特許異議申立
2025-700908
オーバーヘッドドアのセクション
- 審判番号
- 2025-700908
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-149959
- 登録番号
- 7657684
- 請求日
- 2025年09月18日
- 審決日
- 2026年04月15日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三和シヤッター工業株式会社
- 【権利者代理人】稲葉 滋
- 【異議申立人】金剛産業 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人i-MIRAI
- 審判長/審判官
- 審判長 澤田 真治
- 審判官 西田 秀彦
- 審判官 家田 政明
- 分類
- P1651.121-Y (E06B) / 標準データ:手続:異議 / 標準データ:651・121-Y (E06B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)、特許情報標準データ(審判)
事件の表示
特許第7657684号発明「オーバーヘッドドアのセクション」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7657684号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7657684号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての、出願から現在までの手続きの経緯は次のとおりである。
令和3年 9月15日 :出願(特願2021-149959号)
令和7年 3月28日 :特許権の設定登録
同年 4月 7日 :特許掲載公報の発行
同年 9月18日 :特許異議申立人 金剛産業株式会社(以下
「申立人」という。)による請求項1~4に
係る特許に対する特許異議の申立て
同年10月21日 :手続補正書(方式)の提出
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、それらをまとめて「本件特許発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
下框と、下框に下端部位が連結された複数本の中框を備えたセクションにおいて、
セクションの下框の室内側面部には、セクションの幅方向に亘って中空状の補強部が突成されており、
前記補強部は、室内側に向かって斜め上方に延びる上側傾斜面を備え、前記室内側面部から離間する方向に高さ寸法が大きくなっており、
前記下框の室内側面部には、上面から上方に延びる立ち上がり片が形成されており、
前記中框の下端部位は、前記下框の前記上面の上方で、前記立ち上がり片に連結されている、
オーバーヘッドドアのセクション。
【請求項2】
前記補強部の室内側先端部位の上端の高さ位置は、前記下框の前記上面よりも上方に位置している、
請求項1に記載のオーバーヘッドドアのセクション。
【請求項3】
前記立ち上がり片と前記室内側面部は面一の垂直面を形成しており、
前記中框の見付面部の下方部位は、当該下方部位の下側部位が前記室内側面部に当接し、当該下方部位の上側部位が前記立ち上がり片に当接した状態で、前記上側部位と前記立ち上がり片が止着部材で固定されている、
請求項1、2いずれか1項に記載のオーバーヘッドドアのセクション。
【請求項4】
前記立ち上がり片の上端には室外側に向かう水平片が形成されており、
前記中框は、前記見付面部の左右両側に位置して一対の見込面部を備えており、前記見込面部の下端は、前記見付面部の前記下方部位の上端に位置しており、
前記中框の左右の見込面部の下端は、前記水平片に近接ないし当接している、
請求項3に記載のオーバーヘッドドアのセクション。
第3 特許異議申立理由の概要及び証拠
1 申立人による特許異議申立理由
申立人が特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
本件特許発明1~4は、甲第1号証及び甲第5-1~5-6号証に記載の発明に基づいて容易に想到できた発明である。そして、甲第1号証及び甲第5-1~5-6号証に記載の発明は、甲第2号証~甲第4号証によって特許出願前に日本国内において公然知られていた。よって、本件特許請求項1~4に記載の発明は特許法第29条第2項の要件を具備していなかった発明である。(申立書17頁8~13行)
まとめると、申立人が特許異議申立書において主張する特許異議申立理由は、次のとおりであると認める。
(1)申立理由1
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1号証、甲第5-1~5-6号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明である甲1号証、甲第5-1~5-6号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠一覧
申立人が提示する証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証 金剛産業株式会社、「コンゴーオーバードアー 設計資
料・XIV 2017年9月現在」、2017年9月、
表紙、表紙裏、目次、第1~2頁、第6頁、裏表紙
甲第2号証 前田建設工業株式会社が金剛産業株式会社に(仮称)春日
井ロジスティクスセンターにオーバースライダーを発注し
た2016年1月22日付注文書
甲第3号証 金剛産業株式会社が前田建設工業株式会社から(仮称)春
日井ロジスティクスセンターにおけるオーバースライダー
の設置納入の注文に対して発行した2016年1月27日
付注文請書
甲第4号証 金剛産業株式会社が2016年5月11日付で作成した
オーバードアー配置図の抜粋
(1/19、6/19、8/19、15/19)
甲第5-1号証 「風来防ヒンジ取合図」の設計図
甲第5-2号証 甲第5-1号証の左側の断面図の上側セクションの基本構
造を示す図
甲第5-3号証 甲第5-2号証の下框と中框の連結部分を拡大し且つ各部
の名称を付した部分拡大図
甲第5-4号証 甲第5-2号証の上框と中框の連結部分を拡大し且つ各部
の名称を付した部分拡大図
甲第5-5号証 甲第5-1号証左側の断面図の上側セクションを室内側か
ら見た平面図
甲第5-6号証 「38ムンティン材」の設計図
(以下、各甲号証をその番号により「甲1」等ということがある。)
第4 各証拠について
1 甲1
(1)甲1には、以下の記載がある。
ア 表紙
「
[図:0001435205000001.jpg]
」
イ 6頁 最上段のタイトル
「
[図:0001435205000002.jpg]
」
ウ 6頁 右上部分掲載の写真
「
[図:0001435205000003.jpg]
」
エ 6頁 中央左側部分掲載の写真
「
[図:0001435205000004.jpg]
」
オ 6頁 中央右側部分掲載の写真
「
[図:0001435205000005.jpg]
」
カ 6頁 右下部分掲載のドア断面図
「
[図:0001435205000006.jpg]
」
キ 裏表紙 左下部分の記載
「
[図:0001435205000007.jpg]
」
ク 裏表紙 右下隅の記載
「
[図:0001435205000008.jpg]
」
(2)甲1の記載事項により看取される事項
ア 上記「(1)ア」及び「(1)イ」から、甲1には、「オーバードアー」が記載されているものと認められる。
そして、上記「(1)エ」の写真にはトラックからの荷下ろしのための荷受け場があることから、上記「(1)エ」の写真は「オーバードアー」を室外から撮影した写真であることが理解できる。また、上記「(1)ウ」の写真は、その「オーバードアー」の裏側であることから、上記「(1)ウ」の写真は「オーバードアー」を室内から撮影した写真であることが理解できる。
これらから、当該「オーバードアー」は、室内側と室外側を仕切るために用いられるものであることが看取される。
イ 上記「(1)カ」から、「ドア断面図」に「セクション高」と記載されていることから、このドア断面図に記載されたものが「オーバードアー」に用いられる「セクション」であることが認められ、上記「(1)ウ」、「(1)エ」及び「(1)オ」から、「オーバードアー」は「セクション」が接続されて構成されることが看取される。
ウ 上記「(1)オ」及び「(1)カ」から、「セクション」が略長方形状であることが看取され、上記「(1)ウ」、「(1)エ」、「(1)オ」及び「(1)カ」を総合すると、「高強度枠材」又は「補強リブ」は、「セクション」の室内側の面に設けられることが理解できる。
また、上記「(1)カ」から、「セクション」には、その室内側に、「補強リブ」が存する上辺部と、下辺部に厚肉部を有することが看て取れ、上記「(1)ウ」から、「セクション」には、その室内側に、高さ方向に複数本のリブ状部材を備えることが看取される。
エ 上記「(1)カ」から、「セクション」の上辺部近傍の厚肉部の室内側面部に中空状の「補強リブ」が設けられ、上記「(1)ウ」から「補強リブ」は「セクション」の幅方向に亘って設けられることが看取される。
オ 上記エを踏まえて上記「(1)オ」及び「(1)カ」を参照すると、「(1)カ」の左側に記載された「風来防」において、「補強リブ」は「セクション」の上辺部近傍の厚肉部の室内側に形成された平板状の部分の先に中空部の部分が形成されており、中空部の部分の上面は室内側に向かって上方に傾斜する上面側傾斜面が形成され、また、中空部の部分の下面は室内側に向かって下方に傾斜する下面側傾斜面が形成され、室内側面部から離間する方向に高さ寸法が大きくなる形状であることが看取される。
(3)甲1発明
上記(1)及び(2)より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
(甲1発明)
「上辺部と、下辺部に厚肉部を有し、高さ方向に複数本のリブ状部材を備えたセクションであって、(上記「(2)ウ」)
セクションの上辺部近傍の厚肉部の室内側面部に、セクションの幅方向に亘って中空状の補強リブが設けられ、(上記「(2)エ」)
補強リブは中空部の部分が形成されており、中空部の部分の上面は室内側に向かって上方に傾斜する上面側傾斜面が形成され、中空部の部分の下面は室内側に向かって下方に傾斜する下面側傾斜面が形成され、室内側面部から離間する方向に高さ寸法が大きくなる(上記「(2)オ」)
オーバードアーに用いられるセクション。(上記「(2)イ」)」
2 甲2
甲2は、概ね次の事項を説明する証拠として提出された。
「前田建設工業株式会社が、2016年1月22日に、金剛産業株式会社に対して、「(仮称)春日井ロジスティクスセンター新築工事」と題するプロジェクト名にて、愛知県春日井市高森台4丁目9-8、9-9に所在する春日井ロジスティクスセンターにオーバースライダーの納入設置を発注したことを示す注文書である。下方の表中の最上段には、注文番号が「G0029-00」であり、工期(納期)が2016年8月15日~2016年12月28日であることが記されている。」(申立書9頁18~25行)
3 甲3
甲3は、概ね次の事項を説明する証拠として提出された。
「金剛産業株式会社が、2016年1月27日付で前田建設工業株式会社に対して発行した注文請書である。下方の表には、上記注文書(甲第2号証)に記された注文番号「G0029-00」、プロジェクト名「(仮称)春日井ロジスティクスセンター新築工事」、工事(納入)場所「愛知県春日井市高森台4丁目9-8、9-9」、工期(納期)「2016年8月15日~2016年12月28日」と同じ表記がされている。」(申立書9頁末行~10頁6行)
4 甲4
甲4は、概ね次の事項を説明する証拠として提出された。
「金剛産業株式会社が2016年5月11日付で作成して発行したオーバードアー配置図の抜粋1/19、6/19、8/19、15/19である。各ページの下段の工事名称として「(仮称)春日井ロジスティクスセンター新築工事」と記され、施工が「前田建設工業株式会社」と記されていることからすれば、このオーバードアー配置図は、前田建設工業株式会社からの注文書(甲第2号証)を受けて作成されたものであることが分かる。」(申立書10頁11~17行)
5 甲5-1~甲5-6
(1)甲5-1
ア 甲5-1は、概ね次の事項を説明する証拠として提出された。
「甲第1号証の第6頁に記載された「風来防」のヒンジ取合図であり、右下の日付欄に記載の通り2009年4月30日に金剛産業株式会社が作成した図面である。」(申立書10頁25~27行)
イ 甲5-1に記載されている事項
甲5-1の右上欄に以下の記載がある。
・「名称 風来防ヒンジ取合図」
・「日付 09.04.30」
・「金剛産業株式会社 KONGO CORPORATION」
(2)甲5-2
甲5-2は、概ね次の事項を説明する証拠として提出された。
「甲第5-1号証の左側に示された断面図の上側セクションの基本構造を拡大するために金剛産業株式会社が2025年9月2日に作成した図である。」(申立書11頁6~8行)
(3)甲5-3
甲5-3は、概ね次の事項を説明する証拠として提出された。
「甲第5-2号証の下框と中框の連結部分を拡大し且つ各部の名称を付した部分拡大図であり、金剛産業株式会社が2025年9月2日に作成した。」(申立書11頁16~18行)
(4)甲5-4
甲5-4は、概ね次の事項を説明する証拠として提出された。
「甲第5-2号証の上框と中框の連結部分を拡大し且つ各部の名称を付した部分拡大図であり、金剛産業株式会社が2025年9月2日に作成した。」(申立書11頁16~18行)
(5)甲5-5
甲5-5は、概ね次の事項を説明する証拠として提出された。
「甲第5-1号証の左側に示された断面図の上側セクションの室内側から見た平面図であり、金剛産業株式会社が2025年9月6日に作成した。」(申立書11頁末行~12頁2行)
(6)甲5-6
ア 甲5-6は、概ね次の事項を説明する証拠として提出された。
「甲第5-1~5-5号証に現れた中框(ムンティン材)の設計図であり、右下の日付欄に記載の通り金剛産業株式会社が2004年2月27日に作成した。」(申立書12頁11~13行)
イ 甲5-6に記載されている事項
甲5-6の右上欄に以下の記載がある。
・「名称 38ムンティン材」
・「日付 04.02.27」
・「金剛産業株式会社 KONGO CORPORATION」
第5 当審の判断
1 各証拠の文献としての頒布性
(1)甲1について
申立人は、申立書において、甲1について、
「金剛産業株式会社が製造販売するオーバードアーの仕様や機能などの特徴を説明した資料である。
・・・
裏表紙の右下隅の「製作2017年9月」の下方に「003.TB.1709.2000」と印字されており、この数字記号の意味するところは下記の通りである。
003:カタログ番号(社内管理番号)
TB:制作会社(東洋美術印刷(株))
1709:制作日(2017年9月)
2000:発行部数(2000部)」(申立書7頁23行~8頁9行)と説明する。
甲1は、「金剛産業株式会社が製造販売するオーバードアーの仕様や機能などの特徴を説明」するための資料であり、2017年(平成29年)9月に制作され、2000部発行されたとの説明、及び、WEBサイトを通じてダウンロードが可能であったこと(上記「第4 1(1)キ」)から、甲1の内容は、本件特許の出願前に、不特定人が閲覧可能な状態であったものと認める。
よって、甲1は、本件特許の出願前に「頒布された刊行物」または「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた」ものであると認める。
(2)甲5-1及び甲5-6について
ア 公知文献であることについての適否
甲5-1及び甲5-6が、甲1に示す「オーバードアー」に用いられる「風来防」の「ヒンジ取合図」及び「中框(ムンティン材)の設計図」のために作成され、本件特許の出願前に作成された書類であったとしても、これらは公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書・図書等の情報伝達媒体ではないから、本件特許の出願前に頒布された刊行物であるということはできない。
また、甲5-1及び甲5-6のいずれについても、本件特許出願前に不特定の者が見得る状態であったということはできず、かつ、不特定の者による閲覧が本件特許出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用できる形で可能であったことを示す証拠はない。
したがって、甲5-1及び甲5-6のいずれについても、特許法29条1項3号にいう、「頒布された刊行物」または「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた」ものということはできず、甲5-1及び甲5-6に示される内容が、特許法29条1項3号に掲げる発明になったということはできない。
イ 公然知られた発明であることの適否
甲5-1及び甲5-6が、甲1に示す「オーバードアー」に用いられる「風来防」の「ヒンジ取合図」及び「中框(ムンティン材)の設計図」のために作成され、本件特許の出願前に作成された書類であるとしても、これら甲5-1及び甲5-6が、本件特許出願前に不特定の者が見得る状態であったということができず、また、本件特許出願前に実際に守秘義務等のない第三者にこれら甲5-1及び甲5-6が開示されたことを認めるに足りる証拠はない。
したがって、甲5-1及び甲5-6に示される内容が、特許法29条1項1号に掲げる発明になったということはできない。
ウ 公然実施された発明であることの適否
甲5-1及び甲5-6が、本件特許の出願前に、甲1に示す「オーバードアー」に用いられる「風来防」の「ヒンジ取合図」及び「中框(ムンティン材)の設計図」として作成されたことをもって、当該甲5-1及び甲5-6に示される具体的な建物の構造を、不特定の者が知り得る状態で、当該建物の製造等の発明の実施が行われたということはできない。
したがって、甲5-1及び甲5-6に示される内容が、特許法29条1項2号に掲げる発明になったということはできない。
エ 小括
したがって、甲5-1及び甲5-6に示される内容が、甲5-1及び甲5-6により、特許法29条1項各号に掲げる発明となったということはできない。
(3)甲5-2~甲5-5について
甲5-2~甲5-5は、いずれも、本件特許の出願日である令和3年9月15日より後の、西暦2025年(令和7年)9月2日又は同月6日に作成されたものであり、甲5-2~甲5-5に示される内容が、甲5-2~甲5-5により、特許法29条1項各号に掲げる発明となったということはできない。
2 本件発明1についての検討
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「セクション」は、本件発明1の「セクション」に相当する。
また、甲1発明の「セクション」の「下辺部」に有する「厚肉部」は、面材としての「セクション」の剛性向上のための構成であることが明らかなので、本件発明1の「セクション」が備える「下框」に相当する。
そして、甲1発明の「高さ方向」に設けられる「複数本のリブ状部材」は、それらの配置を踏まえると、面材としての「セクション」の剛性向上のための部材であることは明らかであるから、本件発明1の「中框」に相当する。
そうすると、面材全体の剛性向上のために、甲1発明の「複数本のリブ状部材」は、面材に設けられる他の剛性向上のための構成と連結されることも明らかであるから、甲1発明の「複数本のリブ状部材」は、「セクション」の「上辺部と、下辺部」に有する「厚肉部」にその上端部位及び下端部位が連結されているものと認められるので、甲1発明の「下辺部に厚肉部を有し、高さ方向に複数本のリブ状部材を備えたセクション」は、本件発明1の「下框と、下框に下端部位が連結された複数本の中框を備えたセクション」に相当する。
イ 甲1発明の「セクションの上辺部近傍の厚肉部」と、本件発明1の「セクションの下框」とは、それらが設けられる位置を踏まえると、面材としての「セクション」の剛性向上のための構成であることは明らかなので、「セクションの框部」であることで共通する。
また、甲1発明の「補強リブ」は、本件発明1の「補強部」に相当する。
そうすると、甲1発明の「セクションの上辺部近傍の厚肉部の室内側面部に、セクションの幅方向に亘って中空状の補強リブが設けられ」ることと、本件発明1の「セクションの下框の室内側面部には、セクションの幅方向に亘って中空状の補強部が突成され」ることとは、「セクションの框部の室内側面部には、セクションの幅方向に亘って中空状の補強部が突成され」ることで共通する。
ウ 甲1発明の「セクションの上辺部近傍の厚肉部の室内側面部に」設けられた「補強リブ」「の下面は室内側に向かって下方に傾斜する下面側傾斜面が形成され」ることは、面材である「セクション」の中央側、かつ、室内側に向かって、「補強リブ」の傾斜面が傾斜することなので、本件発明1の「補強部」が「セクションの下框の室内側面部」に突成されることを踏まえると、甲1発明の「補強リブ」「の下面は屋内側に向かって下方に傾斜する下面側傾斜面が形成され」ることは、本件発明1の「補強部は、室内側に向かって斜め上方に延びる上側傾斜面を備え」ることと対比すると、「補強部は、セクションの中央側に向い、かつ、室内側に向かって斜めに延びる傾斜面を備え」ることで共通する。
エ 甲1発明の「補強リブ」が「室内側面部から離間する方向に高さ寸法が大きくなる」ことは、本件発明1の「補強部」が「前記室内側面部から離間する方向に高さ寸法が大きくなって」いることに相当する。
オ 甲1発明の「オーバードアー」は、本件発明1の「オーバーヘッドドア」に相当する。
カ 上記ア~オの対比を総合すると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
下框と、下框に下端部位が連結された複数本の中框を備えたセクションにおいて、
セクションの框部の室内側面部には、セクションの幅方向に亘って中空状の補強部が突成されており、
前記補強部は、セクションの中央側に向かい、かつ、室内側に向かって斜めに延びる傾斜面を備え、前記室内側面部から離間する方向に高さ寸法が大きくなっている、
オーバーヘッドドアのセクション。
(相違点)
本件発明1は「補強部が突成され」るのが、「セクションの下框の室内側面部」であり、「前記下框の室内側面部には、上面から上方に延びる立ち上がり片が形成されており、前記中框の下端部位は、前記下框の前記上面の上方で、前記立ち上がり片に連結されている」のに対し、
甲1発明では、「補強部が突成され」るのが、「セクションの上辺部近傍の厚肉部の室内側面部」であり、「複数本のリブ状部材」と「セクション」の「厚肉部」との接合構造が特定されていない点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
ア 甲1発明が甲第1号証に記載された発明(上記「第3 1(1)申立理由1」)であるものとしての検討
甲1の他の記載を参照しても、甲1発明において「複数本のリブ状部材」と「セクション」の「厚肉部」との接合構造が特定されておらず、また、当該接合構造について示唆する記載もないため、甲1に接した当業者が、甲1発明に基づき、本件発明1の「前記下框の室内側面部には、上面から上方に延びる立ち上がり片が形成されており、前記中框の下端部位は、前記下框の前記上面の上方で、前記立ち上がり片に連結されている」との構成を容易に想到し得るとはいえない。
そして、本件発明1は、当該相違点に係る本件発明1の構成を有することにより、「下框の上面部に、室内側面部を上方に延出させて立ち上がり片(例えば、垂直辺と水平片からなる)を形成したことで、止着部材(例えば、ブランドリベット)の締結部位を、下框の上面部の上方に設定することが可能となり、立ち上がり片における孔加工を容易に行うことを可能としている。立ち上がり片を形成することは、下框全体の高さ寸法を大きくする場合に比べて、重量の増加が限定的である。」(本件明細書の段落【0008】)との効果を有する。
イ 甲1発明が公然知られた発明(上記「第3 1(2)申立理由2」)であるものとしての検討
申立人は申立書(8頁10~17行)において、
「甲第1号証の第6頁には高強度オーバードアー「風来防」が掲載されている。
「風来防」は、愛知県春日井市高森台4目9-8、9-9に所在する(仮称)春日井ロジスティクスセンター(現:MJロジパーク春日井1)に2017年1月17日に設置されている。この設置事実を、後述の甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証により示す。すなわち、甲第1号証に記載の「風来防」は本願出願前の2017年1月17日には公然と知られた状態になっていた。」と主張するので、甲1に記載の「風来防」が、甲1等から認められる公然知られた発明であったものとして、以下に検討する。
甲1に記載の「風来防」が、甲2~4に基づいて、本件出願前に公然と知られていたとしても、甲1の記載からは、その構成として、甲1発明以上のものを看取・認定できないから、本件発明1と公然知られた甲1発明との対比・判断は、上記「ア」と同様の結論となることは明らかである。
ウ 申立人の主張についての見解
(ア)申立人は、申立書(13頁17~23行)において、上記相違点に係る本件発明1の「前記下框の室内側面部には、上面から上方に延びる立ち上がり片が形成されており、前記中框の下端部位は、前記下框の前記上面の上方で、前記立ち上がり片に連結されている」との構成について、甲5-1~甲5-3(当審注:「3」は「6」の誤記であると認める。)に開示されている旨主張するが、上記「1(2)」及び「1(3)」で説示したように、甲5-1~甲5-6は本件の出願時に文献としての頒布性を有しておらず、甲5-1~甲5-6に示される内容が、特許法29条1項各号に掲げる発明とはならないために、申立人のこの主張は採用できない。
(イ)また、甲5-1及び甲5-6に記載された「ヒンジ取合図」及び「中框(ムンティン材)の設計図」に示された内容が、甲1に示す「風来防」を有するオーバードアのセクションを構成するヒンジ及び中框と同一のものであることを示す証拠は提出されておらず、これまでに提出された証拠から、甲1発明が、上記相違点に係る本件発明1の構成を有していたことが明らかであるとはいえないので、甲5-1及び甲5-6の存在をもって、甲1発明の「複数本のリブ状部材」と「セクション」の「厚肉部」との接合構造が特定されたとはいえない。
エ 他の証拠について
申立人が提出した他の証拠である甲2、甲3及び甲4を参照しても、上記相違点に係る本件発明1の構成は開示されておらず、これら甲2、甲3及び甲4に記載された事項により、上記判断に影響を及ぼさない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、及び、申立人が提出したその余の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2~4についての検討
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えたものであるから、上記2に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明、及び、申立人が提出したその余の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700908