特許拒絶査定不服審判
2019-004905
ソフトハンドオーバにおける機能強化されたアップリンク動作
- 審判番号
- 2019-004905
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-229123外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年04月12日
- 審決日
- 2021年01月21日
- 公報発行日
- 2021年07月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シグナル トラスト フォー ワイヤレス イノベーション
- 【請求人代理人】長門 侃二
- 分類
- P18 .121-WZ (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-229123「ソフトハンドオーバにおける機能強化されたアップリンク動作」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月16日出願公開,特開2017- 38414〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2004年(平成16年)8月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2003年8月25日 アメリカ合衆国(US),2003年10月1日 アメリカ合衆国(US),2003年10月3日 アメリカ合衆国(US),2003年11月14日 アメリカ合衆国(US),2004年7月2日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とした特願2006-524806号の一部を,平成19年9月20日に新たな特許出願とした特願2007-244349号の一部を,平成23年3月22日に新たな特許出願とした特願2011-063039号の一部を,平成25年6月5日に新たな特許出願とした特願2013-119218号の一部を,平成26年5月13日に新たな特許出願とした特願2014-099555号の一部を,平成27年6月17日に新たな特許出願とした特願2015-121962号の一部を,平成28年11月25日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 2月 2日 :手続補正書及び上申書の提出
平成30年 1月26日付け:拒絶理由通知書
平成30年 7月 2日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年12月 3日付け:拒絶査定
平成31年 4月12日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 2年 4月28日付け:当審拒絶理由通知書
令和 2年 9月14日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし34に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1ないし34に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
無線送受信ユニット(WTRU)であって、
無線送受信機と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサがソフターハンドオーバ中の前記WTRUに、
前記無線送受信機を用いて、プライマリセル及び非プライマリセルを介して通信させ、
前記プライマリセルを介し、かつ前記非プライマリセルを介さずに前記WTRUによって受信され、前記非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別するメッセージを処理させ、
前記無線送受信機を用いて、前記識別されるダウンリンク共有チャネルを通じて情報を受信させており、
前記プライマリセル及び前記非プライマリセルの両方は、1つのノードBにより制御される、
WTRU。」
第3 拒絶の理由
令和2年4月28日付けで当審が通知した拒絶理由のうち,理由3の概要は「この出願の請求項1ないし34に係る発明は、以下の引用例1に記載された発明及び技術常識に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
引用例1 特開2000-217139号公報
第4 引用例の記載,引用発明及び技術常識
1 引用例1の記載
当審拒絶理由(令和2年4月28日付け)で引用され,本願優先日前に公開された引用例1(特開2000-217139号公報)には,図面とともに以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)
(1)「【0002】
【従来の技術】CDMA方式移動通信システムにおいて、ソフトハンドオフと呼ばれるハンドオフ方式が実用化されている。ソフトハンドオフについては米国特許5,267,261号明細書(1992年3月5日出願、"Mobile Station Assisted Soft Handoff In A CDMA Cellular Communications System")に記載されている。
【0003】ソフトハンドオフとは通信の無瞬断、及びセル境界におけるセルダイバーシチ効果という特性を有するハンドオフ方法である。ソフトハンドオフはCDMA方式は複数の無線回線の同時受信が可能という特性を利用して実現される。具体的には、上り回線においては無線端末が送信した信号を複数の無線基地局で受信し、受信信号を基地局制御装置において選択又は合成することによって上記特性が実現される。一方、下り回線においては、複数の無線基地局から単一の無線端末に対して同一情報に異なる拡散を施した信号を同時に送信し、無線端末が各信号を同時に受信し逆拡散して同一情報を取り出した後、取り出した情報を選択又は合成することによって上記特性が実現される。」
(2)「【0023】
【発明の実施の形態】1. 無線通信システムの基本構成
図2に本発明に係わる無線通信システムの構成図を示す。この図では一例として、CDMA方式セルラー移動通信システムの構成を示している。
【0024】サービスエリア206を有する無線基地局203は無線回線を介してサービスエリア206内に位置する無線端末201と通信している。又、サービスエリア207を有する無線基地局101及びサービスエリア208を有する無線基地局102は両サービスエリアの共通地域に存在する無線端末103と同時に通信している。又、無線基地局203は基地局制御装置209と、無線基地局101及び102は基地局制御装置210と、有線又は無線の通信回線を介して接続されている。
【0025】基地局制御装置209及び210は通信回線を介して交換機211と接続されている。基地局制御装置は接続されている複数の無線基地局を制御し、無線インタフェースの終端やハンドオフの制御等を行う。」
(3)「【0039】3.2 無線端末受信系
図5は無線端末受信系の実施例をブロック図の形態で表したものである。アンテナ501は送受共用であり、無線基地局からの送信信号をデュプレクサ502を介してRFユニット503に供給すると同時に、無線端末送信系から供給される信号を送信する。デュプレクサ502はアンテナ501を送受に共用する。RFユニット503は、受信信号に対し増幅、IF周波数への周波数変換、IF周波数帯域でのフィルタリング、及びA/D変換を順に施す。RFユニット503の出力は逆拡散器504に供給される。逆拡散器504は受信信号に対しタイミング調整を行った後、PN符号及び直交符号で相関を取り合成する機能を有する。逆拡散器504の詳細な機能については後で図6を用いて説明する。逆拡散器504の出力はデインタリーバ505に入力される。デインタリーバ505は無線基地局チャネルエレメント305のインタリーバ402に対応しており、インタリーバ402で並び替えられた信号を元の順に並べ直す。復号器506は畳み込み符号化器401と対応しており、復号化によって元の送信情報を取り出す。制御プロセッサ507は以上の処理を統括し制御する。」
(4)「【0058】4.1 ハンドオフ状態への移行
・・・(中略)・・・
【0063】無線基地局102は、無線端末103の送信信号を基地局制御装置からの情報を元に探索し(804)、捕捉成功後基地局制御装置210に対して上り回線捕捉成功を通知する(805)。この段階で状態b)に移行する。図10に示されるように、状態b)は上り回線のみ両無線基地局に受信されている。基地局制御装置において両無線基地局から供給される信号を最大比合成又は選択合成することにより、上り回線はセルダイバーシチ状態となる。これ以降、上り回線に関してはハンドオフが終了するまでセルダイバーシチ状態を保つ。
【0064】基地局制御装置210は無線基地局102から上り回線捕捉成功を通知されると、無線基地局102に新たな直交符号を割り当て、同時にスイッチの設定を切り替えることによって、部分チャネル1の送信を開始するよう命令信号を送信する(806)。また、基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する。
【0065】指示を受けた無線基地局102は部分チャネル1(1105)のみ送信を開始する(807)。これは、図13に示されるように、無線基地局102の直交符号拡散器108に基地局制御装置210から新たに供給された直交符号OC21を割り当て、同時に直交符号を割り当てた直交符号拡散器108の出力に対応するスイッチ112の設定のみオンに切り替えることにより実現される。この段階で状態c)に移行する。図10に示されるように、無線端末103に向けて信号1005の送信が開始される。また、指示を受けた無線端末103は無線基地局102が送信する部分チャネル1の受信を開始する。これは、現在レイク合成に利用している全復調エレメントのうち、もっとも受信強度が弱い復調エレメントに信号探索エレメントを用いて得た無線基地局102のオフセットを割り当て、同時にその復調エレメントの出力を無線基地局102に割り当てられた直交符号で逆拡散し、第二シンボル合成器において両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成した後、マルチプレクサで多重化することによって実現される。」
(5)図2として以下の図が記載されている。
(6)図5として以下の図が記載されている。
(7)図10として以下の図が記載されている。
2 引用発明
(1)上記「1」の「(2)」には「この図では一例として、CDMA方式セルラー移動通信システムの構成を示している。・・・(中略)・・・サービスエリア207を有する無線基地局101及びサービスエリア208を有する無線基地局102は両サービスエリアの共通地域に存在する無線端末103と同時に通信している。」と記載されていることから,引用例1には「CDMA方式セルラー移動通信システムにおける無線端末」が記載されているといえる。
(2)上記「1」の「(3)」には「無線端末受信系」として,「アンテナ501は送受共用であり、無線基地局からの送信信号をデュプレクサ502を介してRFユニット503に供給すると同時に、無線端末送信系から供給される信号を送信する。デュプレクサ502はアンテナ501を送受に共用する。RFユニット503は、受信信号に対し増幅、IF周波数への周波数変換、IF周波数帯域でのフィルタリング、及びA/D変換を順に施す。RFユニット503の出力は逆拡散器504に供給される。逆拡散器504は受信信号に対しタイミング調整を行った後、PN符号及び直交符号で相関を取り合成する機能を有する。」,「逆拡散器504の出力はデインタリーバ505に入力される。デインタリーバ505は無線基地局チャネルエレメント305のインタリーバ402に対応しており、インタリーバ402で並び替えられた信号を元の順に並べ直す。復号器506は畳み込み符号化器401と対応しており、復号化によって元の送信情報を取り出す。制御プロセッサ507は以上の処理を統括し制御する。」との記載がある。
ここで,当該記載における「無線端末受信系」は「無線端末」が備えるものであることは明らかであるから,上記記載から,引用例1の「無線端末」は「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すためのアンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ,及び復号器を備え,さらに各機器の処理を制御する制御プロセッサを備える」ものといえる。
また,上記「1」の「(3)」には「図5は無線端末受信系の実施例をブロック図の形態で表したものである。アンテナ501は送受共用であり、無線基地局からの送信信号をデュプレクサ502を介してRFユニット503に供給すると同時に、無線端末送信系から供給される信号を送信する。」との記載があり,上記「1」の(6)の図5には,デュプレクサ502に加入者無線局送信系より信号が供給されることが記載されている。ここで、図5は「無線端末受信系」を表したものであり,そこに記載された「加入者無線局送信系」が,上記「1」の「(3)」に記載された「無線端末送信系」と同じものを表していることは,デュプレクサ502の機能や入力関係を考慮すれば明らかである。そして,当該「無線端末送信系」は無線端末が備えている構成であることは明らかである。加えて,無線端末送信系が,図5に記載された無線端末受信系の各機器に対する逆処理を行う機器(符号器や拡散器等)を備えていることも自明である。してみれば,引用例1の「無線端末」が「無線端末送信系の機器を備えている」ことは明らかである。
以上のことを考慮すれば,引用例1の「無線端末」は「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すためのアンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ,及び復号器と,各機器の処理を制御する制御プロセッサと,無線送信系の機器を備える」ものといえる。
(3)上記「1」の「(4)」の「ハンドオフ状態への移行」には「無線局制御装置210は,無線基地局101を介して無線端末103に・・・(中略)・・・無線基地局102が送信する部分チャネル1受信するように指示する。」,「指示を受けた無線端末103は無線基地局102が送信する部分チャネル1の受信を開始する。これは・・・(中略)・・・第二シンボル合成器において両無線基地局から送信されてきた部分チャネル1を合成した後、マルチプレクサで多重化することによって実現される。」との記載がある。
ここで,当該記載における「両無線基地局」とは,上記「1」の「(5)」及び上記「1」の「(7)」の「図10」の「c)-e)」に示されるように「無線基地局101」と「無線基地局102」を表していることは明らかである。してみれば,引用例1の「無線端末」は,「無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行う」ものといえる。
(4)上記「1」の「(4)」の「ハンドオフ状態への移行」には「基地局制御装置210は,・・・(中略)・・・無線基地局102に新たな直交符号を割り当て、同時にスイッチの設定を切り替えることによって、部分チャネル1の送信を開始するよう命令信号を送信する(806)。」,「基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する。」との記載がある。
当該記載事項によれば,引用例1の「基地局制御装置」は,無線基地局101を介して無線端末に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するよう指示するものである。言い換えれば,引用例1の「無線端末」は,「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示される」ものといえる。
(5)上記「1」の「(4)」の「ハンドオフ状態への移行」には「基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する。」,及び「無線端末103に向けて信号1005の送信が開始される。また、指示を受けた無線端末103は無線基地局102が送信する部分チャネル1の受信を開始する。」との記載があるから,引用例1の「無線端末」は,「無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信する」ものといえる。
(6)上記「1」の「(4)」は「ハンドオフ状態への移行」とのタイトルで説明されており,その中では「基地局制御装置210は、無線基地局101を介して無線端末103に無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を送信し、無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示する。」,「指示を受けた無線端末103は無線基地局102が送信する部分チャネル1の受信を開始する。」と記載されているように,実際にハンドオフ中に行われる動作が記載されている。してみれば,上記「1」の「(4)」に記載された動作は,ハンドオフ中に行われる動作であるといえ,同様に,上記「(3)」ないし「(5)」の各動作もハンドオフ中に行われる動作であるといえる。
(7)上記「(3)」で説示したとおり,ハンドオフ中,引用例1の「無線端末」は,無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行うものである。ここで,上記「1」の「(1)」に「ソフトハンドオフはCDMA方式は複数の無線回線の同時受信が可能という特性を利用して実現される。具体的には、・・・(中略)・・・下り回線においては、複数の無線基地局から単一の無線端末に対して同一情報に異なる拡散を施した信号を同時に送信し、無線端末が各信号を同時に受信し逆拡散して同一情報を取り出した後、取り出した情報を選択又は合成することによって上記特性が実現される。」と記載されているように,無線端末が複数の無線基地局から送信された各信号を同時に受信するようなハンドオフを,ソフトハンドオフということは明らかである。してみれば,上記「1」の「(4)」に記載された「ハンドオフ」とは「ソフトハンドオフ」を表していることは明らかである。
以上のことを考慮すれば,上記「(3)」ないし「(6)」で説示した「無線端末」の動作は「ソフトハンドオフ中に」行われる動作といえる。
したがって,上記「(1)」ないし「(7)」を総合すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 CDMA方式セルラー移動通信システムにおける無線端末であって,
無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すためのアンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器と,
前記各機器の処理を制御する制御プロセッサと,
無線送信系の機器を備え,
ソフトハンドオフ中に,
無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行い,
無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示され,
無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信する
無線端末。」
3 技術常識1
(1)原査定(平成30年12月3日付け拒絶査定)で引用され,本願優先日前に公開された特開2003-501974号公報(以下「周知例1」という。なお,原査定時は「引用文献3」として引用された。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)
ア 「【0009】
最初に図1を参照すると、ここにはセルラ通信ネットワークの3つのセル2が示されている。各セル2は、それぞれの基地トランシーバ局(BTS)4によってサービスを提供される。基地局はCDMAシステムではノードBと呼ばれることがある。各基地トランシーバ局は、所与の基地トランシーバ局4に関連付けられたセル内に位置する移動局6へ信号を送信し、かつそこから信号を受信するように構成される。同様に、各移動局6は、それぞれの基地トランシーバ局4へ信号を送信し、かつそこから信号を受信することができる。」
イ 「【0023】
接続モード32時の主要な状態は、セル接続状態34およびUTRAN登録エリア(URA)接続状態である。1つの無線ネットワーク制御装置がサービス提供無線ネットワーク制御装置として働き、移動局と当該サービス提供無線ネットワーク制御装置との間に無線資源制御接続が確立される。移動局の位置がセルレベルで知られると、移動局はセル接続状態になる。無線資源制御接続の変更は、ハンドオーバ手続きによって処理される。この状態で、無線リンクは、様々なチャネルを使用することができる。
【0024】
1.専用チャネル(DCH):このチャネルでは、拡散符号が移動局に割り当てられ、その移動局単独で使用される。
2.専用共有チャネル(DSCH):このチャネルでは、拡散符号が多数の移動局の間で共用される。無線チャネルはパケットトラフィック用に最適化される。
3.ダウンリンクの共通チャネルおよびアップリンクのランダムアクセスチャネル:これらは共有チャネルであり、短いパケットに使用するのに適している。」
(2)本願優先日前に公開された国際公開第03/049481号(以下「周知例2」という。)には,以下の事項が記載されている。(なお,下線は当審で付与した。)
ア 「In a WCDMA based system the applicable transport channels for packet data transfer are Dedicated Transport channel (DCH) in uplink and downlink direction, Random Access Channel (RACH) in uplink direction, Forward Access Channel(FACH) in downlink direction, Common Packet Channel (CPCH) in uplink direction, and Downlink Shared Channel (DSCH) in downlink direction. 」(第3頁第28行ないし第35行)
(当審仮訳:WCDMAベースのシステムでは、パケットデータ転送に適用できる搬送チャンネルは、アップリンク及びダウンリンク方向の専用搬送チャンネル(DCH)、アップリンク方向のランダムアクセスチャンネル(RACH)、ダウンリンク方向の順方向アクセスチャンネル(FACH)、アップリンク方向の共通パケットチャンネル(CPCH)、及びダウンリンク方向のダウンリンク共有チャンネル(DSCH)である。)
イ 「 Figure 2 illustrates a radio resource management system for packet switched data in a WCDMA radio communication system comprising a dedicated transport channel DCH1 and shared and/or common transport channels SCH1 and SCH2. The radio communication system illustrated in Figure 2 is a WCDMA-based system, thus the dedicated channel is a DCH-channel and the shared and common channels are RACH-, FACH-, CPCH- and/or DSCH-channels. 」(第12頁第30行ないし第13頁第1行)
(当審仮訳:図2は、専用の搬送チャンネルDCH1と、共有及び/又は共通の搬送チャンネルSCH1及びSCH2とを備えたWCDMA無線通信システムにおいてパケット交換データに対し無線リソースを管理するシステムを示す。図2に示された無線通信システムは、WCDMAベースのシステムであり、従って、専用チャンネルは、DCHチャンネルであり、そして共有及び共通のチャンネルは、RACH、FACH、CPCH及び/又はDSCHチャンネルである。)
上記「(1)」ないし「(2)」に示されるように,以下の点は技術常識(以下「技術常識1」という。)であると認める。
「CDMAシステムでは,ダウンリンク共用チャネルを使用する。」
4 技術常識2
当審拒絶理由(令和2年4月28日付け)で引用され,本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,3GPP,3rd Generation Partnership Project;Technical Specification Group Radio Access Network;Radio resource management strategies(当審仮訳:無線リソース管理戦略)(Release5),3GPP TR 25.922 V5.0.0(2002-03),2002.03.19掲載,URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/25_series/25.922/25922-500.zipには,以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)
(1)「5.1.4 Soft Handover
5.1.4.1 Soft Handover Parameters and Definitions
Soft Handover is a handover in which the mobile station starts communication with a new Node-B on a same carrier frequency, or sector of the same site (softer handover), performing utmost a change of code.」
(当審仮訳:5.1.4 ソフトハンドオーバ
5.1.4.1 ソフトハンドオーバのパラメータと定義
ソフトハンドオーバは,コードの変更を最大限に実行することで,移動局が同じキャリア周波数の新しいノードB又は同じサイトの新しいセクタ(ソフターハンドオーバ)と通信を開始するハンドオーバである。)
上記「(1)」によれば,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバを表すものといえる。してみれば,以下の点が技術常識(以下「技術常識2」という。)であると認める。
「ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバである。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明における「無線端末」,「制御プロセッサ」は,本願発明における「無線送受信ユニット(WTRU)」,「プロセッサ」に相当する。
また,引用発明における「アンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」は「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すため」の機器であり,また「無線送信系の機器」は無線基地局への送信を行うための機器であることは自明である。してみれば,引用発明における「アンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」及び「無線送信系の機器」は,本願発明の「無線送受信機」に相当する。
2 引用発明における「制御プロセッサ」は,「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すためのアンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」という「各機器の処理を制御する」ものであるから,「制御プロセッサ」が,前記各機器を備える「無線端末」に,受信に関する動作を行わせているといえる。
また,引用発明における「ソフトハンドオフ」は,ソフトハンドオーバとも呼ばれることは技術常識であるから,引用発明の「ソフトハンドオフ中」は,本願発明の「ソフトハンドオーバ中」に相当する。
以上のことを考慮すれば,引用発明における「ソフトハンドオフ中に」行われる受信に関する動作は,「制御プロセッサ」が「無線端末」に行わせる動作といえるから,本願発明の「プロセッサがソフターハンドオーバ中のWTRUに」行わせる動作とは,「プロセッサがハンドオーバ中のWTRUに」行わせる動作である点で共通するといえる。
3 引用発明における「無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信」は,「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すため」の機器である「アンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」を用いて行われることは明らかであり,また受信は通信に含まれることは技術常識である。よって,引用発明における「無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信」は,本願発明と同様に,「無線送受信機を用いて」行われているといえる。
また,引用発明は「CDMA方式セルラー移動通信システム」に関するものであり,セルラー通信の技術分野においては,無線基地局が無線端末と送信や受信などの通信を行う際は,無線基地局がセルを形成し,当該セルを介して通信を行うことが技術常識である。してみれば,引用発明の「無線基地局101」及び「無線基地局102」も,セルを形成し,当該セルを介して通信を行うものといえる。
そして,引用発明の「無線端末」は「無線基地局101を介して新たに割り当てられた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信する」ものであるから,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するためには,無線基地局101からの受信が必須といえる。つまり,「無線基地局101」が主要な基地局,「無線基地局102」が補助的な基地局となっていることは明らかである。
以上のことを考慮すれば,引用発明における「無線基地局101」は主要な基地局,すなわちプライマリ基地局ということができ,当該「無線基地局101」が通信する際に形成するセルは「プライマリセル」ということができるものといえる。同様に,引用発明における「無線基地局102」は補助的な基地局,すなわち非プライマリ基地局ということができ,当該「無線基地局102」が通信する際に形成するセルは「非プライマリセル」ということができるものといえる。
したがって,引用発明における「無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行」うことは,本願発明における「前記無線送受信機を用いて、プライマリセル及び非プライマリセルを介して通信させ」ることに含まれる。
4 引用発明は「CDMA方式」を利用するものである。CDMA方式においては,直交符号を用いてチャネルを形成することが技術常識であるから,引用発明において「無線端末」が受信する「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」は,当該直交符号を用いて形成されたチャネルを識別する情報といえ,また受信した直交符号を逆拡散器で使用できるような処理が行われることは自明である。そして,引用発明は「無線基地局101を介して新たに割り当てた直交符号を受信」するものであって,直交符号の受信は,無線基地局102を介してなされるものでないことは明らかである。
してみれば,本願発明の「プライマリセルを介し、かつ非プライマリセルを介さずにWTRUによって受信され、前記非プライマリセルのダウンリンク共有チャネルを識別するメッセージを処理させ」ることと,引用発明における「無線基地局101を介して新たに割り当てられた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示され」ることとは,「プライマリセルを介し、かつ非プライマリセルを介さずにWTRUによって受信され、前記非プライマリセルのチャネルを識別する情報を処理させ」る点で共通する。
5 引用発明における「無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信する」ことは,「無線基地局からの送信信号を受信し,元の送信情報を取り出すため」の機器である「アンテナ,RFユニット,逆拡散器,デインタリーバ及び復号器」を用いて行われることは明らかである。また,引用発明における「信号」には情報が含まれていることは自明である。
そして,引用発明は「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示され,無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信する」ものである。ここで,上記「4」で説示したとおり,「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」は,当該直交符号により形成されたチャネルを識別する情報といえるから,引用発明において,受信するように指示された「無線基地局102が送信する部分チャネル1」は,「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」により識別されるチャネルといえる。
以上のことを考慮すれば,本願発明における「無線送受信機を用いて、識別されるダウンリンク共有チャネルを通じて情報を受信させ」ることと,引用発明における「無線基地局101を介して無線基地局102に新たに割り当てた直交符号を受信し,無線基地局102が送信する部分チャネル1を受信するように指示され,無線基地局102が送信する部分チャネル1を通じて信号を受信する」こととは,「無線送受信機を用いて、識別されるチャネルを通じて情報を受信させ」る点で共通する。
したがって,上記1ないし5を総合すれば,本願発明と引用発明は,以下の点で一致し,また相違する。
<一致点>
「 無線送受信ユニット(WTRU)であって、
無線送受信機と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサがハンドオーバ中の前記WTRUに、
前記無線送受信機を用いて、プライマリセル及び非プライマリセルを介して通信させ、
前記プライマリセルを介し、かつ前記非プライマリセルを介さずに前記WTRUによって受信され、前記非プライマリセルのチャネルを識別する情報を処理させ、
前記無線送受信機を用いて、前記識別されるチャネルを通じて情報を受信させる、
WTRU。」
<相違点1>
本願発明におけるハンドオーバが「ソフターハンドオーバ」であり,「プライマリセル及び非プライマリセルの両方は1つのノードBにより制御される」のに対し,引用発明におけるハンドオーバはソフトハンドオフであり,無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1の受信を行うものである点。
<相違点2>
本願発明が「ダウンリンク共有チャネルを識別するメッセージ」を処理し,「前記識別されるダウンリンク共有チャネル」を通じて情報を受信させるのに対し,引用発明は,無線基地局102に割り当てられた直交符号を受信し,部分チャネル1を通じて信号を受信するものであって,当該発明特定事項が特定されていない点。
第6 判断
1 相違点1について
技術常識2として説示したように,ソフターハンドオーバは,ソフトハンドオーバの一種であって,同じサイトの新しいセクタへのハンドオーバであることは技術常識である。ここで,セクタとは,一つの基地局が形成するセルをアンテナの指向性等に基づいて分割したものであり,同じサイトとは同じ基地局を表すことは,当業者にとって自明である。してみれば,引用発明における,ソフトハンドオーバ中の動作を,「ソフトハンドオーバ」の一種である「ソフターハンドオーバ」に適用し,無線基地局101と無線基地局102から送信されてきた部分チャネル1に代えて,同一無線基地局の2つのセクタから送信された部分チャネル1の受信を行うよう構成することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
無線基地局から無線端末に「直交符号」の情報を送受信する際,何らかのメッセージが用いられること,及び受信したメッセージを処理して情報を取り出すことは,例を挙げるまでもなく周知事項といえる。してみれば,引用発明において「無線基地局102に新たに割り当てられた直交符号」がメッセージを用いて送信され,「無線端末」が当該メッセージを受信し,当該メッセージから直交符号を取り出し,逆拡散器で使用できるような処理を行うことは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
また,技術常識1として説示したように,CDMAシステムでは,ダウンリンク共用チャネルを使用してパケットを送信することが技術常識である。引用発明における「部分チャネル1」がどのようなチャネルを用いるかは特定されていないが,引用発明は,上記「第4」の「1」の「(2)」に摘記したように「CDMA方式」を利用するものであるから,信号を受信する際の「部分チャネル1」として,ダウンリンク共用チャネルを用いることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
3 審判請求人の主張について
審判請求人は,令和2年9月14日に提出された意見書の「4.」の「(3)」の「(c)」において「引用文献6には、ソフターハンドオーバなる用語が登場するものの、明細書の段落0005に記載されるような「ソフターハンドオーバは、ソフトハンドオーバの特殊な例であり、WTRUがソフターハンドオーバ状態であるとき、WTRUは、同一ノードBに属する2つ以上のセルに接続され、ソフトハンドオーバと対照的に、ソフターハンドオーバにおいては、最大比合成の有無に関わらず、マクロダイバーシティを、ノードB内で実行すること」が一切開示されていません。審判官殿の指摘通り、本願発明におけるソフターハンドオーバは、ソフトハンドオーバの一種(特殊な例)であり、引用文献1のソフトハンドオフに関する技術が、本願発明におけるソフターハンドオーバに一部該当するかもしれません。しかしながら、引用文献6は、本願発明におけるソフターハンドオーバの特徴(例えば、WTRUがソフターハンドオーバ状態であるとき、WTRUが同一ノードBに属する2つ以上のセルに接続されることや、ソフターハンドオーバにおいて、最大比合成の有無に関わらず、マクロダイバーシティをノードB内で実行すること)について、一切開示していない以上、本願発明におけるソフターハンドオーバをすべて開示しているとはいえないと思料致します。
すなわち、引用文献6は、審判官殿が認定するような「本願発明におけるソフターハンドオーバ」を示す文献ではなく、本願発明のように、2つのセル(プライマリセル及び非プライマリセル)の両方が1つのノードBにより制御されること、及び2つのセル(プライマリセル及び非プライマリセル)を有する単一のノードBと通信するソフターハンドオーバ中のWTRUについて、上記引用文献1及び引用文献5と同様に、開示又は示唆していません。
以上のことから、引用文献1、引用文献5及び引用文献6に係る発明に基づいて、当業者が容易に本願発明を想到することができるとの論理づけをすることはできません。したがって、本願発明は、進歩性を有しています。」と主張している。
しかしながら,上記「1」で検討したとおり,ソフターハンドオーバは,周知例3(令和2年4月28日付け当審拒絶理由における引用文献6)に示されるように,ソフトハンドオーバの一種であって,同じ基地局の新しいセクタへのハンドオーバを表すことが技術常識であり,セクタとは一つの基地局が形成するセルをアンテナの指向性等に基づいて分割したものであり,同じサイトとは同じ基地局を表すことは,当業者にとって自明であることから,引用発明における「ソフトハンドオーバ」中の動作を,「ソフトハンドオーバ」の一種である「ソフターハンドオーバ」に適用することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
ここで,上記主張の中で,請求人は「引用文献6は、本願発明におけるソフターハンドオーバの特徴(例えば、WTRUがソフターハンドオーバ状態であるとき、WTRUが同一ノードBに属する2つ以上のセルに接続されることや、ソフターハンドオーバにおいて、最大比合成の有無に関わらず、マクロダイバーシティをノードB内で実行すること)について、一切開示していない以上、本願発明におけるソフターハンドオーバをすべて開示しているとはいえない」と主張している。しかしながら,「WTRUがソフターハンドオーバ状態であるとき、WTRUが同一ノードBに属する2つ以上のセルに接続されること」は,上記「1」で検討したとおりであり,また,「ソフターハンドオーバにおいて、最大比合成の有無に関わらず、マクロダイバーシティをノードB内で実行すること」は,請求項1の発明特定事項としては記載されていない。よって,その主張を採用することはできない。
よって,審判請求人の上記主張を採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は引用発明及び技術常識に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用例1に記載された発明及び技術常識に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2019-004905