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特許拒絶査定不服審判

2024-014345

二元金属ライナ層

審判番号
2024-014345
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-542964外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年09月06日
審決日
2025年07月25日
公報発行日
2026年01月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
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特願2022-542964「二元金属ライナ層」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年11月11日国際公開、WO2021/226170、令和 5年 4月21日国内公表、特表2023-516861〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2021年(令和3年)5月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2020年5月6日 米国、2020年6月23日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和5年10月27日付け 拒絶理由通知書 令和6年 1月31日 意見書、手続補正書の提出 令和6年 4月25日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和6年 9月 6日 審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、進歩性に係る拒絶の理由は、本願の請求項1~16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 引用文献1.米国特許出願公開第2013/0140698号明細書 第3 本願発明 本願の請求項1~14に係る発明は、令和6年9月6日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるところ、その請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。なお、請求項9に係る発明は、原査定時の請求項11に係る発明と同じであり、審判請求時に補正はされていない。 「 【請求項9】 基板上の誘電体層であって、間隙を画定する少なくとも1つの特徴を含む、誘電体層と、 前記誘電体層上に、TaN、ドープされたTaN、MnN、およびドープされたMnNからなる群から選択されるバリア層と、 10オングストロームから20オングストロームの範囲の厚さを有し、バリア層上に2つの金属の合金を含む単一層ライナ膜であって、 前記2つの金属は、第1の金属M1と第2の金属M2とからなり、M1がルテニウム(Ru)であり、M2がコバルト(Co)である;M1がルテニウム(Ru)であり、M2がタングステン(W)である;M1がルテニウム(Ru)であり、M2がモリブデン(Mo)であることからなる群から選択される、単一層ライナ膜と、 前記単一層ライナ膜上の間隙充填金属と、 を備え、 前記単一層ライナ膜は、前記バリア層と前記間隙充填金属との間に界面接着性を提供する、マイクロ電子デバイス。」 第4 当審の判断 1 引用発明 (1) 引用文献1の記載 原査定の理由で引用した引用文献1には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すために当審が付加した。) ア 「[0023] FIG. 1B shows the same microelectronic device 100 after deposition of a barrier layer 130, which covers at least a portion of the sidewall 115 and/or trench bottom 120. As shown in FIG. 1B, the barrier layer 130 may cover the entirety of the sidewall 115 and trench bottom 120. The barrier layer 130 may comprise TaN and one or more dopants such as Ru, Cu, Co, Mn, Al, Mg, Cr, Nb, Ti or V. According to one or more embodiments, the bather layer comprises TaN and Mn. In other embodiments, the barrier layer comprises TaN and one or more of Ru, Cu and Co. [0024] ・・・ [0025] According to one or more embodiments, as used herein, “barrier layer” refers to a discrete layer formed by depositing TaN and one or more dopants, and excludes a region in which a second element or dopant diffuses into only a portion of the barrier layer. In other words, some embodiments provide that the dopant is present throughout the entire thickness of the TaN layer, and not only at a surface portion thereof. [0026] A conductive fill material 140 fills at least a portion of the trench 150 lined with barrier layer 130. According to one or more embodiments, the conductive fill material comprises copper or a copper alloy. In further embodiments, the conductive fill material also comprises Mn. In other embodiments, the conductive fill material further comprises Al. [0027] Although the conductive fill material 140 in FIG. 1B is shown in direct contact with the barrier layer 130, intermediate layers may be in between the conductive fill material 140 and the barrier layer 130, such as adhesion layers or seeding layers. According to one or more embodiments, the microelectronic device further comprises an adhesion layer comprising one or more of Ru and Co. In addition to Ru and/or Co, the adhesion layer may comprise one or more dopants such as Mn, Al, Mg, Cr, Nb, Ti or V. In some embodiments, the adhesion layer comprises Ru and Mn. In other embodiments, the adhesion layer comprises Co and Mn.」(当審訳: 「[0023] 図1Bは、側壁115及び/又はトレンチ底部120の少なくとも一部を覆うバリア層130の堆積後の同じマイクロ電子デバイス100を示す。図1Bに示すように、バリア層130は、側壁115及びトレンチ底部120の全体を覆うことができる。バリア層130は、TaNと、Ru、Cu、Co、Mn、Al、Mg、Cr、Nb、Ti又はVなどの、1つ又は複数のドーパントとを含むことができる。1つ又は複数の実施形態によれば、バリア層は、TaN及びMnを含む。他の実施形態では、バリア層は、TaNと、Ru、Cu及びCoのうちの1つ又は複数とを含む。 [0024]・・・ [0025] 1つ又は複数の実施形態によれば、本明細書で使用される場合、「バリア層」は、TaN及び1つ又は複数のドーパントを堆積させることによって形成された別個の層を指し、第2の元素又はドーパントがバリア層の一部のみに拡散する領域は除外される。言い換えれば、いくつかの実施形態は、ドーパントがTaN層の表面部分だけでなく、TaN層の厚さ全体にわたって存在することを提供する。 [0026] 導電性充填材料140は、バリア層130で裏打ちされたトレンチ150の少なくとも一部を充填する。1つ又は複数の実施形態によれば、導電性充填材料は、銅又は銅合金を含む。さらなる実施形態では、導電性充填材料は、Mnも含む。他の実施形態では、導電性充填材料は、Alをさらに含む。 [0027] 図1Bの導電性充填材料140はバリア層130と直接接触して示されているが、接着層又はシード層などの中間層が導電性充填材料140とバリア層130との間にあってもよい。1つ又は複数の実施形態によれば、マイクロ電子デバイスは、Ru及びCoのうちの1つ又は複数を含む接着層をさらに含む。Ru及び/又はCoに加えて、接着層は、Mn、Al、Mg、Cr、Nb、Ti又はVなどの1つ又は複数のドーパントを含むことができる。いくつかの実施形態では、接着層は、Ru及びMnを含む。他の実施形態では、接着層は、Co及びMnを含む。」) イ 「[0034] FIG. 2 illustrates a microelectronic device 200 with a substrate 205 and a dielectric layer 210. The dielectric layer 210 has sidewalls 215 and trench bottom 220, which are at least partially covered by a first layer 230. The first layer 230 may be a barrier layer comprising TaN and one or more dopants such as Ru, Cu, Co, Mn, Al, Mg, Nb, Ti or V. In some embodiments, the first layer comprises TaN and Mn. In other embodiments, the first layer comprises TaN and one or more of Ru, Cu and Co. [0035] A second layer 235 is disposed upon the first layer 230, and may comprise one or more of Ru and Co. The second layer may further comprise one or more dopants such as Mn, Al, Mg, Cr, Nb, Ti or V. In some embodiments, the second layer comprises Ru and Mn. In other embodiments, the second layer comprises Co and Mn. [0036] A conductive fill material 240 is deposited in the remainder of the trench defined by sidewall 215 and trench bottom 220. According to one or more embodiments, the conductive fill material comprises copper or a copper alloy. In further embodiments, the conductive fill material also comprises Mn. The conductive material 240 may be deposited directly on the second layer 235, or may be deposited on a seeding layer (not shown) on top of the second layer 235. According to one or more embodiments, the seeding layer comprises an alloy of copper, such as a Cu-Mn alloy. In certain embodiments, the seeding layer comprises less than 2% Mn. In some embodiments, the seeding layer comprises about 1% Mn.」(当審訳: 「[0034] 図2は、基板205と誘電体層210とを有するマイクロ電子デバイス200を示す。誘電体層210は、第1層230によって少なくとも部分的に覆われた側壁215及びトレンチ底部220を有する。第1層230は、TaNと、Ru、Cu、Co、Mn、Al、Mg、Nb、Ti又はVなどの1つ又は複数のドーパントとを含むバリア層とすることができる。いくつかの実施形態では、第1層はTaN及びMnを含む。他の実施形態では、第1層は、TaNと、Ru、Cu及びCoのうちの1つまたは複数を含む。 [0035] 第2層235は、第1層230上に配置され、Ru及びCoのうちの1つ又は複数を含み得る。第2層は、Mn、Al、Mg、Cr、Nb、Ti又はVなどの1つ又は複数のドーパントをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、第2層は、Ru及びMnを含む。他の実施形態では、第2層は、Co及びMnを含む。 [0036] 導電性充填材料240は、側壁215及びトレンチ底部220によって画定されるトレンチの残りの部分に堆積される。1つ又は複数の実施形態によれば、導電性充填材料は、銅又は銅合金を含む。さらなる実施形態では、導電性充填材料は、Mnも含む。導電性材料240は、第2層235上に直接堆積されてもよく、又は第2層235の上部のシード層(図示せず)上に堆積されてもよい。1つ又は複数の実施形態によれば、シード層は、Cu-Mn合金などの銅の合金を含む。特定の実施形態では、シード層は、2%未満のMnを含む。いくつかの実施形態では、シード層は、約1%のMnを含む。」) ウ 「[0045] Another aspect of the invention pertains to a method for forming interconnections in a microelectronic device comprising providing a substrate with a dielectric layer disposed thereon, depositing a first layer upon the dielectric layer, depositing a second layer upon the first layer, and depositing a conductive material upon the second layer. In embodiments of this aspect, the first layer may comprise TaN and one or more dopants selected from Ru, Cu, Co, Mn, Al, Mg, Cr, Nb, Ti and V. In some embodiments, the first layer comprises TaN and Mn. In other embodiments, the first layer comprises TaN and one or more of Ru, Cu and Co. The doped TaN layer may be formed by any appropriate deposition process, such as those described above. [0046] According to one or more embodiments, the second layer comprises one or more of Ru and Co. In certain embodiments, the second layer further comprises one or more dopants selected from Mn, Al, Mg, Cr, Nb, Ti and V. In some embodiments, the second layer comprises Ru and Mn. In other embodiments, the second layer comprises Co and Mn. [0047] The second layer may be deposited by any appropriate deposition process, including CVD, PVD, ALD, and PEALD. In embodiments where the second layer comprises cobalt, suitable precursors for the second layer include, but are not limited to, cobalt carbonyl complexes, cobalt amidinates compounds, cobaltocene compounds, cobalt dienyl complexes, cobalt nitrosyl complexes, and derivatives and combinations thereof.」(当審訳: 「[0045] 本発明の別の態様は、マイクロ電子デバイス内に相互接続を形成するための方法であって、その上に誘電体層が配置された基板を提供することと、誘電体層上に第1層を堆積させることと、第1層上に第2層を堆積させることと、第2層上に導電性材料を堆積させることとを含む方法に関する。この態様の実施形態では、第1層は、TaNと、Ru、Cu、Co、Mn、Al、Mg、Cr、Nb、Ti及びVから選択される1つ又は複数のドーパントとを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1層は、TaN及びMnを含む。他の実施形態では、第1層は、TaNと、Ru、Cu及びCoのうちの1つ又は複数を含む。ドープされたTaN層は、上述したような任意の適切な堆積プロセスによって形成することができる。 [0046] 1つ又は複数の実施形態によれば、第2層は、Ru及びCoのうちの1つ又は複数を含む。特定の実施形態において、第2層は、Mn、Al、Mg、Cr、Nb、Ti及びVから選択される1つ又は複数のドーパントをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2層は、Ru及びMnを含む。他の実施形態では、第2層は、Co及びMnを含む。 [0047] 第2層は、CVD、PVD、ALD、及びPEALDを含む任意の適切な堆積プロセスによって堆積させることができる。第2層がコバルトを含む実施形態では、第2層に好適な前駆体としては、コバルトカルボニル錯体、コバルトアミジネート化合物、コバルトセン化合物、コバルトジエニル錯体、コバルトニトロシル錯体、並びにこれらの誘導体及び組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。」) エ 「 [図:0001430757000001.jpg] [図:0001430757000002.jpg] 」 (2) 引用発明 上記(1)エのFIG.2(図2)からは、マイクロ電子デバイス200において、誘電体層210が基板205上にあること、及び、導電性充填材料240が第2層235上にあることが見て取れる。 そして、上記(1)イの記載によると、引用文献1にはFIG.2(図2)についての次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。) 「基板205と誘電体層210とを有するマイクロ電子デバイス200であって、 誘電体層210は、第1層230によって少なくとも部分的に覆われた側壁215及びトレンチ底部220を有し、 第1層230は、TaNと、Ru、Cu、Co、Mn、Al、Mg、Nb、Ti又はVなどの1つ又は複数のドーパントとを含むバリア層とすることができ(段落0034)、 第2層235は、第1層230上に配置され、Ru及びCoのうちの1つ又は複数を含み得(段落0035)、 導電性充填材料240は、側壁215及びトレンチ底部220によって画定されるトレンチの残りの部分に堆積され(段落0036)、 導電性材料240は、第2層235上に直接堆積され(段落0036)、 誘電体層210は、基板205上にあり、導電性充填材料240が第2層235上にある(図2)、 マイクロ電子デバイス200。」 2 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1) 本願発明と引用発明とは、いずれも「マイクロ電子デバイス」に係る発明である点で共通する。 (2) 引用発明の「誘電体層210」は、「第1層230によって少なくとも部分的に覆われた側壁215及びトレンチ底部220」を有するから、図2の態様を踏まえると、側壁215及びトレンチ底部220によって間隙を画定する特徴を含むといえる。 そして、引用発明の「誘電体層210は、基板205上にある」から、引用発明の「誘電体層210」は、「基板上の誘電体層であって、間隙を画定する少なくとも1つの特徴を含む、誘電体層」といえる。 (3) 引用発明の「第1層230」は、誘電体層210を少なくとも部分的に覆い、「TaNと、Ru、Cu、Co、Mn、Al、Mg、Nb、Ti又はVなどの1つ又は複数のドーパントとを含むバリア層とする」ことができる。 そうすると、引用発明の「第1層230」は、本願発明の「前記誘電体層上に、TaN、ドープされたTaN、MnN、およびドープされたMnNからなる群から選択されるバリア層」に相当する。 (4) 引用発明の「第2層235」は、単一の層であり、「第1層230上に配置され」、また、Ru及びCoを含む。 そして、引用発明の「第2層235」は、バリア層とすることができる第1層230上に配置され、また、「導電性材料240は、第2層235上に直接堆積され」ることから、引用発明の「第2層235」は、ライナ膜として機能するといえる。 そうすると、引用発明の「第2層235」は、本願発明の「バリア層上に2つの金属の合金を含む単一層ライナ膜であって、 前記2つの金属は、第1の金属M1と第2の金属M2とからなり、M1がルテニウム(Ru)であり、M2がコバルト(Co)である;M1がルテニウム(Ru)であり、M2がタングステン(W)である;M1がルテニウム(Ru)であり、M2がモリブデン(Mo)であることからなる群から選択される、単一層ライナ膜」に相当する。 (5) 引用発明の「導電性充填材料240」は、「第2層235上に直接堆積され」ているから、「前記単一層ライナ膜上の間隙充填金属」といえる。 (6) 一致点・相違点 以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは次の点で一致し、相違する。 ア 一致点 「基板上の誘電体層であって、間隙を画定する少なくとも1つの特徴を含む、誘電体層と、 前記誘電体層上に、TaN、ドープされたTaN、MnN、およびドープされたMnNからなる群から選択されるバリア層と、 バリア層上に2つの金属の合金を含む単一層ライナ膜であって、 前記2つの金属は、第1の金属M1と第2の金属M2とからなり、M1がルテニウム(Ru)であり、M2がコバルト(Co)である;M1がルテニウム(Ru)であり、M2がタングステン(W)である;M1がルテニウム(Ru)であり、M2がモリブデン(Mo)であることからなる群から選択される、単一層ライナ膜と、 前記単一層ライナ膜上の間隙充填金属と、 を備える、 マイクロ電子デバイス。」 イ 相違点 単一層ライナ膜について、本願発明は、「10オングストロームから20オングストロームの範囲の厚さを有」し、「前記バリア層と前記間隙充填金属との間に界面接着性を提供する」ことを特定しているのに対し、引用発明の第2層235は、どのような厚さを有しているのか不明であり、第1層230と導電性充填材料240との間に界面接着性を提供することについて特定がない点。 3 相違点についての判断 (1) 界面接着性について 上記1(1)アの段落0027には、「図1Bの導電性充填材料140はバリア層130と直接接触して示されているが、接着層又はシード層などの中間層が導電性充填材料140とバリア層130との間にあってもよい。1つ又は複数の実施形態によれば、マイクロ電子デバイスは、Ru及びCoのうちの1つ又は複数を含む接着層をさらに含む。Ru及び/又はCoに加えて、接着層は、Mn、Al、Mg、Cr、Nb、Ti又はVなどの1つ又は複数のドーパントを含むことができる。いくつかの実施形態では、接着層は、Ru及びMnを含む。他の実施形態では、接着層は、Co及びMnを含む。」(下線は当審が付加した。)との記載がある。 当該記載によれば、引用文献1には、「マイクロ電子デバイス」において、「バリア層」と「導電性充填材料」との間に「接着層」を設けることが開示されている。 そして、引用発明の「第2層235」は、「Ru及びCoのうちの1つ又は複数を含み得」るものであり、導電性充填材料240と第1層230との間にあるところ、上記1(1)イの段落0035には、第2層235について「第2層は、Mn、Al、Mg、Cr、Nb、Ti又はVなどの1つまたは複数のドーパントをさらに含むことができる」と記載されているから、引用発明の「第2層235」は、段落0027に記載された接着層と同じく、第1層230と導電性充填材料240との間に界面接着性を提供する機能を有するといえる。 したがって、相違点の第1層230と導電性充填材料240との間に界面接着性を提供する部分は、本質的な相違ではない。 (2) 厚さについて 引用発明が属する「マイクロ電子デバイス」の技術分野において、「マイクロ電子デバイス」を構成する各要素を小さくしたり薄くしたりして微細化することは周知の技術課題である。 そうすると、引用発明において、第2層235についても、より薄く構成しようとする動機付けは存在するから、第2層235を「10オングストロームから20オングストロームの範囲の厚さ」とすることは、導電性充填材料240と第1層230との接着性、導電性充填材料240の堆積具合、バリア特性等を考慮して、当業者が適宜決定し得る事項といえる。 また、上記1(1)ウの段落0047には、「第2層は、CVD、PVD、ALD、及びPEALDを含む任意の適切な堆積プロセスによって堆積させることができる。」と記載されているように、本願明細書の段落0018、0027、0042に例示された堆積プロセスと同じ堆積プロセスが記載されているから、引用発明の第2層235について、「10オングストロームから20オングストロームの範囲の厚さを有」するように堆積することについて、製法上の阻害要因もない。 したがって、引用発明の第2層235について、「10オングストロームから20オングストロームの範囲の厚さを有」するように構成することは、当業者が容易に想到し得る事項といえる。 (3) 小括 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 第5 請求人の主張について 請求人は、審判請求書6ページ22~7ページ16行において、「請求項9に係る発明と引用文献1に記載の発明とを対比すると、請求項9に係る発明の「10オングストロームから20オングストロームの範囲の厚さを有し、バリア層上に2つの金属の合金を含む単一層ライナ膜」を備えているのに対して、引用文献1に記載の発明の各層の厚さは特定されていない点で少なくとも相違する(以下、「相違点2」という)。・・・ 上記相違点1及び2について検討すると、本願の当初明細書には「5nmノードにおけるバリア層およびライナの典型的な厚さは、約45Å程度である。バリア/ライナ層が厚くなると、金属間隙充填のためのスペースが少なくなり、抵抗率を増加させる傾向がある。金属/誘電体と金属との接着性および間隙充填中の充填金属の移動度を向上させるための現在の手法は、単一材料の膜厚を増加させることであり、この手法は、単一材料固有の特性および厚さによって制限される。」(段落[0003])、「有利には、極薄の(例えば、20オングストローム以下の厚さを有する)1つまたは複数の実施形態による2金属ライナ膜は、バリア層と間隙充填金属などの2つの金属間のより良好な界面接着性および移動度を提供する。」(段落[0019])などと記載されているように、金属/誘電体と金属との接着性および間隙充填中の充填金属の移動度を向上させるために、極薄の(例えば、20オングストローム以下の厚さを有する)2金属ライナ膜は有利であることから、当業者であれば、本願発明の上記特徴に含まれる数値範囲に臨界的意義があることは理解できると思料する。 したがって、本願発明は、引用文献1に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものではない。」と主張する。 しかしながら、上記第4の2(4)のとおり、引用発明の「第2層235」は、Ru及びCoを含むものであり、同じ金属の組み合わせを含む本願発明と同様に、第1層230と導電性充填材料240との間のより良好な界面接着性、及び、導電性充填材料240の移動度を提供し得るものである。 そして、上記第4の3(2)のとおり、引用発明の第2層235の厚さを薄く構成しようとすることについては、周知の技術課題から動機付けがあり、厚さの具体的な数値範囲については、導電性充填材料240と第1層230との接着性、導電性充填材料240の堆積具合、バリア特性等を考慮して、当業者が適宜決定し得る事項である。 また、本願の当初明細書には、請求人も主張するように、「有利には、極薄の(例えば、20オングストローム以下の厚さを有する)1つまたは複数の実施形態による2金属ライナ膜は、バリア層と間隙充填金属などの2つの金属間のより良好な界面接着性および移動度を提供する。・・・1つまたは複数の実施形態による2金属ライナ膜は、典型的には20オングストローム超~最大30オングストロームである現在のライナよりも薄い 。」(段落0019)との記載があり、当該記載によれば、本願発明の「10オングストロームから20オングストロームの範囲の厚さ」とは、典型的な現在のライナよりも多少薄くした程度のものであると認められるから、数値範囲に臨界的意義があるとはいえない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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