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特許拒絶査定不服審判

2024-001198

触覚センサ及び触覚センサの動作方法

審判番号
2024-001198
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-576860
請求日
2024年01月24日
審決日
2025年03月28日
公報発行日
2025年09月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】アルベルト-ルドビクス-ウニベルジテート フライブルク
  • 【請求人代理人】山本 尚
  • 【請求人代理人】稲山 朋宏
審判長/審判官
  • 審判長 濱野 隆
  • 審判官 道祖土 新吾
  • 審判官 喜々津 徳胤
分類
P18 .121-Z (G01L) / P18 .575-Z (G01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-576860「触覚センサ及び触覚センサの動作方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年12月30日国際公開、WO2020/260205、令和4年12月1日国内公表、特表2022-550234号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)6月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年6月24日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。以下、2019年(令和元年)6月24日を「優先日」という。 令和4年 2月24日 :翻訳文の提出 令和5年 2月13日付け:拒絶理由通知書 同年 5月16日 :意見書、補正書の提出 同月31日付け:拒絶理由通知書 同年 9月 4日 :意見書、補正書の提出 同年 9月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月26日 :原査定の謄本の送達) 令和6年 1月24日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年1月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年1月24日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年1月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年9月4日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「 【請求項1】 複数の応力センサ(100)が分散配置されたチップ(10)と、 少なくとも1つの接触体(200)と、を備え、 前記複数の応力センサ(100)は、前記接触体(200)の検出面(200a)に印加された負荷パターンを検出するように設定され、 前記負荷パターンは、前記チップ(10)内の応力分布を含み、前記複数の応力センサ(100)は、前記チップ(10)内の前記応力分布を測定し、 前記チップ(10)は、分類スキーム(111)を含むメモリ(110)を備え、 前記分類スキーム(111)は、前記複数の応力センサ(100)の出力値(101)のセットを、予め定義された複数の負荷パターンのクラスの何れかに割り当てることを特徴とする触覚センサ(1)。」 (2) 本件補正後 「 【請求項1】 複数の応力センサ(100)が分散配置されたチップ(10)と、 少なくとも1つの接触体(200)と、を備え、 前記複数の応力センサ(100)は、前記接触体(200)の検出面(200a)に印加された負荷パターンを検出するように設定され、 前記負荷パターンは、前記チップ(10)内の応力分布を含み、前記複数の応力センサ(100)は、前記チップ(10)内の前記応力分布を測定し、 前記チップ(10)は、分類スキーム(111)を含むメモリ(110)を備え、 前記分類スキーム(111)は、前記検出面(200a)上の静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターンが、同じ前記分類スキーム(111)によって分類されるように、前記複数の応力センサ(100)の出力値(101)のセットを、予め定義された複数の負荷パターンのクラスの何れかに割り当てることを特徴とする触覚センサ(1)。」 2 補正の目的 本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「前記複数の応力センサ(100)の出力値(101)のセットを、予め定義された複数の負荷パターンのクラスの何れかに割り当てる」「分類スキーム(111)」について、「前記検出面(200a)上の静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターンが、同じ前記分類スキーム(111)によって分類されるように」割り当てることを限定するものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1) 本件補正発明 ア 本件補正発明の認定と分説 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Eまでに分説するとともに、参考図1として本願の図1を符号の説明とともに示す。また、本願の外国ファミリー文献である韓国登録特許第10-2682582号公報の第1図も参考図2として示す。 <本件補正発明の分説> A 複数の応力センサ(100)が分散配置されたチップ(10)と、 B 少なくとも1つの接触体(200)と、を備え、 C 前記複数の応力センサ(100)は、前記接触体(200)の検出面(200a)に印加された負荷パターンを検出するように設定され、 前記負荷パターンは、前記チップ(10)内の応力分布を含み、前記複数の応力センサ(100)は、前記チップ(10)内の前記応力分布を測定し、 D 前記チップ(10)は、分類スキーム(111)を含むメモリ(110)を備え、 E 前記分類スキーム(111)は、前記検出面(200a)上の静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターンが、同じ前記分類スキーム(111)によって分類されるように、前記複数の応力センサ(100)の出力値(101)のセットを、予め定義された複数の負荷パターンのクラスの何れかに割り当てることを特徴とする X 触覚センサ(1)。 <参考図1> 【図1】 [図:0001426410000001.jpg] 【符号の説明】 1:触覚センサ 10:チップ 100:応力センサ 100.1:第1応力センサ 100.2:第2応力センサ 100.3:第3応力センサ 100.4:第4応力センサ 200:接触体 201:マウント 200a:検出面 <参考図2> [図:0001426410000002.jpg] イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 触覚センサが知られている。更に、触覚センサを操作する方法が知られている。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0002】 解決すべき課題の一つは、特に、速度及び汎用性が改善された触覚センサを規定することである。解決すべき更なる課題は、特に、速度及び汎用性が改善された触覚センサの動作方法を規定することである。 …(中略)… 【0053】 応力センサによっては、負荷パターンのいくつかのクラスで応力センサの出力値が同じになる場合がある。しかし、出力値全体、つまり出力値のセットは、異なる負荷パターンとして区別可能である。この分類スキームでは、出力値のセット全体を考慮することによって、印加された負荷パターンを負荷パターンの予め定義されたクラスに確実に割り当てることができる。学習されたランダムフォレストアルゴリズムは、99.8%の精度で負荷パターンを正しいクラスに割り当てることができる。 …(中略)… 【0056】 複数の応力センサ100、特に32個すべての応力センサの出力を解析することで、スペクトル解析を行わずに、静的触覚力と動的触覚力の両方の負荷パターンを検出してもよい。図10は、最も重要な2つの応力センサ100の散布図として、完全な分類スキームを示したものである。散布図の各ポイントは、1つのセンサのサンプルを表し、それぞれの出力値に割り当てられた予め定義された負荷クラスによって色分けされている。ランダムフォレスト分類アルゴリズムは、少なくとも50本の木と無制約の木の成長により学習される。5分割交差検証の結果、合計99.6%の精度を達成した。各クラスの負荷パターンの真陽性率は98%以上である。 …(中略)… 【0058】 図12は、静的触覚力時のチップ10表面上の応力センサ100の出力値を負荷パターンとして可視化した3次元プロットである。図13は、動的触覚力時のチップ10表面上の応力センサ100の出力値を負荷パターンとして可視化した3次元プロットである。この可視化では、データにハイパスフィルターをかけ、方向性のある静的な力によるオフセットパターンを抑制している。静的プロットにおける平面からのずれは、センサノイズによるものである。したがって、静的触覚力は良好に定義された応力パターンを導き、滑りサンプルの歪んだパターンと区別できる。学習により、分類アルゴリズムは、これらのパターンを2つの異なるクラスの負荷パターンとして区別することを学習してもよく、これにより、動的触覚力と静的触覚力は、同じアルゴリズムによって検出できるようになる。」 (2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献4の記載事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献4に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開昭62-76785号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(イ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。 a 特許請求の範囲 「(1)半導体基板と、 この半導体基板と同一の基板上にマトリクス状に整列配置されてなる複数の半導体圧力センサと、 各圧力センサを順次走査しその出力信号を検出するセンサ走査手段と、 を含み、 各半導体圧力センサは、 前記半導体基板の主表面上に被覆され、耐エッチング材料からなる絶縁性のダイアフラム膜と、このダイアフラム膜の受圧領域所定位置に設けられた少なくとも1個の歪みゲージと、 この歪みゲージ及びダイアフラム膜上に被覆され耐エッチング材料からなる絶縁性保護膜と、 この絶縁性保護膜及びダイアフラム膜を貫通するよう形成された少なくとも1個のエッチング液注入口と、 エッチング液注入口を介して半導体基板の一部をエッチング除去することにより形成された圧力基準室と、 を含み、 マトリクス配置された各半導体圧力センサに印加される圧力分布を測定することを特徴とする圧力分布検出装置。 (2)特許請求の範囲(1)記載の装置において、前記センサ走査手段は、各圧力センサを順次走査して電源と接続し、その出力信号を検出することを特徴とする圧力分布検出装置。」 b 2頁左上欄13~18行 「[従来の技術] 従来より、複数の半導体圧力センサをマトリクス状に整列配置した圧力分布検出装置が周知であり、多点における圧力の動的変化をリアルタイムで検出可能であることから、各種の圧力分布を動的に把握するために幅広く用いられている。」 c 3頁右下欄9~18行目 「特に、今日においては、例えば精密作業ロボット等の触圧センサや触覚センサとして、あるいはその他の用途に高精度な2次元分解能をもった圧力分布検出装置が必要とされており、その有効な対策が望まれていた。 [発明の目的] 本発明は、このような従来の課題に鑑み為されたものであり、その目的は、小形化、量産化が容易で、かつ高分解能の圧力分布検出装置を提供することにある。」 d 4頁右上欄12行~右下欄17行、第1図、第2図 「 第1図及び第2図には、本発明の圧力分布検出装置の具体的な構成が示されており、第1図はその基板の1図を拡大した平面説明図、第2図にはその断面説明図が示されている。 本発明において、半導体基板40上に整列配置された各半導体圧力センサ100は、半導体基板40の主表面上に耐エッチング性を有する材料からなる絶縁性のダイアフラム膜44が被覆形成され、このダイアフラム膜44の受圧領域所定位置に少なくとも1個の歪みゲージ46が設けられている。 そして、歪みゲージ46をセンサ製造工程中に使用されるエッチング液から保護するために、歪みゲージ46及びダイアフラム膜44は、耐エッチング材料からなる絶縁性保護膜48により被覆されている。 そして、各センサ100の受圧領域所定位置には、絶縁性保護膜48及びダイアフラム膜44を貫通する少なくとも1個のエッチング液注入口50が設けられており、このエッチング液注入口50を介して基板40側に所定のエッチング液が注入される。 これにより、耐エッチング材料からなるダイヤフラム膜44及び半導体基板40の界面の横方向エッチング特性を利用したエッチングが行われ、基板40の一部がエッチング除去され圧力基準室52が形成される。 この時、この圧力基準室52に面してその上方に位置するダイアフラム膜44及び絶縁性保護膜48の積層膜は、各センサ100の可動グイ7フラム110として機能することになる。 そして、前記エッチング液注入口50は、圧力基準室52が形成された後、その内部を真空状態に保ったまま封止部材56により密封される。 本発明の圧力分布検出装置では、このようにして半導体基板40上に複数の圧力センサ100がマトリクス状に形成されており、従って、基板40の主表面側から圧力が印加されると、対応される箇所に設けられたセンサ100の可動ダイアフラム110が圧力に比例してたわみ、このたわみによって受圧領域に設けられた歪みゲージ46の抵抗が変化する。 従って、各センサ100に設けられた歪みゲージ46の抵抗変化を電気的検出することにより、圧力分布の動的変化をリアルタイムで測定することか可能となる。」 「第1図 [図:0001426410000003.jpg] 」 「第2図 [図:0001426410000004.jpg] 」 e 6頁右下欄15~20行 「 また、このように半導体圧力センサは、極めて高い2次元分解能を発揮することができることから、各種用途に幅広く用いられることが可能であり、例えば、高精度の作業ロボット等の触覚センサや触圧センサとして優れた性能を発揮することが可能である。」 f 7頁左上欄6行~右上欄6行、第3図 「[実施例] 次に、本発明の好適な実施例を図面に基づき説明する。 第1実施例 第3図には、本発明の圧力分布検出装置の好適な第1実施例が示されており、実施例の装置は、半導体基板40の主表面上に複数の半導体圧力センサ100がn行×m列のマトリクス状に整列配置され、センサマトリクス120を形成している。そして、これら各センサ100は後述するセンサ走査手段200により順次操作され、その出力信号が検出される。 従って、基板40に主表面側から印加された圧力は、センサマトリクス120によりその圧力分布が2次元的に測定され、前述したセンサ走査手段200によりセンサマトリクス120を繰返して連続的に走査した場合には、その圧力分布の動的変化をリアルタイムで測定することが可能となる。」 「第3図 [図:0001426410000005.jpg] 」 g 9頁左下欄15~右下欄17行、第5図 「(ハ)圧力印加手段 次に、本実施例の圧力分布検出装置に用いられる圧力印加手段300を説明する。 第5図には、基板40に圧力印加手段300を取付けた圧力分布検出装置が示されており、実施例において基板40は第3図が示すことく形成され、その主表面上には10行×10行のマトリクス状に複数の圧力センサ100が整列配置されている。 そして、この基板40は、その裏面側がセラミックのベース301に接着固定されており、基板40の主表面側に設けられた各電極130はベース301上に形成された圧膜電極にリード302を介してボンディングされており、これにより外部リード304と接続されている。 また、基板40の主表面側周縁に配置された電極130とリード302とを保護するために、基板40の主表面側周縁とベース301の表面との間にキャップ306が接着固定されている。 更に、シリコン基板40上に形成されているセンサマトリクス120の上部には、平板状に形成されたゴム弾性体308が当接配置され、この弾性体308上における接触圧力がそのままセンサマトリクス120側へ伝えられる。」 「第5図 [図:0001426410000006.jpg] 」 (イ) 引用発明の認定 前記(ア)に摘記した引用文献4の記載事項を総合すると、引用文献4には、実施例(第3図、第5図)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、「半導体基板40」、「シリコン基板40」及び「基板40」は「基板40」に、「半導体圧力センサ100」及び「圧力センサ100」は「圧力センサ100」に表記を統一した。また、括弧内に認定の根拠とした摘記箇所を示した。 <引用発明> 「 精密作業ロボット等の触圧センサや触覚センサとして用いるための、((ア)c) 基板40に圧力印加手段300を取付けた圧力分布検出装置であって、((ア)g) 基板40の主表面上に複数の圧力センサ100がマトリクス状に整列配置され、センサマトリクス120を形成しており、((ア)f) 基板40に主表面側から印加された圧力は、センサマトリクス120によりその圧力分布が2次元的に測定され、センサ走査手段200によりセンサマトリクス120を繰返して連続的に走査した場合には、その圧力分布の動的変化をリアルタイムで測定することが可能となり、((ア)f) 基板40上に形成されているセンサマトリクス120の上部には、平板状に形成されたゴム弾性体308が当接配置され、この弾性体308上における接触圧力がそのままセンサマトリクス120側へ伝えられる、((ア)g) 圧力分布検出装置。」 イ 引用文献1に記載された事項と引用文献1技術事項の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2018-116054号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(イ)の引用文献1技術事項の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。 a 段落【0108】、【図13】 「【0108】 〔識別装置〕 つぎに、測定対象物の種類を識別する識別装置8を説明する。 図13は識別装置8の構成を示したブロック図である。識別装置8はコンピュータによって実現される。コンピュータは専用機でもよいし、汎用機でもよい。コンピュータはCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)、主記憶装置、補助記憶装置などから構成されている。コンピュータが各種のプログラムを実行することで、識別装置8としての機能が実現される。」 「【図13】 [図:0001426410000007.jpg] 」 b 段落【0109】~【0112】 「【0109】 識別装置8の記憶装置200には学習済みモデル201が記憶されている。学習済みモデル201はプログラムモジュールであり、予め識別装置8を構成するコンピュータにインストールされている。コンピュータが学習済みモデル201を実行すると、コンピュータ上に学習器101が構成される。学習器101のアルゴリズムとしては、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシンなど、分類問題を扱うのに適したアルゴリズムが用いられる。学習器101は予め機械学習が行われている。機械学習の方式としては、特に限定されないが、教師あり学習、強化学習、教師なし学習が挙げられる。学習器101がニューラルネットワークである場合、機械学習によりニューロン間の重み付け係数が最適化される。 【0110】 機械学習は例えばつぎの手順で行われる。この手順は教師あり学習によるものである。 まず、機械学習に用いる学習データを用意する。学習データは訓練データと評価データとからなる。訓練データと評価データとは、それぞれ測定対象物の種類ごとに複数用意される。訓練データは測定対象物の触覚データと、その測定対象物の種類情報とからなる。評価データは触覚データからなり、種類情報が付されていない。触覚データは、例えば、触覚センサ1を用いて測定対象物を測定して得られた測定データである。種類情報は測定対象物の種類を示す情報である。種類情報は教師あり学習における教師信号である。 【0111】 学習器101に訓練データを入力し、測定対象物の種類ごとの特徴量、パターンを学習させる。つぎに、学習器101に評価データを入力し、出力された種類情報が正しいか評価する。以上の訓練と評価とを、評価データに対して正しい種類情報が出力されるまで繰り返し行なう。これにより、学習器101がニューラルネットワークである場合、ニューロン間の重み付け係数が最適化される。 【0112】 触覚データとして触覚センサ1から出力された測定データを用いることができる。触覚センサ1からは、4つの情報、すなわち測定対象物の表面位置(表面の位置座標)に対する、凹凸量、微小領域摩擦力、平均摩擦力、および測定対象物への触覚センサ1の押し当て力が出力される(図5参照)。測定データには、これら4つの情報のうちの一つのみが含まれてもよいし、いずれか複数が含まれてもよい。例えば、測定データに凹凸量および微小領域摩擦力のみが含まれてもよい。なお、押し当て力は他の情報と組み合わせて用いることが好ましい。」 c 【図5】 「 [図:0001426410000008.jpg] 」 d 段落【0122】~【0129】 「【0122】 学習器101は、触覚データとして、測定データ、またはいずれかの形式の処理後データを用いて、予め機械学習が行われている。 【0123】 図13に示すように、識別装置8は学習器101のほかに、データ取得部102、データ処理部103、および表示部104を備えている。 【0124】 データ取得部102は触覚センサ1から出力された測定データを取得する機能を有する。データ取得部102をアナログ-デジタル変換回路で構成すれば、触覚センサ1から出力されたアナログ信号を直接取り込んで、データ列の形式で測定データを取得できる。データ取得部102は外部装置で生成されたデータ列を取得するよう構成してもよい。 【0125】 触覚データとして測定データを用いる場合、データ取得部102は測定データを学習器101に入力する。触覚データとして処理後データを用いる場合、データ取得部102は測定データをデータ処理部103に入力する。 【0126】 データ処理部103は測定データに所定の処理を施して処理後データを得る機能を有する。データ処理部103は処理後データを学習器101に入力する。なお、触覚データとして測定データを用いる場合、データ処理部103を設けなくてもよい。 【0127】 表示部104は学習器101の出力結果を表示する機能を有する。表示部104はディスプレイなどで構成される。 【0128】 識別装置8はつぎのように用いられる。 触覚センサ1を用いて測定対象物を測定すると測定データが得られる。その測定データがデータ取得部102に入力される。測定データはそのままの形式で、または処理後データに変換され学習器101に入力される。ここで、学習器101に入力されるデータの形式は、機械学習に用いたデータと同じ形式である。そうすると、学習器101は測定対象物に対応する種類情報を出力する。表示部104は学習器101から出力された種類情報を表示する。 【0129】 このように、触覚データに基づいて測定対象物の種類を特定できる。学習器101に対して種々の測定対象物を学習させておけば、種々の測定対象物に対してその種類を識別できる。」 (イ) 引用文献1技術事項の認定 前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の技術事項(以下「引用文献1技術事項」という)が記載されていると認められる。 <引用文献1技術事項> 「 測定対象物の種類を識別する識別装置8において、(【0108】) 識別装置8の記憶装置200には学習済みモデル201が記憶されており、学習済みモデル201はプログラムモジュールであり、コンピュータが学習済みモデル201を実行すると、コンピュータ上に学習器101が構成され、学習器101のアルゴリズムとしては、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシンなど、分類問題を扱うのに適したアルゴリズムが用いられ、(【0109】) 触覚データとして触覚センサ1から出力された測定データを用い、触覚センサ1からは、4つの情報、すなわち測定対象物の表面位置(表面の位置座標)に対する、凹凸量、微小領域摩擦力、平均摩擦力、および測定対象物への触覚センサ1の押し当て力が出力され、測定データには、これら4つの情報のうちのいずれか複数が含まれてもよく、(【0112】)、 学習器101には、触覚データとして、測定データ、またはいずれかの形式の処理後データを用いて、予め機械学習が行われており、(【0122】)、 触覚センサ1を用いて測定対象物を測定すると測定データが得られ、その測定データがデータ取得部102に入力され、測定データはそのままの形式で、または処理後データに変換され学習器101に入力され、学習器101は測定対象物に対応する種類情報を出力すること。(【0128】)」 ウ 引用文献11~14に記載された事項と周知技術1、技術常識1の認定 (ア) 引用文献11に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2005-3670号公報(以下「引用文献11」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 a 請求項1 「【請求項1】 座席にかかる力に反応する少なくとも1つのセンサについて複数箇所の測定を行うステップであって、各測定は、センサのほぼ全体にわたって加わる力に応じて行われ、それぞれの異なる力分布の関数である、複数箇所の測定を行うステップと、 前記測定に基づき前記力分布を分類するステップと を含む、座席乗員監視方法。」 b 段落【0029】、【図3】 「【0029】 図3は、座席の背もたれ部34に取り付けられているパッド32を含む自動車座席30を示す。さらなるパッド36が座部38に取り付けられている。パッド32および36のそれぞれは、図1および図2に示したパッド12および22と同じタイプのものであり、それぞれ、コネクタ42を有する複数の電極40を含む。」 「【図3】 [図:0001426410000009.jpg] 」 c 段落【0030】、【図4】 「【0030】 図4は、マルチプレクサ62を含む信号処理装置60の概略図であり、図3に示した電極40からのコネクタ42がそのマルチプレクサ62に接続されている。マルチプレクサ62はコントローラ64に接続され、コントローラ64は抵抗計66およびメモリ68に接続されている。コントローラは、電極40が生成する信号を読み取り、その信号を抵抗計66を用いて抵抗測定値に変換する。この抵抗値(resistance)は、その測定値を生成した特定の電極の識別子とともに、パッドにわたる力分布を表し、これらの測定値はメモリ68に記憶される。コネクタ42のそれぞれからの信号は多重化(multiplexered)されるため、単一の抵抗計66しか必要としない。このような測定が行われその測定値が記憶される方法は、信号処理の技術分野において既知であるため、本明細書中でさらに説明しない。」 「【図4】 [図:0001426410000010.jpg] 」 d 段落【0031】~【0040】 「【0031】 乗員分類機モジュール70、運転者覚醒度分類機モジュール72、および座席位置分類機モジュール74は全て、メモリ68に接続されている。乗員分類機モジュール70は乗員安全システム76に接続されている。運転者覚醒度モジュール72は可聴アラーム78と振動アラーム80に接続されている。座席位置分類機モジュール74は、情報表示装置82に接続されている。 【0032】 モジュール70、72、および74は、それらモジュールが全て、メモリ68に記憶された情報にアクセスし、その情報を用いて一群の測定値を分類するという点で同様に動作する。これらのコントローラは、サポートベクターマシン(SVM)を用いてそれら測定値を分類する。上記モジュールのそれぞれについてニューラルネットワークベース技法を用いることも可能である。 【0033】 分類は、ある状態を表すものとしての測定値のセットを認識するように各モジュールを訓練することに基づいている。学習段階の際、各モジュールは、所定の測定値セットを、特定の物体およびその物体の向きと位置に関連付けするようにプログラムされる。次に、これらの関連付けは、動作段階の際にモジュールにより用いられて未知の測定値が分類される。 【0034】 分類上の問題に役立つツールとしてSVMを使用することは、物理学の分野において既知である。このことは、M.FeindtおよびC.Haag著「Support Vector Machines for Classification Problem in High Energy Physics」(DELPHI Collaboration, DELPHI 99-151 GEN 176, 199 年9月23日)に開示されている。SVM技法は、Nello CristianiniおよびJohn Shawe-Taylor著「An Introduction to Support Vector Machines and Other Kernel-based Learning Methods」(Cambridge University Press,2000年3月23日)、およびVojislav Kecman著「Learning and Soft Computing」(The MIT Press,2001年7月24日)に開示されている。このような技法は、測定値の解釈の技術分野で既知であるため、本明細書ではさらに説明しない。 【0035】 乗員分類機モジュールは、自動車座席上の乗員を分類する技法を用いる。このモジュールは、子供、大人、および座席にあるチャイルドシートにいる乳幼児を区別する。モジュールは、座席を占有している手荷物品などの物体と人間の乗員を区別することも可能である。 【0036】 乗員分類機モジュールは、乗員安全システム76に乗員の種類を指示する。乗員安全システム76は、エアバックを展開させるかどうかを判断し、展開させる場合はその展開速度を変える。乗員安全システム76はまた、乗員のクラスに応じてシートベルトプリテンショナを調整する。このシステムはまた、求められた乗員のクラスに応じて最適することができる他の安全機構を制御することもできる。 【0037】 運転者覚醒度分類機モジュールは、眠気を催しているかまたは注意散漫な運転者と覚醒している運転者を区別する。このモジュールが運転者が覚醒していないと判断した場合、振動アラーム80が作動して運転者を覚醒状態に戻す。別法として、あるいは振動アラームに加えて、可聴アラーム78が徐々に大きくなる音を発して運転者に警告してもよい。代替の実施形態において、運転者覚醒度分類機モジュールはさらに、車両ステアリング(図示せず)から、蛇行運転しているのかどうかを知らせる、運転者の覚醒度も示す情報を受け取る。 【0038】 座席位置分類機モジュール82は、乗員にとって座席位置が最も快適である可能性があるのかどうかを判断する。このモジュールは、どのように座席の向きを変えて快適性を増すようにするかに関して指示する情報表示装置82により、情報を座席乗員に表示する。事故の危険性を少なくするために、このモジュールは、自動車が静止しているときにのみ情報を表示することになっている。自動車の運転者の場合、運転者覚醒度モジュールと座席位置分類機モジュールとの間に対立が起こる可能性があり、したがって、運転者を確実に覚醒している状態のままにするため、座席位置分類機モジュールを制する、これらモジュール間の調停手段を有する必要がある。 【0039】 コントローラは考えられる各電極対に対応する測定値を生成することが可能であるが、そうである必要がない場合もある。パッド32および36の場合に含まれる電極数に応じて、コントローラは取得される測定値数を少なくすることができる。したがって、コントローラは、特定の力分布に基づき、それら電極対間の、力分布の特徴付けに全くまたはほとんど関連しない測定を省く。この決定は、ニューラルネットワークまたはSVM技法に基づいてもよい。 【0040】 図1、図2、および図3を参照して示し論じたタイプのセンサは、自動車座席の乗員を監視するセンサよりもより多くの用途を有する。このようなセンサは、特定の領域にわたる力分布が詳細に分かる必要があるあらゆる用途で使用できる。」 (イ) 引用文献12に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2006-297542号公報(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。 a 請求項1 「【請求項1】 柔軟構造を持つ指表面を有するロボットハンドにおいて、指先の滑りを検知する装置であって、 指先曲面を複数の領域に分割して表面の法線方向の力をそれぞれ検出する分布型圧力センサと、 前記分布型圧力センサの出力から出力重心位置と法線接触力を算出する手段と、 出力重心位置の移動と法線接触力の関係から滑り発生を判定する手段と、 を備えていることを特徴とするロボットハンドの指表面の滑り検知装置。」 b 【0001】~【0007】 「【0001】 本発明は、ロボットハンドの指表面における滑りを検知する装置に関し、特に、柔軟構造を有するロボットハンドの指表面において、物体を把持する際に指と物体の間で起こる滑りを検知する装置に関する。 【背景技術】 【0002】 重量等の特性が既知の物体だけでなく、特性が未知の物体を把持して搬送等を行うロボットハンドの研究が進められている。特に、重量や表面の摩擦係数、強度が未知の物体を把持する場合には、把持力により物体が破損・変形することなく、かつ、落下させることなく確実に把持を行うためには、必要最小限の把持力で把持を行わなければならない。このため、こうした特性が未知の物体を適切に把持するための技術が研究されている(特許文献1参照)。 【0003】 特許文献1に記載されている技術は、ロボットハンドの物体把持面を曲面状弾性体で構成し、その内部に複数のセンサを配置して、センサ出力から得られた弾性体の剪断歪みまたは剪断応力から弾性体と物体との間の固着領域の大きさを求め、これに応じて把持力等を制御することで、把持力が強すぎて物体を握りつぶすこともなく、また、把持力が弱すぎて物体を滑り落とすこともなく、適切な把持力で物体を把持することができるというものである。 【特許文献1】特開2000-254884号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、この技術において用いられる剪断歪みや剪断応力を検知するセンサは構造が複雑で、比較的大型になりかねない。また、特に把持表面を柔軟構造とした場合、物体を把持後に持ち上げるような場合に、把持面部分の柔軟構造の形状が変化するが、この形状変化によって剪断歪みや剪断応力を検知してしまうが、これを物体の滑りによる剪断歪みや剪断応力と区別するのが難しく、誤検出してしまう可能性がある。 【0005】 そこで本発明は、把持面に柔軟構造を採用したロボットハンドにおいて指表面における把持物体の滑りを判定することを可能とした滑り検知装置を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記課題を解決するため、本発明にかかる滑り検知装置は、柔軟構造を持つ指表面を有するロボットハンドにおいて、指先の滑りを検知する装置であって、指先曲面を複数の領域に分割して表面の法線方向の力をそれぞれ検出する分布型圧力センサと、これら分布型圧力センサの出力から出力重心位置と法線接触力を算出する手段と、出力重心位置の移動と法線接触力の関係から滑り発生を判定する手段と、を備えていることを特徴とする。 【0007】 歪みセンサと比較して圧力センサは構成が単純で、小型化も容易である。表面に柔軟構造を持つ指で静置された物体を把持すると、柔軟構造は把持力により物体表面に押しつけられ、変形する。したがって、固体表面で接触する場合に比べて広い範囲で物体に接触し、把持力に応じた反力が分布型圧力センサによって検出される。この状態から把持した物体を持ち上げると、物体表面を把持している柔軟構造は、物体の荷重を支えるために下方にずれて変形する。このため、柔軟構造に加わる圧力分布は把持した際とは変化する。さらに、物体を把持しきれず、物体が指表面で滑った場合には、滑りに応じて圧力分布が変化する。そこで、本発明においては、圧力分布の変化状況のうちの出力重心位置の移動状況と法線接触力(把持力に対応する。)から滑りに至らない柔軟構造の変形か、滑りの発生かを判定する。」 (ウ) 引用文献13に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である多田泰徳外2名「視触覚センサを有する柔軟な指のための滑りの内部表現」第20回日本ロボット学会学術講演会予稿集(2002)(http://www.er.ams.eng.osaka-u.ac.jp/Paper/2002/Tada02a.pdf)(以下「引用文献13」という。)には、次の記載がある。 a 1頁「1.はじめに」(4段落) 「 本研究では、キャリブレーションされていない視覚および触覚センサを有するロボットハンドを用い、センサデータを集めることで指先に発生した滑りという物理現象をニューラルネットワークに表現することを提案する。指先はシリコンゴムでできており、触覚センサとして複数の歪みゲージを埋め込んである。実験開始時は視覚センサのみが滑りを認識可能だが、学習を繰り返すことにより触覚センサが滑りを認識するようになる。そして、十分に学習すると視覚センサでは認識できないような微少な滑りを触覚センサを用いて認識できるようになる。」 b 2頁「3.1実験装置」、Fig.2、Fig.3 「3.1 実験装置 本研究では安川電機製の3自由度ロボットハンドを使用する(Fig.2).ロボットハンドの先端にはFig.3のように作成した指先を取り付けてある.この指先はシリコンゴム製で柔軟性がある.そして触覚センサとして6枚の歪ゲージをランダムに埋め込んである.歪ゲージの値はアンプで増幅した後ホストコンピュータに送られる.また視覚センサとしてビデオカメラを用い、画像は富士通製トラッキングビジョンで処理されてからホストコンピュータに送られる. 指先に滑りを発生させるときはロボットハンドの姿勢を固定し、瀬食している物体を人間が動かす.」 「 [図:0001426410000011.jpg] 」 「 [図:0001426410000012.jpg] 」 c 2頁「3.2実験結果」、Fig.4、Fig.5 「3.2 実験結果 学習中の触覚および視覚センサの活性度の変化をFig.4に示す.活性度の符号は滑りの方向を示し、絶対値が1を越えた時に滑りであると判断する.なお、ここで示した図は画像上でx方向に滑らせた場合の様子である。学習開始直後は接続重みが0なので触覚センサの活性度は0だが、視覚センサが滑りを検出するたびに重みが更新され、触覚センサの活性度が大きくなるのがわかる. 260回学習した後にこのネットワークが滑りを認識できるかを実験した.その結果をFig.5に示す.この図では視覚センサが滑りを検出する前に触覚センサの活性度が上昇し、滑りを認識していることが分かる.」 「 [図:0001426410000013.jpg] 」 「 [図:0001426410000014.jpg] 」 (エ) 引用文献14に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献であるHongbin Liu, et.al., “A computationally fast algorithm for local contact shape and pose classification using a tactile array sensor” 2012 IEEE International Conference on Robotics and Automation (2012) pp.1410-1415(https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=6224872)(以下「引用文献14」という。)には、次の記載がある。 <Abstract> 「This paper proposes a new computationally fast algorithm for classifying the primitive shape and pose of the local contact area in real-time using a tactile array sensor attached on a robotic fingertip. The proposed approach abstracts the lower structural property of the tactile image by analyzing the covariance between pressure values and their locations on the sensor and identifies three orthogonal principal axes of the pressure distribution. Classifying contact shapes based on the principal axes allows the results to be invariant to the rotation of the contact shape. A naive Bayes classifier is implemented to classify the shape and pose of the local contact shapes. Using an off-shelf low resolution tactile array sensor which comprises of 5×9 pressure elements, an overall accuracy of 97.5% has been achieved in classifying six primitive contact shapes. The proposed method is very computational efficient (total classifying time for a local contact shape = 576μs (1736 Hz)). The test results demonstrate that the proposed method is practical to be implemented on robotic hands equipped with tactile array sensors for conducting manipulation tasks where real-time classification is essential.」 (当審訳:この論文は、ロボット指先に取り付けられた、アレイ状の触覚センサを使用して、リアルタイムで局所接触領域の基本形状及び姿勢を分類するための新しい計算的に高速なアルゴリズムを提案している。提案される手法は、圧力値とセンサ上のそれらの位置との間の共分散を分析することによって触覚画像のより低い構造的特性を抽出し、圧力分布の三つの直交主軸を識別する。主軸に基づいて接触形状を分類することは、結果が接触形状の回転に対して不変であることを可能にする。単純ベイズ分類器を実装して、局所接触形状の形状及び姿勢を分類する。5×9個の圧力要素を含む既製の低分解能触覚アレイセンサを使用して、六つのプリミティブ接触形状を分類する際に97.5%の全体的な精度が達成された。提案された方法は、非常に計算効率が良い(局所接触形状の総分類時間=576μs(1736 Hz))。試験結果は、提案された方法が、リアルタイム分類が必須である操作タスクを行うための触覚アレイセンサを備えたロボットハンド上で実施されるのに実用的であることを実証している。) (オ) 周知技術1の認定 上記引用文献11、12、14の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。 <周知技術1> 「圧力分布を測定可能なセンサの測定結果に基づき、印加される力の分布状態を分類すること。」 (カ) 技術常識1の認定 上記引用文献12~14の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。)なお、引用文献13、14の「触覚センサ」は「圧力センサ」であると認められる。 <技術常識1> 「圧力分布の変化に基づいて、静的な接触状態と動的な接触状態をともに検知できること。」 (3) 本件補正発明と引用発明の対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 (ア) 構成Xの観点(触覚センサ) 引用発明の「圧力分布検出装置」は「精密作業ロボット等の触圧センサや触覚センサとして用いるため」のものであるから、「触覚センサ」の発明である本件補正発明と、「触覚センサとして用いるため」の「圧力分布検出装置」である引用発明は、「触覚センサ」の発明である点で一致する。 (イ) 構成Aの観点 a 構成Aは、「複数の応力センサ(100)が分散配置されたチップ(10)」を備えることである。 b 引用発明において、「基板40に主表面側から」「圧力」が「印加」されると、「弾性体308」に歪みが生じ「基板40」内に応力分布が生じることは明らかであり、「センサマトリクス120により」「測定」される「2次元的」な「圧力分布」は、実質的には「基板40」内の応力分布であるといえる。 そうすると、引用発明の「センサマトリクス120」を「形成」する「複数の圧力センサ100」は、実質的には応力分布を測定するセンサであるといえるから、本件補正発明の「複数の応力センサ(100)」に相当する。 c 引用発明の「基板40」は本件補正発明の「チップ(40)」に相当するものと認められるところ、引用発明の「基板40」の主表面上には「複数の圧力センサ100がマトリクス状に整列配置され[ている]」から、本件補正発明の「チップ(10)」と引用発明の「基板40」は、「複数の応力センサが」「配置され[る]」点で共通する。 d 以上を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「複数の応力センサが配置されたチップを備える」という点において一致する。 一方で、本件補正発明と引用発明は、次の点において一応相違する。 本件補正発明の「チップ(10)」における「複数の応力センサ(100)」の配置が「分散配置」であるのに対し、 引用発明の「基板40」における「複数の圧力センサ100」の配置が「整列配置」である点。 (ウ) 構成Bの観点 a 構成Bは、「少なくとも1つの接触体(200)」を備えることである。 b 引用発明において、「ゴム弾性体308上における接触圧力がそのままセンサマトリクス120側へ伝えられる」から、引用発明の「ゴム弾性体308」は、「接触圧力」が加えられる部材であり、本件補正発明の「接触体(200)」に相当する。 c したがって、本件補正発明と引用発明は、「少なくとも1つの接触体を備える」という点において一致する。 (エ) 構成Cの観点 a 構成Cは、「前記複数の応力センサ(100)は、前記接触体(200)の検出面(200a)に印加された負荷パターンを検出するように設定され、前記負荷パターンは、前記チップ(10)内の応力分布を含み、前記複数の応力センサ(100)は、前記チップ(10)内の前記応力分布を測定」することである。 b 引用発明では「弾性体308上における接触圧力がそのままセンサマトリクス120側へ伝えられる」のであるから、「弾性体308」には接触圧力が加えられる検出面に相当する部分(以下、便宜のため「引用発明検出面」ということがある。)があることは明らかであり、上記引用発明検出面は、本件補正発明の「前記接触体(200)の検出面(200a)」に相当する。 また、引用発明において、「2次元的」な「圧力分布」として「測定」される、引用発明検出面に印加される「接触圧力」は、本件補正発明の「前記接触体(200)の検出面(200a)に印加された負荷パターン」に相当する。 以上を踏まえると、引用発明の「センサマトリクス120」を構成する「複数の圧力センサ100」は、本件補正発明の「前記接触体(200)の検出面(200a)に印加された負荷パターンを検出するように設定され」る「前記複数の応力センサ(100)」に相当する。 c 前記(イ)bを踏まえると、引用発明の「2次元的」な「圧力分布」は、実質的には「基板40」内の応力分布であり、本件補正発明の「前記チップ(10)内の応力分布」に相当する。 そうすると、引用発明の「接触圧力」は、実質的には「基板40」内の応力分布として測定されるから、本件補正発明の「前記チップ(10)内の応力分布を含[む]」「負荷パターン」に相当する。 また、引用発明の「複数の圧力センサ100」は、「基板40」内の応力分布を測定しているといえる。 d したがって、本件補正発明と引用発明は、「複数の応力センサは、前記接触体の検出面に印加された負荷パターンを検出するように設定され、前記負荷パターンは、前記チップ内の応力分布を含み、前記複数の応力センサは、前記チップ内の前記応力分布を測定」する点で一致する。 (オ) 構成Dの観点 a 構成Dは、「前記チップ(10)は、分類スキーム(111)を含むメモリ(110)を備え[る]」ことである。 b 引用発明は、本件補正発明の構成Dに相当する構成を備えていないから、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。 本件補正発明は「前記チップ(10)は、分類スキーム(111)を含むメモリ(110)を備え」ているのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点。 (カ) 構成Eについて a 構成Eは、「前記分類スキーム(111)は、前記検出面(200a)上の静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターンが、同じ前記分類スキーム(111)によって分類されるように、前記複数の応力センサ(100)の出力値(101)のセットを、予め定義された複数の負荷パターンのクラスの何れかに割り当てる」ことである。 b 引用発明は、本件補正発明の構成Eに相当する構成を備えていないから、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。 本件補正発明は「前記分類スキーム(111)は、前記検出面(200a)上の静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターンが、同じ前記分類スキーム(111)によって分類されるように、前記複数の応力センサ(100)の出力値(101)のセットを、予め定義された複数の負荷パターンのクラスの何れかに割り当てる」のに対し、引用発明は分類スキーム自体を備えていない点。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。 (ア) 一致点 「複数の応力センサが配置されたチップと、 少なくとも1つの接触体と、を備え、 前記複数の応力センサは、前記接触体の検出面に印加された負荷パターンを検出するように設定され、前記負荷パターンは、前記チップ内の応力分布を含み、前記複数の応力センサは、前記チップ内の前記応力分布を測定する、 触覚センサ。」である点。 (イ) 相違点 a 一応の相違点1(応力センサの配置) 本件補正発明の「チップ(10)」における「複数の応力センサ(100)」の配置が「分散配置」であるのに対し、 引用発明の「基板40」における「複数の圧力センサ100」の配置が「整列配置」である点。 b 相違点2(分類スキーム) (a) 相違点2-1 本件補正発明は「前記チップ(10)は、分類スキーム(111)を含むメモリ(110)を備え」ているのに対し、 引用発明は当該構成を備えていない点 (b) 相違点2-2 本件補正発明は「前記分類スキーム(111)は、前記検出面(200a)上の静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターンが、同じ前記分類スキーム(111)によって分類されるように、前記複数の応力センサ(100)の出力値(101)のセットを、予め定義された複数の負荷パターンのクラスの何れかに割り当てる」のに対し、 引用発明は分類スキーム自体を備えていない点。 (4) 判断 ア 一応の相違点1について (ア) 本件補正発明の「チップ(10)」における「複数の応力センサ(100)」の配置が「分散配置」であるとの発明特定事項は、令和5年5月16日に提出された手続補正書による手続補正によって加えられたものである。そして、本願明細書をみても、「応力センサ(100)」の配置を「分散」させるとの記載はない。この点に関し、前記手続補正書と同日に提出された意見書によれば、補正の根拠は段落【0031】~【0034】とされているので、以下抜粋する。下線は当合議体が付与した。 「【0031】 チップ10は、複数の応力センサ100.1、100.2、100.3、100.4から構成される。チップ10は、32個の応力センサと、必要な読み出し回路から構成されている。チップは、電源供給とシリアル通信のために、フレキシブルフラットケーブルに接着されている。チップはコンパクトで扱いやすい。 【0032】 触覚センサ1を形成するために、チップ10はシリコーン(PDMS)製の接触体200に埋め込まれる。接触体200は、指先の形状をしている。チップには追加の電子部品や配線が必要ないという利点がある。 【0033】 接触体200、特に検出面200aにかかる負荷パターンが接触体を変形させ、チップ10に応力プロファイルを誘発させる。32個の応力センサ100は、チップ領域上に分布しており、チップ内の応力分布を測定することが可能である。応力プロファイルは、負荷パターンの方向及び強さに固有である。 【0034】 負荷パターンは、物体300が検出面200aに沿って滑ることによって生じる動的触覚力である可能性がある。触覚センサ1は、最大400Hzの振動を測定することが可能であり、このような負荷パターンを検出するために極めて重要である。従って、触覚センサ1は、十分な帯域幅を保証するために、少なくとも960Hzのサンプルレートを有する。チップ全体の応力分布を測定するため、32個の応力センサをすべて読み取ることになり、サンプルレートは30Hzに低下する。応力センサはシリアルに読み取られるため、振動はやはり960Hzでサンプリングされる。従って、応力センサ100毎のサンプルレートは、触覚センサ1 毎のサンプルレートをチップ10毎の応力センサ100の数で割ったものに相当する。」 これら本願明細書の記載をみても、配置が「分散」していることについては特段記載が認められないところ、段落【0033】の「接触体200、特に検出面200aにかかる負荷パターンが接触体を変形させ、チップ10に応力プロファイルを誘発させる。32個の応力センサ100は、チップ領域上に分布しており、チップ内の応力分布を測定することが可能である。応力プロファイルは、負荷パターンの方向及び強さに固有である。」との記載からみて、「複数の応力センサ(100)が分散配置されたチップ(10)」とは、チップ内の応力分布を測定できる程度の範囲で複数の応力センサが配置されていることを意味するものであり、かつそれで足りるものと解される。 一方、引用発明の「複数の圧力センサ100」もまた「基板40」の応力分布を測定していることは上記(3)ア(イ)bで検討したとおりであるから、「分散」に係る上記解釈を踏まえると、引用発明の「複数の圧力センサ100」もまた、「基板40」上に、本件補正発明にいうところの「分散配置」がされているものということができる。 してみれば、この点は実質的な相違点ではない。 (イ) この点が仮に相違点であったとしても、引用発明において複数の圧力センサが配置されているのは、「精密作業ロボット等の触圧センサや触覚センサとして用いるための」「圧力分布検出装置」において、印加圧力分布を測定するためであるから、必要とされる圧力分布の分解能等に応じて、複数の圧力センサの配置をどのようなものとするかは、当業者が適宜設計できたものと認められる。してみれば、引用発明において複数の「圧力センサ100」の配置を分散されたものとし、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た設計的な事項である。 イ 相違点2について 相違点2-1、2-2についてまとめて検討する。 (ア) 「分類スキーム」について a 本件補正発明の「分類スキーム」とは、本願の明細書の段落【0011】及び【0012】等の記載を参酌すると、要するに、複数の応力センサの出力値をまとめて(セットとして)入力すると、触覚センサの接触体の検出面における印加された力の分布状態が類型化されて(クラスに割り当てられて)出力されるような所定の機械学習アルゴリズムであると解するのが相当である。 b 上記(2)イ(イ)において認定した引用文献1技術事項を踏まえると、次の技術事項は当業者にとって公知であったといえる。 「触覚センサから出力された複数の測定データを用いて予め機械学習が行われた学習器において、触覚センサを用いて得た測定対象物の測定データを学習器に入力すると、分類問題を扱うのに適したアルゴリズムにより、測定対象物に対応する情報が類型化されて出力されること。」 c ここで、引用文献1技術事項は、触覚センサに関する技術分野に属しているから、触覚センサとして用いられる圧力分布検出装置の発明である引用発明と技術分野が関連しているものといえる。また、データを分析する際に機械学習を用いてデータ分析の高速化、精密化を試みることは、一般的な手法である。してみれば、引用発明においても、機械学習を用いた引用文献1技術事項を適用する動機があるといえる。 d そうすると、引用発明において、引用文献1技術事項に係る前記bの公知の技術事項に倣って、センサマトリクス120により測定された2次元的な圧力分布のデータが予め機械学習が行われた学習器に入力され、分類問題を扱うのに適したアルゴリズムにより、測定対象物に対応する情報が類型化されて出力されるように構成することは、当業者が容易に想到し得たことであり、これにより、前記相違点2-2に係る「複数の応力センサの出力値のセット」を「予め定義された」「複数」の「クラスの何れかに割り当てる」という構成が導出されることになる。 (イ) 「負荷パターンのクラス」について そして、上記(2)ウ(オ)において周知技術1として認定したように、「圧力分布を測定可能なセンサの測定結果に基づき、印加される力の分布状態を分類すること」が周知技術であることを踏まえると、引用発明に引用文献1技術事項を適用する際に、上記「測定対象物に対応する情報」として、測定対象物から引用発明検出面に印加される力の分布状態に着目して類型化することにより、「予め定義された複数のクラス」を「複数の負荷パターンのクラス」として構成することは当業者にとって自明の設計事項にすぎない。 (ウ) 「静的触覚力及び動的触覚力から生じる負荷パターン」について a 引用発明は、「精密作業ロボット等の触圧センサや触覚センサとして用いるため」のものであり、高精度に2次元的な圧力分布を測定する必要があるから、「ゴム弾性体308」に加わる力のうち、できるだけ多くの属性の力を測定することが要請されているといえる。 b また、引用発明は、「センサ走査手段200によりセンサマトリクス120を繰返して連続的に走査した場合には、その圧力分布の動的変化をリアルタイムで測定することが可能とな[る]」から、「ゴム弾性体308」に加わる力として、静的な接触状態のみならず動的な接触状態における「接触圧力」も想定されていることは自明である。 そして、ここでいう静的な接触状態における「接触圧力」は、本件補正発明にいう「静的触覚力」(検出面に作用する一定の力)に相当する概念であり、動的な接触状態における「接触圧力」は、本件補正発明にいう「動的触覚力」(検出面に作用する力であって変化する力)に相当する概念である(本願の明細書の段落【0007】及び【0008】の記載を参照)。 c ここで、上記(2)ウ(カ)において技術常識1として認定したとおり、「圧力分布の変化に基づいて、静的な接触状態と動的な接触状態をともに検知できること」は技術常識である。 そうすると、引用発明に接した当業者は当然に、「動的触覚力」から生じる負荷パターンも、「静的触覚力」から生じる負荷パターンもともに測定できることを直ちに理解できる。 d 上記cの理解を踏まえると、引用発明において引用文献1技術事項を適用するに際して、「引用発明検出面」上の静的触覚力(静的接触圧力)及び動的触覚力(動的接触圧力)から生じる2次元的な圧力分布が「同じ分類スキームによって分類されるように」構成することは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。 (エ) 「メモリ」について 例えば、引用文献1技術事項の「識別装置8」において、「プログラムモジュール」である「学習済みモデル201」が記憶された「記憶装置200」があるように、機械学習を行わせるのであれば、データやプログラムを保存するための「メモリ」は当然に備えることとなるから、前記相違点2-1に係る構成は格別のものではない。 (オ) 相違点2の検討のまとめ してみれば、引用発明において、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 ウ 総合評価 前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、引用文献1技術事項、技術常識1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点1、2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献1技術事項、技術常識1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、概略、以下の(ア)~(ウ)の各aに示す主張1~3を主張している。これらの主張に対する当合議体の判断については各bに示すとおりである。 (ア) 請求人の主張1について a 請求人の主張1の内容 <動機付け> 引用文献4では、複数の半導体圧力センサ100により測定された測定データを分類することについて、何ら記載されておらず、分類に必要となる分類スキームを記憶するメモリに関して全く記載されていないため、測定データを分類することについて記載された引用文献1、11と引用文献4とを組み合わせることの動機付けはない。 <技術分野> 引用文献4では、表面の広い領域における測定が複数の半導体圧力センサ100により行われるのに対し、引用文献1では、表面の1点のみにおいて測定が行われることになるから、引用発明(引用文献4)は引用文献1技術事項と技術分野が異なり、組み合わせることを容易に想到できない。 b 請求人の主張1についての検討 引用発明と引用文献1技術事項とは「接触センサ」に関する関連した技術分野に属することや、引用文献1技術事項を引用発明に適用する動機があることは、上記イ(ア)cにおいて説示したとおりである。 また、引用文献1技術事項においては、表面の1点のみにおいて測定が行われるとしても、機械学習の入力データとしては、複数の種類の情報(「測定対象物の表面位置(表面の位置座標)に対する、凹凸量、微小領域摩擦力、平均摩擦力、および測定対象物への触覚センサ1の押し当て力」という「4つの情報」)を想定して、分類問題を扱うのに適したアルゴリズムを実行しているのであるから、複数の測定データが得られる引用発明に適用する余地はあるというべきである。 したがって、上記請求人の主張1は採用することができない。 (イ) 請求人の主張2について a 請求人の主張2の内容 引用発明(引用文献4)、引用文献1技術事項、引用文献11の何れにも、検出面上の静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターンが、同じ前記分類スキームによって分類されるように、前記複数の応力センサの出力値のセットを、予め定義された複数の負荷パターンのクラスの何れかに割り当てること、すなわち前記相違点2-2の構成について開示されていない。 b 請求人の主張2についての検討 技術常識1及び周知技術1を考慮しつつ、引用発明に引用文献1技術事項を適用すれば、相違点2-2に係る本件補正発明の構成に至ることは、上記イにおいて検討したとおりである。 したがって、上記請求人の主張2は採用することができない。 (ウ) 請求人の主張3について a 請求人の主張3の内容 引用文献1、11の何れにも、測定データが静的触覚力と動的触覚力とを含み、両者を分類する必要があることについて、記載されていない。 b 請求人の主張3についての検討 本件補正発明における「分類スキーム(111)」は、上記3(1)アにおいて構成Eとして認定したように、「前記検出面(200a)上の静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターンが、同じ前記分類スキーム(111)によって分類されるように、前記複数の応力センサ(100)の出力値(101)のセットを、予め定義された複数の負荷パターンのクラスの何れかに割り当てる」というものであって、負荷パターンが「静的触覚力及び動的触覚力から生じる」ことは特定されているものの、「静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターン」をそれぞれ区別して分類することまでは特定されていない。すなわち、請求人の主張3は請求項1の記載に基づかないものである。 また仮に、請求人の主張3に沿って、本件補正発明が「静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターン」をそれぞれ区別して分類するものであるとして検討しても、そのような構成とすることは、例えば引用文献12にも記載されており(段落【0007】の「滑りに至らない柔軟構造の変形」と判定された場合は「静的触覚力から生じる負荷パターン」が検出され、「滑りの発生」と判定された場合は「動的触覚力から生じる負荷パターン」が検出されることとなる。)、当業者が適宜なし得たものともいえる。 したがって、上記請求人の主張3はいずれにしても採用することができない。 オ 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献1技術事項、技術常識1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 4 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記3(4)オのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献4.特開昭62-076785号公報(主たる引用文献) 引用文献1.特開2018-116054号公報 引用文献11.特開2005-003670号公報(周知技術を示す文献) 3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等 引用文献4、引用文献1及び引用文献11に記載された事項は、それぞれ前記第2の3(2)ア(ア)、イ(ア)及びウ(ア)において示したとおりである。 また、引用発明、引用文献1技術事項、技術常識1及び周知技術1は、それぞれ前記第2の3(2)ア(イ)、イ(イ)、ウ(カ)及びウ(オ)において認定したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から、「前記複数の応力センサ(100)の出力値(101)のセットを、予め定義された複数の負荷パターンのクラスの何れかに割り当てる」「分類スキーム(111)」について、「前記検出面(200a)上の静的触覚力及び動的触覚力から生じる前記負荷パターンが、同じ前記分類スキーム(111)によって分類されるように」割り当てるとの限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明、引用文献1技術事項、技術常識1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明、引用文献1技術事項、技術常識1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-001198

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