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特許異議申立

2017-700993

光硬化性組成物

審判番号
2017-700993
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-256975外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年10月17日
審決日
2018年10月02日
公報発行日
2019年01月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.113-YAA(C08F) / P1652.121-YAA(C08F) / P1652.537-YAA(C08F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6115100号発明「光硬化性組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6115100号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第6115100号の請求項1、3~5に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6115100号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成24年11月23日に特許出願され、平成29年3月31日に特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年4月19日に特許掲載公報が発行された。 その後、平成29年10月17日に、特許異議申立人岡林茂(以下、「申立人」という。)により、請求項1、3~5に係る本件特許について、甲第1~3号証を証拠方法として、特許法第29条第1項第3号、同法同条第2項及び同法第36条第6項第2号に基づく取消理由を主張する特許異議の申立てがされ、平成29年12月15日付けで取消理由が通知され、平成30年2月19日に意見書及び訂正請求書の提出があった。そして、申立人に対する平成30年3月28日付けの訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)に対しては、申立人からの応答はなかった。 平成30年6月22日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年8月27日に特許権者より意見書及び訂正請求書の提出があった。 なお、平成30年2月19日に提出された訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定より、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否についての判断 1.請求の趣旨 平成30年8月27日に特許権者が行った訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、「特許第6115100号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲の通り、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める」ことを請求の趣旨とするものである。 2.訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所を分かりやすく対比するために、当審において下線を付与した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「成分(C) 2以上の(メタ)アクリロキシ基を有するイソシアヌル酸誘導体」と記載されているのを、 「成分(C) 2以上の(メタ)アクリロキシ基を有するイソシアヌル酸誘導体モノマー」に訂正する。 (結果として、請求項1を直接的あるいは間接的に引用する請求項2~9も訂正することになる。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「成分(D) 3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体」と記載されているのを、 「成分(D) 3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体(但し、イソシアヌル酸誘導体を除く)」に訂正する。 (結果として、請求項1を直接的あるいは間接的に引用する請求項2~9も訂正することになる。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に 「更に、成分(B) 成分(B):ウレタンアクリレートオリゴマーおよびポリエステルアクリレートオリゴマーのいずれか を含有する」と記載されているのを、 「更に、成分(B) 成分(B):ウレタンアクリレートオリゴマー(但し、カプロラクトンオリゴマー誘導体及びイソシアヌル酸誘導体を除く)およびポリエステルアクリレートオリゴマー(但し、カプロラクトンオリゴマー誘導体、イソシアヌル酸誘導体及びウレタンアクリレートオリゴマーを除く)のいずれか を含有する」に訂正する。 (結果として、請求項4を直接的あるいは間接的に引用する請求項5~9も訂正することになる。) (4)訂正事項4 発明の詳細な説明の【0007】に記載された、 「成分(C) 2以上の(メタ)アクリロキシ基を有するイソシアヌル酸誘導体」を、 「成分(C) 2以上の(メタ)アクリロキシ基を有するイソシアヌル酸誘導体モノマー」に訂正する。 (5)訂正事項5 発明の詳細な説明の【0007】に記載された、 「成分(D) 3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体」を、 「成分(D) 3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体(但し、イソシアヌル酸誘導体を除く)」に訂正する。 (6)訂正事項6 発明の詳細な説明の【0013】に記載された、 「<成分A> 成分(A)は多官能アクリレート系モノマーであり、・・・。多官能アクリレート系モノマーの具体例としては、ビスフェノールF-EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-EO変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。」を、 「<成分A> 成分(A)は多官能アクリレート系モノマーであり、・・・。多官能アクリレート系モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。」に訂正する。 (7)一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~9は、訂正請求の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~9は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。そして、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-9〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-9〕について請求されたものである。 3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1、2による訂正について 訂正前の請求項1には、「以下の成分(A)、(C)、(D)及び(E):・・・を含有する光硬化性組成物。」と記載されており、訂正前の請求項1に係る発明は、成分(A)、(C)、(D)及び(E)の全ての成分を含む組成物の発明と特定される一方、請求項1には、「成分(C)」は「2以上の(メタ)アクリロキシ基を有するイソシアヌル酸誘導体」、「成分(D)」は「3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体」と特定され、一方、成分(C)と成分(D)は、概念上重複する化合物を包含し得るものとして特定されている点で技術的に整合しておらず、訂正前の請求項1には不明瞭な記載があった。 訂正事項1及び2による訂正は、成分(D)から、成分(C)を除き、成分(C)及び成分(D)には、概念上重複する化合物が含まれないことを明らかにすることで、当該不明瞭な記載を明瞭とするためのものであるから、これらの訂正事項による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、成分(C)については、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の【0017】に説明されていたが、ここで例示される化合物は、一般的に当業者に「モノマー」と認識されるもののみであるし、成分(D)については、本件特許明細書の【0019】に説明されているが、イソシアヌル酸誘導体に相当する化合物は記載されていない。 そうすると、訂正事項1、2による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (訂正後の請求項1を直接的あるいは間接的に引用する請求項2~9についての訂正も同様である。) (2)訂正事項3による訂正について 訂正前の請求項4は、請求項1等に特定される、「(A)、(C)、(D)及び(E):・・・を含有する光硬化性組成物」が、「更に、成分(B)」として、「ウレタンアクリレートオリゴマーおよびポリエステルアクリレートオリゴマーのいずれか」を含有することを特定するものであるが、これらのオリゴマーと、成分(D)の「3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体」及び成分(C)の「2以上の(メタ)アクリロキシ基を有するイソシアヌル酸誘導体」とは、概念上重複する化合物を包含し得るものである点で、訂正前の請求項4の記載は不明瞭であったし、また、成分(B)と成分(D)は、その定義上同じ化合物を包含し得る点で、技術的に明確に区別することができないものであった。 さらに、訂正前の請求項4には、「ウレタンアクリレートオリゴマーおよびポリエステルアクリレートオリゴマーのいずれか」と記載されており、両者は、別の化合物として特定される一方、「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「ポリエステルアクリレートオリゴマー」自体は、概念上重複する化合物を包含し得るものであり、この点でも訂正前の請求項4には不明瞭な記載があった。 訂正事項3による訂正は、成分(B)が概念上、成分(D)、成分(C)と重複する化合物を含んでいないこと、及び、「ポリエステルアクリレートオリゴマー」には、「ウレタンアクリレートオリゴマー」は含まれないことを明らかにして、上記の不明瞭な記載を明瞭とすることを目的とするものであるから、訂正事項3による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、成分(B)については、本件特許明細書の【0015】に説明されているが、ここには、成分(B)が、成分(D)や成分(C)に相当する化合物は記載されていない。 そうすると、訂正事項4による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (訂正後の請求項4を直接的あるいは間接的に引用する請求項5~9についての訂正も同様である。) (3)訂正事項4、5による訂正について 訂正事項4は、上記訂正事項1による訂正に伴い、特許請求の範囲(請求項1)と明細書の記載との整合を図るための補正であるし、訂正事項5は、上記訂正事項2による訂正に伴い、特許請求の範囲(請求項1)と明細書の記載との整合を図るための補正である。そして、上記(1)において、訂正事項1、2による訂正について説示したと同様の理由によって、訂正事項4、5による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項6による訂正について 特許請求の範囲の請求項1の成分(A)の「多官能アクリレート系モノマー」に関し、明細書の【0013】には、成分(A)が、「分子内に2以上・・・の(メタ)アクリレート残基を有する重合性化合物」であると記載され、また、同段落には、一般的に、当業者が「多官能アクリレート系モノマー」ではなく、「光重合性オリゴマー」と認識している化合物が例示されており(「光重合性オリゴマー」については、必要なら、特許権者が平成30年2月19日に意見書に添付して提出した乙第1号証(加藤清視著「紫外線硬化システム」、株式会社総合技術センター発行、平成元年2月28日、平成2年7月31日第二刷の151~152頁)参照。)、訂正前の特許請求の範囲(請求項1)の記載と明細書の記載には不整合があった。 訂正事項6は、一般的には「多官能アクリレート系モノマー」にはあたらないと当業者が認識している化合物を例示から削除することで、当該不整合を是正し、特許請求の範囲(請求項1)の記載と明細書の記載を整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項6による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (なお、特許異議の申立てがされていない請求項2、6~9を実質的に訂正することになる訂正事項1~3に関し、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。) (5)小括 したがって、上記訂正請求による訂正事項1~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正を認める。 第3 本件発明 前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものである。(以下、請求項番号に対応して、それぞれ「本件発明1」等という。) 「【請求項1】 以下の成分(A)、(C)、(D)及び(E): 成分(A)(但し、以下の成分(C)及び(D)を除く) 多官能アクリレート系モノマー; 成分(C) 2以上の(メタ)アクリロキシ基を有するイソシアヌル酸誘導体モノマー; 成分(D) 3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体(但し、イソシアヌル酸誘導体を除く); 及び 成分(E) 光重合開始剤 を含有する光硬化性組成物。 【請求項2】 環状オレフィン系樹脂からなる基材フィルムと、その少なくとも片面に形成された保護コート層とからなる保護コート層付フィルムの当該保護コート層を形成するための保護コート層形成用組成物である請求項1記載の光硬化性組成物。 【請求項3】 成分(A)の含有量が5~40質量%であり、成分(C)の含有量が5~40質量%であり、成分(D)の含有量が10~80質量%であり、成分(E)の含有量が1~10質量%である請求項1又は2記載の光硬化性組成物。 【請求項4】 更に、成分(B) 成分(B):ウレタンアクリレートオリゴマー(但し、カプロラクトンオリゴマー誘導体及びイソシアヌル酸誘導体を除く)およびポリエステルアクリレートオリゴマー(但し、カプロラクトンオリゴマー誘導体、イソシアヌル酸誘導体及びウレタンアクリレートオリゴマーを除く)のいずれか を含有する請求項1~3のいずれかに記載の光硬化性組成物。 【請求項5】 成分(B)の含有量が10~30質量%であり、成分(A)と成分(B)との合計含有量が40質量%以下である請求項4記載の光硬化性組成物。 【請求項6】 環状オレフィン系樹脂からなる基材フィルムと、その少なくとも片面に形成された保護コート層とからなる保護コート層付フィルムであって、該保護コート層が、請求項1~5のいずれかに記載の光硬化性組成物の光硬化物層である保護コート層付フィルム。 【請求項7】 基材フィルムの厚さが、25~200μmであり、保護コート層の厚さが0.5~8μmである請求項6記載の保護コート層付フィルム。 【請求項8】 請求項6又は7記載の保護コート層付フィルムの少なくとも片面に透明電極が形成されているタッチパネル用保護コート層付フィルム。 【請求項9】 画像表示素子と少なくとも請求項8のタッチパネル用保護コート層付フィルムとが積層された画像表示・入力装置。」 第4 特許異議の申立て及び取消理由通知(決定の予告)の概要 1.特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由 本件訂正前の請求項1、3~5に係る発明に対して、申立人が申立てていた特許異議の申立ての理由は、概略、本件特許の請求項1、3~5に係る発明についての特許は、以下の(1)~(3)のとおりの取消理由により、取り消されるべきものであるというものであって、申立人は、特許異議申立書(以下、単に「申立書」という。)に添付して、証拠方法として下記(4)の甲第1号証~甲第3号証を提出した。 (1)取消理由1(新規性) 訂正前の請求項1、3~5に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された下記の刊行物(甲第1号証)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(進歩性) 訂正前の請求項1、3~5に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された下記の刊行物(甲第1号証)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)取消理由3(明確性) 本件特許は、以下の(i)~(iv)の点で、特許請求の範囲(請求項1、3~5)の記載に不備があるために、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (i)成分(C)と(D)は、その定義上同じ化合物を包含し得る点で、技術的に明確に区別することができない。(請求項1、3~5に係る発明に対し) (ii)成分(A)と(B)は、その定義上同じ化合物を包含し得る点で、技術的に明確に区別することができない。(請求項4~5に係る発明に対し) (iii)成分(B)と(D)は、その定義上同じ化合物を包含し得る点で、技術的に明確に区別することができない。(請求項4~5に係る発明に対し) (iv)成分(B)として記載される「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「ポリエステルアクリレートオリゴマー」は、その定義上同じ化合物を包含し得る点で、技術的に明確に区別することができない。(請求項4~5に係る発明に対し) (4)証拠方法 甲第1号証:特開2010-59229号公報 甲第2号証:特開2011-173982号公報 甲第3号証:巴工業(株)製品情報、化成品関連[平成29年10月5日検索]、インターネット <http://www.tomo-e.co.jp/j/product/chem/index.html> その2:同号証の「有機系原材料」の「紫外線硬化樹脂」のリンク先の資料 <http://www.tomo-e.co.jp/j/product/chem/sartomer.html> その3:同号証その2の「ウレタンアクリレートオリゴマー」のリンク先の資料 <http://www.tomo-e.co.jp/j/product/chem_pdf/sartomer/5_urethane.pdf> 「甲第1号証」~「甲第3号証」はいずれも、申立人の提示した証拠方法である。甲第2号証及び甲第3号証は、取消理由3に関連して申立人により提示された。以下、「甲第1号証」~「甲第3号証」を、それぞれ、「甲1」~「甲3」という。 2.合議体が取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由 合議体が平成30年6月22日付けで通知した取消理由(決定の予告)は、次のとおりである(上記1.の(3)取消理由3(明確性)の(iii)及び(iv)と同旨。)。 本件特許は、特許請求の範囲(請求項1、3~5)の記載に不備があるために、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (なお、具体的な不備の内容は、上記1.の(3)の(iii)及び(iv)に記載のとおり。) 第5 当審の判断 以下に述べるように、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、本件発明1、3~5に係る発明についての本件特許を取り消すことはできない。 第5-1 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由(取消理由3(iii)及び(iv))についての判断 (1) 合議体が、平成30年6月22日付けの取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由(上記第4の1.の(3)の取消理由3の(iii)及び(iv)に相当する部分)についての指摘は、それぞれ、次のとおりである。 ・(iii) 「(3)本件発明4~5について(成分(B)及び(D)の点) 請求項4には、請求項1の「成分(A)、(C)、(D)及び(E):・・・を含有する光硬化性組成物」が、「更に」、「成分(B):ウレタンアクリレートオリゴマーおよびポリエステルアクリレートオリゴマーのいずれかを含有する」ことが記載されるところ、請求項1によれば、成分(D)は、「3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体」であって、(1)で述べたとおり、(メタ)アクリロキシ基を3以上有していれば、カプロラクトンオリゴマーを原料として誘導される任意の置換基構造の化合物を包含し得る。 そして、本件特許明細書には、成分(D)の具体例として、アルケマ社の商品名「CN929」が記載されている(【0019】及び【0055】の表1中の実施例15等)。ここで、甲2の【0012】には、「複数の(メタ)アクリレート基を有するウレタン樹脂」の「三官能」の例として、「サートマー製CN929」が記載され、これは、甲3によれば「ポリエステル骨格を有する脂肪族三官能ウレタンアクリレート」である「ウレタンアクリレートオリゴマー」である(甲3のその3)ところ、サートマー社が、2011年(平成23年)7月1日付けでアルケマグループの一員となっていることからすると、本件特許明細書に記載された「CN929」と、甲2及び甲3に記載された「CN929」とは同じ商品を意味する蓋然性が高い。 そうすると、成分(D)には、成分(B)の「ウレタンアクリレートオリゴマー」及び「ポリエステルアクリレートオリゴマー」に該当する化合物が含まれることになり、成分(B)と(D)は、その定義上同じ化合物を包含し得る点で、技術的に明確に区別することができない。 よって、本件発明4は、明確ではない。 請求項4を引用する本件発明5についても同様である。 」 ・(iv) 「(4)本件発明4~5について(成分(B)同士) 成分(B)として記載される「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「ポリエステルアクリレートオリゴマー」はその定義上同じ化合物を包含し得る点で、技術的に明確に区別することができない。 例えば、(3)で述べたとおり、例えば、アルケマ社の商品名「CN929」は、成分(B)の「ウレタンアクリレートオリゴマー」にも、「ポリエステルアクリレートオリゴマー」にも該当する化合物であるし、同様に、甲1の(C)成分とされる「(ポリ)ウレタンアクリレート」は、「ウレタンアクリレートオリゴマー」といえるが、その製造原料のポリオール化合物がポリエステルポリオール等である場合(甲1の【0017】)「ポリエステルアクリレートオリゴマー」であるともいえる。 よって、本件発明4は、明確ではない。 請求項4を引用する本件発明5についても同様である。」 (2) ここで、本件訂正により、上記の取消理由が解消しているかについて検討する。 訂正後の本件発明4は、 「更に、成分(B) 成分(B):ウレタンアクリレートオリゴマー(但し、カプロラクトンオリゴマー誘導体及びイソシアヌル酸誘導体を除く)およびポリエステルアクリレートオリゴマー(但し、カプロラクトンオリゴマー誘導体、イソシアヌル酸誘導体及びウレタンアクリレートオリゴマーを除く)のいずれか を含有する請求項1~3のいずれかに記載の光硬化性組成物。」 というものであり、請求項1によれば、本件発明4の光硬化性組成物の成分(D)は、「3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体(但し、イソシアヌル酸誘導体を除く)」というものである。 そして、取消理由の(iii)に関し、訂正後の成分(B)が「ウレタンアクリレートオリゴマー」である場合も、「ポリエステルアクリレートオリゴマー」である場合も、括弧書きで、成分(D)の「カプロラクトンオリゴマー誘導体」が除かれているから、成分(B)は、成分(D)と技術的に明確に区別することができる。 したがって、本件発明4についての取消理由の(iii)には理由がない。 また、取消理由の(iv)に関し、訂正後の成分(B)が「ポリエステルアクリレートオリゴマー」である場合については、括弧書きで「ウレタンアクリレートオリゴマー」が除かれている。 そうすると、成分(B)を構成する「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「ポリエステルアクリレートオリゴマー」とは、技術的に明確に区別することができる。 したがって、本件発明4についての取消理由の(iv)にも理由がない。 さらに、本件発明5は、請求項4を引用するものであり、本件発明5についても、請求項4についての訂正により、成分(B)と成分(D)とは技術的に明確に区別することができるものとなっているし、また、成分(B)を構成する「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「ポリエステルアクリレートオリゴマー」とは、技術的に明確に区別することができるものとなっている。 よって、本件発明5についての取消理由(iii)及び(iv)にも理由がない。 以上のとおり、本件発明4~5は明確であり、これらの発明に係る特許について、取消理由の(iii)及び(iv)により取り消されるべきであるとすることはできない。 第5-2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立ての理由について 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立ての理由は、第4の1.に記載した取消理由1(新規性)、2(進歩性)及び3(明確性)の(i)、(ii)である。 以下に検討する。 1.取消理由1(新規性)及び2(進歩性)について (1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 本件特許の出願前日本国内において頒布された刊行物である甲1の請求項1には、以下の記載がある。 「テトラヒドロフタル酸残基とトリメチロールプロパン残基と(メタ)アクロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート(A)10~20質量部、 イソシアヌレート骨格を有する2官能以上の(メタ)アクリレート(B)20~50質量部、 ジイソシアネート化合物(c1)、分子内に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物(c2)、および、分子内に1個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレート(c3)を反応させて得られる(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート(C)10~30質量部、ならびに、 25℃における粘度が200mPa・s以下である3官能以上の(メタ)アクリレート(D)10~30質量部、[(A)~(D)成分の合計100質量部] を含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物。」 ここで、以下、「テトラヒドロフタル酸残基とトリメチロールプロパン残基と(メタ)アクロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート(A)」を「成分(1a)」と、 「イソシアヌレート骨格を有する2官能以上の(メタ)アクリレート(B)」を「成分(1b)」と、 「ジイソシアネート化合物(c1)、分子内に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物(c2)、および、分子内に1個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレート(c3)を反応させて得られる(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート(C)」を「成分(1c)」と、 「25℃における粘度が200mPa・s以下である3官能以上の(メタ)アクリレート(D)」を「成分(1d)」という。 また、甲1の請求項1に係る発明の具体的態様に相当する例の記載として、甲1には、以下の記載がある。 「【0050】 (実施例および比較例) 表1から表3に示す各成分(配合量の数値は質量部基準)からなる活性エネルギー線硬化性組成物をコーティング材として用いて、試験片を作製した。それらの評価結果を各表に示す。 ・・・ 【0052】 【表2】 ・・・ 【0054】 表1~3中の化合物の記号は次の通りである。 ・「PesA-1」:合成例1で得たポリエステルアクリレート。 ・「AIC」:トリス(2-アクロイルオキシエチル)イソシアヌレートとビス(2-アクリロイルオキシエチル)モノヒドロキシエチルイソシアヌレートの混合物(東亞合成社製、商品名アロニックスM-315)。 ・「M-325」:1分子当たり1個のカプロラクトンにより変性されたトリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート(東亜合成社製、商品名アロニックスM-325)。 ・「M-327」:1分子当たり3個のカプロラクトンにより変性されたトリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート(東亜合成社製、商品名アロニックスM-327)。 ・「UA-1」:ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン2mol、ノナブチレングリコール1molおよび2-ヒドロキシエチルアクリレート2molから合成したウレタンアクリレート85質量部に対し、2-エチルヘキシルアクリレート15質量部で希釈したもの。 ・「UA-2」:ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン2mol、ポリカプロラクトンジオール(重量平均分子量530、ダイセル化学工業社製、商品名プラクセル205)1molおよび2-ヒドロキシエチルアクリレート2molから合成したウレタンアクリレート。 ・「UA-3」:ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン2mol、ポリカーボネートジオール(数平均分子量500、クラレ社製、商品名クラレポリオールC590)1molおよび2-ヒドロキシエチルアクリレート2molから合成したウレタンアクリレート。 ・「TMPTA」:トリメチロールプロパントリアクリレート(25℃における粘度80mPa・s)。 ・「TMP(3PO)TA」:1分子当たり3個のプロピレンオキサイドで変性されたトリメチロールプロパントリアクリレート(25℃における粘度60mPa・s)。 ・「TMP(2PO)TA」:1分子あたり2個のプロピレンオキサイドで変性されたトリメチロールプロパントリアクリレート(25℃における粘度78mPa・s)。 ・「HALS-1」:光安定剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名チヌビン152)37.3gをn-酢酸ブチル66.4gに完全に溶解させた液へ、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、商品名カレンズAOI)7.00gと、反応触媒としてジブチルチンジラウレート0.0265gとを入れて、30℃で8時間攪拌し合成して得た光安定剤。 ・「HALS-2」:ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートの混合物からなる光安定剤(三共化成製、商品名サノールLS-292)。 ・「UVA-1」:トリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名チヌビン400)。 ・「BNP」:ベンゾフェノン。 ・「MPG」:メチルフェニルグリオキシレート。 ・「APO」:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド。 ・「L-7001」:シリコン系レベリング剤(東レダウコーニング社製、商品名L-7001)。 ・「PGM」:1-メトキシ-2-プロパノール。 ・「ECA」:エチルジグリコールアセテート。」 さらに、「PesA-1」の「合成例1」に関し、甲1には、以下の記載がある。 「【0049】 (合成例1:ポリエステル(メタ)アクリレート(PesA-1)の合成) 無水テトラヒドロフタル酸0.5モル、トリメチロールプロパン1モル、アクリル酸2モル、トルエン1000ml、98%硫酸をトルエン以外の全成分100部に対して2.5部、および、フェノチアジンをアクリル酸全量100部に対して0.08部の各成分を混合して、液温約110℃で攪拌しながらエステル化反応させた。その際の反応によって生成する水は、トルエンとの共沸により系外へ流出させた。そして、反応開始から8時間後にほぼ理論値の水が流出したので、反応を止め冷却した。次いで、3質量%のアンモニアと20質量%の硫安を含む水溶液で反応液を洗浄し、トルエン層に0.05gのハイドロキノンを入れ、6mmHgの減圧下、約50℃でトルエンを除去し、(A)成分としてのポリエステルアクリレート(PesA-1)を得た。」 以上の甲1の記載によれば、甲1には、「成分(1a)」~「成分(1d)」を含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物に関するものである甲1の請求項1に係る発明の具体的態様に相当する発明として、実施例7に、「成分(1a)」~「成分(1d)」のそれぞれに対応する「成分(1A)」~「成分(1D)」を含む、以下の発明が記載されている。 「成分(1A) PesA-1(以下のPesA-1の合成例で得たポリエステルアクリレート)12質量部、 成分(1B) M-327(1分子当たり3個のカプロラクトンにより変性されたトリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート)44質量部、 成分(1C) UA-1(ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン2mol、ノナブチレングリコール1molおよび2-ヒドロキシエチルアクリレート2molから合成したウレタンアクリレート85質量部に対し、2-エチルヘキシルアクリレート15質量部で希釈したもの。)29質量部、 成分(1D) TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート(25℃における粘度80mPa・s)) 15質量部、 その他の成分として、HALS-1(光安定剤)1質量部、UVA-1(トリアジン系紫外線吸収剤)3質量部、BNP(ベンゾフェノン)1質量部、MPG(メチルフェニルグリオキシレート)1質量部、APO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)1質量部、L-7001(シリコン系レベリング剤)0.3質量部、PGM(1-メトキシ-2-プロパノール)85質量部、ECA(エチルジグリコールアセテート)3質量部、 合計194.7質量部 からなる、活性エネルギー線硬化性組成物。 PesA-1の合成例: 無水テトラヒドロフタル酸0.5モル、トリメチロールプロパン1モル、アクリル酸2モル、トルエン1000ml、98%硫酸をトルエン以外の全成分100部に対して2.5部、および、フェノチアジンをアクリル酸全量100部に対して0.08部の各成分を混合して、液温約110℃で攪拌しながらエステル化反応させた。その際の反応によって生成する水は、トルエンとの共沸により系外へ流出させた。そして、反応開始から8時間後にほぼ理論値の水が流出したので、反応を止め冷却した。次いで、3質量%のアンモニアと20質量%の硫安を含む水溶液で反応液を洗浄し、トルエン層に0.05gのハイドロキノンを入れ、6mmHgの減圧下、約50℃でトルエンを除去して、(1A)成分としてのポリエステルアクリレート(PesA-1)を得た。」(以下「甲1発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 「成分(1D) TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート(25℃における粘度80mPa・s)」はアクリレートが3官能であるから、これらはいずれも本件発明1の「成分(A)(但し、以下の成分(C)及び(D)を除く) 多官能アクリレート系モノマー」に相当する。 また、甲1発明の「成分(1B) M-327(1分子当たり3個のカプロラクトンにより変性されたトリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート)」は、本件発明1の「成分(C) 2以上の(メタ)アクリロキシ基を有するイソシアヌル酸誘導体モノマー」に相当する。 さらに、甲1発明の「BNP(ベンゾフェノン)」、「MPG(メチルフェニルグリオキシレート)」、「APO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)」は、いずれも、甲1の【0027】に記載されるとおり、「光重合開始剤」であって、本件発明1の「成分(E) 光重合開始剤」に相当するし、本件発明1の「光」は、本件特許明細書の【0039】にも記載されているとおり「エネルギー線」を含むから、甲1発明の「活性エネルギー線硬化性組成物」は、本件発明1の「光硬化性組成物」に相当する。 そして、本件発明1では、「以下の成分(A)、(C)、(D)及び(E):・・・を含有する光硬化性組成物。」と特定されており、本件発明1の組成物は、他の成分を包含し得るものとして特定されているから、甲1発明に含まれるその他の成分である、「成分(1A)」の「(PesA-1(合成例1で得たポリエステルアクリレート)」、「成分(1C)」の「UA-1(ウレタンアクリレート)」(これらは、当業者に「光重合性オリゴマー」と認識されているものである(必要なら、特許権者が平成30年2月19日に意見書に添付して提出した前記乙第1号証参照。)。)、「HALS-1(光安定剤)1質量部、UVA-1(トリアジン系紫外線吸収剤)3質量部、L-7001(シリコン系レベリング剤)0.3質量部、PGM(1-メトキシ-2-プロパノール)85質量部、ECA(エチルジグリコールアセテート)3質量部」を含む点は、本件発明1との相違点とはならない。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点1で相違している。 <一致点> 「以下の成分(A)、(C)、及び(E): 成分(A)(但し、以下の成分(C)及び(D)を除く) 多官能アクリレート系モノマー; 成分(C) 2以上の(メタ)アクリロキシ基を有するイソシアヌル酸誘導体モノマー; 及び 成分(E) 光重合開始剤 を含有する光硬化性組成物。」 (なお、上記において、成分(A)から除かれている「成分(D)」は、第3で記載したとおり、「3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体(但し、イソシアヌル酸誘導体を除く)」である。) <相違点1> 本件発明1の光硬化性組成物には、「成分(D)」である「3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体(但し、イソシアヌル酸誘導体を除く)」が含まれるのに対し、甲1発明の光硬化性組成物には、「成分(D)」は含まれていない点。 イ 判断 上記アで記載したとおり、本件発明1と甲1発明とは、上記の相違点1で相違しており、相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1に記載された発明とはいえない。 また、甲1には、本件発明1の成分(D)である「3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体(但し、イソシアヌル酸誘導体を除く)」に相当する化合物は記載されていないから、甲1の記載からは、甲1発明を、相違点に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを当業者は容易に想到し得ない。(なお、申立人が提出した他の証拠の記載を参酌しても同様である。) よって、本件発明1について、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (3)本件発明3~5について 本件発明3~5と甲1発明を対比すると、両者は、甲1発明と、少なくとも上記の相違点1で相違している。 そして、相違点1についての判断は、上記(2)のイで記載したとおりであるから、本件発明3~5については、本件発明1について、上記(2)のイで記載したと同様の理由によって、甲1に記載された発明であるとも、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、取消理由1及び2には理由がなく、これらの取消理由によっては、本件発明1、3~5についての特許を取り消すことはできない。 2.取消理由3(明確性)の(i)及び(ii)について 申立人が訂正前の請求項1、3~5に係る発明に対して申立てていた取消理由3の(i)は、概略、成分(C)と成分(D)とは、その定義上同じ化合物を包含し得る点で、技術的に明確に区別することができないというものであるし、また、申立人が訂正前の請求項1、3~5に係る発明に対して申立てていた取消理由3の(ii)は、概略、成分(A)と(B)は、その定義上同じ化合物を包含し得る点で、技術的に明確に区別することができないというものである。 ア (i)の点の記載不備について 本件訂正後の請求項1は、第3で記載した次のとおりのものである。 「以下の成分(A)、(C)、(D)及び(E): 成分(A)(但し、以下の成分(C)及び(D)を除く) 多官能アクリレート系モノマー; 成分(C) 2以上の(メタ)アクリロキシ基を有するイソシアヌル酸誘導体モノマー; 成分(D) 3以上の(メタ)アクリロキシ基を有するカプロラクトンオリゴマー誘導体(但し、イソシアヌル酸誘導体を除く); 及び 成分(E) 光重合開始剤 を含有する光硬化性組成物。」 訂正後の請求項1の発明特定事項の記載によれば、成分(D)から、成分(C)に該当する化合物である「イソシアヌル酸誘導体モノマー」を包含する「イソシアヌル酸誘導体」が除かれており、訂正前の請求項1において、概念上重複し得るものとして記載されていた、成分(C)と成分(D)とは技術的に明確に区別することができるものとなっている。 また、請求項1を引用する請求項3~5に係る発明についても、訂正により成分(C)と成分(D)とが技術的に明確に区別することができるものとなっている。 したがって、取消理由3の(i)の点の取消理由によっては、本件発明1、3~5についての本件特許を取り消すことはできない。 イ (ii)の点の記載不備について 本件訂正後の請求項4は、第3で記載した次のとおりのものである。 「更に、成分(B) 成分(B):ウレタンアクリレートオリゴマー(但し、カプロラクトンオリゴマー誘導体及びイソシアヌル酸誘導体を除く)およびポリエステルアクリレートオリゴマー(但し、カプロラクトンオリゴマー誘導体、イソシアヌル酸誘導体及びウレタンアクリレートオリゴマーを除く)のいずれか を含有する請求項1~3のいずれかに記載の光硬化性組成物。」 また、訂正後の請求項1は、上記アで記載したとおりのものであり、成分(A)は、「多官能アクリレート系モノマー」である。 ここで、成分(A)について、請求項1に「多官能アクリレート系モノマー」と記載されており、技術常識からすると、該モノマーに成分(B)は含まれない。一方、訂正前の本件特許明細書の【0013】には、「多官能アクリレート系モノマー」について、「分子内に2以上・・・の(メタ)アクリレート残基を有する重合性化合物」と記載され、該モノマーの例示に、「ビスフェノールF-EO変性ジ(メタ)アクリレート」、「ビスフェノールA-EO変性ジ(メタ)アクリレート」、「ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート」、「ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート」といった、一般的に、当業者に「光重合性オリゴマー」と認識されている各種化合物(必要なら、第2の3.(6)で指摘した乙第1号証参照。)が含まれており、成分(A)をかかる「光重合性オリゴマー」も含むものと解すると、成分(A)は、成分(B)も含み得る点で、成分(A)と成分(B)を技術的に明確に区別することができず、訂正前の請求項1に係る発明は不明確となっていた。 しかしながら、訂正により、本件特許明細書の【0013】の成分(A)についての例示から、技術常識に反する、「光重合性オリゴマー」と認識される化合物は削除され、成分(A)の「多官能アクリレート系モノマー」が、当業者の通常の理解のとおり、成分(B)のような、「光重合性オリゴマー」を包含しないことが明らかとなった。そうすると、成分(A)と成分(B)とは、技術的に明確に区別することができるものとなっているから、本件発明1は明確である。 さらに、訂正により、請求項4を引用する請求項5に係る発明についても、成分(A)と成分(B)とは技術的に明確に区別することができるものとなっているから、本件発明5も明確となった。 したがって、上記取消理由3の(ii)の点の取消理由によっては、本件発明4~5についての本件特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1、3~5に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、3~5に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700993

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