特許異議申立
2017-701087
球状アルミナ粒子の粉体とその製造方法
- 審判番号
- 2017-701087
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-057678外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年11月17日
- 審決日
- 2018年09月20日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1652.113-YAA(C01F) / P1652.121-YAA(C01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6134548号発明「球状アルミナ粒子の粉体とその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6134548号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第6134548号の請求項2に係る特許を維持する。
特許第6134548号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6134548号の請求項1~4に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成25年 3月21日に出願され、平成29年 4月28日に設定登録がされ、平成29年 5月24日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許のうち、請求項1、2に係る特許について、平成29年11月17日付けで特許異議申立人 大井四郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年 1月30日付けで取消理由が通知され、平成30年 4月 2日付けで訂正の請求及び意見書の提出がされ、平成30年 5月18日付けで申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
平成30年 4月 2日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付の訂正特許請求の範囲のとおり訂正するもので、以下の訂正事項1~3からなるものである(下線部は、訂正箇所)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記メジアン径は50nm以上で500nm以下で、前記1次粒子のピークは50nm以上で500nm以下にあることを特徴とする、請求項1の球状アルミナ粒子の粉体。」
とあるのを、
「球状アルミナ粒子の粉体において、
レーザ光散乱法による粒子径の体積頻度は、メジアン径が50nm以上で500nm以下で、
前記体積頻度は、50nm以上で500nm以下に球状の1次粒子のピークを持ち、
前記体積頻度は、1000nm超にはピークがないかあるいは2次粒子のピークを持ち、2次粒子のピークを持つ場合、粒子径の対数を横軸として、2次粒子ピークの高さと1次粒子のピークの高さとの比が0.5以下であり、
かつX線回折での2θが45.0°以上46.2°以下のピークの半値幅が、X線回折装置に固有の半値幅を除いた真値で1°以下であることを特徴とする、球状アルミナ粒子の粉体。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「気体状のハロゲン化アルミニウムと、酸素と可燃性ガスとして水素を含む火炎中で、前記ハロゲン化アルミニウムから球状のアルミナ粒子を形成する方法において、
前記火炎の断熱火炎温度が3000K以上で5000K以下である、請求項1記載のアルミナ粉体の製造方法。」
とあるのを、
「気体状のハロゲン化アルミニウムと、酸素と可燃性ガスとして水素を含む火炎中で、前記ハロゲン化アルミニウムから、
レーザ光散乱法による粒子径の体積頻度は、メジアン径が50nm以上で1000nm以下で、
前記体積頻度は、50nm以上で1000nm以下に球状の1次粒子のピークを持ち、
前記体積頻度は、1000nm超にはピークがないかあるいは2次粒子のピークを持ち、2次粒子のピークを持つ場合、粒子径の対数を横軸として、2次粒子ピークの高さと1次粒子のピークの高さとの比が0.5以下であり、
かつX線回折での2θが45.0°以上46.2°以下のピークの半値幅が、X線回折装置に固有の半値幅を除いた真値で1°以下である、球状のアルミナ粒子を形成する方法において、
前記火炎の断熱火炎温度が3000K以上で5000K以下である、アルミナ粉体の製造方法。」
に訂正する。
請求項3の訂正に伴って、請求項4と請求項1との引用関係も解消する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び独立特許要件
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が、直接又は間接的に請求項1を引用しているものであるから、本件訂正は、一群の請求項1~4について請求されたものである。
(5)独立特許要件
特許異議の申立てがされていない請求項3は、上記訂正事項3によって訂正されるが、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、また、請求項3を引用する請求項4も実質的に訂正されるものではないから、当該訂正後の請求項3、4は、独立特許要件の判断を要しない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項で準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 特許異議申立てについて
1 本件発明の認定
本件訂正請求により訂正された請求項2に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所)。
【請求項1】(削除)
【請求項2】
球状アルミナ粒子の粉体において、
レーザ光散乱法による粒子径の体積頻度は、メジアン径が50nm以上で500nm以下で、
前記体積頻度は、50nm以上で500nm以下に球状の1次粒子のピークを持ち、
前記体積頻度は、1000nm超にはピークがないかあるいは2次粒子のピークを持ち、2次粒子のピークを持つ場合、粒子径の対数を横軸として、2次粒子ピークの高さと1次粒子のピークの高さとの比が0.5以下であり、
かつX線回折での2θが45.0°以上46.2°以下のピークの半値幅が、X線回折装置に固有の半値幅を除いた真値で1°以下であることを特徴とする、球状アルミナ粒子の粉体。
2 証拠方法
申立人から提出された証拠は、以下の甲第1号証~甲第5号証である。
甲第1号証:特開2000-1333号公報
甲第2号証:「ADMAFINE」、アドマテックス社製品カタログ、
平成22年6月
甲第3号証:アドマファインAO-502のX線回折装置によるスペクトル
測定結果
甲第4号証:アドマファインAO-502のレーザー回折式粒度分布計(株
式会社堀場製作所、HORIBA、LA-500)による粒度
分布測定結果
甲第5号証:アドマファインAO-502のSEM写真
3 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して、平成30年 1月30日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
4 当審の判断
(1)取消理由についての判断
本件特許の請求項1は、本件訂正請求により削除されたことにより,上記取消理由は解消した。
(2)取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
本件請求項1について、申立人は、甲第1号証に記載された発明である旨の上記取消理由で採用した理由の他に、甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張しているが、上記のとおり、本件請求項1は本件訂正請求により削除されたため、本件請求項1についての特許異議の申立ては対象を欠くことになった。
次に、申立人は、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、または、甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張しているので、以下に検討する。
(ア)甲第1号証~甲第5号証の記載事項
甲第1号証
アドマファインAO-502がd50=0.7μmであるアルミナ球状粒子であることが記載されている(【0030】、【0069】)。
甲第2号証
甲第2号証の9ページによれば、アドマファインAO-502は、球状のアルミナ粒子であって、体積平均粒径が0.7μm以下であること、及び9ページの粒度分布を示す図によれば、体積頻度のピークは0.7μm近傍であり、1μm超に2次粒子のピークがないことが記載されていると認められ、8ページには、 前記粒度分布は、レーザー回折式粒度分布計によって測定されたものであることが記載されている。
甲第3号証
アドマファインAO-502についてX線回折装置により3つのロット(lot PZF102、lot PAH092、lot PBI062)を測定したスペクトルが記載され、これらの3つのロットは、X線回折での2θが45.0°以上46.2°以下のピークの半値幅が、概ね0.2°程度であると認められる。
甲第4号証
アドマファインAO-502のレーザー回折式粒度分布計LA-500による粒度分布測定結果について記載され、これによれば、メジアン径は、それぞれlot PZF102が0.63μm、lot PAH092が0.58μm、lot PBI062が0.56μmである。
甲第5号証
アドマファインAO-502のSEM写真である。甲第5号証のSEM写真によれば、アドマファインAO-502の一次粒子は、球状であると認められる。
(イ)判断
本件請求項2に係る発明は、球状アルミナ粒子について「レーザ光散乱法による粒子径の体積頻度は、メジアン径が50nm以上で500nm以下」であることを特定事項としている。
しかし、甲第1号証~甲第5号証の記載事項を検討しても、球状アルミナ粒子であるアドマファインAO-502のメジアン径が、50nm以上で500nm以下の範囲にあることは何ら記載されておらず、また、当該範囲にすることが容易であるという理由もない。
したがって、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
なお、申立人は、特許異議申立書において、甲第2号証に、アドマファインAO-502のアルミナ粒子の粒径が「-0.7μm」と記載されていることや、甲第5号証のSEM写真をもって「粒径が0.2~0.3μm程度の粒子から構成されている蓋然性が高い」旨主張しているが(特許異議申立書5ページ下から3行~6ページ6行)、仮に一次粒子が0.2~0.3μmであったとしても、甲第4号証のメジアン径からみて、凝集した二次粒子となっているものと認められるから、本件請求項2の要件を満足しないことに変わりはない。
(ウ)申立人の意見について
申立人は、意見書において、甲第1号証及び甲第2号証に記載された「アドマファインAO-502」の新たな2種類のサンプルについて、甲第4号証の測定に用いられた堀場製作所製のレーザー回折式粒度分布計「LA-500」によるメジアン径及びモード径の測定結果と共に、堀場製作所製のレーザー回折式粒度分布計である「LA-950V2」によるメジアン径及びモード径の測定結果を記載した甲第6号証を添付し、上記「LA-500」に替えて、本件明細書の実施例において用いられた「LA-950V2」で測定すれば、「アドマファインAO-502」は、本件請求項2で特定した「メジアン径は50nm以上で500nm以下で、前記1次粒子のピークは50nm以上で500nm以下にある」ことを充足していると主張している。
しかし、甲第6号証には、各装置の測定時の透過率等の設定値が記載されているものの、「LA-500」と「LA-950V2」で測定した粒度分布が、単に測定装置の機種変更による解像度の差異では説明がつかないほど異なっており、また、甲第6号証による「アドマファインAO-502」の測定は、本件特許の出願後に行われたものであって、用いられたサンプルは、本件特許の出願前に公知の甲第1号証及び甲第2号証に記載された「アドマファインAO-502」と同等の粒度分布を備えたものであるのかも明らかでない。
したがって、甲第6号証をもって、甲第1号証及び甲第2号証に記載された「アドマファインAO-502」が、本件請求項2に係る発明のメジアン径及びピーク(モード径)を充足するという申立人の主張は採用できるものではない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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