特許異議申立
2017-700754
スキンケア組成物において使用するための超吸収性ポリマー及びシリコーンエラストマー
- 審判番号
- 2017-700754
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-500680外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月31日
- 審決日
- 2017年10月04日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
- 【権利者代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
- 【異議申立人】荒井 健之
- 分類
- P1651.121-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6074025号発明「スキンケア組成物において使用するための超吸収性ポリマー及びシリコーンエラストマー」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6074025号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6074025号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)3月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年3月19日 米国)を国際出願日として特許出願され、平成29年1月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年7月31日に特許異議申立人 荒井 健之 により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第6074025号の請求項1ないし9の特許に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明9」といい、本件発明1ないし9を総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの本件発明1は以下のとおりである。
(本件発明1)
「【請求項1】
a.ポリアクリル酸ナトリウムによってグラフトされているデンプンからなる、0.01重量%~10重量%の超吸収性ポリマーであって、非膨潤状態において、100μm以下の数平均粒径を示し、前記超吸収性ポリマー1グラム当たり20gから2000gの水を吸収する水吸収能を有する超吸収性ポリマーと、
b.0.1重量%~20重量%のシリコーンエラストマーと、
c.20%~98%の水とを含む増粘水性組成物。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として下記の甲第1号証、従たる証拠として下記の甲第2号証ないし甲第8号証を提出し、(1)本件発明1ないし5、及び7は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、(2)本件発明6は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証ないし甲第7号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、(3)本件発明8及び9は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明及び甲第8号証に示される技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし9は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件発明1ないし9に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである旨主張している。
特許異議申立人が提出した甲第1号証ないし甲第8号証
甲第1号証:特開2011-256154号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2000-327523号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2002-322015号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2002-3338号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特表2010-535778号公報
甲第6号証:特表2002-540135号公報
甲第7号証:特開2005-314704号公報
甲第8号証:「化粧品用シリコーン」カタログ,信越化学工業株式会社,2015年
第4 各証拠の記載事項
1 甲1の記載事項
(1)甲1には、以下の記載がある(下線は当審で付加した。以下同様。)。
(甲1-1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸Naグラフトデンプンを含有することで、ムース状を呈し、ふんわりとした独特の軽い使用感、清涼感に優れた化粧料に関する。さらに、表面処理粉体を使用することで、粉体の分散性向上、撥水、撥油性付与によるロングラスティング効果、肌への密着性など、様々な優れた特徴を得る事ができる。」
(甲1-2)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の気泡含有化粧料は、疎水化無水ケイ酸を含有するため、使用感の点で満足のいくものではなかったり、O/W型乳化化粧料に関しては、外相が水相のため、ロングラスティング効果という点では満足いくものでなかったり、また油性ホイップト化粧料に関しては、高融点ワックスを用いて気泡安定性を保つため、使用感の点で、満足のいくものではなかった。また、アシル化アミノ酸塩とL-リジンもしくはL-グルタミンとの縮合物にて表面処理された粉体を含有する油中水型または水中油型ホイップ状化粧料に関しては、表面処理粉体を一定量以上含有する必要があり、スキンケアのような、粉体含有量の少ない化粧料を調整することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明人は鋭意検討した結果、アクリル酸Naグラフトデンプンを含有することで、ムース状を呈し、ふんわりとした独特の軽い使用感、清涼感に優れた化粧料を得る事ができ、さらに、表面処理粉体を使用することで、粉体の分散性向上、撥水、撥油性付与によるロングラスティング効果、肌への密着性など、様々な優れた特徴を得る事ができる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、アクリル酸Naグラフトデンプンを含有することで、ムース状を呈し、ふんわりとした独特の軽い使用感、清涼感に優れた化粧料に関する。さらに、表面処理粉体を使用することで、粉体の分散性向上、撥水、撥油性付与によるロングラスティング効果、肌への密着性など、様々な優れた特徴を得る事ができる。
【発明の効果】
【0007】
以上説明するように、アクリル酸Naグラフトデンプンを含有することで、ムース状を呈し、ふんわりとした独特の軽い使用感、清涼感に優れた化粧料を得る事ができ、さらに、表面処理粉体を使用することで、粉体の分散性向上、撥水、撥油性付与によるロングラスティング効果、肌への密着性など、様々な優れた特徴を得る事ができることは明らかである。」
(甲1-3)「【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、上記本発明を詳細に説明する。
本発明の化粧料で用いるアクリル酸Naグラフトデンプンは、水溶性高分子のゲル化剤であり、市販品として、MAKIMOUSSE12、MAKIMOUSSE25[大東化成工業株式会社製社製]を用いる事ができる。MAKIMOUSSE12の平均粒子径は12.9μm(レーザー回折式粒度分布計を用いて測定)、COVACRYL MV60の平均粒子径は25.8μm(レーザー回折式粒度分布計を用いて測定)、外観は白色であり、走査型電子顕微鏡観察したところ、図1、図2に示すような不定形の粒子形状を有していた。MAKIMOUSSE12はより滑らかなムースを形成し、MAKIMOUSSE25はよりパウダリーなムースを形成するため、用途に応じて、選択することができる。
【0009】
本発明の化粧料では上記アクリル酸Naグラフトデンプンを化粧料の総量に対して、0.1~50質量%の範囲で配合することが可能である。」
(甲1-4)「【0010】
本発明の化粧料で用いる粉体とは、従来公知のものが使用でき、その形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、鱗片状、紡錘状等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができ、例えば無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料等があげられ、具体的には、無機粉体としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンエラストマー粉体、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロン、6ナイロン、アクリルパウダー、アクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等;界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等;有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γー酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、微粒子酸化チタン、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化亜鉛等の微粒子粉体、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等から選ばれる粉体が挙げられる。また、タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、萸色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる顔料が挙げられる。
【0011】
(中略)
【0012】
本発明の化粧料では上記粉体を化粧料の総量に対して、0.1~50質量%の範囲て配合することが可能である。」
(甲1-5)「【実施例】
【0017】
〔実施例1~2、比較例1~2〕
表1の処方と製造方法に従ってO/Wムース状ファンデーションを試作した。尚、配合量の単位は質量%である。
【0018】
【表1】
【0019】
製造方法
成分A、Cを80℃に加温し、均一に混合した成分Bを成分Aに添加し、よく混合した。成分AとBの混合物を成分Cに攪拌しながら添加し、よく混合した。徐冷して製品を得た。
【0020】
表1の結果より、本発明の実施例1、2はムース状を呈し、軽い使用感、清涼感に優れ、また、ロングラスティング効果、肌への密着性に優れていた。特に、実施例2では、撥水撥油性表面処理顔料を使用していることで、特にロングラスティング効果に優れていた。これに対して比較例3はムース状を呈しているものの、未処理顔料を用いているため、ロングラスティング効果、密着性という点で、劣っていた。比較例4は、ムース状を呈さず、軽い使用感の項目が実施例に比べて、かなり低くなった。実施例1、2のO/Wムース状ファンデーションは、ふんわりとした独特の軽い使用感、清涼感、ロングラスティング効果、肌への密着性の全てにおいて優れていた。」
(甲1-6)「【0029】
〔実施例5〕
表4の処方と製造方法に従って水性ムース状アイシャドーを試作した。尚、配合量の単位は質量%である。
【0030】
【表4】
【0031】
製造方法
成分Aを均一に混合し、成分Bに攪拌しながら添加してよく混合し、成分Cを添加して、よく混合する。得られたムース状混合物を容器に充填して製品を得た。
【0032】
この水性ムース状アイシャドーはムース状を呈し、ふんわりとした軽い独特の使用感、清涼感、ロングラスティング効果、肌への密着性の全てにおいて優れていた。」
(甲1-7)「【0033】
〔実施例6〕
表5の処方と製造方法に従って水性ムース状ブラッシャーを試作した。尚、配合量の単位は質量%である。
【0034】
【表5】
【0035】
製造方法
成分Aを均一に混合し、成分Bに攪拌しながら添加してよく混合し、成分Cを添加して、よく混合する。得られたムース状混合物を容器に充填して製品を得た。
【0036】
この水性ムース状ブラッシャーはムース状を呈し、ふんわりとした軽い独特の使用感、清涼感、ロングラスティング効果、肌への密着性の全てにおいて優れていた。」
(2)甲1に記載された発明
(甲1-1)ないし(甲1-7)の記載から、甲1には、以下の甲1発明5(特に実施例5の記載から)、甲1発明6(特に実施例6の記載から)、甲1発明1(特に実施例1の記載から)及び甲1発明2(特に実施例2の記載から)が記載されているものと認められる。
(甲1発明5)
「 以下の配合成分からなる水性ムース状アイシャドー。
配合成分 配合量(質量%)
成分A
オクチルシリル化処理タルク 4.0
オクチルシリル化処理雲母チタン粉体 4.0
オクチルシリル化処理ガラスフレーク 4.0
球状セルロース末(注1) 3.0
成分B
グリセリン 5.0
アクリル酸Naグラフトデンプン(注2) 1.0
精製水 残量
防腐剤 適量
成分C
アクリレーツコポリマー(注3) 5.0
注1:CELLULOBEADS D-10(大東化成工業株式会社製)
注2:MAKIMOUSSE 25(大東化成工業株式会社製)
注3:DAITOSOL 4000SJT(大東化成工業株式会社製)」
(甲1発明6)
「 以下の配合成分からなる水性ムース状ブラッシャー。
配合成分 配合量(質量%)
成分A
フッ素・オクチルシリル化複合処理タルク 10.0
フッ素・オクチルシリル化複合処理赤色202号 0.5
フッ素・オクチルシリル化複合処理酸化鉄 1.0
フッ素・オクチルシリル化複合処理酸化チタン 1.0
フッ素・オクチルシリル化複合処理雲母チタン粉体 4.0
球状セルロース末(注1) 3.0
成分B
グリセリン 5.0
アクリル酸Naグラフトデンプン(注2) 1.0
精製水 残量
防腐剤 適量
成分C
スチレンアクリレーツコポリマー(注3) 5.0
注1:CELLULOBEADS D-10(大東化成工業株式会社製)
注2:MAKIMOUSSE 25(大東化成工業株式会社製)
注3:DAITOSOL 5000STY(大東化成工業株式会社製)」
(甲1発明1)
「 以下の配合成分からなるO/Wムース状ファンデーション。
配合成分 配合量(質量%)
成分A
ステアリン酸 2.5
ステアリン酸グリセリル(SE) 1.8
セチルアルコール 0.5
ミネラルオイル 9.9
成分B
アミノ酸処理酸化鉄(注1) 1.5
アミノ酸処理酸化チタン(注2) 8.5
球状セルロース末(注3) 3.0
成分C
精製水 残部
グリセリン 9.0
トリエタノールアミン 1.2
アクリル酸Naグラフトデンプン(注4) 0.5
防腐剤 適量
注1:ASI処理酸化鉄(大東化成工業株式会社製)
注2:ASI処理酸化チタン(大東化成工業株式会社製)
注3:CELLULOBEADS D-10(大東化成工業株式会社製)
注4:MAKIMOUSSE 25(大東化成工業株式会社製)」
(甲1発明2)
「 以下の配合成分からなるO/Wムース状ファンデーション。
配合成分 配合量(質量%)
成分A
ステアリン酸 2.5
ステアリン酸グリセリル(SE) 1.8
セチルアルコール 0.5
ミネラルオイル 9.9
成分B
フッ素・アクリルシリコーン複合処理酸化鉄(注1) 1.5
フッ素・アクリルシリコーン複合処理酸化チタン(注2) 8.5
球状セルロース末(注3) 3.0
成分C
精製水 残部
グリセリン 9.0
トリエタノールアミン 1.2
アクリル酸Naグラフトデンプン(注4) 0.5
防腐剤 適量
注1:FSA処理酸化鉄(大東化成工業株式会社製)
注2:FSA処理酸化チタン(大東化成工業株式会社製)
注3:CELLULOBEADS D-10(大東化成工業株式会社製)
注4:MAKIMOUSSE 25(大東化成工業株式会社製)」
2 甲2の記載事項
甲2には、以下の記載がある。
(甲2-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に関し、更に詳しくは、保水性に優れる皮膚外用剤に関する。」
(甲2-2)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、この様な状況下為されたものであり、多硫酸化多糖類の保水作用を更に高める手段を提供することを課題とする。
【0005】
【課題の解決手段】この様な状況に鑑み、本発明者らは多硫酸化多糖類の保水作用を更に高める手段を求めて、鋭意研究を重ねた結果、三次元構造を有するシリコーン類とともに皮膚外用剤に含有させることにより、この様な課題が解決しうることを見いだし、発明を完成させるに至った。」
(甲2-3)「【0007】2)本発明の皮膚外用剤の必須成分である三次元構造を有するシリコーン
本発明の皮膚外用剤は三次元構造を有するシリコーンを必須成分として含有することを特徴とする。ここで三次元構造を有するシリコーンとは、珪素原子の内、1個の珪素原子が3個乃至は4個の酸素との結合子を有した部分を少なくとも全珪素原子数の10%以上含有する、立体的な結合構造を有するシリコーン類のことを意味し、言い換えれば、通常のシリコーン類と無水珪酸との中間的な性質を有する素材であり、具体的には、トーレ株式会社製のトレフィル・シリーズのような架橋型メチルポリシロキサン、東芝シリコーン株式会社製のトスパール・シリーズの様なメチルシロキサン網状重合体或いは高度に三次元構造が形成されたシリコーンゴムに代表されるシリコーンエラストマーが例示できる。これらの性状としては、高粘度のやや流動性を有する性状~ゴム状~固体が好ましい。これらは市販品を購入して使用することもできるし、ジアルコキシジアルキルシランとアルキルトリアルコキシシランとを共重合させ、必要に応じて、アルコキシトリアルキルシラン等を用いてエンドキャッピングすることにより、製造することができ、この様に調整したものを使用することも可能である。本発明の皮膚外用剤に於いては、これら三次元構造を有するシリコーン類は唯一種を含有させることもできるし、2種以上を組み合わせて含有させることもできる。本発明の皮膚外用剤に於ける、これらシリコーン類の好ましい含有量は、大凡0.1~30重量%であり、更に好ましくは0.5~10重量%である。これはシリコーンが極端多すぎると、製剤そのものが油っぽくなったりするため好ましくない場合があり、少なすぎると保水性向上効果が発揮できない場合があるからである。」
3 甲3の記載事項
甲3には、以下の記載がある。
(甲3-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素ガス発生が抑制され製剤の経日安定性に優れ、撥水性に富み、ラスティング効果に優れ、感触にも優れていることを特徴とする化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】反応性シリコーンオイルであるメチルハイドロジェンポリシロキサンにて被覆処理した微粒子粉体を化粧料に配合することが広く行われている。」
(甲3-2)「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明人らはこれらの問題に鑑み、その対策方法を鋭意検討した。その結果、鎖長が短く、かつ非反応性のジメチルシロキサン単位を有した、特定の構造を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて表面処理を行うと、高重合度のものと比べてよりSiH基の反応性が高まり、水素ガスの発生量が抑制できることを見出した。さらに、従来のシリコーンで被覆処理したものと比べても撥水性、ラスティング効果、感触に差はなく、いずれも優れていることが判った。」
(甲3-3)「【0037】本発明の化粧料では、シリコーンエラストマーを配合していることが好ましい。シリコーンエラストマーは製剤の感触を調整する効果に優れている。本発明で用いるシリコーンエラストマーとしては、粒子形状を持つものであっても、形状を持たずに油分散体の形態を持つものでも構わないが、粒子形状を持つものであって、かつシリコーンエラストマーの一次粒子径が0.1~50μmの範囲に入り、かつ一次粒子の形状が球状の粉末から選ばれることが好ましい。さらに、粒子形状を持つシリコーンエラストマーが油剤に混練されたもの、もしくは粉砕機により微粉砕されたもの、もしくは水系分散体から選ばれる1種以上の形態で製剤に配合することが好ましい。シリコーンエラストマーはその表面が異種のシリコーン化合物で表面処理されていてもいなくても構わない。本発明で用いるシリコーンエラストマーとして特に好ましいものとしては、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のトレフィルE-505,506,507,508などのトレフィルEシリーズや信越化学工業製のKSGシリーズなどが挙げられる。シリコーンエラストマーの配合量としては、化粧料の総量に対して0.1~10質量%の範囲が挙げられる。」
4 甲4の記載事項
甲4には以下の記載がある。
(甲4-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機粉体、油性成分、カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル付加カルボキシビニルポリマー、平均粒径0.001~0.1μmの無水珪酸とを含有する水中油型化粧料に関し、更に詳しくは、顔面の好ましくないツヤを抑えることにより、マット感を演出する化粧効果に優れ、且つ、肌上で粉体がよれたりせずに均一に伸び広がり、みずみずしく、さっぱりとした水中油型化粧料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、水中油型化粧料において、顔面の好ましくないツヤを抑えてマット感を演出するためには、微細な無水珪酸等を配合し、皮脂や余分な油を吸収させる技術や、無水珪酸や酸化アルミニウム等の球状粉体を配合し、可視光線を多方向に散乱させる技術等が用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、微細な無水珪酸を水中油型化粧料に配合すると、安定化剤として配合されている水溶性高分子との相互作用により、経時的な粘度の増加や塗布時に肌上で粉体がよれたりする場合があった。また、無水珪酸や酸化アルミニウム等の球状粉体を配合した水中油型化粧料は、マット感を演出する効果が十分では無かった。
【0004】
【課題を解決する為の手段】かかる実情に鑑み、本発明者らは、有機粉体を7~20質量%と、平均粒径0.001~0.1μmの無水珪酸とを含有する水中油型化粧料がマット感を演出する効果に優れることを見出し、鋭意検討した結果、該水中油型化粧料に更に、油性成分とカルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル付加カルボキシビニルポリマーとを組み合わせて含有させることにより、塗布時に粉体がよれることなく、使用性及び経時安定性が特に向上することを見出し、本発明を完成させた。」
(甲4-2)「【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる成分(A)の有機粉体は、柔らかい感触により伸び広がりが良好でマット感を演出する効果に優れるものであり、具体的には、ポリメチルシルセスキオキサンやポリオルガノシロキサンエラストマー等のシリコーン樹脂粉末、ラウロイルリジン等のアミノ酸粉末、ポリメタクリル酸メチル等のポリアクリル酸エステル粉末、トウモロコシデンプンやタピオカデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、ジャガイモデンプン等のデンプン粉末、ナイロン粉末、シルク粉末、ポリスチレン粉末、ポリエチレン粉末、結晶セルロース粉末、等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。尚、これら有機粉体は、通常公知の疎水化処理剤及び処理方法により、疎水化して用いることも可能である。
【0007】また、成分(A)の有機粉体は、肌への付着性及びさらっとした使用感の観点から、平均粒径1~30μmが好ましく、3~20μmが特に好ましい。更に、前記例示した有機粉体の中でも、肌及び水との親和性が良好であるため、みずみずしい使用感と肌との密着性に優れるデンプン粉末が特に好ましい。
【0008】本発明の水中油型化粧料における、成分(A)の含有量は7~20質量%(以下、単に「%」と記す)であり、更には、10~16%であると、べたつきを抑え、マット感を演出する効果により優れる。尚、成分(A)の含有量が7%未満であると、べたつきを抑え、マット感を演出する効果が十分に発揮できず、20%を超えると粉っぽい感触が強くなり、経時的に分離する場合があるため好ましくない。」
第5 判断
1 本件発明1について
(1)甲1発明5を引用発明とする対比・判断
ア 本件発明1と甲1発明5とを対比する。
(ア)
a 本件特許に係る出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)には、以下の記載がある。
「【0029】
好ましくは、超吸収性ポリマーは、非膨潤状態において、100μm以下、好ましくは50μm以下、例えば、2μm~100μmの数平均粒径を示すか(中央粒径は25である)、又は、好ましくは約2μm~約40μmの範囲の数平均粒径を示す(中央粒径は12である)ポリアクリル酸ナトリウムデンプンである。1%水溶液の粘度は、好ましくは、pH 4で20~30Pas、更により好ましくは22~29Pasの範囲、pH 7で23~28Pasの範囲である。好ましい超吸収性ポリマーとしては、Kobo Products Inc.によって供給されるMakimousse 12及びMakimouse 25が挙げられる。」
b 当該記載を参酌するに、甲1発明5の大東化成工業株式会社製MAKIMOUSSE 25であるアクリル酸Naグラフトデンプンは、「ポリアクリル酸ナトリウムによってグラフトされているデンプンからなる超吸収性ポリマーであって、非膨潤状態において、100μm以下の数平均粒径を示し、前記超吸収性ポリマー1グラム当たり20gから2000gの水を吸収する水吸収能を有する超吸収性ポリマー」であると認められる。
c そして、甲1発明5の大東化成工業株式会社製MAKIMOUSSE 25であるアクリル酸Naグラフトデンプンの配合量、1.0質量%は、本件発明1の超吸収性ポリマーの配合量の範囲である0.01重量%~10重量%に包含される。
d よって、甲1発明5の、「配合量、1.0質量%」の「大東化成工業株式会社製MAKIMOUSSE 25」である「アクリル酸Naグラフトデンプン」は、本件発明1の「a.ポリアクリル酸ナトリウムによってグラフトされているデンプンからなる、0.01重量%~10重量%の超吸収性ポリマーであって、非膨潤状態において、100μm以下の数平均粒径を示し、前記超吸収性ポリマー1グラム当たり20gから2000gの水を吸収する水吸収能を有する超吸収性ポリマー」に相当する。
(イ)
a 甲1発明5において、精製水及び防腐剤を除くその他の成分の合計の配合量は26質量%であるから、精製水及び防腐剤の合計の配合量は74質量%である。
化粧料における一般的な防腐剤の含有量を考慮すると、甲1発明5における精製水の配合量は、本件発明1の水の配合量の範囲である20%~98%に包含されるものと認められる。
b よって、甲1発明5の、「配合量、残量」である「精製水」は、本件発明1の「20%~98%の水」に相当する。
(ウ)甲1発明5の「水性ムース状アイシャドー」は水性組成物であり、アクリル酸Naグラフトデンプンなどを含むことにより精製水と比較して粘度が増加していることは明らかである。
よって、甲1発明5の「水性ムース状アイシャドー」は、本件発明1の「増粘水性組成物」に相当する。
(エ)本件明細書の記載を参酌するに、本件発明は、追加の増粘剤(段落【0040】)、紫外線活性物質(段落【0060】)、光安定剤(段落【0064】)、乳化剤(段落【0074】)、スキンケア活性剤(段落【0078】)などの追加の成分を含んでもよいものであるから、甲1発明5がアクリル酸Naグラフトデンプン及び精製水以外の成分を含んでいることは、本件発明1との対比において相違点とはならない。
イ 一致点及び相違点
したがって、本件発明1と甲1発明5とは、
「 a.ポリアクリル酸ナトリウムによってグラフトされているデンプンからなる、0.01重量%~10重量%の超吸収性ポリマーであって、非膨潤状態において、100μm以下の数平均粒径を示し、前記超吸収性ポリマー1グラム当たり20gから2000gの水を吸収する水吸収能を有する超吸収性ポリマーと、
c.20%~98%の水とを含む増粘水性組成物。」
の発明である点において一致し、以下の相違点において相違する。
(相違点)
本件発明1は、「b.0.1重量%~20重量%のシリコーンエラストマー」を含むのに対し、甲1発明5は、「シリコーンエラストマー」を含まない点。
ウ 上記相違点について検討する。
甲2には、多硫酸化多糖類を含有する化粧料において、シリコーンエラストマーなどの三次元構造を有するシリコーン類を含有させることにより、多硫酸化多糖類の保水作用を更に高めること、甲3には、鎖長が短く、かつ非反応性のジメチルシロキサン単位を有した、特定の構造を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて表面処理した微粒子粉体を配合した化粧料において、シリコーンエラストマーを配合し、製剤の感触を調整すること、甲4には、水中油型化粧料において、ポリオルガノシロキサンエラストマーなどの有機粉体を7~20質量%と、平均粒径0.001~0.1μmの無水珪酸とを含有させることにより、マット感を演出する効果に優れたものとすることが記載されている。
また、(甲1-4)には、併用することができる有機粉体としてシリコーンエラストマー粉体が例示されている。
エ そこで、本件発明1の奏する作用効果について検討する。
(ア)本件明細書には、本件発明の奏する効果について以下の記載がある。
「【0110】
超吸収性ポリマーとエラストマーとの組み合わせの効果を示す実施例
本発明の組み合わせの効果としては、皮膚の外観の改善及び製品の安定性の改善が挙げられる。両方の効果は、以下に提供するデータによって証明されるように、個々の成分を鑑みると予想外であり、驚くべきものであり、かつ相乗的である。」
「【0114】
次に、これら4つの処方を上記の通りインビトロ光沢試験に供した。以下に提供するこの試験の結果から分かる通り、超吸収性ポリマー及びエラストマーの両方は、基本処方(実施例28)に添加したとき、個々に光沢を低減する。重要なことに、これら2つの材料の組み合わせは、いずれか単独で得られるよりも光沢を遥かに低いレベルにする。したがって、この材料の組み合わせは、著しい皮膚外観効果を提供すると予測される。
【0115】
【表6】
」
「【0118】
以下に示す通り、従来の増粘剤(Simulgel INS-100)を含むベースエマルション、及び超吸収性ポリマー増粘剤を含むベースエマルションは、両方とも、室温条件下で5ヶ月間エージングした後許容可能な安定性を示し、従来の増粘剤(Simulgel INS-100)及びエラストマーを両方含有するエマルションは、エージングの際に著しい粘度低下を示した。対照的に、超吸収性ポリマー及びエラストマー系は、同様のエージング条件に供したとき、著しい粘度低下を全く示さなかった。
【0119】
【表8】
」
これらの記載から、本件発明1は、ポリアクリル酸ナトリウムによってグラフトされているデンプンからなる超吸収性ポリマーと、シリコーンエラストマーとを併用することにより、光沢低減による皮膚外観の向上、及び製品の保存安定性の双方を達成するという作用効果を奏するものと認められる。
(イ)これに対し、甲4に、ポリオルガノシロキサンエラストマーなどの有機粉体及び無水珪酸の併用がマット感を演出する効果に優れていること、並びに、油性成分とカルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル付加カルボキシビニルポリマーとを組み合わせて含有させることにより経時安定性が向上することが記載されているものの、ポリアクリル酸ナトリウムによってグラフトされているデンプンからなる超吸収性ポリマーと、シリコーンエラストマーとを併用した組成物が、光沢低減による皮膚外観の向上、及び製品の保存安定性の双方を達成するという作用効果を奏するものであることの認識は、いずれの甲各号証からも見いだすことはできない。
(ウ)したがって、本件発明1は、甲1発明5及び甲2ないし甲4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)甲1発明6、甲1発明1及び甲1発明2を引用発明とする対比・判断
本件発明1と甲1発明6、甲1発明1あるいは甲1発明2とをそれぞれ対比すると、甲1発明6、甲1発明1及び甲1発明2はいずれもシリコーンエラストマーを含まないものであるから、各発明間には、上記相違点と同様の相違点が存在する。
そして、甲1ないし甲4にシリコーンエラストマーに関する記載があるとしても、上記(1)で示したとおり、本件発明1の奏する作用効果は、いずれの甲各号証からも見いだすことはできないものであるから、本件発明1は、甲1発明6、甲1発明1又は甲1発明2、及び甲2ないし甲4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)よって、本件発明1についての特許異議申立人の取消理由には理由がない。
2 本件発明2ないし9について
本件発明2ないし9は、本件発明1を更に減縮したものであるところ、本件発明1についての特許異議申立人の取消理由に理由がないことは、上記「1 本件発明1について」で検討したとおりであるから、本件発明2ないし9についての特許異議申立人の取消理由も同様に理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700754