特許拒絶査定不服審判
2023-021312
センサを同軸上に内蔵した金型装置
- 審判番号
- 2023-021312
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-141143
- 請求日
- 2023年12月14日
- 審決日
- 2025年06月19日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】中原大學
- 【請求人代理人】城村 邦彦
- 【請求人代理人】熊野 剛
- 【請求人代理人】田中 秀佳
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 濱本 禎広
- 分類
- P18 .121-WZ (G01L) / P18 .575-WZ (G01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-141143「センサを同軸上に内蔵した金型装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年10月30日出願公開、特開2023-158618〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年9月6日(パリ条約の例による優先権主張2022年4月18日、台湾)の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。なお、以下、2022年4月18日を「優先日」という。
令和4年 9月 6日 :翻訳文の提出
令和5年 6月29日付け:拒絶理由通知(最初)
同年10月 3日 :意見書、手続補正書の提出
同月17日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月19日 :原査定の謄本の送達)
同年12月14日 :審判請求書の提出
令和6年12月26日付け:拒絶理由通知(最後)
令和7年 3月24日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和7年3月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年3月24日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和7年3月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年10月3日にされた手続補正後をいう。)の請求項1は、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
キャビティを有する金型と、
支持構造と、
検知モジュールであって、
検知部と当接部とを有する温度センサであって、前記検知部が前記金型内に位置し、前記キャビティ内の所定位置に対応し、前記当接部が前記支持構造内に位置する温度センサと、
前記支持構造内に配され前記当接部に対応する圧力センサであって、前記当接部が、前記キャビティ内の前記所定位置の圧力によって前記圧力センサに当接するように構成される圧力センサと、を備える検知モジュールと、
冷却流路と、を備え、
前記温度センサが、光ファイバ温度センサであり、前記冷却流路によって取り囲まれる金型装置。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
キャビティを有する金型と、
支持構造と、
検知モジュールであって、
検知部と当接部とを有する温度センサであって、前記検知部が前記金型内に位置し、前記キャビティ内の所定位置に対応し、前記当接部が前記支持構造内に位置する温度センサと、
前記支持構造内に配され前記当接部に対応する圧力センサであって、前記当接部が、前記キャビティ内の前記所定位置の圧力によって前記圧力センサに当接するように構成される圧力センサと、を備える検知モジュールと、
冷却流路と、を備え、
前記温度センサが、光ファイバ温度センサであり、前記冷却流路によって取り囲まれ、
前記圧力センサが検知突起を有し、前記検知突起が前記当接部から加わる当接力を直接受けるように構成される金型装置。」
2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の「圧力センサ」について、「検知突起を有し、前記検知突起が前記当接部から加わる当接力を直接受けるように構成される」ものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
イ 本件補正発明の分説
本件補正発明の構成を、後記(3)の対比の議論のために、便宜上次のように構成A~F、Xに分説する。
<本件補正発明の分説>
(構成A)キャビティを有する金型と、
(構成B)支持構造と、
(構成C)検知モジュールであって、
検知部と当接部とを有する温度センサであって、前記検知部が前記金型内に位置し、前記キャビティ内の所定位置に対応し、前記当接部が前記支持構造内に位置する温度センサと、
前記支持構造内に配され前記当接部に対応する圧力センサであって、前記当接部が、前記キャビティ内の前記所定位置の圧力によって前記圧力センサに当接するように構成される圧力センサと、を備える検知モジュールと、
(構成D)冷却流路と、を備え、
(構成E)前記温度センサが、光ファイバ温度センサであり、前記冷却流路によって取り囲まれ、
(構成F)前記圧力センサが検知突起を有し、前記検知突起が前記当接部から加わる当接力を直接受けるように構成される
(構成X)金型装置。
(2) 各引用文献等に記録された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献3に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献3に記載された事項
当審において、令和6年12月26日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)に引用された、特開2008-232753号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
a 【0001】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサに光を導くための温度センサ用導光器に関する。特に成形金型のキャビティ内の樹脂の温度を測定するための導光体付ピンに関する。」
b 【0002】~【0008】、【図5】、【図6】
「【背景技術】
【0002】
近年、成形金型のキャビティ内に樹脂を射出充填して製品を成形する射出成形法においては、成形される部品形状の高精度化・微細化の要求が高まっている。新しく開発された高機能性材料はその性能を発揮させるために従来よりも高温・高圧の条件をより精密且つ安定的に制御する必要がある。これらの要求に対応するため射出成形時の金型キャビティ内の温度・圧力を測定し成形条件にフィードバックする、いわゆるインテリジェント化が進んでいる。
【0003】
具体的には金型のキャビティ内の樹脂圧力を測定するセンサ、樹脂温度を測定するセンサを設け、これらの情報を成形機にフィードバックするようになって来ている。
金型のキャビティ内の樹脂温度を測定する方法の一つとして樹脂の赤外輻射線から直接的に測定する方法がある。この場合樹脂から放出される赤外輻射線は、光ファイバ束を導光体として赤外線検出器に伝達されることが多く、かかる導光体は金型内に必要となるエジェクタピン・コアピン等に組み込むことが出来る(特許文献1)。
【0004】
図5は一般的な金型の断面図であるが、この金型はキャビティ1を設けた第1の型板としての固定側型板2とコア3を設けた第2の型板としての可動側型板4との界面で分かれて開閉される。エジェクタピン100はキャビティ内に樹脂が充填された際は導光体として樹脂温度の測定に関与し、金型が開いたときに前記コアから突出して成形品を金型外に突出すエジェクタピンとして機能する。なお図5では配線等は省略している。」
「【図5】
[図:0001429405000001.jpg]
」
「【0005】
本願出願人は比較的単純な構造でピン長さ調整の容易な導光体付ピンを特許文献2に開示している。図6に当該ピンの構造を示す。
図6の分図(a)に上面図、分図(b)にa‐a´部での矢印方向の断面図、分図(c)に左側面図を示す。エジェクタピン200は円筒状の中空軸部10を有し、その下端に中空軸部10より拡径した鍔部11が設けられる。鍔部11の下面には蓋部材13が固定される。」
「【図6】
[図:0001429405000002.jpg]
」
「【0006】
中空軸部10には内部を軸方向に貫通する断面が一様な円形断面の中空部14が設けられ、中空軸部10の長さ方向の中央付近より上側は断面が一様で中空部14より拡径した拡径部15が設けられている。
前記拡径部15にはステンレス(SUS)製の管状のスペーサ16が接着材で固着される。エジェクタピン200は管状スペーサ16の部分で切断して長さを調整するので、管状スペーサ16の軸方向全長に渡り接着材により前記拡径部15にエポキシ樹脂等で固着される。
【0007】
管状スペーサ16には単線の光ファイバ17が挿入され、管状スペーサ16の内面に光ファイバ17の表面が接着材18で固着される。光ファイバ17は導光体として機能するようコアの表面に反射層としてのクラッド層を設けた2層構造を有する。
【0008】
光ファイバ17は鍔部11に対応する位置で所定の曲率(当合議体注:「局率」は「曲率」の誤記であることが明らかなので、誤記を正して摘記した。)で90度曲げられ、鍔部11の下面に設けた溝12からエジェクタピン200の外部に導出される。
そして光ファイバ17は赤外線を受光する受光部21に接続され、受光部21はプリアンプ22、ゼロ調整器、ゲイン調整器としての可変抵抗器23・24を介してラップトップパソコンの表示部25に接続される。
エジェクタピン200の先端から光ファイバ17に入射した赤外線は光ファイバ17を通り受光部21で光電気変換された上、最終的に温度信号に変換され表示部25で温度表示される。或いは温度信号が射出成形機の制御部にフィードバックされて利用される。」
(イ) 引用文献3から読み取れる認定事項
a 引用文献3の【0003】、【0008】及び【図6】から、「光ファイバ17」、「受光部21」及び「プリアンプ22、ゼロ調整器、ゲイン調整器としての可変抵抗器23・24」により、金型のキャビティ内の樹脂温度を測定していることが読み取れる。
b 引用文献3の【0005】~【0007】及び【図6】から、「光ファイバ17」は、「エジェクタピン200」が有する「円筒状の中空軸部10」に設けられた「拡径部15」に「接着剤で固着され[た]」「管状のスペーサ16」に挿入されていることが読み取れる。
c 引用文献3の【図5】の下部には、エジェクタピン100を支持する構造が示されているから、前記a及びbを踏まえると、「光ファイバ17」、「受光部21」、「プリアンプ22、ゼロ調整器、ゲイン調整器としての可変抵抗器23・24」及び「エジェクタピン100」からなる構成(以下「温度測定構成」という。)のうち、少なくとも「光ファイバ」及び「エジェクタピン100」を支持する構造が読み取れる。
d 引用文献3の【図5】の下部、及び【図6】から、温度測定構成のうち、少なくとも光ファイバ及びエジェクタピン100を支持する構造内に、「エジェクタピン100」の「蓋部材13」が配置されていることが読み取れる。
e 前記a~dを踏まえると、引用文献3の【図5】及び【図6】から次の構成が読み取れる。
「金型と、光ファイバ17、受光部21、プリアンプ22、ゼロ調整器、ゲイン調整器としての可変抵抗器23・24及びエジェクタピン100からなる温度測定構成と、前記温度測定構成のうち、少なくとも光ファイバ及びエジェクタピン100を支持する構造を備え、前記構造内には、エジェクタピン100の蓋部材13が配置されている装置。」
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)の記載事項及び前記(イ)の認定事項を総合すると、引用文献3には、【図5】及び【図6】に係る金型装置に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた記載箇所を参考までに括弧内に付してある。以下同様である。)。
<引用発明>
「金型と、光ファイバ17、受光部21、プリアンプ22、ゼロ調整器、ゲイン調整器としての可変抵抗器23・24及びエジェクタピン100からなる温度測定構成と、前記温度測定構成のうち、少なくとも光ファイバ及びエジェクタピン100を支持する構造を備え、前記構造内には、エジェクタピン100の蓋部材13が配置されている装置であって、(前記(イ)の認定事項)
金型はキャビティ1を設けた第1の型板としての固定側型板2とコア3を設けた第2の型板としての可動側型板4との界面で分かれて開閉され、(【0004】)
エジェクタピン100はキャビティ内に樹脂が充填された際は導光体として樹脂温度の測定に関与し、金型が開いたときに前記コアから突出して成形品を金型外に突出すエジェクタピンとして機能し、(【0004】)
樹脂の赤外輻射線から、金型のキャビティ内の樹脂温度を直接的に測定し、樹脂から放出される赤外線輻射は、光ファイバ束を導光体とし赤外線検出器に伝達され、(【0003】)
エジェクタピン200は円筒状の中空軸部10を有し、その下端に中空軸部10より拡径した鍔部11が設けられ、鍔部11の下面には蓋部材13が固定され、(【0005】)
中空軸部10には内部を軸方向に貫通する断面が一様な円形断面の中空部14が設けられ、中空軸部10の長さ方向の中央付近より上側は断面が一様で中空部14より拡径した拡径部15が設けられ、前記拡径部15にはステンレス(SUS)製の管状のスペーサ16が接着材で固着され、(【0006】)
管状スペーサ16には単線の光ファイバ17が挿入され、管状スペーサ16の内面に光ファイバ17の表面が接着材18で固着され、光ファイバ17は導光体として機能するようコアの表面に反射層としてのクラッド層を設けた2層構造を有し、(【0007】)
光ファイバ17は鍔部11に対応する位置で所定の曲率で90度曲げられ、鍔部11の下面に設けた溝12からエジェクタピン200の外部に導出され、光ファイバ17は赤外線を受光する受光部21に接続され、受光部21はプリアンプ22、ゼロ調整器、ゲイン調整器としての可変抵抗器23・24を介してラップトップパソコンの表示部25に接続され、エジェクタピン200の先端から光ファイバ17に入射した赤外線は光ファイバ17を通り受光部21で光電気変換された上、最終的に温度信号に変換され表示部25で温度表示される、(【0008】)
装置。」
イ 引用文献1及び2に記載された事項及び周知技術Aの認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由に引用された、特開2017-19275号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0035】
ここで図6A及び6Bを参照すると、本発明の第5の実施形態による、典型的な成形装置(150)は、代替的な断面図において示される。この実施形態は、成形用パラメーターの直接測定と間接測定を組み合わせる。圧力又は温度のためなどの、直接的なセンサー(104)は、中空のエジェクタピン(108)の1つの端部に埋め込まれる。間接的な圧力センサー(42)は、中空のエジェクタピン(108)のもう1つの端部を支持する。組み合わされた直接的及び間接的な検出構成は、直接的な温度及び間接的な圧力の両方の単一の点測定を可能にする。あるいは、直接的な圧力及び間接的な圧力は、同じエジェクタピンの位置で測定され得る。単一の位置での直接的及び間接的な圧力の測定は、間接的な圧力測定の相関性及び較正に有用である。そのような相関性に従って、中空のエジェクタピン(108)及び直接的なセンサー(104)は、間接的な圧力センサー(42)を保持する間に、標準的な、固形のエジェクタピンと交換され得る。スペーサープレート(46)は、間接的な圧力センサー(42)のための信号調整回路(54)及び直接的なセンサー(104)のための信号調整回路(54’)を埋め込むための空間を提供する。」
「【図6A】
[図:0001429405000003.jpg]
」
(イ) 引用文献2に記載された事項
当審拒絶理由に引用された、国際公開第2011/115276号(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「[0028] 図1に示しているように、計測ロッド102は、外筒ケーシング112と、その中心部に軸芯方向に沿って配置される圧力伝達ロッド114とを有している。・・・(後略)・・・」
「[図1]
[図:0001429405000004.jpg]
」
「[0031] また、計測ロッド102における圧力伝達ロッド114の基端は外筒ケーシング112より長くなっており、この基端部は前記貫通孔128に挿通され、第1センサー室26に延在している。前記貫通孔128は、Oリング130にて圧力伝達ロッド114との隙間を封止しつつ、圧力伝達ロッド114を軸受支持する。したがって、圧力伝達ロッド114は、外筒ケーシング112の先端部内周に設けられたガイドブッシュ118と、センサーブロック104の隔壁124に設けられた貫通孔128とにより2点支持されて、外筒ケーシング112の内部でその軸芯方向に移動可能となる。圧力伝達ロッド114の先端が圧力を受けることにより、当該ロッドが軸方向に押圧され、センサーブロック104の第1センサー室126の開口側に向けて移動される。」
[0032] 前記圧力伝達ロッド114の基端部端面には、ドーナツリング状に形成されている圧力センサー134がセンサー固定ボルト136によりプリロードが掛けられた状態で取り付けられている。一方、センサーブロック104には、前記圧力センサー134を圧力伝達ロッド114との間で挟着するように、圧力伝達ロッド114に基端面に対向して、第1センサー室126の開口を覆うブロック蓋132が取り付けられている。これにより、圧力伝達ロッド114の先端で受けた力が、ブロック蓋132の内面部を支持面として、圧力センサー134に伝わり、その荷重を検出することができる。この圧力センサー134は、実施形態の場合、セラミック圧電素子を用いた圧電型荷重検出センサーにより形成されている。これにより、キャビティ2内に充填された溶湯のメタル圧を計測することができる。」
「[0036] また、前述した圧力伝達ロッド114の軸芯部に細孔150が穿設されている。この細孔150は圧力伝達ロッド114の先端に近傍に達するものとし、ロッドによるメタル圧検出が可能な少しの肉厚を残す深さに形成している。この細孔150の内部にはシース型熱電対152が装填されている。シース型熱電対152はシース管の内部に絶縁材を充填して素線を埋め込んだ一般的なものを利用することができる。このシース型熱電対152は、検出端を圧力伝達ロッド114の先端部側に向け、シース管の基端を前記センサー固定ボルト136の先端部で押付けるようにしている。押付け力を保持するために、センサー固定ボルト136のボルト先端とシース型熱電対152のシース管端部との間に押さえバネ154と、押さえ駒156が細孔150に収容されている。したがって、センサー固定ボルト136で圧力センサー134を固定すると同時に、押さえ駒156を押付け、押さえバネ154によってシース管を所定の力で押圧し、熱電対152の検出端が圧力伝達ロッド114の先端位置に保持される。シース型熱電対152のリード線158は、圧力伝達ロッド114の基端に形成した切り込み溝160を介してブロック外に導出される。
[0037] 実施形態では、センサーブロック104に端子ボックス162を付帯させ、ここに圧力センサー134、ガス圧センサー140、シース型熱電対152の各種リード線を導いている。そして、端子ボックス162を介して各センサー類は計測器に接続され、所定の計測データを出力し、必要に応じて表示手段に表示させることができる。なお、圧力センサー134のリード線引出しのためにセンサーブロック104には第1センサー室126に至る引出し通路164を形成している。
[0038] このように構成された金型内部情報計測センサー100は、実施形態の場合、型開した状態で、可動ダイス1aに形成した装着孔14に計測ロッド102を差し込み、その先端面がキャビティ3と同一面となるようにし、固定ユニット110により定位置に固定する。装着が終了した後、射出動作に入ると、キャビティ2内に溶湯が充填され、キャビティ2に臨んだ計測ロッド102の先端に溶湯のメタル圧が作用し、圧力伝達ロッド114が押され、この力が圧力センサー134により検出される。同時に、多孔質フィルター116を通じてキャビティ内部のガスが通気路115を経てガス導入室122に導入され、そのガス圧がガス圧センサー140により検出される。また、圧力伝達ロッド114の先端部に設けられているシース型熱電対152が溶湯温度を検出する。これらのデータは図示しない計測器により時系列的に計測され、図10に示したようなメタル温度、金型内ガス圧、メタル温度が計測される。」
(ウ) 周知技術Aの認定
a(a) 引用文献1の【0035】及び図6Aから、間接的な圧力センサー(42)が中空のエジェクタピン(108)のもう1つの端部に直接接触していることが読み取れる。
(b) 引用文献2の[0032]から、圧力伝達ロッド114の基端部端面に、圧力センサー134が取り付けられている、すなわち、直接接触していることが読み取れる。
b 前記aも踏まえると、前記引用文献1及び引用文献2に例示されているように、次の事項は当業者にとって周知技術であると認められる(以下「周知技術A」という。)。
<周知技術A>
「エジェクタピンの先端に温度を測定する温度センサーを配置し、前記先端面とは反対側の基端面に直接接触するように圧力センサを配置して、同一位置でキャビティ内の温度及び圧力を検出すること。」
ウ 引用文献4、5及び9に記載された事項及び周知技術Bの認定
(ア) 引用文献4に記載された事項
当審拒絶理由に引用された、実願昭53-166974号(実開昭55-84554号)のマイクロフィルム(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(明細書2頁7~18行)
「この種の荷重変換器の従来構造の一例を第1図に示す。第1図の(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は斜視図である。第1図において、1は円板状ケースで、その一方の板面中央部に突出するように突起物2が設けられており、この突起物2に荷重を印加することで、円板状ケース1内に封入されている荷重変換素子(図示せず)が荷重を電気信号に変換して、リード線6を介して外部に出力するようになっている。荷重変換素子としては、荷重を電圧信号に変換するひずみゲージあるいは荷重を電気抵抗の変化に変換する半導体抵抗素子などがある。」
「第1図
[図:0001429405000005.jpg]
」
(イ) 引用文献5に記載された事項
a 当審拒絶理由に引用された、特開2016-121952号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0006】
図7は従来の圧力センサの取付構造T1を示している。図7に示すように、エジェクタプレート111内にエジェクタピン112が備えられ、エジェクタピン112の反キャビティ側の後端部にスペーサ113を介して圧力センサであるロードセル114が配置され、ロードセル114を収容する取付部材116が締結ボルト118によりエジェクタプレート111に固定されている。」
「【図7】
[図:0001429405000006.jpg]
」
b 引用文献5の【0006】及び【図7】から、ロードセル114が突起部を有し、当該突起部を介して、エジェクタピン112からの圧力を検知することが読み取れる。
(ウ) 引用文献9に記載された事項
本審決において新たに引用され、優先日前に発行された文献である特開2016-161539号公報(以下「引用文献9」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る力変換器1の外観斜視図である。力導入部2は突起した形状であってこの天面に力が印加されるようになっている。力導入部2を取り囲んだ部分が薄肉円板状の起歪部9となっていて、力導入部2に力が印加された際には起歪部9は弾性変形して歪みが生じる。力支持部3は力導入部2及び起歪部9を支持して、剛性が高く規定内の力が印加された場合は歪みが生じない構造となっている。」
「【図1】
[図:0001429405000007.jpg]
」
「【0017】
図2は本発明の実施形態に係る力変換器1を底面方向から見て底部を開口して表したものである。歪みゲージ5は外形が円形状で、力導入部2の反対側にあって起歪部9の平面部に貼着されている。したがって、力導入部2に力が印加された際には起歪部9は弾性変形して歪みが生じ、起歪部9に貼られた歪みゲージ5の抵抗値変化から歪みを電気信号に変換することができる。ケーブル4は変換された電気信号を外部に取り出すと共に、歪みゲージ5を含むホイートストンブリッジ回路へ電源の供給を行うためのものである。・・・(後略)・・・」
「【図2】
[図:0001429405000008.jpg]
」
(エ) 周知技術Bの認定
前記引用文献4、引用文献5及び引用文献9に例示されているように、次の事項は当業者にとって周知技術であると認められる(以下「周知技術B」という。)。
<周知技術B>
「荷重変換器に突起物を設け、当該突起物で荷重を受けるようにすること。」
エ 引用文献6及び8に記載された事項及び周知技術Cの認定
(ア) 引用文献6に記載された事項
当審拒絶理由に引用された、実願昭59-75438号(実開昭60-187023号)のマイクロフィルム(以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。
(2頁2行~3頁15行)
「(2)従来技術とその問題点
従来、射出成形用金型においては、固定側型板と可動側型板との間にキャビティを形成し、このキャビティに溶融樹脂を充填し、その後に溶融樹脂を速かに冷却するようにしている。この冷却に当っては型板内に冷媒流路を形成し、この冷媒流路に冷媒を流通させることによって型板を冷却して溶融樹脂を冷却し、固化するようにしている。
しかしながら上記構成の射出成形用金型の冷却構造によれば、エジェクタピン等の摺動ピン先端近傍の冷却が充分に行なわれない欠点があった。
・・・(中略)・・・
(3)考案の目的
しかして本考案は上記実情に鑑みて開発されたものであって、型板内の摺動ピン等の摺動部分を冷却し得るようにしてキャビティの冷却効率を向上させるとともに、ハイサイクル成型を可能とすることを、その目的とするものである。
(4)考案の特徴
本考案に係る金型の摺動ピン先端の冷却構造の特徴は、摺動ピンと、この摺動ピンの進退を許容する孔とを備えた金型において、上記摺動ピンと上記孔との間に摺動ピンの軸線方向にわたって冷媒の供給路と排出路とを設け、上記供給路と排出路との連通路を摺動ピンの先端側に設けるようにしたことにある。」
「第2図
[図:0001429405000009.jpg]
」
(イ) 引用文献8に記載された事項
当審拒絶理由に引用された、特開2015-30180号公報(以下「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0018】
また、第6の発明は、マトリックス樹脂に熱硬化性樹脂を使用しRTM成形された繊維強化プラスチック成形品を成形型から取り出す脱型方法であって、少なくとも、前記成形型内に設置され、前記成形型から前記繊維強化プラスチック成形品を取り出すための突き出しピンと、前記突き出しピン及び/又は前記突き出しピン近傍を冷却する冷却手段を有し、前記冷却手段により、少なくとも前記突き出しピンの作用により前記繊維強化プラスチック成形品が押圧される領域を、前記繊維強化プラスチック成形品におけるガラス転移温度の40~80%に相当する温度以下まで冷却する工程と、前記冷却工程後、前記突き出しピンにより、前記繊維強化プラスチック成形品を突き出して取り出す工程を有する構成である。
【0019】
これによると、熱硬化性樹脂で成形された繊維強化プラスチック成形品を硬化した直後は高温状態となっており、高温のまま成形型から取り出すときに、突き出しピンからの押圧力により、成形品の一部又は全体に破損又は変形が生じやすい傾向にある。そのため、熱硬化性樹脂で成形された繊維強化プラスチック成形品を一旦冷却してから成形型から取り出す事が好ましいが、成形型全体を冷却すると、次の成形を行う際に、成形型全体の温度を再度上げる必要があり、生産性が低下してしまう。
【0020】
そこで、本発明では突き出しピン及び/又は前記突き出しピン近傍を冷却する冷却手段を設けることにより、突き出しピンからの押圧力が掛かる領域を集中して冷却することにより、硬化後に成形品を取り出す際に、突き出しピンによる成形品へのダメージを抑制でき、また、次の成形の工程において、他の領域は冷却されていないため、生産の効率を落とすことなく、効率的に成形する事ができる。」
「【0037】
本発明の突き出しピン4及び/又は突き出しピン近傍を冷却する冷却手段として、突き出しピン4の内部に冷却媒体を送出する第1の冷却手段、および/または、突き出しピン4の周辺部に位置する金型内部に冷却媒体を送出する第2の冷却手段を有する構成とすることができる。第1の冷却手段において、突き出しピン4の内部に冷却媒体を流すことにより、成形品と直接接触する突き出しピン4を冷却することができる。
【0038】
また、突き出しピン近傍を冷却する第2の冷却手段の構成を図3に示す。突き出しピン近傍とは、突き出しピン4の周辺部の成形品と接近した領域である。突き出しピン4の突き出し部分の先端平面の中心部から最外辺までの長さに対して、2倍までの距離にある領域を冷却することが好ましい。好ましくは4倍である。この突き出しピン近傍領域を冷却することで、他の領域の冷却をすることなく、損傷なく成形品の取り出しを可能とすることができる。
【0039】
突き出しピン近傍を冷却する第2の冷却手段としては、成形品と近接する成形型内で突き出しピンの周辺に円周状に冷却媒体を流れる配管を配置する構成が好ましい。」
「【図3】
[図:0001429405000010.jpg]
」
(ウ) 周知技術Cの認定
前記引用文献6及び引用文献8に例示されているように、次の事項は当業者にとって周知技術であると認められる(以下「周知技術C」という。)。
<周知技術C>
「キャビティを有する金型のエジェクタピンを取り囲むように冷却流路を設けて、エジェクタピン近傍を冷却すること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xについて
a 引用発明の「金型」「を備える装置」は、本件補正発明の「金型装置」に相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「金型装置」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aについて
a 引用発明の「金型」は、「キャビティ1を設けた第1の型板としての固定側型板2とコア3を設けた第2の型板としての可動側型板4との界面で分かれて開閉され[る]」ものであり、「キャビティ1」を有しているものであるから、本件補正発明の「キャビティを有する金型」に相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「キャビティを有する金型」を備える点において一致する。
(ウ) 構成Bについて
a 引用発明の「温度測定構成のうち、少なくとも光ファイバ及びエジェクタピン100を支持する構造」は、本件補正発明の「支持構造」に相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「支持構造」を備える点において一致する。
(エ) 構成Cについて
a 引用発明の「温度測定構成」は、本件補正発明の「温度センサ」に相当し、また、「温度センサ」を備える「検知モジュール」にも相当する。
b 引用発明においては、「エジェクタピン100はキャビティ内に樹脂が充填された際は導光体として樹脂温度の測定に関与し」、「樹脂の赤外輻射線から、金型のキャビティ内の樹脂温度を直接的に測定し、樹脂から放出される赤外線輻射は、光ファイバ束を導光体とし赤外線検出器に伝達され[る]」ものであるから、樹脂から放出される赤外線輻射は、「光ファイバ17」の端部に入るものであり、当該端部が金型のキャビティ内の所定位置に配置されていることは明らかである。
c そうすると、引用発明の「光ファイバ17」の金型のキャビティ内の所定位置に配置された端部は、本件補正発明の「金型内に位置し、前記キャビティ内の所定位置に対応する」「検知部」に相当し、前記aを踏まえると、引用発明は、本件補正発明でいう「検知モジュール」が「検知部」を備えるものであるといえる。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、
「検知モジュールであって、
検知部」「を有する温度センサであって、前記検知部が前記金型内に位置し、前記キャビティ内の所定位置に対応」「する温度センサと、」
「を備える検知モジュール」を備える点において共通する。
e 一方、本件補正発明と引用発明は、構成Cに関して、次に示す点において相違する。
検知モジュールについて、
本件補正発明においては、
「温度センサ」が「前記支持構造内に位置する」「当接部」を有するとともに、
「前記支持構造内に配され前記当接部に対応する圧力センサであって、前記当接部が、前記キャビティ内の前記所定位置の圧力によって前記圧力センサに当接するように構成される圧力センサ」を備えているのに対して、
引用発明においては、
圧力センサを備えているか不明であり、温度測定構成が、圧力センサに当接する当接部を備えていない点。
(オ) 構成Dについて
本件補正発明と引用発明は、構成Dに関して、次に示す点において相違する。
本件補正発明においては、
「冷却流路」を備えているのに対して、
引用発明においては、
冷却流路を備えているか不明である点。
(カ) 構成Eについて
a 前記(エ)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記温度センサが、光ファイバ温度センサであ[る]」点において共通する。
b 一方、本件補正発明と引用発明は、構成Eに関して、次に示す点において相違する。
本件補正発明においては、
「温度センサ」が、「前記冷却流路によって取り囲まれ[ている]」のに対して、
引用発明においては、
前記(オ)のとおり冷却流路を備えているか不明であり、温度測定構成が前記冷却流路によって取り囲まれているのかも不明である点。
(キ) 構成Fについて
本件補正発明と引用発明は、構成Fに関して、次に示す点において相違する。
本件補正発明においては、
「前記圧力センサが検知突起を有し、前記検知突起が前記当接部から加わる当接力を直接受けるように構成される」のに対して、
引用発明においては、
前記(エ)のとおり圧力センサを備えているか不明であり、圧力センサが検知突起を有し、前記検知突起が前記当接部から加わる当接力を直接受けるように構成されるものではない点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア) 一致点
(構成A)キャビティを有する金型と、
(構成B)支持構造と、
(構成C’)検知モジュールであって、
検知部を有する温度センサであって、前記検知部が前記金型内に位置し、前記キャビティ内の所定位置に対応する温度センサと、
を備える検知モジュールと、
を備え、
(構成E’)前記温度センサが、光ファイバ温度センサである、
(構成X)金型装置、である点。
(イ) 相違点
a 相違点1(構成C、F)
検知モジュールについて、
本件補正発明においては、
「温度センサ」が「前記支持構造内に位置する」「当接部」を有するとともに、
「前記支持構造内に配され前記当接部に対応する圧力センサであって、前記当接部が、前記キャビティ内の前記所定位置の圧力によって前記圧力センサに当接するように構成される圧力センサ」を備えており、
「前記圧力センサが検知突起を有し、前記検知突起が前記当接部から加わる当接力を直接受けるように構成される」のに対して、
引用発明においては、
圧力センサを備えているか不明であり、温度測定構成が、圧力センサに当接する当接部を備えておらず、前記圧力センサが検知突起を有し、前記検知突起が前記当接部から加わる当接力を直接受けるように構成されるものではない点。
b 相違点2(構成D、E)
本件補正発明においては、
「冷却流路」を備えており、「温度センサ」が「前記冷却流路によって取り囲まれ[ている]」のに対して、
引用発明においては、
冷却流路を備えているか不明であり、温度測定構成が前記冷却流路によって取り囲まれているのかも不明な点。
(4) 当審の判断
ア 相違点1について
前記相違点1について検討する。
(ア)a 前記(2)イ(ウ)において周知技術Aとして示したとおり、次の事項は、優先日前に周知である。
「エジェクタピンの先端に温度を測定する温度センサーを配置し、前記先端面とは反対側の基端面に直接接触するように圧力センサを配置して、同一位置でキャビティ内の温度及び圧力を検出すること。」
b また、前記(2)ウ(エ)において周知技術Bとして示したとおり、次の事項も、優先日前に周知である。
「荷重変換器に突起物を設け、当該突起物で荷重を受けるようにすること。」
(イ) 引用発明を開示する引用文献3の段落【0002】及び【0003】には、射出成形時の金型キャビティ内の温度及び圧力を測定する課題があることが示されているから、引用発明において、前記課題を解決するために、前記周知技術Aに倣って、引用発明の温度測定構成を構成する「エジェクタピン200」の「中空軸部10」の下端に設けられた「鍔部11」の下面に固定された「蓋部材13」のキャビティ側とは反対側に直接接触するように圧力センサを設けるようにして、同一位置でキャビティ内の温度及び圧力を検出する構成(以下「圧力測定構成」という。)とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ) そして、圧力測定構成においては、引用発明の「エジェクタピン100」の「蓋部材13」が、本件補正発明の「圧力センサに当接する」「当接部」に相当することになる。また、引用発明の「エジェクタピン100」の「蓋部材13」は、「温度測定構成のうち、少なくとも光ファイバ及びエジェクタピン100を支持する構造」内に配置されているから、「圧力センサ」も「温度測定構成のうち、少なくとも光ファイバ及びエジェクタピン100を支持する構造」内に配置され、「蓋部材13」に対応するものとなることは明らかであるし、当該「圧力センサ」がキャビティ内の圧力を検出するものであることに照らせば、本件補正発明でいう「前記当接部が、前記キャビティ内の前記所定位置の圧力によって前記圧力センサに当接するように構成される」ものとなることも明らかである。
(エ) そして、圧力測定構成において、「エジェクタピン100」の「蓋部材13」のキャビティ側とは反対側に直接接触するように圧力センサを設ける際に、前記周知技術Bを適用して、圧力センサに突起物、すなわち、相違点1に係る本件補正発明の「検知突起」を設け、当該突起物(検知突起)が「蓋部材13」から加わる力を直接受けるようにすることについても、格別の困難性があるものではない。
(オ) したがって、引用発明において前記周知技術A及び周知技術Bを採用することにより、前記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
前記相違点2について検討する。
(ア) 前記(2)エ(ウ)において周知技術Cとして示したとおり、次の事項は、優先日前に周知である。
「キャビティを有する金型のエジェクタピンを取り囲むように冷却流路を設けて、エジェクタピン近傍を冷却すること。」
(イ) 引用発明においても、キャビティを有する金型とエジェクタピン100を備える装置であり、エジェクタピン近傍を冷却する課題を当然有しているものであるから、当該課題を解決するために、前記周知技術Cを適用して、本件補正発明の「温度センサ」に相当する温度測定構成を構成するエジェクタピン100を取り囲むように、冷却流路を設けることに、格別の困難性があるものではない。
(ウ) したがって、引用発明において前記周知技術Cを採用することにより、前記相違点2に係る本件補正発明の構成を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 総合検討
前記ア及びイを総合的に勘案しても、引用発明において、前記相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の内容
請求人は、令和7年3月24日付け意見書において、概略次の主張をしている。
引用文献1~6、8はいずれも本件補正発明の「前記圧力センサが検知突起を有し、前記検知突起が前記当接部から加わる当接力を直接受けるように構成される」という技術的特徴を開示しておらず、また、引用文献1又は引用文献2において、圧力伝達に用いられる部材(引用文献1の中空のエジェクタピン108又は引用文献2の圧力伝達ロッド114とブロック蓋132の内面部等)の伝達中の圧力吸収過程およびその部材の変形の可能性を考慮すると、力の伝達過程において、一部の力は圧力伝達に用いられる部材に吸収されることで変形が生じ、引用文献1の間接的な圧力センサ42又は引用文献2の圧力センサ134が受ける力は、引用文献1のセンサ104の当接部又は引用文献2の絶縁熱電対152の当接部が実際に受ける力と差が生じるため、引用文献1の間接的な圧力センサ42、又は引用文献2の圧力センサ134が計測した値はキャビティ内の圧力を正確に反映できない可能性がある。
引用文献1~6、8を任意に組み合わせても、本件補正発明の技術的手段の構成を容易に推考することはできず、本願の「圧力センサが計測した値はキャビティ内の特定の位置の圧力を正確に反映することができる」という技術効果を実現することはできない。
(イ) 請求人の主張についての検討
前記主張について検討する。
a 前記ア(イ)及び(ウ)において示したとおり、引用発明に周知技術Aを適応した場合、引用発明の「エジェクタピン100」の「蓋部材13」に、圧力センサが直接接触するように設けられることになるから、前記圧力センサが受ける力と、引用発明の「温度測定構成」の「エジェクタピン100」の「蓋部材13」が実際に受ける力に差が生じることはない。そうすると、引用発明に周知技術Aを適用した構成において、請求人が主張する「圧力センサが計測した値はキャビティ内の特定の位置の圧力を正確に反映することができる」という効果を奏することは、当業者が予測し得ることといえる。
b そして、前記ア(エ)において示したとおり、引用発明に圧力センサを設ける際に周知技術Bに倣って、本件補正発明の「前記圧力センサが検知突起を有し、前記検知突起が前記当接部から加わる当接力を直接受けるように構成される」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
c したがって、請求人の前記主張は採用できない。
オ 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術A~Cに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 独立特許要件の判断についてのまとめ
前記(1)~(4)において検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術A~Cに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年10月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由のうち、本願発明に対する理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に日本国内又は外国において発行された、下記引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2017-19275号公報(周知技術を示す文献)
引用文献2.国際公開第2011/115276号(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2008-232753号公報(主たる引用例)
引用文献4.実願昭53-166974号(実開昭55-84554号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
引用文献5.特開2016-121952号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6.実願昭59-75438号(実開昭60-187023号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
引用文献8.特開2015-30180号公報(周知技術を示す文献)
3 引用発明、周知技術A及びCの認定
引用発明、周知技術A及びCの認定は、前記第2の3(2)ア、イ及びエにおいて示したとおりである。
4 対比
前記第2の3(3)の検討を踏まえると、本願発明と引用発明は、以下の相違点3及び相違点4において相違し、その他の点で一致する。
(1) 相違点3
検知モジュールについて、
本願発明においては、
「温度センサ」が「前記支持構造内に位置する」「当接部」を有するとともに、
「前記支持構造内に配され前記当接部に対応する圧力センサであって、前記当接部が、前記キャビティ内の前記所定位置の圧力によって前記圧力センサに当接するように構成される圧力センサ」を備えているのに対して、
引用発明においては、
圧力センサを備えているか不明であり、温度測定構成が、圧力センサに当接する当接部を備えていない点。
(2) 相違点4
本願発明においては、
「冷却流路」を備えており、「温度センサ」が「前記冷却流路によって取り囲まれ[ている]」のに対して、
引用発明においては、
冷却流路を備えているか不明であり、温度測定構成が前記冷却流路によって取り囲まれているのかも不明な点。
5 当審の判断
(1) 相違点3について
前記第2の3(4)ア(イ)及び(ウ)に示した理由と同様の理由により、引用発明において前記周知技術Aを採用することにより、前記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2) 相違点4について
前記第2の3(4)イに示した理由と同様の理由により、引用発明において前記周知技術Cを採用することにより、前記相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3) 総合検討
前記(1)及び(2)を総合的に勘案しても、引用発明において、前記相違点3及び相違点4に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術A及びCに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-021312