審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700888

建具

審判番号
2024-700888
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-157539
登録番号
7467560
請求日
2024年09月13日
審決日
2025年09月02日
公報発行日
2026年01月30日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】YKK AP株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人樹之下知的財産事務所
  • 【異議申立人】伊澤 武登
審判長/審判官
  • 審判長 有家 秀郎
  • 審判官 西田 秀彦
  • 審判官 土屋 真理子
分類
P1651.121-ZAA(E06B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第44条、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7467560号発明「建具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7467560号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第7467560号の請求項1~3に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 出願分割の経緯の概略 特許第7467560号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和4年9月30日にされた特許法44条1項の規定による特許出願であって、令和元年6月21日に出願した特願2019-115261号(以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものである。 2 本件特許の手続の経緯の概略 (1)本件特許異議申立の前までの手続の経緯 本件特許異議申立の前までの手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和6年 4月 5日 :設定登録(請求項1~3) 同月15日 :特許掲載公報の発行 (2)本件特許異議申立の手続の経緯 本件特許異議申立は、特許異議申立人伊澤 武登(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~3に係る特許に対してされたものであり、本件特許異議申立における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和6年 9月13日 :特許異議申立書(以下「申立書」という。) の提出 同年10月18日付け:手続補正指令書(方式) 同月29日 :手続補正書(方式)の提出 同年12月26日付け:取消理由通知 令和7年 2月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 3月28日 :申立人による意見書の提出 同年 5月29日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 7月24日 :特許権者による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和7年2月26日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第7467560号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求めるものであって、その内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す)。 (1)訂正事項 特許請求の範囲の請求項1に、「 前記障子框は、前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該障子框から室内側に向けて突出した突片部を有し、」と記載されているのを、 「 前記障子框は、樹脂製框材を有し、 前記樹脂製框材は、前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該障子框から室内側に向けて突出した樹脂製の突片部を有し、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2および請求項3も同様に訂正する)。 本件訂正請求は、一群の請求項〔1-3〕に対して請求されたものである。 2 訂正事項についての訂正の適否の判断 訂正事項について、訂正の目的、新規事項の有無、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更しないものか、について検討する。 (1)訂正の目的について 訂正事項に係る訂正は、訂正前の請求項1において、「前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該障子框から室内側に向けて突出した突片部を有」するものと特定されていた「障子框」について、さらに「樹脂製框材を有する」ものと特定し、「前記樹脂製框材」が、「前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該障子框から室内側に向けて突出した樹脂製の突片部を有」するものに特定して限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2)新規事項の有無について 本件明細書段落【0009】には、「第1実施形態に係る建具としての縦すべり出し窓1は、・・・上框50、下框60、左右の縦框70および面材80を框組みしてなる障子3・・・を備えている。・・・上框50、下框60、左右の縦框70によって構成された障子框5・・・」と記載され、段落【0015】には、「上框50、下框60および左右の縦框70は、アルミ押出形材によって形成された金属製框材51,61,71と、樹脂押出形材によって形成された樹脂製框材52,62,72とが組み合わされた複合框材によってそれぞれ構成されている。」と記載されている。また、段落【0018】には、「左右の縦框70の樹脂製框材72は、・・・見付け片部721の外周側の端部に形成された係合部723と、見付け片部721の内周側の端部から室内側に突出したY軸方向に沿った突片部724とを有している。」と記載されている。 よって、訂正事項に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。 (3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更しないものかについて 訂正事項に係る訂正は、上記(1)のとおり、訂正前の発明特定事項について限定を加えて特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (4)一群の請求項 訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3は、直接または間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (5)まとめ 以上のとおり、訂正事項に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とし、同条9項により準用する同法第126条5項及び6項の規定に適合する。 よって、訂正後の請求項〔1-3〕について、本件訂正を認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、各々を「本件発明1」等といい、請求項1~3に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 【請求項1】 気密材が装着された枠体と、室外側および室内側に向けて開放移動および閉鎖移動可能に前記枠体内に配置される障子、あるいは前記枠体内に開閉不能に固定される障子とを備え、 前記障子は、見込み方向において前記枠体と対向し且つ前記気密材に当接する障子框と、 前記障子框内に配置された面材とを備え、 前記障子框は、樹脂製框材を有し、 前記樹脂製框材は、前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該障子框から室内側に向けて突出した樹脂製の突片部を有し、 前記突片部の先端の位置は、その基端の位置よりも室外側から見込み方向に離れて配置され、 前記突片部の突出寸法は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で当該枠体との間に隙間が形成される寸法とされ、 前記突片部は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で前記気密材との間に断熱空間を形成する ことを特徴とする建具。 【請求項2】 請求項1に記載の建具において、 前記障子框は、上框、下框および左右の縦框を備え、 前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つが、前記気密材に対する当接位置よりも内周側に離れた位置に前記突片部を有する ことを特徴とする建具。 【請求項3】 請求項2に記載の建具において、 前記左右の縦框が前記突片部を有する ことを特徴とする建具。 第4 取消理由の概要 本件発明に係る特許に対して、当審において、令和7年5月29日付けの取消理由通知(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (進歩性)本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、または、甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 甲第2号証 特開2014-201876号公報 甲第3号証 特開2015-196972号公報 第5 証拠について 1 甲第2号証 (1)記載事項 本件特許の原出願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の記載がある(下線は、当審において付与した。以下、同様)。 ア 【0001】~【0011】 「【技術分野】 【0001】 本発明は、結露防止構造に関し、特に、建築物の開口部に設けられて建築物の屋内と建築物の屋外との連通を遮断する障子における結露の防止に最適となる結露防止構造の改良に関する。 ・・・ 【0008】 すなわち、近年の障子にあっては、金属枠に嵌めるガラス板を外側のガラス板と内側のガラス板の複層にして間に空気層を設けることで、内側のガラス板における屋内を向く面への結露を防止することが多用され、したがって、上記した特許文献1に開示の提案に対しては、障子におけるガラス板を複層にすることが取って代わることになる。 【0009】 その結果、障子にあってガラス板を複層ガラスにする場合には、障子における結露は、金属枠部分に発生することになるが、このガラス板を複層ガラスにする障子の金属枠部分についての結露を防止する方策について、これまでに提案がないのが現状である。 【0010】 本発明は、上記した現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、ガラス板を複層ガラスにする障子の金属枠部分における結露を効果的に防止できる結露防止構造を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 上記した目的を達成するために、本発明による結露防止構造の構成を、建築物の屋内と建築物の屋外とを連通する開口を内側に形成する基枠を備え、この基枠が屋外側部に設けられて上記開口を閉鎖する障子と、屋内側部に設けられて上記障子に対向する枠部とを備え、上記障子が上記基枠に保持される金属枠と、この金属枠に保持される複層ガラスとを備え、上記枠部が上記金属枠における屋内を向く見付面に隙間を設けて対向し、上記枠部と上記障子との間にシール部材を備え、このシール部材が上記複層ガラスで仕切られる屋内の上記隙間への連通を阻止するとする。」 イ 【0015】~【0018】 「【発明を実施するための形態】 【0015】 以下に、図示した実施形態に基づいて、本発明を説明するが、本発明による結露防止構造は、図1および図2に示すように、建築物(符示せず)における躯体たる壁部(符示せず)に設けられて図1中および図2中で右側となる建築物の屋内Iと、図1中および図2中で左側となる建築物の屋外Oとの連通を許容する開口部(符示せず)に具現化される。 【0016】 すなわち、図1および図2に示すように、建築物の屋内Iと屋外Oとの連通を許容する開口部は、内側を開口(符示せず)にして建築物の屋内Iと屋外Oとを連通させる基枠1を備え、この基枠1の内側に本発明による結露防止構造が具現化されるとしている。 【0017】 言い換えれば、本発明による結露防止構造は、基枠1と、この基枠1に設けられる障子2と、基枠1に設けられて枠部を構成する防虫網戸3とを備え、さらに、防虫網戸3と障子2との間に設けられるシール部材4を備える。 【0018】 順次説明すると、基枠1は、建築物の壁部に設けられる開口部を形成する観点からすると、任意に構成されて良いが、一般的には、図示しないが、建築物の開口部が立面視で矩形に形成されることから、これに相応するように形成される。」 ウ 【0019】~【0024】 「【0019】 すなわち、基枠1は、図示するところにあって、左右の立て枠11,12(図1参照)と、この左右の立て枠11,12の上下端を繋ぐ上枠13(図2参照)および下枠14(図2参照)とを備えて、立面視で矩形を呈するように形成される。」 【0020】 そして、基枠1は、内側に障子2を設けさせるように構成されるのはもちろんのこと、図示するところでは、枠部を構成する防虫網戸3を設けさせるように構成され、さらには、閉めた状態の障子2との間で密封性を保障するため、図1中および図2中に符号15で示すように、密封シールを備える。 【0021】 そしてまた、基枠1は、図示するところにあって、図1中および図2中で左側部となる屋外側部(符示せず)の内側に障子2を保持し、図1中および図2中で右側部となる屋内側部(符示せず)の内側に防虫網戸3を保持する。 ・・・ 【0023】 ちなみに、基枠1は、図示するところでは、障子2を保持する部位(符示せず)と、防虫網戸3を保持する部位(符示せず)とが別部材からなる、すなわち、防虫網戸3を保持する屋内側部位が障子2を保持する屋外側部位と異なるとし、たとえば、屋外側部が金属製とされるとき、屋内側部は硬質の合成樹脂製とされて、開口部に設けられる際に障子2を保持する屋外側部位と連結されて一体化されるとしている。 【0024】 基枠1において、防虫網戸3を設ける屋内側部位が合成樹脂製とされる場合には、この屋内側部位が断熱性に優れることになり、したがって、屋内Iの暖気が触れることで基枠1の屋内側部に招来されることがある結露を防止できる点で有利になる。」 エ 【0026】~【0027】 「【0026】 障子2は、上記したように、基枠1における屋外側部に設けられるもので、基枠1に保持される金属枠21と、この金属枠21に保持される複層ガラス22とを備え、図示するところでは、金属枠21が基枠1に枢支されることで開放操作可能に形成される。 【0027】 ちなみに、基枠1に保持された障子2を開放操作可能にする構造としては、上記の金属枠21が基枠1に枢支されることで障子2が片開き窓構造にされたりする他、たとえば、障子2を押し出し窓構造にする場合などがあるが、本発明の具現化の上では、障子2の開閉構造が異なることは、障子2の開閉手段の構成が異なることを含めて、問題にならない。」 オ 【0032】~【0033】 「【0032】 ちなみに、金属枠21を備える障子2にあっては、金属枠21に複層ガラス22の周部(符示せず)を嵌め込むのに際して、両者間にグレージングチャンネル23を設けるとしているが、このグレージングチャンネル23を両者間に設けることで、金属枠21の言わば冷えた温度が複層ガラス22に伝わることを効果的に阻止し得ることにもなる。 【0033】 また、図示するところにあって、障子2は、閉めた状態のとき、基枠1との間を密閉して、たとえば、雨水や外気がいわゆる内側に回りこむことを阻止し得るように、図1中および図2中に符号24で示す密封シールを備える。」 カ 【0035】 「【0035】 本発明の具現化にあって、枠部は、防虫網戸3以外の構成からなるとしても良いことを前提にした上で説明すると、図示する防虫網戸3は、網戸枠31と、防虫網32とを備えてなる。」 キ 【0038】 「【0038】 ところで、防虫網戸3は、本発明における枠部を構成するが、具体的には、網戸枠31が枠部を構成するもので、この観点からすれば、図3に示すように、金属枠21の屋内Iを向く見付面21aとの間に隙間Sを出現させ、また、後述するシール部材4の基端の保持を可能にし、あるいは、シール部材4の先端の当接を許容ように構成されれば足りる。」 ク 【0044】~【0051】 「【0044】 ところで、防虫網戸3における網戸枠31は、上記したように、本発明における枠部を構成するもので、図3に示すように、障子2の金属枠21における屋内Iを向く見付面21aとの間に隙間Sを備える態勢に設けられる。 【0045】 すなわち、本発明の結露防止構造にあっては、枠部は、障子2の金属枠21における屋内Iを向く見付面21aとの間に隙間Sを備える態勢に設けられ、この態勢で、枠部と障子2との間にシール部材4を設けることで、障子2の金属枠21における屋内Iを向く見付面21aへの結露を防止する。 【0046】 ちなみに、障子2の金属枠21における屋内Iを向く見付面21aへの結露を防止する観点からすれば、この見付面21aを何かで被覆して、結露しないようにする、つまり、たとえば、防虫網戸3における網戸枠31を見付面21aに当接させて、見付面21aをいわゆる空気中に露呈させないことでも可能になると言い得る。 【0047】 しかしながら、この種の結露防止構造にあって、障子2における見付面21aに何らかの部材が常時当接する設定にする場合には、たとえば、当接する部材における製作誤差や使用中の変形などに起因して、当接が不能になったり、当接が不完全になったりすることが危惧される。そして、当接が不能になれば、また、当接が不完全になれば、見付面21aにおける結露を防止できないことになり、目的達成に十分と言えなくなる。 ・・・ 【0049】 以下には、このシール部材4について説明するが、先ず、シール部材4は、いわゆるシールとして機能するのに十分と言えるように構成されるとし、軟質合成樹脂材あるいは軟質ゴム材で長尺の中実棒状または細幅帯状あるいはチューブ状に形成されて枠部たる網戸枠31に無限帯状に設けられて、密閉性を保障する。 【0050】 図示するところでは、シール部材4は、柔軟性に富む軟質ゴム材で長尺の細幅帯状に形成されるが、シール部材4が密閉性に優れることで、また、これが枠部と障子2との間に設けられることで、上記した隙間Sと複層ガラス22で仕切られる屋内Iとの連通が阻止されることになる。 【0051】 そして、この無限帯状に設けられるシール部材4は、基本的には、基端が枠部に保持されて先端が複層ガラス22および見付面21aのいずれか一方または両方に当接し、あるいは、基端が金属枠21の見付面21aに、または、この見付面21aと複層ガラス22と境界部分に保持されて先端が枠部に当接するとする。図1および図2、すなわち、図3に示すところでは、シール部材4は、枠部たる防虫網戸3における網戸枠31に基端が保持され、先端が複層ガラス22の屋内Iを向く面に当接されるとしている。」 ケ 【0055】 「【0055】 転じて、シール部材4が枠部と障子2との間に設けられるとする限りには、上記したところに代えて、図示しないが、グレージングチャンネル23における屋内Iに位置決めされる端部にシール部材4が一体に連設され、このシール部材4の先端が枠部に当接するとしても良いと言い得る。そして、この場合には、グレージングチャンネル23について設計変更が要請されるが、この結露防止構造を具現化する上では、部品点数を少なくできる利点があると言える。」 コ 【0057】~【0061】 「【0057】 上記したところは、シール部材4の基端が枠部に設けられる場合であるが、前記したように、シール部材4の基端は、障子2側に設けられるとしても良く、この場合に、上記したように、シール部材4がグレージングチャンネル23と一体に形成されて設けられるとしても良いが、これに代えて、図示しないが、シール部材4の基端が障子2における金属枠21、すなわち、金属枠21のグレージングチャンネル23に接する内側縁部に接着材利用などで保持されるとしても良い。 【0058】 この場合には、障子2がシール部材4を備えることになるので、このシール部材4の先端が当接することになる枠部の構成については、シール部材4の基端が枠部に保持される場合に比較して、枠部の構成を簡素化できる点で有利になる。 【0059】 以上のように、シール部材4が枠部と障子2との間に設けられることにで、枠部と障子2における金属枠21の見付面21aとの間に出現する隙間Sと、複層ガラス22で仕切られる屋内Iとの連通が遮断される。 【0060】 したがって、複層ガラス22で仕切られる屋内Iの空気が隙間Sに流入して金属枠21の見付面21aに触れることが阻止されて、金属枠21の見付面21aにおける結露を防止できることになり、その結果、屋内Iの熱が金属枠21を伝わって屋外Oに放散される事態の招来を回避でき、屋内Iの保温効果を良くするのに最適となる。 【0061】 そして、枠部と金属枠21の見付面21aとの間の隙間Sが複層ガラス22で仕切られる屋内Iに連通しないから、屋外Oの冷気が複層ガラス22の屋内Iを向く面を冷やすことがなく、したがって、屋内Iの保温効果を良くするのに寄与する。」 サ 【図1】~【図3】 【図1】 [図:0001431118000001.jpg] 【図2】 [図:0001431118000002.jpg] 【図3】 [図:0001431118000003.jpg] (2)認定事項 ア 【0019】及び【0020】の記載を踏まえると、図3から、密封シール15は基枠1の備える立て枠11に装着されることが看取される。(以下「認定事項1」という。 イ 【0016】の記載を踏まえると、図3中にOと示された左側が屋外側であり、Iと示された右側が屋内側であることが看て取れる。そして、段落【0026】、【0038】の記載を踏まえると、図3から、障子2の金属枠21の屋内Iを向く見付面21aは、見込み方向において基枠1と対向し、密封シール15と当接することが看取される。(以下「認定事項2」という。) ウ 【0038】の記載を踏まえると、図1~3より、枠部を構成する網戸枠31は密封シール15よりも内周側に離れた位置に形成されることが看取される。(以下「認定事項3」という。) (3)甲2発明 以上を総合すると、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 なお、【0038】の「許容ように」という記載は、「許容するように」の明らかな誤記であると認められるので、誤記を正した上で摘記した。 <甲2発明> 「建築物の屋内Iと屋外Oとを連通させる基枠1と、この基枠1に設けられる障子2と、基枠1に設けられて枠部を構成する防虫網戸3とを備え、さらに、防虫網戸3と障子2との間に設けられるシール部材4を備える開口部の構造であって(【0016】、【0017】)、 基枠1は、建築物の壁部に設けられる開口部を形成し(【0018】)、 左右の立て枠11,12と、この左右の立て枠11,12の上下端を繋ぐ上枠13および下枠14とを備えて形成され(【0019】)、 基枠1は、内側に障子2を設けさせるように構成され、枠部を構成する防虫網戸3を設けさせるように構成され、閉めた状態の障子2との間で密封性を保障するため、密封シール15を備え(【0020】)、 密封シール15は基枠1の備える立て枠11に装着され(認定事項1)、 基枠1は、屋外側部の内側に障子2を保持し、屋内側部の内側に防虫網戸3を保持し(【0021】)、 基枠1は、防虫網戸3を保持する屋内側部が合成樹脂製とされ、障子2を保持する屋外側部が金属製とされ、開口部に設けられる際に連結されて一体化され(【0023】)、 基枠1において、防虫網戸3を設ける屋内側部が合成樹脂製とされる場合には、この屋内側部が断熱性に優れることになり、屋内Iの暖気が触れることで基枠1の屋内側部に招来されることがある結露を防止できる点で有利になり(【0024】)、 障子2は、基枠1における屋外側部に設けられるもので、基枠1に保持される金属枠21と、この金属枠21に保持される複層ガラス22とを備え、金属枠21が基枠1に枢支されることで開放操作可能に形成され(【0026】)、 障子2の金属枠21の屋内Iを向く見付面21aは、見込み方向において基枠1と対向し、密封シール15と当接し(認定事項2)、 基枠1に保持された障子2を開放操作可能にする構造としては、金属枠21が基枠1に枢支されることで障子2が片開き窓構造にされたりする他、たとえば、障子2を押し出し窓構造にする場合などがあり(【0027】)、 防虫網戸3は、網戸枠31と、防虫網32とを備え(【0035】)、 網戸枠31が枠部を構成し、金属枠21の屋内Iを向く見付面21aとの間に隙間Sを出現させ、また、シール部材4の基端の保持を可能にし、あるいは、シール部材4の先端の当接を許容するように構成され(【0038】)、 枠部を構成する網戸枠31は密封シール15よりも内周側に離れた位置に形成され(認定事項3)、 シール部材4は、軟質合成樹脂材で形成され(【0049】)、 シール部材4は、無限帯状に設けられ、基本的には、基端が枠部に保持されて先端が複層ガラス22および見付面21aのいずれか一方または両方に当接し、あるいは、基端が金属枠21の見付面21aに保持されて先端が枠部に当接し(【0051】)、 シール部材4の基端は、障子2側に設けられるとしても良く、この場合、シール部材4の基端が障子2における金属枠21に接着材利用などで保持されるとしても良く(【0057】)、 屋内Iの空気が隙間Sに流入して金属枠21の見付面21aに触れることが阻止されて、金属枠21の見付面21aにおける結露を防止できることになり、その結果、屋内Iの熱が金属枠21を伝わって屋外Oに放散される事態の招来を回避でき、屋内Iの保温効果を良くするのに最適となり(【0060】)、 屋外Oの冷気が複層ガラス22の屋内Iを向く面を冷やすことがなく、屋内Iの保温効果を良くする(【0061】)、 開口部の構造。 2 甲第3号証 (1)記載事項 本件特許の原出願の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の記載がある。 ア 特許請求の範囲 「【請求項1】 屋外側に形成した金属枠と屋内側に形成した樹脂枠とを備えた開口枠体と、 前記開口枠体に納めて開閉可能であって屋外側に形成した金属框と屋内側に形成した樹脂框とを備えた障子とを備え、 前記樹脂框の屋内側を開口枠体の樹脂枠で覆った隠し框構造を有していて、前記樹脂框の見込み面にロック機構の操作部を設けたことを特徴とする複合建具のロック構造。 【請求項2】 前記開口枠体に前記障子を収納した閉鎖状態において、 前記障子の樹脂框と前記開口枠体の樹脂枠との間にパッキンを介して空間を仕切った空気層を設けた請求項1に記載された複合建具のロック構造。 【請求項3】 前記パッキンは前記障子の樹脂框と前記開口枠体の樹脂枠との間に配設した第一パッキンと第二パッキンである請求項2に記載された複合建具のロック構造。」 イ 【0002】~【0007】 「【背景技術】 【0002】 従来、アルミ合金等の金属と樹脂とを接合した枠体と障子を備えた複合建具として、例えば特許文献1に記載された複合型の横辷り出し窓が提案されている。この横辷り出し窓は、開口部をなす窓枠の室外側に金属枠が形成され、室内側に樹脂枠が形成されている。そして、窓枠に開閉可能に取り付けられる障子は、室外側に金属框が形成され室内側に樹脂框が形成されている。この障子は上下框と左右の縦框によって四角形に框組みした框体に複層ガラスを嵌め込んでいる。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、特許文献1に記載された複合型の辷り出し窓では、障子の見付面に操作ハンドル及びサブロックなどのロック機構を取り付けるため、框の見付幅が大きくなり、ガラス開口幅が小さくなっていた。そのため、ガラスに断熱性能を発揮させることができず、建具の高断熱化が困難であった。また、冷気が框の金属部分からハンドル部及びサブロックなどのロック機構を伝わって進入するため、框の室内側が結露する問題があった。 【0006】 本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、開口枠体と障子との間に隙間を生じることがなく、しかも開口枠体の表面温度の低下を抑えて防露性を向上させるようにした複合建具のロック構造を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明による複合建具のロック構造は、屋外側に形成した金属枠と屋内側に形成した樹脂枠とを備えた開口枠体と、開口枠体に納めて開閉可能であって屋外側に形成した金属框と屋内側に形成した樹脂框とを備えた障子とを備え、樹脂框の屋内側を開口枠体の樹脂枠で覆った隠し框構造を有していて、樹脂框の見込み面にロック機構の操作部を設けたことを特徴とする。」 ウ 【0012】~【0023】 「【0012】 以下、本発明の実施形態による複合建具の一例としての縦辷り出し窓を図1から図3に基づいて説明する。 図1及び図2に示す実施形態による縦辷り出し窓1は、建物の躯体に形成された建物開口部に取り付けられる枠体2内に納めた障子3を吊元側の縦框回りに回転させることで外側に開放可能としている。縦辷り出し窓1はアルミ合金等の金属と樹脂とからなる複合型であり、四角形枠状の複合型の枠体2と、枠体2に開閉可能に納められた複合型の障子3とが設置されている。 【0013】 枠体2は、屋外側に設けられたアルミ合金等からなる四角形枠状の金属枠4とその屋内側に設けられた合成樹脂製の樹脂枠5とで構成された開口枠体を形成している。金属枠4は、左右の金属縦枠6、7と金属上枠8及び金属下枠9とで形成されている。金属上枠8は外側金属上枠部8aと内側金属上枠部8bとが樹脂製のブリッジ材10を介して連結され、屋内外の熱移動を低減させている。金属下枠9は外側金属下枠部9aと内側金属下枠部9bとが樹脂製のブリッジ材15を介して連結され、同様に屋内外の熱移動を低減させている。 【0014】 樹脂枠5は左右の金属縦枠6,7の屋内側に形成した左右の樹脂縦枠11、12と、金属上枠8の屋内側に形成した樹脂上枠13と、金属下枠9の屋内側に形成した樹脂下枠14とで構成されている。 【0015】 なお、金属縦枠7と樹脂縦枠12に代えて方立を設けた連窓としてもよい。また、左右の樹脂縦枠11、12、そして樹脂上枠13、樹脂下枠14は断面視で複数の空気室39を縦横方向に備えた格子状部40をそれぞれ形成しており、複数の空気室39によって屋外側と屋内側との間の熱移動を低減させるようにしている。 【0016】 また、障子3は、屋外側に設けられたアルミ合金等の金属からなる金属框16とその屋内側に設けられた樹脂製の樹脂框17とで構成されている。金属框16は、左右の金属縦框18,19と金属上框20及び金属下框21とで形成されている。樹脂框17は左右の金属縦框18,19の屋内側に形成した左右の樹脂縦框23、24と、金属上框20の屋内側に形成した樹脂上框25と、金属下框21の屋内側に形成した樹脂下框26とで構成されている。そして、障子3の四角形に枠組みされた金属框16及び樹脂框17の内部には例えば複層ガラスからなるガラス体31が嵌め込まれている。 【0017】 縦辷り出し窓1の障子3は、枠体2の左右の樹脂縦枠11、12、樹脂上枠13、樹脂下枠14の戸当たり面に当接することで閉鎖状態に納められ、屋外側にのみ開放可能とされている 【0018】 また、図3に示す枠体2の戸当たり側の縦枠部分において、枠体2の樹脂縦枠11の屋外側端面11aには嵌合凹部30が形成され、この嵌合凹部30には第一パッキン32Aの一端が嵌合され他端が屋外側に突出している。第一パッキン32Aは例えば略U字形状を有しており、その先端側部分は樹脂縦框23の屋内側端面23aに当接されている。また、樹脂縦枠11の屋外側端面11aにおける第一パッキン32Aから離間した位置に第二パッキン33Aが突出して形成されており、図に示す例では第二パッキン33Aは断面略J字型に屈曲または湾曲した形状を有している。 なお、第一及び第二パッキン32A,33Aは例えばPVC(ポリ塩化ビニル)等の軟質材からなり、第二パッキン33Aは樹脂縦枠11と一体形成してもよく、その場合、第二パッキン33Aの部分を樹脂縦枠11より柔らかい樹脂で押し出し成形することになる。 【0019】 そして、障子3を枠体2に納めた閉鎖状態で、障子3における樹脂縦框23の屋内側端面23aに第一パッキン32Aの先端が当接しており、また第二パッキン33Aの先端部は端面26aに接触するか(図3参照)、わずかに離間した位置にある。この場合、第一パッキン32は樹脂縦框23の端面23aに強く押圧され、第二パッキン33Aは比較的軽く樹脂縦框23の端面23aに当接するか、あるいは微小間隔で離間するように設定して断熱空間を形成している。 【0020】 これによって、水平断面視で枠体2の樹脂縦枠11と樹脂縦框23と第一及び第二パッキン32A,33Aとによって断熱空間をなす空気層35Aを形成している。この空気層35Aは樹脂とパッキンとで形成されているため断熱性が高く、枠体2と障子3との間を断熱して屋外側と屋内側との間で熱の受け渡しを低減することができ、断熱性と防露性を向上させることができる。しかも、障子3を枠体2に閉鎖させた状態で、障子3の樹脂縦框23が第一及び第二パッキン32A、33Aに当接するから気密性を確保できると共に障子3の開閉作動に影響を与えない。 【0021】 また、断熱の空気層35Aは樹脂縦枠11と樹脂縦框23との間だけでなく、図2に示すように、吊元側の樹脂縦枠12と樹脂縦框24との間にも形成されている。この場合、樹脂縦枠12の屋外側端面12aに第一パッキン32Bが形成され、その他端側に間隔を開けて第二パッキン33Bが形成されている。そのため、樹脂縦枠12と樹脂縦框24の各端面12a、24aと第一及び第二パッキン32B,33Bとで断熱空間の空気層35Bを形成している。 同様に、図1に示す樹脂上枠13の屋外側端面13aにパッキン33Cとリブ32Cで仕切られた空気層35Cが形成されている。また、樹脂下枠14の屋外側端面14aに第一パッキン32Dが取り付けられ、その下側に間隔を開けて第二パッキン33Dが形成されている。そして、樹脂下枠14と樹脂下框26の各端面14a、26aと第一及び第二パッキン32D、33Dとで断熱空間の空気層35Dを形成している。 【0022】 これら第一パッキン32B、32Dと第二パッキン33B、33Dと断熱空間の空気層35B、35Dは、上述した第一パッキン32Aと第二パッキン33A、空気層35Aと同一構成を備えており、空気層35Cも同一構成であってもよい。 そのため、枠体2の四角形枠状の樹脂枠5と障子3の四角形枠状の樹脂框17との間でそれぞれ断熱空間の空気層35A~35Dが四角形の各辺をなす枠状に形成される。 【0023】 また、図では上述の各第一パッキン32A、32B、32Dは断面略U字状に形成されており、第二パッキン33A、33B、33Dは断面略への字状やJ字状に形成されているが、第一及び第二パッキンは任意の形状を採用することができる。枠体2に対する障子3の閉鎖状態で、第一パッキン32A、32B、32Dは強く樹脂框17に当接し、第二パッキン33A、33B、33Dは弱く樹脂框17に当接するか小さい間隔で離間していればよい。第一パッキン32A、32B、32D,第二パッキン33A、33B、33D、パッキン33Cは上述したように樹脂枠5や樹脂框17より軟質のPVC等の合成樹脂やゴム等の弾性部材からなっている。」 エ 【0027】~【0028】 「【0027】 本実施形態による縦辷り出し窓1は上述の構成を備えており、次にその作用を説明する。図1及び図2に示す本実施形態による縦辷り出し窓1において、図4及び図5に示すように、枠体2に障子3を納めた閉鎖状態で、戸当たり側の樹脂縦框23の見込み面23bに設けたロック機構41の操作部44を操作してロックピン43を上下動させ、施錠位置で障子3を枠体2にロックする。 【0028】 この状態において、障子3の樹脂縦框23と枠体2の樹脂縦枠11との間では、樹脂縦框23の端面23aと樹脂縦枠11の端面11aとの間を第一及び第二パッキン32A,33Aで仕切る空気層35Aや他の空気層35B~35Dによって断熱され、屋外側と屋内側との間の熱移動が低減される。更に、障子3の樹脂框17を覆う枠体2の樹脂縦枠11、12、樹脂上枠13、樹脂下枠14に設けた複数の空気室39によっても熱移動が抑制される。」 オ 【0033】 「【符号の説明】 【0033】 ・・・ 11、12 樹脂縦枠 11a、12a、13a、14a、23a、24a,25a,26a 端面 13 樹脂上枠 14 樹脂下枠 ・・・ 23、24 樹脂縦框 ・・・ 25 樹脂上框 26 樹脂下框 ・・・」 カ 図1、図2 【図1】 [図:0001431118000004.jpg] 【図2】 [図:0001431118000005.jpg] (2)認定事項 ア 【0013】、【0014】、【0016】の記載を踏まえると、図1及び図2から、障子3の樹脂框17を構成する左右の樹脂縦框23、24、樹脂上框25及び樹脂下框26の屋内側端面23a、24a、25a、26aは、それぞれ、見込み方向において枠体2の左右の樹脂縦枠11、12、樹脂上枠13及び樹脂下枠14の屋外側端面11a、12a、13a、14aと対向することが看取される。(以下「認定事項A」という。) イ 【0018】の記載を踏まえると、図2から、樹脂縦枠11の屋外側端面11aにおける第一パッキン32Aから内周側に離間した位置に第二パッキン33Aが突出して形成されていることが看取される。また、【0018】、【0021】の記載を踏まえると、図2から、第一パッキン及び第二パッキンの設置の態様は、樹脂縦枠12においても、樹脂縦枠11と同様であり、第一パッキン32Bの先端側部分は樹脂縦框24の屋内側端面24aに当接されており、樹脂縦枠12の屋外側端面12aにおける第一パッキン32Bから内周側に離間した位置に第二パッキン33Bが突出して形成されていることが看取される。(以下「認定事項B」という。) (3)甲3発明 以上を総合すると、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。 <甲3発明> 「建物の躯体に形成された建物開口部に取り付けられる枠体2内に納めた障子3を吊元側の縦框回りに回転させることで外側に開放可能としており、アルミ合金等の金属と樹脂とからなる複合型であり、四角形枠状の複合型の枠体2と、枠体2に開閉可能に納められた複合型の障子3とが設置されている縦辷り出し窓1であって(【0012】)、 枠体2は、屋外側に設けられたアルミ合金等からなる四角形枠状の金属枠4とその屋内側に設けられた合成樹脂製の樹脂枠5とで構成された開口枠体を形成しており(【0013】)、 樹脂枠5は左右の金属縦枠6,7の屋内側に形成した左右の樹脂縦枠11、12と、金属上枠8の屋内側に形成した樹脂上枠13と、金属下枠9の屋内側に形成した樹脂下枠14とで構成され(【0014】)、 障子3は、屋外側に設けられたアルミ合金等の金属からなる金属框16とその屋内側に設けられた樹脂製の樹脂框17とで構成され、樹脂框17は左右の金属縦框18,19の屋内側に形成した左右の樹脂縦框23、24と、金属上框20の屋内側に形成した樹脂上框25と、金属下框21の屋内側に形成した樹脂下框26とで構成され、障子3の四角形に枠組みされた金属框16及び樹脂框17の内部には例えば複層ガラスからなるガラス体31が嵌め込まれており(【0016】)、 障子3は、枠体2の左右の樹脂縦枠11、12、樹脂上枠13、樹脂下枠14の戸当たり面に当接することで閉鎖状態に納められ、屋外側にのみ開放可能とされており(【0017】)、 障子3の樹脂枠17を構成する左右の樹脂縦框23、24、樹脂上框25及び樹脂下框26の屋内側端面23a、24a、25a、26aは、それぞれ、見込み方向において枠体2の左右の樹脂縦枠11、12、樹脂上枠13及び樹脂下枠14の屋外側端面11a、12a、13a、14aと対向し(認定事項A)、 枠体2の樹脂縦枠11の屋外側端面11aには嵌合凹部30が形成され、この嵌合凹部30には第一パッキン32Aの一端が嵌合され他端が屋外側に突出しており、第一パッキン32Aの先端側部分は樹脂縦框23の屋内側端面23aに当接されており、樹脂縦枠11の屋外側端面11aにおける第一パッキン32Aから内周側に離間した位置に第二パッキン33Aが突出して形成されており(【0018】、認定事項B)、 第一パッキン32Bの先端側部分は樹脂縦框24の屋内側端面24aに当接されており、樹脂縦枠12の屋外側端面12aにおける第一パッキン32Bから内周側に離間した位置に第二パッキン33Bが突出して形成されており(認定事項B)、 障子3を枠体2に納めた閉鎖状態で、障子3における樹脂縦框23の屋内側端面23aに第一パッキン32Aの先端が当接しており、また第二パッキン33Aの先端部は端面26aに接触するか、わずかに離間した位置にあり、この場合、第一パッキン32は樹脂縦框23の端面23aに強く押圧され、第二パッキン33Aは比較的軽く樹脂縦框23の端面23aに当接するか、あるいは微小間隔で離間するように設定して断熱空間を形成しており(【0019】)、 これによって、水平断面視で枠体2の樹脂縦枠11と樹脂縦框23と第一及び第二パッキン32A,33Aとによって断熱空間をなす空気層35Aを形成しており、この空気層35Aは樹脂とパッキンとで形成されているため断熱性が高く、枠体2と障子3との間を断熱して屋外側と屋内側との間で熱の受け渡しを低減することができ、断熱性と防露性を向上させることができ【0020】)、 断熱の空気層は樹脂縦枠11と樹脂縦框23との間だけでなく、吊元側の樹脂縦枠12と樹脂縦框24との間にも形成されており、この場合、樹脂縦枠12の屋外側端面12aに第一パッキン32Bが形成され、その他端側に間隔を開けて第二パッキン33Bが形成され、樹脂縦枠12と樹脂縦框24の各端面12a、24aと第一及び第二パッキン32B,33Bとで断熱空間の空気層35Bを形成しており(【0021】)、 第一及び第二パッキンは任意の形状を採用することができ、枠体2に対する障子3の閉鎖状態で、第一パッキン32A、32Bは強く樹脂框17に当接し、第二パッキン33A、33Bは弱く樹脂框17に当接するか小さい間隔で離間していればよく、第二パッキン33A、33Bは合成樹脂やゴム等の弾性部材からなっており(【0023】)、 障子3の樹脂縦框23と枠体2の樹脂縦枠11との間では、樹脂縦框23の端面23aと樹脂縦枠11の端面11aとの間を第一及び第二パッキン32A,33Aで仕切る空気層35Aや他の空気層35B~35Dによって断熱され、屋外側と屋内側との間の熱移動が低減される(【0028】)、 縦辷り出し窓1。」 第6 当審の判断 1 甲3発明を主引用発明とした進歩性欠如 事案に鑑み、まず、甲3発明を主引用発明とした進歩性欠如について検討する。 (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 (ア)甲3発明の「屋外側に設けられたアルミ合金等からなる四角形枠状の金属枠4とその屋内側に設けられた合成樹脂製の樹脂枠5とで構成された開口枠体を形成しており」、「樹脂枠5」を構成する「樹脂縦枠11」の「屋外側端面11aには嵌合凹部30が形成され、この嵌合凹部30には第一パッキン32Aの一端が嵌合され他端が屋外側に突出して」おり、また、「樹脂枠5」を構成する「樹脂縦枠12の屋外側端面12aに第一パッキン32Bが形成され」る「枠体2」は、本件発明1の「気密材が装着された枠体」に相当する。 (イ)甲3発明の「屋外側にのみ開放可能とされ」とされた「障子3」は、本件発明1の「室外側および室内側に向けて開放移動および閉鎖移動可能に前記枠体内に配置される障子」に相当し、甲3発明は、本件発明1の「室外側および室内側に向けて開放移動および閉鎖移動可能に前記枠体内に配置される障子、あるいは前記枠体内に開閉不能に固定される障子とを備え、」に相当する構成を備える。 (ウ)甲3発明の「屋外側に設けられたアルミ合金等の金属からなる金属框16とその屋内側に設けられた樹脂製の樹脂框17とで構成され」た「障子3」の「樹脂枠17を構成する」「樹脂縦框23」の「屋内側端面23a」は、「見込み方向において枠体2の樹脂縦枠11」の「屋外側端面11a」と「対向」し、「第一パッキン32Aの先端側部分」が「樹脂縦框23の屋内側端面23aに当接されて」おり、同様に、「第一パッキン32Bの先端側部分」が「樹脂縦框24の屋内側端面24aに当接されて」いることは、本件発明1の「障子は、見込み方向において前記枠体と対向し且つ前記気密材に当接する障子框」を備えることに相当する。 (エ)甲3発明の「四角形に枠組みされた金属框16及び樹脂框17の内部に」「ガラス体31が嵌め込まれて」いることは、本件発明1の「前記障子框内に配置された面材とを備え」ることに相当する。 (オ)甲3発明の「障子3」が「金属框16」と「樹脂框17」とで構成されたものであることは、本件発明1の「前記障子框は、樹脂製框材を有」することに相当する。 (カ)甲3発明の「第二パッキン33A」は、「合成樹脂」からなり、「樹脂縦框23の端面23aと樹脂縦枠11の端面11aとの間」を「第一パッキン32A」と共に仕切って「断熱空間をなす空気層35A」を形成するべく「樹脂縦枠11の屋外側端面11aにおける第一パッキン32Aから内周側に離間した位置」に「突出して形成され」るものである。 そうすると、本件発明1の「前記樹脂製框材は、前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該障子框から室内側に向けて突出した樹脂製の突片部を有」することと、甲3発明の「樹脂縦枠11」の「第一パッキン32Aから内周側に離間した位置」に「第二パッキン33A」が「突出して形成され」ることとは、ともに断熱空間を形成する「樹脂製部材は、前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該部材から突出した樹脂製の突片部を有」することで共通する。「樹脂縦枠12の屋外側端面12a」から「突出して形成され」る「第二パッキン33B」についても同様である。 (キ)上記(カ)の対比を踏まえると、本件発明1の「前記突片部の先端の位置は、その基端の位置よりも室外側から見込み方向に離れて配置され」ることと、甲3発明の「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」が「突出して形成され」ることとは、「前記突片部の先端の位置は、その基端の位置よりも見込み方向に離れて配置され」ることで共通する。 (ク)本件発明1の「前記突片部の突出寸法は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で当該枠体との間に隙間が形成される寸法とされ」ることと、甲3発明の「樹脂縦枠11の屋外側端面11a」から「突出して形成され」た「第二パッキン33A」が、「枠体2に対する障子3の閉鎖状態」で、「樹脂框17」と「小さい間隔で離間してい」ることは、「前記突片部の突出寸法は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で隙間が形成される寸法とされ」ることで共通する。「樹脂縦枠12の屋外側端面12a」から「突出して形成され」た「第二パッキン33B」についても同様である。 (ケ)甲3発明の「第二パッキン33A」は、「合成樹脂」からなり、「障子3を枠体2に納めた閉鎖状態」において、「樹脂縦框23の端面23aと樹脂縦枠11の端面11aとの間」を「第一パッキン32A」と共に仕切って「断熱空間をなす空気層35A」を形成するものであることは、本件発明1の「前記突片部は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で前記気密材との間に断熱空間を形成する」ことに相当する。「樹脂縦枠12の屋外側端面12a」から「突出して形成され」、「樹脂縦框24」の「端面24a」との間を「第一パッキン32B」と共に仕切って「断熱空間の空気層35Bを形成」する「第二パッキン33B」についても同様である。 (コ)甲3発明の「縦辷り出し窓1」は、本件発明1の「建具」に相当する。 (サ)以上を総合すると、本件発明1と甲3発明は、次の一致点Aで一致し、相違点Aで相違する。 <一致点A> 「気密材が装着された枠体と、室外側および室内側に向けて開放移動および閉鎖移動可能に前記枠体内に配置される障子、あるいは前記枠体内に開閉不能に固定される障子とを備え、 前記障子は、見込み方向において前記枠体と対向し且つ前記気密材に当接する障子框と、 前記障子框内に配置された面材とを備え、 前記障子框は、樹脂製框材を有し、 樹脂製部材は、前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該部材から突出した樹脂製の突片部を有し、 前記突片部の先端の位置は、その基端の位置よりも見込み方向に離れて配置され、 前記突片部の突出寸法は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で隙間が形成される寸法とされ、 前記突片部は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で前記気密材との間に断熱空間を形成する 建具。」 <相違点A> 樹脂製の突片部を有する樹脂製部材が、本件発明1では、「樹脂製框材」であり、そのため、突片部は「当該障子框から室内側に向けて」突出し、突片部の先端の位置は、その基端の位置よりも「室外側から」見込み方向に離れて配置され、突片部と「枠体」との間に隙間が形成されるのに対し、甲3発明は、「樹脂縦枠11」及び「樹脂縦枠12」であり、そのため、「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」は、「樹脂縦枠11」及び「樹脂縦枠12」から「室外側に向けて」突出し、突片部の先端の位置は、その基端の位置よりも「室内側から」見込み方向に離れて配置され、「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」と「樹脂縦框23」及び「樹脂縦框24」との間に隙間が形成される点。 イ 判断 上記相違点Aについて検討する。 甲2発明は、基枠1に設けられる枠部(防虫網戸3)と障子2との間に設けられるシール部材4について、シール部材4の基端は、「基本的には、基端が枠部に保持され」るが、「障子2側に設けられるとしても良」いものである。 甲3発明も、「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」は、いずれも、障子3の樹脂縦框23、24と枠体2の樹脂縦枠11、12との間に設けられ、第一パッキン32A、32Bとともに樹脂縦框23、24の端面23a、24aと樹脂縦枠11、12の端面11a、12aとの間を仕切って空気層35A、35Bを形成するものであり、突片部を「樹脂縦枠11」及び「樹脂縦枠12」が有しなければならない理由はない。 そうすると、甲3発明において、甲2発明のシール部材4の基端を「障子2側に設け」る構成を採用し、樹脂縦框23、24の屋内側端面23a、23bにおいて、第二パッキン33A、33Bが樹脂縦枠11、12から突出して形成される場合に小さい間隔で離間して配置される付近を「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」の基端とし、先端が「樹脂縦枠11」及び「樹脂縦枠12」に対して小さい間隔で離間して配置されるものとし、もって、「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」を「室内側に向けて」突出し、「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」の先端の位置は、その基端の位置よりも「室外側から」見込み方向に離れて配置され、「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」と「樹脂縦枠11」及び「樹脂縦枠12」との間に隙間が形成されるものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 特許権者の主張について (ア)特許権者の主張 特許権者は、令和7年7月24日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)において、概略、以下の主張をしている。 a 相違点Aについて (a)甲3発明と甲2発明とでは、そもそも課題や機能・作用が異なるので、甲3発明に甲2発明を適用することは容易に行えることはない。このため、第二パッキン33Aを樹脂縦框23に対して一体に設け、更に、「第二パッキン33A」を「室内側に向けて」突出し、「第二パッキン33A」の先端の位置は、その基端の位置よりも「室外側から」見込み方向に離れて配置され、「第二パッキン33A」と「樹脂枠5(樹脂縦枠11)」との間に隙間が形成されるものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 (b)甲第3号証において、段落【0007】などには「樹脂框の屋内側を開口枠体の樹脂枠で覆った隠し構造(当審注:「隠し框構造」の誤記と認められる)を有し」ていることが記載されており、このことより、樹脂枠の一部を構成する第二パッキン33Aも樹脂框の屋外側(当審注:「屋内側」の誤記と認められる)を覆い隠す部分であるといえる。ここで仮に、第二パッキン33Aが樹脂枠ではなく樹脂框に設けられるとすれば、第二パッキン33Aが樹脂框の一部として構成されることとなってしまい、樹脂框の一部である第二パッキン33Aを樹脂枠で覆い隠すことができない構成となるので、前述した隠し構造とする技術的思想に反することとなる。この甲第3号証の記載に鑑みれば、甲3発明に甲2発明を適用することには阻害要因があり、前述したように構成を変更することは到底容易になし得ることではない。 (c)甲第2号証において、段落【0057】には「上記したところは、シール部材4の基端が枠部に設けられる場合であるが、前記したように、シール部材4の基端は、障子2側に設けられるとしても良く、この場合に、上記したように、シール部材4がグレージングチャンネル23と一体に形成されて設けられるとしても良いが、これに代えて、図示しないが、シール部材4の基端が障子2における金属枠21、すなわち、金属枠21のグレージングチャンネル23に接する内側縁部に接着材利用などで保持されるとしても良い。」と記載されており、他箇所の記載を参照しても、[1]シール部材4がグレージングチャンネル23と一体に形成されて設けられる場合、[2]シール部材4の基端が障子2における金属枠21のグレージングチャンネル23に接する内側縁部に接着材利用などで保持される場合、が記載されているだけである。このため、仮に甲3発明に甲2発明を適用し得たとしても、上記[1]のように第二パッキン33A(シール部材4)をガラス体31の周縁部に配置されるグレージングチャンネルに相当する部材と一体に形成しようとする場合にはロック機構41の構成が邪魔となるので、容易には想到し得ず、また、甲3発明では、そもそも金属縦框18が屋内側においてグレージングチャンネルに接する内側縁部という構成自体を有しないので、甲2発明を参照しても、上記[2]のような構成にならない。 (d)してみると、そもそも甲3発明に甲2発明を適用することはできず、仮に甲3発明に甲2発明を適用し得たとしても、甲第3号証では前述した隠し框構造を採用することを前提とする一方、甲第2号証には、そもそも樹脂框自体について何ら記載されておらず、シール部材4の基端を障子2側に設ける形態としては上記[1][2]の構成しか記載されていないので、第二パッキン33A(シール部材4)を樹脂縦框23と一体に形成することに容易に想到できるとはいえない。(意見書9~11頁、「(3-4-2)相違点Aについて」の項) b 本件発明1の効果について 本件発明1では、次の特有の効果を発揮する。 (a)本件発明1では、突片部の突出寸法は、障子が枠体内に配置された状態で当該枠体との間に隙間が形成される寸法とされるという特有の構成を有するので、障子と枠体の気密材との性能担保上必要な密着を阻害することなく、断熱空間において生じ得る結露水の自然蒸発を促すことができるという特有の効果を発揮する。 (b)本件発明1では、「樹脂製框材」が「樹脂製の突片部」を有するという特有の構成を有するので、例えば既設の枠に新たな障子を取り付ける場合に新たな障子の框寸法が従前のものと異なっていても、枠体側に突片部が形成される場合に比べて、新たな障子に応じた寸法の突片部を容易に構成でき、これにより、突片部と気密材との間に適切な断熱空間を形成でき、更には、当該突片部を樹脂製框材に対して容易に一体成型することができて、コストダウンや生産的効率の向上を図ることができる、という特有の効果を発揮する。(意見書11頁、「(3-4-3)本件発明1の効果について」の項、意見書8頁、「(3-3-4)本件発明1の効果について」の項) (イ)主張の検討 a 相違点Aについて (a)甲3発明は、樹脂縦枠11、12と樹脂縦框23、24との間に設ける第二パッキン33A、33B(本件発明1の「突片部」に相当)を備えるものであり、シール部材の基端を設けるのが樹脂縦枠11、12であって樹脂縦框23、24ではないことが本件発明1との相違点である。 甲2発明は、「網戸枠31」の構成する「枠部」と、「障子2」の「金属枠21の屋内Iを向く見付面21aとの間」の「隙間S」に「シール部材4」が設けられて「屋内Iの空気が隙間Sに流入」することが阻止されるものであり、「基枠1」、「網戸枠31」と「障子2」の「金属枠21」との間において「密封シール15」と「シール部材4」によって空気層が形成されるものである。 そして、甲2発明も甲3発明も建具の枠と框との間において気密材及び突片部に相当する2つの部材で空気層を設けるものであって、空気の連通が抑制されて伝熱が抑制される点において課題及び機能・作用が共通している。そうすると、第二パッキン33A、33Bの基端を設ける位置を枠側から框側に変更することに関し、甲3発明に、課題及び機能・作用が共通している甲2発明の構成を適用することは当業者がなし得たことであり、特許権者の甲3発明に甲2発明を適用することは容易に行えることではないとの主張を採用できない。この点に関し、甲2発明が金属枠を用いていることが、甲3発明に、シール部材の基端位置についての甲2発明の構成を適用する上での阻害要因となるものではない。 特許権者は、さらに、このため、第二パッキン33Aを樹脂縦框23に対して一体に設け、更に、「第二パッキン33A」を「室内側に向けて」突出し、「第二パッキン33A」の先端の位置は、その基端の位置よりも「室外側から」見込み方向に離れて配置され、「第二パッキン33A」と「樹脂枠5(樹脂縦枠11)」との間に隙間が形成されるものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない旨主張する。 しかし、特許権者が主張する「隙間」に関し、「第二パッキン33A」が、「枠体2に対する障子3の閉鎖状態」で、「樹脂框17」と「小さい間隔で離間してい」る甲3発明に甲2発明の構成を採用して樹脂縦框に「第二パッキン33A」を設けるものとすれば、「第二パッキン33A」を「室内側に向けて」突出し、「第二パッキン33A」の先端の位置は、その基端の位置よりも「室外側から」見込み方向に離れて配置され、「第二パッキン33A」と「樹脂縦枠11」との間に隙間が形成されるものとなることは自然である。 また、特許権者が主張する、第二パッキン33Aを樹脂縦框23に対して「一体に設け」る点に関し、甲3発明は、上述したように樹脂縦枠11、12と樹脂縦框23、24との間に設ける第二パッキン33A、33Bを備えるものであるところ、段落【0018】において「・・・第二パッキン33Aは樹脂縦枠11と一体形成してもよく・・・」と記載され、設ける位置を樹脂框とするに際しても一体形成することは適宜なし得たことといえる。なお、本件発明1は「一体に設け」る点を特定しているものではないから、「一体に設け」ることに関する特許権者の主張は、そもそも特許請求の範囲に基づくものではない。 (b)甲第3号証の段落【0007】には「樹脂框の屋内側を開口枠体の樹脂枠で覆った隠し框構造を有し」ていることが記載されている。この記載から、「樹脂框の屋内側を開口枠体の樹脂枠で覆った」ことは理解できる。 しかし、「第二パッキン」は、「第一パッキン」とともに「空気層」を構成する部材であり、「樹脂枠の一部を構成する」ものであるとも「樹脂框の屋外側を覆い隠す部分である」といえるものではない。 また、仮に、第二パッキンが樹脂枠ではなく樹脂框に設けられるとしても、第二パッキンの基端が樹脂框側に、先端が樹脂枠側に配置されることとなるのみであって、視認される部分に大きな差が生じるものとなるともいえない。 以上のとおりであるから、甲第3号証に「樹脂框の屋内側を開口枠体の樹脂枠で覆った隠し框構造を有し」ていると記載されていることは、甲3発明に甲2発明を適用する阻害要因とはいえない。 (c)甲2発明は、「シール部材4の基端は、障子2側に設けられるとしても良く、この場合、シール部材4の基端が障子2における金属枠21に接着材利用などで保持されるとしても良」いものであり、シール部材を「障子2側」に設けることが開示されているものである。 そして、甲第2号証は、「障子2」(本件発明1の「障子」に相当)において「複層ガラス22」(本件発明1の「面材」に相当)が配置されるのが「金属枠21」(樹脂製ではないが、その内に面材が配置されるため「障子框」に相当)であるため、そのまま「シール部材4の基端」を障子2側に移した場合には「シール部材4の基端」は「金属枠21の見付面21a」に「保持され」るものとなるが、甲2発明が開示するシール部材を「障子2側」に設ける構成について、甲3発明のように、障子框において枠体や気密材等と対向する部分が樹脂框である場合に適用し、その樹脂框にシール部材を設けることは当業者が通常の創作能力を発揮してなし得ることである。 (d)以上検討したとおり、(a)~(c)の特許権者の主張を考慮しても、上記イの判断を変更すべき事情はない。 b 本件発明1の効果について (a)突片部の突出寸法が、障子が枠体内に配置された状態で当該枠体との間に隙間が形成される寸法とされることは、甲3発明も備える構成であり、隙間が形成されたことに依拠した効果は、甲3発明も奏する効果である。そのため、本件発明1が断熱空間において生じ得る結露水の自然蒸発を隙間によって促すことができるとしても、上述したように甲3発明も枠体との間に隙間が形成される寸法とされるといえるから、甲3発明は、本件発明1と同様に断熱空間において生じ得る結露水の自然蒸発を促すことができると理解するのが自然である。そうすると、特許権者の主張する効果は、本件発明1に特有の効果ではなく、甲3発明も奏する効果であるというべきである。なお、断熱空間において生じ得る結露水の自然蒸発を隙間によって促すことができることについては、本件明細書等に記載されたものではない。 (b)既設の枠に新たな障子を取り付ける場合に新たな障子の框寸法が従前のものと異なっていても、枠体側に突片部が形成される場合に比べて、新たな障子に応じた寸法の突片部を容易に構成でき、これにより、突片部と気密材との間に適切な断熱空間を形成できることは、甲2発明において障子側にシール部材を設ける構成についても奏する効果である。 また、本件発明1は、当該突片部を樹脂製框材に対して一体成型するものではなく、一体であることに依拠した特許権者の主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではないが、甲3発明は、樹脂縦枠11、12と樹脂縦框23、24との間に設ける第二パッキン33A、33Bを備えるものであるところ、段落【0018】において「・・・第二パッキン33Aは樹脂縦枠11と一体形成してもよく・・・」と記載されているから、甲2発明の構成を採用して、第二パッキン33A、33Bを設ける位置を樹脂縦框とするに際し、樹脂縦框に容易に一体成型することができて、コストダウンや生産的効率の向上を図ることができるという効果は、甲3発明及び甲2発明から予測し得る効果である。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲3発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2 ア 対比 本件発明2と甲3発明とを対比する。 (ア)甲3発明の「障子3」が「屋外側に設けられた」「金属框16」と「その屋内側に設けられた樹脂製の樹脂框17とで構成され、樹脂框17は左右の金属縦框18,19の屋内側に形成した左右の樹脂縦框23、24と、金属上框20の屋内側に形成した樹脂上框25と、金属下框21の屋内側に形成した樹脂下框26とで構成され」ることは、本件発明2の「前記障子框は、上框、下框および左右の縦框を備え」ることに相当する。 (イ)そうすると、本件発明2と甲3発明とは、先の一致点Aに加え、「前記障子框は、上框、下框および左右の縦框を備え」る点で一致し、先の相違点Aに加え、以下の点で相違する。 <相違点B> 本件発明2は、「前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つが、前記気密材に対する当接位置よりも内周側に離れた位置に前記突片部を有する」と特定されるのに対し、甲3発明は、「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」は、「樹脂縦枠11」及び「樹脂縦枠12」が有するものであるため、上記構成を備えない点。 イ 判断 上記相違点A及びBについて、あわせて検討する。 上記(1)イにおいて検討したように、甲3発明は、「第二パッキン33A」が、「障子3の樹脂縦框23と枠体2の樹脂縦枠11との間」に設けられ、第一パッキン32Aとともに樹脂縦框23の端面23aと樹脂縦枠11の端面11aとの間を仕切って空気層35Aを形成するものであり、「第二パッキン33B」も同様であるところ、甲3発明において、甲2発明のシール部材4の基端を「障子2側に設け」る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 そして、樹脂縦框23の屋内側端面23aにおいて、第二パッキン33Aが樹脂縦枠11から突出して形成される場合に小さい間隔で離間して配置される付近を「第二パッキン33A」の基端とすれば、「前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つが、前記気密材に対する当接位置よりも内周側に離れた位置に前記突片部を有する」ものとなる。「第二パッキン33B」についても同様である。 よって、甲3発明において甲2発明のシール部材4の基端を「障子2側に設け」る構成を採用し、相違点A及びBに係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明2は、甲3発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明3 ア 対比 本件発明3と甲3発明とを対比すると、両者は、本件発明2について上記(2)で示した一致点において一致し、相違点A、Bに加え、以下の点で相違する。 <相違点C> 本件発明3は、「前記左右の縦框が前記突片部を有する」と特定されるのに対し、甲3発明は、「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」は、「樹脂縦枠11」及び「樹脂縦枠12」が有するものであるため、上記構成を備えない点。 イ 判断 上記相違点A~Cについて、あわせて検討する。 本件発明3は、本件発明2において、「前記突片部を有する」のが「前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つ」であると特定していたものを、さらに限定して、「前記左右の縦框」とするものである。 上記(2)において検討したように、甲3発明は、「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」は、「樹脂縦枠11」及び「樹脂縦枠12」が有するものであるため、上記構成を備えないが、甲3発明において、樹脂縦框23、24と対向する左右の樹脂縦枠11、12は、第一パッキン32A、32Bから離間した位置に第二パッキン33A、33Bが突出して形成されているものである。 そして、先に検討したように、甲3発明において、甲2発明のシール部材4の基端を「障子2側に設け」る構成を採用することは当業者が容易になし得たことであるところ、甲3発明において「左右の樹脂縦枠」である「樹脂縦枠11」及び「樹脂縦枠12」が有する「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」を「左右の樹脂縦框23、24」が有するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲3発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 甲2発明を主引用発明とした進歩性欠如 (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明の「密封シール15」が「装着され」る「立て枠11」を備える「基枠1」は、本件発明1の「気密材が装着された枠体」に相当する。 (イ)甲2発明の「開放操作可能」にすることができる「障子2」は、「基枠1」の「屋外側部の内側」に「保持」され、「閉めた状態」で「基枠1」に「装着され」る「密封シール15」と当接するものであるから、屋外側に向けて開放移動し、屋内側に向けて閉鎖移動することは自明である。 また、甲2発明の「基枠1」の「内側に障子2を設けさせる」ことは、本件発明1の「障子」は「枠体内に配置される」ことに相当する。 そうすると、甲2発明は、本件発明1の「室外側および室内側に向けて開放移動および閉鎖移動可能に前記枠体内に配置される障子、あるいは前記枠体内に開閉不能に固定される障子とを備え、」に相当する構成を備える。 (ウ)甲2発明の「障子2」が「金属枠21」を備え、「金属枠21の屋内Iを向く見付面21aは、見込み方向において基枠1と対向し、密封シール15と当接」することは、本件発明1の「前記障子は、見込み方向において前記枠体と対向し且つ前記気密材に当接する障子框」を備えることに相当する。 (エ)甲2発明の「障子2」が「金属枠21」を備え、「金属枠21に保持される複層ガラス22」を備えることは、本件発明1の「前記障子」は、「前記障子框内に配置された面材」を備えることに相当する。 (オ)甲2発明の「障子2」は「基枠1」に設けられるものであって、「障子2」の「金属枠21」が「基枠1」の「左右の立て枠11,12」及びその上下端を繋ぐ「上枠13および下枠14」に対応する「左右の縦框」と「上框」および「下框」(本件発明1の「框材」に相当)とを備えて形成されることは技術常識である。 そうすると、本件発明1の「前記障子框は、樹脂製框材を有」することと、甲2発明の「金属枠21」が「基枠1」の「左右の立て枠11,12」及びその上下端を繋ぐ「上枠13および下枠14」に対応する部材(「左右の縦框」、「上框」及び「下框」)を有することとは、「前記障子框は、框材を有」する点で共通する。 (カ)甲2発明の「シール部材4」は、「軟質合成樹脂材」で形成され、「シール部材4の基端は、障子2側に設けられる場合」、「基端が障子2における金属枠21」に「保持され」、「先端が枠部に当接」するものであるところ、甲2発明の「枠部を構成する網戸枠31は密封シール15よりも内周側に離れた位置に形成され」るものであるから、「シール部材4」も「気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されている」ものであり、本件発明1の「前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該障子框から室内側に向けて突出した樹脂製の突片部」に相当するといえる。 そうすると、本件発明1の「前記樹脂製框材は、前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該障子框から室内側に向けて突出した樹脂製の突片部を有し、前記突片部の先端の位置は、その基端の位置よりも室外側から見込み方向に離れて配置され」ることと、甲2発明の「シール部材4」が「基端が障子2における金属枠21」に「保持され」、「先端が枠部に当接」するものであることとは、「前記框材は、前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該障子框から室内側に向けて突出した樹脂製の突片部をし、前記突片部の先端の位置は、その基端の位置よりも室外側から見込み方向に離れて配置され」る点で共通する。 (キ)甲2発明の「隙間S」のうち、「シール部材4」と「密封シール15」の間の部分は、「空気」の「流入」が「シール部材4」と「密封シール15」とによって抑制され、空気層が形成されているところ、空気層によって断熱がされることは技術常識であるから、本件発明1の「断熱空間」に相当し、甲2発明の「網戸枠31と障子2における金属枠21の見付面21aとの間に」「隙間S」を「出現」させ、また、「隙間S」の部分に「シール部材4」と「密封シール15」が備えられることは、本件発明1の「前記突片部は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で前記気密材との間に断熱空間を形成」することに相当する。 (ク)上記(ア)及び(イ)の対比を踏まえると、甲2発明の「開口部の構造」は、本件発明1の「建具」に相当する。 (ケ)以上を総合すると、本件発明1と甲2発明は、次の一致点1で一致し、相違点1及び2で相違する。 <一致点1> 「気密材が装着された枠体と、室外側および室内側に向けて開放移動および閉鎖移動可能に前記枠体内に配置される障子、あるいは前記枠体内に開閉不能に固定される障子とを備え、 前記障子は、見込み方向において前記枠体と対向し且つ前記気密材に当接する障子框と、 前記障子框内に配置された面材とを備え、 前記障子框は、框材を有し、 前記框材は、前記気密材に当接する当接位置よりも内周側に離れた位置に形成されていると共に当該障子框から室内側に向けて突出した樹脂製の突片部を有し、 前記突片部の先端の位置は、その基端の位置よりも室外側から見込み方向に離れて配置され、 前記突片部は、前記障子が前記枠体内に配置された状態で前記気密材との間に断熱空間を形成する 建具。」 <相違点1> 本件発明1は、「障子框は、樹脂製框材を有」すると特定されるのに対し、甲2発明は、障子框は金属枠21であって樹脂製框材を有するものではない点。 <相違点2> 本件発明1は、「突片部の突出寸法」が「障子が枠体内に配置された状態で当該枠体との間に隙間が形成される寸法」であるのに対し、引用発明では、「シール部材4」の寸法がそのように特定されていない点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (ア)相違点1 a 甲第3号証の背景技術(上記第5の2(1)イ)に、「窓枠に開閉可能に取り付けられる障子は、室外側に金属框が形成され室内側に樹脂框が形成されている」と記載されるように、障子框が樹脂製框を有するものとすることは周知技術である。 そして、甲3発明は、このような背景技術の障子において、框の室内側が結露する問題があったことから、開口枠体の表面温度の低下を抑えて防露性を向上させるようにしたものであるところ、甲3発明の「障子3」を構成する「金属框16」と「樹脂框17」は、本件発明1の「障子框」に相当し、甲3発明の框は「樹脂框17」を有するものであるから、甲3発明は、「障子框は、樹脂製框材を有」することに相当する構成を備える。 b 甲2発明は、「障子2」が「金属枠21」を備えるものであるが、甲2発明においても、「基枠1」について、「防虫網戸3を保持する屋内側部が合成樹脂製とされ、障子2を保持する屋外側部位が金属製とされて、開口部に設けられる際に連結されて一体化される場合には、この屋内側部位が断熱性に優れることになり、屋内Iの暖気が触れることで基枠1の屋内側部に招来されることがある結露を防止できる点で有利にな」るものであるように、「屋内Iの暖気が触れる」こと等により招来されることのある結露を防止する思想が示されているものである。 そして、甲2発明は障子の枠部分における結露の効果的な抑止を課題としているのであるから、甲第3号証等に示される周知技術ないし、甲3発明の構成を採用して、「障子框は、樹脂製框材を有」するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 (イ)相違点2 a 甲3発明の「樹脂縦枠11の屋外側端面11a」から「突出して形成され」た「第二パッキン33A」が、「枠体2に対する障子3の閉鎖状態」で、「樹脂框17(樹脂縦枠23の端面23a)」と「小さい間隔で離間してい」ることは、本件発明1の「突片部の突出寸法」が「障子が枠体内に配置された状態で当該枠体との間に隙間が形成される寸法」であることに相当する。 b 甲2発明と甲3発明は、共に開口部における断熱及び結露の抑制を課題とし、開口部の枠と障子框との間に断熱空間を形成するという機能・作用が共通するものであるから、甲2発明に甲3発明を適用して、「シール部材4」が「枠部」に「当接」する構成に代えて、小さい間隔で離間するようにして、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこと である。 ウ 特許権者の主張について (ア)特許権者の主張 特許権者は、意見書において、以下の主張をしている。 a 相違点1について 甲第2号証において、段落【0010】には「本発明は、上記した現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、ガラス板を複層ガラスにする障子の金属枠部分における結露を効果的に防止できる結露防止構造を提供することである。」と記載されており、段落【0045】には「すなわち、本発明の結露防止構造にあっては、枠部は、障子2の金属枠21における屋内Iを向く見付面21aとの間に隙間Sを備える態勢に設けられ、この態勢で、枠部と障子2との間にシール部材4を設けることで、障子2の金属枠21における屋内Iを向く見付面21aへの結露を防止する。」と記載されている。 また、甲第2号証には、金属枠21の見付面21aを何かで被覆して、結露しないようにする(段落【0046】参照)ことについて記載されているものの、段落【0047】では「しかしながら、この種の結露防止構造にあって、障子2における見付面21aに何らかの部材が常時当接する設定にする場合には、たとえば、当接する部材における製作誤差や使用中の変形などに起因して、当接が不能になったり、当接が不完全になったりすることが危惧される。そして、当接が不能になれば、また、当接が不完全になれば、見付面21aにおける結露を防止できないことになり、目的達成に十分と言えなくなる。」と記載されている。なお、図3などを参照しても、金属枠21の見付け面21aは隙間Sに露呈するものしか記載されていない。 これらの記載を考慮すると、たとえ、甲第3号証において、室内側に樹脂框が形成された複合型の部材が記載されているとしても、甲第2号証の金属枠に代えて、当該複合型の部材を用いる場合には、金属部分と樹脂部分との間の当接が不能になったり、当接が不完全になったりすることが危惧され、そして、当接が不能になれば、また、当接が不完全になれば、当該金属部分における結露を防止できないことになり、甲第2号証における目的達成に十分と言えなくなる。 従って、甲2発明が金属枠であるものを樹脂製框材を備えたものとすることには、甲第2号証における目的達成に十分と言えなくなる以上、阻害要因があるといえる。(意見書3~4頁、「(3-3-2)相違点1について」の項) b 相違点2について 甲第2号証において、段落【0050】には「図示するところでは、シール部材4は、柔軟性に富む軟質ゴム材で長尺の細幅帯状に形成されるが、シール部材4が密封性に優れることで、また、これが枠部と障子2との間に設けられることで、上記した隙間Sと複層ガラス22で仕切られる屋内Iとの連通が阻止されることになる。」と記載されており、段落【0068】には「以上のように、本発明の結露防止構造にあっては、シール部材4が枠部と障子2との間に設けられることで、枠部と障子2における金属枠21の見付面21aとの間に出現する隙間Sと、複層ガラス22で仕切られる屋内Iとの連通を遮断することが可能になる。」と記載されており、段落【0059】には「以上のように、シール部材4が枠部と障子2との間に設けられることにで、枠部と障子2における金属枠21の見付面21aとの間に出現する隙間Sと、複層ガラス22で仕切られる屋内Iとの連通が遮断される。」と記載されている。 これらの記載を考慮すると、甲2発明では、ガラス板を複層ガラスにする障子の金属枠部分における結露を効果的に防止するという目的達成のために、シール部材4の先端が相手部材に「当接」することで、隙間Sと屋内Iとの連通を「阻止(はばみとどめること。広辞苑第六版参照)」「遮断(さえぎり断つこと。ふさぎとどめること。広辞苑第六版参照)」することは明らかである。仮に隙間S6と屋内Iとが連通する隙間をわずかにでも積極的に形成するのであれば、結局のところ隙間Sと屋内Iとの連通状態が維持されることとなるので、金属枠部分の結露を効果的に防止するために、密封性に優れるシール部材4の先端を相手部材に当接させて当該連通を阻止、遮断する甲2発明の技術的思想とは大きく外れた思想となる。 ここで、金属材料と樹脂材料とでは、熱伝導率に大きな差があるので結露の生じ方も当然に大きく異なる。「JIS A 2102-2 附属書A」(https://www.jisc.go.jp/pdf1/Viewer/920f4728-300b-4cc6-87e0-916dae59f411/849534ed-c708-4655-95bb-daf72d8ae4fb)を参照すると、例えば、「アルミニウム(Si合金)」の熱伝導率が160W/(m・k)であるのに対し、「塩化ビニル(PVC),硬質」熱伝導率が0.17W/(m・k)であり、熱伝導率の差は約941倍もある。その他の金属材料と樹脂材料の熱伝導率においても数百倍から数千倍の差がある。 例えば室内温度が室外温度よりも高く室内湿度60%となる状況(室内湿度40%などと比べて結露が生じやすい状況)を想定した場合、金属材料では、熱伝導率の関係上、室外温度の影響が大きく表面温度も大きく低下するので、多量の結露が生じるが、樹脂材料では、熱伝導率の関係上、室外温度の影響が小さく表面温度の低下も小さいので、結露が生じないか、生じたとしても少量である。 このことに鑑みれば、甲2発明では、シール部材4の先端が相手部材に「当接」させ、隙間Sと屋内Iとの連通を「阻止」「遮断」することで、隙間Sを密閉空気層とするからこそ、室内空気が隙間Sに入り込むことを遮断でき、金属枠部分における結露を効果的に防止することを図っているといえる。仮に、シール部材4の先端が相手部材に対してわずかに離間した位置にある構成とした場合には、隙間Sと屋内Iとの連通を遮断できずに当該連通状態が維持され、室内空気が隙間Sに入り込みつづけることになり、金属枠部分において多量の結露が生じ続けることになってしまう。このため、金属枠部分における結露を効果的に防止するという目的を達成できず、そればかりか断熱性も低下する構成になってしまう。なお、取消理由では、甲2発明のシール部材4は密封が必須といえるほどの堅牢なものではないとされているが、あくまでも密封シール15との対比において当該密封シール15ほど堅牢なものではないという程度であって、甲第2号証の記載に鑑みれば、シール部材4は、その先端が相手部材に「当接」することで、隙間Sと屋内Iとの連通を遮断し、隙間Sを密閉空気層とすることができる程度には堅牢であると考えられる。 一方、甲第3号証において、例えば段落【0019】を参照すると、第二パッキン33Aの先端は樹脂縦框23の屋内側端面26aに接触するか、わずかに離間した位置にあることとされているが、空気層35Aの一部を構成するのは金属部分でなく樹脂縦框23であるので、前述した金属枠部分に比べて、同条件下で生じ得る結露の量は遥かに少ない。甲2発明とは前提とする構成条件が大きく異なる甲3発明では、第二パッキン33Aの先端が樹脂縦框23の屋内側端面26aに対して、わずかに離間した位置にある構成を採用し得ると一応考えられる。 また仮に密閉空気層や半密閉空気層とすることが知られているとしても、金属材料と樹脂材料とでは同条件下であっても結露の生じ方は大きく異なるので、「金属枠部分」における結露を効果的に防止する甲2発明と、「樹脂縦框23(樹脂框17)」における結露を防止する甲3発明とでは、互いに課題が共通するとはいえない。また、金属枠を採用した上でいわゆる密閉空気層を形成する甲2発明と、樹脂框17を採用した上でいわゆる半密閉空気層を形成する甲3発明とでは、互いに機能・作用が共通するとはいえない。 そればかりか、甲2発明に甲3発明を適用し得たとしても、前述したようにシール部材4の先端が相手部材に対してわずかに離間した位置に配置されるのであれば、結局のところ、隙間Sと屋内Iとの連通を遮断できずに当該連通状態が維持されて、隙間Sに露呈する金属枠部分における結露を防止し得ないだけではなく、かえって、結露が増加するおそれがある。すなわち、熱伝導率の高い金属枠部分が隙間Sに露呈する甲2発明の隙間Sを密閉空気層から半密閉空気層に代える時点で、「屋内Iの空気が隙間Sに流入することが抑制できれば連通を完全に阻止できなくとも結露防止の効果を期待できる」とは言い得ないばかりか、甲2発明は、金属枠部分における結露を「効果的」に防止するという課題を達成できなくなるので、甲2発明の技術的思想に反することとなる。 従って、甲2発明に対して甲3発明の技術を適用することには、阻害要因があるといえる。(意見書4~8頁、「(3-3-3)相違点2について」の項) c 本件発明1の効果について (3-3-4)本件発明1の効果について 本件発明1では、突片部の突出寸法は、障子が枠体内に配置された状態で当該枠体との間に隙間が形成される寸法とされるという特有の構成を有するので(上記(A7)参照)、障子と枠体の気密材との性能担保上必要な密着を阻害することなく、断熱空間において生じ得る結露水の自然蒸発を促すことができるという特有の効果を発揮する。 また、本件発明1では、「樹脂製框材」が「樹脂製の突片部」を有するという特有の構成を有するので(上記(A4)(A5)参照)、例えば既設の枠に新たな障子を取り付ける場合に新たな障子の框寸法が従前のものと異なっていても、枠体側に突片部が形成される場合に比べて、新たな障子に応じた寸法の突片部を容易に構成でき、これにより、突片部と気密材との間に適切な断熱空間を形成でき、更には、当該突片部を樹脂製框材に対して容易に一体成型することができて、コストダウンや生産的効率の向上を図ることができる、という特有の効果を発揮する。(意見書8頁、「(3-3-4)本件発明1の効果について」の項) (イ)主張の検討 a 相違点1について 特許権者は、甲第2号証においては、「防虫網戸3における網戸枠31を見付面21aに当接させて、見付面21aをいわゆる空気中に露呈させない」場合(甲第2号証明細書【0046】)について、「この種の結露防止構造にあって、障子2における見付面21aに何らかの部材が常時当接する設定にする場合には、たとえば、当接する部材における製作誤差や使用中の変形などに起因して、当接が不能になったり、当接が不完全になったりすることが危惧され」、「当接が不能になれば、また、当接が不完全になれば、見付面21aにおける結露を防止できないことになり、目的達成に十分と言えなくなる。」(甲第2号証明細書【0047】)と記載されることから、 甲第2号証の金属枠に代えて、当該複合型の部材を用いる場合には、金属部分と樹脂部分との間の当接が不能になったり、当接が不完全になったりすることが危惧され、そして、当接が不能になれば、また、当接が不完全になれば、当該金属部分における結露を防止できないことになり、甲第2号証における目的達成に十分と言え、従って、甲2発明が金属枠であるものを樹脂製框材を備えたものとすることには、甲第2号証における目的達成に十分と言えなくなる以上、阻害要因がある旨主張する。 しかし、甲第3号証の背景技術に示されるような複合サッシにおいては、通常、金属枠(框)と樹脂枠(框)との間に空気層を設ける、金属枠(框)と樹脂枠(框)との接触を極力小さくする等結露を生じさせない設計とすることが技術常識である。 そうすると、甲第2号証において、金属枠(框)の見付面に何らかの部材が常時当接する設定のものについて、金属枠(框)と樹脂枠(框)とが不完全に当接して結露が生じることによる不具合の懸念が記載されているからといって、甲2発明における周知技術ないし甲3発明の適用に阻害要因があるといえるとはいえない。 b 相違点2について 特許権者は、甲2発明の障子2が「金属枠21」であり、隙間Sと屋内Iとの連通を遮断しなければ結露を効果的に防止することができないことから、シール部材4の先端を相手部材に当接させなければ甲2発明の課題を達成できず、甲3発明を適用するのに阻害要因があるとの主張を行っている。 しかし、相違点1において検討したように、障子框を樹脂製框材を有するものとすることは当業者が容易になし得たことであるし、障子框を樹脂製框材を有するものとすることによっても、結露を抑制することが可能である上、甲3発明は「第二パッキン33A」及び「第二パッキン33B」が、いずれも、障子3の樹脂縦框23、24と枠体2の樹脂縦枠11、12との間に設けられ、第一パッキン32A、33Aとともに樹脂縦框23、24の端面23a、24aと樹脂縦枠11、12の端面11a、12aとの間を仕切って空気層35A、35Bを形成するものであり、甲3発明に用いられる「第二パッキン33A」は、「枠体2に対する障子3の閉鎖状態」で、「樹脂框17」と「小さい間隔で離間してい」るのである。そうすると、甲2発明を主引用発明とする場合においても、相違点1について判断したとおり、甲3発明の構成を適用して、甲2発明の障子2を樹脂製框材を有するものとするとともに、甲2発明の「シール部材4」の「枠体」に「当接」する構成に代えて、小さい間隔で離間するようにすることに、阻害要因があるとはいえない。 c 本件発明1の効果について 本件発明1の効果については、上記1(1)ウ(イ)bにおいて検討したとおりである。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2 ア 対比 本件発明2と甲2発明とを対比する。 (ア)上記(1)ア(オ)の対比において説示したように、甲2発明の「障子2」は「基枠1」に設けられるものであって、「障子2」の「金属枠21」が「基枠1」の「左右の立て枠11,12」及びその上下端を繋ぐ「上枠13および下枠14」に対応する「左右の縦框」と「上框」および「下框」とを備えて形成されることは技術常識である。 そうすると、甲2発明は、本件発明2の「前記障子框は、上框、下框および左右の縦框を備え、」に相当する構成を備える。 (イ)甲2発明において、「シール部材4は、無限帯状に設けられ」ることからみて、「シール部材4」が「金属枠21」の四周それぞれに設けられることは明らかであり、上記(ア)を踏まえると、甲2発明の「シール部材4」が「金属枠21」の四周それぞれに設けられることは、本件発明2の「突片部」が「前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つ」に設けられることに相当する。 (ウ)甲2発明において「枠部を構成する網戸枠31は密封シール15よりも内周側に離れた位置に形成され」ることから。「シール部材4」が設けられる位置も、「密着シール15」よりも内側であることは明らかであり、甲2発明は、本件発明2の「突片部」が「形成され」る位置が、「前記気密材に対する当接位置よりも内周側に離れた位置」であることに相当する構成を備える。 (エ)上記(ア)~(ウ)及び上記(1)アを総合すると、本件発明2と甲2発明とは、上記一致点1に加え、 「前記障子框は、上框、下框および左右の縦框を備え、 前記上框、前記下框および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つが、前記気密材に対する当接位置よりも内周側に離れた位置に前記突片部を有する」点で一致し、上記相違点1及び2において相違する。 イ 判断 上記相違点1及び2についての検討は、上記(1)イで示したとおりである。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明2は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 本件発明3 ア 対比 本件発明3と甲2発明とを対比する。 (ア)上記(2)ア(ア)及び(イ)の対比を踏まえると、本件発明3と甲2発明とは、上記(2)ア(エ)に示した一致点に加え、「前記左右の縦框が前記突片部を有する」点において一致し、上記相違点1及び2において相違する。 イ 判断 上記相違点1及び2についての検討は、上記(1)イで示したとおりである。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本件発明1~3に係る特許は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、または、甲3発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、本件発明1~3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700888

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決37件(YKK AP株式会社、伊澤 武登)
  • 2024-700870異議申立 / 2025-11-06 / 訂正認容建具
    同じ当事者: YKK AP株式会社、伊澤 武登
  • 2022-700061異議申立 / 2023-05-11 / 訂正認容建具
    同じ当事者: YKK AP株式会社、伊澤 武登
  • 2021-700139異議申立 / 2022-01-27 / 訂正認容ピボットヒンジ、及び、建具
    同じ当事者: YKK AP株式会社、伊澤 武登
  • 2020-700884異議申立 / 2021-02-26 / 維持建具
    同じ当事者: YKK AP株式会社、伊澤 武登
  • 2025-700276異議申立 / 2026-01-30 / 維持造粒物及び造粒物の製造方法
    同じ当事者: 伊澤 武登
同じ論点・分野の審決(審決分類)133件(121・E06B)
  • 2025-700908異議申立 / 2026-04-15 / 維持オーバーヘッドドアのセクション
    共通の審決分類: 121・E06B
  • 2024-700377異議申立 / 2025-11-25 / 訂正認容建具枠及び建具枠の施工方法
    共通の審決分類: 121・E06B
  • 2024-700870異議申立 / 2025-11-06 / 訂正認容建具
    共通の審決分類: 121・E06B
  • 2024-700921異議申立 / 2025-08-08 / 訂正認容開閉装置用ガイドレールの固定構造
    共通の審決分類: 121・E06B
  • 2025-700091異議申立 / 2025-06-27 / 維持開閉装置用ガイドレールの固定構造
    共通の審決分類: 121・E06B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存