特許拒絶査定不服審判
2018-016300
熱伝導性シート
- 審判番号
- 2018-016300
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-516204外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年12月06日
- 審決日
- 2019年12月03日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】バンドー化学株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-516204「熱伝導性シート」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月 4日国際公開、WO2018/180997〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)3月23日(優先権主張 平成29年3月31日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年5月23日付け:拒絶理由通知書
平成30年7月18日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年9月4日付け :拒絶査定
平成30年12月6日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成30年12月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 シリコーンゴム、熱伝導性フィラー、及び、難燃剤を含み、
前記熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素からなり、
前記難燃剤は、白金系化合物及びトリアゾール系化合物であり、
前記熱伝導性フィラーの配合量は、40~70体積%である
ことを特徴とする熱伝導性シート。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし4に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2及び3に記載された周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:国際公開第2016/031212号
引用文献2:特開平11-140325号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2003-327834号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
ア.「[0025]
(1)熱伝導性樹脂成形品
図1は、本発明の熱伝導性樹脂成形品の厚さ方向に平行な概略断面図である。熱伝導性樹脂成形品1は、樹脂2、熱伝導性フィラー4、及びオイル成分6を有しており、熱伝導性フィラー4が熱伝導性樹脂成形品1の略厚さ方向に配向している。なお、オイル成分6は、樹脂2、熱伝導性フィラー4、及び樹脂2/熱伝導性フィラー4界面等、熱伝導性樹脂成形品1のどの領域に含浸されていてもよい。」
イ.「[0030]
樹脂2としては、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、又はこれらのポリマーアロイ等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体;ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸又はそのエステル、ポリアクリル酸又はそのエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」
ウ.「[0032]
また、上述の樹脂に加え、補強剤、充填剤、軟化剤、難燃剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、老化防止剤、粘着付与剤、帯電防止剤、練り込み接着剤等の一般的な配合・添加剤は任意に選択することができるが、架橋剤としては硫黄系の架橋剤を用いないことが好ましい。」
エ.「[0033]
熱伝導性フィラー4としては、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の材料を用いることができ、例えば、窒化ホウ素(BN)、黒鉛、炭素繊維、雲母、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、シリカ、酸化亜鉛、二硫化モリブデン、銅、アルミニウムなどが挙げられるが、窒化ホウ素(BN)、黒鉛、炭素繊維を用いることが好ましく、ピッチ系の炭素繊維を用いることがより好ましい。ここで、窒化ホウ素(h-BN:鱗片状)はピッチ系の炭素繊維と同様にフィラー長手方向の熱伝導性に優れる(面方向熱伝導率:数W/mK、長手方向熱伝導率:100W/mK~200W/mK)ため、シート厚み方向へのフィラー長軸配向により、当該方向に高い熱伝導率を付与することができる。」
オ.「[0044]
樹脂2に対する熱伝導性フィラー4の割合は20~80体積%とすることができ、必要とされる熱伝導率等に応じて、適宜決定することができる。熱伝導性フィラーの割合が20体積%未満の場合は、熱伝導効果が小さくなる。また、熱伝導性フィラーの割合が80体積%を超えると、樹脂シート前駆体が第一ギャップを通過する際に、第一ギャップにおける流れの方向に対して略垂直方向に折り畳まれるものの、樹脂間が融着しづらくなるという不具合が生じる。熱伝導性フィラーの割合が20体積%未満の場合は、熱伝導効果が小さくなる。また、熱伝導性フィラーの割合が80体積%を超えると、樹脂シート前駆体が第一ギャップを通過する際に、第一ギャップにおける流れの方向に対して略垂直方向に折り畳まれるものの、樹脂間が融着しづらくなるという不具合が生じる。したがって、樹脂シートの熱伝導効果を高めて、かつ押出成形を容易にするために、樹脂基材に対する熱伝導性フィラーの割合は30~70体積%とすることが好ましく、50~65体積%とすることがより好ましい。また、加工時の融着促進や成型品の柔軟化を目的とし、0体積%超~50体積%のオイル成分を含有してもよい。なお、より好ましいオイル成分の含有量は10体積%~40体積%である。」
カ.「[0047]
≪実施例1≫
表1に記載の配合にて、シリコーン樹脂成分に架橋剤ならびに熱伝導性フィラーを2本ロールで練り込み、リボンシートを得た。シリコーン樹脂成分として、東レダウコーニング(株)製シリコーンゴムDY32 1005U並びに難燃剤成分を、熱伝導性フィラーとして、日本グラファイトファイバー(株)製グラノックXN100(ピッチ系炭素繊維、繊維長3mm)を用いた。架橋剤としては、東レダウコーング(株)製RC-4、同社製MR-53、Momenntive社製ME400‐FRを用いた。難燃剤成分としては,酸化鉄などの金属化合物を含有したものが好ましく、Momenntive社製ME-41F並びに同社製XC-87を用いた。」
キ.「[0048]
[表1]
」
ク.「[0049]
次に、当該リボンシートをゴム用短軸押出機にて、1mmの第一ギャップ及び10mmの第二ギャップを有する垂直配向金型(口金)を用いて、ピッチ系炭素繊維が厚さ方向に配向した厚さ10mmのシートを作製し、180℃で30分間の架橋処理を施した。当該シートをスライス加工し、厚さ200μmの熱伝導性樹脂成形品を作製した。更に、シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、信越シリコーン、KF-96-100CS)をシリコーン樹脂とピッチ系炭素繊維並びにシリコーンオイルから構成される樹脂成形品に対し8.0体積%となるようにディップ(浸漬)処理にて含浸・吸収させた。」
ケ.「[0059]
≪実施例7≫
表1に記載の配合にて、シリコーン樹脂成分に架橋剤並びに熱伝導性フィラー、シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、信越シリコーン、KF-96-3000CS)を2本ロールで練り込み、リボンシートを得た。熱伝導性フィラーとして、電気化学工業(株)製窒化ホウ素(XGP、D50 30μm)を用いた。次に、当該リボンシートをゴム用短軸押出機にて、1mmの第一ギャップ及び10mmの第二ギャップを有する垂直配向金型(口金)を用いて、ピッチ系炭素繊維が厚さ方向に配向した厚さ10mmのシートを作製し、180℃で30分間の架橋処理を施した。当該シートをスライス加工し、厚さ300μmの熱伝導性樹脂成形品を作製した。実施例1と同様に、熱伝導性樹脂成形品の厚さ方向の熱抵抗及び長手方向の難燃性を評価し、結果を表1に示した。」
上記ア.によれば、熱伝導性樹脂成形品1は、樹脂2、熱伝導性フィラー4を有するものである。
上記イ.及びカ.によれば、樹脂2として、シリコーン樹脂を選択でき、その成分としてシリコーンゴム並びに難燃剤成分を用いるものである。
上記エ.、キ.及びケ.によれば、熱伝導性フィラー4として、窒化ホウ素を用いるものである。
上記ウ.によれば、樹脂に加える難燃剤等の一般的な配合・添加剤は、任意に選択することができるものである。
上記オ.によれば、熱伝導性フィラーの割合を50~65体積%とするものである。
上記カ.、ク.及びケ.によれば、シリコーン樹脂成分に熱伝導性フィラーなどを2本ロールで練り込んでリボンシートを得、当該リボンシートをゴム用短軸押出機にてシートを作製し、当該シートをスライス加工して熱伝導性樹脂成形品を作製するものである。
そうすると、上記摘示事項を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 シリコーンゴム、熱伝導性フィラー4、及び、難燃剤成分を有し、
前記熱伝導性フィラー4として、窒化ホウ素が用いられ、
前記難燃剤成分は、任意に選択することができ、
前記熱伝導性フィラー4の割合を50~65体積%とする、
熱伝導性樹脂成形品1であって、
シリコーンゴム、熱伝導性フィラー4、及び、難燃剤成分を練り込み押出機にて作製したシートをスライス加工して作製される熱伝導性樹脂成形品1。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明の「熱伝導性樹脂成形品1」は、「シリコーンゴム、熱伝導性フィラー4、及び、難燃剤成分を練り込み押出機にて作製したシートをスライス加工して作製される」ものであるから、「熱伝導性樹脂成形品1」もシートであると認められる。
したがって、引用発明の「熱伝導性樹脂成形品1」は、本願発明の「熱伝導性シート」に相当する。
イ.引用発明の「シリコーンゴム」、「熱伝導性フィラー4」及び「難燃剤成分」は、それぞれ本願発明の「シリコーンゴム」、「熱伝導性フィラー」、及び、「難燃剤」に相当する。
ただし、「難燃剤」について、本願発明は「白金系化合物及びトリアゾール系化合物」であるのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない点で相違する。
ウ.引用発明の「前記熱伝導性フィラー4として、窒化ホウ素が用いられ」ることは、本願発明の「前記熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素からな」ることに相当する。
エ.引用発明において「前記熱伝導性フィラー4の割合」は「50~65体積%」であり、本願発明の「40~70体積%」の範囲に含まれる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「 シリコーンゴム、熱伝導性フィラー、及び、難燃剤を含み、
前記熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素からなり、
前記熱伝導性フィラーの配合量は、40~70体積%である
ことを特徴とする熱伝導性シート。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
「難燃剤」について、本願発明は「白金系化合物及びトリアゾール系化合物」であるのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない点。
第6 判断
上記相違点1について検討する。引用発明において「難燃剤成分は、任意に選択することができ」るものである。
また、「白金系化合物」及び「トリアゾール系化合物」は周知の難燃剤であって、これらを組合せることで難燃性が向上することも、本願の優先日前に周知技術である(必要であれば、特開平11-140325号公報(原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献2)の段落【0003】、【0007】及び【0008】、特開2003-327834号公報(同引用文献3)の段落【0002】、【0005】及び【0018】-【0019】、及び、特開2002-3831号公報の段落【0008】及び【0010】を参照。)。
したがって、引用発明において、「難燃剤成分」として「白金系化合物」及び「トリアゾール系化合物」を採用して上記相違点1の構成にすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、「白金系化合物」及び「トリアゾール系化合物」の添加により難燃性の向上が見込めるところ、難燃性の向上によって、燃焼試験をしたときの燃焼時間の値はどの厚さのサンプルでも小さくなることが予測されるから、厚さに依らず優れた難燃性を示すことは予測される範囲内の効果にすぎず、本願発明の作用効果は、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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