特許訂正審判
2018-390183
転がり軸受
- 審判番号
- 2018-390183
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2007-107250
- 登録番号
- 特許第5194532号(P5194532)
- 請求日
- 2018年11月28日
- 審決日
- 2019年02月20日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】日本精工 株式会社
- 【請求人代理人】松山 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 中澤 登
- 審判官 池渕 立
- 分類
- P141 .851-Y (F16C) / P141 .852-Y (F16C) / P141 .853-Y (F16C) / P141 .854-Y (F16C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5194532号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5194532号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5194532号に係る発明は、平成19年4月16日付けで出願され、平成25年2月15日付けで特許権の設定登録がなされたところ、平成30年11月28日付けで本件訂正審判が請求されたものである。
第2 本件訂正審判について
1.請求の趣旨
請求の趣旨は、特許第5194532号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるというものである。
この請求の趣旨によれば、特許権全体に対して訂正審判を請求するものである。
2.訂正事項
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2が、請求項1の従属項であったのを、独立項とすると共に、数値範囲を訂正する。
すなわち、訂正前の請求項2に「請求項1に記載の転がり軸受。」と記載されているところ、
a)訂正前の請求項1の「転がり軸受」が満足する「条件B」における、
「炭素の含有量が0.3質量%以上1.2質量%以下、ケイ素の含有量が0.3質量%以上2.2質量%以下、マンガンの含有量が0.2質量%以上2質量%以下、クロムの含有量が0.5質量%以上2質量%以下で、残部が鉄及び不可避的不純物である鋼」との記載を、訂正後の請求項2で、
「炭素の含有量が0.95質量%以上1.10質量%以下、ケイ素の含有量が0.4質量%以上0.7質量%以下、マンガンの含有量が0.9質量%以上1.15質量%以下、クロムの含有量が0.9質量%以上1.20質量%以下で、残部が鉄及び不可避的不純物である鋼」に訂正し、
b)訂正前の請求項1の「転がり軸受」が満足する「条件C」における、
「前記表層部の窒素濃度は0.2質量%以上2質量%以下」との記載を、訂正後の請求項2で、「前記表層部の窒素濃度は0.2質量%以上0.45質量%以下」に訂正し、
c)訂正前の請求項1の「転がり軸受」が満足する「条件D」における、「析出している前記窒化物の量は面積率で1.56%以上20%以下」との記載を、訂正後の請求項2で、「析出している前記窒化物の量は面積率で1.56%以上3.57%以下」に訂正する。
なお、上記において、訂正箇所の数値に下線を付記した。
d)上記のことをまとめれば、訂正事項2は次のように訂正するものである。
訂正前の請求項2の、
「前記内輪及び前記外輪のうち高炭素クロム軸受鋼で構成された軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量γR(AB) と、前記転動体の転動面の残留オーステナイト量γR(C)とが、下記の3つの式を満足することを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
γR(AB) -15≦γR(C)≦γR(AB)+15
γR(AB) ≧0
γR(C)≦50
ただし、前記3つの式における数値の単位は体積%である。」との記載を、
訂正後の請求項2の、
「軌道面を有する内輪と、前記内輪の軌道面に対向する軌道面を有する外輪と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、を備える転がり軸受において、下記の5つの条件を満足し、
条件A:前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方は、高炭素クロム軸受鋼で構成されている。
条件B:前記転動体は、炭素の含有量が0.95質量%以上1.10質量%以下、ケイ素の含有量が0.4質量%以上0.7質量%以下、マンガンの含有量が0.9質量%以上1.15質量%以下、クロムの含有量が0.9質量%以上1.20質量%以下で、残部が鉄及び不可避的不純物である鋼で構成されており、その転動面には、浸炭窒化処理又は窒化処理を含む熱処理により硬化されてなる表層部が形成されている。
条件C:前記表層部の窒素濃度は0.2質量%以上0.45質量%以下である。
条件D:前記表層部には、ケイ素とマンガンとを含有する窒化物が析出しており、析出している前記窒化物の量は面積率で1.56%以上3.57%以下である。
条件E:前記窒化物の最大径は1μm以下である。
前記内輪及び前記外輪のうち高炭素クロム軸受鋼で構成された軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量γR(AB) と、前記転動体の転動面の残留オーステナイト量γR(C)とが、下記の3つの式を満足することを特徴とする転がり軸受。
γR(AB) -15≦γR(C)≦γR(AB)+15
γR(AB) ≧0
γR(C)≦50
ただし、前記3つの式における数値の単位は体積%である。」に訂正すること。
なお、上記において訂正前後の請求項2の訂正箇所に下線を付記したが、「条件A」「条件E」は訂正前の請求項1に同一文言が記載されており、訂正事項ではない。
また、上記の「残留オーステナイト量γR(AB)」と「残留オーステナイト量γR(C)」との関係を示す3つの式を、以下で「残留オーステナイト量の関係式」ということがある。
また、請求項2を引用する請求項3も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
本件明細書【0007】の、
a)「前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転がり軸受は」、
b)「条件B:前記転動体は、炭素の含有量が0.3質量%以上1.2質量%以下、ケイ素の含有量が0.3質量%以上2.2質量%以下、マンガンの含有量が0.2質量%以上2質量%以下、クロムの含有量が0.5質量%以上2質量%以下で、残部が鉄及び不可避的不純物である鋼で構成されており、」
c)「条件C:前記表層部の窒素濃度は0.2質量%以上2質量%以下である。」
d)「条件D:前記表層部には、ケイ素とマンガンとを含有する窒化物が析出しており、析出している前記窒化物の量は面積率で1.56%以上20%以下である。」及び
本件明細書【0008】の、
e)「また、本発明に係る請求項2の転がり軸受は、請求項1に記載の転がり軸受において、前記内輪及び前記外輪のうち高炭素クロム軸受鋼で構成された軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量γR(AB)と、」との記載を、それぞれ、
本件明細書【0007】の、
a)「前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項2の転がり軸受は」、
b)「条件B:前記転動体は、炭素の含有量が0.95質量%以上1.10質量%以下、ケイ素の含有量が0.4質量%以上0.7質量%以下、マンガンの含有量が0.9質量%以上1.15質量%以下、クロムの含有量が0.9質量%以上1.20質量%以下で、残部が鉄及び不可避的不純物である鋼で構成されており、」
c)「条件C:前記表層部の窒素濃度は0.2質量%以上0.45質量%以下である。」
d)「条件D:前記表層部には、ケイ素とマンガンとを含有する窒化物が析出しており、析出している前記窒化物の量は面積率で1.56%以上3.57%以下である。」及び
本件明細書【0008】の、
e)「また、本発明に係る請求項2の転がり軸受は、前記内輪及び前記外輪のうち高炭素クロム軸受鋼で構成された軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量γR(AB)と、」に訂正する。
(4)訂正事項4
本件明細書【0021】の「に対してもにも効果的である」との記載を、「に対しても効果的である」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件明細書の【表2】(【0034】)中の「参考例1」、「実施例2」~「実施例10」、「比較例1」~「比較例4」との記載を、それぞれ、「試験片1」、「試験片2」~「試験片10」、「比較試験片1」~「比較試験片4」に訂正する。
(6)訂正事項6
本件明細書【0047】の「マンガンの含有量がが多すぎると」との記載を、「マンガンの含有量が多すぎると」に訂正する。
(7)訂正事項7
a)本件明細書【表3】(【0054】)中の「実施例2~7」、「実施例9」との記載を、いずれも「参考例」に訂正する。
b)本件明細書【表4】(【0055】)中の「実施例13~16」、「実施例23」「実施例24」との記載を、いずれも「参考例」に訂正する。
c)本件明細書【表5】(【0056】)中の「実施例25」、「実施例31~34」との記載を、いずれも「参考例」に訂正する。
d)本件明細書【表6】(【0057】)中の「実施例40~41」との記載を、「参考例」に訂正する。
(8)訂正事項8
a)本件明細書【0052】の「実施例1~43、参考例、及び比較例2、3」との記載を、「実施例、参考例、及び比較例2、3」に訂正する。
b)本件明細書【0058】の「実施例1~43、参考例、及び比較例1~3」との記載を、「実施例、参考例、及び比較例1~3」に訂正する。
(9)訂正事項9
本件明細書【0064】の【図15】の説明中の「面積375μm2」との記載を、「面積375μm2」に訂正する。
第3 訂正の適否
1.訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかだから、特許法第126条第1項ただし書き第1号、同条第5項及び第6項に規定する要件をいずれも満たす訂正である。
2.訂正事項2について
(1)訂正の目的について
(1-1)訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であるところ、訂正後に、請求項間の引用関係を解消して、請求項2を独立形式へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする特許法第126条第1項ただし書き第4号に規定する要件を満たす訂正である。
請求項2を引用する請求項3についても同様である。
(1-2)また、訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用することにより請求項2の転がり軸受が満足する条件Bにおける鋼の各成分の含有量の数値範囲、条件Cにおける表層部の窒素濃度の数値範囲、及び条件Dにおける析出している前記窒化物の量の数値範囲をそれぞれ次のように訂正するものである。
<条件B>
(炭素)訂正前の「0.3質量%以上1.2質量%以下」との記載を、訂正後の「0.95質量%以上1.10質量%以下」に訂正する。
(ケイ素)訂正前の「0.3質量%以上2.2質量%以下」との記載を、訂正後の「0.4質量%以上0.7質量%以下」に訂正する。
(マンガン)訂正前の「0.2質量%以上2質量%以下」との記載を、訂正後の「0.9質量%以上1.15質量%以下」に訂正する。
(クロム)訂正前の「0.5質量%以上2質量%以下」との記載を、訂正後に「0.9質量%以上1.20質量%」に訂正する。
<条件C>
訂正前の「前記表層部の窒素濃度は0.2質量%以上2質量%以下」との記載を、訂正後の「前記表層部の窒素濃度は0.2質量%以上0.45質量%以下」に訂正する。
<条件D>
訂正前の「析出している前記窒化物の量は面積率で1.56%以上20%以下」との記載を、訂正後に「析出している前記窒化物の量は面積率で1.56%以上3.57%以下」に訂正する。
すると、上記の訂正は、訂正前と比較して訂正後に、いずれも数値範囲を限定する訂正であるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とする特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する要件を満たす訂正でもある。
請求項2を引用する請求項3についても同様である。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
(2-1)訂正事項2のうち上記(1-1)に記載の事項を目的とする訂正については、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第126条第5項に規定する要件を満たす訂正である。
(2-2)訂正事項2のうち上記(1-2)に記載の事項を目的とする訂正については、次のようにいえる。
a)訂正前の本件明細書【0045】には「・・・転動体を構成する鋼に含まれる合金元素(炭素,ケイ素,マンガン等)について・・・炭素の含有量は0.3質量%以上とすることが好ましく、0.5質量%以上とすることがより好ましく、0.95質量%以上とすることがさらに好ましい。一方、・・・炭素の含有量は1.2質量%以下とすることが好ましく、1.1質量%以下とすることがより好ましい。」と記載されており、転動体を構成する鋼に含まれる好ましい炭素の含有量として、「条件B」の「炭素の含有量が0.95質量%以上1.10質量%以下」とすることは、訂正前の本件明細書に記載されていたものである。
b)同【0047】には「・・・ケイ素の含有量は0.3質量%以上とすることが好ましく、0.4質量%以上とすることがより好ましい。ただし、・・・2.2質量%以下とすることが好ましく、0.7質量%以下とすることがより好ましい。また、マンガンの含有量が0.2質量%以上(好ましくは0.9質量%以上)である・・・ただし、2%質量以下とすることが好ましく、1.15質量%以下とすることがより好ましい。」と記載されており、転動体を構成する鋼に含まれる好ましいケイ素の含有量として、「条件B」の、「ケイ素の含有量が0.4質量%以上0.7質量%以下」とすること、「マンガンの含有量が0.9質量%以上1.15質量%以下」とすることは、訂正前の本件明細書に記載されていたものである。
c)同【0049】【0050】には「・・・クロムの含有量は0.5質量%以上とすることが好ましく、0.9質量%以上とすることがより好ましい。0.5質量%未満であると、焼入れ性が低下して十分な硬さが得られなかったり、浸炭窒化処理時に炭化物が粗大化するおそれがある。・・・2質量%以下とすることが好ましく、1.2質量%以下とすることがより好ましい。・・・」と記載されており、転動体を構成する鋼に含まれる好ましいクロムの含有量として、「条件B」の「クロムの含有量が0.9質量%以上1.20質量%以下」とすることは、訂正前の本件明細書に記載されていたものである。
d)ここで、「高炭素クロム軸受鋼」として著名な「SUJ3」の組成については、「SUJ3」の化学成分について記した甲第1、2号証の記載(JISG4805)から、以下のものであるといえる。
炭素(C):0.95~1.10重量%
ケイ素(Si):0.40~0.70重量%
マンガン(Mn):0.90~1.15重量%
クロム(Cr):0.90~1.20重量%
及び残部 鉄(Fe)と不可避的不純物(P:0.025質量%以下、S:0.025質量%以下)でなる鋼材
e)すると、上記a)~c)の訂正後の転動体を構成する鋼の成分に関して、鉄と不可避的不純物以外は、
「炭素の含有量が0.95質量%以上1.10質量%以下炭素」であり、
「ケイ素の含有量が0.4質量%以上0.7質量%以下」であり、
「マンガンの含有量が0.9質量%以上1.15質量%以下」であり、
「クロムの含有量が0.9質量%以上1.20質量%以下」であるものに「限定しており、訂正後の請求項2における「転動体」はその成分組成が「SUJ3」でなるものであるといえる。
f)次に、「条件C」の「転動体」の「表層部の窒素濃度」の上限値(以下、「窒素濃度」の「上限値」という。)、及び、「条件D」の「転動体」の「表層部」の「ケイ素とマンガンとを含有する窒化物の量」の上限値(以下、「窒化物量」の「上限値」という。)について検討する。
f-1)まず、「窒素濃度」については、訂正前の本件明細書【0026】に「・・・窒素濃度が0.2質量%以上であれば効果が顕著であるが、0.45質量%以上がより好ましいことが分かる。一方、・・・表層部の窒素濃度の上限値は2質量%とした。」と記載され、訂正後の「条件C」の「表層部の窒素濃度」の上限値を「0.45質量%」とすることは、訂正前の本件明細書に記載されていたものである。
f-2)次に、「転動体」を構成する鋼がSUJ3である(すなわち「条件B」を充足する)実施例に着目すると、訂正前の本件明細書の【表3】(【0054】)~【表6】(【0057】)において、実施例2~7、9、15、16は転動体の鋼がSUJ3ではないから、SUJ3であるのは、実施例1,8,10,11,13,14,17~22,23,24,25,26~30,31~34,35~39,40,41,42,43である。
さらに、訂正前の実施例23~25,31~34,40~41は残留オーステナイト量の関係式を充足せず、実施例13,14,24,32,33は訂正後の請求項2の条件C及びDを充足しないから、訂正後の請求項2の条件B,C及び上記残留オーステナイト量の関係式も満たすものは、実施例1,8,10,11,17~22,26~30,35~39,42,43である。
そして、それらの中で、「窒化物量」の「上限値」は面積率で「3.57%」であるから、訂正後の「条件D」の「表層部」の「ケイ素とマンガンとを含有する窒化物」の「量」は「面積率」で上限値が「3.57%」であることは、訂正前の本件明細書に記載されていたものである。
f-3)また、「転動体」を構成する鋼がSUJ3であり、かつ、訂正後の請求項2の条件B,C及び上記残留オーステナイト量の関係式をも満たすものの実施例において、「表層部の窒素濃度」の上限値は「0.45質量%」になっていることも確認できる。
g)したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第126条第5項に規定する要件を満たす訂正である。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
(3-1)訂正事項2のうち上記(1-1)に記載の事項を目的とする訂正については、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、特許法第126条第6項に規定する要件を満たす訂正である。
(3-2)訂正事項2のうち上記(1-2)に記載の事項を目的とする訂正については、上記「2.(1-2)」で検討したように、(条件B)炭素の含有量、ケイ素の含有量、マンガンの含有量、クロムの含有量、(条件C)窒素濃度、(条件D)窒化物量は、いずれも訂正後に訂正前の範囲内にあるので、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項に規定する要件を満たす訂正である。
(4)訂正事項2についての結言
以上から、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消して、請求項2を独立形式へ改めることを目的とするものであり、また、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもないから、特許法第126条第1項ただし書き第1、4号、同条第5項及び第6項に規定する要件をいずれも満たす訂正である。
3.訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の本件明細書【0007】【0008】の訂正前の特許請求の範囲に対応する記載を、訂正事項1及び2による訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させて、訂正後の本件明細書【0007】【0008】にするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、特許法第126条第1項ただし書き第3号、同条第5項ないし第6項に規定する要件をいずれも満たす訂正である。
4.訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の本件明細書【0021】の「転がり軸受の音響性能や振動を良好とすることに対してもにも効果的である」との記載が、日本語として意味をなしておらず、「転がり軸受の音響性能や振動を良好とすることに対しても効果的である」の誤記であることは明白であるので、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、特許法第126条第1項ただし書き第2号、同条第5項ないし第6項に規定する要件をいずれも満たす訂正である。
5.訂正事項5について
訂正前の本件明細書【表2】(【0034】)には、試験片に関する「実施例2」~「実施例10」及び「比較例2」~「比較例4」が記載されており、一方、訂正前の本件明細書【表3】(【0054】)には、「円すいころ軸受」に関する「実施例2」~「実施例10」が記載され、【表6】(【0057】)には、「円すいころ軸受」に関する「比較例1」~「比較例3」が記載されている。
【表2】と【表3】~【表6】には異なる実験例が示されているにもかかわらず、同じ「実施例2」~「実施例10」及び「比較例2」~「比較例4」という文言を使用しているため、両者の関係が不明瞭となっている。
そこで、訂正前の本件明細書【0033】に「試験片の表層部の窒素濃度、Si-Mn系窒化物の量、及び寿命を表2に示す。」と記載されていることに基づいて、【表2】の「参考例1」及び「実施例2」~「実施例10」を「試験片1」~「試験片10」に訂正し、「比較例1」~「比較例4」を「比較試験片1」~「比較試験片4」にそれぞれ訂正して、【表2】と【表3】~【表6】の例を区別して、それら不明瞭な記載の解消を図るものだから、明瞭でない記載の釈明を目的とし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、特許法第126条第1項ただし書き第3号、同条第5項ないし第6項に規定する要件をいずれも満たす訂正である。
6.訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の本件明細書【0047】の「マンガンの含有量がが多すぎると」との記載が、日本語として意味をなしておらず、「マンガンの含有量が多すぎると」の誤記であることは明白であるので、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、特許法第126条第1項ただし書き第2号、同条第5項ないし第6項に規定する要件をいずれも満たす訂正である。
7.訂正事項7について
訂正前の本件明細書【表3】(【0054】)~【表6】(【0057】)には、「種々の構成の円すいころ軸受(呼び番号L44649/610)を用意して、寿命試験及び過大静的荷重負荷試験を行った」(【0052】)結果が示されている。
上記「2.」で検討した訂正事項2により「円すいころ軸受」の「転動体」を構成する鋼を「SUJ3」に特定し、訂正後の条件C,D及び残留オーステナイト量の関係式でさらに特定したことにより、訂正前の【表3】~【表6】の一部の実施例の態様がもはや実施例ではなくなる。
具体的には、上記「2.(2)(2-2)f-2)」で検討したように、訂正前の実施例2~7、9、13~16、23~25、31~34、40、41は、訂正後には実施例ではないから、訂正後の本件明細書【表3】(【0054】)~【表6】(【0057】)において、それらを「参考例」と訂正するものである。
したがって、訂正事項7は、訂正後の特許請求の範囲との整合を図るため、訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなる態様を「参考例」に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするもので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、特許法第126条第1項ただし書き第3号、同条第5項ないし第6項に規定する要件をいずれも満たす訂正である。
8.訂正事項8について
訂正事項7により、訂正前の本件明細書【表3】(【0054】)~【表6】(【0057】)に記載されていた実施例の一部が、訂正後に「参考例」に訂正されたことにより、訂正前の本件明細書【0052】【0058】の「実施例1~43、参考例、及び比較例1~3」との記載は訂正後の実施例と一致せず、不明瞭となる。
そのため、訂正事項8は、訂正前の本件明細書【0052】【0058】の「実施例1~43、参考例、及び比較例1~3」と記載されていたものを、訂正後に「実施例、参考例、及び比較例1~3」と訂正するものであるから、訂正後の明細書中の他の記載との整合を図るため、明細書中の記載を訂正するもので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、特許法第126条第1項ただし書き第3号、同条第5項ないし第6項に規定する要件をいずれも満たす訂正である。
9.訂正事項9について
訂正事項9は、本件明細書【0064】の「面積375μm2」との記載を、「面積375μm2」に訂正するものであるところ、「μm2」は「μm2」の誤記であることは明白であるから、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、特許法第126条第1項ただし書き第2号、同条第5項ないし第6項に規定する要件をいずれも満たす訂正である。
10.独立特許要件について
訂正後の特許請求の範囲の請求項2,3に係る発明について、拒絶すべき理由を発見しないので、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項1,2,4,6,9は特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1~4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同条第5項ないし第7項に規定する要件に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-390183