特許異議申立
2017-700273
低カーボンMgO-Cれんが
- 審判番号
- 2017-700273
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-247508
- 登録番号
- 特許第6026495号(P6026495)
- 請求日
- 2017年03月15日
- 審決日
- 2017年11月20日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ヨータイ
- 【異議申立人】品川リフラクトリーズ 株式会社
- 【異議申立人代理人】福井 豊明
- 【異議申立人】黒崎播磨 株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人英和特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 賢一
- 審判官 蛭田 敦
- 審判官 宮澤 尚之
- 分類
- P1651.537-YAA(C04B) / P1651.121-YAA(C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6026495号発明「低カーボンMgO-Cれんが」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6026495号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項[1、2]について訂正することを認める。
特許第6026495号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6026495号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成26年12月7日に特許出願され、平成28年10月21日にその特許権の設定登録がされ、登録後の経緯は以下のとおりである。
平成29年 3月15日付け:特許異議申立人 品川リフラクトリーズ
株式会社による特許異議の申立て
同年 3月28日付け:特許異議申立人 黒崎播磨株式会社による 特許異議の申立て
同年 7月 6日付け:取消理由の通知
同年 9月 6日付け:訂正請求書及び意見書の提出
同年10月10日付け:特許異議申立人 品川リフラクトリーズ
株式会社による意見書の提出
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「合量0~7重量%のピッチ粉及び/または鱗状黒鉛」と記載されているのを、「合量7重量%以下のピッチ粉及び/または鱗状黒鉛」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
明細書の段落【0013】に「合量0~7重量%のピッチ粉及び/または鱗状黒鉛」と記載されているのを、「合量で7重量%以下のピッチ粉及び/または鱗状黒鉛」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、カーボン(C)を含有する「低カーボンMgO-Cレンガ」において、同レンガの主たるカーボン成分であると認められるピッチ粉や鱗状黒鉛の含有量を0重量%、すなわち、カーボンを含有させないことを許容するかのように記載されていた請求項1の記載を明瞭化するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的としている。
また、ピッチ粉や鱗状黒鉛の含有量を7重量%以下とする点は、【0029】に「ピッチ及び/または鱗状黒鉛の添加量は、ピッチと黒鉛の合量で7重量%以下が好ましい。」と記載されており、また、【表1】の全ての実施例がピッチ粉や鱗状黒鉛を含有しているなど、無添加とする点に触れられていないことからみても、明細書に記載された事項であると認められる。
よって、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
次に、訂正事項2は、上記の訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるため、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、訂正前の請求項2は、訂正事項1に係る請求項1の記載を引用する関係にあるから、請求項1、2は、一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正の請求は、この一群の請求項についてされたものである。
(小括)
上述のとおり、上記訂正請求による訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1、2]について訂正を認める。
第3 本件特許発明
特許第6026495号の請求項1、2に係る発明(以下「本件特許発明1、2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された以下の事項により特定されるとおりのものと認める。
【請求項1】
マグネシア原料100重量%に対して、外掛けで、合量7重量%以下のピッチ粉及び/または鱗状黒鉛と、外掛けで0.1~10重量%の炭化珪素を添加してなる配合物であって、前記マグネシア原料は、マグネシア原料100重量%に対して粒径1.0mm以上のマグネシアを20~65重量%含有し、なおかつ粒径5.0mm以上の粗大マグネシアの含有量がマグネシア原料100重量%に対して5重量%以上である配合物を用いて得られる低カーボンMgO-Cれんがにおいて、前記炭化珪素の最大粒径が200メッシュ以下であり、かつ粒径が20μm以下の炭化珪素の含量が前記マグネシア原料100重量%に対して7重量%以下であることを特徴とする低カーボンMgO-Cれんが。
【請求項2】
請求項1に記載の低カーボンMgO-Cれんがにおいて、更に前記マグネシア原料100重量%に対して、外掛けで0~5重量%の金属Al粉及び/または0~5重量%の金属Siを添加してなる配合物を用いて得られた請求項1に記載の低カーボンMgO-Cれんが。
第4 取消理由
1.取消理由の概要
当審において、訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)「低カーボンMgO-Cれんが」において、ピッチ粉及び/又は鱗状黒鉛の合量が0重量%であることを許容する請求項1及びそれを引用する請求項2に係る本件特許発明1、2は不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たさない。
(2)ピッチ粉及び/又は鱗状黒鉛の合量が0重量%である「低カーボンMgO-Cれんが」が、本件特許発明1、2の課題を解決し得ることが発明の詳細な説明に記載されていないため、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。
2.当審の判断
訂正前の請求項1では、「低カーボンMgO-Cれんが」のピッチ粉及び/又は鱗状黒鉛が合量で「0重量%」になり得ることから、請求項1、2に係る発明は不明確であり、また、同発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないと判断した。
しかしながら、上記「第2 1.」に記載のとおり、訂正によりピッチ粉及び/又は鱗状黒鉛が合量で「7重量%以下」とされ、0重量%とならない旨が明瞭化された。
したがって、訂正特許請求の範囲は、特許法第36条6項1号及び2号の規定を満たすものである。
ここで、特許異議申立人 品川リフラクトリーズ株式会社は、平成29年10月10日付けの意見書において、「7重量%以下」が「0重量%」を包含するため、訂正特許請求の範囲は、依然として、特許法第36条6項1号及び2号の規定を満たさない旨を主張している。
しかしながら、本件特許発明1、2は「低カーボンMgO-Cれんが」に係る発明であるから、カーボン成分を含むものと解するのが自然であり、発明の詳細な説明を参照しても、ピッチ粉や鱗状黒鉛を含有する実施例しか記載されていないことなどからみて、0重量%なる記載が削除された請求項1において、「7重量%以下」は、「0重量%」、すなわち、ピッチ粉や鱗状黒鉛が無添加となる場合を排除したものと考えられる。
したがって、「7重量%以下」の記載に関する当該異議申立人の主張は採用することができない。
第5 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由
1.特許異議申立人 品川リフラクトリーズ株式会社の主張
(1)特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~8号証の記載事項に基づき、当業者が容易に想到し得るものである。
甲第1号証:特開昭59-3068号公報
甲第2号証:特開平9-309762号公報
甲第3号証:特開平9-194252号公報
甲第4号証:特開昭57-118067号公報
甲第5号証:「JIS R6001 研削といし用研磨剤の粒度」、
財団法人日本規格協会、平成10年12月31日
甲第6号証:成瀬庸一 他、「転炉に使用したマグ・カボーンれんがの
調査結果」、耐火物35巻300号、1983年、12-16ページ
甲第7号証:祐成史郎 他、「低黒鉛質MgO-Cれんがの取鍋スラグ
ラインへの適用」、材料とプロセス、Vol.4、1991年 No.4、
1225ページ
甲第8号証:滝千尋 他、「転炉出鋼口スリーブ用低カーボンMgO-C れんがの開発」、品川技報、No.38、1995年、23-32ページ
以下、異議申立人 品川リフラクトリーズ株式会社から提出された甲第1~8号証を、甲A1~A8号証という。
2.特許異議申立人 黒崎播磨株式会社の主張
(1)特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証の記載事項に基づき、当業者が容易に想到し得るものである。
甲第1号証:特開平7-82005号公報
甲第2号証:特開昭58-125659号公報
甲第3号証:特開昭59-3068号公報(甲第A1号証と同じ)
甲第4号証:特開2009-149473号公報
甲第5号証:特開平5-155655号公報
甲第6号証:特許第4124588号公報
以下、特許異議申立人 黒崎播磨株式会社から提出された甲第1~6号証を、甲B1~B6号証という。
3.甲各号証の記載事項
本件特許出願の出願日(平成26年12月7日)前に頒布された刊行物である甲第A1~A8号証及び甲第B1~B6号証のうち、特に甲第A1~A3、B1号証には、以下の記載がある。
(1)甲第A1号証
a「2.特許請求の範囲
マグネシアもしくはマグネシアとスピネルの合量が60~95重量%と、カーボンが3~20重量%と、2~50ミクロンの微粒子を85%以上含む炭化珪素が2~15重量%からなることを特徴とするマグネシア-カーボン-炭珪系耐火物。」
b「即ちこの発明は、特定微粉の特定量の炭化珪素をカーボンと同時添加することによつて、カーボンの酸化による耐火物の品質劣化を防止し、使用による損耗度を減少させることを目的とし・・・」
(第2ページ右下欄第9~12行)
c「SiC反応生成物であるSiOガスは煉瓦気孔中でSiO2となり、MgO原料粒子の表面でMgO-SiO2系化合物(耐火物)を生成し気孔を埋める」
(第3ページ右上欄第19行~同左下欄第2行)
d「
」
(2)甲第A2号証
e「【請求項1】 マグネシア原料及び1~5重量%未満のカーボン原料からなる耐火性原料100重量%に対して、金属などの易酸化性添加物の含有量が外割で1.5重量%以下であり、かつ硼化物の含有量が外割で0.5重量%以下であることを特徴とする真空脱ガス精錬炉用低カーボン質MgO-C耐火物。
【請求項2】 マグネシア原料及び1~5重量%未満のカーボン原料からなる耐火性原料100重量%に対して、外割でピッチ及び/又はピッチを含むバインダー:0.1~5重量%を含み、金属などの易酸化性添加物の含有量が外割で1.5重量%以下であり、かつ硼化物の含有量が外割で0.5重量%以下であることを特徴とする真空脱ガス精錬炉用低カーボン質MgO-C耐火物。
・・・
【請求項4】 前記マグネシア原料として、1mmよりも大きい粒度の含有量が20~70重量%で、かつ5mmよりも大きい粒度の含有量が30重量%以下である原料を使用することを特徴とする請求項1,2又は3に記載の真空脱ガス精錬炉用低カーボン質MgO-C耐火物。」
f「【0049】・・・MgO粒度が粗くなるほど発生亀裂は少なくなっており、耐熱スポーリング性が向上していることが認められる。・・・低カーボン化に際しては、MgOの粗粒度構成を採用することが好ましいことが理解できる。」
g「【0063】・・・本実施例1・・・において、マグネシア原料としては、海水焼結マグネシア(純度:99%,気孔率:2.5%,かさ比重:3.43)と電融マグネシア(純度:99%,気孔率:2.0%,かさ比重:3.52)を混合して使用した。(混合比→上記焼成クリンカー:電融クリンカー=20:80)
【0064】また、カーボン原料としては、100メッシュ以下でカーボン純度:97%の天然鱗状黒鉛及び2mm以下でカーボン純度:99%のピッチコークスを使用した。
【0065】次の表1及び該表1に続く表2に示す配合割合で各原料を配合してMgO-C煉瓦を作成した。なお、表中のマグネシアA~D及びピッチ粉E,Fは、次のとおりのものである。
・マグネシアA:≦1mm→90wt%,1~5mm→10wt%,>5mm→ 0wt%
・マグネシアB:≦1mm→70wt%,1~5mm→30wt%,>5mm→ 0wt%
・マグネシアC:≦1mm→45wt%,1~5mm→45wt%,>5mm→10wt%・・・」
h「【表1】
」
(3)甲第A3号証
i「【0011】
・・・SiCはれんが内に浸入したCOガスと反応し、次式(2)及び(3)で示されるような反応によってSiO2を生成する。
SiC+CO→SiO+C ………(2)
SiO+CO→SiO2+C ………(3)
このようにして生成したSiO2 はガラス皮膜を形成し、Cの酸化防止の役目を果たす。」
(4)甲第B1号証
j「【請求項1】
炭素質材料1~10重量%、窒化チタンまたは/および炭化チタン0.1~3重量%を含有し、残部がマグネシアを主体とする耐火材料よりなることを特徴とする低カ-ボン質マグネシア・カ-ボン系耐火物。」
k「【0004】また、通常のマグネシア・カ-ボンれんがには黒鉛などの炭素質材料が12~25重量%添加されているが、カ-ボンピックアップの心配から炭素質材料が10重量%以下のものが望ましい。しかしながら、炭素質材料が10重量%以下となると、マグネシア質れんがと同様な熱スポ-リングや構造スポ-リングの発生があり十分な耐用が得られない。」
l「【0010】さらに、本発明の低カ-ボン質マグネシア・カ-ボン系耐火物が激しい酸化性雰囲気で使用される場合には、窒化チタンや炭化チタンの酸化防止材としてガラス質材料を添加するとよい。ガラス質材料はホウ酸系、リン酸系、あるいはホウ酸-リン酸系ガラスが適し、ケイ酸系ガラスはスラグ、マグネシアと反応し低融点の成分を生成するので避けた方がよい。」
m「【0014】
【作用】耐火物がマグネシアを主体とする耐火材料と10重量%以下の炭素質材料のみで構成されると、スラグの浸透を十分には抑制できず、構造スポ-リングを生じ易いので、通常100~1000μm程度の粒径のものが使用される黒鉛を数10μmあるいは数μm以下の粒径とすることにより、添加量の少なさを比表面積の増大によってカバ-しようとしても、今度は酸化による消失が激しくなり逆効果となる。しかし、通常の100~1000μm程度の粒径の黒鉛では、10重量%以下の添加では、マグネシア微粒子間からのスラグの浸透を十分に抑制することは出来ない。
【0015】・・・チタンの窒化物や炭化物はスラグに対する濡れ性が著しく小さいために、黒鉛と同様にスラグがれんが内部へ深く浸透することを抑制し、スラグ浸透に伴う構造スポ-リングを防止する。また、炭化チタンや窒化チタンの場合は鋼へのカ-ボンピックアップの心配もなく、しかも、数10μmあるいは数μm以下の粒径で使用しても、耐酸化性が大きいので酸化による消失の恐れも少ない。従って、マグネシアを主体とする耐火材料と10重量%以下の炭素質材料より構成される素材に炭化チタンや窒化チタンを少量添加することにより、非常に良好にスラグの浸透を抑制できる。
【0016】また、チタンの窒化物や炭化物は熱伝導率が10kcal/m・hr・℃以上あり、マグネシアの約4kcal/m・hr・℃に比較して高く、熱スポ-リングに対しても効果が大きい。」
n「【表1】
」
4.当審の判断
(1)異議申立人 品川リフラクトリーズ株式会社の異議申立理由について
ア.引用発明1
甲第A1号証の摘記事項aから、甲第A1号証には、「マグネシアが60~95重量%、カーボンが3~20重量%、2~50ミクロンの微粒子を85%以上含む炭化珪素が2~15重量%からなるマグネシア-カーボン-炭珪系耐火物」が記載されている。かかる成分比を、マグネシア原料100重量%として、本件特許発明1の表記に揃えると、「マグネシア原料100重量%に対して、外掛けで、カーボンが3~33重量%、2~50μmの微粒子を85%以上含む炭化珪素が2~25重量%からなるマグネシア-カーボン-炭珪系耐火物」(引用発明1)となる。
イ. 対比・判断
本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「マグネシア-カーボン-炭珪系耐火物」は、本件特許発明1の「MgO-Cれんが」に相当する。また、本件特許発明1におけるピッチ粉や鱗状黒鉛は、カーボンに相当する。
したがって、本件特許発明1と引用発明1とは、下記の点で一致し、下記の点で相違する。
一致点:「マグネシア原料100重量%に対して、外掛けで、カーボンと、炭化珪素とを所定量含有するMgO-Cれんが。」
相違点1:本件特許発明1は、ピッチ粉及び/又は鱗状黒鉛をマグネシア原料100重量%に対して外掛けで7重量%以下含有する「低カーボン」MgO-Cれんがであるのに対し、引用発明1は、カーボンを3~33重量%含有し、必ずしも「低カーボン」とはいえない点。
相違点2:本件特許発明1は、炭化珪素をマグネシア原料100重量%に対して外掛けで0.1~10重量%含有するのに対し、引用発明1は、炭化珪素が2~25重量%である点。
相違点3:本件特許発明1は、マグネシア原料の粒径を特定しているのに対して、引用発明1では不明な点。
相違点4:本件特許発明1は、「炭化珪素の最大粒径が200メッシュ以下」であり、また、「粒径が20μm以下の炭化珪素の含量がマグネシア原料に対して7重量%以下」であるのに対し、引用発明1は、2~50μmの微粒子を85%以上含む炭化珪素を利用する旨を開示するものの、粒度構成が不明な点。
そこで、まず、上記の相違点1、3について、以下に検討する。
この点について、上記の摘記事項e~hからみて、甲第A2号証は、MgO-Cれんがに含まれるカーボン量を本件特許発明1に特定される範囲まで低減した場合に、マグネシア原料を粗粒化することで、耐熱スポーリング性を高める技術を開示している。そして、耐熱スポーリング性を高めることがれんがに共通する技術課題であることを鑑みると、一見して、当該技術課題を解決するために、引用発明1に含まれるカーボン量が少ない場合に、マグネシア原料を粗粒化することは、当業者であれば容易になし得ることであるとも考えられる。
しかしながら、本件特許発明1は、「炭化珪素をルーツとするガラスは、熱サイクルによって剥離し易い性質がある。それを防止するのが、本発明に係る粗大粒マグネシア原料である。」(【0021】参照)との作用機序の認識に基づいて、「粗大マグネシア原料を配し、粒度構成を適正化すると共に、炭化珪素原料を添加することにより、低カーボンMgO-Cれんがの耐食性と耐熱スポーリング性を損なうことなく、耐構造スポーリング性を高める」(【0022】参照)という効果を奏するのに対し、甲第A2号証は、炭化硅素を含有しない低カーボンMgO-Cれんがを前提とするものであるから、当業者といえども、引用発明1と甲第A2号証に記載の技術的事項を組み合わせることで、耐構造スポーリング性を高めるという本件特許発明1の効果を予測できたとはいえない。
また、甲第A3~A8号証を参照しても、マグネシア原料の粒度構成の調整と炭化珪素の添加により、低カーボンMgO-Cれんがの耐構造スポーリング性が高められることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、本件特許発明1は、引用発明1及び甲第A2~A8号証に記載の技術的事項からは当業者が予測し得ない効果を奏するものであるといえる。
したがって、相違点2、4を検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1及び甲第A2~A8号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものとはいえない。
また、本件特許発明1に対して金属Al粉や金属Siを追加的に添加した本件特許発明2も、上記の本件特許発明1に係る判断と同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではない。
(2)異議申立人 黒崎播磨株式会社の異議申立理由について
ア. 引用発明2
甲第B1号証の摘記事項j、nから、甲第B1号証には、実施例5の耐火物として「海水マグネシアクリンカー93.5重量%、天然黒鉛5重量%、窒化チタン1重量%を含有し、粒径1mm以上の海水マグネシアクリンカーが50重量%である、低カ-ボンMgO-C耐火物」が記載されている。かかる成分比を、海水マグネシアクリンカーを100重量%として、本件特許発明1の表記に揃えると、「海水マグネシアクリンカー100重量%に対して、外掛けで、3.4重量%の黒鉛、1.1重量%の窒化チタンを含有し、粒径1mm以上の海水マグネシアクリンカーが海水マグネシアクリンカー100重量%に対して53.5重量%である、低カ-ボンMgO-C耐火物」(引用発明2)となる。
イ. 対比、判断
引用発明2の「海水マグネシアクリンカー」、「耐火物」は、それぞれ本件特許発明1の「マグネシア原料」、「れんが」に相当する。また、引用発明2の「黒鉛」は形状が特定されていないが、前記甲第A2号証の摘記事項g等から見て、鱗状黒鉛又はピッチを利用する蓋然性が高い。
したがって、本件特許発明1と引用発明2とは、下記の点で一致し、下記の点で相違する。
一致点:「マグネシア原料100重量%に対して、外掛けで、7重量%以下の鱗状黒鉛又はピッチを含有し、粒径1mm以上のマグネシア原料をマグネシア原料100重量%に対して20~65重量%含有する、低カ-ボンMgO-C耐火物」
相違点1:本件特許発明1は、「0.1~10重量%の炭化珪素」を含有しその「最大粒径が200メッシュ以下」であり、また、「粒径が20μm以下の炭化珪素の含量がマグネシア原料に対して7重量%以下」であるのに対し、引用発明2は炭化珪素を含有しない点。
相違点2:本件特許発明1は、「粒径5.0mm以上の粗大マグネシアの含有量がマグネシア原料100重量%に対して5重量%以上である」ことを特定するのに対し、引用発明2では、粒径5.0mm以上の粗大マグネシアを含有しない点。
そこで、まず、相違点1について、以下に検討する。
引用発明2は、上記の摘記事項mによれば、低カーボンMgO-Cれんがにおいて、窒化チタン(又は炭化チタン)が、炭素質材料の酸化を抑制するとともに、スラグの浸透を防止することに着目し、耐構造スポーリング性を実現したものである。
ここで、引用発明2は、上記の摘記事項lによれば、窒化チタンの酸化防止材としてガラス質材料の添加が示唆されているものの、ケイ酸系ガラスはスラグ、マグネシアと反応し低融点の成分を生成するので避けた方がよいと記載されている。
これに対し、上記の摘記事項c、iによれば、炭化珪素を含有するれんがにおいては、炭化硅素とCOガスとの反応により、ケイ酸系ガラスが生成される。そうすると、窒化チタンと炭化珪素とが複合添加されることは、引用発明2で回避しようとするケイ酸系ガラスと窒化チタンとの組み合わせを誘発させることになる。
したがって、引用発明2において、炭化珪素をその粒径まで特定して含有させることには阻害要因がある。そして、甲第B2~B6号証に、かかる阻害要因を覆す技術的な記載や示唆は見当たらない。
以上をまとめると、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明2及び甲B2~B6号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではない。また、金属Al粉を含有する本件特許発明2についても、同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではない。
なお、甲第A1~A8号証、甲B1~甲B6号証に記載された発明を併せて検討しても、本件特許発明1、2は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由や両特許異議申立人による特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700273