特許拒絶査定不服審判
2019-003648
圧力センサ
- 審判番号
- 2019-003648
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-015965外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年03月18日
- 審決日
- 2019年12月04日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社鷺宮製作所
- 【請求人代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
- 分類
- P18 .113-Z (G01L) / P18 .121-Z (G01L) / P18 .57 -Z (G01L) / P18 .575-Z (G01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-15965号「圧力センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年8月3日出願公開、特開2017-134014号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月29日にされた特許出願であって、平成30年7月27日付けの拒絶理由通知に対し、同年10月2日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月6日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ(原査定の謄本の送達日:同年12月18日)、これに対して、平成31年3月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1~3、5の記載を、それぞれ以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~3、5の記載に補正することを含むものである。
下線は、補正箇所を示す。
なお、請求項4、6~10の記載は本件補正の前後で変更されていない。
(1)本件補正前
「【請求項1】
流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
を備える圧力センサにおいて、
前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、前記支持部材、又は、前記圧力検出素子の一部に係合する複数の凹凸部である前記接着剤層の熱応力低減構造が設けられ、
前記熱応力低減構造は、前記支持部材、又は、前記圧力検出素子の接着端面に設けられた複数の凹部に前記接着剤層が入り込む構造であり、
前記接着剤層の他方の面には、均一な平坦な面が形成される、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
を備える圧力センサにおいて、
前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造が設けられ、
前記熱応力低減構造は、前記支持部材、又は、前記圧力検出素子の接着端面に設けられた溝部により分断された複数の突起部として構成される前記接着剤層の支持部に塗布される複数の接着剤層構造である、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
を備える圧力センサにおいて、
前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造が設けられ、
前記熱応力低減構造は、前記支持部材、又は、前記圧力検出素子に、前記接着剤層が分断され、互いの間に空間が設けられるように形成された複数の接着剤層構造である、
ことを特徴とする圧力センサ。」
「【請求項5】
流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
を備える圧力センサにおいて、
前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造が設けられ、
前記熱応力低減構造は、硬化してゲル状となった接着剤層に、後から、前記圧力検出素子、又は、前記支持部材と接触される構造であることを特徴とする圧力センサ。」
(2)本件補正後
「【請求項1】
流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
を備える圧力センサにおいて、
前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、前記圧力検出素子の一部に係合する複数の凹凸部である前記接着剤層の熱応力低減構造が設けられ、
前記熱応力低減構造は、前記圧力検出素子の接着端面に設けられた複数の凹部に前記接着剤層が入り込む構造であり、
前記接着剤層の他方の面には、均一な平坦な面が形成される、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
を備える圧力センサにおいて、
前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造が設けられ、
前記熱応力低減構造は、前記圧力検出素子の接着端面に設けられた溝部により分断された複数の突起部として構成される前記接着剤層の支持部に塗布される複数の接着剤層構造である、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
を備える圧力センサにおいて、
前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造が設けられ、
前記熱応力低減構造は、前記圧力検出素子に、前記接着剤層が分断され、互いの間に空間が設けられるように形成された複数の接着剤層構造である、
ことを特徴とする圧力センサ。」
「【請求項5】
流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
を備える圧力センサにおいて、
前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造が設けられ、
前記熱応力低減構造は、硬化してゲル状となるか、又は、接着シートである接着剤層に、後から、前記圧力検出素子、又は、前記支持部材と接触される構造であり、
前記熱応力低減構造は、接着前に前記接着剤層に、前記圧力検出素子、又は、前記支持部材と点接触するように接着するような所定の凹凸を形成する構造であることを特徴とする圧力センサ。」
2 本件補正についての当審の判断
(1)補正事項
以下では、本件補正後及び本件補正前を単にそれぞれ「補正後」及び「補正前」ともいう。
本件補正前後の特許請求の範囲を対比すると、請求項5についてする補正は、補正前の請求項5に対して、以下の補正事項1のようにするものであり、請求項1~3についてする補正は、それぞれ補正前の請求項1~3に対して、以下の補正事項2のようにするものである。
(補正事項1)
補正前の請求項5の「硬化してゲル状となった接着剤層」を「硬化してゲル状となるか、又は、接着シートである接着剤層」に変更するとともに、補正前の「前記熱応力低減構造」について、「前記熱応力低減構造は、接着前に前記接着剤層に、前記圧力検出素子、又は、前記支持部材と点接触するように接着するような所定の凹凸を形成する構造であること」との構成を付加する。
(補正事項2)
補正前の請求項1~3の「前記支持部材、又は、前記圧力検出素子」との記載を「前記圧力検出素子」に変更する。
(2)補正の適否
(2-1)補正事項1について
上記補正事項1のうち、「硬化してゲル状となった接着剤層」を「硬化してゲル状となるか、又は、接着シートである接着剤層」に変更する補正は、「接着剤層」について、選択肢を追加するものであり、「硬化してゲル状となった」ものと「接着シートである」ものの中からの選択を可能にするものである。ここで、「接着シートである接着剤層」を選択した場合には、補正前の「硬化してゲル状となった接着剤層」の構成をさらに限定しているとはいえないことが明らかであるから、前記の補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものではない。
また、補正前の「硬化してゲル状となった接着剤層」という発明特定事項は、明確であるといえるから、これを「硬化してゲル状となるか、又は、接着シートである接着剤層」に変更することは、明りょうでない記載の釈明を目的としたものでもない。
さらに、誤記の訂正を目的としたものではない。請求項の削除を目的としたものでもない。
したがって、上記補正事項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。
(2-2)補正事項2について
上記補正事項2は、補正前の請求項1~3の「前記支持部材、又は、前記圧力検出素子」との記載から、「前記支持部材、又は、」を削除して「前記圧力検出素子」に変更するものであるから、補正前の「支持部材」と「圧力検出素子」という2つの選択肢から、「圧力検出素子」に限定するものである。
そして、補正前の請求項1~3に記載された発明と、補正後の請求項1~3に記載される発明とは、それぞれ産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正事項2に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、以下では、補正後における請求項3に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明3」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について検討する。
(2-2-1)本件補正発明3
本件補正発明3は、上記「1 本件補正の概要」の「(2)本件補正後」の【請求項3】において示した次に特定されるとおりのものである。
(記号A~Fについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)
「【請求項3】
A 流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
B 前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
C 前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
D を備える圧力センサにおいて、
E 前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造が設けられ、
F 前記熱応力低減構造は、前記圧力検出素子に、前記接着剤層が分断され、互いの間に空間が設けられるように形成された複数の接着剤層構造である、
D ことを特徴とする圧力センサ。」
(2-2-2)引用発明
原査定の拒絶の理由において引用された特開2014―48072号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0016】
図1は、本発明の圧力センサモジュールの一構成例を模式的に示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
本発明の圧力センサモジュール1A(1)は、半導体基板2と、該半導体基板2に配されたダイアフラム部3及び感圧素子(ゲージ抵抗)としてp型抵抗体R1~R4を有する感圧部4とを備えた圧力センサ素子10が、樹脂からなる実装基板20の一面20a上に、接合樹脂部30を介して接合されてなる。
【0017】~【0018】
(省略)
【0019】
そして本発明の圧力センサモジュール1A(1)は、前記実装基板20の前記一面20a側において、前記接合樹脂部30を介して前記圧力センサ素子10を支持する厚肉領域22と、前記実装基板20の前記一面20a側に開口し、前記ダイアフラム部3と重なる部位を少なくとも通り、前記実装基板20の相対向する2辺を結ぶように設けられた薄肉領域23を有していることを特徴とする。
【0020】
本発明では、実装基板20に薄肉領域23を配することで、薄肉領域23が厚肉領域22よりも空間部5側に撓みやすく、実装される相手部材(実装基板20)との熱膨張係数が異なることで生じる熱応力が感圧部4に伝播することを抑制することができる。これにより構成部材の熱膨張係数の違いから生じる温度ドリフトを低減することができる。その結果、圧力センサモジュール1A(1)は、測定精度が向上したものとなる。空間部5は、撓んだ薄肉領域23が圧力センサ素子10と触れ合うことを防ぐため、薄肉領域23の撓みの影響が、圧力センサ素子10には伝わりにくくなっている。」
「【0034】
図2~図7は、本発明の圧力センサモジュールにおいて、薄肉領域23の位置、形状の例を模式的に示す図である。
例えば図2~図4に示すように、前記薄肉領域23が複数設けられており、該複数の薄肉領域23が、前記ダイアフラム部3と重なる部位において交差していてもよい。この場合、複数の薄肉領域23は、図2及び図3に示すように直交していてもよい。また、図4に示すように直交していなくてもよい。
なお、薄肉領域23の数も限定されるものではなく、図2に示すように同方向に形成される薄肉領域が1本であってもよいし、図3及び図4に示すように、同方向に形成される薄肉領域が複数であってもよい。
このとき、図5に示すように、ダイアフラム部3と重なる部位には接合樹脂部30を塗布せず、ダイアフラム部3と重なる部位以外で接着する。」
「【0043】
本発明は、圧力センサ素子を実装基板上に実装した圧力センサモジュールに適用可能である。このような圧力センサモジュールは、例えば一般工業用計測用、電子血圧計、高度、気圧、水深計測機能付き電子機器、携帯機器、自動車などに用いられる。」
「【図1】
」
「【図3】
」
「【図5】
」
なお、【図3】及び【図5】に記載されている符号「22」により示される部位は、「薄肉領域」であるから、この符号は「23」の誤記である。
上記記載事項及び上記図示内容から、以下の認定事項が導かれる。
ア 【0016】、【0043】、【図1】より、「血圧」や「気圧」を計測する、「半導体基板2と、該半導体基板2に配されたダイアフラム部3及び」「感圧部4とを備えた圧力センサ素子10」
イ 【0019】、【図1】より、「前記圧力センサ素子10を支持する厚肉領域22」を有する「実装基板20」
ウ 【0016】、【図1】より、「圧力センサ素子10」と「実装基板20」を「接合」する「接合樹脂部30」
エ 【図3】より、「圧力センサ素子10」と、「実装基板20」と、「接合樹脂部30」とを備える「圧力センサモジュール」
オ 【0019】、【0034】、【図3】より、「前記実装基板20」が「一面20a側」に「厚肉領域22」と「薄肉領域23」を有しており、「前記薄肉領域23」が、「一面20a側に開口」して「同方向に」「複数設けられ」、「前記ダイアフラム部3と重なる部位において」「直交して」いること
カ 【0034】、【図5】(b)より、「ダイアフラム部3と重なる部位には接合樹脂部30を塗布せず」、「ダイアフラム部3と重なる部位以外」の厚肉領域22に接合樹脂部30が塗布され、薄肉領域23には接合樹脂部30が存在せず、前記実装基板20の前記一面20aに島状に複数点在している前記接合樹脂部30の上面に、圧力センサ素子10の半導体基板2が接することにより、前記圧力センサ素子10が前記実装基板20に接着されること
上記ア~カの認定事項を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(記号a~fは本件補正発明3の分説に対応させて当審で付した。)
[引用発明]
「a 血圧や気圧を計測する、半導体基板2と、該半導体基板2に配されたダイアフラム部3及び感圧部4とを備えた圧力センサ素子10と、
b 前記圧力センサ素子10を支持する厚肉領域22を有する実装基板20と、
c 前記圧力センサ素子10と前記実装基板20を接合する接合樹脂部30と
d を備える圧力センサモジュールにおいて、
e、f 前記実装基板20が一面20a側に前記厚肉領域22と薄肉領域23を有しており、
前記薄肉領域23が、前記一面20a側に開口して同方向に複数設けられ、前記ダイアフラム部3と重なる部位において直交しており、
前記ダイアフラム部3と重なる部位には前記接合樹脂部30を塗布せず、前記ダイアフラム部3と重なる部位以外の前記厚肉領域22に前記接合樹脂部30が塗布され、前記薄肉領域23には前記接合樹脂部30が存在せず、
前記実装基板20の前記一面20aに島状に複数点在している前記接合樹脂部30の上面に、圧力センサ素子10の半導体基板2が接することにより、前記圧力センサ素子10が前記実装基板20に接着される、
d 圧力センサモジュール。」
(2-2-3)対比
本件補正発明3と引用発明とを対比する。
なお、見出しは(a)~(f)とし、本件補正発明3の分説に対応させている。
(a)引用発明の「血圧や気圧」は、本件補正発明3の「流体の圧力」に相当し、引用発明の「血圧や気圧を計測する」「圧力センサ素子10」は、本件補正発明3の「流体の圧力を検出する圧力検出素子」に相当する。
よって、引用発明の構成aは、本件補正発明3の構成Aに相当する。
(b)引用発明の「実装基板20」は、「前記圧力センサ素子10を支持する厚肉領域22を有する」から、本件補正発明3の「前記圧力検出素子を支持する支持部材」に相当する。
よって、引用発明の構成bは、本件補正発明3の構成Bに相当する。
(c)引用発明の「接合樹脂部30」は、「前記圧力センサ素子10と前記実装基板20を接合する」ものであるから、本件補正発明3の「前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤」に相当する。
よって、引用発明の構成cは、本件補正発明3の構成Cに相当する。
(d)引用発明の「圧力センサモジュール」は、本件補正発明3の「圧力センサ」に相当する。
よって、引用発明の構成dは、本件補正発明3の構成Dに相当する。
(e)引用発明の「前記実装基板20の前記一面20aに島状に複数点在している前記接合樹脂部30」は、本件補正発明3の「前記接着剤から構成される接着剤層」に相当する。
また、引用発明の「圧力センサ素子10の半導体基板2が接する」「前記接合樹脂部30の上面」は、本件補正発明3の「接着剤層の少なくとも一方の面」に相当する。
引用発明では、「半導体基板2」が「前記接合樹脂部30の上面」に「接することにより」、「接着される」から、引用発明の「島状に複数点在している前記接合樹脂部30の上面」の「半導体基板2」と「接する」部分は、本件補正発明3の「複数の点在した接着部分」に相当する。
そして、引用発明の「接合樹脂部30」と、本件補正発明3の「接着剤層」とは、いずれもセンサ側との接触面積ができるだけ小さくなるように、複数点在した配置である点で共通し、両者はセンサ側への熱応力の伝播を防ぐ構造として一致するから、引用発明においても、本件補正発明3と同様に、「接合樹脂部30」と「圧力センサ素子10の半導体基板2」との間に発生する熱応力を低減させる効果を奏するといえる。
そうすると、引用発明の「島状に複数点在している前記接合樹脂部30の上面」の「半導体基板2」と「接する」部分は、本件補正発明3の「複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造」に相当する。
よって、引用発明の構成e、fは、本件補正発明3の構成Eに相当する。
(f)引用発明では、「前記厚肉領域22に前記接合樹脂部30が塗布され、前記薄肉領域23には前記接合樹脂部30が存在せず」、「前記薄肉領域23が、前記一面20a側に開口して」いるから、「島状に複数点在している前記接合樹脂部30」は、「薄肉領域23」において「分断され、互いの間に空間が設けられ」ているといえる。
したがって、引用発明の「島状に複数点在している前記接合樹脂部30」は、本件補正発明3の「前記接着剤層が分断され、互いの間に空間が設けられるように形成された複数の接着剤層構造」に相当する。
そして、上記(e)における検討内容を踏まえると、本件補正発明3の構成Fと引用発明の構成e、fとは、「前記熱応力低減構造は、前記接着剤層が分断され、互いの間に空間が設けられるように形成された複数の接着剤層構造である」という点で共通する。
上記(a)~(f)の対比により、本件補正発明3と引用発明とは、
「A 流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
B 前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
C 前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
D を備える圧力センサにおいて、
E 前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造が設けられ、
F’ 前記熱応力低減構造は、前記接着剤層が分断され、互いの間に空間が設けられるように形成された複数の接着剤層構造である、
D 圧力センサ」
である点で一致し、以下の相違点で相違する。
[相違点]
本件補正発明3では、「熱応力低減構造は、圧力検出素子に、」「形成された」ものである(構成F)のに対して、引用発明では、そのように構成されたものであるか明らかではない点。
(2-2-4)判断
上記相違点について検討する。
引用発明の「前記接合樹脂部30の上面」の「半導体基板2」と「接する」部分(本件補正発明3の「熱応力低減構造」に相当。)は、「接合樹脂部30」に属するものであるから、それが、「実装基板20」に形成されたものであるか、「圧力センサ素子10」に形成されたものであるかは、両者の「接合」段階において、「接合樹脂部30」がいずれに「塗布」されたのかという製造プロセスによるのであって、「接合」が完了して「圧力センサモジュール」として完成させた後は、いずれに形成されたものであるかは、単なる見方の問題にすぎない。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点であるとはいえない。
ここで、審判請求書において、請求人は、
「この点については、ご指摘の通りでしたので、同様の記載を有する、独立請求項1乃至3について、「前記支持部材、又は、」の記載を削除し、「前記熱応力低減構造は、前記圧力検出素子の接着端面に設けられた」とする補正を行いました。
このような、支持部材にではなく、圧力検出素子の接着端面に設けられた、熱応力低減構造については、引用文献1に記載も示唆もされておらず、その他の引用文献2、3にも記載も示唆もされておりません。
また、このような特徴を有することにより、容易に圧力検出素子に、熱応力低減構造を設けることができるという、各引用文献1乃至3に記載も示唆もない効果を奏します。
従いまして、補正後の独立請求項である請求項1乃至3については、各引用文献1乃至3から容易に発明できたものではないものと思料いたします。」(下線は、当審が付した。)
と主張している。
しかしながら、本件補正発明3の「熱応力低減構造は、圧力検出素子に、」「形成された」ものであるとしても、その実体は、「複数の接着剤層構造」であって、「圧力検出素子」自体に熱応力を低減する構造が作り込まれているものではない。
仮に、本件補正発明3は、「圧力検出素子」の表面(接着端面)に「複数の接着剤層構造」を塗布して「形成」することを意味するのであるとしても、引用発明において、「実装基板20」の「厚肉領域22」に「接合樹脂部30」を塗布する代わりに、「圧力センサ素子10」の「半導体基板2」表面の対応する箇所に「接合樹脂部30」を島状に複数点在するように塗布することは、当業者ならば格別の困難性はないから、いずれにしても、上記相違点は格別のものではなく、また、本件補正発明3の奏する効果についても、引用発明から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
よって、本件補正発明3は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
また、請求人の上記主張を考慮しても、本件補正発明3は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 小括
以上のとおりであるから、上記補正事項1に係る本件補正については、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもなく、また、上記補正事項2に係る本件補正については、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明10」という。)は、平成30年10月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、本願発明2及び3は次のとおりである。
(本件補正発明3と同じ発明特定事項については、同じ記号A~Eをそれぞれ用いており、異なる発明特定事項については、記号F2、F3をそれぞれ用いている。)
[本願発明2]
「【請求項2】
A 流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
B 前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
C 前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
D を備える圧力センサにおいて、
E 前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造が設けられ、
F2 前記熱応力低減構造は、前記支持部材、又は、前記圧力検出素子の接着端面に設けられた溝部により分断された複数の突起部として構成される前記接着剤層の支持部に塗布される複数の接着剤層構造である、
D ことを特徴とする圧力センサ。」
[本願発明3]
「【請求項3】
A 流体の圧力を検出する圧力検出素子と、
B 前記圧力検出素子を支持する支持部材と、
C 前記圧力検出素子と前記支持部材を接着して固定する接着剤と
D を備える圧力センサにおいて、
E 前記接着剤から構成される接着剤層の少なくとも一方の面に、複数の点在した接着部分を有する熱応力低減構造が設けられ、
F3 前記熱応力低減構造は、前記支持部材、又は、前記圧力検出素子に、前記接着剤層が分断され、互いの間に空間が設けられるように形成された複数の接着剤層構造である、
D ことを特徴とする圧力センサ。」
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明2及び3についての理由は、
理由1
本願発明2及び3は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2
本願発明2及び3は、下記の引用文献1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2014-048072号公報
引用文献2.特開2010-181386号公報
引用文献3.特開2003-042883号公報
というものである。
3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1は、「第2 本件補正についての補正の却下の決定」の「[理由]」「2 本件補正についての当審の判断」「(2)補正の適否」「(2-2)補正事項2について」「(2-2-2)引用発明」において引用した引用文献1であり、上記引用文献1には、上記「(2-2-2)引用発明」において認定したとおりの「引用発明」が記載されていると認められる。
4 対比・判断
(1)本願発明3について
本願発明3は、本件補正発明3の構成Fについて、「前記熱応力低減構造は、前記支持部材、又は、前記圧力検出素子に、前記接着剤層が分断され、互いの間に空間が設けられるように形成された複数の接着剤層構造である、」(構成F3)としたものである。
そして、「前記支持部材、又は、前記圧力検出素子」という2つの選択肢のうち、「前記圧力検出素子」を選択して発明特定事項とした本件補正発明3が、「第2 本件補正についての補正の却下の決定」の「[理由]」「2 本件補正についての当審の判断」「(2)補正の適否」「(2-2)補正事項2について」「(2-2-4)判断」において述べたとおり、引用発明であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明3も、引用発明であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本願発明2について
本願発明2と引用発明とを対比すると、
(f2)引用発明の「前記実装基板20が一面20a側」に「開口して同方向に複数設けられ」た「前記薄肉領域23」は、本願発明2の「前記支持部材」「の接着端面に設けられた溝部」に相当し、引用発明の「厚肉領域22」は、本願発明2の「前記支持部材」「の接着端面に設けられた溝部により分断された複数の突起部」に相当する。
また、引用発明の「前記厚肉領域22」に「塗布され」た「島状に複数点在している前記接合樹脂部30」は、本願発明2の「前記接着剤層の支持部に塗布される複数の接着剤層構造」に相当する。
そうすると、引用発明の構成e、fは、本願発明2の構成F2に相当する。
「第2 本件補正についての補正の却下の決定」の「[理由]」「2 本件補正についての当審の判断」「(2)補正の適否」「(2-2)補正事項2について」「(2-2-3)対比」において検討した内容((a)~(e))を踏まえると、本願発明2の構成はすべて引用発明に含まれるから、本願発明2は、引用発明である。
また、本願発明2は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上より、本願発明2及び3は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明2及び3は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-003648