特許異議申立
2018-700317
マグネシアカーボンれんが
- 審判番号
- 2018-700317
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-005237
- 登録番号
- 特許第6219729号(P6219729)
- 請求日
- 2018年04月17日
- 審決日
- 2019年07月12日
- 公報発行日
- 2019年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】黒崎播磨株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人英和特許事務所
- 【異議申立人】品川リフラクトリーズ 株式会社
- 【異議申立人代理人】福井 豊明
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 賢一
- 審判官 櫛引 明佳
- 審判官 宮澤 尚之
- 分類
- P1651.113-YAA(C04B) / P1651.121-YAA(C04B) / P1651.537-YAA(C04B) / P1651.851-YAA(C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6219729号発明「マグネシアカーボンれんが」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6219729号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第6219729号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6219729号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成26年1月15日(優先権主張 平成25年1月16日)の出願であって、平成29年10月6日にその特許権の設定登録がされ、平成29年10月25日に特許掲載公報が発行されたものである。その後、その請求項1~4に係る特許について、特許異議申立人品川リフラクトリーズ株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。その申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 4月17日付け 申立人による特許異議の申立て
6月12日付け 取消理由通知書
8月 2日付け 特許権者による訂正請求書及び意見書の 提出
9月27日付け 申立人による意見書の提出
10月19日付け 取消理由通知書(決定の予告)
12月21日付け 特許権者による訂正請求書及び意見書の 提出
平成31年 1月24日付け 申立人による意見書の提出
2月15日付け 取消理由通知書(決定の予告)
4月19日付け 特許権者による訂正請求書及び意見書の 提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成31年4月19日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線部が訂正箇所である。)。なお、本件訂正により平成30年12月21日付けの訂正の請求は取下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を3質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上97質量%以下含有し、さらに粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して3質量%以上15質量%以下含有し、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるマグネシアカーボンれんが。」と記載されているのを、「マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を3質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上97質量%以下含有し、さらに粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して3質量%以上15質量%以下含有し、前記マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であり、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるマグネシアカーボンれんが。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を3質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上97質量%以下含有し、さらに粒径75μm以下の含有量が85質量%以上の金属Siを添加黒鉛量に対して5質量%以下含有し、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるマグネシアカーボンれんが。」と記載されているのを、「さらに粒径75μm以下の含有量が85質量%以上の金属Siを添加黒鉛量に対して5質量%以下含有する請求項1に記載のマグネシアカーボンれんが。」に訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0011】に「(1)マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を3質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上97質量%以下含有し、さらに粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して3質量%以上15質量%以下含有し、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるマグネシアカーボンれんが。」と記載されているのを、「(1)マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を3質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上97質量%以下含有し、さらに粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して3質量%以上15質量%以下含有し、前記マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であり、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるマグネシアカーボンれんが。」に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の【0011】に「(2)マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を3質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上97質量%以下含有し、さらに粒径75μm以下の含有量が85質量%以上の金属Siを添加黒鉛量に対して5質量%以下含有し、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるマグネシアカーボンれんが。」と記載されているのを、「(2)さらに粒径75μm以下の含有量が85質量%以上の金属Siを添加黒鉛量に対して5質量%以下含有する(1)に記載のマグネシアカーボンれんが。」に訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0038】に「実施例2は黒鉛13質量%に対し粒径が75μm以下の金属Alを1.9質量%添加し、添加黒鉛量に対する金属Al比率を14.6%とした結果、見かけ気孔率は低減、耐酸化性が向上する結果が得られた。」と記載されているのを、「参考例2は黒鉛13質量%に対し粒径が75μm以下の金属Alを1.9質量%添加し、添加黒鉛量に対する金属Al比率を14.6%とした結果、見かけ気孔率は低減、耐酸化性が向上する結果が得られた。」に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0039】に「参考例3,実施例4は参考例1,実施例2をもとに、粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比を4.2以上の、5.38に調整を行い評価を行った結果である。見かけ気孔率、耐食性は実施例1,2のそれよりも向上する結果が得られた。」と記載されているのを、「参考例3,実施例4は参考例1,参考例2をもとに、粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比を4.2以上の、5.38に調整を行い評価を行った結果である。見かけ気孔率、耐食性は参考例1,2のそれよりも向上する結果が得られた。」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0044】の【表1】に「実施例2」と記載されているのを、「参考例2」に訂正する。
2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に、発明を特定するための事項として、「マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であり」なる事項を直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許の願書に添付された明細書の段落【0025】には、「マグネシア原料は粒度構成としては、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のものを35質量%以上配合させ、」との記載があり、また、願書に添付された明細書の段落【0044】の表1及び段落【0045】の表2に開示されている実施例は、全て、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の配合量が36質量%以上であるから、本件訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、本件訂正は、本件訂正前の請求項1に、発明を特定するための事項を直列的に付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2における「さらに粒径75μm以下の含有量が85質量%以上の金属Siを添加黒鉛量に対して5質量%以下含有する請求項1に記載のマグネシアカーボンれんが。」との訂正は、実質的には、本件訂正前の請求項2に、発明を特定するための事項として、請求項1に記載された「さらに粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して3質量%以上15質量%以下含有し」なる事項を直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、願書に添付された明細書の段落【0014】には、「一方、金属Siの添加も見かけ気孔率を低減するために有効であることが判明した。金属Siはその昇温過程でMgO-Cれんが内でSiC、続いてSiO2を生成する。このSiO2はMgOと反応し比較的融点の低いEnstatite,Forsteriteを生成するが、この反応過程の液相がMgO-Cれんがの微細気孔を埋め低気孔率化が図られる。さらに金属Alとの共存下では、さらに低融点であるCordieriteも生成し、より効率よく液相が気孔を埋める効果が発現される。」との記載があり、金属Siを金属Alと併用添加することが好ましいことが明示されているから、本件訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
また、本件訂正は、実質的には、訂正前の請求項2に、発明を特定するための事項を直列的に付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
(3)訂正事項3~7について
訂正事項3~7は、訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)一群の請求項について
本件訂正前の請求項3及び4は訂正前の請求項1を引用するものであって、請求項1の記載を訂正する訂正事項1によって請求項3及び4も連動して訂正されるものである。
また、本件訂正前の請求項3及び4は訂正前の請求項2を引用するものでもあって、請求項2の記載を訂正する訂正事項2によって請求項3及び4も連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~4は一群の請求項を構成するから、請求項1~4を対象とする訂正事項1及び2に係る訂正は、一群の請求項1~4について請求されたものである。また、訂正事項3~7に係る明細書の訂正は、この一群の請求項全てについて請求されたものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項~第6項までの規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の本件発明
上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり訂正することを認めたので、訂正後の請求項1~4に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明4」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。)。
【請求項1】
マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を3質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上97質量%以下含有し、さらに粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して3質量%以上15質量%以下含有し、前記マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であり、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるマグネシアカーボンれんが。
【請求項2】
さらに粒径75μm以下の含有量が85質量%以上の金属Siを添加黒鉛量に対して5質量%以下含有する請求項1に記載のマグネシアカーボンれんが。
【請求項3】
ピッチ系原料の含有量がマグネシア原料と黒鉛との合量に対して外掛けで1質量%未満である請求項1又は2に記載のマグネシアカーボンれんが。
【請求項4】
結合材として、残炭率が48%以上のフェノール樹脂を使用した請求項1乃至3のいずれかに記載のマグネシアカーボンれんが。
2 特許異議申立の概要
申立人は、甲第1~5号証を提示し、次の申立理由により、本件訂正前の請求項1~4に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。
申立理由
(1)本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
(2)本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲第3号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
(3)本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第1~第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
(4)本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲第1~第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
証拠方法
甲第1号証:特許第2676227号公報
甲第2号証:特開2010-105891号公報
甲第3号証:国際公開第2008/056655号
甲第4号証:特開平8-259312号公報
甲第5号証:特開平8-081256号公報
申立人は平成31年1月24日付け意見書とともに以下の参考文献を提出した。
参考文献1:特開2008-151425号公報
3 取消理由について
当審において通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
取消理由1:平成30年8月2日付けの訂正後の請求項1~4に係る発明の課題は、「MgO-Cれんがの一層の緻密性向上(気孔率低減)を図り、今までになかった耐用性の高いMgO-Cれんがを提供すること」であって、その課題解決には、マグネシア原料中に、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のものを35質量%以上配合することが必須であると認められるところ、訂正前の請求項1~4に係る発明においてはマグネシア原料の粒度について何ら限定がないから、訂正前の請求項1~4に係る発明には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないから、訂正前の請求項1~4に係る発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(平成30年10月19日付け取消理由通知書)
取消理由2:本件訂正前の請求項2及び4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり、また、本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。(申立理由(2)、(4)に対応,平成30年6月12日付け取消理由通知書)
取消理由3:本件訂正前の請求項1、3及び4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり、また、本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。(申立理由(1)、(3)、(4)に対応,平成30年6月12日付け取消理由通知書)
取消理由4:平成31年1月24日付けの訂正後の請求項1、2及び4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、参考文献1に記載された事項、及び、甲第4、5号証に記載される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。(平成31年2月15日付け取消理由通知書)
取消理由5:平成30年8月2日付けの訂正後の請求項1、2及び4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。(平成30年10月19日付け取消理由通知書)
4 当審の判断
4-1 取消理由1について
本件発明1は、訂正事項1により「マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上」であることが特定されたので、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないとはいえない。また、本件発明1を引用する本件発明2~4についても同様である。
したがって、本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものといえるから、取消理由1によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
申立人は、平成31年1月24日付け意見書第3頁の「(3)-1 サポート要件」において、訂正に付随して生じた発明特定事項「マグネシア原料中に、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のものを35質量%以上配合し」について、当該発明特定事項には配合量の上限が定めされておらず、また、実施例では当該配合比率が最大で47質量%までのものしか示されていないこと、そして、れんがの緻密性が粒度構成に依存して変化することは当業者の広く知るところであるかから、本件の請求項1、2、4に特定された前記発明特定事項の全ての範囲においてまで、同等の緻密性が得られるとはいえない旨、主張する。
申立人の主張について検討するに、前記の取消理由1についての検討でも指摘したように、本件発明の課題は、「MgO-Cれんがの一層の緻密性向上(気孔率低減)を図り、今までになかった耐用性の高いMgO-Cれんがを提供すること」(本件特許明細書の【0010】参照。)と認められるところ、本件発明1では、訂正事項1により「マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のものを36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上」であることが特定された。
そして、本件特許明細書の【0025】には、マグネシア原料の粒度分布について「マグネシア原料は粒度構成としては、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のものを35質量%以上配合させ、かつ0.075mm未満のマグネシア原料に対する0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比(0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量/0.075mm未満のマグネシア原料の質量)が4.2以上となるよう配合することが好ましい。こうすることで比較的大きな開放気孔を生成する1mm超のマグネシア原料は57質量%未満に抑制されることになる。粒径0.075mm以上1mm以下のものを35質量%以上配合する理由は、これ未満の配合量では上述の機構による気孔率抑制効果が不十分なためである。また粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比を4.2以上とすることにより、粒径0.075mm未満の粒子が過多に配合されることを防ぎ、マトリックス中のマグネシア粒子間の距離が適度に保たれ充填性が確保され緻密性を向上させることができるとともに、耐スポール性も確保できる。」と記載されていることからして、当業者であれば、緻密性の向上という本件発明の課題解決のためには、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の配合量を35%以上とすることで1mm超のマグネシア原料の配合量を一定以下としつつ、粒径0.075mm未満のマグネシア原料の配合量も一定程度に抑制することが重要であることを理解できるものと認められる。
したがって、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の配合量に上限がないことにより、本件発明1、及び本件発明1を引用する本件発明2~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
4-2 取消理由2について
本件発明2は、訂正事項2により請求項1に従属する形式となり、新たな発明特定事項が付加されたため、本取消理由は解消した。
したがって、取消理由2によっては、請求項2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
4-3 取消理由3及び4について
ア 甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の記載がある。(なお、下線は強調のために当審で付与したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)
(甲1a)「産業上の利用分野
この発明は、溶融金属容器の内張りや、各種のノズル,ストッパーなどを対象とした炭素含有耐火物に関するものである。」(第1欄第8~11行)
(甲1b)「炭素含有耐火物へ金属アルミニウム粉末を添加するのは、アルミニウム金属粉末の酸素親和力を利用して酸化生成物あるいは骨材との反応生成物を気孔中に生成させることによって緻密化を図り、酸化を抑制するためである。酸化生成物あるいは骨材との反応生成物が生成する際の体積膨張を有効に作用させるのである。」(第2欄第9~14行)
(甲1c)「この発明による炭素含有耐火物においては、平均粒径10μm以下の金属アルミニウム微粉末を耐火骨材と黒鉛の配合物に含有させる。
・・・(中略)・・・
また、金属アルミニウム微粉末の含有量は、耐火骨材と黒鉛との合量100重量部に対して0.1~3.0重量部とする。金属アルミニウム微粉末の添加量が3重量部を越えると、膨脹量が大きくなりすぎて、耐火物組織の緩みが生じやすくなる。また、金属アルミニウム微粉末の添加量が0.1重量部よりも少ないと、十分な耐酸化性と耐食性が得られなくなる。
また、好ましい金属アルミニウム微粉末の粒度は平均粒径が5~10μmである。金属アルミニウム微粉末を少量添加することによって高い耐酸化性を得るためには平均粒径を10μm以下にする必要がある。
耐火骨材はMgO,Al2O3,ZrO2等を主成分とする。」(第3欄第13~33行)
(甲1d)「実施例(1)~(5)
焼成マグネシアクリンカーと、鱗状黒鉛と、金属アルミニウム粉末をそれぞれ表1に示した割合で調合して、混練および成形を従来と同様の方法で行った。しかるのち、所定の寸法の小片(試料)にプレスで成形して、それらの成形体を180℃で乾燥した。同様に、参考例(1)~(3)と従来品(1)~(4)を製造した。」(第3欄第43行~第4欄第6行)
(甲1e)「
」(第5~6欄)
そして、上記(甲1e)において実施例1及び2として記載された炭素含有耐火物は、鱗状黒鉛15重量部と、平均粒径5μmの金属アルミニウム粉末を0.5重量部又は1重量部含むものであるから、これらの耐火物は、平均粒径5μmの金属アルミニウム粉末を、添加鱗状黒鉛量に対して3.3質量%又は6.7質量%含有するものということができる。
したがって、上記(甲1a)~(甲1e)の記載から、実施例の炭素含有耐火物として、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「焼成マグネシアクリンカーと鱗状黒鉛を含有する炭素含有耐火物において、焼成マグネシアクリンカーと鱗状黒鉛の合量に占める割合で、鱗状黒鉛を15質量%、焼成マグネシアクリンカーを85質量%含有し、さらに平均粒径5μmの金属アルミニウム粉末を添加鱗状黒鉛量に対し3.3質量%又は6.7質量%含有する、炭素含有耐火物。」
イ 参考文献1の記載事項
参考文献1には、以下の記載がある。
(参1a)「【請求項1】
溶融金属容器にライニングされたマグネシアカーボンれんがの補修方法であって、固定炭素量が13質量%以下(0を含まず)のマグネシアカーボンれんがに対して溶射を行うマグネシアカーボンれんがの補修方法。」
(参1b)「【請求項3】
マグネシアカーボンれんがが、粒径1mm超~5mmのマグネシアクリンカーが10~50質量%、粒径75μm超~1000μmのマグネシアクリンカーが10~70質量%、粒径75μm以下のマグネシアクリンカーが10質量%以下(0を含む)、粒径45~1000μmの鱗状黒鉛が1~10質量%、粒径45μm未満の鱗状黒鉛が3質量%以下(0を含む)、およびAlまたはAl合金がAl含有量として3質量%以下である耐火原料配合物に有機バインダーを添加して混練し、成形後熱処理して得られたものである請求項1に記載のマグネシアカーボンれんがの補修方法。」
(参1c)「【0016】
本発明が解決しようとする課題は、低カーボンタイプのマグネシアカーボンれんがをライニングした溶融金属容器の寿命を向上させるために、低カーボンタイプのマグネシアカーボンれんがと溶射施工体との接着性を向上させるができる補修方法を提供することにある。」
(参1d)「【0025】
また、マグネシアカーボンれんがには黒鉛等の炭素質材料の酸化を防止するためにAl、Mg、Ca、Siまたはそれらを組み合わせた合金、SiC、B4Cなどの炭化物、さらには硼化金属化合物の適用が可能である。」
(参1e)「【0027】
また、粒径75μm超~1000μmのマグネシアクリンカーは、溶射施工体との接着力の面から、耐火原料配合物に占める割合で10~70質量%含有させることが好ましく、より好ましくは20~60質量%含有させる。10質量%未満ではれんが組織が粗になり強度が不足することにより溶射施工体の接着力が低下する。70質量%を超えるとれんが中のマグネシア同士あるいは溶射施工体との焼結が過剰となることから、原れんが部との組織差が大きくなり、温度サイクルの過程において境界部に亀裂が発生し、溶射施工体が安定して接着しづらくなる。」
(参1f)「【0039】
実施例11~14は耐火原料配合物中における粒径75μm以下のマグネシアクリンカーの占める割合が溶射施工体との接着性に与える影響を調査したものである。粒径75μm以下のマグネシアクリンカーの占める割合が少ないほど溶射施工体との接着強度が高い傾向になっており、実施例11および実施例12は接着力、耐食性ともに実施例13および実施例14よりも優れる結果になっている。
【0040】
実施例15~18は耐火原料配合物中における粒径75μm超~1000μmのマグネシアクリンカーの占める割合が溶射施工体との接着性に与える影響を調査したものである。粒径75μm超~1000μmのマグネシアクリンカーの占める割合が5質量%と少ない実施例15および75質量%と多い実施例18は溶射施工体との接着強度がやや低くなっている。
【0041】
・・・
【表2】
」
ウ 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の記載がある。
(甲4a)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、MgO-C質煉瓦の酸化を抑制する手段として、これまで酸化防止剤の添加に関する検討結果が種々報告されている。現在知られている酸化防止剤としては、Al,Si,Al-Mg合金,SiC,B4C,Mg-B合金,CaB6,AlB12,Mg2Si等がある。」
(甲4b)「【0022】図1及び図2から、ピッチ粉末の併用添加(複合添加)により煉瓦熱間強度の増大及び熱間での耐摩耗性の向上が認められるが、これは、添加したピッチ粉末が溶融し、炭化する過程で煉瓦組織中の微細な間隙に侵入してカ-ボンボンドを形成するためと考えられる。」
(甲4c)「【0024】このことから、微細な間隙へのピッチの侵入、充填は、ピッチに特有な挙動であることが理解でき、これは、微細な間隙が耐酸化性に優れるピッチで充填されることにより[図3(B)参照]、黒鉛粒子間のカ-ボンボンド部分の耐酸化性も向上すると推定される。これらの結果から、出鋼口スリ-ブ用MgO-C煉瓦にピッチ粉末を複合添加し、カ-ボンボンドの強化を図ることができることが理解できた。」
(甲4d)「【0033】また、本発明に係る低カ-ボン質MgO-C耐火物において、上記マグネシア原料及びカ-ボン原料の合計量に対し外割りでピッチ粉:0.3~5wt%を添加することを特徴とする。ピッチ粉が0.3wt%未満では、本発明で意図するカ-ボンボンドの強化をはかることができず、逆に5wt%を超えると耐火物全体の揮発分量が多くなり、製造時に亀裂が発生するので好ましくない。また、使用時における揮発分による亀裂発生を考慮すると、3wt%以下がより好ましい。」
エ 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の記載がある。
(甲5a)「【0014】
【実施例】表1に示すような組成の炭素含有れんがを混練、プレス成形した後300℃で10時間熱処理した。比較例として同様に表2に示した配合のものも用意した。そのれんがについての各種試験結果も同じく表1および表2中に示す。なお、使用したフェノール樹脂は残炭率53%のものである。」
オ 対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「焼成マグネシアクリンカー」、「鱗状黒鉛」、「平均粒径5μmの金属アルミニウム粉末」は、それぞれ、本件発明1の「マグネシア原料」、「黒鉛」、「粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Al」に相当する。そして、甲1発明の「炭素含有耐火物」は、マグネシアを主な構成成分とするものであるから、本件発明1の「マグネシアカーボンれんが」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は「マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を3質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上97質量%以下含有し、さらに粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Alを添加黒鉛量に対して3質量%以上15質量%以下含有する、マグネシアカーボンれんが。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)本件発明1は、「マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上で」あって、「1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下である」のに対し、甲1発明は、マグネシア原料(焼成マグネシアクリンカー)の粒度分布及び1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が明らかでない点。
相違点について検討する。
参考文献1(上記(参1b)、(参1e)及び(参1f)を参照)には、粒径75μm超~1000μmのマグネシアクリンカーが耐火原料配合物に占める割合で10~70質量%含有させることが好ましく、より好ましくは20~60質量%含有させることが記載され、前記(参1f)の【表2】には、耐火原料配合物中の粒径75μm超~1000μmのマグネシアクリンカーの割合を35%、65%(実施例17)、75%(実施例18)とした実施例や、粒径75μm以下のマグネシア原料に対する粒径75μm超~1000μmのマグネシア原料の質量比を4.2以上とした実施例も(実施例6~11、17、18)記載されているが、参考文献1記載の発明において、マグネシアクリンカーの粒度構成を上記のものとする主たる目的は、マグネシアカーボンれんがと溶射施工体との接着性の向上を図ることである。また、(参1f)から、粒径75μm以下のマグネシアクリンカーの占める割合が少ないほど、すなわち、粒径75μm以下のマグネシア原料に対する粒径75μm超~1000μmのマグネシア原料の質量比が高いことが好ましいことがうかがえるものの、その目的は、同様にマグネシアカーボンれんがと溶射施工体との接着性の向上を図ることであって、当業者といえども、参考文献1の記載に基づいて甲1発明のマグネシアクリンカーの粒度構成を調整したとしても、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率を7.8%以下まで低減し得ることは予測し得ない。
加えて、(参1a)、(参1b)、(参1c)から、参考文献1に記載されたマグネシアクリンカーの粒度構成は、固定炭素量が13質量%以下であって、鱗状黒鉛の含有量が1~10質量%であるような低カーボンタイプのマグネシアカーボンれんがに適したものであるということができ、一方、甲1発明は、炭素成分として鱗状黒鉛を15質量%含有するものであるから、参考文献1でいう低カーボンタイプのマグネシアカーボンれんがにはあたらないともいえる。
そうすると、甲1発明において、参考文献1の記載に基づき、マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上とし、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下のれんがとすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
なお、甲第4号証及び甲第5号証には、マグネシア原料の粒度構成を前記相違点に係るものとすることについて何ら記載ないし示唆がない。
したがって、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明、並びに参考文献1に記載された事項、及び第4、5号証に記載される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)の本件発明1の検討を踏まえると、甲1発明ではなく、また、甲1発明、並びに参考文献1に記載された事項、及び第4、5号証に記載される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、本件発明1~4は、甲1発明ではなく、また、甲1発明、並びに参考文献1に記載された事項、及び第4、5号証に記載される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、取消理由3及び4によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
4-4 取消理由5について
ア 甲第2号証の記載
甲第2号証には、以下の記載がある。
(甲2a)「【0001】
本発明は、高炉、混銑車、転炉、取鍋、溶融還元炉等の溶融金属容器の内張りや、高炉出銑口充填材、連続鋳造設備に具備されるノズル、浸漬ノズル、ロングノズル、スライディングノズル、ストッパー等、その他非鉄金属用溶解炉などに好適に使用される耐火物組成物に関するものである。」
(甲2b) 「【0013】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、より固定炭素量を増大させることができ、耐酸化性や耐スポーリング性、耐食性が良好な耐火物を得ることができる耐火物組成物を提供することを目的とするものである。」
(甲2c)「【0023】
本発明によれば、バインダー中の2-フルアルデヒドはフェノール樹脂とタールやピッチをそれぞれ溶解させる溶剤としても作用し、特にフェノール樹脂が20~60質量%、タールやピッチが15~40質量%、2-フルアルデヒドが20~50質量%の含有比率であることによって、これらを相溶性高く溶解させることができるものであり、成形性を高めることができるものである。またバインダー100質量部に対してホルムアルデヒドを生成する化合物の配合量が9.5質量部以上であることによって、この硬化剤として使用するホルムアルデヒドを生成する化合物によって、フェノール樹脂を硬化させる他に、2-フルアルデヒドをフェノール樹脂やタールあるいはピッチと十分に反応させて高分子化することができ、固定炭素量が高く耐食性や耐スポーリング性の良好な耐火物を得ることができるものである。」
(甲2d)「【0025】
本発明において耐火骨材としては、通常耐火物の原料として使用されている各種のものを用いることができるものであり、粗粒から微粉まで任意の耐火原料を粒度配合して使用することができる。例えば、電融マグネシア等の電融品、焼結マグネシア等の焼結品、天然マグネシア、ボーキサイト、アンダリュサイト、シリマナイト等の天然原料の他、仮焼アルミナ、シリカフラワー等の超微粉原料などを使用することができる。耐火骨材としてはさらに、Al,Mg,Ca,Siやこれらの合金の一種あるいは二種以上を配合して用いることもできる。さらに炭素質材料の酸化防止剤などとして各種の炭化物、硼化物、窒化物、例えばSiC,B4C,BN,Si3N4等を用いることもできる。
【0026】
これらのなかでも本発明では、耐火物の少なくとも一部としてマグネシアを用いるものである。マグネシアは耐火物用に用いられる骨材のなかでは融点が高く、耐食性が優れているためである。またこのマグネシアとしては、MgO含有率85質量%以上のものを用いるのが好ましい。MgO含有率85質量%未満のマグネシアは、耐火度が低下するので好ましくない。
【0027】
また耐食性を向上させるために、溶融スラグとの濡れ性が悪い炭素質材料の粉末を耐火骨材として配合するものである。この炭素質材料としては天然黒鉛、人造黒鉛、ピッチ、コークス、カーボンブラック、キッシュ黒鉛、メソフェースカーボン、木炭など任意の炭素質のものを用いることができるが、できるだけ高純度のものを用いるのが好ましい。」
(甲2e)「【0029】
これらの耐火骨材にバインダーを配合して混練することによって、耐火物組成物を得ることができるものであり、本発明ではバインダーとして、フェノール樹脂、タールやピッチ、2-フルアルデヒドの3成分を用い、さらに硬化剤、及び必要に応じて反応触媒を配合するものである。」
(甲2f)「【0054】
そして、耐火骨材として電融マグネシア(MgO含有率98.3質量%)80質量部、純度98%の天然黒鉛18質量部、Alの粉末2質量部を用い、これをミキサーに投入すると共に、さらに上記のノボラック型フェノール樹脂A、上記のピッチA、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを表1に示す配合で投入し、10分間混練した後、70~80℃で、これに2-フルアルデヒド(沸点161.7℃)を表1の配合で添加し、これらを20分間混練することによって、湿潤状態の混練物(坏土)を得た。この坏土に用いた配合でフェノール樹脂、ピッチ、ヘキサメチレンテトラミン、2-フルアルデヒドを混合したものについて、JIS K 6910(1999)に準拠して固定炭素量を測定し、表1に示した。」
(甲2g)「【0066】
また、上記の実施例1~9及び比較例1~7において、混練翌日に作製したれんがから試料を切り出し、耐スポーリングテストと耐酸化テストを行なった。・・・(中略)・・・
【0067】
さらに混練翌日に作製したれんがから50×50×50mmのテストピースを切り出し、コークスブリーズ中で1400℃、3時間還元焼成した後の気孔率を測定した。
【0068】
上記の実施例1~9及び比較例1~7の配合及び測定・テスト結果を表1及び表2に示す。
【0069】
【表1】
」
上記(甲2e)~(甲2g)によれば、甲第2号証に実施例9として開示されているれんがは、耐火骨材として電融マグネシア(MgO含有率98.3質量%)80質量部、純度98%の天然黒鉛18質量部及びAlの粉末2質量部を含有し、さらにバインダーとしてフェノール樹脂、ピッチ、2-フルアルデヒド、硬化剤及び反応触媒を含むものであり、1400℃、3時間還元焼成した後の気孔率が6.7%であり、また、フェノール樹脂、ピッチ、2-フルアルデヒド、硬化剤及び反応触媒を混合して測定した固定炭素量、すなわち、バインダーの固定炭素量が68.3%である。
上記(甲2a)~(甲2g)から、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
「耐火骨材として電融マグネシア(MgO含有率98.3質量%)80質量部、純度98%の天然黒鉛18質量部及びAlの粉末2質量部を含有し、さらにバインダーとしてフェノール樹脂、ピッチ、2-フルアルデヒド、硬化剤及び反応触媒を含み、1400℃、3時間還元焼成した後の気孔率が6.7%であり、バインダーの固定炭素量が68.3%である、れんが。」
イ 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、前記4-3のアで摘示したとおりの記載がある。
ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「Alの粉末」及び「気孔率」は、それぞれ、本件発明1の「金属Al」及び「見かけ気孔率」に相当する。また、甲2発明においては、MgO含有率98.3質量%の電融マグネシアを用いているところ、本件特許明細書の段落【0026】には、「より高い耐食性を得るためにはMgO純度が高いマグネシア骨材を使用したほうがよく、MgO純度は96%以上、さらに望ましくは98%以上である。」と記載されているから、甲2発明の「電融マグネシア(MgO含有率98.3質量%)」は、本件発明1の「マグネシア原料」に相当する。また、甲2発明においては、純度98%の天然黒鉛を用いているところ、本件特許明細書の段落【0027】には、「より高い耐食性を得るためにはC純度が高い黒鉛を使用したほうがよく、C純度は85%以上、さらに望ましくは98%以上である。」と記載されているから、甲2発明の「純度98%の天然黒鉛」は、本件発明1の「黒鉛」に相当する。そして、甲2発明の「れんが」は、マグネシア原料と黒鉛とを含有するものであるから、本件発明1の「マグネシアカーボンれんが」に相当する。
また、甲2発明におけるマグネシア原料の含有量は、マグネシア原料と黒鉛の合量に占める割合で約82質量%(80質量部/(80+18)質量部)であり、黒鉛の含有量は、約18質量%(18質量部/(80+18)質量部)であるから、甲2発明におけるマグネシア原料及び黒鉛の含有量は、本件発明1に規定された数値範囲内である。加えて、甲2発明における金属Alの含有量は、添加黒鉛量に対して約11質量%(2質量部/18質量部)であり、本件発明1に規定された数値範囲内である。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、
「マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を3質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上97質量%以下含有し、さらに金属Alを添加黒鉛量に対して3質量%以上15質量%以下含有し、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるマグネシアカーボンれんが。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1は、「マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上で」あるのに対し、甲2発明は、マグネシア原料(焼成マグネシアクリンカー)の粒度分布が明らかでない点。
(相違点2)
本件発明1においては、「粒径45μm以下の含有量が85質量%以上の金属Al」を用いるのに対し、甲2発明においてはAlの粉末を用いているものの、その粒度分布が不明である点。
まず、相違点1について検討する。
甲第1号証には、マグネシア原料の粒度構成を前記相違点に係るものとすることについて何ら記載ないし示唆がないから、甲2発明において、甲第1号証の記載に基づき、マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
なお、参考文献1についても検討すると、参考文献1には、先に検討したとおり(前記(参1b)、(参1e)及び(参1f)を参照)、粒径75μm超~1000μmのマグネシアクリンカーが耐火原料配合物に占める割合で10~70質量%含有させることが好ましく、より好ましくは20~60質量%含有させることが記載され、前記(参1f)の【表2】には、耐火原料配合物中の粒径75μm超~1000μmのマグネシアクリンカーの割合を35%、65%(実施例17)、75%(実施例18)とした実施例や、粒径75μm以下のマグネシア原料に対する粒径75μm超~1000μmのマグネシア原料の質量比が4.2以上とした実施例も(実施例6~11、実施例17、18)記載されている。
しかし、(参1a)、(参1b)、(参1c)から、参考文献1に記載されたマグネシアクリンカーの粒度構成は、固定炭素量が13質量%以下であって、鱗状黒鉛の含有量が1~10質量%であるような低カーボンタイプのマグネシアカーボンれんがに適したものであるということができ、一方、甲2発明は、(参2b)の記載から、固定炭素量を増大させることで、耐酸化性や耐スポーリング性、耐食性が良好な耐火物を得ることを課題とするものであって、さらに、炭素成分として天然黒鉛だけでも18質量%含有するものであることから、甲2発明は参考文献1における低カーボンタイプのマグネシアカーボンれんがにあたらないことは明らかである。
そうすると、甲2発明において、参考文献1の記載に基づき、マグネシア原料の粒度構成として、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、参考文献1の記載を考慮しても、本件発明1は、甲2発明、及び甲第1号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、前記(ア)の本件発明1の検討を踏まえると、参考文献1の記載を考慮しても、甲2発明、及び甲第1号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)小括
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、本件発明1~4は、甲2発明、及び甲第1号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、取消理由5によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
4-5 取消理由において採用しなかった申立理由について
申立人は、異議申立書において、本件訂正前の請求項1及び請求項2に係る発明と、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明とをそれぞれ対比し、両請求項に係る発明とも、マグネシアカーボンれんがの構成成分が一致するとしたうえで、相違点として「1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下」であることが甲第1及び第3号証に記載されていないことを挙げ、当該相違点にかかる見かけ気孔率を達成したマグネシアカーボンれんがは甲第2号証に記載されていることから、甲第1及び第3号証に記載された発明において、甲第2号証の記載に基づいて1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率を7.8%以下に調整することは、当業者が容易に想到し得る旨主張している。(申立理由(1)及び(2)に相当。)
しかし、前記4-3で検討したように、本件訂正によって本件発明1及び2に、マグネシア原料の粒度構成として「マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料が36質量%以上配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上」という発明特定事項が付加されたことで、甲1発明とは、前記の見かけ気孔率の点に加え、マグネシア原料の粒度構成が相違するものとなった。
また、甲第2及び第3号証について検討しても、マグネシア原料の粒度構成を前記発明特定事項のものとすることについては記載も示唆もされていない。
そうすると、本件発明1及び2は、甲第1~第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、申立人の申立理由(1)及び(2)は理由がない。
第4 むすび
したがって、前記取消理由並びに特許異議の申立の理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700317