバープレート6を有して」いるところ、「カバーボディは有利には少なくとも1つのビーム透過性の窓を有しており、カバーボディと、カバーボディに結合された光学的なエレメントとが特に精緻にレーザダイオードに対して相対的に調整され[る]」ものであり、「光学的なエレメントは少なくとも1つのレンズを有して[いる]」ことから、前記オ(イ)も踏まえると、引用発明における「レンズ61」は、本願発明でいう「前記反射面で反射した光の光路領域内であって、」「前記反射面で反射された光が」「レンズ面に入射するように配置された」「レンズ」であるといえる。
(イ) 引用発明は、「レンズ61は、カバープレート6の光出力側に配置されて[いる]」ものであるから、引用発明における「レンズ61」は、本願発明でいう「前記リッドの」「外面側において」配置されたものであるといえる。
(ウ) 引用発明においては、「レンズ61」の形状は特定されておらず、パッケージ内でリフレクタ斜面により放射方向へと変向される電磁放射が入射するレンズ面の数は特定されておらず、二つ目のレンズを備えていることは、少なくとも明示的には特定されていない。
(エ) そうすると、構成E及びFの観点における本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。
a 構成E及び構成Fの観点における一致点
E′「前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの内面側あるいは外面側において、前記反射面で反射された光が」「レンズ面に入射するように配置された、」「レンズ」を備えている点。
b 構成E及びFの観点における相違点
本願発明においては、
第1のレンズと第2のレンズを備え、
第1のレンズが「凹型」であり、前記反射面で反射された光が「1つの」レンズ面に入射するように配置されたものであり、
「第2レンズ」は、「前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの前記第1レンズが配置される側とは反対側に配置された」ものであるのに対して、
引用発明においては、
二つ目のレンズを備えていることは、少なくとも明示的には特定されておらず、
「レンズ61」の形状は特定されておらず、パッケージ内でリフレクタ斜面により放射方向へと変向される電磁放射が入射するレンズ面の数は特定されていない点。
キ 構成Gの観点
構成Gは、「前記リッドは、前記パッケージと接合する平面である下面、及び、前記下面の反対側に位置する平面である上面を有[する]」ことである。
(ア) 引用発明においては、「レンズ61は、カバープレート6の光出力側に配置されて[いる]」ものであるところ、引用発明における「カバープレート6」が光入力側の面、光出力側の面を有することは明らかである。そして、引用発明は、「パッケージ2がその表側で完全にカバーボディによりカバーされ[る]」ものであることも踏まえると、当該光入力側の面と、光出力側の面はそれぞれ、本願発明における「前記パッケージと接合する平面である下面、及び、前記下面の反対側に位置する平面である上面」に相当する。
(イ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Gの点である次の点において一致する。
「前記リッドは、前記パッケージと接合する平面である下面、及び、前記下面の反対側に位置する平面である上面を有[する]」点。
ク 構成Hの観点
構成Hは、「前記第1レンズは、前記リッドの上面よりも下方、かつ、前記リッドの下面よりも上方に配置され[る]」ことである。
(ア) 引用発明においては、「レンズ61は、カバープレート6の光出力側の面上に配置されて[いる]」ものである。
(イ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Hの点である次の点において相違する。
本願発明においては、「前記第1レンズは、前記リッドの上面よりも下方、かつ、前記リッドの下面よりも上方に配置され[る]」のに対して、
引用発明においては、「レンズ61は、カバープレート6の光出力側の面上に配置されて[いる]」点。
ケ 構成I、J及びKの観点
構成Iは、「前記第1レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大き[い]」ことである。
構成Jは、「前記第1レンズから出射される光は、少なくとも前記レーザ光源から出射された光のファーフィールドパターンの長軸方向または短軸方向の一方において、前記第1レンズに入射する光よりも発散[する]」ことである。
構成Kは、「前記第2レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きい」ことである。
(ア)a 引用発明においては、前記カ(ウ)で検討したとおり、「レンズ61」の形状は特定されておらず、二つ目のレンズを備えていることは少なくとも明示的には特定されていない。
b そして、引用発明においては、「光学的なエレメントは少なくとも1つのレンズを有しており、端面発光型のレーザはしばしば、強い異方性のビーム横断面を有するレーザビームを放出し、このビーム横断面はしばしば楕円形の形状を有しており、光学的なエレメントが、ビーム横断面の異方性を明らかに減じるために適している」ものであるが、「レンズ61」の具体的な光学的作用は特定されていない。
(イ) そうすると、本願発明と引用発明は、構成I、J及びKの点である次の点において相違する。
本願発明においては、
「前記第1レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きく、
前記第1レンズから出射される光は、少なくとも前記レーザ光源から出射された光のファーフィールドパターンの長軸方向または短軸方向の一方において、前記第1レンズに入射する光よりも発散し、
前記第2レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きい」のに対して、
引用発明においては、
「レンズ61」の形状は特定されておらず、
光学的なエレメントは少なくとも1つのレンズを有しており、端面発光型のレーザはしばしば、強い異方性のビーム横断面を有するレーザビームを放出し、このビーム横断面はしばしば楕円形の形状を有しており、光学的なエレメントが、ビーム横断面の異方性を明らかに減じるために適している」ものであるが、「レンズ61」の具体的な光学的作用は特定されておらず、
二つ目のレンズを備えていることは少なくとも明示的には特定されていない点。
(2) 一致点及び相違点の認定
前記(1)の対比分析を踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「A 底面と、前記底面を囲む内側面と、により規定される凹部を有するパッケージと、
B 前記底面に配置されたレーザ光源と、
C 前記パッケージの上側に前記凹部を塞ぐように配置されたリッドと、
D 前記レーザ光源から出射された光をリッドの方向に反射する反射面と、
E′ 前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの内面側あるいは外面側において、前記反射面で反射された光がレンズ面に入射するように配置された、レンズと、を備えており、
G 前記リッドは、前記パッケージと接合する平面である下面、及び、前記下面の反対側に位置する平面である上面を有する、
X 光源装置」の発明である点。
イ 相違点
(ア) 部分相違点1(レンズ光学系に係る相違点)
本願発明においては、
第1のレンズと第2のレンズを備え、
第1のレンズが、「凹型」であり、前記反射面で反射された光が「1つの」レンズ面に入射するように配置されたものであり、
「第2レンズ」は、「前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの前記第1レンズが配置される側とは反対側に配置された」ものであり、
「第1レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きく、
前記第1レンズから出射される光は、少なくとも前記レーザ光源から出射された光のファーフィールドパターンの長軸方向または短軸方向の一方において、前記第1レンズに入射する光よりも発散し、
前記第2レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きい」のに対して、
引用発明においては、
二つ目のレンズを備えていることは少なくとも明示的には特定されておらず、
「レンズ61」の形状は特定されておらず、パッケージ内でリフレクタ斜面により放射方向へと変向される電磁放射が入射するレンズ面の数は特定されておらず、
「光学的なエレメントは少なくとも1つのレンズを有しており、端面発光型のレーザはしばしば、強い異方性のビーム横断面を有するレーザビームを放出し、このビーム横断面はしばしば楕円形の形状を有しており、光学的なエレメントが、ビーム横断面の異方性を明らかに減じるために適している」ものであるが、「レンズ61」の具体的な光学的作用は特定されていない点。
(イ) 部分相違点2(レンズの設け方に係る相違点)
本願発明においては、「前記第1レンズは、前記リッドの上面よりも下方、かつ、前記リッドの下面よりも上方に配置され[る]」のに対して、
引用発明においては、「レンズ61は、カバープレート6の光出力側の面上に配置されて[いる]」点。
3 判断
(1) 相違点についての検討
ア 相違点の想到容易性について
相違点(部分相違点1及び2)についてまとめて検討する。
(ア) 引用発明は、「端面発光型のレーザはしばしば、強い異方性のビーム横断面を有するレーザビームを放出し、このビーム横断面はしばしば楕円形の形状を有しており、光学的なエレメントが、ビーム横断面の異方性を明らかに減じるために適している」ものであるところ、引用発明を開示する引用文献1に記載されている引用文献1技術事項からみて、引用文献1には、光学的なエレメントが多数の構造エレメント62を有する場合に限ることなく、光学的なエレメントをカバープレート6の光入力側及び光出力側に配置することや、光学的なエレメントを両側で異種に構成することが示唆されているといえる。
そして、このような光学的なエレメントの具体的な構成として、ビーム横断面の異方性を減じる公知の構成(レンズ光学系)を元に各レンズのパラメータを調整し適宜設計することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
(イ) そして、引用文献2技術事項のレンズ25は、そのようなビーム横断面の異方性を減じるものにほかならないから、引用発明において、ビーム横断面の異方性を減じるためのカバープレートの両側に配置される光学的なエレメントの具体的な構成として、引用文献2技術事項を採用して、
「カバープレート6の光入力側に配置される光学的なエレメントとして光入力側の面が第1円柱面S3であるシリンドリカルレンズを採用し、
カバープレート6の光出力側に配置される光学的なエレメントとして光出力側の面が凹面の第2円柱面S4であるシリンドリカルレンズを採用して、
光出力側のシリンドリカルレンズを出射する光が、端面発光型のレーザが放出し、楕円形の形状を有するビーム横断面を有するレーザビームの短軸方向において、光出力側のシリンドリカルレンズに入射する光よりも発散するように構成する」こと(以下、このように構成された構成を「シリンドリカルレンズ採用構成」という。)は、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
(ウ) このとき、シリンドリカルレンズ採用構成における「光出力側の面が凹面の第2円柱面S4であるシリンドリカルレンズ」が、部分相違点1に係る本願発明の「凹型の第1レンズ」に相当し、前記反射面で反射された光が「1つの」レンズ面に入射するように配置されたものであり、「第1レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きく」、「前記第1レンズから出射される光は、少なくとも前記レーザ光源から出射された光のファーフィールドパターンの長軸方向または短軸方向の一方において、前記第1レンズに入射する光よりも発散[する]」との部分相違点1に係る本願発明の構成を満たすこととなる。
(エ) また、シリンドリカルレンズ採用構成における「光入力側の面が第1円柱面S3であるシリンドリカルレンズ」が、部分相違点1における「前記反射面で反射した光の光路領域内であって、前記リッドの前記第1レンズが配置される側とは反対側に配置された、第2レンズ」に相当するとともに、「前記第2レンズの曲率は、一方の軸方向の曲率が、当該一方の軸方向に垂直な他方の軸方向の曲率よりも大きい」との部分相違点1に係る本願発明の構成を満たすこととなる。
(オ) さらに、シリンドリカルレンズ採用構成において、カバープレート6の光出力側に配置される光学的なエレメントとして光出力側の面が凹面の第2円柱面S4であるシリンドリカルレンズを採用するに際して、「出射窓の面に凹状表面を有するレンズ」との周知技術1を参酌し、光出力側の面が凹面の第2円柱面S4であるシリンドリカルレンズをカバープレート6の面に凹状表面を有するよう、カバープレートの内部に形成することにより、「前記第1レンズは、前記リッドの上面よりも下方、かつ、前記リッドの下面よりも上方に配置され[る]」との部分相違点2に係る本願発明の構成を満たすようにすることは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。
(カ) 以上のとおり、引用発明において、引用文献2技術事項及び周知技術1を適用することにより、相違点(部分相違点1及び部分相違点2)に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点についての検討のまとめ
前記アにおいて検討したとおり、引用発明において、相違点(部分相違点1及び部分相違点2)に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果としては、本願発明の構成が奏するものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 請求人の主張について
請求人は、引用文献1で開示されているのは、「カバープレート6に配置される構造エレメントに実装精度は求められておらず、配置される構造エレメントは、光出力側に配置しても光入力側に配置しても、同種でも異種でも組合せて用いてもよいような光学的手段」であり、「このような光学的手段を用いて、レーザ光の均質化を達成する技術」であり、引用文献1で用いられる光学的なエレメント6は実装精度を考慮せずにレーザを均質化するための光学的手段であるから、当業者が「光学的なエレメント」と引用文献2のレンズ25を、適宜調整可能な設計事項と認識することはない旨主張している。
しかしながら、引用発明は、「カバーボディと、カバーボディに結合された光学的なエレメントとが特に精緻にレーザダイオードに対して相対的に調整され[る]」ものであり、光学的なエレメントが実装精度を考慮しないものであるとの請求人の主張は引用文献1の記載を正解しないものである。そうすると、当該主張を根拠とする、引用文献1の光学的なエレメントをレーザの均質化のための光学的手段に限定して解すべきとの主張についても、引用文献1の「端面発光型のレーザはしばしば、強い異方性のビーム横断面を有するレーザビームを放出し、このビーム横断面はしばしば楕円形の形状を有しており、光学的なエレメントが、ビーム横断面の異方性を明らかに減じるために適している」との記載を根拠なく看過するものというほかなく、失当である。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、同法49条2号に該当するから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-012647