特許拒絶査定不服審判
2024-017241
ろ過方法およびろ過装置
- 審判番号
- 2024-017241
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-008873
- 請求日
- 2024年10月29日
- 審決日
- 2026年07月08日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】水ing株式会社
- 【請求人代理人】廣澤 哲也
- 【請求人代理人】郷戸 学
- 【請求人代理人】金沢 充博
- 【請求人代理人】福澤 彩
- 審判長/審判官
- 審判長 深草 祐一
- 審判官 松本 瞳
- 審判官 市川 篤
- 分類
- P18 .113-Z (B01D) / P18 .121-Z (B01D) / P18 .575-Z (B01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 8873「ろ過方法およびろ過装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 8月 3日出願公開、特開2022-112871〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年1月22日を出願日とするものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和6年 2月29日付け 拒絶理由通知
同年 4月30日 手続補正書及び意見書の提出
同年 7月25日付け 拒絶査定
同年10月29日 手続補正書(以下、同手続補正書によりなされた補正を、「本件補正」という。)及び審判請求書の提出
同年12月 5日 手続補正書(審判請求書の請求の理由を補正するもの)の提出
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の請求項5の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項5の記載は、以下のとおり補正された。
「【請求項5】
有効径と均等係数の積が0.5~6.0mmであるアンスラサイトまたは粒状活性炭からなるろ過層と、有効径と均等係数の積が0.5~6.0mmであるろ過砂からなるろ過層を有し、前記ろ過砂の有効径と均等係数の前記積に対する、前記アンスラサイトまたは前記粒状活性炭の有効径と均等係数の前記積の比は、1.5~2.5であり、
前記アンスラサイトまたは前記粒状活性炭の密度は1~2g/cm3であり、
前記ろ過砂の密度は2~4g/cm3である、複層ろ過装置。」(下線は補正箇所である。)
(2)本件補正後の請求項5に対応する、本件補正前の請求項9(本件補正後の請求項5に係る発明は、「複層ろ過装置」に係るものであるところ、本件補正前の特許請求の範囲で「複層ろ過装置」に係る発明は、請求項9に係る発明のみである。)の記載
本件補正前の請求項9の記載は次のとおりである。
「【請求項9】
有効径と均等係数の積が0.5~6.0mmであるアンスラサイトまたは粒状活性炭からなるろ過層と、有効径と均等係数の積が0.5~6.0mmであるろ過砂からなるろ過層を有し、前記ろ過砂の有効径と均等係数の前記積に対する、前記アンスラサイトまたは前記粒状活性炭の有効径と均等係数の前記積の比は、1.0~5.0である、複層ろ過装置。」
2 補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項9に係る発明の、「ろ過砂」の「有効径と均等係数の積」に対する、「アンスラサイトまたは粒状活性炭」の「有効径と均等係数の積」の比の範囲を、「1.0~5.0」から「1.5~2.5」に狭めるとともに、本件補正前の請求項9に係る発明の「アンスラサイトまたは粒状活性炭」及び「ろ過砂」に対して、それぞれ「密度は1~2g/cm3であり」及び「密度は2~4g/cm3である」との限定事項を付し、本件補正後の請求項5とする補正事項を含むものである。
また、本件補正前の請求項9に係る発明と、本件補正後の請求項5に係る発明の産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は、同一である(本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0001】、【0021】、【0022】)。
そうすると、本件補正は、少なくとも特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
そこで、前記1(1)で記載した本件補正後の請求項5に係る発明(以下、「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(2)独立特許要件について
ア 引用文献に記載された事項
本願出願前に頒布され、下記第3の2で述べる原査定の拒絶の理由において引用された以下の引用文献2、さらに、当審で技術常識若しくは周知事項を示す文献として追加する以下の引用文献7~16には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。
引用文献2:国際公開第2018/047453号
引用文献7:日本原料株式会社ホームページ、ろ過材、ろ過砂, 2026年04月14日, 検索日, https://genryo.co.jp/filtersand/sand-basic/
引用文献8:公益社団法人日本水道協会ホームページ、出版物のご案内、JWWA規格目録, 2026年04月14日, 検索日, http://www.jwwa.or.jp/syuppan/jwwakikaku.html
引用文献9:特開2015-206160号公報
引用文献10:特公昭48-22953号公報
引用文献11:国際公開第2017/183131号
引用文献12:特開2018-153729号公報
引用文献13:特開昭57-48312号公報
引用文献14:特開昭51-142854号公報
引用文献15:日本原料株式会社ホームページ、ろ過材、アンスラサイト, 2026年04月14日, 検索日, https://genryo.co.jp/filtersand/sand-anthracite/
引用文献16:特開2018-122275号公報
(ア)引用文献2に記載された事項
a 「[0033] 図3は、図1および図2に示すろ層40の構造を示す図である。ろ層40は、アンスラサイト層43と珪砂層44から構成されている。本実施形態に係るろ過装置は、ろ過速度が240m/日を超え、厚さが600mmを超えるろ層40を有する。ろ層40は、有効径が大きく、かつ密度が小さいアンスラサイトと、該アンスラサイトよりも有効径が小さく、かつアンスラサイトよりも密度が大きい珪砂と、の異なる二種類のろ材で構成される。アンスラサイト層43は、珪砂層44と等しい厚さか、または珪砂層44よりも厚く構成されている。」
b 「[0040] 次に、ろ層構成とろ過性能との関係を調べるために行った実験について説明する。実験は、図4に示す実験装置を用いて行った。この実験装置は、原水槽60に接続されたろ過塔61,62と、ろ過塔61,62を通過したろ過水を集めるろ過水槽65とを備えている。ろ過塔61,62は、それぞれろ層63を備えている。このろ層63の構成は、図3に示す実施形態と同じように、アンスラサイト層と珪砂層とから構成されている。
[0041] 原水槽60内の原水は、原水供給ポンプ66,67によってろ過塔61,62に送られる。原水は、ろ過塔61,62のろ層63を通過することによってろ過され、ろ過水となる。ろ過水はろ過水槽65に送られる。ろ層63を洗浄するために、逆流洗浄が定期的に行われる。この逆流洗浄では、逆洗ポンプ70によってろ過水槽65内のろ過水をろ過塔61,62に逆流させる。ろ過塔61,62のろ層63を逆流した洗浄排水は、洗浄排水槽71に集められる。
[0042] 次に、実験で採用したL/Dの算出方法について説明する。
L/Dの値は、使用したろ材の有効径、および均等係数を「JWWA A103 2006 水道用濾材」の試験方法に従って実測し、本測定値を「水道施設設計指針 2012」 217頁の「調和平均径と有効径および均等係数との関係」を示したグラフ(参考図5.6.1)にあてはめて求めた調和平均径(D)と、積層したろ層厚さ(L)から算出した。
[0043] 実験で使用したろ層63のろ材の詳細(有効径、調和平均径、均等係数)とろ層63の構成(以下、ろ層構成という)を図5に、ろ層厚さおよびL/Dの値を図6にそれぞれ示す。
[0044] ろ層構成No.1は、ろ過速度240m/日を上限とした高速ろ過における一般的なろ層構成「アンスラサイト(層厚200mm)+珪砂(層厚400mm)」であり、他のろ層構成のろ過性能を評価するための標準構成とした。図5および図6に示すろ層構成No.2~No.8は、いずれも従来のろ層構成No.1よりもL/Dが同等以上となる様に設定されており、本実施例によるL/Dの増加のさせ方の優位性を示すための構成となっている。
[0045](実施例1)
図4に示す実験装置により、有効径0.6mm、均等係数1.4の珪砂、および有効径1.2mm、均等係数1.4のアンスラサイトをろ材に用いて、ろ過速度360m/日で連続ろ過を行った。ろ過原水には、濁度が1度以下に制御された浄水場の凝集沈澱処理水を用いた。
[0046] 珪砂層厚を400mm、アンスラサイト層厚を200mmとしたろ層構成No.1(L/D=667)、および珪砂層厚を300mm、アンスラサイト層厚を500mmとしたろ層構成No.8(L/D=733)でそれぞれ84時間の連続ろ過を行い、ろ過性能を比較した。その結果、ろ過水濁度が0.05度、または0.1度を超過するまでのろ過時間は、図7の表に示す通り、アンスラサイト層が厚いNo.8が有意に長かった。但し、60時間ろ過後のろ過抵抗はNo.8とNo.1でほとんど差は見られなかった。」
c 「[請求項1] ろ過速度が240m/日を超えるろ過装置であって、
アンスラサイトからなるアンスラサイト層と、該アンスラサイトよりも有効径が小さく、かつ該アンスラサイトよりも密度が大きい珪砂からなる珪砂層と、を含むろ層を備え、
前記アンスラサイト層は、前記珪砂層と等しい厚さか、または前記珪砂層よりも厚く、
前記ろ層全体の厚さは、600mmを超え、かつ2000mm以下であることを特徴とするろ過装置。」
d 「
[図:0001438769000001.jpg]
[図:0001438769000002.jpg]
」
(イ)引用文献7に記載された事項
a 「日本水道協会(JWWA A 103:2006-2)水道用ろ過砂 抄記
ろ過砂は急速ろ過池用と緩速ろ過池用があり、その違いは主として粒径によります。日本水道協会規格(JWWA A 103:2006-2)では次のように規定されています。
《主成分及び品質》
ろ過砂は、ろ過池におけるろ過及び洗浄が、安定かつ効率よく行うことができるものであって、主成分、品質(物性)及び品質(浸出性)の規定に適合しなければならない。
◎主成分
ろ過砂の主成分はけい酸で、天然に産するけい砂とする。
◎品質
品質(物性・浸出性)は、定められた条件で試験を行い表1の規定に適合しなければならない。」
b 「[表1 品質]
[図:0001438769000003.jpg]
」
(ウ)引用文献8に記載された事項
「JWWA規格目録 < 令和8年3月31日現在>
・・・
JWWA規格は、水道事業で使用される資機材、薬品などの標準化を目的に日本水道協会が定めた自主規格です。JWWA規格では、水道水の安全・安心を確保するため、規格毎に、適用範囲、使用される原材料等の組成・物性、浸出性を始め、使用条件及び性能等を一体として規定しています。
規格に定めのない原材料を使用した製品、適用範囲を逸脱した製品及び浸出性などの規格箇条の一部のみを準用した製品は、JWWA規格の適用外となります。
[図:0001438769000004.jpg]
」
(エ)引用文献9に記載された事項
「【0003】
そのため、現在のプールにおいては浄化装置、すなわち、ろ過装置を有する機能設備が設置されている。プール用ろ過装置の種類は代表的なろ材で分類されている。具体的には、珪藻土式ろ過装置(特許文献1参照)、砂ろ過装置(特許文献2参照)、カートリッジ式ろ過装置(特許文献3参照)の三種が挙げられる。
珪藻土式ろ過装置には、珪藻の化石である珪藻土をろ材表面に堆積させて微細な汚れを捉える効果により、ろ材に係るろ過抵抗を低減し、ろ過性能の維持に有効なろ過助材として用いる。又、処理能力が低下した場合、逆洗によりろ過助剤を排出し、改めてろ過助剤をろ材表面に堆積することで、ろ過効率を回復することができる。
砂ろ過装置には、珪砂からなるろ過砂、除鉄・除マンガン効果を有する多孔質セラミック、除マンガン効果を有するマンガン砂、無数の通気細孔で吸着性に優れたシャモット、除濁・異物や鉄分除去効果を有するアンスラサイトなどがあり、主にプール用ろ過にはろ過砂とシャモットを組み合わせて用いる事が多い。又、処理能力が低下した場合、逆洗によりろ過効率を回復することができる。
カートリッジ式ろ過装置には、樹脂製のカートリッジフィルタとして糸巻き式、メルトブロウン式、積層式、発泡式などがあり、材質はポリプロピレン、ポリエチレンなどが用いられ、主にプール用ろ過には糸巻き式カートリッジフィルタを用いる。かかるカートリッジ式ろ過装置は、一般的には逆洗できないので、処理能力が低下したら、フィルタ全体を交換する必要があった。」
(オ)引用文献10に記載された事項
「水の除鉄、除マンガンを実施する場合、除去すべき鉄、マンガンが酸化物となり濾過砂層の内部にて析出し、蓄積して濾過抵抗が上昇して来ると、既に浄化された濾過水を濾過池の下部より圧送し、噴出させて濾過砂層を攪拌し、濾過砂層内に蓄積した鉄、マンガンの酸化物や凝集剤に使用したアルミニウム、鉄塩の水酸化物の小凝集塊、その他のものを濾過砂から分離して洗滌水と共に溢(当審注:原文はさんずいに益)流させて、濾過砂層内を清浄にする。この場合濾過砂の比重が小さい程、濾過砂を洗滌するに要する洗滌水は小くてすむので、普通の濾過砂は珪砂であつて比重2.55~2.70でるが、本発明はこれより軽く濾過池の洗滌流速にて流失しない程度の比重の小さい濾材を使用し、現存設備にて自家消費する既に浄化した濾過水である洗滌水量を節減し、これを需要家に給水し、給水量の増加も計ると共に、除鉄、除マンガンの効果をあげるにある。」(第2頁第3欄第24~40行)
(カ)引用文献11に記載された事項
「[0042] ろ過処理設備100Aは、第1ろ過層12Aを有する第1ろ過装置10Aと、第2ろ過層22を有する第2ろ過装置20と、を含む。第2ろ過装置20は、第1ろ過装置10Aの下流側に設けられる。
ここで、ろ過処理設備100Aは、第2ろ過装置20の下流側に設けられる安全フィルタ110をさらに備えていてもよい。安全フィルタ110は、ろ過処理設備100Aの下流側の逆浸透膜設備200への異物流入を防止する役割を有しており、例えばマイクロカートリッジフィルタを用いることができる。なお、安全フィルタ110へのろ過水の供給は、第2ろ過装置20の出口26と安全フィルタ110との間に位置するポンプ112(図1参照)により行われてもよい。
[0043] 第1ろ過装置10Aは、1層以上の第1ろ過層12Aと、取水設備2からの海水(原水)が流入する入口14と、第1ろ過層12Aを通過したろ過水が流出する出口16と、を有する。図1に示す実施形態では、第1ろ過装置10Aの容器上部に入口14が設置され、第1ろ過装置10Aの容器下部に出口16が設置され、鉛直下向きの水流が第1ろ過層12Aを通過するようになっているが、第1ろ過装置10Aの構成はこの例に限定されるものではなく、任意の構成の第1ろ過装置10Aを採用することができる。
第1ろ過層12Aは、例えば、アンスラサイト等のカーボン系材料や、珪砂等のろ過砂や、硅酸塩鉱物であるガーネットや、多孔質セラミックス等を用いることができる。また、第1ろ過装置10Aが複数の第1ろ過層12Aを含む場合、鉛直方向に複数のろ過層(第1ろ過層12A)を積層した構成を採用してもよい。
[0044] 第2ろ過装置20は、1層以上の第2ろ過層22と、第1ろ過装置10Aからのろ過水が流入する入口24と、第2ろ過層22を通過したろ過水が流出する出口26と、を有する。図1に示す実施形態では、第2ろ過装置20の容器上部に入口24が設置され、第2ろ過装置20の容器下部に出口26が設置され、鉛直下向きの水流が第2ろ過層22を通過するようになっているが、第2ろ過装置20の構成はこの例に限定されるものではなく、任意の構成の第2ろ過装置20を採用することができる。
第2ろ過層22は、例えば、アンスラサイト等のカーボン系材料や、珪砂等のろ過砂や、硅酸塩鉱物であるガーネットや、多孔質セラミックス等を用いることができる。また、第2ろ過装置20が複数の第2ろ過層22を含む場合、鉛直方向に複数のろ過層(第2ろ過層22)を積層した構成を採用してもよい。
さらに、第2ろ過装置20は、第1ろ過装置10Aと同一の装置構成を有していてもよく、第2ろ過層22は、第1ろ過層12Aとろ材構成(ろ過層の高さ、ろ過層を構成するろ過砂の粒径等)が共通であってもよい。」
(キ)引用文献12に記載された事項
「【0064】
好ましいろ過材は粒子状であって、例えば、ろ過砂(珪砂)(有効径0.35~1.0mm、均等係数1.7以下、比重2.57~2.67)、アンスラサイト(有効径0.7~4.0mm、均等係数1.4以下、比重1.4~1.6)、ガーネット(有効径約0.3mm、均等係数1.5以下、比重3.8~4.1)、マンガン砂(有効径0.35~0.60mm、均等係数1.5以下、比重2.58~2.65)、セラミック(有効径0.3~2.0mm、比重1.0~1.2)のうち、1種以上を用いることができるが、上水道用途の場合は、珪砂とアンスラサイトのいずれか一方又は両方を含むものが最も好ましく、これらのろ過材に他のろ過材を更に組み合わせることも可能である。ろ過材は単層又は多層構造とし、これらろ過材とフィルターとを組み合わせることも可能である。」
(ク)引用文献13に記載された事項
「二層式濾過装置は、濾材である砂として、比重が小さく且つ粒径の大きなアンスラサイト(無煙炭)と比重が大きく且つ粒径が小さい硅砂とを使用する。これらの組み合わせの場合には、アンスラサイトが上層に、そして硅砂が下層に成層化するために被処理水を通水すると、アンスラサイトで荒取り、そして硅砂で精密取りがなされ、濾過工程が長くなる。
・・・
二層式濾過装置は、上述のように、アンスラサイト(比重1.5~1.6)と硅砂(比重2.5~2.6)を濾材砂層として用いている。」(第2頁右上欄第14行~左下欄第6行)
(ケ)引用文献14に記載された事項
「懸濁固形物を捕捉し、所望流速を得、必要に応じて汚染液体から溶存汚染物を吸着させることのできる適当な濾材のろ(当審注:原文はさんずいに戸。以下の「ろ床」、「ろ材」、「ろ過砂」、「ろ過特性」、「ろ過媒体」との記載についても同様。)床34が適当な深さと組成とコンステンシーで多孔性支持材28の層上に支持されている。ろ床34は多孔性支持体28上に支持された細い粒状ろ材の下部層33と下部層33の上方に配置された粗大粒状ろ材の上部層35(第4、5図)によって構成されている。上記層35の粒子径は下部層33の粒子より大きく、その密度は下部層より低い。
ろ床34の下部層33は密度が実質的に2.07g/cm3で粒子径範囲が実質的に0.60から0.65mmであるろ過砂によつて構成されている。この砂粒子の均一係数は1.5をこえないようにするのが好ましい。上記密度と粒径は汚染液体中の実質的に全ての懸濁粒子が上部層35と下部層33で捕捉されて流出溝36内に入る水は実質的に清澄になるためには好ましい値である。
ろ床34の上部層35は下部層33より小さな密度と大きな粒径を有するろ材にするのが好ましく、(以下で詳細に説明する)逆洗と補充操作が終了した時に、各層のろ過特性を維持するために上下層35、33の混合を最少にするために上記の構成の砂にする。下部層の砂は上部層35より密度が高い砂であり、上部層35の密度の小さな粒子より速く沈降するため2つのろ過媒体は互に分離して混合が最少となり、上部層35は常に下部層33の上にくる。
汚染液体内の溶解粒子が問題にならず且つ取除きも必要でない場合に、フイルタベッド(ろ床)34の上部層35はほぼ1.6gr/cm3の密度で且つほぼ0.85mm~0.95mmの範囲の粒子サイズを有するフイルタ無煙炭から成ることが好ましい。無煙炭の密度(1.6gr/cm3)は砂の密度(2.07gr/cm3)より小さいから、無煙炭,は洗浄動作の後に砂の上になる。無煙炭の粒子サイズは0.85mm~0.95mmであるから、無煙炭は汚染液体内の大きい方の浮遊粒子をつかまえる。しかしながら、無煙炭粒子のサイズが大きいから、大きな空所を隣接無煙炭粒子間に作り、それで無煙炭を余り抵抗なく流れることができ、従つて無煙炭を適当な速度で通過することができる。」(第9頁左下欄第2行~第10頁左上欄第3行)
(コ)引用文献15に記載された事項
a 「日本水道協会(JWWA A103:2006-2)水道用アンスラサイト抄記
日本水道協会規格(JWWA A103:2006-2)では次のように規定されています。
《主成分及び品質》
アンスラサイトはろ過池におけるろ過及び洗浄が、安定かつ効率よく行うことができるものであって、主成分、品質(物性)及び品質(浸出性)の規定に適合しなければならない。
◎主成分
アンスラサイトの主成分は、石炭のうち最も炭化度の進んだ良質な無煙炭を破砕、粒状にしたもので、揮発分や灰分が少なく炭素含有量が多いもの。
◎品質
品質(物性・浸出性)は、定められた条件で試験を行い表1の規定に適合しなければならない。」
b 「[表1 品質]
[図:0001438769000005.jpg]
」
(サ)引用文献16に記載された事項
a 「【0026】 ろ材には様々な基体がある。合成繊維の集合体や粒状活性炭、アンスラサイトと呼ばれる無煙炭、珪砂と呼ばれるケイ酸質の鉱物粒など、バクテリアが住み着ける微小空間を有することが必須条件となる。アンスラサイトはろ過砂より比重が軽く、洗浄性に富んでいることから、珪砂と同様多くの浄水場で使用されている。」
b 「【0062】 ここでは、ろ材の基体として、既に記載のポリエステル繊維集合体に加え、ポリエステルとポリエチレン繊維の複合集合体、アンスラサイトおよび珪砂を使用した。アンスラサイトとは原材料が無煙炭で無数の微細孔を有する。ここでは一般の市販品で、比重が1.5、空隙率が55%、粒径が1.2mmのものを使用した。また珪砂とは浄水場のろ過工程において最も一般的に使用されているろ材の基体で、主成分をシリカとする自然石であって無数の微細孔を有する。ここでは一般の市販品で、比重が2.6、空隙率が45%、粒径が2~3mmのものを使用した。」
イ 引用文献2に記載された発明及び引用文献7~16から認定できる技術常識若しくは周知技術
(ア)引用文献2に記載された発明
前記ア(ア)cに示されるとおり、引用文献2の請求項1には、「ろ過速度が240m/日を超えるろ過装置であって、
アンスラサイトからなるアンスラサイト層と、該アンスラサイトよりも有効径が小さく、かつ該アンスラサイトよりも密度が大きい珪砂からなる珪砂層と、を含むろ層を備え、
前記アンスラサイト層は、前記珪砂層と等しい厚さか、または前記珪砂層よりも厚く、
前記ろ層全体の厚さは、600mmを超え、かつ2000mm以下であることを特徴とするろ過装置。」が記載されている。
そして、同aの[0033]には、請求項に記載された発明の実施形態に係るろ過装置におけるろ層40の構造を示す図3に関し、「ろ層40は、アンスラサイト層と珪砂層から構成されている」こと、「ろ層40は、有効径が大きく、かつ密度が小さいアンスラサイトと、該アンスラサイトよりも有効径が小さく、かつアンスラサイトよりも密度が大きい珪砂と、の異なる二種類のろ材で構成される」ことが記載されている。
また、同bの[0040]には、「ろ層構成とろ過性能との関係を調べるために行った実験」についての説明が記載され、「実験は図4に示す実験装置を用いて行った。この実験装置は、・・・ろ過塔61,62と・・・を備えている。ろ過塔61,62は、それぞれろ層63を備えている。このろ層63の構成は、図3に示す実施形態と同じように、アンスラサイト層と珪砂層とから構成されている。」と記載されており、さらに、同[0045]、[0046]には、「実施例1」について「図4に示す実験装置により、有効径0.6mm、均等係数1.4の珪砂、および有効径1.2mm、均等係数1.4のアンスラサイトをろ材に用いて、ろ過速度360m/日で連続ろ過を行った。」、「ろ層構成No.1・・・、および珪砂層厚を300mm、アンスラサイト層厚を500mmとしたろ層構成No.8・・・でそれぞれ84時間の連続ろ過を行い、ろ過性能を比較した。その結果、ろ過水濁度が0.05度、または0.1度を超過するまでのろ過時間は、図7の表に示す通り、アンスラサイト層が厚いNo.8が有意に長かった。」と記載されている。
したがって、上記の記載事項を、[請求項1]のろ過装置の具体例である実施例1のろ層構成No.8を用いた場合の装置に着目して整理すると、引用文献2には、以下の発明(以下、引用発明)が記載されている。
「ろ過速度が240m/日を超える360m/日で連続ろ過を行うろ過装置であって、
有効径1.2mm、均等係数1.4のアンスラサイトからなるアンスラサイト層と、該アンスラサイトよりも有効径が小さく、かつ該アンスラサイトよりも密度が大きい、有効径0.6mm、均等係数1.4の珪砂からなる珪砂層と、を含むろ層を備え、
前記アンスラサイト層は、前記珪砂層の厚み300mmよりも厚い500mmである、ろ過装置。」
(イ)引用文献7~16から認定できる技術常識若しくは周知技術
a ろ材として使用される「珪砂」と「ろ過砂」の関係について
(a)引用文献7には、「日本水道協会規格(JWWA A 103:2006-2)」では、ろ過砂の主成分はけい酸で、天然に産するけい砂とする、と規定されていることが記載されている。
ここで、引用文献8の前記ア(ウ)の記載によれば、「JWWA規格」の「A 103:2006」は、平成24年8月10日に改定され、その後は改定を経ていないといえるから、引用文献7の掲載日は明らかではないものの、引用文献7に記載される「日本水道協会規格(JWWA A 103:2006-2)」は、本願出願当時に使用されていた規格である。
(b)引用文献9には、砂ろ過装置には、珪砂からなるろ過砂などがあると記載されている。
(c)引用文献10には、普通の濾過砂は珪砂であって比重2.55~2.70であることが記載されている。
(d)引用文献11には、ろ過層は、珪砂等のろ過砂を用いることができると記載されている。
(e)引用文献12には、ろ過材として「ろ過砂(珪砂)」が記載されている。
(f)前記(a)~(e)によれば、ろ過の分野において、「ろ過砂」との技術用語は、ろ材として使用される「珪砂」を意味しているか、少なくとも代表的なものとして前記「珪砂」を含む用語であることが技術常識若しくは周知技術であるといえる。
b 複数の層を有するろ過装置のろ材構成について
(a)引用文献13には、二層式濾過装置として、濾材である砂として、比重が小さく且つ粒径の大きなアンスラサイト(無煙炭)と比重が大きく且つ粒径が小さい硅砂とを使用するものが知られており、これらの組み合わせの場合には、アンスラサイトが上層に、そして硅砂が下層に成層化するために被処理水を通水すると、アンスラサイトで荒取り、そして硅砂で精密取りがなされることが記載されている。
(b)また、引用文献14には、細い粒状ろ材の下部層と下部層の上方に配置された粗大粒状ろ材の上部層によって構成されるろ床において、前記上部層を前記下部層より小さな密度と大きな粒径を有するろ材にすることが記載されている。そして、それにより、逆洗と補充操作が終了した時に、下部層のろ材が上部層のろ材より密度が高く、早く沈降するため、2つのろ材は互いに分離して混合が最小となり、上部層は常に下部層の上にくることとなり、各層のろ過特性が維持できることが記載されている。さらに、前記下部層として「密度が実質的に2.07g/cm3で粒子径範囲が実質的に0.60から0.65mmであるろ過砂」が、前記上部層として「ほぼ1.6gr/cm3の密度で且つほぼ0.85mm~0.95mmの範囲の粒子サイズを有するフィルタ無煙炭」が好ましいことも記載されている。
(c)以上より、複数の層を有するろ過装置を、アンスラサイト(無煙炭)に例示される粒径が大きく密度の小さいろ材の上部層と、ろ過砂(硅砂、珪砂)に例示される粒径が小さく密度の大きいろ材の下部層によって構成することで、荒取りと精密取りの組み合わせによるろ過が行えるとともに、逆洗等の際に密度の大きい下部層のろ材が早く沈降するため各層が互いに分離して混合を抑制できることは、ろ過技術に関する技術常識若しくは周知技術であるといえる。
c ろ材として使用されるアンスラサイト又は珪砂の密度について
(a)引用文献7には、「日本水道協会規格(JWWA A 103:2006-2)」では、けい砂である「ろ過砂」の密度(g/cm3)が2.57~2.67と規定されていることが記載されている。
(b)引用文献10には、普通の濾過砂は珪砂であって比重2.55~2.70であることが記載されている。
(c)引用文献12には、ろ過材として、比重1.4~1.6のアンスラサイトや比重2.57~2.67のろ過砂(珪砂)が記載されている。
(d)引用文献13には、比重1.5~1.6のアンスラサイトと比重2.5~2.6の硅砂を濾材砂層として用いることが記載されている。
(e)引用文献14には、密度が実質的に2.07g/cm3のろ過砂やほぼ1.6gr/cm3の密度のフィルタ無煙炭をろ材として用いることが記載されている。
(f)引用文献15には、「日本水道協会規格(JWWA A 103:2006-2)」では、「アンスラサイト」の密度(g/cm3)が1.40~1.69と規定されていることが記載されている。
前記a(a)で述べたとおり、「JWWA規格」の「A 103:2006」は、平成24年8月10日に改定され、その後は改定を経ていないといえるから、引用文献15に記載される「日本水道協会規格(JWWA A 103:2006-2)」は、本願出願当時に使用されていた規格である。
(g)引用文献16には、ろ材として、比重が1.5のアンスラサイトや比重が2.6の珪砂を使用することが記載されている。
(h)「密度」と「比重」は数値として一致することから、前記(a)~(g)によれば、ろ材である、アンスラサイト(無煙炭)及び珪砂の密度(g/cm3)が、通常それぞれ「1.40~1.69」、「2.07~2.70」程度の範囲内にあることは、技術常識若しくは周知技術であるといえる。
なお、本件明細書においても、背景技術を説明する【0005】に「ろ過材としては、例えば、アンスラサイト(有効径0.7~4.0mm、均等係数1.2以上、密度1.4~1.6)、粒状活性炭(有効径0.7~4.0mm、均等係数1.2以上、密度1.7以下)、ビーズ状炭素系ろ過材(有効径0.7~4.0mm、均等係数1.2以上、密度1.4~1.6)、ろ過砂(有効径0.45~0.7mm、均等係数1.2以上、密度2.57~2.67)、セラミックスの人工骨材等が使用されている。」と記載されており、前記技術常識と合致している。
ウ 対比・判断
(ア)補正発明と引用発明の対比
補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「アンスラサイト」の「有効径」は「1.2mm」、「均等係数」は「1.4」であるから、前記「アンスラサイト」の「有効径と均等係数の積」は、1.68mm(1.2mm×1.4)であり、補正発明における「アンスラサイトまたは粒状活性炭」の「有効径と均等係数の積」の範囲である「0.5~6.0mm」に含まれている。
そして、引用発明の「アンスラサイト層」はろ層を構成するものであるから、引用発明の「有効径1.2mm、均等係数1.4のアンスラサイトからなるアンスラサイト層」は、補正発明の「有効径と均等係数の積が0.5~6.0mmであるアンスラサイトまたは粒状活性炭からなるろ過層」に相当する。
b 前記イ(イ)aで述べたとおり、ろ過の分野において、「ろ過砂」との技術用語は、ろ材として使用される「珪砂」を意味しているか、少なくとも前記「珪砂」を含む用語であるから、引用発明の「珪砂」は、補正発明の「ろ過砂」に相当する。
また、引用発明の「珪砂」の「有効径」は「0.6mm」、「均等係数」は「1.4」であるから、前記「珪砂」の「有効径と均等係数の積」は、0.84mm(0.6mm×1.4)であり、補正発明における「ろ過砂」の「有効径と均等係数の積」の範囲である「0.5~6.0mm」に含まれている。
そして、引用発明の「珪砂層」はろ層を構成するものであるから、引用発明の「有効径0.6mm、均等係数1.4の珪砂からなる珪砂層」は、補正発明の「有効径と均等係数の積が0.5~6.0mmであるろ過砂からなるろ過層」に相当する。
c 前記a及びbで述べたとおり、引用発明の「アンスラサイト」の「有効径と均等係数の積」は、「1.68mm」であり、引用発明の「珪砂」の「有効径と均等係数の積」は、「0.84mm」である。そうすると、前記「珪砂」の「有効径と均等係数の積」に対する、前記「アンスラサイト」の「有効径と均等係数の積」の比は、「2」(1.68mm/0.84mm)となり、補正発明における「前記ろ過砂の有効径と均等係数の前記積に対する、前記アンスラサイトまたは前記粒状活性炭の有効径と均等係数の前記積の比」の範囲である「1.5~2.5」に含まれている。
そうすると、引用発明における「有効径1.2mm、均等係数1.4のアンスラサイト」及び「有効径0.6mm、均等係数1.4の珪砂」は、補正発明の「前記ろ過砂の有効径と均等係数の前記積に対する、前記アンスラサイトまたは前記粒状活性炭の有効径と均等係数の前記積の比は、1.5~2.5であり」との関係を満たしているといえる。
d さらに、引用発明の「ろ過装置」は、「アンスラサイト層と、・・・珪砂層と、を含むろ層」とあるように、複数の層を含む「ろ層」を備えるものであるから、補正発明の「複層ろ過装置」に相当するといえる。
e 以上によれば、補正発明と引用発明は、
「有効径と均等係数の積が0.5~6.0mmであるアンスラサイトまたは粒状活性炭からなるろ過層と、有効径と均等係数の積が0.5~6.0mmであるろ過砂からなるろ過層を有し、前記ろ過砂の有効径と均等係数の前記積に対する、前記アンスラサイトまたは前記粒状活性炭の有効径と均等係数の前記積の比は、1.5~2.5である、複層ろ過装置。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
<相違点>
補正発明では、「アンスラサイトまたは粒状活性炭」の「密度は1~2g/cm3」であり、「ろ過砂」の「密度は2~4g/cm3である」のに対し、引用発明では、「珪砂」は「アンスラサイトよりも密度が大きい」ものの、「アンスラサイト」及び「珪砂」の具体的な密度は明らかではない点。
(イ)相違点に対する判断
以下、相違点について、検討する。
まず、前記相違点における「密度」について、本件明細書の【0005】の「浄水処理に使用する場合には、日本水道協会(JWWA)が定めるろ過材規格品を使用する。そのろ過材規格では、水道用濾材(例えばアンスラサイト、ろ過砂)の物性は比重で表記される。その比重は真比重を示し、真比重は真密度であるので、ここでは単に密度とする。」との記載によれば、「真比重」又は「真密度」を意味しているといえる。
そして、「真密度」(真比重)は、材料特有の値であるところ、引用発明における「アンスラサイト」及び「珪砂」は、上記のとおり本件明細書において「浄水処理に使用する場合には、日本水道協会(JWWA)が定めるろ過材規格品を使用する。」とされている補正発明の「アンスラサイト」及び「ろ過砂(珪砂)」と同じ材料であって、引用発明におけるそれら材料の密度は、補正発明におけるそれら同じ材料の密度と同程度であるといえるから、引用発明における「アンスラサイト」及び「珪砂」の密度は、補正発明の「アンスラサイト」及び「ろ過砂(珪砂)」の密度の範囲内にあるといえる。
また、引用発明のろ層の材料の密度に関し、引用発明が、アンスラサイト層と、アンスラサイトよりも有効径が小さく密度が大きい珪砂からなる珪砂層とを含むろ層を備えていることの技術的意義は、前記イ(イ)bで認定したとおりの技術常識を踏まえれば、少なくともそのような密度の異なる層の組み合わせとすることによって、荒取りと精密取りの組み合わせによるろ過を行えるようにするとともに、逆洗等の際に密度の大きい下部層が早く沈降するため各層が互いに分離して混合を抑制できることにあると理解される。
そして、同cで述べたとおり、ろ材として用いられるアンスラサイト及びろ過砂(珪砂)の密度(g/cm3)は、それぞれ「1.40~1.69」、「2.07~2.70」程度の範囲内にあり、その密度の値は、同bの技術常識からも理解されるとおり、アンスラサイトよりも珪砂が大きいとの関係にある。そうすると、引用発明の「アンスラサイト」及び「珪砂」の密度が、それぞれ通常に使用されるろ材の範囲、つまり、少なくとも補正発明のアンスラサイトの密度「1~2g/cm3」及びろ過砂(珪砂)の密度「2~4g/cm3」の範囲内にあることは、技術常識若しくは周知技術から自明であるといえる。
仮に、引用発明の「アンスラサイト」及び「珪砂」の密度が、補正発明の「アンスラサイト」及び「ろ過砂(珪砂)」の密度の範囲内にない場合があり得るとしても、同bの技術常識を踏まえ、引用発明において、逆洗後の混合を抑制する程度の大小関係となる密度を有する「アンスラサイト」及び「珪砂」として、同cの技術常識のとおり、密度(g/cm3)が、それぞれ「1.40~1.69」、「2.07~2.70」程度の通常のものを用い、結果として相違点に係る補正発明の構成の範囲内とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。また、それにより補正発明が格別の効果を奏するものでもない。
そうすると、前記一応の相違点は、実質的な相違点ではないか、仮に実質的な相違点であるとしても、前記相違点に係る補正発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、補正発明は、引用発明であるか、引用発明及び技術常識から当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)審判請求人の令和6年12月 5日付けの、審判請求書の請求の理由に対する手続補正書における主な主張について
a 審判請求人の主張
審判請求人は、以下のとおり主張している。
「請求項1,5は、「前記アンスラサイトの密度は1~2g/cm3であり、前記ろ過砂の密度は2~4g/cm3であり、前記ろ過砂の有効径と均等係数の積に対する、前記アンスラサイトの有効径と均等係数の積の比は、1.5~2.5である」との発明特定事項を有するものである。3つの要素、すなわち、1.アンスラサイトの密度が1~2g/cm3であること、2.ろ過砂の密度が2~4g/cm3であること、3.ろ過砂の有効径と均等係数の積に対する、アンスラサイトの有効径と均等係数の積の比が、1.5~2.5であることの組み合わせにより、段落0025に記載した以下の効果が得られる。
・有効径と均等係数の積の値が1.5~2.5のろ過材は、ろ過層の逆流洗浄効果を高くでき、ろ過継続時間を長くすることができるので、ろ過層の洗浄頻度が減り、安定したろ過ができる。
・本発明の最適逆流洗浄速度は、調和平均径より求めた値より有効径と均等係数の積で計算した値のほうが大きいので、逆流洗浄時間が大幅に短縮できる。
・ろ過継続時間を長くでき、逆流洗浄頻度が低下するので、ろ過後のろ過層の洗浄のための洗浄水量や洗浄排水量が少なくて済む。
・ろ過層の洗浄時の分級や異なるろ過材のろ過層での混ざり合いが発生しない。また、ろ過層の逆流洗浄の時間、動力費や洗浄水量、排水量が低減できる。
上述した引用文献1-6のいずれにも、請求項1,5の3つの要素を備えた装置は開示されていない。特に、本願発明は、ろ過材の物性の評価指標として新規な指標、すなわち有効径と均等係数の積を使用することは、引用文献1-6には示唆がなく、これら引用文献から当業者が有効径と均等係数の積を思いつくことはできない。
この新規な指標である、有効径と均等係数の積を使用する理由は、段落0041-0044に記載されている。すなわち、ろ過前段の凝集沈殿処理や被ろ過液に高分子凝集剤を使用した場合、高分子凝集剤を使用しない場合より、ろ過層での濁質等の除去効果が高まり、ろ過層で捕捉される濁質や凝集フロックが強固にろ過材に付着する。従来の最適逆流洗浄速度ではろ過層の洗浄が不十分で、ろ過初期のろ過抵抗が高く、さらにろ過継続中のろ過抵抗が高まりやすい。本発明の最適逆流洗浄速度は、有効径と均等係数の積に基づいて計算されるので、従来の逆流洗浄速度よりも高い速度が算出され、結果としてろ過層の洗浄効果がより高まる(請求項4)。ろ過層の逆流洗浄効果が向上することでろ過抵抗が低下して、ろ過継続時間が向上する。洗浄時間は、最適逆流洗浄速度が調和平均径よりろ過材の有効径と均等係数の積の値のほうが速いので短縮される。さらに高分子凝集剤を使用することで、ろ過層の厚さが小さくなり、ろ過層に捕捉された濁質等がろ過層から排出されやすくなる。
このような新規な評価指標である有効径と均等係数の積は、引用文献1-6のいずれにも開示されていない。引用文献3には、有効径、均等係数と調和平均径との関係を示す記載はあるが、ろ過材の物性の評価指標として有効径と均等係数の積を使用することは全く示唆されていない。したがって、引用文献1-6に接した当業者は、本願発明を容易に想到することはできない。」
b 前記aの主張に対する当審の判断
発明の新規性及び進歩性は、特許請求の範囲に記載される請求項に係る発明と、引用文献に記載された発明を対比して判断すべきものであるところ、前記(ア)及び(イ)で述べたとおり、本件補正後の請求項5に記載された「1.アンスラサイトの密度が1~2g/cm3であること、2.ろ過砂の密度が2~4g/cm3であること、3.ろ過砂の有効径と均等係数の積に対する、アンスラサイトの有効径と均等係数の積の比が、1.5~2.5であること」との発明特定事項は、引用文献2に記載されているか、記載されているに等しく、補正発明と引用発明の間に、「複層ろ過装置」という物の発明として実質的な差異はない。
仮に、「有効径と均等係数の積」が、ろ過材の物性の評価指標として新規に見出された指標であるとしても、それを引用発明との構成上の実質的な相違とすることができる発明としなければ、少なくとも新規性欠如の理由は解消しない。
補正発明は、複層ろ過装置のろ過層の構成を前記1.~3.の数値範囲で特定するものであるところ、たとえ、それらの数値そのものが従来公知のアンスラサイト層とろ過砂層からなるろ過装置において明示されていなかったとしても、自ずと何らかの値となる物性を有しているのであるから、従来公知のろ過装置の前記値が補正発明の前記値と異なるのであればともかく、結果的にこれが同じであるならば、従来公知の技術に対して新規な発明であることにはならない。引用発明に照らしてみると、引用文献2には、「アンスラサイト」及び「珪砂」の「密度」や「有効径と均等係数の積」の値そのものは直接的に示されていないものの、引用発明の「アンスラサイト」及び「珪砂」は、前記(ア)及び(イ)で述べたとおり、引用文献2の記載又は技術常識を踏まえると、結果として、前記1.~3.の数値範囲を満たしている。その場合、補正発明と引用発明との間に「複層ろ過装置」という物の発明として実質的な差異はなく、補正発明は、引用発明に対して新規な発明であるとはいえない。
また、前記(イ)で検討したとおり、仮に、前記相違点が実質的なものだったとしても、荒取りと精密取りの組み合わせによるろ過を行うとともに逆洗後の混合を抑制するよう、有効径が大きく、かつ密度が小さいアンスラサイトと、該アンスラサイトよりも有効径が小さく、かつアンスラサイトよりも密度が大きい珪砂をろ材として用いる引用発明において、アンスラサイトと珪砂(ろ過砂)の密度を、補正発明に特定された範囲内とする程度のことは、当業者が容易になし得たことであり、それにより格別の効果が奏されるものとも認められない。
審判請求人は、前記1.~3.の組み合わせにより段落0025に記載した4点の効果を発揮する旨を主張している。しかしながら、主張される効果は全てろ過層の逆流洗浄に関する効果、又はそれに付随して生じる効果であるところ、補正発明では逆流洗浄について何ら特定されていないから、前記主張は補正後の請求項5の記載に基づかないものであって採用できない。
また、仮に、逆流洗浄に関する特定があるものと解したとしても、前記主張における1点目に記載された「ろ過層の逆流洗浄効果を高くでき、ろ過継続時間を長くすることができるので、ろ過層の洗浄頻度が減り、安定したろ過ができる」との効果、及びそれに付随する3点目、4点目の後半に記載された「ろ過継続時間を長くでき、逆流洗浄頻度が低下するので、ろ過後のろ過層の洗浄のための洗浄水量や洗浄排水量が少なくて済む」、「ろ過層の逆流洗浄の時間、動力費や洗浄水量、排水量が低減できる」との効果は、「有効径と均等係数の積の値が0.5~6.0のろ過材」によるとされている。一方、前記(ア)で述べたとおり、引用発明の「アンスラサイト」及び「珪砂」の「有効径と均等係数の積の値」は、それぞれ1.68mm、0.84mmであるから、結果として「有効径と均等係数の積の値が0.5~6.0のろ過材」を備えた引用発明においても前記効果は自ずと奏されるといえる。さらに、4点目の前半に記載された「ろ過層の洗浄時の分級や異なるろ過材のろ過層での混ざり合いが発生しない」という効果については、本件明細書の【0058】、【0059】には「本発明では、有効径と均等係数の積が0.5~6.0のろ過材2,3を使用することとしたが、密度の大小異なる2種類のろ過材2,3でろ過層5を構成する複層ろ過において、ろ過層5の洗浄時の分級や異なるろ過材2,3のろ過層5での混ざり合いを考慮し、密度の大きい第2ろ過材3の有効径と均等係数の積に対する、密度の小さい第1ろ過材2の有効径と均等係数の積の最適な比(ろ過材粒径比)Sは、1.0~5.0である。」、「上記比Sが1.0以上であれば、ろ過層5の洗浄時の分級や異なるろ過材2,3のろ過層5内での混ざり合いが発生しない。」と記載されている。そして、前記(ア)で述べたとおり、引用発明の、密度の大きい「珪砂」の「有効径と均等係数の積」に対する、密度の小さい「アンスラサイト」の「有効径と均等係数の積」の比は「2」であり、「1.0~5.0」の範囲を満たしているから、4点目の前半に記載された前記効果についても引用発明において自ずと奏されることとなる。
さらに、審判請求人は、「この新規な指標である、有効径と均等係数の積を使用する理由は、段落0041-0044に記載されている。」として、高分子凝集剤を使用した場合の効果や最適逆流洗浄速度が有効径と均等係数の積に基づいて計算されることに基づく効果(前記4点の効果のうち、2点目に記載された効果と同様)についても主張しているが、補正発明では、高分子凝集剤を使用することも、最適逆流洗浄速度を有効径と均等係数の積に基づいて計算することも特定されていない。したがって、審判請求人が主張する前記効果は、いずれも補正後の請求項5の記載に基づくものではない。
よって、前記aでの審判請求人の主張を採用することはできない。
(エ)小括
以上のとおり、補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないし、仮に、そうではないとしても、当業者が、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(3)補正の適否についてのむすび
前記(2)で述べたように、補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、仮に、そうではないとしても、同法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、令和6年 4月30日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された発明のうち、複層ろ過装置に関する請求項9に係る発明は、前記手続補正書の特許請求の範囲の請求項9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項9に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、令和6年 7月25日付け拒絶査定に記載された理由1及び2であって、その理由1は、本願発明は、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献2:国際公開第2018/047453号
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)ア(ア)に記載したとおりであり、引用文献2の記載事項から認定される発明は、同イ(ア)に記載したとおりのものである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(1)での検討を踏まえると、補正発明に対して、「ろ過砂」の「有効径と均等係数の積」に対する、「アンスラサイトまたは粒状活性炭」の「有効径と均等係数の積」の比の範囲を、「1.5~2.5」から「1.0~5.0」に拡張するとともに、「アンスラサイトまたは粒状活性炭」及び「ろ過砂」に対して、それぞれ、「密度は1~2g/cm3であり」及び「密度は2~4g/cm3である」との限定事項をないものとし、「アンスラサイト又は粒状活性炭」及び「ろ過砂」を拡張したものにあたる。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その一部の発明特定事項がさらに限定されたものに相当する補正発明が、前記第2の[理由]2(2)ウで述べたとおり、引用発明であるか、又は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願発明も、補正発明と同様に、引用発明であるか、又は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、同法第49条第2号に該当するから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
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2024-017241