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特許拒絶査定不服審判

2024-004403

多点平衡構成の磁気計

審判番号
2024-004403
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-126643
請求日
2024年03月13日
審決日
2025年04月30日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】メソード・エレクトロニクス・マルタ・リミテッド
  • 【請求人代理人】伊東 忠重
  • 【請求人代理人】伊東 忠彦
  • 【請求人代理人】宮崎 修
審判長/審判官
  • 審判長 濱野 隆
  • 審判官 貝沼 憲司
  • 審判官 谷垣 圭二
分類
P18 .121-Z (G01L) / P18 .575-Z (G01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019-126643「多点平衡構成の磁気計」拒絶査定不服審判事件〔令和2年2月6日出願公開、特開2020-20786〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年7月8日(パリ条約による優先権主張2018年7月9日(DE)ドイツ連邦共和国)の外国語書面出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。以下、2018年7月9日を「優先日」という。 令和元年 8月 2日 :翻訳文の提出 令和5年 4月 6日付け:拒絶理由通知書 同年10月11日 :意見書、手続補正書の提出 同年11月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月14日 :原査定の謄本の送達) 令和6年 3月13日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年3月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年3月13日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年3月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年10月11日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1及び請求項13の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項13の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 少なくとも部分的に強磁性の物質を有する部材であって、磁化可能領域が、互いに隣接して配置された1つ又は複数の磁化可能トラックを含み、前記磁化可能トラックは、反対方向の磁化を持ち、前記1つ又は複数の磁化可能トラックは、前記部材に関して軸方向に配置されている、部材と、 少なくとも1つのコイルを含む第1の磁場センサであって、前記部材に関して径方向に配置され、周囲環境から及び/又は前記部材からの磁気情報を検出して信号を発信し、少なくとも2つの磁化可能トラックのそれぞれに割り当て可能である、第1の磁場センサと、 少なくとも1つのコイルを含む第2の磁場センサであって、前記部材に関して径方向に配置され、周囲環境から及び/又は前記部材からの磁気情報を検出して信号を発信し、少なくとも2つの磁化可能トラックのそれぞれに割り当て可能である、第2の磁場センサと、又は、 それぞれ、少なくとも1つのコイルを含む1つ又は複数のさらなる磁場センサであって、前記部材に関して径方向に配置され、周囲環境からの磁気情報を検出し、及び/又は、信号を発信し、1つ又は複数のさらなる磁化可能トラックに割り当て可能である、1つ又は複数のさらなる磁場センサと、を備える、外部の磁気の影響を判定する磁場センサ装置であって、 各前記磁場センサの信号は、少なくとも1つの別の磁場センサの信号に関連して設定され、 各磁気トラックに関連付けられた前記磁場センサによって生成された信号は、少なくとも1つの個別信号チャンネルを形成し、 信号チャンネルを形成するために、第1の磁場センサ及び第2の磁場センサは、割り当てられた磁気トラックの磁化の方向に沿って、軸方向に互いに組み合わされ、 外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)が1つの共通のチャンネル(Ch4)の基礎を形成し、 前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)のコイルが、外側の第1の磁気トラックと第2の磁気トラック(155,161)との両方に関連付けられており、これらのコイルは第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号を形成し、 前記共通のチャンネルの全数のコイル及び全数のセンサによって第1の信号が形成され、前記コイルは、中央の磁気トラック(156)に対して径方向に配置され、 前記外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)に関する前記第1のチャンネル(Ch1)の信号が、前記中央の磁気トラック(156)によって形成された信号と比較される、磁場センサ装置。」 「【請求項13】 外部の磁気の影響を判定する装置の使用であって、前記装置は、 少なくとも部分的に強磁性の物質を有する部材であって、磁化可能領域が、1つ又は複数の相反する磁気トラックを有し、少なくとも3つの磁気トラックが、前記部材に関して軸方向に配置された、部材と、 信号を発信する第1の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、第1の磁気トラック、及び、中央の磁気トラックに割り当て可能である第1の磁場センサと、 信号を発信する第2の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、前記中央の磁気トラック、及び、第3の磁気トラックに割り当て可能である第2の磁場センサと、を備え、 前記第1の磁場センサの信号は、前記第2の磁場センサの信号に関連して設定可能であり、 外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)が1つの共通のチャンネル(Ch4)の基礎を形成し、 前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)のコイルが、外側の第1の磁気トラックと第2の磁気トラック(155,161)との両方に関連付けられており、これらのコイルは第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号を形成する、 装置の使用。」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 少なくとも部分的に強磁性の物質を有する部材であって、磁化可能領域が、互いに隣接して配置された1つ又は複数の磁化可能トラックを含み、前記磁化可能トラックは、反対方向の磁化を持ち、前記1つ又は複数の磁化可能トラックは、前記部材に関して軸方向に配置されている、部材と、 少なくとも1つのコイルを含む第1の磁場センサであって、前記部材に関して径方向に配置され、周囲環境から及び/又は前記部材からの磁気情報を検出して信号を発信し、少なくとも2つの磁化可能トラックのそれぞれに割り当て可能である、第1の磁場センサと、 少なくとも1つのコイルを含む第2の磁場センサであって、前記部材に関して径方向に配置され、周囲環境から及び/又は前記部材からの磁気情報を検出して信号を発信し、少なくとも2つの磁化可能トラックのそれぞれに割り当て可能である、第2の磁場センサと、又は、 それぞれ、少なくとも1つのコイルを含む1つ又は複数のさらなる磁場センサであって、前記部材に関して径方向に配置され、周囲環境からの磁気情報を検出し、及び/又は、信号を発信し、1つ又は複数のさらなる磁化可能トラックに割り当て可能である、1つ又は複数のさらなる磁場センサと、を備える、外部の磁気の影響を判定する磁場センサ装置であって、 各前記磁場センサの信号は、少なくとも1つの別の磁場センサの信号に関連して設定され、 各磁気トラックに関連付けられた前記磁場センサによって生成された信号は、少なくとも1つの個別信号チャンネルを形成し、 信号チャンネルを形成するために、第1の磁場センサ及び第2の磁場センサは、割り当てられた磁気トラックの磁化の方向に沿って、軸方向に互いに組み合わされ、 外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)が1つの共通のチャンネル(Ch4)の基礎を形成し、 前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)のコイルが、外側の第1の磁気トラックと第2の磁気トラック(155,161)との両方に関連付けられており、これらのコイルは、前記外側の第1の磁気トラック及び第2の磁気トラック(155,161)に対して径方向に配置され、且つ第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号及び第2のチャンネル(Ch2)の第2の信号を形成し、前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)の他のコイルが中央の磁気トラック(156)に関連付けられており、これらのコイルは、前記中央の磁気トラック(156)対して径方向に配置され、且つ第3のチャンネル(Ch3)の第3の信号を形成し、 前記共通のチャンネル(Ch4)の全数のコイル及び全数のセンサによって第4の信号が形成され、 前記共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号が、前記中央の磁気トラック(156)によって形成された前記第3のチャンネル(Ch3)の前記第3の信号と比較される、磁場センサ装置。」 「【請求項13】 外部の磁気の影響を判定する装置の使用であって、前記装置は、 少なくとも部分的に強磁性の物質を有する部材であって、磁化可能領域が、1つ又は複数の相反する磁気トラックを有し、少なくとも3つの磁気トラックが、前記部材に関して軸方向に配置された、部材と、 信号を発信する第1の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、第1の磁気トラック、及び、中央の磁気トラックに割り当て可能である第1の磁場センサと、 信号を発信する第2の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、前記中央の磁気トラック、及び、第3の磁気トラックに割り当て可能である第2の磁場センサと、を備え、 前記第1の磁場センサの信号は、前記第2の磁場センサの信号に関連して設定可能であり、 外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)が1つの共通のチャンネル(Ch4)の基礎を形成し、 前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)のコイルが、外側の第1の磁気トラックと第2の磁気トラック(155,161)との両方に関連付けられており、これらのコイルは、前記外側の第1の磁気トラック及び第2の磁気トラック(155,161)に対して径方向に配置され、且つ第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号及び第2のチャンネル(Ch2)の第2の信号を形成し、前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)の他のコイルが中央の磁気トラック(156)に関連付けられており、これらのコイルは、前記中央の磁気トラック(156)対して径方向に配置され、且つ第3のチャンネル(Ch3)の第3の信号を形成し、 前記共通のチャンネル(Ch4)の全数のコイル及び全数のセンサによって第4の信号が形成され、 前記共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号が、前記中央の磁気トラック(156)によって形成された前記第3のチャンネル(Ch3)の前記第3の信号と比較される、装置の使用。」 2 補正の目的 (1) 請求項1について ア 請求項1についての補正事項 本件補正のうち請求項1についてする補正は、次の(ア)から(エ)の補正をするものである。 (ア) 補正前の「これらのコイルは第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号を形成し」との記載を、「これらのコイルは、前記外側の第1の磁気トラック及び第2の磁気トラック(155,161)に対して径方向に配置され、且つ第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号及び第2のチャンネル(Ch2)の第2の信号を形成し」に補正すること。 (イ) 中央の磁気トラックについて、補正前の「前記コイルは、中央の磁気トラック(156)に対して径方向に配置され」との記載を、「前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)の他のコイルが、中央の磁気トラック(156)に関連付けられており、これらのコイルは、前記中央の磁気トラック(156)対して径方向に配置され、且つ第3のチャンネル(Ch3)の第3の信号を形成し」に補正すること。 (ウ) 補正前の「前記共通のチャンネルの全数のコイル及び全数のセンサによって第1の信号が形成され」との記載を、「前記共通のチャンネル(Ch4)の全数のコイル及び全数のセンサによって第4の信号が形成され」に補正すること。 (エ) 信号の比較について、補正前の「前記外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)に関する前記第1のチャンネル(Ch1)の信号が、前記中央の磁気トラック(156)によって形成された信号と比較される」との記載を、「前記共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号が、前記中央の磁気トラック(156)によって形成された前記第3のチャンネル(Ch3)の前記第3の信号と比較される」ことに補正すること。 イ 特許請求の範囲の限定的減縮に該当しないことについて (ア) 補正事項(エ)について 前記アに示した補正事項のうち、(エ)の補正事項について検討すると、当該補正は、中央の磁気トラックによって形成された信号と比較される信号(以下「比較対象信号」という。)について、次に示すとおり、本件補正の前後において異なる信号を比較対象信号とするものである。 <本件補正前> 「前記外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)に関する前記第1のチャンネル(Ch1)の信号」 <本件補正後> 「前記共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号」 (イ) 比較対象信号について a 上記比較対象信号についてさらに検討すると、本件補正前には、「各磁気トラックに関連付けられた前記磁場センサによって生成された信号は、少なくとも1つの個別信号チャンネルを形成し」とあり、「外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)が1つの共通のチャンネル(Ch4)の基礎を形成し」とあるから、本件補正前の「共通のチャンネル(Ch4)」は、「第1の磁気トラック(155)」に関連付けられた「第1のチャンネル(Ch1)」を基礎の一つとしている。 b この点を踏まえると、本件補正前の「第1のチャンネル(Ch1)の信号」は、「共通のチャンネル(Ch4)」の「信号」と無関係なものではなく、本件補正後の「前記共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号」は、本件補正前の「第1のチャンネル(Ch1)の信号」に由来するものであり、補正の前後で比較対象信号の属性に変更はないとも考えられる。 c しかしながら、本件補正前は、「個別信号チャンネル」と「共通のチャンネル」という語句を使い分けて記述しており、「共通のチャンネル(Ch4)」とは別に、「個別信号チャンネル」としての「第1のチャンネル(Ch1)」を有していたことを踏まえると、本件補正前の「第1のチャンネル(Ch1)の信号」と本件補正後の「共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号」は異なる属性の信号であるというべきである。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、当該補正事項(エ)は、本件補正前の請求項1の発明特定事項を限定するものではなく、いわゆる限定的減縮に該当しないことは明らかである。 したがって、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。 ウ その他の補正の目的要件にも該当しないことについて そして、本件補正のうち請求項1についての補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。 エ 請求項1についての補正のまとめ 以上検討のとおり、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない。 よって、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 (2) 請求項13について 前記(1)で検討したとおり、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない補正を含むものであるために却下されるべきものであるが、それは措くとして、請求項13についての補正の目的についても以下、検討する。 ア 本件補正のうち請求項13についてする補正は、次の限定をするものである。 補正前の「これらのコイルは第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号を形成する」を、 補正後は「これらのコイルは、前記外側の第1の磁気トラック及び第2の磁気トラック(155,161)に対して径方向に配置され、且つ第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号及び第2のチャンネル(Ch2)の第2の信号を形成し、前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)の他のコイルが中央の磁気トラック(156)に関連付けられており、これらのコイルは、前記中央の磁気トラック(156)対して径方向に配置され、且つ第3のチャンネル(Ch3)の第3の信号を形成し、 前記共通のチャンネル(Ch4)の全数のコイル及び全数のセンサによって第4の信号が形成され、 前記共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号が、前記中央の磁気トラック(156)によって形成された前記第3のチャンネル(Ch3)の前記第3の信号と比較される」 として、磁場センサのコイルについて、その配置、磁気トラックとの関連付け、コイルが形成する信号に係る事項を限定すること。 イ そして、本件補正前の請求項13に記載された発明と本件補正後の請求項13に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、本件補正により請求項13についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 本件補正は、前記2(1)のとおり、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない不適法な補正を含むものであるが、前記2(2)で検討した請求項13についての補正が、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するため、請求項1についての補正の適法性の判断とは別に、念のため、本件補正後の請求項13に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1) 本件補正発明 ア 本件補正発明の認定と分説 (ア) 「第3の磁気トラック」について 本件補正発明の「信号を発信する第2の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、前記中央の磁気トラック、及び、第3の磁気トラックに割り当て可能である第2の磁場センサと、を備え、」における「第3の磁気トラック」は、「外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)が1つの共通のチャンネル(Ch4)の基礎を形成し、」を踏まえると、「第2の磁気トラック」の明らかな誤記であると認められる。 (イ) 「前記中央の磁気トラック(156)対して径方向に配置され」について 本件補正発明の「前記中央の磁気トラック(156)対して径方向に配置され」は、「前記中央の磁気トラック(156)に対して径方向に配置され」の明らかな誤記であると認められる。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)より、本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項における「第3の磁気トラック」という記載を「第2の磁気トラック」と読み替え、「前記中央の磁気トラック(156)対して径方向に配置され」は、「前記中央の磁気トラック(156)に対して径方向に配置され」と読み替えたものにより特定されるとおりのものである。 ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成に適宜改行を加えたうえで、次のとおり構成Xと構成Aから構成Iまでに分説する。 <本件補正発明の分説> X 外部の磁気の影響を判定する装置の使用であって、前記装置は、 A 少なくとも部分的に強磁性の物質を有する部材であって、磁化可能領域が、1つ又は複数の相反する磁気トラックを有し、少なくとも3つの磁気トラックが、前記部材に関して軸方向に配置された、部材と、 B 信号を発信する第1の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、第1の磁気トラック、及び、中央の磁気トラックに割り当て可能である第1の磁場センサと、 C 信号を発信する第2の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、前記中央の磁気トラック、及び、第2の磁気トラックに割り当て可能である第2の磁場センサと、を備え、 D 前記第1の磁場センサの信号は、前記第2の磁場センサの信号に関連して設定可能であり、 E 外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)が1つの共通のチャンネル(Ch4)の基礎を形成し、 F 前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)のコイルが、外側の第1の磁気トラックと第2の磁気トラック(155,161)との両方に関連付けられており、これらのコイルは、前記外側の第1の磁気トラック及び第2の磁気トラック(155,161)に対して径方向に配置され、且つ第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号及び第2のチャンネル(Ch2)の第2の信号を形成し、 G 前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)の他のコイルが中央の磁気トラック(156)に関連付けられており、これらのコイルは、前記中央の磁気トラック(156)に対して径方向に配置され、且つ第3のチャンネル(Ch3)の第3の信号を形成し、 H 前記共通のチャンネル(Ch4)の全数のコイル及び全数のセンサによって第4の信号が形成され、 I 前記共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号が、前記中央の磁気トラック(156)によって形成された前記第3のチャンネル(Ch3)の前記第3の信号と比較される、 X 装置の使用。 イ 課題・作用効果等に関連する発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、製品の誤差、干渉作用、又は、他の影響による磁気的影響を判定するための磁気弾性センサ装置に関する。磁気弾性センサ装置は、少なくとも部分的に強磁性物質から成る部材、具体的には、外部の磁気の影響を判定するための2つ以上のセンサを含む装置を備える。 【背景技術】 【0002】 このような装置は、特に、少なくとも1つの磁気弾性センサを含む。磁気性センサの一例は、US 9,347,845 B2に開示されている。 【0003】 磁気弾性センサは、長手方向に延びるシャフト状部材を有しており、この部材は、負荷を受ける。磁気弾性活性領域が、当該部材の一部に直接的又は間接的に取り付けられるか、又は、当該部材の一部を形成することにより、機械的応力がこの活性領域に伝達されるようになっている。この活性領域の磁気的に偏極した領域は、加えられる応力が大きくなる程、らせん状になる。磁気弾性活性領域に近接して、この磁気的に偏極した領域から発生する応力誘導磁束に対応する信号を出力する磁場センサが配置されている。この磁気センサは、せん断応力及び圧縮応力のうちの1つを測定する。この磁気センサは、上記部材に対する所定かつ固定の空間整合性を有するように配置された、少なくとも1つの方向感受性磁場センサを含んでいてよい。 【0004】 US 2016/0238472 A1によれば、外部の磁気の影響を判定する装置は、少なくとも部分的に強磁性物質から成る部材を含む。これは、磁化可能領域が、少なくとも3つの磁気トラックを含むことをさらに示している。これらのうちの隣接する磁気トラックは、それぞれ、互いに逆方向に磁化されている。少なくとも3つの磁気トラックは、この部材に関して軸方向に配置されている。 【0005】 上記部材の径方向に配置された信号発信用の第1の磁場センサの少なくとも1つのコイルは、第1の外部磁気トラックと少なくとも1つの中央磁気トラックとに割り当てられることが可能である。前記部材に関して径方向に配置された信号発信用の第2の磁場センサの少なくとも1つのコイルは、少なくとも1つの中央磁気トラックと第2の外部磁気トラックとに割り当てられることが可能である。 【0006】 第1のセンサの信号は、第2のセンサの信号に関連付けて設定される。 【0007】 磁気トラックA及び磁気トラックBにわたる磁場、並びに、磁気トラックB及び磁気トラックCにわたる磁場の量、又は、磁場間の差分に関する情報が得られる。 【0008】 各測定が、チャンネルを個別に接続することにより行われるため、当該チャンネルにより出力される信号を、必要に応じて生成可能である。 [従来技術の欠点] 【0009】 現在の磁場センサの多くでは、満足する状態で並行して測定される2つ以上の部材の製造公差を除去することは困難である。 【0010】 最新の磁場センサの多くは、測定素子の公差又は部材の形状のいずれかにより生成された誤差を抽出しない。 【0011】 多くの場合、電流検知素子が、複数の磁気バンドを十分にカバーする並列チャンネルを使いこなすことは難しい。 【0012】 不要なノイズを除去するために情報を収集することと、警告の目的で情報を収集することとを同時に行うことは、難しいことが分かっている。 【0013】 公知の磁場センサは、近接場の量、又は、幾つかの磁気トラックにわたる磁場間の差分といった他の情報を提供しない。 【0014】 現在の磁場センサが行う測定は、ノイズや、周囲環境におけるいかなる磁場変化も抽出しない。 【0015】 本願は、磁束ゲート、ホール効果センサ、磁気抵抗センサ等の何等かの技術に基づき得る磁場センサに関する。以下では、本願は、磁場センサとしてのセンサに関する。 …(中略)… 【発明が解決しようとする課題】 【0017】 US 2016/0238472は、出願人の従来発明を保護するものであり、極めて多数の技術的応用において満足する結果を提供するものである。 【0018】 しかしながら、実務では、近接場ノイズ及びコモンモードフィールドの較正が、あらゆる応用の要件を満たしている訳ではない。 【0019】 まだ、実施には、多くの改善点及びさらなる作用があり、これが、以下に記載する本発明の目的に繋がる。 【0020】 本発明の一目的は、複数のチャンネルが厳密に一致するように、各チャンネルを個別に較正可能な磁気弾性センサ装置を提供することにある。したがって、本発明の一目的は、近接場ノイズ、コモンモードフィールド、及び、他の不要なノイズ信号を較正することにある。」 (2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 ア 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2016-176928号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。後記イの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。 (ア) 【請求項10】 「【請求項10】 外部からの磁気の影響を判定するための装置の使用において、 構成部品は、 少なくとも一部が強磁性体の材料を含み、 少なくとも三つの対向する磁気トラックを含む磁化可能な領域を備えており、 少なくとも三つの磁気トラックは、構成部品に関して軸線方向に配置されており、 構成部品に関して半径方向に配置された、信号を発するための少なくとも二つのコイルを含む第1の磁界センサは、第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラックに割り当てることができることとされており、 構成部品に関して半径方向に配置された、信号を発するための少なくとも二つのコイルを含む第2の磁界センサは、中央の磁気トラック及び第3の磁気トラックに割り当てることができることとされており、 第1の磁界センサの前記信号は、第2の磁界センサの前記信号に関して設定することができることとされている 外部からの磁気の影響を判定するための装置の使用。」 (イ) 段落【0048】~【0050】 「【0048】 少なくとも二つの磁気トラックを含む二つのグループの配置を以下に論じるように配置することは、例えば、干渉や誤作動により生じ得る、試験がされるべき製品における実際の状態や、生じ得る異常な状態を、より良好かつより区別された方法で評価するという目的に適うものであり、それは、この方法により、少なくとも二つの比較値が得られるからであり、これらの比較値は、少なくとも二つの磁気トラックを含む第1のグループの電圧及び少なくとも二つの磁気トラックを含む第2のグループのそれぞれの電圧から得ることができる。 【0049】 また、磁気トラックが空間的に密に配置されていることは、以下、説明するとおりであるが、これにより、磁気トラックのチャンネルの位置の間における、外部の磁界の差分を、できる限り、小さくすることができる。 【0050】 以下、第1の外側及び中央の磁気トラックを「第1のグループ」と呼び、中央及び第3、すなわち、第2の外側の磁気トラックを「第2のグループ」と呼ぶ。」 (ウ) 段落【0061】~【0069】 「【0061】 少なくとも二つの磁気トラックを含む第1のグループのセンサの信号を評価し、第1のグループの信号として伝達する。第1のグループの信号は、対向する二つの磁気トラックから得られた情報の第1の差分の評価の結果である。例えば、グループの信号は、ボルト又はミリボルト単位の計測可能な変数でもよいが、任意の他の計測可能な変数でもよい。 【0062】 少なくとも二つの磁気トラックを含む第2のグループのセンサの信号を、同様に評価し、第2のグループの信号として伝達する。第2のグループの信号もまた、対向する二つの磁気トラックから得られた情報の第1の差分の評価の結果である。例えば、第2のグループの信号は、ボルト又はミリボルト単位の計測可能な変数でもよいが、任意の他の計測可能な変数でもよい。 【0063】 それぞれのセンサの出力信号は、互いに対向しており、それは、一方のグループが負の分極を計測し、他方のグループが正の分極を計測することによる。」 「【0065】 物理的な意味において、センサは、一つの磁気トラックだけ位置が変更されており、対向する信号の値の形式が反転した反応を計測する。最後にしかし重要なことは、本発明によれば、このような「位置の変更」は、とりわけ、外部からの磁気の影響、すなわち、磁気弾性的な磁界以外のものがあることを判定するために役立つ。 【0066】 前述の逆方向の反応は、一つの磁気トラックだけ前述の「位置の変更」がされていることにより、センサは、磁気トラックの磁化の反転を検出するが、それは、磁気トラックの磁化の配置による、正から負へ、又は負から正へという、前述した磁化の連続に従う。 【0067】 物理的な意味で、一つの磁気トラックだけ、センサがこのように「位置の変更」がされているとき、このセンサは、冗長センサの機能を有しており、異なる態様において計測をする。 【0068】 この観点において冗長性は、二重検出-評価システムを提供するものであり、そのシステムは、センサの情報が失われた場合に補う機能を有する。 【0069】 冗長性は、従来の意義において意味するところは、二つのセンサによる計測が同じ方向でされるということであり、それは、磁気トラックの配置が同じであることによるが、冗長性が、ここで意味するところは、二つのセンサによる計測が、対向する方向においてもされるということであり、それは、初めに前述したような、二つのデュアル・バンドのシステムの機能的な組合せの結果による。この場合、情報は、例えば、第1の外側及び中央の磁気トラック、並びに中央及び第3、すなわち、第2の外側の磁気トラックからの情報が提供され、又はその逆の態様のことが行われる。この情報から、更に第2の差分を計算することができる。トリ・バンドの形態により、更なる磁気トラックを省略することができる。」 (エ) 段落【0099】~【0100】 「【0099】 本発明によれば、通常の状態とは異なるが、なお、あらかじめ特定された許容限度内にある状態は、例えば、次のようにして、判定することができる。すなわち、少なくとも二つの磁気トラックを含む第1のグループから得られた信号値、例えば、電圧値Xと、少なくとも二つの磁気トラックを含む第2のグループから得られた信号値、例えば、電圧値Yとの両方が、一致する外部の磁界の影響Zに従い変化する。それぞれZの値だけ増加した、電圧値Xと電圧値Yとを加算し、グループの数、例えば、因数2により除する。 【0100】 このようにして得られた値は、Zの値だけ増大するが、それは構成部品への外部からの影響を表している。」 イ 引用発明の認定 前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、請求項10に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「外部からの磁気の影響を判定するための装置の使用において、 構成部品は、 少なくとも一部が強磁性体の材料を含み、 少なくとも三つの対向する磁気トラックを含む磁化可能な領域を備えており、 少なくとも三つの磁気トラックは、構成部品に関して軸線方向に配置されており、 構成部品に関して半径方向に配置された、信号を発するための少なくとも二つのコイルを含む第1の磁界センサは、第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラックに割り当てることができることとされており、 構成部品に関して半径方向に配置された、信号を発するための少なくとも二つのコイルを含む第2の磁界センサは、中央の磁気トラック及び第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)に割り当てることができることとされており、 第1の磁界センサの前記信号は、第2の磁界センサの前記信号に関して設定することができることとされており、(【請求項10】) 第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラックを「第1のグループ」と呼び、中央の磁気トラック及び第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)を「第2のグループ」と呼ぶこととし、(【0050】) 少なくとも二つの磁気トラックを含む第1のグループのセンサの信号を評価し、第1のグループの信号として伝達し、第1のグループの信号は、対向する二つの磁気トラックから得られた情報の第1の差分の評価の結果であり、(【0061】) 少なくとも二つの磁気トラックを含む第2のグループのセンサの信号を、同様に評価し、第2のグループの信号として伝達し、第2のグループの信号もまた、対向する二つの磁気トラックから得られた情報の第1の差分の評価の結果であり、(【0062】) 第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラック、並びに中央の磁気トラック及び第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)からの情報が提供され、この情報から、更に第2の差分を計算することができ、(【0069】) 二つの磁気トラックを含む第1のグループから得られた信号値である電圧値Xと、少なくとも二つの磁気トラックを含む第2のグループから得られた信号値である電圧値Yとの両方が、一致する外部の磁界の影響Zに従い変化し、それぞれZの値だけ増加した、電圧値Xと電圧値Yとを加算し、グループの数である因数2により除し、(【0099】) このようにして得られた値は、Zの値だけ増大するが、それは構成部品への外部からの影響を表している、(【0100】) 外部からの磁気の影響を判定するための装置の使用。(【請求項10】)」 (3) 引用文献3の記載事項及び周知技術の認定 ア 引用文献3に記載された事項 本願の優先日前に発行された文献である特開2013-137302号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、下線は合議体による。 段落【0049】~【0057】、【図6】、【図8】、【図9】 「【0049】 図6を見ると、ここに示されるのは、本発明のトルク感知装置100の“トリバンド(tri-band)”実施形態に従う、円筒シャフト110の側面図である。図6が図1と異なる点として、図6は、3つの軸方向に区別される、磁気的に調整された領域142、144、146によって定義される磁気弾性活性領域140を有するシャフト110を示す。最外部の磁気的に調整された領域142、146は、実質的に円周方向で一様に、磁気的に分極される。中央の磁気的に調整された領域144は、最外部の磁気的に調整された領域142、146のそれとは反対の実質的に円周方向で磁気的に分極される。好ましくは、磁気的に調整された領域142、144、146の円周上の分極により、休止状態では、磁気的に調整された領域142、144、146は、軸方向または半径方向に正味の磁化を有していない。図6の矢印A、B、Cは、トルク感知装置100が休止状態の時、磁気的に調整された領域142、144、146の分極の例示的方向を示す。」 「【図6】 [図:0001427485000001.jpg] 」 「【0053】 図8を見ると、ここに示されるのは、共通モードで作動する本発明のトリバンド実施形態の磁場センサ152、154、156の図である。磁場センサ152、154、156は、各々コイルA、コイルBおよびコイルCを含む。NA、NBおよびNCは、各々コイルA、コイルBおよびコイルCにより感知される磁気ノイズフィールドを示す。SA、SBおよびSCは、各々コイルA、コイルBおよびコイルCにより感知されるトルクにより誘発された磁場を示す。磁気弾性活性領域140の構成および処理により、SA、SBおよびSCは、同じ大きさであり、SAおよびSBは、反対の方向であり、SBおよびSCは、反対の方向であり、SAおよびSCは、同じ方向である。矢印mA、mBおよびmCは、各々コイルA,コイルBおよびコイルCの感知方向、即ちフィールド測定の正方向を示す。共通モードでの作動時、磁場センサ152、154、156は、mAおよびmCが互いに一様であり、mBが反対であるように配向される。図8に示す通り、共通モードでの作動時、コイルAは、SA+NAに等しい信号を感知し、コイルBは、SB-NBに等しい信号を感知し、コイルCは、SC+NCに等しい信号を感知する。」 「【図8】 [図:0001427485000002.jpg] 」 「【0054】 NA、NBおよびNCが等しい大きさおよび方向である例では、トルク感知装置100上の磁気ノイズの効果は、共通モードでコイルA、コイルBおよびコイルCから得た出力信号を合計することにより取り消され、コイルBから得た出力が2度使用される。結果としての合成出力信号は、SA+NA+2SB-2NB+SC+NC=SA+2SB+SC=4SA=4SB=4SCに等しい。合成出力信号は、全体的にトルクにより誘発されるので、合成出力信号に基づきシャフト110に加えられたトルクの大きさを容易に決定できる。 【0055】 NA、NBおよびNCが等しい大きさおよび方向ではない例では、共通モードでコイルA、コイルBおよびコイルCの個々の出力信号を合計することにより得られた合成出力信号は、SA+NA+2SB-2NB+SC+NC=4SA+NA-2NB+NC=4SB+NA-2NB+NC=4SC+NA-2NB+NCに等しく、コイルBから得た出力が2度使用される。 【0056】 図9は、差動モードで作動する本発明のトリバンド実施形態の磁場センサ152、154、156の図を示す。磁場センサ152、154、156は、各々コイルA、コイルBおよびコイルCを含む。NA、NBおよびNCは、各々コイルA、コイルBおよびコイルCにより感知される磁気ノイズフィールドを示す。SA、SBおよびSCは、各々コイルA,コイルBおよびコイルCにより感知されるトルクにより誘発された磁場を示す。磁気弾性活性領域140の構成および処理により、SA、SBおよびSCは、等しい大きさであり、SAおよびSBは、反対方向であり、SBおよびSCは、反対方向であり、SAおよびSCは、同じ方向である。矢印mA、mBおよびmCは、各々コイルA、コイルBおよびコイルCの感知方向、即ちフィールド測定の正方向を示す。差動モードでの作動時、磁場センサ152、154、156は、mA、mBおよびmCが一様であるように配向される。図9に示す通り、差動モードでの作動時、コイルAは、SA+NAに等しい信号を感知し、コイルBは、-SB+NBに等しい信号を感知し、コイルCは、SC+NCに等しい信号を感知する。」 「【図9】 [図:0001427485000003.jpg] 」 「【0057】 NA、NBおよびNCが等しい大きさおよび方向ではない例では、合成出力信号は、差動モードでコイルA、コイルBおよびコイルCの個々の出力信号を合計することにより得られ、コイルBから得た出力信号は、2度使用される。合成出力信号は、SA+NA-2SB+2NB+SC+NC=NA+2NB+NCに等しい。従って、差動モードでの作動時、本発明は、磁場センサ152、154、156の組に影響する好ましくない磁場ノイズを測定できる。」 イ 周知技術の認定 前記アに示した引用文献3の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術」という。) <周知技術> 「軸方向に並んだ三つの磁気的に分極された領域A、B及びCにおける磁気弾性効果を利用したトルク検出装置において、三つの領域A、B及びCにそれぞれ関連付けられたコイルA、B及びCが感知した信号からトルクの大きさと磁場ノイズを測定する際に、コイルA、B及びCの感知方向が全て同じであるモードと、中央のコイルBの感知方向が左右のコイルA及びCの感知方向と反対であるモードを切り替え可能にすること。」 (4) 本件補正発明と引用発明の対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 (ア) 構成Xの観点(装置の使用) 引用発明における「装置」は、「外部からの磁気の影響を判定するため」に「使用」されるものであるところ、実際は上記「装置」が「外部からの磁気の影響を判定」していると認められるから、本件補正発明と引用発明は、「外部の磁気の影響を判定する装置の使用」の発明である点において一致する。 (イ) 基本的な構成の相当関係 見通しを良くするために、引用発明の各構成と本件補正発明の各構成の相当関係を示すこととする。 後記の(ウ)から(サ)に詳細に検討するように、次の引用発明の欄に記載した引用発明の各構成は、それぞれ、対応する本件補正発明の欄に記載した本件補正発明の構成に相当する。 <引用発明> <本件補正発明> 強磁性体の材料 強磁性の物質 構成部品 部材 磁化可能な領域 磁化可能領域 磁気トラック 磁気トラック 軸線方向 軸方向 第1の磁界センサ 第1の磁場センサ 第2の磁界センサ 第2の磁場センサ 二つのコイル 2つのコイル 半径方向 径方向 第1の外側の磁気トラック 第1の磁気トラック 中央の磁気トラック 中央の磁気トラック 第2の外側の磁気トラック 第2の磁気トラック (第3の磁気トラック) (ウ) 構成Aの観点(部材) a 構成Aは、「少なくとも部分的に強磁性の物質を有する部材であって、磁化可能領域が、1つ又は複数の相反する磁気トラックを有し、少なくとも3つの磁気トラックが、前記部材に関して軸方向に配置された、部材」を備えることである。 b 引用発明における「構成部品」は、「少なくとも一部が強磁性体の材料を含み」、「少なくとも三つの対向する磁気トラックを含む磁化可能な領域を備えており」、「少なくとも三つの磁気トラックは、構成部品に関して軸線方向に配置されて[いる]」ことから、本件補正発明の構成Aにおける「部材」に相当する構成を有しているといえる。 c 前記b及び(イ)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「少なくとも部分的に強磁性の物質を有する部材であって、磁化可能領域が、1つ又は複数の相反する磁気トラックを有し、少なくとも3つの磁気トラックが、前記部材に関して軸方向に配置された、部材」を備える点。 (エ) 構成Bの観点(第1の磁場センサ) a 構成Bは、「信号を発信する第1の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、第1の磁気トラック、及び、中央の磁気トラックに割り当て可能である第1の磁場センサ」を備えることである。 b 引用発明における「第1の磁界センサ」は、「信号を発するための少なくとも二つのコイルを含む」ものであって、「構成部品に関して半径方向に配置され」ており、「第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラックに割り当てることができる」ことから、本件補正発明の構成Bにおける「第1の磁場センサ」に相当する構成を有しているといえる。 c 前記b及び(イ)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「信号を発信する第1の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、第1の磁気トラック、及び、中央の磁気トラックに割り当て可能である第1の磁場センサ」を備える点。 (オ) 構成Cの観点(第2の磁場センサ) a 構成Cは、「信号を発信する第2の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、前記中央の磁気トラック、及び、第2の磁気トラックに割り当て可能である第2の磁場センサ」を備えることである。 なお、前記(1)ア(ア)において示したとおり、「第3の磁気トラック」は「第2の磁気トラック」の誤記であるため、上記構成Cは当該誤記を正した上で認定した。 b 引用発明における「第2の磁界センサ」は、「信号を発するための少なくとも二つのコイルを含む」ものであって、「構成部品に関して半径方向に配置され」ており、「中央の磁気トラック及び第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)に割り当てることができる」ことから、本件補正発明の構成Cにおける「第2の磁場センサ」に相当する構成を有しているといえる。 c 前記b及び(イ)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「信号を発信する第2の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、前記中央の磁気トラック、及び、第2の磁気トラックに割り当て可能である第2の磁場センサ」を備える点。 (カ) 構成Dの観点(第1の磁場センサと第2の磁場センサの関係) a 構成Dは、「前記第1の磁場センサの信号は、前記第2の磁場センサの信号に関連して設定可能であ[る]」ことである。 b 引用発明は、「第1の磁界センサの前記信号は、第2の磁界センサの前記信号に関して設定することができる」ものであって、前記(エ)及び(オ)を踏まえると、本件補正発明における「前記第1の磁場センサの信号は、前記第2の磁場センサの信号に関連して設定可能であ[る]」ことに相当する。 c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記第1の磁場センサの信号は、前記第2の磁場センサの信号に関連して設定可能であ[る]」点。 (キ) 構成Eの観点(共通のチャンネル) a 構成Eは、「外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)が1つの共通のチャンネル(Ch4)の基礎を形成[する]」ことである。 b 引用発明は、本件補正発明の構成Eに相当する構成を備えていないから、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。 本件補正発明においては、「外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)が1つの共通のチャンネル(Ch4)の基礎を形成」しているのに対して、 引用発明においては、「第1の外側の磁気トラック」と「第2の外側の磁気トラック」が共通のチャンネルの基礎を形成していない点。 (ク) 構成Fの観点(第1の信号及び第2の信号) a 構成Fは、「前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)のコイルが、外側の第1の磁気トラックと第2の磁気トラック(155,161)との両方に関連付けられており、これらのコイルは、前記外側の第1の磁気トラック及び第2の磁気トラック(155,161)に対して径方向に配置され、且つ第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号及び第2のチャンネル(Ch2)の第2の信号を形成[する]」ことである。 b 前記(エ)及び(オ)より、引用発明における「二つのコイルを含む第1の磁界センサ」及び「二つのコイルを含む第2の磁界センサ」は、いずれも「中央の磁気トラック」に割り当てることができることは措くとして、それぞれ「第1の外側の磁気トラック」及び「第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」に割り当てることができることから、「二つのコイルを含む第1の磁界センサ」及び「二つのコイルを含む第2の磁界センサ」は全体として、「第1の外側の磁気トラック」及び「第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」の両方に関連付けられているといえる。 c また、引用発明における「第1の磁界センサ」の「二つのコイル」のうちの一方のコイルは、「第1の外側の磁気トラック」に対して「半径方向に配置された」ものであり、「第2の磁界センサ」の「二つのコイル」のうちの一方のコイルは、「第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」に対して「半径方向に配置された」ものであるといえるから、「第1の磁界センサ」の一方のコイルと「第2の磁界センサ」の一方のコイルを全体として見れば、「第1の外側の磁気トラック」及び「第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」に対して「半径方向に配置された」ものであるといえる。 d したがって、前記(イ)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成Fに関して、次の(a)の点において共通し、(b)の点において相違する。 (a) 構成Fの観点での共通点 「前記磁場センサのコイルが、外側の第1の磁気トラックと第2の磁気トラックとの両方に関連付けられており、これらのコイルは、前記外側の第1の磁気トラック及び第2の磁気トラックに対して径方向に配置され[る]」点。 (b) 構成Fの観点での相違点 本件補正発明においては、「前記磁場センサのコイル」が、「第1のチャンネルの第1の信号及び第2のチャンネルの第2の信号を形成[する]」のに対して、 引用発明においては、「第1のグループの信号」(「第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラック」に対応した信号)や「第2のグループの信号」(「中央の磁気トラック及び第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」に対応した信号)を形成しているものの、「第1の外側の磁気トラック」及び「第2の外側の磁気トラック」のそれぞれに対応した第1及び第2のチャンネルがないため、第1及び第2の信号を形成していない点。 (ケ) 構成Gの観点(第3の信号) a 構成Gは、「前記磁場センサ(153,154,157,158,159,160,163,164)の他のコイルが中央の磁気トラック(156)に関連付けられており、これらのコイルは、前記中央の磁気トラック(156)に対して径方向に配置され、且つ第3のチャンネル(Ch3)の第3の信号を形成[する]」ことである。 b 前記(エ)及び(オ)より、引用発明における「二つのコイルを含む第1の磁界センサ」及び「二つのコイルを含む第2の磁界センサ」は、それぞれ「第1の外側の磁気トラック」及び「第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」に割り当てることができることは措くとして、いずれも「中央の磁気トラック」に割り当てることができることから、「二つのコイルを含む第1の磁界センサ」及び「二つのコイルを含む第2の磁界センサ」は、「中央の磁気トラック」に関連付けられているといえる。 c また、引用発明における「第1の磁界センサ」の「二つのコイル」のうちの他方のコイル、及び、「第2の磁界センサ」の「二つのコイル」のうちの他方のコイルは、いずれも「中央の磁気トラック」に対して「半径方向に配置された」ものであるといえる。 d したがって、前記(イ)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成Gに関して、次の(a)の点において共通し、(b)の点において相違する。 (a) 構成Gの観点での共通点 「前記磁場センサの他のコイルが中央の磁気トラックに関連付けられており、これらのコイルは、前記中央の磁気トラックに対して径方向に配置され[る]」点。 (b) 構成Gの観点での相違点 本件補正発明においては、「前記磁場センサの他のコイル」が「第3のチャンネルの第3の信号を形成[する]」のに対して、 引用発明においては、「第1のグループの信号」(「第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラック」に対応した信号)や「第2のグループの信号」(「中央の磁気トラック及び第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」に対応した信号)を形成しているものの、「中央の磁気トラック」に対応した第3のチャンネルがないため、第3の信号を形成していない点。 (コ) 構成Hの観点(第4の信号) a 構成Hは、「前記共通のチャンネル(Ch4)の全数のコイル及び全数のセンサによって第4の信号が形成され[る]」ことである。 b 引用発明は、本件補正発明の構成Hに相当する構成を備えていないから、本件補正発明と引用発明は、構成Hに関して、次の点において相違する。 本件補正発明においては、「前記共通のチャンネル(Ch4)の全数のコイル及び全数のセンサによって第4の信号が形成され[る]」のに対して、 引用発明においては、共通のチャンネル(Ch4)の第4の信号を形成していない点。 (サ) 構成Iの観点(第3の信号と第4の信号の比較) a 構成Iは、「前記共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号が、前記中央の磁気トラック(156)によって形成された前記第3のチャンネル(Ch3)の前記第3の信号と比較される」を備えることである。 b 引用発明は「第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラック、並びに中央の磁気トラック及び第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)からの情報が提供され、この情報から、更に第2の差分を計算する」ものであるから、引用発明は異なる磁気トラックから形成された信号を比較しているといえる。 c そうすると、本件補正発明と引用発明は、構成Iに関して、次の(a)点において共通し、(b)の点において相違する。 (a) 構成Iの観点での共通点 「異なる磁気トラックによって形成された信号が比較される」点。 (b) 構成Iの観点での相違点 本件補正発明は、「前記共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号が、前記中央の磁気トラック(156)によって形成された前記第3のチャンネル(Ch3)の前記第3の信号と比較される」ことであるのに対して、 引用発明は、「第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラック、並びに中央の磁気トラック及び第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)からの情報が提供され、この情報から、更に第2の差分を計算する」ものであること。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。 (ア) 一致点 「外部の磁気の影響を判定する装置の使用であって、前記装置は、 少なくとも部分的に強磁性の物質を有する部材であって、磁化可能領域が、1つ又は複数の相反する磁気トラックを有し、少なくとも3つの磁気トラックが、前記部材に関して軸方向に配置された、部材と、 信号を発信する第1の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、第1の磁気トラック、及び、中央の磁気トラックに割り当て可能である第1の磁場センサと、 信号を発信する第2の磁場センサであって、少なくとも2つのコイルを有し、前記部材に関して径方向に配置され、前記中央の磁気トラック、及び、第2の磁気トラックに割り当て可能である第2の磁場センサと、を備え、 前記第1の磁場センサの信号は、前記第2の磁場センサの信号に関連して設定可能であり、 前記磁場センサのコイルが、外側の第1の磁気トラックと第2の磁気トラックとの両方に関連付けられており、これらのコイルは、前記外側の第1の磁気トラック及び第2の磁気トラックに対して径方向に配置され、前記磁場センサの他のコイルが中央の磁気トラックに関連付けられており、これらのコイルは、前記中央の磁気トラックに対して径方向に配置され、 異なる磁気トラックによって形成された信号が比較される装置の使用」の発明である点。 (イ) 相違点 本件補正発明においては、 「前記磁場センサのコイル」が、「第1のチャンネル(Ch1)の第1の信号」及び「第2のチャンネル(Ch2)の第2の信号」を形成し、 「前記磁場センサの他のコイル」が、「第3のチャンネル(Ch3)の第3の信号」を形成し、 「外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)が1つの共通のチャンネル(Ch4)の基礎を形成」し、「前記共通のチャンネル(Ch4)の全数のコイル及び全数のセンサによって第4の信号が形成され」、 「前記共通のチャンネル(Ch4)の前記第4の信号が、前記中央の磁気トラック(156)によって形成された前記第3のチャンネル(Ch3)の前記第3の信号と比較される」のに対して、 引用発明においては、 「第1のグループの信号」(「第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラック」に対応した信号)や「第2のグループの信号」(「中央の磁気トラック及び第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」に対応した信号)を形成しているものの、 「第1の外側の磁気トラック」、「第2の外側の磁気トラック」及び「中央の磁気トラック」のそれぞれに対応した第1~第3のチャンネルがないため、第1~第3の信号を形成しておらず、 「第1の外側の磁気トラック」と「第2の外側の磁気トラック」が共通のチャンネルの基礎を形成していないため、共通のチャンネルの第4の信号を形成しておらず、 「第1の外側及び中央の磁気トラック、並びに中央及び第3の磁気トラックからの情報が提供され、この情報から、更に第2の差分を計算する」ものである点。 (5) 判断 ア 相違点の検討 (ア) 第1~3のチャンネルと第1~3の信号について a 引用発明においては、「二つの磁気トラックを含む第1のグループから得られた信号値である電圧値Xと、少なくとも二つの磁気トラックを含む第2のグループから得られた信号値である電圧値Yとの両方が、一致する外部の磁界の影響Zに従い変化し、それぞれZの値だけ増加した、電圧値Xと電圧値Yとを加算し、グループの数である因数2により除すこと」により、外部の磁界の影響Zを求めている。 b ここで、引用発明における「第1のグループ」とは、「第1の外側の磁気トラック及び中央の磁気トラック」のことであるから、「第1のグループから得られた信号値である電圧値X」は、「第1の外側の磁気トラック」に由来する成分と「中央の磁気トラック」に由来する成分に分解して考えることができ、これらの成分をそれぞれX1及びX中とする。 同様に、「第2のグループ」とは「中央の磁気トラック及び第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」のことであり、「第2のグループから得られた信号値である電圧値Y」は、「中央の磁気トラック」に由来する成分と「第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」に由来する成分に分解して考えることができ、これらの成分をそれぞれY中及びY3とする。 c そして、「第1のグループの信号は、対向する二つの磁気トラックから得られた情報の第1の差分の評価の結果」であり、「第2のグループの信号もまた、対向する二つの磁気トラックから得られた情報の第1の差分の評価の結果」であるから、第1のグループの信号(電圧値X)及び第2のグループの信号(電圧値Y)は、それぞれ、上記bに示した各成分の差の形式で表されることになるため、次の式が成り立つ。 第1のグループの信号:X= X1-X中 (式1) 第2のグループの信号:Y=-Y中+Y3 (式2) d ここで、(式1)及び(式2)において、X中やY中にマイナスの符号が付いているのは、「中央の磁気トラック」に関連付けられたコイルの感知方向が、「第1の外側の磁気トラック」及び「第2の外側の磁気トラック」に関連付けられたコイルの感知方向とは反対であることを意味するところ、「軸方向に並んだ三つの磁気的に分極された領域A、B及びCにおける磁気弾性効果を利用したトルク検出装置において、三つの領域A、B及びCにそれぞれ関連付けられたコイルA、B及びCが感知した信号からトルクの大きさと磁場ノイズを測定する際に、コイルA、B及びCの感知方向が全て同じであるモードと、中央のコイルBの感知方向が左右のコイルA及びCの感知方向と反対であるモードを切り替え可能にすること」は当業者にとって周知の技術であるから(前記周知技術を参照)、上記周知技術を引用発明に適用することにより、「中央の磁気トラック」に関連付けられたコイルの感知方向を「第1の外側の磁気トラック」及び「第2の外側の磁気トラック」に関連付けられたコイルの感知方向と同じになるようなモードを採用することは、当業者にとって自明な設計変更である。 e かかるモードを採用した場合には、X中やY中にマイナスの符号は付かないから、その場合の第1のグループの信号X’及び第2のグループの信号Y’は、次の(式3)及び(式4)のように表される。 第1のグループの信号:X’=X1+X中 (式3) 第2のグループの信号:Y’=Y中+Y3 (式4) f (式1)~(式4)から、「第1の外側の磁気トラック」に由来する成分X1及び「第2の外側の磁気トラック」に由来する成分Y3については、次の(式5)及び(式6)により求められることは自明である。 X1=(X+X’)/2 (式5) Y3=(Y+Y’)/2 (式6) g 同様に、(式1)~(式4)から、「中央の磁気トラック」に由来する成分の和X中+Y中については、次の(式7)により求められることは自明である。 X中+Y中=[(X’+Y’)-(X+Y)]/2 (式7) ここで、各磁気トラックの配置の対称性から、X中=Y中であると考えて差し支えないから、次の(式8)が導かれる。 X中=Y中=[(X’+Y’)-(X+Y)]/4 (式8) h (式5)、(式6)及び(式8)を踏まえると、「第1の外側の磁気トラック」に由来する成分X1、「第2の外側の磁気トラック」に由来する成分Y3、及び、「中央の外側の磁気トラック」に由来する成分X中又はY中については、いずれもモード切り替えを介して「第1のグループの信号」及び「第2のグループの信号」から自明な式変形により導かれるものであるから、「第1のグループの信号」及び「第2のグループの信号」の代わりに、「第1の外側の磁気トラック」に対応する信号(第1の信号)、「第2の外側の磁気トラック」に対応する信号(第2の信号)、及び、「中央の磁気トラック」に対応する信号(第3の信号)を個別に取り出すことができるような三つのチャンネル(第1のチャンネル、第2のチャンネル及び第3のチャンネル)を設けるように構成することは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。 (イ) 「共通のチャンネル」と「第4の信号」について a 前記(ア)aにおいて述べたとおり、引用発明においては、「電圧値X」と「電圧値Y」が「一致する外部の磁界の影響Zに従い変化し、それぞれZの値だけ増加した」ことを想定しているから、以下の(式9)及び(式10)のように表されることとなる。 X= X1-X中+Z (式9) Y=-Y中+Y3+Z (式10) b 次に、「電圧値Xと電圧値Yとを加算し、グループの数である因数2により除すこと」により、外部の磁界の影響Zを求めているから、以下のように表されることとなる。 (X+Y)/2=[(X1-X中+Z)+(-Y中+Y3+Z)]/2 =(X1+Y3)/2-(X中+Y中)/2+Z (式11) c ここで、式(11)の右辺に注目すると、第1項の(X1+Y3)/2は、「第1の外側の磁気トラック」に由来する成分X1と、「第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」に由来する成分Y3の合計値を含む形式で表され、第2項の(X中+Y中)/2は、「中央の磁気トラック」に由来する成分X中及びY中の合計値を含む形式で表されるところ、前記(ア)において検討した(式7)を踏まえると、第2項に係る信号は、「中央の磁気トラック」に対応するチャンネル(第3のチャンネル)を設けることにより、第3の信号として個別に取り出すことができるものである。 d そうすると、引用発明における外部の磁界の影響Zを測定する際に、(式11)の右辺第2項に係る信号を第3のチャンネルから取り出すように構成したことに伴い、(式11)の右辺第1項に係る信号をそのままの形式で取り出すことができるように、第1項に対応するチャンネルを別途設けることは、当業者ならば自然の発想である。 e すなわち、引用発明において、両側の領域のコイルの信号である「第1の外側の磁気トラック」に割り当てられたコイルの信号X1と「第2の外側の磁気トラック(第3の磁気トラック)」に割り当てられたコイルの信号Y3の合計値X1+Y3の形式で出力可能な一つのチャンネル(共通のチャンネル)を設け、当該共通のチャンネルから出力される信号を第4の信号として構成することは、当業者ならば自明な設計変更にすぎない。 (ウ) 第3の信号と第4の信号の比較について a (式11)の右辺には第1項と第2項との差の形式が含まれていることを踏まえると、第1項と第2項の差がゼロになるときの電圧値Xと電圧値Yの和に基づいて、外部の磁界の影響Zが特定できることは明らかであるから、引用発明において、(式11)の第1項と第2項を比較しようとする契機はあるというべきである。 b そうすると、引用発明において、(式11)の右辺第1項に対応するチャンネル(共通のチャンネル)と、第2項に対応するチャンネル(第3のチャンネル)を設けるように設計変更した際に、共通のチャンネルから出力される第4の信号と第3のチャンネルから出力される第3の信号を比較するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 総合評価 前記アにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、前記アの検討事項(ア)~(ウ)を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6) 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、引用発明は、外側の第1の磁気トラックと中央の磁気トラックとの間の第1の情報と、中央の磁気トラックと外側の第2の磁気トラックとの間の第2の情報が提供されることのみを開示するものであって、中央の磁気トラック156によって分離された外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)によって形成された「共通のチャンネル(Ch4)」という本件補正発明の構成について何ら開示ないし示唆していないので、「第4の信号」が、外側の第1及び第2の磁気トラック(155,161)によって形成された「共通のチャンネル(Ch4)の全数のコイル及び全数のセンサによって形成され」、「共通のチャンネル(Ch4)の第4の信号が、中央の磁気トラック(156)によって形成された第3のチャンネル(Ch3)の第3の信号と比較される」という本件補正発明に係る特徴的構成について何ら開示ないし示唆していない旨主張している。 請求人の主張は、引用発明は、本件補正発明における前記構成E、構成H及び構成Iを有しない点であると認められるところ、前記(5)アで検討したとおり、構成E、構成H及び構成Iに係る相違点については、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 したがって、前記請求人の主張は、前記(5)イの結論を左右するものではない。 (7) 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項13についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 4 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記2(1)エで示したとおり、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するもの(目的要件違反)であるから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 また仮に、本件補正が、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、前記3(7)において示したとおり、本件補正のうち請求項13についての補正は、同法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するもの(独立特許要件違反)であるから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項13に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項13(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由3(進歩性の欠如)のうち引用文献1を主たる引用文献とする理由の概要は、次のとおりである。 理由3(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開2016-176928号公報 3 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等 引用文献1に記載された事項並びに引用発明及び周知技術は、前記第2の3(2)のア、イ及び(3)イにおいて示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2(2)アに示した限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(5)において説示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-004403

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