特許拒絶査定不服審判
2024-004465
感圧装置の隔離キャビティ封止監視
- 審判番号
- 2024-004465
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-520092
- 請求日
- 2024年03月13日
- 審決日
- 2025年07月10日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ローズマウント インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 谷垣 圭二
- 審判官 濱野 隆
- 分類
- P18 .575-Z (G01L) / P18 .121-Z (G01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-520092号「感圧装置の隔離キャビティ封止監視」拒絶査定不服審判事件〔令和3年4月8日国際公開、WO2021/066883、令和4年11月30日国内公表、特表2022-550196号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)5月15日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年9月30日、米国。以下、2019年9月30日を「優先日」という。)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 5月25日 :翻訳文の提出
令和5年 6月16日付け:拒絶理由通知書
同年 9月22日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月 1日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月14日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 3月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 5月14日付け:前置報告書
同年 6月26日 :上申書の提出
第2 令和6年3月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年3月13日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和6年3月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
第1の隔離キャビティと、前記第1の隔離キャビティに含まれる充填流体と、第2の隔離キャビティと、前記第2の隔離キャビティに含まれる充填流体と、を含むハウジングと、
前記第1の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第1の隔離ダイアフラムと、
前記第2の隔離キャビティのプロセス界面を前記プロセス媒体から封止するように構成された第2の隔離ダイアフラムと、
前記第1の隔離キャビティ内の前記充填流体の圧力に基づく静圧信号を出力するように構成された静圧センサと、
前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の渦電流変位センサと、
前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティのセンサ界面に露出され、前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティ内の充填流体間の圧力差を示す差圧信号を出力するように構成された差圧センサと、
前記第1の位置信号と、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて求められた前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置と、に基づいて前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成された制御部と、を含む工業プロセス差圧検知装置。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
第1の隔離キャビティと、前記第1の隔離キャビティに含まれる充填流体と、第2の隔離キャビティと、前記第2の隔離キャビティに含まれる充填流体と、を含むハウジングと、
前記第1の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第1の隔離ダイアフラムと、
前記第2の隔離キャビティのプロセス界面を前記プロセス媒体から封止するように構成された第2の隔離ダイアフラムと、
前記第1の隔離キャビティ内の前記充填流体の圧力に基づく静圧信号を出力するように構成された静圧センサと、
前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の渦電流変位センサと、
前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティのセンサ界面に露出され、前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティ内の充填流体間の圧力差を示す差圧信号を出力するように構成された差圧センサと、
前記第1の位置信号と、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて、所定の前記第1の隔離ダイアフラムの位置、静圧、及び差圧の集合を関連付けるルックアップテーブル又はアルゴリズムを用いて求められた前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置と、に基づいて前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成された制御部と、を含む工業プロセス差圧検知装置。」
2 本件補正の目的
(1) 本件補正のうち請求項1についてする補正は、次の限定をするものである。
「前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて求められた前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置」について
「所定の前記第1の隔離ダイアフラムの位置、静圧、及び差圧の集合を関連付けるルックアップテーブル又はアルゴリズムを用いて求められた」ものに限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Fまでに分説する。また、参考図1及び参考図2として、本願の【図7】及び【図5】に符号の部材名を加筆したものを示す。
<本件補正発明の分説>
(構成A) 第1の隔離キャビティと、前記第1の隔離キャビティに含まれる充填流体と、第2の隔離キャビティと、前記第2の隔離キャビティに含まれる充填流体と、を含むハウジングと、
(構成B1) 前記第1の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第1の隔離ダイアフラムと、
(構成B2) 前記第2の隔離キャビティのプロセス界面を前記プロセス媒体から封止するように構成された第2の隔離ダイアフラムと、
(構成C) 前記第1の隔離キャビティ内の前記充填流体の圧力に基づく静圧信号を出力するように構成された静圧センサと、
(構成D) 前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の渦電流変位センサと、
(構成E) 前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティのセンサ界面に露出され、前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティ内の充填流体間の圧力差を示す差圧信号を出力するように構成された差圧センサと、
(構成F) 前記第1の位置信号と、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて、所定の前記第1の隔離ダイアフラムの位置、静圧、及び差圧の集合を関連付けるルックアップテーブル又はアルゴリズムを用いて求められた前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置と、に基づいて前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成された制御部と、を含む
(構成X) 工業プロセス差圧検知装置。」
<参考図1(【図7】)>
[図:0001429506000001.jpg]
<参考図2(【図5】)>
[図:0001429506000002.jpg]
イ 本件補正発明の課題、作用効果に関する発明の詳細な説明の記載
本件補正発明の課題、作用効果に関する本願明細書の発明の詳細な説明の記載等を抜粋すると、次の記載がある。
(ア) 技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題について
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、工業プロセス感圧装置のための隔離構成に関し、より詳細には、封止破損のために隔離キャビティを監視するための技法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業プロセス感圧装置、例えば、圧力送信機及び流量測定装置は、プロセス媒体の圧力に応答して出力を提供する圧力センサを使用してプロセス媒体の圧力を監視するために、工業プロセス制御システムで使用されている。1つの周知のタイプの圧力送信機は、ミネソタ州チャナッセンのローズマウント・インコーポレイテッドから入手可能なModel 3051送信機である。また、米国では圧力送信機も示されている。例えば、米国特許第.5,094,109号等を参照されたい。
【0003】
圧力センサがプロセス媒体にさらされると、プロセスセンサが損傷し、圧力測定値に悪影響を及ぼす可能性がある。圧力センサがプロセス媒体の圧力を検出することを可能にしながら、圧力センサをプロセス媒体から分離するために、隔離構成が使用される。隔離構成は、典型的には、プロセス媒体に曝される隔離ダイアフラムを含む。隔離ダイアフラムは、典型的には、プロセス媒体の圧力に応答して撓む非常に薄く順応的な部材である。プロセス媒体の圧力を表す隔離ダイアフラムの撓みは、流体ラインなどの隔離キャビティ内に含まれる隔離流体または充填流体を介して圧力センサに結合される。したがって、圧力センサは、プロセス媒体に曝されることなく、隔離流体の圧力を測定することによって、プロセス圧力を測定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
隔離キャビティの封止は、例えば、腐食性又は研磨性のプロセス媒体への暴露による隔離ダイアフラムの破裂、又は封止の故障によって破られる可能性がある。隔離キャビティの封止の破損は、隔離流体の漏れをもたらす可能性があり、これは、圧力測定値の劣化につながる可能性がある。さらに、プロセス媒体が隔離キャビティに入る可能性があり、これは、プロセス流体によって圧力センサを損傷し、さらに圧力測定値を劣化させる可能性がある。」
(イ) 発明の作用効果等について
「【0035】
隔離キャビティ136が適切に封止されている場合の通常動作中の隔離ダイアフラム140の予想される位置は、経験的に決定することができる。例えば、隔離流体144の圧力範囲にわたるハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の推定又は予想される位置は、隔離構成132の隔離流体144の圧力範囲にわたる隔離ダイアフラム位置の測定値、又は同様の隔離構成を通じて決定することができる。結果として得られる予想位置データ202は、隔離流体の静圧に基づいてハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の予想位置を計算するために、多項式などのアルゴリズムによって定義することができる。そのような多項式はまた、(適用可能であれば)温度および差圧を説明することができる。あるいは、キャビティ136内の隔離流体144の静圧、場合によっては差圧(適用可能な場合)および温度を、測定された撓みまたは位置にリンクさせる、ルックアップテーブルまたは別の適切なデータ記憶インデックスを使用することができる。」
「【0037】
この方法の204で、制御部150は、検出された位置(ステップ170)と予想される位置(ステップ200)との差(絶対値)が、図2に示されるようにメモリ152から取り出すことができる閾値206を超えた場合に、隔離キャビティ136の封止の損失を検出する。閾値206は、充填流体144の所与の圧力、又は充填流体144の圧力と温度の組み合わせに対して経験的に設定することができる。さらに、異なる閾値を、充填流体144の圧力または圧力と温度の組み合わせの範囲にわたってインデックス付けすることができる。ハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の予測位置と検出位置との差が閾値206を超えると、隔離キャビティ136の封止の破れが示される。」
(2) 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献であって、優先日前に発行された文献である特開平4-194718号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は審判合議体が付したもので、後記(ウ)において引用発明の認定に直接用いる記載を示す。
a 【特許請求の範囲】
「【特許請求の範囲】
ハウジングと、
該ハウジングの両側に設けられ該ハウジングとそれぞれ隔液室を構成する2個の隔液ダイアフラムと、
前記2個の隔液室の差圧を検出する差圧検出部と
を具備する差圧測定装置において、
前記隔液ダイアフラムに対向して前記ボディに設けられ該隔液ダイアフラムと静電容量電極を構成し該隔液ダイアフラムの変位を検出する電極と、
前記ハウジングに設けられ静圧を検出する静圧検出センサと、
前記ハウジングに設けられ温度を検出する温度検出センサと、
前記静電容量電極の信号と差圧センサと静圧検出センサと温度検出センサとの信号とを演算して前記隔液ダイアフラムの破損を検出する演算回路と
を具備したことを特徴とする差圧測定装置。」
(当審注:上記請求項1の記載の第5段落における「前記ボディ」という語は、引用文献1においては他の箇所に現れないものであり、後記eにおいて摘記した第2図からみて「前記ハウジング」の誤記であると認められる。)
b 1頁右下欄6~10行
「<産業上の利用分野>
本発明は、封入液の流出、あるいは、測定流体の封入液への流入を生ずる、隔液ダイアフラムの破損を容易に検知し得る差圧測定装置に関するものである。」
c 1頁右下欄11行~2頁右下欄2行、第3図
「<従来の技術>
第3図は従来より一般に使用されている従来例の構成説明図で、例えば、実開昭60-181642号に示されている。」
「第3図
[図:0001429506000003.jpg]
」
「図において、
1はハウジングで、円柱状の首部1Aと、首部1Aの端部外周縁部1Cにおいて溶接接続されたブロック状の受圧部1Bとよりなる。
ハウジング1の両側に高圧側フランジ2、低圧側フランジ3が溶接等によって固定されており、両フランジ2,3には測定せんとする圧力PHの高圧流体の導入口4、圧力PLの低圧流体の導入口5が設けられている。
ハウジング1内に圧力測定室6が形成されており、この圧力測定室6内にセンタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8が設けられている。
センタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8は、それぞれ別個に圧力測定室6の壁に固定されており、センタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8の両者でもって圧力測定室6を2分している。
センタダイアフラム7と対向する圧力測定室6の壁には、バックプレート6A、6Bが形成されている。
センタダイアフラム7は周縁部をハウジング1に溶接されている。
シリコンダイアフラム8は全体が単結晶のシリコン基板から形成されている。
シリコン基板の一方の面にボロン等の不純物を選択拡散して4つのストレンゲージ9を形成し、他方の面を機械加工、エッチングし、全体が凹形のダイアフラムを形成する。
4つのストレインゲージ9は、シリコンダイアフラム8が差圧ΔPを受けてたわむ時、2つが引張り、2つが圧縮を受けるようになっており、これらがホイートストン・ブリッジ回路に接続され、抵抗変化が差圧ΔPの変化として検出される。
シリコンダイアフラム8は、首部1Aを2個のセンサ室11,12に分ける。
支持体13の圧力測定室6側端面に、低融点ガラス接続等の方法でシリコンダイアフラム8が接着固定されている。
ハウジング1と高圧側フランジ2、および低圧側フランジ3との間に、圧力導入室14,15が形成されている。
この圧力導入室14,15内に隔液ダイアフラム16,17を設け、この隔液ダイアフラム16,17と対向するハウジング1の壁18,19に隔液ダイアフラム16,17と類似の形状のバックプレートが形成されている。 隔液ダイアフラム16,17とバックプレート18,19とで形成される空間と、圧力測定室6は、連通孔21,22を介して導通している。
そして、隔液ダイアフラム16,17間にシリコンオイル等の封入液101,102が満たされ、この封入液が連通孔21,22を介してシリコンダイアフラム8の上下面にまで至っている。
封入液101,102は、センタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8とによって2分されているが、その量が、ほぼ均等になるように配慮されている。
以上の構成において、高圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム16に作用する圧力が封入液101によってシリコンダイアフラム8に伝達される。
一方、低圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム17に作用する圧力が封入液102によってシリコンダイアフラム8に伝達される。
この結果、高圧側と低圧側との圧力差に応じてシリコンダイアフラム8が歪み、この歪み量がストレインゲージ9に因って電気的に取出され、差圧の測定が行なわれる。」
d 2頁右下欄3行~3頁左上欄2行
「<発明が解決しようとする課題>
しかしながら、この様な装置においては、隔液ダイアフラム16,17は、使用中、常に測定流体に接触しているため、腐蝕、酸化、疲労が起こりやすく、長時間使用を続けると、劣化した部分に孔があき、測定流体が封入液101,102に流入したり、封入液101,102が測定流体に流出したりする。
この様な問題を解決するために、部品の材質の選択、部品の接合方法等を工夫する改善がなされて来たが、いまだに、この様な問題に対して完全に信頼性のある構造は、実用化されていない。
従って、この様な問題が、万一発生した場合、速やかに、隔液ダイアフラムの破損を検知する機能が必要となる。
本発明は、この問題点を、解決するものである。
本発明の目的は、封入液の流出、あるいは、測定流体の封入液への流入を生ずる、隔液ダイアフラムの破損を容易に検知し得る差圧測定装置を提供するにある。」
e 3頁右上欄17行~4頁左下欄19行、第1図、第2図
「<実施例>
第1図は本発明の一実施例の要部構成説明図、第2図は第1図の要部詳細図である。
図において、第3図と同一記号の構成は同一機能を表わす。
以下、第3図と相違部分のみ説明する。」
「第1図
[図:0001429506000004.jpg]
」
「第2図
[図:0001429506000005.jpg]
」
「31は、第2図に示す如く、隔液ダイアフラム17に対向してハウジング1に設けられ、隔液ダイアフラム17と静電容量電極を構成し、隔液タイアフラム17の変位を検出する電極である。
電極31は、誘電シール材32を介してハウジング1に設けられている。 33は、ハウジング1に設けられ静圧を検出する静圧検出センサである。 34は、ハウジング1に設けられ温度を検出する温度検出センサである。 静圧検出センサ33と温度検出センサ34とは、この場合は、シリコンダイアフラム8に設けられ、半導体感圧・感温素子が使用されている。
35は、静電容量電極の信号と差圧センサ9と静圧検出センサ33と温度検出センサ34との信号とを演算して前記隔液ダイアフラムの破損を検出する演算回路(図示せず)である。」
f 3頁左下欄20行~4頁左上欄5行
「以上の構成において、高圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム16に作用する圧力が封入液101によってシリコンダイアフラム8に伝達される。
一方、低圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム17に作用する圧力が封入液102によってシリコンダイアフラム8に伝達される。
したがって、高圧側と低圧側との圧力差に応じてシリコンダイアフラム8が歪み、この歪み量がストレインゲージ9に因って電気的に取出され、差圧の測定が行なわれる。
而して、静電容量電極と差圧センサと静圧検出センサと温度検出センサとを設けて、静電容量電極の信号と、差圧センサと静圧検出センサと温度検出センサとの信号とを演算して、隔液ダイアフラムの破損を検出する演算回路が設けられたので、隔液ダイアフラムの破損を知ることが出来る。
この結果、万一、隔液ダイアフラム16,17が破損し、液漏れ等が生じた場合でも、速やかに異常を検知出来るようになり、プラント等の事故を未然に防ぐ事が可能となる。
なお、前述の実施例においては、静圧検出センサ33、温度検出センサ34は、シリコンダイアフラム8に設けられたものについて説明したが、これに限ることはなく、要するに、静圧や温度が検出出来る箇所に設けられれば良い。」
(イ) 引用文献1の記載から認定した事項
前記(ア)eにおいて摘記したように、引用文献1の実施例を示す第1図において、従来例を示す第3図と同一記号の構成は同一機能を表わすとされており、第3図と相違部分のみが摘記事項e及びfにおいて説明されているから、引用文献1の従来例についての説明箇所である摘記事項cのうち、実施例においても共通する箇所を当該実施例の構成として認識できる。
したがって、引用文献1には、実施例に係る次の技術事項(以下「認定事項1」という。)が記載されていると認められる。
<認定事項1>
「ハウジング1の両側に高圧側フランジ2、低圧側フランジ3が溶接等によって固定されており、両フランジ2,3には測定せんとする圧力PHの高圧流体の導入口4、圧力PLの低圧流体の導入口5が設けられており、
ハウジング1内に圧力測定室6が形成されており、この圧力測定室6内にセンタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8が設けられており、
ハウジング1と高圧側フランジ2、および低圧側フランジ3との間に、圧力導入室14,15が形成されており、
この圧力導入室14,15内に隔液ダイアフラム16,17を設け、
隔液ダイアフラム16,17間にシリコンオイル等の封入液101,102が満たされ、この封入液が連通孔21,22を介してシリコンダイアフラム8の上下面にまで至っていること」
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項及び前記(イ)において認定した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所等を括弧内に示した。
<引用発明>
「ハウジング1と、
該ハウジング1の両側に設けられ該ハウジング1とそれぞれ隔液室を構成する2個の隔液ダイアフラム16,17と、
前記2個の隔液室の差圧を検出する差圧検出部9と
を具備する差圧測定装置であって、
前記隔液ダイアフラム16,17に対向して前記ハウジングに設けられ該隔液ダイアフラム16,17と静電容量電極を構成し該隔液ダイアフラム16,17の変位を検出する電極31と、
前記ハウジング1に設けられ静圧を検出する静圧検出センサ33と、
前記ハウジングに設けられ温度を検出する温度検出センサ34と、
前記静電容量電極の信号と差圧センサ9と静圧検出センサ33と温度検出センサ34との信号とを演算して前記隔液ダイアフラム16,17の破損を検出する演算回路35と
を具備し、(摘記事項a、e)
ハウジング1の両側に高圧側フランジ2、低圧側フランジ3が溶接等によって固定されており、両フランジ2,3には測定せんとする圧力PHの高圧流体の導入口4、圧力PLの低圧流体の導入口5が設けられており、
ハウジング1内に圧力測定室6が形成されており、この圧力測定室6内にセンタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8が設けられており、
ハウジング1と高圧側フランジ2、および低圧側フランジ3との間に、圧力導入室14,15が形成されており、
この圧力導入室14,15内に隔液ダイアフラム16,17を設け、
隔液ダイアフラム16,17間にシリコンオイル等の封入液101,102が満たされ、この封入液が連通孔21,22を介してシリコンダイアフラム8の上下面にまで至っており、(認定事項1)
高圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム16に作用する圧力が封入液101によってシリコンダイアフラム8に伝達され、
一方、低圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム17に作用する圧力が封入液102によってシリコンダイアフラム8に伝達され、
高圧側と低圧側との圧力差に応じてシリコンダイアフラム8が歪み、この歪み量がストレインゲージ9に因って電気的に取出され、差圧の測定が行なわれ、(摘記事項f)
封入液の流出、あるいは、測定流体の封入液への流入を生ずる、隔液ダイアフラムの破損を容易に検知し得る差圧測定装置(摘記事項b)。」
イ 引用文献2に記載された事項と技術常識Aの認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献であって、優先日前に発行された文献である特開2017-83180号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。下線は審判合議体が付したものであり、以下同様である。
「【0015】
[1.第1実施形態]
[1.1 構成]
以下、本発明の第1実施形態について、図1から図3を参照して説明する。本実施形態において軸とは、油導入部の長手方向に沿った中心軸をいい、単に周方向あるいは軸方向と言った場合は、中心軸の周方向あるいは中心軸の軸方向を示す。」
「【図1】
[図:0001429506000006.jpg]
」
「【0016】
本実施形態の油圧スイッチは、金属の切削加工品あるいは鋳造品によって作製された円筒状をした中空の筐体1を備える。筐体1の一方の端部には油圧スイッチの外部に向かって開口した油導入部2が設けられ、他方の端部には同じく油圧スイッチの外部に向かって開口したセンサ装着部3が設けられる。油導入部2は油圧回路の配管に接続されるものであり、油導入部2の軸と直交する方向の断面は円形である。筐体1の油導入部2の外側の部分には、配管と接続する際に使用される雄ねじ4が設けられる。
【0017】
センサ装着部3は油導入部2に比較してその内径が大きい断面が円形の空間である。センサ装着部3の断面が油導入部2よりも大きいため、センサ装着部3の周囲に設けられた筐体1の形状も油導入部2の外側の筐体1よりも太い。そのため、センサ装着部3の底部、すなわち油導入部2側の面と油導入部2の出口部分との間には段部5が設けられる。油導入部2のセンサ装着部3側の端部は、センサ装着部3側が広くなるように漏斗状に広がっている。
【0018】
段部5とセンサ装着部3の内壁面とのコーナー部分には、センサ装着部3の底部を油導入部2側に凹ませて、環状の溝6が設けられる。環状の溝6の内部には、環状のシール材7が装着される。このシール材7としては、ゴムなどの弾性を有する素材から構成されたOリングを使用する。
【0019】
段部5の底部には、油導入部2のセンサ装着部3側の開口部を塞ぐように円盤状の可撓性板材8が設けられている。可撓性板材8の周縁部下面は、溝6内に装着されたシール材7に接触している。可撓性板材8の周縁部上面にはセンサ装着部3の深さに等しい肉厚の押圧リング9が設けられる。押圧リング9の上面は、センサ装着部3の開口縁に設けられた加締め部10により締め付けられ、加締め部10の曲げ圧力が押圧リング9を経由して可撓性板材8に伝わり、可撓性板材8の下面がシール材7を押し潰している。
【0020】
可撓性板材8のセンサ装着部3側の表面には、板状の導電部11が設けられる。本実施形態において、可撓性板材8は弾性変形可能な程度の厚さ、例えば1mm程度の厚さを有する耐熱性のポリイミド樹脂から構成される。板状の導電部11は、可撓性板材8の中心部を覆うように接合された金属製の円板で、アルミ、銅、鉄等などの金属製の円盤が使用可能であるが、本実施形態では渦電流出力の大きなアルミ板を使用する。
【0021】
センサ装着部3における導電部11の近傍、すなわち、図1において導電部11であるアルミ板の上方には、一定の間隔を保って渦電流センサ12が設けられる。この渦電流センサ12は、その内部にコイル13を有する。本実施形態において、コイル13は導電部11において渦電流を発生させるための励磁コイルと、導電部11で発生した渦電流の検出する受信コイルとを、1つのコイル13で兼用する。コイル13は交流電源(図示せず)および制御回路に接続される。制御回路には、コイル13のインダクタンス変化に伴う回路コンダクタンスの変動を検出するスイッチ部14が設けられる。このスイッチ部14は、予め定めておいた回路コンダクタンスの値を検出すると、油圧スイッチのオン・オフ指令を出力する。
【0022】
渦電流センサ12は、可撓性板材8とは反対側に設けられたコネクタ15により、油圧スイッチのオン・オフ信号の入出力部、交流電源17などの外部機器に接続される。渦電流センサ12の周囲と押圧リング9の内周との間には、渦電流センサ12を筐体1に固定するホルダ16が設けられる。このホルダ16は、渦電流センサ12をその内側に嵌め込んだ状態において、押圧リング9の内周に嵌め込まれ、押圧リング9の上面を加締め部10によって締め付けることで、筐体1に固定される。」
「【図2】
[図:0001429506000007.jpg]
」
「【0023】
[1.2 作用]
上記のような構成を有する第1実施形態の作用は、以下のとおりである。
本実施形態の油圧スイッチでは、渦電流センサ12のコイル13に通電すると、コイル13は励磁コイルとして働き、コイル13で発生した磁束によりセンサの近傍に配置された導電部11のアルミ板に渦電流が発生する。この渦電流は、受信コイルとして働くコイル13によって検出される。油導入部2に加わる作動流体の圧力が低く、可撓性板材8が変形することがない場合には、コイル13と導電部11との距離も一定に保持されるため、受信コイル13で検出される渦電流も一定に保持される。その結果、油圧スイッチからは、スイッチの切替信号が出力されることなく、油圧スイッチは、例えばオフの状態を維持する。
【00214】
油導入部2に流入した作動流体の圧力が向上し、可撓性板材8の中央部分がセンサ装着部3側に変形すると、可撓性板材8とその表面に設けられた導電部11が筐体1の上部に設けられた渦電流センサ12に近接する。その結果、導電部11に渦電流が発生してコイル13のインダクタンスが変化し、その共振周波数が偏移することによることで、回路コンダクタンスが変化する。渦電流センサ12のスイッチ部14は、この回路コンダクタンスの変化が予め定めた一定値になったことを検出すると、油圧スイッチをオンに切り替える。」
(イ) 技術常識Aの認定
前記(ア)において摘記した引用文献2に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であると認められる(以下「技術常識A」という)。
<技術常識A>
「可撓性部材の変形を渦電流センサによって検出すること。」
ウ 引用文献3に記載された事項と引用文献3技術事項及び技術常識Bの認定
(ア) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献であって、優先日前に発行された文献である登録実用新案第3047104号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
a 【0010】、【図1】
「【0010】
【考案の実施の形態】
図1において、従来の圧力送信機10は、ベース12と、仕切り部材14と、その両側の端部でねじ止めされたカバー16とからなる送信機筐体を有している。図示されていない外部の配管は、二つの処理流体の供給口を提供し、該供給口は隔離ダイアフラム18Lと18Hに接触している。該処理流体の供給口は、ダイアフラム18Lと18Hに、それぞれ圧力PL、PHを付加している。充満流体22Lの第1の分量は圧力センサ24の一方の端部に圧力PLを伝え、充満流体22Hの第2の分量は圧力センサ24の他方の端部に圧力PHを伝える。充満流体22L、22Hは隔離ダイアフラム18L、18Hと、バックプレートまたはストップ面32L、32Hとの、それぞれの間の空間28Lと28Hを満たしている。それらの名前が示唆しているように、隔離ダイアフラム18L、18Hは処理流体に直接接触しないように圧力センサ24を隔離するが、該処理流体の圧力が該充満流体を経て該センサに伝達されるようにするために用いられている。 圧力センサ24は、容量が差圧ΔP=PH-PLの関数となる、容量型差圧セルから構成されている。本考案の目的のために、隔離ダイアフラムに流体的に結合できる他の既知の圧力センサ、例えばストレインゲージ、または光圧力センサ等が本考案と共に使用されることができる。」
「【図1】
[図:0001429506000008.jpg]
」
b 【0012】、【0014】~【0015】、【図2】
「【0012】
図2の送信機50は、それが隔離ダイアフラム18L、18Hの相対的な位置を測定するための手段を含んでいることを除いて、図1の送信機と同じである。
送信機のベース12の内面に固く接着された超音波変換器52L、52Hは、超音波あるいは振動(好ましくは、1~50MHz)のパルスを送信機のベース12の中に放射する。この振動は、送信機のベース/充満流体の境界面(すなわち、前記バックプレート)で第1の反射を起し、また充満流体/隔離ダイアフラムの境界面で第2の反射を起す。超音波変換器は前記反射を検出し、それらを駆動/検出回路56へ別々に伝送する。回路56は、各隔離ダイアフラムとそれぞれのバックプレートとの間の間隔を表す前記反射間の時間間隔を測定する。測定の正確さを増すために、回路56又は他の送信機回路の一つは、充満流体中の音の速度と、周囲の送信機構体中の音の速度は、通常、温度に依存するから、前記測定された時間間隔を測定された温度により補正する。」
「【図2】
[図:0001429506000009.jpg]
」
「【0014】
好ましくは、送信機50の回路42´は、回路42´中の時計によって制御された正常な間隔で、充満流体の漏れのチェックをするための診断ルーチンを実行する。最初に、回路42´は、隔離ダイアフラム18L、18Hの位置または高さを測定する。これらの二つの値はメモリ58に蓄積される。回路42´はまたPRT48によって測定された温度の現在値と、圧力センサ24によって測定された圧力ΔPをメモリ58に保持する。送信機の製造中に、ルックアップテーブルまたは一組の係数がメモリ58の不揮発性部分にプログラムされている。そのテーブルまたは係数は、予め与えられた一組の圧力ΔPと温度の値に対して、隔離ダイアフラム18Lと隔離ダイアフラム18Hに対する位置の期待値を生ずる。温度は充満流体の熱膨脹効果を補正するのに使用される。テーブルまたは係数は、充満流体室がシールされた後直ぐに計算され、メモリに蓄積される。そして、較正処理の間、種々の印加圧力および温度に対して、アイソレータの高さを測定した後、計算される。そして、動作の間、回路42´は、現在の圧力ΔPと温度の値に対する隔離ダイアフラムの位置の期待値を前記テーブルにより呼出すあるいは前記係数により計算する。
【0015】
回路42´は、測定された隔離ダイアフラムの位置の蓄積値と前記期待値とを減算するかまたは比較する。もし、一方の隔離ダイアフラムに対する不一致がメモリ58に蓄積されたプリセットされた閾値THRESHより大きいならば、回路42´はディジタル信号で、または直流出力を28mA程度の警報レベルまで駆動することによって、警告信号を制御ユニットに送ることができる。THRESHは充満流体中のロスによって引き起こされる隔離ダイアフラムの変位の最大の許容値を示している。該最大の変位は許容できる充満流体のロスの最大量に相当する。THRESHは上記した初期の充満流体のロスを検出できる程度の低い値にセットされることができる。」
c 【0020】、【図4】
「【0020】
図4は図2のものと類似の送信機60を示している。しかし、隔離ダイアフラム18L、18Hの位置を測定するための容量技術は超音波技術に代用することができる。プラグ62L、62Hは図示されているように、送信機のベース12の中の穴に密封的に支持されている。各プラグは、それぞれの隔離ダイアフラムに面する側に、充満流体と接触する、小さな導電性のパッチまたは電極64L、64Hを有している。好ましくは、その電極面は、周囲のバックプレート面になじんでいる。プラグ62は、電極64L、64Hが電気的に送信機のベースおよびそれに溶接された隔離ダイアフラムから電気的に絶縁されるように構成されている。隔離ダイアフラムがそれに対向するプラグから離れるように、または近付くように動くので、該隔離ダイアフラムと電極間の容量は増減する。該電極は好ましくは、各電極/隔離ダイアフラム対の容量範囲が圧力センサ24の容量範囲の約10分の1以内となるようなサイズにされている。このようにすると、前記圧力センサの容量を測定するのに用いたのと同一の回路を、電極/隔離ダイアフラム対の容量を測定するのに使用することができるようになる。好ましい実施例では、送信機60は回路42´ によって制御されるスイッチ66を含んでいる。このスイッチは電線68を容量測定回路38に間欠的に結合する。全ての他の時間には、スイッチ66は圧力センサのリード線69を回路38に結合する。」
「【図4】
[図:0001429506000010.jpg]
」
d 【0035】
「【0035】
本考案は好ましい実施例を参照して説明されたけれども、熟練した技術者は本考案の精神または範囲からはずれることなしに変形できることは、認識されるべきである。例えば、本考案は、圧力送信機に対してだけではなく、流体送信機、および充満流体と結合された圧力センサを利用する他の送信機に適用することができる。さらに、送信機は1個、2個、あるいは2個以上の隔離ダイアフラムを持つことができる。本考案は、また、隔離ダイアフラムまたはダイアフラムが、印加された圧力の関数として、バックプレートに関して実質的に停止しているような送信機にも適用できる。熟練した技術者は、誘導、磁気、光学および他の既知の位置測定技術が、隔離ダイアフラムの位置を測定するために、容量または超音波装置の代わりに使用できることを認識するであろう。」
(イ) 引用文献3技術事項の認定
前記(ア)において摘記した事項から、引用文献3には、次の技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所等を括弧内に示した。
<引用文献3技術事項>
「外部の配管が、二つの処理流体の供給口を提供し、該供給口は隔離ダイアフラム18Lと18Hに接触しており、
該処理流体の供給口は、ダイアフラム18Lと18Hに、それぞれ圧力PL、PHを付加しており、
充満流体22Lの第1の分量は圧力センサ24の一方の端部に圧力PLを伝え、充満流体22Hの第2の分量は圧力センサ24の他方の端部に圧力PHを伝え、
圧力センサ24は、容量が差圧ΔP=PH-PLの関数となる、容量型差圧セルから構成されている、圧力送信機10において、(【0010】)
隔離ダイアフラム18L、18Hの相対的な位置を測定するための手段を含んでおり、(【0012】)
送信機50の回路42´は、回路42´中の時計によって制御された正常な間隔で、充満流体の漏れのチェックをするための診断ルーチンを実行するものであり、
最初に、回路42´は、隔離ダイアフラム18L、18Hの位置または高さを測定し、これらの二つの値はメモリ58に蓄積され、
回路42´はまたPRT48によって測定された温度の現在値と、圧力センサ24によって測定された圧力ΔPをメモリ58に保持し、ルックアップテーブルまたは一組の係数がメモリ58の不揮発性部分にプログラムされており、
そのテーブルまたは係数は、予め与えられた一組の圧力ΔPと温度の値に対して、隔離ダイアフラム18Lと隔離ダイアフラム18Hに対する位置の期待値を生ずるものであり、
動作の間、回路42´は、現在の圧力ΔPと温度の値に対する隔離ダイアフラムの位置の期待値を前記テーブルにより呼出すあるいは前記係数により計算するものであり、(【0014】)
回路42´は、測定された隔離ダイアフラムの位置の蓄積値と前記期待値とを減算するかまたは比較し、もし、一方の隔離ダイアフラムに対する不一致がメモリ58に蓄積されたプリセットされた閾値THRESHより大きいならば、回路42´はディジタル信号で、または直流出力を28mA程度の警報レベルまで駆動することによって、警告信号を制御ユニットに送ること。(【0015】)」
(ウ) 技術常識Bの認定
前記(ア)において摘記した引用文献3の【0035】の記載に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であると認められる(以下「技術常識B」という)。
<技術常識B>
「隔離ダイアフラムの位置を測定するために、静電容量方式の他に、電磁誘導を利用した位置測定技術も使用できること。」
(3) 対比・判断
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点
a 構成Xは、「工業プロセス差圧検知装置」の発明であることを特定するものである。
b 引用発明における「差圧測定装置」は、「高圧側と低圧側との圧力差に応じてシリコンダイアフラム8が歪み、この歪み量がストレインゲージ9に因って電気的に取出され、差圧の測定が行なわれ」るものであるところ、「測定せんとする圧力PHの高圧流体」及び「圧力PLの低圧流体」に「工業プロセス」における流体が内在することは自明であるから、引用発明における「差圧測定装置」は、本件補正発明における「工業プロセス差圧検知装置」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、「工業プロセス差圧検知装置」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aの観点
a 構成Aは、「第1の隔離キャビティと、前記第1の隔離キャビティに含まれる充填流体と、第2の隔離キャビティと、前記第2の隔離キャビティに含まれる充填流体と、を含むハウジング」を含むことである。
b 引用発明における「ハウジング1」は、本件補正発明における「ハウジング」に相当する。
c 引用発明においては、「該ハウジング1」と「2個の隔液ダイアフラム16,17」により「それぞれ」「構成」される「隔液室」のうち、「高圧側」(隔液ダイアフラム16側)の「隔液室」は、本件補正発明における「第1の隔離キャビティ」に相当し、「低圧側」(隔液ダイアフラム17側)の「隔液室」は、本件補正発明における「第2の隔離キャビティ」に相当する。
d 引用発明における「隔液ダイアフラム16,17間」に「満たされ」た「シリコンオイル等の封入液101,102」のうち、「高圧側」(隔液ダイアフラム16側)の「封入液101」は、本件補正発明における「前記第1の隔離キャビティに含まれる充填流体」に相当し、「低圧側」(隔液ダイアフラム17側)の「封入液102」は、本件補正発明における「前記第2の隔離キャビティに含まれる充填流体」に相当する。
e 前記b~dを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「第1の隔離キャビティと、前記第1の隔離キャビティに含まれる充填流体と、第2の隔離キャビティと、前記第2の隔離キャビティに含まれる充填流体と、を含むハウジング」を含む点。
(ウ) 構成B1の観点
a 構成B1は、「前記第1の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第1の隔離ダイアフラム」を含むことである。
b 引用発明においては、「高圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム16に作用する圧力か封入液101によってシリコンダイアフラム8に伝達され」るから、「高圧側」(隔液ダイアフラム16側)の「隔液室」は、「隔液ダイアフラム16」を「高圧流体」との界面としており、「高圧流体」が「隔液室」に流入しないように当該界面は「隔液ダイアフラム16」によって封止されているといえる。
c そうすると、引用発明の「隔液ダイアフラム16」は、本件補正発明の「前記第1の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第1の隔離ダイアフラム」に相当する。
d 前記b及びcを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記第1の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第1の隔離ダイアフラム」を含む点。
(エ) 構成B2の観点
a 構成B2は、「前記第2の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第2の隔離ダイアフラム」を含むことである。
b 引用発明においては、「低圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム17に作用する圧力か封入液102によってシリコンダイアフラム8に伝達され」るから、「低圧側」(隔液ダイアフラム17側)の「隔液室」は、「隔液ダイアフラム17」を「低圧流体」との界面としており、「低圧流体」が「隔液室」に流入しないように当該界面は「隔液ダイアフラム17」によって封止されているといえる。
c そうすると、引用発明の「隔液ダイアフラム17」は、本件補正発明の「前記第2の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第2の隔離ダイアフラム」に相当する。
d 前記b及びcを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記第2の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第2の隔離ダイアフラム」を含む点。
(オ) 構成Cの観点
a 構成Cは、「前記第1の隔離キャビティ内の前記充填流体の圧力に基づく静圧信号を出力するように構成された静圧センサ」を含むことである。
b 引用発明における「前記ハウジング1に設けられ静圧を検出する静圧検出センサ33」は、隔液室内の封入液の圧力に基づく静圧信号を出力するものであることは明らかである。
c ここで、引用発明においては、「差圧検出部9」が「前記2個の隔液室の差圧を検出する」から、「高圧側」(隔液ダイアフラム16側)の静圧と、「低圧側」(隔液ダイアフラム17側)の静圧のうち、いずれか一方の静圧が「静圧検出センサ33」により検出されると、他方の静圧は、差圧から計算により導くことができるから、検討の便宜上、「高圧側」の静圧が「静圧検出センサ33」により検出されるとしても一般性を失うことはない。
d そうすると、引用発明における「高圧側」(隔液ダイアフラム16側)の「隔液室」内の「封入液101」の静圧を検出する「静圧検出センサ33」は、本件補正発明における「前記第1の隔離キャビティ内の前記充填流体の圧力に基づく静圧信号を出力するように構成された静圧センサ」に相当する。
e したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記第1の隔離キャビティ内の充填流体の圧力に基づく静圧信号を出力するように構成された静圧センサ」を含む点。
(カ) 構成Dの観点
a 構成Dは、「前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の渦電流変位センサ」を含むことである。
b 引用発明における「前記隔液ダイアフラム16,17に対向して前記ハウジングに設けられ該隔液ダイアフラム16,17と静電容量電極を構成し該隔液ダイアフラム16,17の変位を検出する電極31」のうち、「隔液ダイアフラム16」の変位を検出する電極は、本件補正発明における「前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の渦電流変位センサ」と、「前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の」「変位センサ」である点において共通する。
c したがって、本件補正発明と引用発明の構成Dの観点についての一致点及び相違点は次のとおりである。
<構成Dの観点についての一致点>
「前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の変位センサ」を含む点。
<構成Dの観点についての相違点>
前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の変位センサが、
本件補正発明においては、「渦電流変位センサ」であるのに対して、
引用発明においては、「前記隔液ダイアフラム16,17に対向して前記ハウジングに設けられ該隔液ダイアフラム16,17と静電容量電極を構成し該隔液ダイアフラム16,17の変位を検出する電極31」のうち、「隔液ダイアフラム16」の変位を検出する「電極」である点。
(キ) 構成Eの観点
a 構成Eは、「前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティのセンサ界面に露出され、前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティ内の充填流体間の圧力差を示す差圧信号を出力するように構成された差圧センサ」を含むことである。
b 引用発明においては、「高圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム16に作用する圧力が封入液101によってシリコンダイアフラム8に伝達され、一方、低圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム17に作用する圧力が封入液102によってシリコンダイアフラム8に伝達され」るところ、「高圧側と低圧側との圧力差に応じて」「歪み」が生じる「シリコンダイアフラム8」は、本件補正発明の「前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティのセンサ界面」に相当する。
c そして、引用発明においては、「この歪み量がストレインゲージ9に因って電気的に取出され、差圧の測定が行なわれ」るから、引用発明における「ストレインゲージ9」は、本件補正発明における「前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティのセンサ界面に露出され、前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティ内の充填流体間の圧力差を示す差圧信号を出力するように構成された差圧センサ」に相当する。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティのセンサ界面に露出され、前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティ内の充填流体間の圧力差を示す差圧信号を出力するように構成された差圧センサ」を含む点。
(ク) 構成Fの観点
a 構成Fは、「前記第1の位置信号と、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて、所定の前記第1の隔離ダイアフラムの位置、静圧、及び差圧の集合を関連付けるルックアップテーブル又はアルゴリズムを用いて求められた前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置と、に基づいて前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成された制御部」を含むことである。
b 引用発明は、「前記静電容量電極の信号と差圧センサ9と静圧検出センサ33と温度検出センサ34との信号とを演算して前記隔液ダイアフラム16,17の破損を検出する演算回路35」を具備するところ、引用発明における「前記隔液ダイアフラム16」の「破損」は、「封入液の流出、あるいは、測定流体の封入液への流入を生ずる」ものであるから、本件補正発明における「前記第1の隔離キャビティの封止の損失」に相当するといえる。
c そうすると、引用発明における「前記静電容量電極の信号と差圧センサ9と静圧検出センサ33と温度検出センサ34との信号とを演算して前記隔液ダイアフラム16,17の破損を検出する演算回路35」と、本件補正発明における「前記第1の位置信号と、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて、所定の前記第1の隔離ダイアフラムの位置、静圧、及び差圧の集合を関連付けるルックアップテーブル又はアルゴリズムを用いて求められた前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置と、に基づいて前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成された制御部」は、次の点において共通する。
「前記第1の位置信号、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて、前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成された制御部」である点。
d したがって、本件補正発明と引用発明の構成Fの観点についての一致点及び相違点は次のとおりである。
<構成Fの観点についての一致点>
「前記第1の位置信号、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成された制御部」を含む点。
<構成Fの観点についての相違点>
「前記第1の位置信号、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出する」手順が、
本件補正発明においては、「前記第1の位置信号と、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて、所定の前記第1の隔離ダイアフラムの位置、静圧、及び差圧の集合を関連付けるルックアップテーブル又はアルゴリズムを用いて求められた前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置と、に基づいて」いるのに対して、
引用発明においては、「前記静電容量電極の信号と差圧センサ9と静圧検出センサ33と温度検出センサ34との信号とを演算して」と特定するのみである点。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、以下の(イ)に示す相違点において相違する。
(ア) 一致点
「第1の隔離キャビティと、前記第1の隔離キャビティに含まれる充填流体と、第2の隔離キャビティと、前記第2の隔離キャビティに含まれる充填流体と、を含むハウジングと、
前記第1の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第1の隔離ダイアフラムと、
前記第2の隔離キャビティのプロセス界面を前記プロセス媒体から封止するように構成された第2の隔離ダイアフラムと、
前記第1の隔離キャビティ内の前記充填流体の圧力に基づく静圧信号を出力するように構成された静圧センサと、
前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の変位センサと、
前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティのセンサ界面に露出され、前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティ内の充填流体間の圧力差を示す差圧信号を出力するように構成された差圧センサと、
前記第1の位置信号、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成された制御部と、を含む
工業プロセス差圧検知装置」の発明である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の変位センサが、
本件補正発明においては、「渦電流変位センサ」であるのに対して、
引用発明においては、「前記隔液ダイアフラム16,17に対向して前記ハウジングに設けられ該隔液ダイアフラム16,17と静電容量電極を構成し該隔液ダイアフラム16,17の変位を検出する電極31」のうち、「隔液ダイアフラム16」の変位を検出する「電極」である点。
b 相違点2
「前記第1の位置信号、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出する」手順が、
本件補正発明においては、「前記第1の位置信号と、前記静圧信号及び前記差圧信号に基づいて、所定の前記第1の隔離ダイアフラムの位置、静圧、及び差圧の集合を関連付けるルックアップテーブル又はアルゴリズムを用いて求められた前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置と、に基づいて」いるのに対して、
引用発明においては、「前記静電容量電極の信号と差圧センサ9と静圧検出センサ33と温度検出センサ34との信号とを演算して」と特定するのみである点。
ウ 判断
(ア) 相違点1の検討
a 「可撓性部材の変形を渦電流センサによって検出すること」は、当業者にとって技術常識である(前記技術常識Aを参照)。
b また、「隔離ダイアフラムの位置を測定するために、静電容量方式の他に、電磁誘導を利用した位置測定技術も使用できること」も、当業者にとって技術常識である(前記技術常識Bを参照)。
c 前記技術常識A及びBを踏まえると、引用発明において、「隔液ダイアフラム16,17と静電容量電極を構成し該隔液ダイアフラム16,17の変位を検出する電極31」の代わりに「渦電流センサ」を変位センサとして採用することにより、前記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者にとって自明な設計変更にすぎない。
(イ) 相違点2の検討
a 前記引用文献3技術事項は、要するに、「予め与えられた一組の圧力ΔPと温度の値に対して、隔離ダイアフラム18Lと隔離ダイアフラム18Hに対する位置の期待値を生ずる」「ルックアップテーブル」を作成して、「測定された隔離ダイアフラムの位置の蓄積値と前記期待値とを減算するかまたは比較し」て、「充満流体の漏れのチェック」を行うことを開示するものである。
b ここで、引用発明は、「封入液の流出、あるいは、測定流体の封入液への流入を生ずる、隔液ダイアフラムの破損を容易に検知し得る差圧測定装置」の発明であり、「前記静電容量電極の信号と差圧センサ9と静圧検出センサ33と温度検出センサ34との信号とを演算して」、「隔液ダイアフラムの破損」の検知を行うものであるところ、引用文献3技術事項においても、差圧ΔPと隔離ダイアフラムの位置を検出しているから、引用文献3技術事項に係る「充満流体の漏れのチェック」のための「ルックアップテーブル」を採用する契機はあるというべきである。
c その際、引用発明においては、静電容量電極の信号(位置信号)と静圧検出センサ33の信号(静圧信号)と差圧センサ9の信号(差圧信号)を検出しているのであるから、かかる三つの検出信号に対応するように、「隔液ダイアフラム16」側について、位置、静圧及び差圧の集合を関連付けたルックアップテーブルを作成し、ある静圧信号と差圧信号の組が得られたときに、当該ルックアップテーブルを用いて、「ハウジング1」に対する「隔液ダイアフラム16」の予想位置を期待値として求め、実際に測定された位置信号と、前記予想位置とを比較することにより、「隔液ダイアフラムの破損」の検知を行うように構成することは、当業者ならばごく自然の発想であり、当業者にとっては引用発明に引用文献3技術事項を具体的に適用することに伴う自明な設計事項にすぎない。
d したがって、前記相違点2に係る本件補正発明の構成は、引用発明において前記引用文献3技術事項を採用することにより、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1、2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1、2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献3技術事項及び技術常識A、Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 請求人の主張について
ア 請求人の主張の概要
(ア) 審判請求書における主張
a 本件補正発明と引用文献記載の発明との相違点について
引用文献3では、位置信号と、容量C及び温度T(あるいは、C、Tから得られる差圧ΔP)から期待されるダイアフラム位置を求めることのみを開示しており、期待されるダイアフラム位置を求める際に「静圧」を考慮することについては開示も示唆もしていない。
すなわち、引用文献1に引用文献3を適用しても、引用文献1の「静圧検出センサ33」から得られる「静圧」がダイアフラム位置に与える影響は引用文献3における計算においては考慮することができないから、当該「静圧」に基づいてダイアフラムの予想位置を検出することはできない。
特に、引用文献3には、隔離ダイアフラムの位置に対する「静圧」の影響を考慮することができる本件補正発明の「所定の前記第1の隔離ダイアフラムの位置、静圧、及び差圧の集合を関連付けるルックアップテーブル又はアルゴリズム」については開示も示唆もしていないから、引用文献1において引用文献3を考慮しても本件補正発明に至ることはできない。
b 本件補正発明の効果について
引用文献3には、隔離ダイアフラムの予想位置に対する静圧の影響についての考慮が欠けているため、引用文献3を引用文献1において採用したとしても、静圧の変動によって予想位置が影響を受ける場合には、隔離ダイアフラムの予想位置が不正確になってしまう。
静圧が予想位置に与える影響を考慮した本件補正発明は、引用文献3と比較して、より正確に隔離ダイアフラムの予想位置を求めることができるという効果を奏する。
さらに、隔離ダイアフラムの予想位置を計算する際に静圧の影響を考慮することは、隔離ダイアフラムの故障を検出するのに役立ち、これを修正するのに有利になる。例えば、隔離ダイアフラムは研磨加工液、物理的損傷、機械的干渉などによって損傷することがあり、この損傷は、充填流体を逃がす穴の発生につながり、プロセス信号の漸進的な劣化、センサの損傷、そして最終的には機器の故障につながるが、隔離ダイアフラムの破損を検出する診断手段の一部として静圧を考慮することにより防ぐことができる。
本件補正発明の構成Fを開示も示唆もしていない引用文献1~3に記載の発明では、このような本件補正発明による顕著な効果を得ることはできない。
(イ) 上申書における主張
a 引用文献1について
引用文献1は、「差圧センサ9」の信号、「静圧検出センサ33」の信号及び「温度検出センサ34」の信号に基づいてダイアフラムの破損を検出する演算を行う「演算回路」が、どのような「演算」を行っているのかを明らかにしていない。
特に、当該「演算」が、そもそもダイアフラムの「予想位置」を求めることや、この「予想位置」と、位置信号から得られるダイアフラムの実際の位置とに基づいてダイアフラムの破損を検出することについては開示も示唆もしていない。
よって、引用文献1が、差圧信号及び静圧信号に基づいてダイアフラムの「予想位置」を求めることについて全く開示していない以上、ダイアフラムの「予想位置」が引用文献1の文脈において利用されてダイアフラムの破損が検出されていると考えることは妥当なものではない。
例えば、引用文献1の上記「演算」は、ダイアフラムの「予想位置」を用いない、全く異なる計算を行っている可能性もあり、そのような場合は、当業者は、本件補正発明を得るために、「所定の前記第1の隔離ダイアフラムの位置、静圧、及び差圧の集合を関連付けるルックアップテーブル又はアルゴリズム」を一から発明した上で、これを用いてダイアフラムの「予想位置」を求める演算を行うよう引用文献1の「演算回路」を最初から設計し直す必要が生じるところ、そのようなことは当業者にとって容易にし得たことではない。
引用文献1には、静圧と差圧の両方の、ダイアフラムの予想位置に対する影響については開示も示唆もしておらず、そのような影響を「所定の前記第1の隔離ダイアフラムの位置、静圧、及び差圧の集合を関連付けるルックアップテーブル又はアルゴリズム」を用いてダイアフラムの「予想位置」を求めることに用いることについても開示も示唆もしていない。
b 引用文献3について
引用文献3も、上述した影響を考慮することについては触れていない。
特に、引用文献3は、ダイアフラムの予想位置に対する「差圧」のみの影響を考慮していても、「静圧」の影響を考慮していない。すなわち、引用文献3の技術では、「異なる複数の差圧についての」、ダイアフラムの予想位置に対する「静圧」の影響について考慮することができない。
c 本件補正発明の効果について
本件補正発明の構成Fにより、「異なる複数の差圧についての」ダイアフラムの予想位置に対する「静圧」の影響について考慮することができ、より正確に第1の隔離ダイアフラムの予想位置を求めることができ、これより、第1の隔離キャビティの封止の損失をより正確に検出することができる。
上述した特徴も、上述した影響も考慮していない引用文献1、3の発明からは、このような顕著な効果を得ることはできない。
イ 請求人の主張に対する審判合議体の判断
(ア) 審判請求書における主張に対する審判合議体の判断
請求人は、引用文献3技術事項が、期待されるダイアフラム位置を求める際に「静圧」を考慮していないことを根拠として、引用発明に引用文献3技術事項を適用しても、「静圧」に基づいてダイアフラムの予想位置を検出することはできない旨主張している。
しかしながら、前記(3)ウ(イ)cにおいて説示したとおり、引用発明においては、静電容量電極の信号(位置信号)と静圧検出センサ33の信号(静圧信号)と差圧センサ9の信号(差圧信号)を検出しているのであるから、引用文献3技術事項を適用する際に、これらの三つの検出信号に対応するように、位置、静圧及び差圧の集合を関連付けたルックアップテーブルを作成することは、当業者ならば自然の発想である。
また、引用発明においては、静圧検出センサ33が静圧を検出しているのであるから、静圧の変動によって予想位置が影響を受けて隔離ダイアフラムの予想位置が不正確になってしまうという不都合を回避できることは、当業者が容易に予測し得たことである。
さらに、静圧を考慮すると、隔離ダイアフラムの故障を検出するのに役立ち、これを修正するのに有利になることも、当業者にとって自明な効果にすぎない。
したがって、請求人の上記主張は前記(3)ウの結論を左右するものではない。
(イ) 上申書における主張に対する審判合議体の判断
請求人は、引用発明において、「演算回路」がどのような「演算」を行っているのかが明らかではないから、ダイアフラムの「予想位置」がダイアフラムの破損の検出に利用されているとはいえない旨主張している。
しかしながら、引用発明の「演算回路35」は、位置信号である「静電容量電極の信号」を演算対象に含めているのであるから、隔液ダイアフラムの破損を検出するにあたり、隔液ダイアフラムの位置に関係する演算処理をしていることは明らかである。
そして、前記(3)ウ(イ)aにおいて説示したとおり、引用文献3技術事項においては、「隔離ダイアフラム18Lと隔離ダイアフラム18Hに対する位置の期待値を生ずる」「ルックアップテーブル」を作成しているのであるから、引用発明に引用文献3技術事項を適用することにより、ダイアフラムの「予想位置」がダイアフラムの破損の検出に利用されるように構成することは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
また、「静圧」に係る請求人の主張については、前記(ア)において検討したとおりである。
したがって、請求人の上記主張は前記(3)ウの結論を左右するものではない。
(5) 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~22に係る発明は、令和5年9月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性の欠如の理由の要旨は、次のとおりである。
理由2 (進歩性の欠如)
本願発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開平4-194718号公報
引用文献2:特開2017-83180号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:登録実用新案第3047104号公報
3 引用文献に記載された事項及び技術常識
引用文献1には、前記第2の3(2)ア(ウ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
技術常識A、B及び引用文献3技術事項は、それぞれ前記第2の3(2)のイ(イ)、ウ(ウ)及びウ(イ)において認定したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明について、前記第2の2(1)の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3において検討したとおり、引用発明、引用文献3技術事項及び技術常識A、Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-004465