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特許異議申立

2018-700019

硬化性組成物

審判番号
2018-700019
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-042223外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年01月11日
審決日
2019年02月18日
公報発行日
2019年05月31日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6161332号発明「硬化性組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6161332号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6161332号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨 1.本件特許の設定登録までの経緯 本件特許第6161332号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2013-42223号、以下「本願」という。)は、平成25年3月4日に出願人東京応化工業株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされたものであり、平成29年6月23日に特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、平成29年7月12日に特許掲載公報が発行されたものである。 2.本件異議申立の趣旨 本件特許につき平成30年1月10日付けで特許異議申立人中水麻衣(以下「申立人」という。)により「特許第6161332号の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。 3.以降の手続の経緯 以降の手続の経緯は、以下のとおりである。 平成30年 4月16日付け 取消理由通知 平成30年 6月22日   意見書(特許権者)・訂正請求書 平成30年 6月27日付け 通知書(申立人あて) 平成30年 7月18日付け 意見書(申立人) (平成30年 7月19日受理) 平成30年 8月23日付け 取消理由通知(決定の予告) 平成30年10月29日   意見書(特許権者)・訂正請求書 平成30年11月 1日付け 通知書(申立人あて) 平成30年11月26日   意見書(申立人) (平成30年11月27日受理) (なお、平成30年10月29日付けで訂正請求がされたことにより、平成30年6月22日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。) 第2 平成30年10月29日付けの訂正請求について 上記平成30年10月29日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否につき検討する。 1.訂正内容 本件訂正は、本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし3について訂正するものであって、具体的な訂正事項は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「式(1)中、Xは単結合、-O-、-O-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-CBr2-、-C(CBr3)2-、-C(CF3)2-、及び-R19-O-CO-からなる群より選択される2価の基であり、」と記載されているのを、「式(1)中、Xは単結合であり、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「硬化性組成物であって、」と記載されているのを、「硬化性組成物であって、前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10~100質量部であり、」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物が、中空シリカ、多孔質シリカ、及び」と記載されているのを、「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物が、中空シリカ、及び」に訂正する。 (4)訂正事項4 願書に添付した明細書の段落【0099】に「以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。」と記載されているのを、「以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以降、実施例2、4、5はそれぞれ参考例2、4、5に読み替えるものとする。」に訂正する。 2.検討 なお、以下の検討において、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし3を「旧請求項1」ないし「旧請求項3」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし3を「新請求項1」ないし「新請求項3」という。 (1)訂正の目的要件について 上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。 ア.訂正事項1ないし3について 上記訂正事項1ないし3に係る訂正は、いずれも旧請求項1に係るものであり、訂正事項1に係る訂正では「式(1)」に係る連結基「X」の種別の並列的選択肢の一部(単結合以外の他の連結基)を削除することにより、訂正事項2に係る訂正では「式(1)で表される化合物」に対する「(B)シリカ又はシロキサン化合物」の含有量の範囲に係る事項を明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき直列的に付加することにより、また、訂正事項3に係る訂正では、旧請求項1に記載された「(B)シリカ又はシロキサン化合物」に係る並列的選択肢の一部(多孔質シリカ)を削除することにより、いずれも請求項1の硬化性組成物を実質的に限定しているものであって、旧請求項1又は同項を引用する旧請求項2及び3に係る特許請求の範囲を減縮して新請求項1又は同項を引用する新請求項2及び3としているものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 してみると、上記訂正事項1ないし3に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。 イ.訂正事項4について 上記訂正事項4に係る訂正は、旧請求項1に記載された事項を具備しない実施例5及び訂正事項1又は3に係る訂正により新請求項1に記載された事項を具備しないものとなった実施例2及び4につき、いずれも「参考例」としたものであるから、元々不整合であった又は他の訂正により不整合となった明細書の発明の詳細な説明の記載を単に正したものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。 したがって、訂正事項4に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定の目的要件に適合するものである。 ウ.小括 以上のとおり、上記訂正事項1ないし4に係る各訂正は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定のいずれかの目的要件に適合するものである。 (2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について 上記(1)に示したとおり、訂正事項1ないし3に係る訂正により、新請求項1及び同項を引用する新請求項2並びに3の特許請求の範囲が旧請求項1及び同項を引用する旧請求項2並びに3の特許請求の範囲に対して実質的に減縮されていることが明らかであり、訂正事項4に係る訂正は、訂正前に対応関係が不明瞭であった明細書の記載又は訂正事項1ないし3に係る請求項に係る訂正により対応関係が不明瞭となった明細書の記載につき単に正したものであるから、上記訂正事項1ないし4による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。 してみると、上記訂正事項1ないし4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。 (3)独立特許要件について なお、本件の特許異議の申立ては、旧請求項1ないし3に係る全ての発明についての特許につき、申立てがされているから、訂正の適否の検討において独立特許要件につき検討すべき請求項が存するものではない。 3.訂正に係る検討のまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正を認める。 第3 申立人が主張する取消理由 申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第8号証を提示し、申立書における取消理由に係る主張を当審で整理すると、概略、以下の取消理由1ないし9が存するとしているものと認められる。 取消理由1:本件発明1ないし3は、いずれも甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由2:本件発明1ないし3は、いずれも甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由3:本件発明1ないし3は、いずれも甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由4:本件発明1ないし3は、いずれも甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由5:本件発明1ないし3は、いずれも甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由6:本件発明1ないし3は、いずれも甲第3号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由7:本件特許の請求項1ないし3の記載では、各項に係る発明が明確でないから、本件特許の請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由8:本件発明1ないし3は、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明に照らしてその解決課題が解決できるものではなく、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由9:本件特許に係る請求項1ないし3に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が不備であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 ・申立人提示の甲号証 甲第1号証:特開2006-16480号公報 甲第2号証:特表2002-508012号公報 甲第3号証:特開2005-316415号公報 甲第4号証:特開2003-147268号公報 甲第5号証:特開2012-255159号公報 甲第6号証:「Gasil○R HP270」なる商品名のシリカ製品に係るカタログ、PQ Corporationのホームページ(URL:https://www.pqcorp.com/docs/default-source/typical-properties/pq-corporation/silicas/gasil/gasilhp270.pdf?sfvrsn=694ac7eb_4)から平成30年1月5日にプリントアウトされたと思われるもの(決定注:上記「○R」は丸で囲まれたRを意味する。) 甲第7号証:特開2003-261817号公報 甲第8号証:特開2004-204228号公報 (以下、それぞれ「甲1」ないし「甲8」と略していう。) 第4 当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要 当審が上記平成30年8月23日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 「第6 当審の判断 当審は、 申立人が主張する下記(再掲)取消理由5及び6により、依然として、本件発明1ないし3についての特許はいずれも取り消すべきもの、 と判断する。以下、詳述する。 取消理由5:本件発明1ないし3は、いずれも甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由6:本件発明1ないし3は、いずれも甲第3号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 ・・(中略)・・ (4)取消理由5及び6についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲3に記載された発明に当業者の技術常識を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明1ないし3についての特許は、いずれにしても特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 よって、取消理由5及び6はいずれも理由がある。 第7 むすび 以上のとおりであるから、上記結論のとおり、本件訂正については認め、本件の請求項1ないし3の発明についての特許を取り消す決定を行うことを予告する。」 第5 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項 訂正後の本件特許に係る請求項1ないし3には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 (A)エポキシ化合物と、(B)シリカ又はシロキサン化合物と、(C)酸発生剤とを含み、 前記(A)エポキシ化合物が、下記式(1): 【化1】 (式(1)中、Xは単結合であり、R19は炭素数1~8のアルキレン基であり、R1~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。) で表される化合物である、硬化性組成物であって、 前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10~100質量部であり、 前記(B)シリカ又はシロキサン化合物が、中空シリカ、及び下記式(2): (RSiO3/2)p・・・(2) (式(2)中、Rは、水酸基、及び水素原子からなる群より選択される基であり、pは6以上の偶数である。) で表されるかご型シルセスキオキサン化合物からなる群より選択される1種以上である、 硬化性組成物。 【請求項2】 請求項1に記載の硬化性組成物を硬化した、硬化物。 【請求項3】 請求項1に記載の硬化性組成物中の前記(C)酸発生剤から酸を発生させる工程を含む、硬化物の製造方法。」 (以下、訂正後の上記請求項1ないし3に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明3」という。) 第6 当審の判断 当審は、 訂正後の請求項1ないし3に係る発明についての特許につき、当審が通知した上記取消理由5及び6並びに申立人が主張する上記取消理由1ないし9はいずれも理由がなく、本件発明1ないし3についての特許はいずれも取り消すことができないもの、 と判断する。 なお、以下、詳述するにあたり、事案に鑑み、まず、申立人が主張する上記取消理由7ないし9につきそれぞれ検討を行い、さらに、申立人が主張する取消理由1ないし6並びに当審が通知した上記取消理由5及び6(申立人が主張する取消理由5及び6と同一である。)につき併せて、順次それぞれ検討する。 I.取消理由7について 申立人が主張する取消理由7は、申立書第31頁(化学式下)第10行ないし第32頁第5行の記載からみて、本件特許に係る請求項1ないし3には、「多孔質シリカ」を使用する場合における、硬化層の屈折率に影響する細孔の量につき記載(規定)されていないから、同請求項1ないし3の記載では、同各項に係る発明が明確でないというものと認められる。 しかるに、上記訂正後の請求項1ないし3では、多孔質シリカを使用する場合につき削除されているから、上記申立人の主張する理由は、根拠を欠き理由がない。 また、申立人は、平成30年11月26日付け意見書(第13頁下段)において、請求項1の式(1)の説明部における「R19は炭素数1~8のアルキレン基であり、」との記載につき、「R19」が式(1)に存しない点をもって、請求項1に係る発明が明確でないと新たに主張しているが、当該記載が存するからといって、式(1)で表される化合物の構造が不明確になるものではないことが明らかであるから、請求項1に係る発明を不明確にするものではなく、当該主張は採用できない。 したがって、上記取消理由7は、理由がない。 II.取消理由8について 申立人が主張する取消理由8は、申立書第32頁第7行ないし第34頁第21行の記載からみて、本件特許に係る請求項1ないし3には、「(A)エポキシ化合物」及び「(B)シリカ又はシロキサン化合物」の使用量及びその比並びに「(B)シリカ又はシロキサン化合物」として「中空シリカ」(又は「多孔質シリカ」)を使用する場合のその細孔量が記載されていないのに対して、明細書の発明の詳細な説明においては、調製例で製造された細孔量不明の「中空シリカ」(又は「多孔質シリカ」)を限られた使用量比の場合について記載されているのみであり、当該明細書の記載に照らして、本件特許に係る請求項1ないし3に係る発明が、所定の課題を解決できると当業者が認識できるように記載したものではなく、明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないというものと認められる。 しかるに、上記訂正後の請求項1ないし3では、「(A)エポキシ化合物」及び「(B)シリカ又はシロキサン化合物」の使用量比につき「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10~100質量部であり」と規定されているから、当該使用量比に係る上記申立人が主張する理由は、根拠を欠き理由がない。 また、細孔量の点については、空気などの屈折率が、シリカに比して低く、エポキシ樹脂に比して更に低いことが当業者の技術常識であるから、当該細孔にエポキシ樹脂が侵入することがない「中空シリカ」を使用する場合(「多孔質シリカ」を使用する場合については訂正により削除されている。)、ちゅう密なシリカを使用する場合に比して、硬化物の低屈折率化が図れるであろうことも当該技術常識に照らして当業者が認識することができ、さらに、「中空シリカ」を使用する場合であっても、細孔量が少ないものに比して、細孔量が多いものを使用した場合に、使用量が同一であれば、硬化物の低屈折率化により寄与するであろうことも、当業者に自明であって、細孔量に係る上記申立人の主張は、当を得ないものであり理由がない。 したがって、上記取消理由8は、理由がない。 III.取消理由9について 申立人が主張する取消理由9は、申立書第34頁第23行ないし第37頁第12行の記載からみて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許に係る請求項1ないし3に係る「(A)エポキシ化合物」及び「(B)シリカ又はシロキサン化合物」の使用量及びその比並びに「(B)シリカ又はシロキサン化合物」のうち中空シリカ及び多孔質シリカの細孔の量が規定されていない発明につき、所定の課題を解決し得る効果を奏するか否かにつき当業者が認識できるように記載されていないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、請求項1ないし3に係る発明を当業者が実施できるように明確かつ十分に記載したものでないというものと認められる。 しかるに、上記訂正後の請求項1ないし3では、「(A)エポキシ化合物」及び「(B)シリカ又はシロキサン化合物」の使用量比につき「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10~100質量部であり」と規定されており、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当該使用量比又は中空シリカを使用した場合に、所定の課題に則した効果を奏するものと看取できる実施例(及び比較例)につき記載されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、請求項1ないし3に記載された事項で特定される発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものというべきものである。 したがって、上記取消理由9は、理由がない。 IV.取消理由1ないし6について 取消理由1ないし6は、いずれも特許法第29条に係る取消理由であるから、併せて検討する。 1.各甲号証に記載された事項及び各甲号証に記載された発明 以下、上記取消理由1ないし6につき検討するにあたり、それらの取消理由はいずれも特許法第29条に係るものであるから、上記甲1ないし甲8に記載された事項を確認・摘示するとともに、各取消理由における主たる引用例である甲1ないし甲4に記載された発明の認定を行う。 なお、各甲号証の記載の摘示における下線は、元々記載されているものを除き、当審が付したものである。 (1)甲1 ア.甲1に記載された事項 上記甲1には、【0048】、【0056】ないし【0058】、【0064】及び【0065】に記載された事項に加えて、以下の事項が記載されている。 (ア-1) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 カチオン重合性化合物と、表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子とを含有することを特徴とする硬化性組成物。 ・・(中略)・・ 【請求項5】 多孔質シリカ微粒子の表面を修飾する有機基が、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ環又はオキセタン環を含む有機基である請求項1~4のいずれかに記載の硬化性組成物。 【請求項6】 透明基材の表面に、請求項1~5のいずれかに記載の硬化性組成物が硬化してなる被膜が形成されていることを特徴とする被膜付き基材。 ・・(中略)・・ 【請求項8】 被膜が1.20~1.45の屈折率及び0.01~1μmの膜厚を有し、反射防止機能を有する被膜である請求項6又は7に記載の被膜付き基材。」 (ア-2) 「【0001】 本発明は、反射防止膜の材料として好適な硬化性組成物に関するものである。また、本発明は、この硬化性組成物の硬化被膜、特に反射防止膜を表面に有する透明基材に関するものである。 ・・(中略)・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 しかしながら、上記従来の硬化性組成物は、形成される被膜の硬度や基材に対する密着性が必ずしも十分でないことがあった。また、塗料として構成したときに、多孔質シリカ微粒子の沈殿が生じ易く、基材に塗布し難いことがあった。そこで、本発明の目的は、硬度と密着性に優れる被膜を形成することができ、しかも沈殿が生じ難い安定な塗料を構成しうる硬化性組成物を提供することにある。また、本発明のもう1つの目的は、こうして得られる硬化性組成物を用いて、硬度と密着性に優れる硬化被膜を表面に有する透明基材を提供することにある。」 (ア-3) 「【0027】 カチオン重合性化合物と表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子との量比は適宜調整されるが、通常、前者が10~90重量%、後者が10~90重量%の範囲で用いられる。硬化被膜として反射防止膜を構成する場合は、被膜の屈折率が好ましくは1.20~1.45、より好ましくは1.25~1.41となるように、両者の量比を調整するのがよい。表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子の量があまり少ないと、屈折率が小さくならず、反射防止膜としての効果が得られ難くなり、またその量があまり多いと、被膜の強度が低下する場合がある。」 イ.甲1に記載された発明 甲1には、上記ア.で示した記載事項(特に【請求項1】、【請求項8】の各下線部)からみて、 「カチオン重合性化合物と、表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子とを含有する、1.20~1.45の屈折率を有し反射防止機能を有する被膜を形成することができる硬化性組成物。」 に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。 (2)甲2 ア.甲2に記載された事項 上記甲2には、第8頁第11行~第10頁中段(表)に記載されたとおりの事項、特に「実施例1(比較例)」及び「実施例2(比較例)」につき記載されている。 イ.甲2に記載された発明 甲2には、上記ア.で示した記載事項(特に「実施例2(比較例)」)からみて、 「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂86.5%、『UVR6990』なる商品名のカチオン性光重合開始剤3.0%、『フルオラドFC430』なる商品名の流れ添加剤0.5%及びシリカ10%を含有する光硬化性塗料組成物。」 に係る発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものといえる。 (3)甲3 ア.甲3に記載された事項 上記甲3には、【0011】、【0013】、【0143】、【0145】、【0146】、【0152】、【0158】、【0159】及び【0171】に記載された事項が記載されているとともに以下の事項も記載されている。 (ア-1) 「【0146】 塗工液3 オキセタン化合物:・・(中略)・・         4質量部 エポキシ化合物:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 0.5質量部 フッ素含有硬化性化合物(商品名E-7432、ダイキン工業(株)製) 4.5質量部 表面処理多孔質コロイダルシリカ(1-2):  15.0質量部 開始剤:トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフィン塩 0.05質量部 フッ素系添加剤:・・(中略)・・        0.3質量部 溶剤:メチルイソブチルケトン         80.0質量部 【0147】 塗工液4 オキセタン化合物:・・(中略)・・         3質量部 エポキシ化合物:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 0.5質量部 フッ素含有硬化性化合物:・・(中略)・・    3.5質量部 オキセタニルメタクリレート・・(中略)・・     1質量部 防汚性添加剤:・・(中略)・・         0.5質量部 表面処理多孔質コロイダルシリカ(1-2):  15.0質量部 開始剤:トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフィン塩 0.03質量部 開始剤:イルガキュア907・・(中略)・・  0.02質量部」 (ア-2) 「【0157】 反射防止積層体の調製 〔実施例1〕 上記3.で調製した基材/ハードコート層の積層体に、前記工程で調製した低屈折率層形成用塗工液1をバーコーティングし、乾燥させることより溶剤を除去した後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン(株)製、光源Hバルブ)を用いて、照射線量200mJ/cm2で紫外線照射を行い、塗膜を硬化させて、基材/ハードコート層/低屈折率層の反射防止積層体を得た。膜厚は、反射率の極小値が波長550nm付近になるように調製した。 ・・(中略)・・ 【0159】 〔実施例3〕 前記工程で調製した低屈折率層形成用塗工液3を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、反射防止積層体を調製した。 【0160】 〔実施例4〕 前記工程で調製した低屈折率層形成用塗工液4を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、反射防止積層体を調製した。」 イ.甲3に記載された発明 甲3には、上記ア.で示した記載事項(特に【0146】、【0147】及び【0157】ないし【0160】の特に下線部)からみて、 「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、表面処理多孔質コロイダルシリカ及び開始剤としてのトリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフィン塩を含有する低屈折率層形成用塗工液。」 に係る発明(以下「甲3発明1」という。)、 「甲3発明1の塗工液により塗膜を生成し、紫外線照射により硬化させてなる硬化塗膜。」 に係る発明(以下「甲3発明2」という。)及び 「甲3発明1の塗工液により塗膜を生成し、紫外線照射により硬化させてなる硬化塗膜の製造方法。」 に係る発明(以下「甲3発明3」という。)がそれぞれ記載されているものといえる。 (4)甲4 ア.甲4に記載された事項 上記甲4には、【0044】、【0045】、【0051】及び【0052】に記載された事項に加えて、下記の事項も記載されている。 (ア-1) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 基材表面に、分子内にシリル基を有するオキセタン化合物又はその加水分解縮合物80~100重量%とエポキシ化合物0~20重量%からなるカチオン重合性単量体5~90重量部、シリカ微粒子10~80重量部、及びシリコーンオイル0~15重量部を含有し、エポキシ化合物とシリコーンオイルの少なくともいずれか一方は必須に存在する組成物からの硬化被膜が形成されていることを特徴とする透明基材。 【請求項2】 シリカ微粒子が多孔質シリカ微粒子である請求項1に記載の透明基材。 【請求項3】 硬化被膜が、1.20~1.45の屈折率及び0.01~1μmの膜厚を有し、反射防止機能を有する被膜である請求項1又は2に記載の透明基材。 ・・(後略)」 (ア-2) 「【0022】 シリカ微粒子が、全成分100重量部に対して10重量部に満たないと、基材との密着性が低下する可能性があり、一方、その量が80重量部を越えると、膜としての強度が低下するため、好ましくない。多孔質シリカ微粒子を用いる場合も同様で、全成分100重量部に対して10重量部に満たないと、基材との密着性が低下するほか、被膜の屈折率が小さくならず、多孔質シリカを添加する効果が発現されにくいので、好ましくない。多孔質シリカ微粒子を添加することで反射防止膜を形成する場合には、被膜の屈折率が、好ましくは1.20~1.45、より好ましくは1.25~1.41になるように、多孔質シリカ微粒子の添加量を選択するのが好ましい。」 イ.甲4に記載された発明 甲4には、上記ア.で示した記載事項(特に【請求項1】、【請求項3】、【0044】及び【0052】の特に下線部)からみて、 「分子内にシリル基を有するオキセタン化合物又はその加水分解縮合物80~100重量%とエポキシ化合物0~20重量%からなるカチオン重合性単量体5~90重量部、シリカ微粒子10~80重量部、及びシリコーンオイル0~15重量部を含有し、エポキシ化合物とシリコーンオイルの少なくともいずれか一方は必須に存在する、1.20~1.45の屈折率を有し、透明基材に反射防止機能を有する硬化被膜を形成するための組成物。」 に係る発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものといえる。 (5)他の甲号証の記載事項 ア.甲5の記載事項 甲5には、「ERL-4221」、「CYRACURE UVR 6110」及び「CYRACURE UVR 6105」なる各商品名のものがいずれも「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」なる化学名のものであることが記載されている(【0092】)。 イ.甲6の記載事項 甲6には、「Gasil○R HP270」なる商品名のシリカ製品が、超高細孔容積を有し粒径が調節されていることにより、つや消し性能を発揮することが記載されている。 ウ.甲7の記載事項 甲7には、「UVR6990」なる商品名の光カチオン重合開始剤が、化学名トリフェニルスルフォニウムヘキサフロロフォスフォネート塩であることが記載されている(【0028】)。 エ.甲8の記載事項 甲8には、ビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキシドとスルホニウム塩などの光カチオン重合開始剤とを含有する硬化性エポキシ樹脂組成物が開示されており、当該硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物は従来のエポキシ樹脂を用いて硬化させて得られた硬化物の場合と比較すると、透明性、耐熱性、耐アルカリ性、吸水率、吸水膨張率、寸法精度などの点で非常に良い性能を示し、その硬化物はコーティング、インキ、接着剤、シーラント、封止材、光学的立体造形用などの用途を含むさまざまな方面で有用な物性を示すことが開示されている(【0007】~【0008】)。 2.各取消理由に係る検討 以下、上記取消理由1ないし6につき、順次検討する。 2-1.取消理由1について (1)本件発明1について ア.対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「カチオン重合性化合物」は、エポキシ化合物を一般に含むことが当業者に自明であるから、本件発明1における「(A)エポキシ化合物」との間で、「カチオン重合性化合物」の点で共通し、また、甲1発明における「表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子」は、本件発明1の「(B)シリカ又はシロキサン化合物」における「中空シリカ」との間で、「シリカ」である点で共通する。 さらに、甲1発明における「硬化性組成物」は、本件発明1における「硬化性組成物」に相当する。 してみると、本件発明1と甲1発明とは、 「カチオン重合性化合物と、シリカとを含有する硬化性組成物。」 の点で一致し、下記の点で相違する。 相違点a1:本件発明1では「(A)エポキシ化合物」として「式(1)(式及びその説明は省略)で表される化合物」を使用するのに対して、甲1発明では「カチオン重合性化合物」である点 相違点a2:本件発明1では「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10~100質量部であ」るのに対して、甲1発明では「カチオン重合性化合物」と「表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子」との質量比につき特定されていない点 相違点a3:本件発明1では「(B)シリカ又はシロキサン化合物」として「中空シリカ、及び下記式(2)(式及びその説明は省略)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物からなる群より選択される1種以上」を使用するのに対して、甲1発明では「表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子」を使用する点 相違点a4:本件発明1では「(C)酸発生剤」を含むのに対して、甲1発明では「(C)酸発生剤」を含むことが特定されていない点 イ.検討 上記相違点a1につき検討すると、甲1には、カチオン重合性化合物として、他のエポキシ化合物を使用することについては具体的に例示・記載されているものの、本件発明1における「式(1)」で表されるエポキシ化合物を使用することについては記載されておらず、また、甲1発明における「カチオン重合性化合物」として、上記「式(1)」で表されるエポキシ化合物を使用すべき技術常識等が存するものとは認められないから、上記相違点a1については、実質的な相違点であるものと認められる。 してみると、上記相違点a2ないしa4につき検討するまでもなく、本件発明1が、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるということはできない。 ウ.小括 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (2)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を引用するものであるところ、上記(1)で説示したとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないから、同一の理由により、本件発明2及び3についても、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (3)取消理由1についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲1に記載された発明であるとはいえないから、取消理由1は理由がない。 2-2.取消理由2について (1)本件発明1について ア.対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂」は、本件発明1における「(A)エポキシ化合物」との間で、「エポキシ化合物」の点で共通し、また、甲2発明における「シリカ」は、本件発明1の「(B)シリカ又はシロキサン化合物」における「中空シリカ」との間で、「シリカ」である点で共通する。 さらに、甲2発明における「光硬化性塗料組成物」は、硬化して塗膜なる硬化物を与えるものである点で本件発明1における「硬化性組成物」に相当する。 してみると、本件発明1と甲2発明とは、 「エポキシ化合物と、シリカとを含有する硬化性組成物。」 の点で一致し、下記の点で相違する。 相違点b1:本件発明1では「(A)エポキシ化合物」として「式(1)(式及びその説明は省略)で表される化合物」を使用するのに対して、甲2発明では「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂」である点 相違点b2:本件発明1では「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10~100質量部であ」るのに対して、甲2発明では「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂86.5%」に対して「シリカ10%」を含有する点 相違点b3:本件発明1では「(B)シリカ又はシロキサン化合物」として「中空シリカ、及び下記式(2)(式及びその説明は省略)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物からなる群より選択される1種以上」を使用するのに対して、甲2発明では「シリカ」を使用する点 相違点b4:本件発明1では「(C)酸発生剤」を含むのに対して、甲2発明では「『UVR6990』なる商品名のカチオン性光重合開始剤」を含む点 イ.検討 上記相違点b1につき検討すると、甲2発明における「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂」は、甲5の記載に照らすと、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」であり、本件発明1における「式(1)」で表されるエポキシ化合物に該当しないことが明らかであり、また、甲2の記載につき更に検討しても、本件発明1における「式(1)」で表されるエポキシ化合物を使用することについては記載されていない。 さらに、甲2発明における「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂」につき、上記「式(1)」で表されるエポキシ化合物を代替使用すべき技術常識等が存するものとは認められないから、上記相違点b1については、実質的な相違点であるものと認められる。 してみると、上記相違点b2ないしb4につき検討するまでもなく、本件発明1が、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明であるということはできない。 ウ.小括 したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 (2)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を引用するものであるところ、上記(1)で説示したとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえないから、同一の理由により、本件発明2及び3についても、甲2に記載された発明であるとはいえない。 (3)取消理由2についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲2に記載された発明であるとはいえないから、取消理由2は理由がない。 2-3.取消理由3、5及び6について いずれも甲3に記載された発明を主たる引用例とする取消理由3、5及び6につき併せて検討する。 (1)本件発明1について ア.対比 本件発明1と甲3発明1とを対比すると、甲3発明1における「表面処理多孔質コロイダルシリカ」は、本件発明1の「(B)シリカ又はシロキサン化合物」における「中空シリカ」との間で、「シリカ」である点で共通し、また、甲3発明1における「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」は、本件発明1における「(A)エポキシ化合物」の「下記式(1):(式及びその説明は省略)で表される化合物」との間で、「エポキシ化合物」である点で共通する。 そして、甲3発明1における「開始剤としてのトリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフィン塩」は、「スルフォニウム」カチオンと「ヘキサフルオロフォスフィン」アニオンとからなる塩化合物であり、本件特許明細書に記載された「一般式(c1)」に該当するものであるから、本件発明1における「酸発生剤」に相当する。 さらに、甲3発明1の「低屈折率層形成用塗工液」は、複数の成分を含み、当該塗工液により塗膜を生成した後、紫外線照射して塗膜を硬化させていることが明らかであるから、本件発明1の「硬化性組成物」に相当する。 してみると、本件発明1と甲3発明1とは、 「(A)エポキシ化合物と、(B)シリカ又はシロキサン化合物と、(C)酸発生剤とを含む、硬化性組成物であって、 前記(B)シリカ又はシロキサン化合物が、シリカである、 硬化性組成物。」の点で一致し、以下の3点で相違する。 相違点c1:「エポキシ化合物」につき、本件発明1では、「式(1):(式及びその説明は省略)で表される化合物」であるのに対して、甲3発明1では「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」である点 相違点c2:「シリカ」につき、本件発明1では、「中空シリカ」であるのに対して、甲3発明1では、「表面処理多孔質コロイダルシリカ」である点 相違点c3:本件発明1では、「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10~100質量部であ」るのに対して、甲3発明1では、当該含有量比につき特定されていない点 イ.検討 (ア)相違点c1について 上記相違点c1につき検討すると、甲3には、上記「エポキシ化合物」として、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」を含む種々のエポキシ化合物が使用できることは記載されている(【0031】等)ものの、本件発明1における「式(1):(式及びその説明は省略)で表される化合物」に該当する化合物、すなわち、ビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキサイド化合物を使用することは記載されていないから、甲3発明1における「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」なる「エポキシ化合物」に代えてビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキサイド化合物を使用することは、甲3発明1において当業者が適宜なし得ることではない。 してみると、上記相違点c1は、実質的な相違点であり、また、甲3発明1において当業者が当業者が適宜なし得ることともいえない。 また、甲3発明1につき他の文献に係る技術を組み合わせることにつき検討すると、甲3には、甲3発明1に係る硬化性組成物である「実施例3」及び「実施例4」につき、反射防止膜とした場合の反射率が低く、ヘイズ値が低い、すなわち透明性が高いことが開示されている(【0171】)から、甲3発明1につき他の文献に係る技術を組み合わせて「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」に代えてビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキサイド化合物を使用するべき動機となる事項が存するものとも認められない。 なお、上記1.(5)エ.で示したとおり、甲8には、ビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキシドとスルホニウム塩などの光カチオン重合開始剤とを含有する硬化性エポキシ樹脂組成物が開示されており、当該硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物は従来のエポキシ樹脂を用いて硬化させて得られた硬化物の場合と比較すると、透明性、耐熱性、耐アルカリ性、吸水率、吸水膨張率、寸法精度などの点で非常に良い性能を示し、その硬化物はコーティング、インキ、接着剤、シーラント、封止材、光学的立体造形用などの用途を含むさまざまな方面で有用な物性を示すことが開示されてはいるが、甲8の記載(特に【0030】)を更に検討すると、ビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキシドを使用した「実施例1」の場合と「(ε-カプロラクトン変性)3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」を使用した「比較例1」又は「比較例2」との対比において、上記「実施例1」の場合、「比較例1」又は「比較例2」の場合に比して、粘度、硬化性などの点で優れるものの、耐熱性の点で明らかに劣ることが看取できるから、甲8には、甲8に記載された技術を甲3発明1に組み合わせるべき動機となる事項が存するものとはいえない。 してみると、上記相違点c1は、甲3発明1において、甲8に記載された事項などの他の文献に係る技術を組み合わせることにより、当業者が適宜なし得ることであるということもできない。 したがって、上記相違点c1は、実質的な相違点であり、また、甲3発明1において、当業者が適宜なし得ることであるということもできない。 ウ.小括 以上のとおり、上記相違点c1は、実質的な相違点であり、また、甲3発明1において、当業者が適宜なし得ることであるということもできないのであるから、他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明1、すなわち甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲3に記載された発明に基づいて、又は甲3に記載された発明に他の技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (2)本件発明2及び3について ア.対比・検討 本件発明2又は本件発明3と甲3発明2又は甲3発明3とをそれぞれ対比すると、本件発明2は「請求項1に記載の硬化性組成物を硬化した、硬化物」であるのに対して、甲3発明2は「甲3発明1の塗工液により塗膜を生成し、紫外線照射により硬化させてなる硬化被膜」である点並びに本件発明3は「請求項1に記載の硬化性組成物中の前記(C)酸発生剤から酸を発生させる工程を含む、硬化物の製造方法」であるのに対して、甲3発明3は「甲3発明1の塗工液により塗膜を生成し、紫外線照射により硬化させてなる硬化塗膜の製造方法」である点でそれぞれ相違するが、上記(1)で説示したとおり、「請求項1に記載の硬化性組成物」、すなわち本件発明1は、「塗工液」に係る甲3発明1との間で上記相違点c1の点で相違し、また、当該相違点c1につき当業者が適宜なし得るでもないことにより、甲3発明1、すなわち甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲3に記載された発明に基づいて、又は甲3に記載された発明に他の技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということもできないのであるから、本件発明2又は3についても、甲3発明2又は甲3発明3、すなわち甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲3に記載された発明に基づいて、又は甲3に記載された発明に他の技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 イ.小括 したがって、本件発明2及び本件発明3についても、甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲3に記載された発明に基づいて、又は甲3に記載された発明に他の技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (3)取消理由3、5及び6についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲3に記載された発明に基づいて、又は甲3に記載された発明に他の技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 よって、取消理由3、5及び6はいずれも理由がない。 2-4.取消理由4について (1)本件発明1について ア.対比 本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明における「エポキシ化合物」は、本件発明1における「(A)エポキシ化合物」との間で、「エポキシ化合物」の点で共通し、また、甲4発明における「シリカ微粒子」は、本件発明1の「(B)シリカ又はシロキサン化合物」における「中空シリカ」との間で、「シリカ」である点で共通する。 さらに、甲4発明における「透明基材に反射防止機能を有する硬化被膜を形成するための組成物」は、硬化して反射防止機能を有する被膜なる硬化物を与えるものである点で本件発明1における「硬化性組成物」に相当する。 してみると、本件発明1と甲4発明とは、 「エポキシ化合物と、シリカとを含有する硬化性組成物。」 の点で一致し、下記の点で相違する。 相違点d1:本件発明1では「(A)エポキシ化合物」として「式(1)(式及びその説明は省略)で表される化合物」を使用するのに対して、甲4発明では「エポキシ化合物」である点 相違点d2:本件発明1では「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10~100質量部であ」るのに対して、甲4発明では「分子内にシリル基を有するオキセタン化合物又はその加水分解縮合物80~100重量%とエポキシ化合物0~20重量%からなるカチオン重合性単量体5~90重量部」と「シリカ微粒子10~80重量部」である点 相違点d3:本件発明1では「(B)シリカ又はシロキサン化合物」として「中空シリカ、及び下記式(2)(式及びその説明は省略)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物からなる群より選択される1種以上」を使用するのに対して、甲4発明では「シリカ微粒子」を使用する点 相違点d4:本件発明1では「(C)酸発生剤」を含むのに対して、甲4発明では「(C)酸発生剤」の含否につき特定されていない点 イ.検討 上記相違点d1につき検討すると、甲4には、上記「エポキシ化合物」として、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」を含む種々のエポキシ化合物が使用できることは記載されている(【0014】等)ものの、本件発明1における「式(1):(式及びその説明は省略)で表される化合物」に該当する化合物、すなわち、ビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキサイド化合物を使用することは記載されていないから、上記相違点d1は、実質的な相違点である。 したがって、上記相違点d2ないしd4につき検討するまでもなく、本件発明1が、甲4発明、すなわち甲4に記載された発明であるということはできない。 ウ.小括 よって、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえない。 (2)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を引用するものであるところ、上記(1)で説示したとおり、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえないから、同一の理由により、本件発明2及び3についても、甲4に記載された発明であるとはいえない。 (3)取消理由4についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲4に記載された発明であるとはいえないから、取消理由4は理由がない。 3.取消理由1ないし6に係る検討のまとめ よって、申立人が主張する取消理由1ないし6並びに当審が通知した取消理由5及び6は、いずれも理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正については適法であるから認めるとともに、訂正後の本件の請求項1ないし3の発明についての特許は、当審が通知した取消理由並びに申立人が主張する取消理由及び証拠方法によっては取り消すことができない。 また、ほかに訂正後の本件の請求項1ないし3の発明についての特許を取り消すべき理由も発見しない。 よって、上記結論のとおり決定する。

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2018-700019

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