特許拒絶査定不服審判
2018-004730
電子機器、プログラムおよび制御方法
- 審判番号
- 2018-004730
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-153681外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年04月06日
- 審決日
- 2019年06月10日
- 公報発行日
- 2019年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H04M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-153681「電子機器、プログラムおよび制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月12日出願公開、特開2018-110370〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成29年1月4日に出願した特願2017-232号の一部を、平成29年8月8日に新たな特許出願としたものであって、平成29年9月29日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年12月5日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年12月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成30年4月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、平成31年2月6日付けで拒絶理由通知がされ、平成31年4月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成31年4月11日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
近接センサと、
通信ユニットと、
前記通信ユニットによって電話の着信を検出すると、前記近接センサによって検出されたジェスチャがディスプレイに表示される指示方向に沿うジェスチャである場合に、応答するコントローラと、を備え、
前記着信の応答の前記近接センサによって検出されたジェスチャのジェスチャ方向は、
タッチパネルで着信応答する際のディスプレイに表示されるタッチ方向と同じである、ことを特徴とする電子機器。」
第3 当審における拒絶の理由
当審における拒絶の理由(進歩性)は、この出願の請求項1ないし8に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2乃至3に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
1.特開2013-235588号公報
2.技術評論社編集部,「ゼロからはじめる ドコモ Galaxy S6 SC-05G スマートガイド」,初版,株式会社技術評論社,2015年7月25日,p.43
3.技術評論社編集部,「ゼロからはじめる ドコモ GALAXY Note Edge SC-01G スマートガイド」,初版,株式会社技術評論社,2015年1月15日,p.51
第4 引用文献
1.引用文献1
当審の拒絶の理由(進歩性)で引用された特開2013-235588号公報(平成25年11月21日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0010】
本発明の他の態様による端末は、端末に近接して特定方向に動く使用者ジェスチャーを感知するセンサー部と、前記端末の運動状態及び車両の運動状態のうちの少なくとも1つに基づいて運転モードを開始し、該運転モードでセンサー部によって前記端末に近接した使用者ジェスチャーが感知されると、前記使用者ジェスチャーに対応する機能を行う制御部と、前記制御部の制御によって機能の遂行結果を表示する表示部と、を備える。」
「【0017】
本発明は、スマートフォン、携帯端末、移動端末、個人情報端末(PDA)、PMP(Portable Multimedia Player)端末、ノート型パソコン、タブレットコンピューター、PC、ワイブロ(Wibro)端末、デジタルカメラ、ゲームコンソール、MP3プレーヤー、ハンドヘルド電子ブック、ナビゲーション、HDTVなどの一般的な電子端末だけではなく、空間上のジェスチャーを感知することができる全ての装置又はサービスのために適用される。」
「【0021】
図1は、本発明の一実施形態による空間上のジェスチャーを用いて端末を制御する方法を示したフローチャートである。」
「【0023】
先ず、端末は空間上のジェスチャーを感知する(ステップS110)。」
「【0026】
また、端末は空間上のジェスチャーと共にタッチ入力を感知する。端末は空間上のジェスチャーとタッチ入力を同時に又は順次に感知する。また、端末はタッチ入力が持続する間の空間上のジェスチャーを感知することもできる。
【0027】
次に、端末は感知された空間上のジェスチャーを分析する(ステップS120)。
【0028】
端末は入力された映像を分析したり近接センサーを用いて空間上のジェスチャーを感知したりする。端末は、入力手段が1つ以上の方向を向いたり任意の形態を形成したりする動き(掃いてから捲る、スイープ等に命名する)、動きの速度、動きの長さ、入力手段の模様(例えば、手又は指の模様、形態)又は入力手段が接近する1つ以上の座標、接近速度、接近距離などを分析する。」
「【0055】
図1に戻って、ステップS120の後に、端末は分析結果に対応する任意の動作を決定する(ステップS130)。」
「【0058】
端末は機能モードに基づいて空間上のジェスチャーに対応する任意の動作を決定する。」
「【0064】
その後、端末は任意の動作を行う(ステップS140)。例えば、決定された空間上のジェスチャーに基づいて、端末は決定された空間上のジェスチャーに対応する動作を決める。」
「【0066】
以下、空間上のジェスチャーを用いて端末が多様な任意の動作を行う具体的な実施例を、図面を参照しながら説明する。」
「【0093】
図32は、本発明の第6実施例による端末制御方法を示した図である。
【0094】
図32を参照すると、端末は入力手段の任意の方向に向ける動き又は端末に近接する入力手段のジェスチャーを感知する。例えば、端末は任意の方向に移動する手の動き又は端末の任意の位置に近接する指を感知する。
【0095】
端末は、感知された動きの方向、速度又は近接する指の座標、距離などを分析する。
【0096】
端末は分析結果に基づいて任意の動作を行う。」
「【0102】
図34は、本発明の第8実施例による端末の制御方法を示した図である。
【0103】
図34を参照すると、端末は任意の方向に向ける動きを感知してこれを分析する。また、端末は、端末の機能モードに基づいて任意の動作を行う。
【0104】
端末は、速度/加速度センサー、ジャイロセンサーなどを介して端末が運転モードか否かを判断する。また、端末は、通話を受信した場合、任意の方向に向かう動きが感知されると、コールを受信したり又はコールを拒絶して運転中であることを知らせるメッセージをコールの相手に送出したりする。また、端末は運転モードの中で音楽のボリュームを調節したりメッセージを送受信する動作を行ったりすることもできる。例えば、空間上のジェスチャーは端末の運転モードで端末を制御するためのハンズフリー手段として用いることができる。」
「【0108】
図36は、本発明の一実施形態による端末の構成を示すブロック図である。【0109】
図36を参照すると、端末100は、入力部110、センサー部120、制御部130、カメラ部140、貯蔵部150、及び表示部160を含んで構成される。」
「【0111】
センサー部120は、タッチセンサー部121、近接センサー部122、速度/加速度センサー部123、及びジャイロセンサー部124を含んで構成される。」
「【0113】
タッチセンサー部120は、表示部160と相互レイヤー構造を有することによってタッチスクリーンとして作動することができる。この時、タッチセンサー部120は、表示部160の特定部位に加えられた圧力又は表示部160の特定部位に発生する静電容量などの変化を電気的な入力信号に変換するように構成される。タッチセンサー部120は、タッチされる位置及び面積だけではなく、タッチ時の圧力までも検出するように構成される。
【0114】
タッチセンサー部120によってタッチ入力が感知された場合、タッチセンサー部120は、それに対応する信号を処理して制御部130に送信する。これによって、制御部130は、表示部160のどの領域がタッチされたかなどが分かる。
【0115】
近接センサー部122は、表示部160によって包まれる端末100の内部領域又は表示部160の近くに配置される。近接センサー部122は、所定の検出面に近付く物体、或いは近傍に存在する物体の有無を電子系の力又は赤外線を利用して機械的接触なしに検出する。この時、表示部160はタッチスクリーンであり得る。」
「【0120】
制御部130は、端末100の各構成要素に対する全般的な動作を制御する。例えば、制御部130は、端末100に対する空間上のジェスチャーを感知し、これを分析し、分析結果に基づいて任意の動作を決定し、これを行うように端末100を制御する。」
「【図1】
」
「【図34】
」
まず、引用文献1には、一実施形態の端末について以下の点が記載されているといえる。
引用文献1の【0021】,【0023】及び【0028】の記載によれば、引用文献1の一実施形態の端末は近接センサーを備え、近接センサーによって、空間上のジェスチャーを感知するものである。
そして、引用文献1の【0027】,【0055】及び図1の記載によれば、引用文献1の一実施形態の端末は、感知された空間上のジェスチャーを分析する(ステップS120)ものであり、ステップS120の後に、端末は分析結果に対応する任意の動作を決定する(ステップS130)ものである。
引用文献1の【0058】及び【0064】の記載によれば、一実施形態の端末は、機能モード及び決定された空間上のジェスチャーに基づいて、対応する動作を決定し、任意の動作を行う(ステップS140)ものである。
また、引用文献1の【0026】の記載によれば、一実施形態の端末は、空間上のジェスチャーとタッチ入力を同時に感知するものである。
引用文献1の【0108】,【0109】及び【0120】の記載によれば、引用文献1の一実施形態による端末の構成に制御部130が含まれ、制御部130は、端末100に対する空間上のジェスチャーを感知し、これを分析し、分析結果に基づいて任意の動作を決定し、これを行うように端末100を制御するものである。
次に、引用文献1の【0066】,【0093】及び【0102】の記載によれば、一実施形態による端末制御方法について、空間上のジェスチャーを用いて端末が多様な任意の動作を行う具体的な実施例が明細書に説明されており、第6実施例及び第8実施例はその具体的な実施例の1つである。
したがって、第6実施例及び第8実施例は、一実施形態と同様に、空間上のジェスチャーを感知すると、これを分析し、当該分析結果に対応する任意の動作を決定することを前提としたものである。
引用文献1の【0094】及び【0095】の記載によれば、第6実施例の端末は、感知されたジェスチャーについて、感知された動きの方向、速度又は近接する指の座標、距離などを分析するものである。
引用文献1には、第8実施例の端末について以下の点が記載されているといえる。
引用文献1の【0104】の記載によれば、第8実施例の端末は通話を受信するから、通話を受信するためのユニットを備えるものである。また、同段落の記載によれば、第8実施例の端末は、運転モードか否かを判断し、通話を受信した場合、任意の方向に向かう動きが感知されると、コールを受信したり又はコールを拒絶して運転中であることを知らせるメッセージをコールの相手に送出したりするものである。
また、引用文献1の【0102】及び【0103】の記載によれば、第8実施例の端末は、任意の方向に向ける動きを感知してこれを分析し、端末の機能モードに基づいて任意の動作を行うものであり、【0103】で参照されている図34には、白抜き矢印の方向に手を動かすことが記載されているから、第8実施例の端末は、白抜き矢印の方向に手を動かすことで所定の動作が行われるものである。
ここで、第8実施例について、【0104】には、「端末は、通話を受信した場合、任意の方向に向かう動きが感知されると、コールを受信したり又はコールを拒絶して運転中であることを知らせるメッセージをコールの相手に送出したりする。」と記載されており、「コールを受信」する動作又は「コールを拒絶して運転中であることを知らせるメッセージをコールの相手に送出」する動作は、同時にいずれか一方しか行うことができないから、端末は、任意の方向に向かう動きが感知された場合は、両方の動作を行うのではなく、どちらか一方の動作を選択的に行うものである。
【0103】に記載されているように、第8実施例の端末は、任意の方向に向ける動きを感知すると、これを分析し、任意の動作を行うものであり、【0027】,【0055】,【0120】及び図1に記載されているように、当該分析結果に対応して端末が行う任意の動作が決定されるといえる。そして、ここでの分析とは、【0095】に記載されているように、動きの方向、速度などを分析することである。
そうすると、第8実施例の端末は、空間上のジェスチャーとして、手の任意の方向に向ける動きを感知してこれを分析し、その分析結果に対応して、2種類の動作を選択的に行うから、分析結果には動きの方向が含まれ、2種類の動作のうち分析された動きの方向に対応した動作を決定していることは明らかである。
したがって、第8実施例の端末は、図34の白抜き矢印の方向に手を動かすと、その動きを感知してこれを分析し、その分析結果である動きの方向(白抜き矢印の方向)に対応して、コールを受信する動作又はコールを拒絶する動作(2種類の動作)のうちの一方の動作を決定するといえる。
以上によれば、第8実施例の端末は、図34の白抜き矢印の方向に手を動かすことで、コールを受信する動作又はコールを拒絶する動作のいずれかが行われるものである。
引用文献1の図34には、端末に、コールを受信するアイコン(同図の左側アイコン)、コールを受信するアイコンを始点とした線付きの矢印(白抜きの三角形ではない)、コールを受信するアイコン及び当該線付きの矢印を囲む長円、さらには、コールを拒否するアイコン(同図の右側アイコン)が表示されている。ここで、コールを受信するアイコン及び当該アイコンを始点とした線付きの矢印が長円で囲まれていることから、当該線付きの矢印はコールを受信する動作に関する表示を行っているといえる。
引用文献1の図34の記載によれば、同図に示された手の動きを示す白抜き矢印の方向は、端末に表示された線付きの矢印と同方向であるから、第8実施例の端末は、図34の白抜き矢印の方向に手を動かすと、コールを受信する動作を決定するものである。
また、引用文献1の【0115】及び図34の記載によれば、端末において、コールを受信するアイコン、コールを受信するアイコンを始点とした線付きの矢印、コールを受信するアイコン及び当該線付きの矢印を囲む長円、さらには、コールを拒否するアイコンが表示されている表示部160は、タッチスクリーンである。
そして、コールを受信するアイコンを始点とした線付きの矢印は、タッチスクリーンに表示される矢印であり、上述したように、コールを受信する端末の制御方法が行われるときの手を動かす方向(白抜き矢印の方向)と同じである。
引用文献1の【0026】の記載によれば、第8実施例の端末も一実施形態の端末と同様に、空間上のジェスチャーとタッチ入力を同時に感知するものである。
さらに、引用文献1の【0111】,【0113】及び【0114】の記載によれば、第8実施例の端末は、タッチ入力を感知するタッチセンサー部を備え、空間上のジェスチャーと同時にタッチ入力を感知するものであり、タッチセンサー部はタッチスクリーンとして作動するものである。
引用文献1の【0017】の記載によれば、引用文献1の発明は、スマートフォンに適用されるから、引用文献1の第8実施例の端末はスマートフォンであるといえる。
上記記載によれば、引用文献1には、
「近接センサーと、
通話を受信するためのユニットと、
当該通話を受信するためのユニットによって、通話を受信すると、近接センサーによって感知された空間上のジェスチャーを分析し、スマートフォンのタッチスクリーンに表示された矢印(線付きの矢印)と同方向に、手を動かすことで、コールを受信する又はコールを拒絶するスマートフォンの制御方法を行う制御部130と、
タッチ入力を感知し、タッチスクリーンとして作動するタッチセンサー部を備え、
空間上のジェスチャーとタッチ入力を同時に感知し、
タッチスクリーンに表示される矢印(線付きの矢印)の方向は、コールを受信するスマートフォンの制御方法が行われるときの手を動かす方向と同じである、スマートフォン。」(以下、「引用発明」という。)
が記載されている。
2.引用文献2,3
当審の拒絶の理由(進歩性)で引用された「技術評論社編集部,「ゼロからはじめる ドコモ Galaxy S6 SC-05G スマートガイド」,初版,株式会社技術評論社」(平成27年7月25日発行。以下、「引用文献2」という。)の43ページには、次の記載がある。
「
」
また、当審の拒絶の理由(進歩性)で引用された「技術評論社編集部,「ゼロからはじめる ドコモ GALAXY Note Edge SC-01G スマートガイド」,初版,株式会社技術評論社」(平成27年1月15日発行。以下、「引用文献3」という。)の51ページには、次の記載がある。
「
」
引用文献2の43ページ及び引用文献3の51ページには、
「スマートフォンで電話を受ける際の操作方法について、着信画面として、電話を受信するアイコンと着信拒否のアイコンとともに、電話を受信するアイコンから着信拒否のアイコンに向かうマーク(“>>>”または“>>>>”)が表示され、電話を受信するアイコンを右方向、すなわち、マークと同じ方向にドラッグすることで電話を受けること」が記載されている。
そして、一般的なタッチパネルを備えるスマートフォンは、タッチパネルにタッチしながらドラッグするから、
「電話を受信するアイコンと着信拒否のアイコンとともに、電話を受信するアイコンから着信拒否のアイコンに向かうマークが着信画面に表示されるスマートフォンにおいて、タッチ方向をマークで示される方向と同じ方向とすることで電話を受けるように、ユーザインターフェイスを設計すること」(以下、「周知技術」という。)は周知である。
第5 対比
本願発明と、引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における「近接センサー」は、本願発明における「近接センサ」に相当する。
(イ)本願明細書の【0018】の記載によれば、本願発明における「通信ユニット」とは、「有線または無線により通信するためのインタフェース」である。
引用発明は、「通話を受信するためのユニット」を備えるが、「通話」とは電話で話をすることであり通信の一種である。また、通話は有線または無線で行われるものである。
したがって、引用発明における「通話を受信するためのユニット」は、本願発明における「通信ユニット」に相当する。
(ウ)引用発明における「通話を受信する」ことは、本願発明における「電話の着信を検出する」ことに相当する。
(エ)引用発明における「空間上のジェスチャー」は、本願発明における「ジェスチャ」に相当し、引用発明における「近接センサーによって感知された空間上のジェスチャー」は、本願発明における「近接センサによって検出されたジェスチャ」に対応する。
(オ)引用発明における「タッチスクリーン」は表示部160であるから、本願発明における「ディスプレイ」に相当し、引用発明における「スマートフォンのタッチスクリーンに表示される矢印(線付きの矢印)」は、スマートフォンの制御方法を行うために手を動かす方向を示すものであるから、本願発明における「ディスプレイに表示される指示方向」を示す矢印といえる。
そして、引用発明における「スマートフォンのタッチスクリーンに表示された矢印(線付きの矢印)と同方向に、手を動かすこと」は、本願発明における「ジェスチャがディスプレイに表示される指示方向に沿うジェスチャである」ことといえる。
(カ)引用発明における「コールを受信する」ことは、本願発明における「応答する」こと、「着信の応答」あるいは「着信応答」に相当する。
(キ)引用発明における「制御部130」は、本願発明における「コントローラ」に相当する。
(ク)引用発明における「タッチセンサー部」は、本願発明における「タッチパネル」に相当する。
(ケ)引用発明は、「タッチスクリーンに表示される矢印(線付きの矢印)の方向」が「コールを受信する又はコールを拒絶するスマートフォンの制御方法が行われるときの手を動かす方向と同じである」から、引用発明と本願発明とは、「着信の応答の近接センサによって検出されたジェスチャのジェスチャ方向」は、「着信応答する際のディスプレイに表示される」方向と同じである点で共通する。
(コ)引用発明における「スマートフォン」は、「電子機器」であるといえる。
上記(ア)~(コ)より、本願発明と引用発明との一致点は、次のとおりである。
【一致点】
「近接センサと、
通信ユニットと、
通信ユニットによって電話の着信を検出すると、近接センサによって検出されたジェスチャがディスプレイに表示される指示方向に沿うジェスチャである場合に、応答するコントローラと、
タッチパネルとを備え、
着信の応答の近接センサによって検出されたジェスチャのジェスチャ方向は、着信応答する際のディスプレイに表示される方向と同じである、
電子機器。」
一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
【相違点】
一致点の「着信の応答の近接センサによって検出されたジェスチャのジェスチャ方向は、着信応答する際のディスプレイに表示される方向と同じである」点について、本願発明では、「着信の応答の近接センサによって検出されたジェスチャのジェスチャ方向」は、「タッチパネルで着信応答する際」のディスプレイに表示される「タッチ方向」と同じであるのに対して、引用発明には、「タッチパネルで着信応答する」際の「タッチ方向」について特定されていない点。
第6 判断
1.相違点の検討
以下で【相違点】について検討する。
引用発明は、第4の「1.引用文献1」で述べたように、タッチ入力を感知するタッチセンサー部を備え、空間上のジェスチャーとタッチ入力を同時に感知し、コールを受信するアイコン、コールを拒否するアイコンとともに、コールを受信するアイコンを始点とした線付きの矢印が表示されるものである。
そして、第4の「2.引用文献2,3」で述べたように、電話を受信するアイコンと着信拒否のアイコンとともに、電話を受信するアイコンから着信拒否のアイコンに向かうマークが着信画面に表示されるスマートフォンにおいて、タッチ方向をマークで示される方向と同じ方向とすることで電話を受けるように、ユーザインターフェイスを設計することは周知技術である。
引用発明及び引用文献2,3に記載された周知技術は、ともにタッチ入力を感知するタッチパネルを備え、着信を受けるスマートフォンに関するものであって、電話を受信するアイコンと着信拒否のアイコンとともに、電話を受信するアイコンから着信拒否のアイコンに向かうマークが着信画面に表示されるものである。
したがって、タッチパネルを備えるスマートフォンである引用発明において、タッチ方向を、ディスプレイに表示される線付き矢印(コールを受信するアイコンからコールを拒否するアイコンに向かう矢印)の方向と同じタッチ方向とすることでコールを受信する、すなわち、着信に応答するようにして、着信の応答の近接センサによって検出されたジェスチャのジェスチャ方向を、タッチパネルで着信応答する際のディスプレイに表示されるタッチ方向と同じである構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
次に、本願発明が奏する作用効果についても検討しておく。
本願明細書の【0050】には、本願発明が奏する作用効果に関連して、第1モード(通常モード)における接触操作と、それに対応する第2モード(キッチンモード)におけるジェスチャ操作との共通性または類似性をもたせることで、両者に一貫性があるため、ユーザは直感的な操作が可能であることが記載されている。
しかし、着信に応答するようにして、着信の応答の近接センサによって検出されたジェスチャのジェスチャ方向を、タッチパネルで着信応答する際のディスプレイに表示されるタッチ方向と同じである構成とすれば、着信応答する際のジェスチャ方向とタッチ方向が共通した一貫性のあるものとなることは明らかであるから、本願発明の作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得るものである。
2.請求人の主張について
審判請求人は、平成31年4月11日に提出された意見書において、
「本願発明は、「着信の応答の近接センサによって検出されるジェスチャのジェスチャ方向は、タッチパネルで着信応答する際のディスプレイに表示されるタッチ方向と同じである」ことを特徴に含むものです。
これに対し、引用文献1は、「任意の方向に向かう動き」の感知によりコールを受信することを教示しており、「着信の応答の近接センサによって検出されるジェスチャのジェスチャ方向がタッチパネルで着信応答する際のディスプレイに表示されるタッチ方向と同じである」ことも記載はなく、上述した本願発明の特徴を、開示も示唆もしていません。」と主張している。
しかしながら、第4の「1.引用文献1」で述べたように、引用発明は、「任意の方向に向かう動き」の感知によりコールを受信するものではなく、空間上のジェスチャーとして、手の任意の方向に向ける動きを感知してこれを「分析」し、その「分析結果」である動きの方向に対応して、コールを受信する動作又はコールを拒絶する動作(2種類の動作)のうちの一方の動作を決定するものである。
そして、引用発明において周知技術を勘案すれば、着信の応答の近接センサによって検出されたジェスチャのジェスチャ方向を、タッチパネルで着信応答する際のディスプレイに表示されるタッチ方向と同じである構成とすることは、第6の「1.相違点の検討」で述べたように、当業者が容易に想到し得たことである。
第7 むすび
上記のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-004730