特許異議申立
2017-700986
引戸装置及び引戸構造
- 審判番号
- 2017-700986
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-027690外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月12日
- 審決日
- 2018年06月06日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【異議申立人】小寺 吉衛
- 分類
- P1652.121-YAA(E06B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6112481号発明「引戸装置及び引戸構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6112481号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5〕について訂正することを認める。
特許第6112481号の請求項1、5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6112481号の請求項1及び5に係る特許についての出願は、平成25年2月15日に特許出願され、平成29年3月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年10月12日に特許異議申立人小寺吉衛(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年12月25日付け(平成30年1月4日発送)で取消理由が通知され、平成30年2月27日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年4月5日に申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記カバー体は、戸幅方向に延びる平板状とされ、前記戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接される前側カバー部と、この前側カバー部の長手方向両端側に設けられ、後端面が前記壁体の前面に当接または近接される両側の端部カバー部と、を備え、戸先側の前記端部カバー部は、その内側面が前記戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接されることを特徴とする」と記載されているのを、
「前記カバー体は、戸幅方向に延びる平板状とされ、前記戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接される前側カバー部と、この前側カバー部の長手方向両端側に設けられ、後端面が前記壁体の前面に当接または近接される両側の端部カバー部と、を備え、戸先側の前記端部カバー部は、その内側面が前記戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接される構成とされており、
前記突出部の前記壁体の前面からの突出寸法と、前記壁体の前面から前記前側カバー部までの壁厚方向に沿う寸法と、が略等しくなり、該突出部の突出寸法と前記端部カバー部の壁厚方向に沿う寸法とが略等しくなることを特徴とする」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「請求項1において、
前記上レールは、前記壁体の前面に沿って固定される下地桟の下面側に固定される構成
とされ、
前記下地桟は、その前面が前記上レールの前面よりも僅かに前方に位置し、かつ前記戸先側縦枠の前記突出部の前端面と略同一平面状となるように固定される構成とされ、この下地桟の前面に前記カバー体が固定される構成とされていることを特徴とする」と記載されているのを、独立形式に改め、
「建物の壁体の前面に沿ってアウトセット納めでスライド自在に吊下支持され、前記壁体に形成された出入開口部を開閉する引戸パネルと、前記出入開口部の戸先側に設けられる戸先側縦枠と、を備えており、
前記戸先側縦枠は、前記壁体の前面よりも前方へ突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の前記引戸パネルの戸先側端部を納める凹所を設けている引戸装置であって、
前記引戸パネルを吊下支持する上レールは、前記出入開口部の上縁に沿うように、かつ前記壁体の前面よりも前方へ突出するように配設される構成とされており、
前記上レールの前方側及び長手方向両端側を囲うように覆い、かつ前記戸先側縦枠の突出部の上端部を受け入れるカバー体を備えており、
前記カバー体は、戸幅方向に延びる平板状とされ、前記戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接される前側カバー部と、この前側カバー部の長手方向両端側に設けられ、後端面が前記壁体の前面に当接または近接される両側の端部カバー部と、を備え、戸先側の前記端部カバー部は、その内側面が前記戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接される構成とされており、
前記上レールは、前記壁体の前面に沿って固定される下地桟の下面側に固定される構成とされ、
前記下地桟は、その前面が前記上レールの前面よりも僅かに前方に位置し、かつ前記戸先側縦枠の前記突出部の前端面と略同一平面状となるように固定される構成とされ、この下地桟の前面に前記カバー体が固定される構成とされていることを特徴とする」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1または2において、
前記引戸パネルの戸先側端部近傍の前後面には、前後方向に突出するように把手が設けられており、後面側の把手は、前記閉鎖状態で前記戸先側縦枠との間に手指の挿入が可能な間隔を空けるように設けられていることを特徴とする」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「建物の壁体の前面に沿ってアウトセット納めでスライド自在に吊下支持され、前記壁体に形成された出入開口部を開閉する引戸パネルと、前記出入開口部の戸先側に設けられる戸先側縦枠と、を備えており、
前記戸先側縦枠は、前記壁体の前面よりも前方へ突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の前記引戸パネルの戸先側端部を納める凹所を設けている引戸装置であって、
前記引戸パネルを吊下支持する上レールは、前記出入開口部の上縁に沿うように、かつ前記壁体の前面よりも前方へ突出するように配設される構成とされており、
前記上レールの前方側及び長手方向両端側を囲うように覆い、かつ前記戸先側縦枠の突出部の上端部を受け入れるカバー体を備えており、
前記カバー体は、戸幅方向に延びる平板状とされ、前記戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接される前側カバー部と、この前側カバー部の長手方向両端側に設けられ、後端面が前記壁体の前面に当接または近接される両側の端部カバー部と、を備え、戸先側の前記端部カバー部は、その内側面が前記戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接される構成とされており、
前記引戸パネルの戸先側端部近傍の前後面には、前後方向に突出するように把手が設けられており、後面側の把手は、前記閉鎖状態で前記戸先側縦枠との間に手指の挿入が可能な間隔を空けるように設けられていることを特徴とする」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記出入開口部の戸尻側に設けられる戸尻側縦枠を更に備えており、
該戸尻側縦枠は、その前端面が前記引戸パネルの後面に近接配置されるように前記戸先側縦枠よりも前後寸法が小さく形成されていることを特徴とする」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「建物の壁体の前面に沿ってアウトセット納めでスライド自在に吊下支持され、前記壁体に形成された出入開口部を開閉する引戸パネルと、前記出入開口部の戸先側に設けられる戸先側縦枠と、を備えており、
前記戸先側縦枠は、前記壁体の前面よりも前方へ突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の前記引戸パネルの戸先側端部を納める凹所を設けている引戸装置であって、
前記引戸パネルを吊下支持する上レールは、前記出入開口部の上縁に沿うように、かつ前記壁体の前面よりも前方へ突出するように配設される構成とされており、
前記上レールの前方側及び長手方向両端側を囲うように覆い、かつ前記戸先側縦枠の突出部の上端部を受け入れるカバー体を備えており、
前記カバー体は、戸幅方向に延びる平板状とされ、前記戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接される前側カバー部と、この前側カバー部の長手方向両端側に設けられ、後端面が前記壁体の前面に当接または近接される両側の端部カバー部と、を備え、戸先側の前記端部カバー部は、その内側面が前記戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接される構成とされており、
前記出入開口部の戸尻側に設けられる戸尻側縦枠を更に備えており、
該戸尻側縦枠は、その前端面が前記引戸パネルの後面に近接配置されるように前記戸先側縦枠よりも前後寸法が小さく形成されていることを特徴とする」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記カバー体は、戸幅方向に延びる平板状とされ、前記戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接された前側カバー部の長手方向両端側に、後端面が前記壁体の前面に当接または近接された両側の端部カバー部を設けた構成とされ、戸先側の前記端部カバー部の内側面が前記戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接されていることを特徴とする」と記載されているのを、
「前記カバー体は、戸幅方向に延びる平板状とされ、前記戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接された前側カバー部の長手方向両端側に、後端面が前記壁体の前面に当接または近接された両側の端部カバー部を設けた構成とされ、戸先側の前記端部カバー部の内側面が前記戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接されており、
前記突出部の前記壁体の前面からの突出寸法と、前記壁体の前面から前記前側カバー部までの壁厚方向に沿う寸法と、が略等しくなっており、該突出部の突出寸法と前記端部カバー部の壁厚方向に沿う寸法とが略等しくなっていることを特徴とする」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、請求項1に係る発明の発明特定事項である戸先側縦枠の突出部、カバー体の前側カバー部及び端部カバー部について、「前記突出部の前記壁体の前面からの突出寸法と、前記壁体の前面から前記前側カバー部までの壁厚方向に沿う寸法と、が略等しくなり、該突出部の突出寸法と前記端部カバー部の壁厚方向に沿う寸法とが略等しくなること」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は発明特定事項である戸先側縦枠の突出部、カバー体の前側カバー部及び端部カバー部を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
発明の詳細な説明には、
「【0018】
この戸先側縦枠21は、その突出部22の前端面が引戸パネル10の前面13よりも僅かに前方に位置するように配設される。
この戸先側縦枠21の突出部22の壁体2の前面3からの突出寸法(突出部22の見込み寸法)は、引戸パネル10の戸先側端部11を凹所(凹溝)23に納めることが可能なように、引戸パネル10の戸厚寸法に応じて適宜、設定するようにしてもよい。また、この突出部22の見込み寸法は、引戸パネル10の後面15と壁体2の前面3(本実施形態では、戸尻側縦枠24の前端面24a)とのクリアランスを加味して適宜、設定するようにしてもよい。つまり、突出部22の見込み寸法は、上記クリアランスに引戸パネル10の戸厚寸法を足し合わせた寸法よりも僅かに大きい寸法としてもよい。」、
及び
「【0023】
このカバー体27は、戸幅方向に延びる平板状の前側カバー部28と、この前側カバー部28の長手方向両端側に設けられた端部カバー部29,29と、を備えている。これら両側の端部カバー部29,29の後端面は、壁体2の前面3に当接または近接される(図3(b)参照)。
また、図3(b)に示すように、前側カバー部28の後面は、戸先側縦枠21の突出部22の上端部22aの前端面に当接または近接される。また、戸先側の端部カバー部29の内側面は、戸先側縦枠21の突出部22の上端部22aの反引戸パネル側の側面(外側面)に当接または近接される。」
と記載され、また図1及び図3を参照すると、「前記突出部の前記壁体の前面からの突出寸法と、前記壁体の前面から前記前側カバー部までの壁厚方向に沿う寸法と、が略等しくなり、該突出部の突出寸法と前記端部カバー部の壁厚方向に沿う寸法とが略等しくなっていること」が看取できる。
よって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
訂正事項2は、上記アのとおりの事項を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2は、上記アのとおりの事項を目的とするものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1または2の記載を引用する記載であったものを、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
訂正事項3は、上記アのとおりの事項を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項3は、上記アのとおりの事項を目的とするものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1~3のいずれか1項の記載を引用する記載であったものを、請求項2、3を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
訂正事項4は、上記アのとおりの事項を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項4は、上記アのとおりの事項を目的とするものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項5は、請求項5に係る発明の発明特定事項である戸先側縦枠の突出部、カバー体の前側カバー部及び端部カバー部について、「前記突出部の前記壁体の前面からの突出寸法と、前記壁体の前面から前記前側カバー部までの壁厚方向に沿う寸法と、が略等しくなっており、該突出部の突出寸法と前記端部カバー部の壁厚方向に沿う寸法とが略等しくなっている」ことに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項5は発明特定事項である戸先側縦枠の突出部、カバー体の前側カバー部及び端部カバー部を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
発明の詳細な説明には、「【0018】
この戸先側縦枠21は、その突出部22の前端面が引戸パネル10の前面13よりも僅かに前方に位置するように配設される。
この戸先側縦枠21の突出部22の壁体2の前面3からの突出寸法(突出部22の見込み寸法)は、引戸パネル10の戸先側端部11を凹所(凹溝)23に納めることが可能なように、引戸パネル10の戸厚寸法に応じて適宜、設定するようにしてもよい。また、この突出部22の見込み寸法は、引戸パネル10の後面15と壁体2の前面3(本実施形態では、戸尻側縦枠24の前端面24a)とのクリアランスを加味して適宜、設定するようにしてもよい。つまり、突出部22の見込み寸法は、上記クリアランスに引戸パネル10の戸厚寸法を足し合わせた寸法よりも僅かに大きい寸法としてもよい。」
及び、
「【0023】
このカバー体27は、戸幅方向に延びる平板状の前側カバー部28と、この前側カバー部28の長手方向両端側に設けられた端部カバー部29,29と、を備えている。これら両側の端部カバー部29,29の後端面は、壁体2の前面3に当接または近接される(図3(b)参照)。
また、図3(b)に示すように、前側カバー部28の後面は、戸先側縦枠21の突出部22の上端部22aの前端面に当接または近接される。また、戸先側の端部カバー部29の内側面は、戸先側縦枠21の突出部22の上端部22aの反引戸パネル側の側面(外側面)に当接または近接される。」
と記載され、また図1及び図3を参照すると、「前記突出部の前記壁体の前面からの突出寸法と、前記壁体の前面から前記前側カバー部までの壁厚方向に沿う寸法と、が略等しくなり、該突出部の突出寸法と前記端部カバー部の壁厚方向に沿う寸法とが略等しくなっていること」が看取できる。
よって、訂正事項5は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(6)一群の請求項
訂正事項1~4に係る訂正前の請求項1~4について、請求項2~4はそれぞれ請求項1を引用しているものであるから、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5〕について訂正を認める。
第3 訂正後の請求項1及び5に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1及び5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
建物の壁体の前面に沿ってアウトセット納めでスライド自在に吊下支持され、前記壁体に形成された出入開口部を開閉する引戸パネルと、前記出入開口部の戸先側に設けられる戸先側縦枠と、を備えており、
前記戸先側縦枠は、前記壁体の前面よりも前方へ突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の前記引戸パネルの戸先側端部を納める凹所を設けている引戸装置であって、
前記引戸パネルを吊下支持する上レールは、前記出入開口部の上縁に沿うように、かつ前記壁体の前面よりも前方へ突出するように配設される構成とされており、
前記上レールの前方側及び長手方向両端側を囲うように覆い、かつ前記戸先側縦枠の突出部の上端部を受け入れるカバー体を備えており、
前記カバー体は、戸幅方向に延びる平板状とされ、前記戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接される前側カバー部と、この前側カバー部の長手方向両端側に設けられ、後端面が前記壁体の前面に当接または近接される両側の端部カバー部と、を備え、戸先側の前記端部カバー部は、その内側面が前記戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接される構成とされており、
前記突出部の前記壁体の前面からの突出寸法と、前記壁体の前面から前記前側カバー部までの壁厚方向に沿う寸法と、が略等しくなり、該突出部の突出寸法と前記端部カバー部の壁厚方向に沿う寸法とが略等しくなることを特徴とする引戸装置。」
「【請求項5】
建物の壁体に形成された出入開口部を開閉する引戸パネルを、前記壁体の前面に沿ってアウトセット納めでスライド自在に吊下支持させ、前記出入開口部の戸先側に設けた戸先側縦枠を、前記壁体の前面よりも前方へ突出させるよう前後に幅広く形成し、該戸先側縦枠の突出部に、閉鎖状態の前記引戸パネルの戸先側端部を納める凹所を設けた引戸構造であって、
前記引戸パネルを吊下支持する上レールを、前記出入開口部の上縁に沿うように、かつ前記壁体の前面よりも前方へ突出するように配設し、
前記上レールの前方側及び長手方向両端側を囲うように覆い、かつ前記戸先側縦枠の突出部の上端部を受け入れるカバー体を設け、
前記カバー体は、戸幅方向に延びる平板状とされ、前記戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接された前側カバー部の長手方向両端側に、後端面が前記壁体の前面に当接または近接された両側の端部カバー部を設けた構成とされ、戸先側の前記端部カバー部の内側面が前記戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接されており、
前記突出部の前記壁体の前面からの突出寸法と、前記壁体の前面から前記前側カバー部までの壁厚方向に沿う寸法と、が略等しくなっており、該突出部の突出寸法と前記端部カバー部の壁厚方向に沿う寸法とが略等しくなっていることを特徴とする引戸装置。」
第4 特許異議の申立てについて
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1及び5に係る特許に対して、平成29年12月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
本件特許の請求項1及び5に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[証拠]
甲第1号証:特開2011-226064号公報
甲第2号証:「ご高齢者の暮らす住空間向け建材 おもいやりシリーズ ドア/収納/手摺/階段/床/壁/天井/造作部材/畳」第4刷、大建工業株式会社、2012年5月、121頁、122頁
甲第3号証:「建材総合 リビエリアロ インテリア住宅部材」第3版、パナソニック株式会社、2012年8月、295頁
甲第4号証:特開2013-2038号公報
2 甲号証の記載
(1)甲第1号証
取消理由通知において引用した甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「(A)建物の内壁2の壁面2aに沿ってアウトセット納めでスライド自在に吊下支持され、前記内壁2に形成された出入口としての開口5を開閉する引戸7と、
(B)前記開口5の戸先側に設けられる縦本枠6a及び縦額縁6bからなる縦枠と、を備えており、
(C’)前記戸先側縦枠は、前記内壁2の壁面2aよりも前方へ突出するように形成されている引戸装置であって、
(E)前記引き戸7を吊下支持する上レール20は、前記開口5の上縁に沿うように、かつ前記内壁2の壁面2aよりも前方へ突出するように配設される構成とされており、
(F’)前記上レール20の前方側及び長手方向両端側を囲うように覆うカバー部材50を備えており、
(G’)前記カバー部材50は、戸幅方向に延びる平板状とされた前側の幕板51と、この幕板51の長手方向両端側に設けられ、後端面が前記内壁2の前面に当接または近接される両側のエンドキャップ52と、を備え、
(H’)戸先側の前記エンドキャップ52は、その内側面が前記戸先側縦枠における縦額縁6bの上端部の外側面に当接または近接する引戸装置。」(申立人の主張のとおりとした。)
(2)甲第2号証
取消理由通知において引用した甲第1号証において、121頁の「アウトセットタイプ」の「横断面図」を参照すると、戸先側縦枠は、壁体の前面よりも前方へ突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の引戸パネルの戸先側端部を収める凹所を設けていることが看取できる。
(3)甲第3号証
取消理由通知において引用した甲第3号証において、295頁の「正面図」及び「横断面図」を参照すると、上レールの前方側及び長手方向両端側を囲うように覆うカバー体が看取でき、また、【鎌錠タイプの場合】を参照すると、壁体の前面よりも前方へ突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の引戸パネルの戸先側端部が当接することが看取できる。
(4)甲第4号証
取消理由通知において引用した甲第4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認める。
「吊り引戸用ガイドレール(R)から垂下する吊り引戸(10)と、上枠部(38)と戸先側及び戸尻側の縦枠部(39)からなる門字形開口枠(F)を備えており、
吊り引戸用ガイドレール(R)を組み付けるレール取付ブラケット(B)は、建物の壁面(W)にフイットする背板片(11)と、その背板片(11)の上端部から前方(正面側)へ一定の長さ(帯幅)(L)だけ連続的に張り出す水平な天井板片(12)と、その天井板片(12)の後端部付近から一定角度(α)の後上がり傾斜状態に起立する取付板片(13)と、同じく天井板片(12)の前端部から連続して上下方向へ直交状態に張り出す前化粧板片(14)とを備えた断面形状のアルミ押出材から成り、壁面(W)へアウトセット(外付け)施工されるようになっており、
前化粧板片(14)における上記水平の天井板片(12)から垂下する下側板片部(14b)の深さ(d2)は、上枠部の開口面(下端面)とほぼ一致する位置までの寸法として設定されて、上枠部の上端面(38a)である縦枠材の上端と、吊り引戸(10)の上端は、下側板片部(14b)の下端及び上枠部の開口面(下端面)よりも上方に位置しており、
レール取付ブラケット(B)には、両サイド方向から、その上端縁部と下端縁部が上記前化粧板片(14)のそれとほぼ同等の高さ位置に揃う大きさの長方形として、その前化粧板片(14)の下側板片部(14b)とほぼ同じ深さ(d2)を有する左右両サイドカバー板(23)(24)が各々取り付け固定され、
これによって、吊り引戸(10)のガイドレール(R)のみならず、そのガイドレール(R)とこれから垂下する吊り引戸(10)との上下相互間隙(S)をも、前方(正面側)や前下方から全然目視できない状態に被覆化粧している、
建物の開口部へアウトセット(外付け)施工される吊り引戸。」 (取消理由通知5頁(キ)参照。)
3 判断
(1)本件発明1について
ア 甲第1号証を主引用例として検討
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、以下の2点で相違している。
(概ね、申立人の主張する相違点1及び2が以下の相違点1、同じく相違点3~5が以下の相違点2とする。)
(相違点1)「戸先側縦枠」について、本件発明1は、「壁体の前面よりも前方へ突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の引き戸パネルの戸先側端部を収める凹所を設けている」のに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
(相違点2)「カバー体」について、本件発明1は、「戸先側縦枠の突出部の上端部を受け入れるものであって、
前側カバー部は、戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接され、戸先側の端部カバー部は、その内側面が戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接される構成とされており、
突出部の壁体の前面からの突出寸法と、壁体の前面から前側カバー部までの壁厚方向に沿う寸法と、が略等しくなり、該突出部の突出寸法と端部カバー部の壁厚方向に沿う寸法とが略等しくなる」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
(イ)相違点の判断
相違点1及び2について検討する。。
a 甲第2号証には、上記相違点1に係る構成が記載されており、当該構成を甲1発明に適用することにより、一応、相違点1に係る本件発明1の構成になり得るといえる。
b そして、甲第4号証には、上記2(4)で示したとおりの甲4発明が記載されており、甲4発明は、縦枠材の上端の下方にその下端が位置する前化粧板片(14)と左右両サイドカバー板(23)(24)によって、ガイドレール(R)、及び吊り引戸(10)とガイドレール(R)との上下相互間隙(S)を目視できない状態に被覆化粧していることから、上記aに加えて、甲1発明のカバー部材50(前側の幕板51と、この幕板51の長手方向両端側に設けられたエンドキャップ52)に、甲4発明を適用すれば、一応、カバー部材50は、戸先側縦枠の突出部の上端部を覆う(受け入れる)構成となり得るといえる。
しかしながら、戸先側縦枠の突出部の上端部と前側カバー部や端部カバー部が当接または近接するかどうか、さらに、壁体の前面からの該突出部の突出寸法と、前側カバー部や端部カバー部が壁体の前面から壁厚方向に沿う寸法との関係については不明である。
また、甲第3号証にも、当該不明な事項について記載されておらず、示唆する記載もない。
c 申立人は、特許異議申立書において、「甲1発明に、『戸先側縦枠を前後に幅広く形成して壁面の前面よりも前方へ突出する突出部を設ける』という甲2記載事項1と、『前化粧板片の上下幅を下端部が上枠部下端面の高さ位置になるように設定して、その前化粧板片により引戸の上端部を覆う』という甲4記載事項1とを適用することにより、引戸パネルの上端部に加え、戸先側縦枠の前方に突出する突出部についても、カバー体の前側カバー部が覆うようにし、その状態で、『前側カバー部が、戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接される』ようにすることは容易に想到し得るものである。」(申立書17頁19~26行)、「甲1発明に、『戸先側縦枠を前後に幅広く形成して壁面の前面よりも前方へ突出する突出部を設ける』という甲2記載事項1と、『サイドカバー板の上下幅を下端部が上枠部下端面の高さ位置になるように設定して、そのサイドカバー板により引戸の上端部を覆う』という甲4記載事項2とを適用することにより、『戸先側の端部カバー部を、その内側面が戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接される』ようにすることは当業者であれば容易に想到し得るものである。」(申立書18頁10~16行)と主張している。
d 上記cの主張について検討すると、甲1発明に、甲2記載事項1と、甲4記載事項1または2を適用することにより、前側カバー部と戸先側の端部カバー部が、戸先側縦枠の突出部の上端部を覆うことになるとしても、戸先側縦枠の突出部の上端部と、前側カバー部や端部カバー部が当接または近接するかどうか、さらには、壁体の前面からの該突出部の突出寸法と、前側カバー部や端部カバー部が壁体の前面から壁厚方向に沿う寸法との関係については、上記bで説示したとおり、申立人が提出した証拠には記載も示唆もされておらず、また、当業者が容易に想到し得るといえる理由もない。
よって、申立人の主張は採用できない。
e したがって、本件発明1は、甲1発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲第4号証を主引用例として検討
(ア)対比
本件発明1と甲4発明を対比すると、以下の2点で相違している。
(相違点A)「戸先側縦枠」について、本件発明1は、「壁体の前面よりも前方へ突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の引き戸パネルの戸先側端部を収める凹所を設けてなる」のに対し、甲4発明はそのような特定がない点。
(相違点B)「カバー体」について、本件発明1は、「戸先側縦枠の突出部の上端部を受け入れるものであって、
前側カバーは、戸幅方向に延びる平板状とされ、戸先側縦枠の突出部の上端部の前端面に後面が当接または近接され、戸先側の端部カバー部は、その内側面が戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接される構成とされており、
突出部の壁体の前面からの突出寸法と、壁体の前面から前側カバー部までの壁厚方向に沿う寸法と、が略等しくなり、該突出部の突出寸法と端部カバー部の壁厚方向に沿う寸法とが略等しくなる」のに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
(イ)相違点の判断
相違点A及びBについて検討する。
a 甲第2号証には、上記相違点Aに係る構成が記載されており、当該構成を甲4発明に適用することにより、一応、相違点Aに係る本件発明1の構成になり得るといえる。
b また、甲4発明は、縦枠材の上端の下方にその下端が位置する前化粧板片(14)と左右両サイドカバー板(23)(24)によって、ガイドレール(R)、及び吊り引戸(10)とガイドレール(R)との上下相互間隙(S)を目視できない状態に被覆化粧していることから、甲4発明に甲第2号証に記載の事項を適用すれば、上記aに加えて、一応、前化粧板片(14)と、左右両サイドカバー部(23)(24)が戸先側縦枠の突出部の上端部を覆う(受け入れる)構成になり得るといえる。
しかしながら、戸先側縦枠の突出部の上端部と前側カバー部や端部カバー部が当接または近接するかどうか、さらに、壁体の前面からの該突出部の突出寸法と、前側カバー部や端部カバー部が壁体の前面から壁厚方向に沿う寸法との関係については不明である。
また、甲第1号証及び甲第3号証にも、当該不明な事項について記載されておらず、示唆する記載もない。
c したがって、本件発明1は、甲4発明、及び甲第1号証ないし甲第3号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明5について
本件発明5は、引戸装置である本件発明1を、実質的に引戸構造の発明に書き替えたものである。
本件発明5と甲1発明を対比すると、上記(1)ア(ア)で示した相違点1及び2で相違し、その判断も、上記(1)ア(イ)で示したとおりである。
また、本件発明5を甲4発明を対比すると、上記(1)イ(ア)で示した相違点A及びBで相違し、その判断も、上記(1)イ(イ)で示したとおりである。
よって、本件発明5は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明1及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700986