特許異議申立
2022-701042
歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物
- 審判番号
- 2022-701042
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-549064
- 登録番号
- 7058344
- 請求日
- 2022年10月21日
- 審決日
- 2024年10月07日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】出口 智也
- 【権利者代理人】村田 卓久
- 【権利者代理人】小島 一真
- 【異議申立人】家田 亘久
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 井上 典之
- 審判官 齊藤 真由美
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.14 -YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7058344号発明「歯肉健康を促進するための口腔ケア組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7058344号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10、14〕、〔11~13〕、15、16、17、18、19、20、21について訂正することを認める。
特許第7058344号の請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に係る特許を維持する。
特許第7058344号の請求項3~4、6、10、14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7058344号(以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2020-549064号)は、2018年(平成30年)3月29日を国際出願日とする出願であり、令和4年4月13日に設定の登録(請求項の数:14)がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和4年10月21日に特許異議申立人 家田 亘久 (以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~14に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和5年 5月 8日付け 取消理由通知
同年 8月 9日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 9月22日付け 訂正請求があった旨の通知
同年10月27日 意見書の提出(申立人)
令和6年 1月22日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 4月25日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 5月27日付け 手続補正指令(方式)(特許権者宛て)
同年 6月20日 手続補正書(方式)の提出(特許権者)
同年 7月 8日付け 訂正拒絶理由通知
同年 8月28日 手続補正書及び意見書の提出(特許権者)
なお、令和5年8月9日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「先の訂正請求」という。)は、令和6年4月25日提出の訂正請求書による訂正の請求がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、申立人には、先の訂正請求に対する意見書の提出の機会が与えられており、下記第2の2で述べる本件訂正請求により、本件特許の特許請求の範囲が相当程度減縮され、本件特許異議申立事件において提出された全ての証拠及び意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても、本件訂正請求による訂正後の本件特許の請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に係る特許を維持すべきとの結論になると合議体は判断した。
したがって、本件訂正請求については、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるといえるから(特許法第120条の5第5項ただし書)、申立人に再度の意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 訂正請求について
1 訂正請求書の補正及びその適否
(1) 第1の補正について
令和6年6月20日提出の手続補正書(方式)による補正(以下「第1の補正」という。)は、同年4月25日提出の訂正請求書について、請求の理由が一群の請求項ごとに記載されていないこと、訂正事項1、6及び7に記載された訂正後の内容と添付の訂正特許請求の範囲の記載の内容が相違していること、訂正事項6及び7の記載が正確でないこと、訂正事項10の内容を正確に特定できないこと、並びに、訂正事項12~18の内容を正確に特定できないことを指摘し、当該訂正請求書の記載の補正を命じた、同年5月27日付け手続補正指令(方式)に対応する補正をしたものである。
したがって、第1の補正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項ただし書き第3号に該当するから、当該補正を認める。
(2) 第2の補正について
令和6年8月28日提出の手続補正書による補正(以下「第2の補正」という。)は、第1の補正後の同年4月25日提出の訂正請求書及びこれに添付された訂正特許請求の範囲において、訂正事項1により本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された組成物から「除く」とされる組成物が含む成分として「エチレンジアミン、四酢酸」なるものが記載されているところ(下線は当審合議体が付した。以下同じ。)、当該記載を「エチレンジアミン四酢酸」に補正するものである。
第2の補正前の上記訂正請求書及び訂正特許請求の範囲は、「四酢酸」という現実に存在するのか不明な化合物の記載が含まれているため、技術的に適切に理解することができないものであったこと、また、令和6年4月25日提出の意見書において、訂正事項1による訂正後の本件特許の請求項1に係る発明の組成物は、甲2発明の認定の根拠とされた甲第2号証に記載の実施例VIを具体例の一つとする、甲第2号証の請求項1に規定された第1組成物(第一スズ組成物)の必須成分を含む組成物を除外したものである旨の説明が記載されているところ、甲第2号証の請求項1には、「エチレンジアミン、四酢酸」なる記載は存在せず、「エチレンジアミン四酢酸」との記載があることから、上記「エチレンジアミン、四酢酸」なる記載は、「エチレンジアミン四酢酸」の明らかな誤記であったことが理解できる。
そうすると、第2の補正は、当該「エチレンジアミン、四酢酸」なる明らかに誤った記載を、正しい記載である「エチレンジアミン四酢酸」に補正するものといえるから、「軽微な瑕疵の補正」に該当し、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
したがって、第2の補正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するから、当該補正を認める。
そして、第2の補正により、令和6年7月8日付け訂正拒絶理由通知書において指摘した訂正拒絶理由(概略、「四酢酸」なる化合物を含む技術的に理解できない組成物は、請求項1に記載の「口腔ケア組成物」から「除く」ことができないから、令和6年4月25日提出の訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない、というもの。)は、解消した。
2 訂正の請求の趣旨
上記1の第1及び第2の補正後の令和6年4月25日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、
「特許第7058344号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~21について訂正することを求める。」
というものである。
3 訂正の内容
下記(1)で説示するとおり、本件訂正は、訂正後の請求項1~10、14~21からなる「一群の請求項」(以下「一群の請求項A」という。)、及び、訂正後の請求項11~13からなる別の「一群の請求項」(以下「一群の請求項B」という。)について、それぞれの「一群の請求項」ごとに訂正の請求がされたものである。
そして、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載、本件訂正請求書の記載、及び、本訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載からみて、本件訂正の内容は、下記(2)及び(3)の訂正事項1~18からなるものと認められる。なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。
(1) 一群の請求項及び訂正単位について
ア 一群の請求項A
本件訂正前の請求項1~9、14について、請求項2~9、14は、それぞれ請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用するものであり、下記(2)アの訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1~9、14に対応する訂正後の請求項1~9、14、15~21は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する「一群の請求項」である。
本件訂正前の請求項10、14について、独立形式の請求項10は、下記(2)ケの訂正事項9によって削除されるが、請求項14は、請求項10の記載を引用するものであり、形式的には請求項10に連動して訂正されるといえるから、訂正前の請求項10、14に対応する訂正後の請求項10、14は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する「一群の請求項」である。
そして、共通する訂正後の請求項14を有する、「一群の請求項」である訂正後の請求項1~9、14、15~21と、他の「一群の請求項」である訂正後の請求項10、14は、特許法施行規則第45条の4に規定されるとおり、一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係が、当該関係に含まれる請求項を介して他の一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係と一体として特許請求の範囲の全部又は一部を形成するように連関している関係を有するものであるから、組み合わされて1つの「一群の請求項」を構成するものである。
したがって、訂正前の請求項1~10、14に対応する、訂正後の請求項1~10、14~21は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」(「一群の請求項A」)である。
イ 一群の請求項B
本件訂正前の請求項11~13について、請求項12、13は、それぞれ独立形式の請求項11の記載を直接的に又は間接的に引用するものであり、下記(3)の訂正事項18によって記載が訂正される請求項11に連動して訂正されるから、訂正前の請求項11~13に対応する訂正後の請求項11~13は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する「一群の請求項」(「一群の請求項B」)である。
ウ 別の訂正単位とする求めについて
本件訂正請求においては、訂正後の請求項15~21について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされている。また、訂正後の請求項15~21は、いずれも他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載されている。
エ 一群の請求項及び訂正単位についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、「一群の請求項」である訂正後の請求項1~10、14~21(「一群の請求項A」)、及び、別の「一群の請求項」である訂正後の請求項11~13(「一群の請求項B」)について、それぞれ「一群の請求項」ごとに訂正の請求がされたものであって、「一群の請求項A」のうち、訂正後の請求項15、16、17、18、19、20、21について、それぞれの請求項についての訂正が認められる場合には、訂正後の請求項1~10、14とは別途訂正することの求めがされたものである。
(2) 一群の請求項Aの訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸と、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物。」
と記載されているのを、
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸と、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物、アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤、並びにリジンまたはその誘導体とノニオン界面活性および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤を除く)。」
に訂正する。
請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~9、14も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項1には、「請求項1を引用する請求項2~9も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照し、上記のとおり認定した。)
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1~4のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1に記載の」
に訂正する。
請求項5の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項6~9、14も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項4には、「請求項5を引用する請求項7~9も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~6のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1,2,又は5のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項7の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項8~9、14も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項4には、「請求項7を引用する請求項8,9も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1~7のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1,2,5,又は7のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項8の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項9、14も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項7には、「請求項8を引用する請求項9も同様に訂正する。」と記載されているが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1~8のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1,2,5,7,又は8のいずれか一項に記載の」
に訂正する。
請求項13の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項14も同様に訂正する。
(合議体注:本件訂正請求書の訂正事項8には、請求項14についての記載はないが、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の記載も参照して、上記のとおり認定した。)
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項3のうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「アミノ酸」を請求項3に記載された選択肢のうちの「シトルリン」に限定し、
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物。」
と記載して、新たに請求項15とする
シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項4のうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて独立形式に改め、「アミノ酸」を請求項3に記載された選択肢のうちの「シトルリン」に限定し、
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記第一スズイオン源が、前記組成物の0.05重量%~4重量%の量で存在し、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、ヨウ化第一スズ、塩化フッ化第一スズ、ヘキサフルオロジルコン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、リンゴ酸第一スズ、グリシン酸第一スズ、炭酸第一スズ、リン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、メタリン酸第一スズ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、
口腔ケア組成物。」
と記載して、新たに請求項16とする
ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項5のうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて独立形式に改め、「アミノ酸」を請求項3に記載された選択肢のうちの「シトルリン」に限定し、
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記組成物が、9.0以下のpHを有する、
口腔ケア組成物。」
と記載して、新たに請求項17とする
セ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項6のうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて独立形式に改め、「アミノ酸」を請求項3に記載された選択肢のうちの「シトルリン」に限定し、
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記組成物の0.05重量%~4重量%のフッ化物イオン源を更に含み、前記フッ化物イオン源が、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、
口腔ケア組成物。」
と記載して、新たに請求項18とする
ソ 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項7のうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて独立形式に改め、「アミノ酸」を請求項3に記載された選択肢のうちの「シトルリン」に限定し、
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記増粘剤が、前記組成物の0.01重量%~5重量%の量で存在し、前記増粘剤が、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される、
口腔ケア組成物。」
と記載して、新たに請求項19とする
タ 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項8のうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて独立形式に改め、「アミノ酸」を請求項3に記載された選択肢のうちの「シトルリン」に限定し、
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記研磨剤が、前記組成物の1重量%~35重量%の量で存在し、前記研磨剤が、カルシウム含有研磨剤、シリカ研磨剤、又はこれらの組み合わせから選択される、
口腔ケア組成物。」
と記載して、新たに請求項20とする
チ 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項9のうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて独立形式に改め、「アミノ酸」を請求項3に記載された選択肢のうちの「シトルリン」に限定し、
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記組成物の1重量%~60重量%の保湿剤を更に含み、前記保湿剤が、ポリオールである、
口腔ケア組成物。」
と記載して、新たに請求項21とする
(3) 一群の請求項Bの訂正
ア 訂正事項18
特許請求の範囲の請求項11に、
「アミノ酸」
と記載されているのを、
「シトルリン」
に訂正する。
請求項11の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項12~13も同様に訂正する。
4 訂正事項についての訂正要件の判断
訂正事項1~18についての訂正要件の判断は、以下のとおりである。
なお、下線は、訂正による記載の変更箇所を示すもののほか、当審合議体が便宜のために付したものである。
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1による訂正は、請求項1に記載の「口腔ケア組成物」から、同項に記載された事項の記載表現を残したままで、同項に係る発明に包含される一部の態様である、
「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」、
「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」、
「アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤」、
並びに、
「リジンまたはその誘導体とノニオン界面活性および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤」
のみを「除く」ものであるから、当該「口腔ケア組成物」を限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項1による訂正は、請求項1に記載の「口腔ケア組成物」から、
令和5年5月8日付け取消理由通知で引用した甲1(特開昭63-66113号公報)に記載の「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」、
同取消理由通知で引用した甲2(米国特許第5281410号明細書)に記載の「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」、
同取消理由通知で引用した甲3(特開平8-151324号公報)に記載の「アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤」、
並びに、
同取消理由通知で引用した甲4(特開平8-151325号公報)に記載の「リジンまたはその誘導体とノニオン界面活性および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤」
という、特定の態様のみを除外しているだけであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものではなく、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による訂正は、上記アで述べたとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であって、請求項1に記載の「口腔ケア組成物」から特定の態様のみを「除く」ことを明示したものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項1についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2) 訂正事項2~3、5、9、10について
訂正事項2~3、5、9、10による訂正は、それぞれ、請求項3~4、6、10、14を削除するものにすぎないから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえないことは明らかであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2~3、5、9、10による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3) 訂正事項4、6~8について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4による訂正は、先行する複数の請求項のいずれかの記載を引用する請求項5の記載について、請求項2~4の記載を引用する部分を削除し、発明特定事項を特定し限定するものである。
訂正事項6~8による訂正は、それぞれ先行する複数の請求項のいずれかの記載を引用する請求項7~9の記載について、請求項3~4、6の記載を引用する部分を削除し、発明特定事項を特定し限定するものである。
したがって、訂正事項4、6~8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4、6~8による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項5、7~9の記載について、記載を引用する先行する複数の請求項のうちの一部の請求項の記載を引用する部分を削除するだけのものであり、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえないことは明らかであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項4、6~8による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項4、6~8についてのまとめ
上記ア及びイのとおり、訂正事項4、6~8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4) 訂正事項11について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項11による訂正は、請求項1又は2の記載を引用する請求項3の記載について、請求項2の記載を引用する部分を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、発明特定事項を特定し限定するとともに、請求項1の記載を引用する部分について、請求項1の記載を引用しない形(独立形式)に書き替え、新たに請求項15とするものである。
したがって、訂正事項11による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同法同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(請求項間の引用関係の解消)を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項11による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項3の記載について、請求項2の記載を引用する部分を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項11による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項11による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項3の記載について、請求項2の記載を引用する部分を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項11による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項11についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項11による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5) 訂正事項12について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項12による訂正は、請求項1~3のいずれか一項の記載を引用する請求項4の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、発明特定事項を特定し限定するとともに、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、請求項1及び請求項3の記載を引用しない形(独立形式)に書き替え、新たに請求項16とするものである。
したがって、訂正事項12による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同法同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(請求項間の引用関係の解消)を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項12による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項4の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項12による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項12による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項4の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項12による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項12についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項12による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(6) 訂正事項13について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項13による訂正は、請求項1~4のいずれか一項の記載を引用する請求項5の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、発明特定事項を特定し限定するとともに、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、請求項1及び請求項3の記載を引用しない形(独立形式)に書き替え、新たに請求項17とするものである。
したがって、訂正事項13による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同法同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(請求項間の引用関係の解消)を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項13による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項5の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項13による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項13による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項5の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項13による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項13についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項13による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(7) 訂正事項14について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項14による訂正は、請求項1~5のいずれか一項の記載を引用する請求項6の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、発明特定事項を特定し限定するとともに、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、請求項1及び請求項3の記載を引用しない形(独立形式)に書き替え、新たに請求項18とするものである。
したがって、訂正事項14による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同法同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(請求項間の引用関係の解消)を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項14による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項6の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項14による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項14による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項6の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項14による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項14についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項14による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(8) 訂正事項15について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項15による訂正は、請求項1~6のいずれか一項の記載を引用する請求項7の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、発明特定事項を特定し限定するとともに、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、請求項1及び請求項3の記載を引用しない形(独立形式)に書き替え、新たに請求項19とするものである。
したがって、訂正事項15による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同法同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(請求項間の引用関係の解消)を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項15による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項7の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項15による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項15による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項7の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項15による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項15についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項15による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(9) 訂正事項16について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項16による訂正は、請求項1~7のいずれか一項の記載を引用する請求項8の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、発明特定事項を特定し限定するとともに、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、請求項1及び請求項3の記載を引用しない形(独立形式)に書き替え、新たに請求項20とするものである。
したがって、訂正事項15による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同法同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(請求項間の引用関係の解消)を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項16による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項8の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項16による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項16による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項8の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項16による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項16についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項16による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(10) 訂正事項17について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項17による訂正は、請求項1~8のいずれか一項の記載を引用する請求項9の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、発明特定事項を特定し限定するとともに、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、請求項1及び請求項3の記載を引用しない形(独立形式)に書き替え、新たに請求項21とするものである。
したがって、訂正事項17による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、かつ、同法同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(請求項間の引用関係の解消)を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項17による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項9の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項17による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項17による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項9の記載について、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分以外を削除し、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定して、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用する部分について、独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項17による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項17についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項17による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(11) 訂正事項18について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項18による訂正は、請求項11に記載の「アミノ酸」を、総称である「アミノ酸」に包含される具体的な化合物である「シトルリン」に特定し限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0045】に、「好ましくは、本発明で使用されるアミノ酸は、アルギニン、リジン、シトルリン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。」と記載されているから、請求項11に記載の「アミノ酸」を「シトルリン」とする訂正事項18による訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項18による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項18による訂正は、上記アで述べたとおり、請求項11に「アミノ酸」と記載されているのを、総称である「アミノ酸」に包含される具体的な化合物である「シトルリン」に特定し限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項18による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項18についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項18による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(12) 独立特許要件について
訂正事項1~18による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を訂正の目的として含むものであるが、本件特許異議申立事件においては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1~14に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、これらの請求項に対応する本件訂正後の請求項1~21に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
5 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10、14〕、〔11~13〕、15、16、17、18、19、20、21について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件特許に係る発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21(以下、請求項の番号順に「本件訂正請求項1」等ということがある。)の記載は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に記載されたとおりのものであり(請求項3~4、6、10、14は、本件訂正により削除される。)、本件訂正請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める(以下「本件訂正発明1」等といい、総称して「本件訂正発明」ということがある。下線は本件訂正による記載の変更箇所を示す。)。
「【請求項1】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸と、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物、アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤、並びにリジンまたはその誘導体とノニオン界面活性および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤を除く)。」
【請求項2】
前記口腔ケア組成物が亜鉛イオン源を本質的に含まない、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記組成物が、9.0以下のpHを有する、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記増粘剤が、前記組成物の0.01重量%~5重量%の量で存在し、前記増粘剤が、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1,2,又は5のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記研磨剤が、前記組成物の1重量%~35重量%の量で存在し、前記研磨剤が、カルシウム含有研磨剤、シリカ研磨剤、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1,2,5,又は7のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記組成物の1重量%~60重量%の保湿剤を更に含み、前記保湿剤が、ポリオールである、請求項1,2,5,7,又は8のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
対象における歯肉健康を促進するための増粘剤および/または研磨剤を含有する口腔ケア組成物を製造するための、第一スズイオン源およびシトルリンの使用。
【請求項12】
歯肉健康の促進が、
(i)口腔内の歯肉創傷治癒を改善することと、
(ii)口腔内の細菌活性の低減を改善することと
を含む、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記歯肉健康の促進が、
a)0時間~72時間、
b)0時間~48時間、
c)0時間~24時間、
からなる群から選択される期間内に生じ、0時間が、前記口腔ケア組成物を投与する時間である、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物。
【請求項16】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記第一スズイオン源が、前記組成物の0.05重量%~4重量%の量で存在し、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、ヨウ化第一スズ、塩化フッ化第一スズ、ヘキサフルオロジルコン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、リンゴ酸第一スズ、グリシン酸第一スズ、炭酸第一スズ、リン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、メタリン酸第一スズ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、
口腔ケア組成物。
【請求項17】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記組成物が、9.0以下のpHを有する、
口腔ケア組成物。
【請求項18】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記組成物の0.05重量%~4重量%のフッ化物イオン源を更に含み、前記フッ化物イオン源が、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、
口腔ケア組成物。
【請求項19】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記増粘剤が、前記組成物の0.01重量%~5重量%の量で存在し、前記増粘剤が、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される、
口腔ケア組成物。
【請求項20】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記研磨剤が、前記組成物の1重量%~35重量%の量で存在し、前記研磨剤が、カルシウム含有研磨剤、シリカ研磨剤、又はこれらの組み合わせから選択される、
口腔ケア組成物。
【請求項21】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリンと、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まず、
前記組成物の1重量%~60重量%の保湿剤を更に含み、前記保湿剤が、ポリオールである、
口腔ケア組成物。
第4 特許異議の申立ての理由及び当審において通知した取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(5)に示す甲第1号証~甲第8号証(以下、それぞれ番号順に「甲1」等という。)を提出し、本件特許の請求項1~14に係る特許を取り消すべきとの特許異議の申し立てをしており、その理由(以下「申立理由」という。)は、申立書の記載全体からみて、下記(1)~(4)に示すとおりのものと認められる。
なお、ここでいう「請求項1」及び「本件発明1」等は、本件特許の設定登録時の請求項1及び当該請求項1に係る発明等のことである。
(1) 申立理由1(新規性)
ア 甲1に基づく新規性欠如
本件特許の請求項1~14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 甲2に基づく新規性欠如
本件特許の請求項1~14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2) 申立理由2(進歩性)
ア 甲1を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明(、及び、甲2、7~8に記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 甲2を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 甲3を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明、甲5~6に記載された事項、及び、甲1~2に記載された周知技術に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 甲4を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明、甲5~6に記載された事項、及び、甲1~2に記載された周知技術に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3) 申立理由3(産業上の利用可能性)
本件特許の請求項14に係る発明は、対象における歯肉健康を促進する方法に関するものであって、人間を治療する方法の発明に該当し、産業上利用することができる発明に該当しないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4) 申立理由4(明確性)
本件特許の請求項1~9、14の記載は、口腔ケア組成物がフッ化第一スズを含む場合、第一スズイオン源とフッ化物イオン源のどちらとして含有されるのか、どちらの含有量と判断すべきか、当業者が理解できないため、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に適合するものでないから、当該請求項に係る特許は、同法同条同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)証拠方法
甲1 特開昭63-66113号公報
甲2 米国特許第5281410号明細書
甲3 特開平8-151324号公報
甲4 特開平8-151325号公報
甲5 特開2014-208658号公報
甲6 特開2006-312613号公報
甲7 堀井欣一、「フッ素とう蝕予防」、
新潟歯学会誌、1980年、10巻、2号、83~93頁
甲8 田中入、「フッ化ナトリウム配合歯磨剤の口腔内動態に関する
研究」、
口腔衛生学会雑誌、1993年、43巻、357~368頁
2 当審合議体が通知した取消理由の概要
(1) 先の取消理由通知の取消理由の概要
当審合議体が令和5年5月8日付け取消理由通知(以下「先の取消理由通知」という。)で特許権者に通知した取消理由の概要は、下記ア~ウのとおりであり、当審合議体は、申立人が提出した甲1~4、7~8とともに、下記エの引例Aを職権で追加して引用した。先の取消理由通知の取消理由と申立理由の対応関係は、下記オのとおりである。
なお、ここでいう「請求項1」及び「本件発明1」等は、本件特許の設定登録時の請求項1及び当該請求項1に係る発明等のことである。
ア 取消理由1(新規性)
(ア) 甲1に基づく新規性欠如
本件特許の請求項1~9、11~14に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(イ) 甲2に基づく新規性欠如
本件特許の請求項1~9、11~14に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 取消理由2(進歩性)
(ア) 甲1を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~14に係る発明は、甲1に記載された発明(、並びに、甲2、7~8及び引例Aに記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(イ) 甲2を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~14に係る発明は、甲2に記載された発明(、及び、甲7~8に記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(ウ) 甲3を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~14に係る発明は、甲3に記載された発明(、並びに、甲2、7~8及び引例Aに記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(エ) 甲4を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~14に係る発明は、甲4に記載された発明(、並びに、甲2、7~8及び引例Aに記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 取消理由3(産業上の利用可能性)
本件特許の請求項14に係る発明は、対象における歯肉健康を促進する方法に関するものであって、人間を治療する方法の発明に該当し、産業上利用することができる発明に該当しないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 当審合議体が職権で追加して引用した文献
引例A 峯裕一ほか、「市販洗口剤と歯磨剤がチタンの表面性状に与える
影響」、日本口腔インプラント学会誌、2012年3月、25巻、
1号、22~30頁
オ 先の取消理由通知の取消理由と申立理由の対応関係
取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)は、申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)のうち、本件特許の請求項1~9、11~14を対象とするものに対応する。
取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)は、申立理由1(甲2に基づく新規性欠如)のうち、本件特許の請求項1~9、11~14を対象とするものに対応する。
取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)は、申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)に対応する。
取消理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)は、申立理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)に対応するものである。
取消理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如)は、申立理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如)に対応するものである。
取消理由2(甲4を主引例とする進歩性欠如)は、申立理由2(甲4を主引例とする進歩性欠如)に対応するものである。
取消理由3(産業上の利用可能性)は、申立理由3(産業上の利用可能性)に対応する。
(2) 取消理由通知(決定の予告)の取消理由の概要
当審合議体が令和6年1月22日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、下記ア~ウのとおりであり、取消理由通知(決定の予告)の取消理由と先の取消理由通知の取消理由の対応関係は、下記エのとおりである。
なお、ここでいう「本件訂正請求項1」及び「本件訂正発明1」等は、先の訂正請求により訂正された請求項1及び当該請求項1に係る発明等のことである。
ア 取消理由1(新規性:甲2に基づく新規性欠如)
(ア) 甲1に基づく新規性欠如
本件訂正発明11~13は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件訂正請求項11~13に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(イ) 甲2に基づく新規性欠如
本件訂正発明1~9、11~13は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件訂正請求項1~9、11~13に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 取消理由2(進歩性)
(ア) 甲1を主引例とする進歩性欠如
本件訂正発明11~13は、甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正請求項11~13に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(イ) 甲2を主引例とする進歩性欠如
本件訂正発明1~13は、甲2に記載された発明(、及び、甲7~8に記載された周知技術)に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正請求項1~13に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(ウ) 甲3を主引例とする進歩性欠如
本件訂正発明11~13は、甲3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正請求項11~13に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(エ) 甲4を主引例とする進歩性欠如
本件訂正発明11~13は、甲4に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正請求項11~13に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 取消理由4(明確性)
(ア) 「ピロリン酸イオン源」について
本件訂正請求項4~9が直接的に又は間接的に記載を引用する本件訂正請求項1では、組成物について、「(但し、・・・ピロリン酸イオン源を含む口腔用組成物を除く)」と規定しているところ、「第一スズイオン源」の選択肢として「ピロリン酸第一スズ」を含むとする本件訂正請求項4~9の記載は、本件訂正請求項1の記載と矛盾しており、「ピロリン酸第一スズ」を含む組成物が、本件訂正発明4~9の組成物に該当するか否か明確に把握することができないため、本件訂正請求項4~9の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に適合するものでないから、当該請求項に係る特許は、同法同条同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(イ) 「アルギニン」及び「リジン」について
本件訂正請求項3~9が直接的に又は間接的に記載を引用する本件訂正請求項1、並びに、本件訂正請求項10では、組成物について、「アルギニンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を含む抗菌製剤」並びに「リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を含む抗菌製剤」を「除く」と規定しているが、組成物中に存在する「アミノ酸」の選択肢として「アルギニン」及び「リジン」を含むとする、本件訂正請求項3及び10の記載は、本件訂正請求項1及び10の記載と矛盾しており、「アルギニン」又は「リジン」を含む組成物が、本件訂正発明3~10の組成物に該当するか否かを明確に把握することができないため、本件訂正請求項3~10の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に適合するものでないから、当該請求項に係る特許は、同法同条同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(ウ) 「抗菌活性を示す化合物」について
本件訂正請求項1~10は、組成物について「アルギニンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を含む抗菌製剤」並びに「リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を含む抗菌製剤」を「除く」と規定しているが、「抗菌活性を示す化合物」なる記載では、具体的に如何なる化合物までが該当するのか、その範囲を明確に把握できず、本件訂正発明1~10の組成物から、具体的に如何なる組成の抗菌製剤までが除外されるのか明確に特定できないため、本件訂正請求項1及び10の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に適合するものでないから、当該請求項に係る特許は、同法同条同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 取消理由通知(決定の予告)の取消理由と先の取消理由通知の取消理由
の対応関係
取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)は、先の取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)のうち、本件特許の請求項11~13を対象とするものに対応する。
取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)は、先の取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)のうち、本件特許の請求項1~9、11~13を対象とするものに対応する。
取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)は、先の取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)のうち、本件特許の請求項11~13を対象とするものに対応する。
取消理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)は、先の取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)のうち、本件特許の請求項1~13を対象とするものに対応する。
取消理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如)は、先の取消理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如)のうち、本件特許の請求項11~13を対象とするものに対応する。
取消理由2(甲4を主引例とする進歩性欠如)は、先の取消理由2(甲4を主引例とする進歩性欠如)のうち、本件特許の請求項11~13を対象とするものに対応する。
取消理由4(明確性)は、先の訂正請求により、本件訂正請求項1及び10において、組成物について「(但し、・・・ピロリン酸イオン源を含む口腔用組成物、アルギニンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を含む抗菌製剤、並びにリジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を含む抗菌製剤を除く)」と規定されたことによって新たに生じたものである、
第5 取消理由についての当審の判断
当審合議体は、本件訂正請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由1~2、4、及び、先の取消理由通知で通知した取消理由1~3によっては、取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。
1 引用文献の記載事項
取消理由の判断において引用する文献(甲1~甲8及び引例A)は、上記第4の1(5)及び2(1)エに示したとおりである。
(1) 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1の記載事項
甲1(特開昭63-66113号公報)には、以下の事項が記載されている。
なお、摘記中の下線は、特に注釈がない限り、当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。以下、他の文献についても同様。
・摘記甲1a(請求項1)
「1.トコフェロール又はそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含有する口腔用組成物において、トコフェロール又はそのエステル誘導体の安定化剤としてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、錫塩、アミノ酸及びアミノ酸誘導体から選ばれる水溶性化合物の1種又は2種以上を0.2~20重量%配合したことを特徴とする口腔用組成物。」
・摘記甲1b(1頁右下欄7行~2頁左上欄3行)
「従来、トコフェロールやそのエステル誘導体を口腔用組成物に配合し、血行促進作用を与えて歯槽膿漏や歯肉炎等の歯周疾患を予防、治療することが知られている(・・・)。
しかしながら、・・・、トコフェロールやそのエステル誘導体は、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステルの水溶性塩を含有する口腔用組成物に配合した場合、長期間、特に高温下で長期間保存するとトコフェロールやそのエステル誘導体が分解され易く、アルキル硫酸エステルの水溶性塩を含む口腔用組成物中での安定性に問題があった。」
・摘記甲1c(2頁左上欄11~15行)
「本発明は・・・、アルキル硫酸エステルの水溶性塩の存在下においてもトコフェロールやそのエステル誘導体を長期間安定に保持することができる口腔用組成物を提供することを目的とする。」
・摘記甲1d(2頁左上欄17行~右上欄10行)
「本発明者らは、・・・、水溶性のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、錫塩、アミノ酸及びアミノ酸誘導体がトコフェロール及びその誘導体を安定化させる効果に優れ、これらの水溶性化合物の1種又は2種以上を0.2~20%(重量%、以下同じ)配合することにより、トコフェロールやそのエステル誘導体が高温下で長期間安定に保持され、アルキル硫酸エステルの水溶性塩の存在下においてもその残存率が高まることを知見し、本発明をなすに至った・・・。」
・摘記甲1e(2頁右下欄15行~3頁左上欄10行)
「ここで、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、錫塩としては、無機の水溶性化合物、特に・・・が好ましく用いられる。具体的には、フッ化ナトリウム、・・・、塩化亜鉛、フッ化第1錫、塩化第1錫等が挙げられる。」
・摘記甲1f(3頁左上欄11行~右上欄19行)
「また、安定化剤として使用されるアミノ酸としては、・・・α-アミノ酸が最も好適である。・・・。具体的には、モノアミノカルボン酸としてグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラノン、L-ドパ、チロシン、トリプトファン、シスチン、システィン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸等があり、モノアミノジカルボン酸としてはアスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン等があり、ジアミノモノカルボン酸としてはアルギニン、ヒスチジン、リジン等がある。これらの中では、特にグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、フェニルアラニン、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジンが特に好適である。
また、安定化剤としては、アミノ酸塩も有効に使用し得、アミノ酸塩としてはアミノ酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が用いられる。これらの中では特にナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。」
・摘記甲1g(3頁左下欄7~8行)
「なお、上述した安定化剤はその1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。」
・摘記甲1h(3頁左下欄9~15行)
「安定化剤の配合量は、組成物全体の0.2~20%であり、特にアルカリ金属無機塩、アルカリ土類金属無機塩、アンモニウム無機塩、無機亜鉛塩、無機錫塩を使用する場合は0.5~20%、アミノ酸、アミノ酸塩、アミノ酸誘導体を使用する場合は0.3~10%、より望ましくは0.5~5%とすることが好適である。」
・摘記甲1i(3頁左下欄19行~右下欄8行)
「本発明の口腔用組成物は練歯磨、潤製歯磨、液状歯磨等の歯磨類、マウスウォッシュ、歯肉マツサージクリーム、口腔用パスタなどとして調製、適用され得るが、口腔用組成物のその他の成分としてはその種類等に応じた適宜な成分が使用される。例えば、歯磨の場合には研磨剤、粘稠剤、粘結剤、甘味剤、香料、防腐剤などが用いられる。なお、本発明においては、界面活性剤、有効成分として、上述した以外の他のものも併用しても差し支えない。」
・摘記甲1j(3頁右下欄20行~4頁左上欄2行)
「以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。」
・摘記甲1k(7頁左下欄14行~右下欄13行)
「〔実施例19〕 練歯磨
第2リン酸カルシウム 50.0%
酸化アルミニウム 3.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
カラギーナン 0.5
ソルビット 15.0
グリセリン 15.0
プロピレングリコール 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
酢酸トコフェロール 0.2
塩酸クロロへキシジン 0.01
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.76
グリシン 1.0
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.2
パラベン 0.2
安息香酸ナトリウム 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
香 料 1.0
精 製 水 残
100.0% 」
・摘記甲1l(9頁右上欄8行~左下欄7行)
「〔実施例25〕 練歯磨
無水ケイ酸 25.0%
二酸化チタン 2.0
カルボキシメチル 0.5
セルロースナトリウム
アルギン酸ナトリウム 1.0
グリセリン 40.0
ポリエチレングリコール 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
酢酸トコフェロール 0.2
グルコン酸クロロへキシジン 0.001
フッ化ナトリウム 0.2
フェニルアラニン 0.1
リジン 0.1
アスパラギン酸カリウム 1.9
パラベン 0.05
安息香酸ナトリウム 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
香 料 1.0
精 製 水 残
100.0% 」
・摘記甲1m(9頁左下欄9行~右下欄8行)
「〔実施例26〕 練歯磨
無水ケイ酸 10.0%
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
キサンタンガム 0.5
ソルビット 50.0
プロピレングリコール 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ラウリン酸ジエタノールアミド 0.08
酢酸トコフェロール 1.0
フッ化第1錫 0.4
グリシン 0.5
アスパラギン 0.8
グルタミン酸ナトリウム 0.8
パラベン 0.2
安息香酸ナトリウム 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
香 料 1.0
精 製 水 残
100.0% 」
イ 甲1に記載された発明
上記アで認定した甲1の記載事項によれば、甲1には、従来、トコフェロール又はそのエステル誘導体を配合した口腔用組成物により、血行促進作用を与えて歯槽膿漏や歯肉炎等の歯周疾患を予防、治療することが知られていたこと(摘記甲1b)、トコフェロール又はそのエステル誘導体は、アルキル硫酸エステルの水溶性塩を含有する口腔用組成物に配合した場合、長期間保存すると分解され易く、組成物中での安定性に問題があったこと(摘記甲1b)、そこで、トコフェロール又はそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含有する口腔用組成物において、トコフェロール又はそのエステル誘導体の安定化剤として、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、錫塩、アミノ酸及びアミノ酸誘導体から選ばれる水溶性化合物の1種又は2種以上を0.2~20重量%配合することによって、トコフェロールやそのエステル誘導体を長期間安定に保持できることを知見したこと(摘記甲1a(請求項1)、摘記甲1d)、当該安定化剤である水溶性化合物のうち、アルカリ金属塩、亜鉛塩、錫塩の具体例としては、フッ化ナトリウム、塩化亜鉛、フッ化第1錫、塩化第1錫等が挙げられ(摘記甲1e)、アミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラノン、チロシン、トリプトファン、シスチン、システィン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、トラネキサム酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、ヒスチジン、リジン等が挙げられ、それらのナトリウム塩等のアミノ酸塩も使用し得ること(摘記甲1f)、が記載されている。
そして、甲1には、請求項1に記載の口腔用組成物の具体例の一つである実施例26の練歯磨として(摘記甲1m)、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
≪甲1発明≫
「歯槽膿漏や歯肉炎等の歯周疾患を予防又は治療するための練歯磨であって、
無水ケイ酸 10.0重量%
ヒドロキシエチルセルロース 0.5重量%
キサンタンガム 0.5重量%
ソルビット 50.0重量%
プロピレングリコール 3.0重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5重量%
ラウリン酸ジエタノールアミド 0.08重量%
酢酸トコフェロール 1.0重量%
フッ化第1錫 0.4重量%
グリシン 0.5重量%
アスパラギン 0.8重量%
グルタミン酸ナトリウム 0.8重量%
パラベン 0.2重量%
安息香酸ナトリウム 0.2重量%
サッカリンナトリウム 0.1重量%
香 料 1.0重量%
精 製 水 残
を含む、錬歯磨。」
(2) 甲2の記載事項及び甲2に記載された発明
ア 甲2の記載事項
甲2(米国特許第5281410号明細書)には、以下の事項が記載されている。
なお、甲2の原文は英語で記載されているため、当審合議体による訳文で摘記した。
・摘記甲2a(請求項1~5、12~13)
「1.以下を有する、着色の低減とともにプラーク/歯肉炎の治療に有効な口腔用組成物:
(a)安全有効量のフッ化第一スズ;
(b)安全有効量の、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン
四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩;及び
(c)薬学的に許容しうる担体
を含み、カルシウムイオン源を実質的に含まない、第1組成物、
及び、
(a)安全有効量のピロリン酸イオン源;
(b)薬学的に許容しうる担体
を含む、第2組成物。
2.フッ化第一スズの含有量が約0.05%~約1.1%であって、第一スズ組成物が約3.0~約5.0のpHである、請求項1に記載の口腔用組成物。
3.フッ化物でない第一スズ化合物の量が約0.1%~約11%である、請求項1に記載の口腔用組成物。
4.第一スズ組成物及びピロリン酸組成物のための薬学的に許容しうる担体が練歯磨である、請求項3に記載の口腔用組成物。
5.練歯磨が歯科用シリカ研磨剤も含む、請求項4に記載の口腔用組成物。」
・摘記甲2b(1欄下から22行~2欄4行)
「抗プラーク/抗歯肉炎の分野における多くの開示にもかかわらず、製品の改善の必要性は今も存在する。・・・米国特許第5,004,597号・・・には、口腔用組成物がグルコン酸第一スズで安定化されたフッ化第一スズを含むことが記載されている。これらの組成物は、優れた抗プラーク及び抗歯周病の利点を付与する。しかし、該組成物は、エナメル質表面の多少の着色を生じさせる。
本発明者らは、第一スズイオン製剤とともにピロリン酸イオンを含む組成物を使用することにより、着色が低減され得ることを発見した。
したがって、本発明の目的は、着色の低減とともに改善された抗プラーク/抗歯周病の効果をもたらす組成物を提供することである。
本発明の更なる目的は、1つの組成物中のフッ化第一スズ及び別の第一スズ化合物と、別の組成物中のピロリン酸イオンとを用いる、改善された製品を提供することである。
・・・
ここで用いられる全ての百分率及び比率は、他に特記がない限り、全組成物の重量あたりのものである。・・・。」
・摘記甲2c(2欄29~33行)
「本発明の第一スズ組成物は、フッ化第一スズ及び第2の第一スズ化合物と、薬学的に許容しうる担体とを含む。ピロリン酸組成物は、ピロリン酸イオンと、薬学的に許容しうる担体とを含む。」
・摘記甲2d(2欄下から9~1行)
「 フッ化第一スズ
フッ化第一スズは、第一スズ組成物の第1の必須成分である。この材料は、定番の商品であり、第一スズ組成物中に約0.05%~約1.1%、好ましくは約0.4%~約0.95%存在する。別個の可溶性の第一スズ及びフッ素塩を用いてin-situでフッ化第一スズを形成させてもよいし、塩を直接添加してもよい。in-situでフッ化第一スズを形成させるのに適した塩は、多くの他の塩のうち塩化第一スズ及びフッ化ナトリウムを含む。」
・摘記甲2e(3欄1~16行)
「 第2の第一スズ塩
第2の第一スズ塩は、本発明の第一スズ組成物の第2の必須成分である。第2の第一スズ塩は、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、EDTA、グリシン、及び、それらの混合物の、第一スズ塩である。これらの化合物は、既知の第一スズのキレートであり、本組成物中に、キレートとして、又は、フッ化第一スズを用いる場合のように、in-situでキレートが形成される別々の可溶性の第一スズ及びキレート剤として加えることができる。適切なα-ヒドロキシ酸は、グルコン酸、・・・を含む。このような塩は塩化第一スズ及びフッ化第一スズを含む。第2の第一スズ化合物は、約0.1%~約11%、好ましくは約2%~約4%のレベルで本発明の組成物中に存在する。」
・摘記甲2f(3欄26行~4欄7行)
「本発明での使用が意図される研磨艶だし材料は、・・・、フッ化第一スズから供給されるフッ化物イオンを沈降させうるカルシウムイオンを供給しない、任意の材料であり得る。これらは、例えば、ゲル及び沈降性を含むシリカ、・・・を含む。研磨剤の混合物もまた、使用してもよい。・・・。
種々のタイプの歯科用シリカ研磨剤は、歯のエナメル及び象牙質を過度に研磨することなく、優れた歯のクレンジング及び艶だし性能といった特有の利益を与えることができる。シリカ研磨材料はまた、可溶性フッ化物源と非常に優れた相溶性を有する。これらの理由から、これらは本発明での使用に好ましい。
・・・
ここに記載される組成物中の研磨剤は、歯磨剤が練歯磨である場合には、約6%~約70%、好ましくは約15%~約25%のレベルで存在する。・・・。」
・摘記甲2g(4欄24~33行)
「追加の抗齲蝕効力を与えるために、歯磨剤及び他の口腔組成物に追加の水溶性フッ化化合物を、25℃で組成物中に及び/又は使用時に、約0.0025%~約5.0%、好ましくは約0.005%~約2.0%のフッ化物イオン濃度を与えるのに十分な量で存在させることは、一般的である。好適なフッ化物は、フッ化第一スズに加え、フッ化ナトリウム、フッ化インジウム、及びモノフルオロリン酸ナトリウムである。」
・摘記甲2h(4欄47~58行)
「練歯磨を製造する際に、望ましい粘稠性を付与するための何らかの増粘材料を加えることが必要である。好適な増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、及び、カルボキシメチルセルロースナトリウム、・・・等のセルロースエーテルの水溶性塩である。・・・。コロイド性ケイ酸マグネシウムアルミニウム又は微細シリカも、テクスチャーを更に改善するために増粘剤の一部として使用できる。増粘剤は、全組成物中に0.5重量%~5.0重量%の量で使用できる。」
・摘記甲2i(4欄59~63行)
「練歯磨の硬化を避けるため、何らかの保湿材料を含有させることも望ましい。適切な保湿剤は、約15%~約70%の全体レベルで、グリセリン、ソルビトール及び他の食用多価アルコールを含む。」
・摘記甲2j(5欄30~37行)
「本発明の組成物のpH及び/又は口内におけるそのpHは、口の硬組織及び軟組織に安全であり、第2の第一スズ化合物の最適な効果を与える、如何なるpHでもよい。このようなpHは、通常、約3.0~約5.0であり、好ましくは約4.0~約5.0、最も好ましくは約4.5である。所望の場合には、7.5程度に高いなど、より高いpHにおいてフィチン酸を用いてもよい。」
・摘記甲2k(5欄38~51行)
「 ピロリン酸組成物
本発明の第2組成物は、有効量のピロリン酸イオンを、含む/提供を可能にする、組成物である。・・・。
第一スズ組成物及びピロリン酸組成物は、液体又はペーストの場合、別々の容器内に配置される。ロゼンジ又はガムの場合、それらの別々の容器は必要ではないが、大半の例では別々に包装される。製品の形状とは無関係に、それらはキットの一部として包装されてもよい。」
・摘記甲2l(6欄1~9行)
「 組成物の使用
方法の側面における本発明は、安全有効量の、ここに記載した2つの組成物を口腔に適用することに関連する。・・・。
2つの組成物は、どのような順序でも用いられ得るが、第一スズ組成物が最初に用いられることが好ましい。」
・摘記甲2m(6欄~7欄)
「 実施例V~VIII
以下は、本発明の追加的な第一スズ歯磨剤組成物の代表例である。
[図:0001418186000001.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
上記アで認定した甲2の記載事項によれば、甲2には、着色の低減とともにプラーク/歯肉炎の治療に有効な口腔用組成物であって、
(a)安全有効量のフッ化第一スズ;
(b)安全有効量の、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン
四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩;及び
(c)薬学的に許容しうる担体
を含み、カルシウムイオン源を実質的に含まない、「第1組成物」、
及び、
(a)安全有効量のピロリン酸イオン源;
(b)薬学的に許容しうる担体、
を含む、「第2組成物」、
を有する口腔用組成物について記載されており(摘記甲2a)、当該「第1組成物」は「第一スズ組成物」とも称され、当該「第2組成物」は「ピロリン酸組成物」とも称され、それぞれが別々に練歯磨の態様とされ得ること(摘記甲2a(請求項4)、摘記甲2b)、当該「第一スズ組成物」は優れた抗プラーク及び抗歯周病の利点を付与し、当該「ピロリン酸組成物」と併用することによって、着色が低減され得ること(摘記甲2b)、当該「第一スズ組成物」における、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はグリシンの第一スズ塩は、組成物中に、キレートとして、又は、in-situでキレートが形成されるように、可溶性の第一スズ及びキレート剤として別々に加えることができること(摘記甲2e)、が記載されている。
そして、甲2には、当該「第一スズ組成物」の具体例の一つである実施例VIの歯磨剤組成物として(摘記甲2m)、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
≪甲2発明≫
「プラーク及び歯肉炎の治療のための歯磨剤組成物であって、
水 12.500重量%
ソルビトール(70%溶液) 43.878重量%
グリセリン 10.000重量%
PEG-12 3.000重量%
二酸化チタン 0.525重量%
シリカ 20.000重量%
カラギーナンNa 0.450重量%
ヒドロキシエチルセルロース 0.400重量%
アルキル硫酸Na(27.9%溶液) 4.000重量%
グリシン酸Na 0.772重量%
フッ化第一スズ 0.454重量%
塩化第一スズ二水和物 1.141重量%
サッカリンNa 0.230重量%
香料 1.000重量%
青色1号(1%溶液) 0.050重量%
水酸化ナトリウム(50%溶液) 0.600重量%
を含み、pHが4.5である、歯磨剤組成物。」
(3) 甲3の記載事項及び甲3に記載された発明
ア 甲3の記載事項
甲3(特開平8-151324号公報)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲3a
「【請求項1】アルギニンまたはその誘導体および抗菌活性を示す化合物を配合することを特徴とする抗菌製剤
・・・
【請求項6】抗菌活性を示す化合物がフッカ物である請求項1、2および3記載の抗菌製剤
【請求項7】フッカ物がフッカナトリウムまたはフッカスズである請求項6記載の抗菌製剤 」
・摘記甲3b
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗菌剤が単独では作用しにくいバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対し優れた抗菌活性を示す抗菌製剤に関する。
【0002】
【従来の技術および問題点】抗菌剤には種々のタイプのものがあり、・・・幅広く用いられている。しかし、その抗菌効果には限界があり、・・・、必ずしも満足できるものばかりではなかった。
【0003】
【問題点を解決するための手段】・・・、その作用機序は明らかではないが、アルギニンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を配合することにより、共存蛋白の影響をほとんど受けず、微生物の懸濁液はもとよりバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対しても優れた抗菌効果を発揮し、さらにノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を追加配合することにより、より優れた抗菌効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0004】尚、特開平3-178926にはアルギニンを配合した口腔用組成物が開示されているが、これはその歯周疾患の慢性炎症時の出血予防、浮腫抑制効果について述べたものであり、・・・。
【0005】本発明はアルギニンまたはその誘導体及び抗菌活性を示す化合物を配合することを特徴とする抗菌製剤、・・・を提供するものである。本発明の抗菌製剤は・・・、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これら感染症の予防や治療・・・に非常に有用である。」
・摘記甲3c
「【0006】本発明のアルギニンの誘導体はアルギニンの塩酸塩や燐酸塩、アルギニンエチルエステル、・・・など製造上許容されるものなら何れでもよく、・・・。本発明中アルギニンまたはその誘導体の配合量は抗菌製剤中0.001~10重量%が好ましく、・・・。」
・摘記甲3d
「【0007】・・・抗菌活性を示す化合物とは・・・、フッカナトリウム、フッカスズ、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッカ物、・・・が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは・・・、フッカナトリウム、フッカスズ、・・・である。これらの抗菌剤は単独で、またはこれらを組み合わせて用いることができ、その配合量は抗菌剤の総量で抗菌製剤中0.001~10重量%が好ましく、・・・。」
・摘記甲3e
「【0011】本発明の抗菌製剤は、常法により製造することができ、液体、液状、ゲル状、ペースト状、ガム状、固形物とすることができる。例えば、口腔に応用する場合には、歯磨(練歯磨、潤性歯磨、液状歯磨、液体歯磨、マウスウオッシュ等)、・・・、イリゲーター用溶液等の形態にすることができる。更に、前記の成分に加え、抗菌製剤の形態に応じて通常の有効基剤を用いてもよい。例えば、トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム、ビタミンE、アズレンなどの薬効剤やその他界面活性剤、溶剤、pH調整剤、防腐剤、甘味剤、香料、粘結剤、研磨剤等を配合することができる。」
・摘記甲3f
「【0012】
【実施例】次に、実験例および実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。実験例においては、本発明の抗菌性剤の有する微生物の集合体や塊に対する抗菌活性を評価した。(当審注:「性剤」は「製剤」の明らかな誤記と認める。)
【0013】実験例1
方法:Staphylococcus aureus ATCC6538菌株を・・・(TSB)培地100mlで37℃、24時間培養後、遠心(・・・)洗浄、滅菌蒸留水に懸濁したものを試験菌液とした。
【0014】この試験菌液10mlをメンブランフィルター(・・・)に吸引固着させたものを微生物の菌塊モデルとした。
【0015】この菌塊モデルを塩化セチルピリジニウム(CPCと略す)溶液、塩化セチルピリジニウムとアルギニン(ARGと略す)の混合溶液、あるいはこれらにプルロニック(PLUと略す)を加えた溶液中に一定時間浸漬し、滅菌蒸留水で軽く洗浄後、10mlの滅菌蒸留水中で・・・分散し、この一白金耳を・・・(TSA)培地に塗抹、37℃で24時間培養後、生育の有無を肉眼で判定した。
・・・
【0018】実験例2
方法:試験菌をStreptococcus mutans ATCC25175とし、抗菌剤としてチモール、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル(SFEと略す)を用い、実験例1と同様な実験を行なった。
【0019】結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
・・・
・・・、ARGの添加あるいはARGとSFEの両方の添加により殺菌に必要な時間が短縮され、優れた抗菌効果が認められた。・・・。
【0021】実験例3
方法:試験菌としてEscherichia coli K12を用い、種々の抗菌剤とアルギニン塩酸塩(ARG-Cl)の組み合わせ溶液の抗菌活性を実験例1と同様な方法により評価した。
【0022】結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
[図:0001418186000002.jpg]
いずれの組み合わせにおいても、抗菌剤単独に比べアルギニン塩酸塩の添加により、殺菌に要する時間が短縮され、優れた抗菌活性が発揮されることが認められた。
【0024】実験例4
方法:Porphyromonas gingivalis 381菌株を・・・(BHI)培地100mlで37℃48時間嫌気培養後、菌液1mlを47℃に保温した1.5%寒天を含むBHI20mlに混釈し、直径10cmシャーレに分注、冷却した菌入りプレートを作成した。本プレート上に内径8mm、高さ1cmのステンレス製円筒をたて、それに種々の抗菌剤とアルギニン塩酸塩(ARG-Cl)およびプルロニック(PLU)の組み合わせ溶液を満たし、37℃48時間嫌気培養後、形成された発育阻止帯の直径を測定した。
【0025】結果を表4に示す。
【0026】
【表4】
・・・
いずれの組み合わせにおいても、抗菌剤単独に比べアルギニン塩酸塩(ARG-Cl)の添加およびプルロニック(PLU)の添加により、発育阻止帯の直径が大きくなり、優れた抗菌活性が発揮されることが認められた。
・・・
実施例5
イリゲーション液 配合量(重量%)
チモール 0.2
フッカ第一スズ 0.2
アルギニンエチルエステル 5.0
ビタミンE 0.1
香料 1.0
精製水 残量 」
イ 甲3に記載された発明
上記アで認定した甲3の記載事項によれば、甲3には、アルギニンを配合した口腔用組成物が歯周疾患の慢性炎症時の出血予防や浮腫抑制の効果を奏することが知られていたこと(摘記甲3b【0004】)、アルギニン又はその誘導体と抗菌活性を示す化合物とを配合することにより、バイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対して優れた抗菌効果を発揮することを見出したこと(摘記甲3b【0003】)、アルギニン又はその誘導体及び抗菌活性を示す化合物を配合した抗菌製剤(摘記甲3a【請求項1】)が、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これらの感染症の予防や治療に非常に有用であること(摘記甲3b【0005】)、「抗菌活性を示す化合物」の例として「フッカナトリウム」及び「フッカスズ」が挙げられ(摘記甲3a【請求項7】、摘記甲3d【0007】)、「アルギニンの誘導体」の例として「アルギニンの塩酸塩」が挙げられること(摘記甲3c【0006】)、当該「抗菌製剤」は、口腔に応用する場合には、歯磨(練歯磨、潤性歯磨、液状歯磨、液体歯磨、マウスウオッシュ等)の形態にすることができ、粘結剤や研磨剤等の通常の有効基剤が用いられること(摘記甲3e【0011】)、が記載されており、当該「抗菌製剤」の抗菌活性を評価した「実験例3」では、0.5重量%の「フッカ第一スズ」と0.5重量%の「アルギニン塩酸塩(ARG-Cl)」との組み合わせ溶液(No.6)が、抗菌剤(フッカ第一スズ)単独(No.5)と比較して、殺菌に要する時間を短縮し、優れた抗菌活性を発揮したことが示されている(摘記甲3f【0023】)。
そうすると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
≪甲3発明≫
「歯周疾患の慢性炎症時の出血の予防及び浮腫の抑制、並びに、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症の原因菌やそれらの菌塊(バイオフィルムやプラーク)の抑制のための、抗菌製剤であって、
0.5重量%のフッカ第一スズと、
0.5重量%のアルギニン塩酸塩と、
を含む、
抗菌製剤。」
(4) 甲4の記載事項及び甲4に記載された発明
ア 甲4の記載事項
甲4(特開平8-151325号公報)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲4a
「【請求項1】リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物とノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤からなることを特徴とする抗菌製剤
・・・
【請求項5】抗菌活性を示す化合物がフッカ物である請求項1および2記載の抗菌製剤
【請求項6】フッカ物がフッカナトリウムまたはフッカスズである請求項5記載の抗菌製剤 」
・摘記甲4b
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗菌剤が単独では作用しにくいバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対し優れた抗菌活性を示す抗菌製剤に関する。
【0002】
【従来の技術および問題点】抗菌剤には種々のタイプのものがあり、・・・幅広く用いられている。しかし、その抗菌効果には限界があり、・・・、必ずしも満足できるものばかりではなかった。
【0003】
【問題点を解決するための手段】・・・、その作用機序は明らかではないが、リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物から選ばれる1種または2種以上を配合し、さらにノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を追加配合することにより、共存蛋白の影響をほとんど受けず、微生物の懸濁液はもとよりバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対しても優れた抗菌効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0004】尚、特開平3-178925ならびに特開平2-56413には、リジンを配合した口腔用組成物が開示されているが、前者はその歯周疾患の慢性炎症時の出血予防、浮腫抑制効果について述べたものであり、後者は歯表面の変色を防止する効果について述べたものであり、・・・。
【0005】本発明はリジンまたはその誘導体及び抗菌活性を示す化合物を配合し、さらにはこれらとノニオン界面活性剤または両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を配合してなる抗菌製剤を提供するものである。本発明の抗菌製剤は・・・、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これら感染症の予防や治療・・・に非常に有用である。」
・摘記甲4c
「【0006】本発明のリジンの誘導体はリジンの塩酸塩や燐酸塩、リジンエチルエステル、・・・など製造上許容されるものなら何れでもよく、・・・。本発明中リジンまたはその誘導体の配合量は抗菌製剤中0.001~10重量%が好ましく、・・・。」
・摘記甲4d
「【0007】・・・抗菌活性を示す化合物とは・・・、フッカナトリウム、フッカスズ、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッカ物、・・・が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは・・・、フッカナトリウム、フッカスズ、・・・である。これらの抗菌剤は単独で、またはこれらを組み合わせて用いることができ、その配合量は抗菌剤の総量で抗菌製剤中0.001~10重量%が好ましく、・・・。」
・摘記甲4e
「【0011】本発明の抗菌製剤は、常法により製造することができ、液体、液状、ゲル状、ペースト状、ガム状、固形物とすることができる。例えば、口腔に応用する場合には、歯磨(練歯磨、潤性歯磨、液状歯磨、液体歯磨、マウスウオッシュ等)、・・・、イリゲーター用溶液等の形態にすることができる。更に、前記の成分に加え、抗菌製剤の形態に応じて通常の有効基剤を用いてもよい。例えば、トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム、ビタミンE、アズレンなどの薬効剤やその他界面活性剤、溶剤、pH調整剤、防腐剤、甘味剤、香料、粘結剤、研磨剤等を配合することができる。」
・摘記甲4f
「【0012】
【実施例】次に、実験例および実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。実験例においては、本発明の抗菌性剤の有する微生物の集合体や塊に対する抗菌活性を評価した。(当審注:「性剤」は「製剤」の明らかな誤記と認める。)
【0013】実験例1
方法:Staphylococcus aureus ATCC6538菌株を・・・(TSB)培地100mlで37℃、24時間培養後、遠心(・・・)洗浄、滅菌蒸留水に懸濁したものを試験菌液とした。
【0014】この試験菌液10mlをメンブランフィルター(・・・)に吸引固着させたものを微生物の菌塊モデルとした。
【0015】この菌塊モデルを塩化セチルピリジニウム(CPCと略す)溶液、塩化セチルピリジニウムとリジン(LYSと略す)の混合溶液、あるいはこれらにプルロニック(PLUと略す)を加えた溶液中に一定時間浸漬し、・・・、10mlの滅菌蒸留水中で・・・分散し、この一白金耳を・・・(TSA)培地に塗抹、37℃で24時間培養後、生育の有無を肉眼で判定した。
・・・
【0018】実験例2
方法:試験菌をStreptococcus mutans ATCC25175とし、抗菌剤としてチモール、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル(SFEと略す)を用い、実験例1と同様な実験を行なった。
【0019】結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
・・・
・・・、LYSの添加あるいはLYSとSFEの両方の添加により殺菌に必要な時間が短縮され、優れた抗菌効果が認められた。・・・。
【0021】実験例3
方法:試験菌としてEscherichia coli K12を用い、種々の抗菌剤とリジン塩酸塩(LYS-Cl)トプルロニック(PLU)の組み合わせ溶液の抗菌活性を実験例1と同様な方法により評価した。(当審注:「トプルロニック」は「とプルロニック」の明らかな誤記と認める。)
【0022】結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
[図:0001418186000003.jpg]
いずれの組み合わせにおいても、抗菌剤単独に比べリジン塩酸塩の添加により、殺菌に要する時間が短縮され、優れた抗菌活性が発揮されることが認められた。
【0024】実験例4
方法:Porphyromonas gingivalis 381菌株を・・・(BHI)培地100mlで37℃48時間嫌気培養後、菌液1mlを47℃に保温した1.5%寒天を含むBHI20mlに混釈し、直径10cmシャーレに分注、冷却した菌入りプレートを作成した。本プレート上に内径8mm、高さ1cmのステンレス製円筒をたて、それに種々の抗菌剤とリジン塩酸塩(LYS-Cl)およびプルロニック(PLU)の組み合わせ溶液を満たし、37℃48時間嫌気培養後、形成された発育阻止帯の直径を測定した。
【0025】結果を表4に示す。
【0026】
【表4】
・・・
いずれの組み合わせにおいても、抗菌剤単独に比べリジン塩酸塩(LYS-Cl)の添加およびプルロニック(PLU)の添加により、発育阻止帯の直径が大きくなり、優れた抗菌活性が発揮されることが認められた。」
イ 甲4に記載された発明
上記アで認定した甲4の記載事項によれば、甲4には、リジンを配合した口腔用組成物が歯周疾患の慢性炎症時の出血予防や浮腫抑制の効果を奏することが知られていたこと(摘記甲4b【0004】)、リジン又はその誘導体と抗菌活性を示す化合物とノニオン界面活性剤又は両性界面活性剤を配合することにより、バイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対し優れた抗菌効果を発揮することを見出したこと(摘記甲4b【0003】)、リジン又はその誘導体と抗菌活性を示す化合物とノニオン界面活性剤又は両性界面活性剤を配合した抗菌製剤(摘記甲5a【請求項1】)が、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これらの感染症の予防や治療に非常に有用であること(摘記甲4b【0005】)、「抗菌活性を示す化合物」の例として「フッカナトリウム」及び「フッカスズ」が挙げられ(摘記甲4a【請求項6】、摘記甲5d【0007】)、「リジンの誘導体」の例として「リジンの塩酸塩」が挙げられること(摘記甲4c【0006】)、当該「抗菌製剤」は、口腔に応用する場合には、歯磨(練歯磨、潤性歯磨、液状歯磨、液体歯磨、マウスウオッシュ等)の形態にすることができ、粘結剤や研磨剤等の通常の有効基剤が用いられること(摘記甲4e【0011】)、が記載されており、当該「抗菌製剤」の抗菌活性を評価した「実験例3」では、0.5重量%の「フッカ第一スズ」と0.5重量%の「リジン塩酸塩(LYS-Cl)」と0.1重量%のプルロニック(PLU)との組み合わせ溶液(No.6)が、抗菌剤(フッカ第一スズ)単独(No.5)と比較して、殺菌に要する時間を短縮し、優れた抗菌活性を発揮したことが示されている(摘記甲4f【0023】)。
そうすると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
≪甲4発明≫
「歯周疾患の慢性炎症時の出血の予防及び浮腫の抑制、並びに、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症の原因菌やそれらの菌塊(バイオフィルムやプラーク)の抑制のための、抗菌製剤であって、
0.5重量%のフッカ第一スズと、
0.5重量%のリジン塩酸塩と、
0.1重量%のプルロニックと、
を含む、
抗菌製剤。」
(5) 甲5の記載事項
甲5(特開2014-208658号公報)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲5a
「【請求項1】
下記のものを含む口腔ケア組成物:
a.有効量の遊離または塩形の塩基性アミノ酸;
b.有効量の抗細菌剤。
【請求項2】
さらに、陰イオン界面活性剤; 有効量のフッ化物源; および/または陰イオン性ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
・・・
【請求項6】
抗細菌剤がスズ(II)イオン源および亜鉛イオン源から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。」
・摘記甲5b
「【0006】
・・・塩基性アミノ酸、たとえばアルギニンは、抗細菌剤、たとえばトリクロサンの溶解度、送達、保持、および抗細菌効果を劇的に増大させうることが、今回、意外にも見いだされた。
【0007】
・・・したがって本発明は、歯垢の蓄積を抑制または軽減し、酸産生(齲食原性)細菌のレベルを低下させ、歯を再石灰化し、かつ歯肉炎を抑制または軽減するのに有効な口腔ケア組成物、・・・を包含する。・・・。」
・摘記甲5c
「【0011】
・・・。これらのアルギニン分解細菌(・・・)はアルギニンその他の塩基性アミノ酸を使ってアンモニアを産生し、これによりそれらの環境のpHを上昇させることができ、一方、齲食原性細菌は糖を代謝して乳酸を産生し、これは歯垢pHを低下させ、歯を脱灰し、最終的に空洞を生じる傾向がある。本発明組成物を規則的に経時使用すると、アルギニン分解細菌が相対的に増加し、齲食原性細菌が相対的に減少し、その結果、歯垢pHがより高くなり、実際に歯が齲食原性細菌およびそれらの有害作用に対して免疫化されると考えられる。」
・摘記甲5d
「【0027】
塩基性アミノ酸(合議体注:下線は原文のとおり。)
・・・本発明の組成物および方法に使用できる塩基性アミノ酸には、天然の塩基性アミノ酸、たとえばアルギニン、リジンおよびヒスチジンだけでなく、・・・、水溶性であって約7以上のpHの水溶液を与える塩基性アミノ酸はいずれも含まれる。
【0028】
・・・したがって、塩基性アミノ酸にはアルギニン、リジン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ヒスチジン、・・・、その塩類、またはその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。具体的な態様において、塩基性アミノ酸はアルギニン、シトルリンおよびオルニチンから選択される。」
・摘記甲5e
「【0036】
フッ化物イオン源(合議体注:下線は原文のとおり。)
・・・口腔ケア組成物はさらに1種類以上のフッ化物イオン源、たとえば可溶性フッ化物塩を含有することができる。
【0037】
・・・特定の態様において、フッ化物イオン源には、フッ化スズ(II)、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、およびその混合物が含まれる。」
・摘記甲5f
「【実施例】
【0087】
実施例1-アルギニン配合物中における抗細菌剤の利用能および送達(合議体注:下線は原文のとおり。)
・・・市販の練り歯磨き、・・・0.3重量%のトリクロサン、0.243重量%のフッ化ナトリウム、・・・を含むものを用い、これに0、1%、3%、および5%のL-アルギニン塩酸塩(pH7.0)を添加して配合物を調製する。
【0088】
・・・市販の配合物にL-アルギニンを含有させると、配合物から利用しうる可溶性トリクロサンの量が約70%(0%のアルギニン)から・・・95%(5%のアルギニン)に増加する。
・・・
【0091】
実施例2-アルギニンを含むシリカ基剤配合物の調製(合議体注:下線は原文のとおり。)
・・・
【0097】
実施例3-トリクロサン取込みおよび細菌付着に対する配合物の有効性
(合議体注:下線は原文のとおり。)
・・・。したがって、アルギニンを含む製品は市販の配合物より79.8%高い取込みをもつ。
・・・
【0099】
実施例3-沈降炭酸カルシウムを含む配合物における抗細菌剤の送達
(合議体注:下線は原文のとおり。「実施例3」は、「実施例4」の誤記と解される。)
・・・2%の重炭酸アルギニンを含む配合物を下記に従って調製する:
【0103】
実施例5-マウスリンス配合物(合議体注:下線は原文のとおり。)
・・・下記の成分を用いて、本発明のマウスウォッシュ配合物を調製する。
【0104】
【表4】
フッ化物およびトリクロサンを含む
アルギニンリンス
・・・
【0105】
実施例6-沈降炭酸カルシウム(PCC)を含む歯磨配合物(合議体注:下線は原文のとおり。)
・・・
【0106】
・・・種々の感覚特性を採点した。・・・、この既知の配合物をプラセボ対照として用い、さらに1、2、3または5%の重炭酸アルギニンを含む対応する配合物を同様に試験した。・・・」
・摘記甲5g
「【0109】
実施例7-アルギニン以外の塩基性アミノ酸(合議体注:下線は原文のとおり。)
・・・、生存のためにアンモニアを産生する細菌細胞に対するストレス負荷環境を模倣した。・・・。この最終濃度に、最終濃度5ミリモル濃度のL-アルギニン、L-シトルリンまたはL-オルニチンを、・・・添加した。次いで・・・、アンモニアの産生を測定した。
・・・
【0111】
・・・下記の表は、前記に従ってストレプトコッカス・サングイスをpH4.0で用いた6つの別個の試験からのアンモニア産生値を示す。・・・
【0112】
【表5】
[図:0001418186000004.jpg]
【0113】
・・・この実施例は、本発明の口腔ケア組成物中に用いた場合、アルギニン以外の塩基性アミノ酸が口腔内でアンモニアを産生し、したがって歯垢のpHを上昇させるのに有効であることを示す。」
(6) 甲6の記載事項
甲6(特開2006-312613号公報)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲6a
「【請求項1】
歯周病を予防または改善する効果を有し、その作用機序が互いに異なる、複数種のアミノ酸を含むことを特徴とする口腔用組成物。」
・摘記甲6b
「【0020】
・・・、歯周病を予防または改善する効果を有し、その作用機序が互いに異なる、複数種のアミノ酸を含むことにより、歯周病を予防または改善する効果が顕著に発現することを見出した。・・・。
・・・
【0023】
歯周病を予防または改善する効果を発現するための機能としては、例えば、口腔内組織を構成する細胞のコラーゲン合成を促進する機能(コラーゲン合成促進能)、歯周病菌のコラゲナーゼ活性を阻害する機能(コラゲナーゼ活性阻害能)、口腔内組織を構成する細胞の細胞を賦活化する機能(細胞賦活化能)等が挙げられる。このような機能が2つ以上組み合わされるように、アミノ酸を選択する。
・・・
【0025】
コラーゲン合成促進能を有するアミノ酸としては、例えば、セリン、グルタミン酸ナトリウム、トレオニン、リジン、グリシン等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・
【0027】
口腔用組成物中の、コラーゲン合成促進能を有するアミノ酸の含有量は、0.01~10wt%であるのが好ましく、0.1~5wt%であるのがより好ましい。・・・
【0028】
また、コラゲナーゼ活性阻害能を有するアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・
【0030】
口腔用組成物中の、コラゲナーゼ活性阻害能を有するアミノ酸の含有量は、0.01~10wt%であるのが好ましく、0.1~5wt%であるのがより好ましい。・・・
【0031】
また、細胞賦活化能を有するアミノ酸としては、例えば、アルギニン、バリン、イソロイシン、トレオニン等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・
【0033】
口腔用組成物中の、細胞賦活化能を有するアミノ酸の含有量は、0.01~10wt%であるのが好ましく、0.1~5wt%であるのがより好ましい。・・・」
(7) 甲7の記載事項
甲7(堀井欣一、「フッ素とう蝕予防」、新潟歯学会誌、1980年、
10巻、2号、83~93頁)には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲7a(86頁左欄11~20行)
「 フッ素によるう蝕予防法とその効果
う蝕予防に用いるフッ素の利用方法は,大別して2つに分けられる。1つは,主として歯牙形成期に作用させる全身的応用であり,もう1つは歯牙萌出後,歯面に作用させる局所応用である。前者には,水道水フッ素化,飲食物へのフッ素添加(塩,ミルクなど),錠剤や薬液として投与,などがある。後者では,フッ素液歯面塗布,フッ素液による洗口(フッ素洗口法),歯磨剤へのフッ素添加が実用化されている。」
・摘記甲7b(90頁右欄2行~91頁左欄1行)
「3.フッ素添加歯磨剤22)
フッ素がう蝕予防に有効であることが明らかになりはじめた1945年頃から,これを歯磨剤に加え,予防効果の研究が行われ出した。まず,NaFを用いて実験を行ったが効果は認められなかったという。ついでSnF2(0.4%)について試みられ,20~40%のう蝕予防効果が報告されている。しかし,この弗化第1錫の場合,長期間使用すると歯に茶色の着色がみられることがある。1961年,EricssonがNaF,SnF2とNa2PO3F(・・・)の3種のフッ化物について,種々の基礎剤とフッ素の結合を調べ,Na2-PO3Fが他の2種に比べ多くの基礎剤との反応性が少く,とくにCaC03との反応性が低いことを示した。以来,このフッ素化合物添加歯磨剤のう蝕予防効果について多くの研究があり,その効果は20~40%と報告されている。今日では商品として市販され,多数の人々に利用されている。」
(8) 甲8の記載事項
甲8(田中入、「フッ化ナトリウム配合歯磨剤の口腔内動態に関する
研究」、口腔衛生学会雑誌、1993年、43巻、357~368頁)
には、以下の事項が記載されている。
・摘記甲8a(358頁左欄2~28行)
「現在,う蝕予防にフッ化物がさまざまな形で用いられている。・・・。次に,フッ化物の局所応用にはいくつかの法がある。・・・。なかでも近年,フッ化物配合歯磨剤のう蝕抑制効果がホーム・ケアにおけるブラッシングと相まって評価されている。そこには,歯垢の除去作用,形成阻止作用および再付着阻止作用などの歯磨剤としての機能7)に加えて,歯磨きという行為がきわめて日常的なものであり,他の方法に比較して,導入や動機づけが行いやすいという背景がある。さらに,歯磨剤に配合されたフッ化物が歯垢や唾液のなかに継続的に存在することによって,エナメル質の脱灰の抑制ならびに初期う蝕病変の再石灰化が期待できると考えられているからである8-10)。」
・摘記甲8b(366頁左欄7~28行)
「歯磨剤に配合されたフッ化物が,口腔内でどのような動態を示しているかを明らかにするために,フッ化ナトリウム配合歯磨剤使用時における歯垢中および唾液中フッ素濃度の変化,歯垢中有機酸産生量の変化および歯垢中細菌数の変化について検討を行い,次の結論を得た。
1.本歯磨剤の使用により,歯垢中フッ素濃度および唾液中フッ素濃度は有意に増加することが明らかとなった。
2.・・・。
3.本歯磨剤の使用により,グルコース負荷条件における歯垢の乳酸産生が,有意に抑制されることが明らかとなった。
4.250ppmF歯磨剤を5日間使用した場合,統計学的有意差は認めないものの,歯垢中細菌数が若干減少する傾向がみられた。
以上の結果から,本歯磨剤の使用は,う蝕の発生抑制および進行抑制に寄与することが示唆された。」
(9) 引例Aの記載事項
引例A(峯裕一ほか、「市販洗口剤と歯磨剤がチタンの表面性状に与える影響」、日本口腔インプラント学会誌、2012年3月、25巻、1号、22~30頁)には、以下の事項が記載されている。
・摘記Aa(23頁右欄14~16行)
「本実験で使用した各市販洗口剤(以下洗口剤)を表1に示す.さらに各市販歯磨剤(以下歯磨剤)を表2に示す.」
・摘記Ab(24頁)
「
[図:0001418186000005.jpg]
」
2 取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
(1) 甲1を主引例とした場合
甲1を主引例とした場合については、上記第4の2(1)ア(ア)及びイ(ア)のとおり、先の取消理由通知では、本件特許の設定登録時の請求項1~9、11~14に係る発明は新規性が欠如し、同請求項1~14に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘しており、上記第4の2(2)ア(ア)及びイ(ア)のとおり、取消理由通知(決定の予告)では、先の訂正請求により訂正された請求項11~13に係る発明は、新規性及び進歩性が欠如する旨を指摘していた。
本件訂正により、請求項3~4、6、10、14は削除されている。
以下、本件訂正請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に係る発明について、甲1を主引例とした場合の新規性及び進歩性を検討する。
ア 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と、上記1(1)イで認定した甲1発明を対比する。
甲1発明の「歯槽膿漏や歯肉炎等の歯周疾患を予防又は治療するための練歯磨」は、本件訂正発明1の「口腔ケア組成物」に相当する。
甲1発明の練歯磨が「0.4重量%」の「フッ化第1錫」を含むことは、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源」を含むことに相当する。(下線は当審合議体が付した。以下同じ。)
甲1発明における「グリシン」、「アスパラギン」及び「グルタミン酸ナトリウム」は、本件訂正発明1における「アミノ酸」に相当し、それらの含有量の合計である「2.6重量%(=0.5重量%+0.8重量%+0.8重量%)」は、本件訂正発明1における「組成物の0.01重量%~10重量%」というアミノ酸の含有量の条件を満たしている。
甲1発明における「ヒドロキシエチルセルロース」と「キサンタンガム」は、本件訂正発明1における「増粘剤」に相当し、甲1発明における「無水ケイ酸」は、本件訂正発明1における「研磨剤」に相当する。
甲1発明の練歯磨は、本件訂正発明1において「実質的に含まない」とされている「亜鉛イオン源」に該当する成分を含むものではない。
甲1発明の練歯磨は、「酢酸トコフェロール」及び「ラウリル硫酸ナトリウム」を含んでいるから、本件訂正発明1における「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしていない。
甲1発明の練歯磨は、「フッ化第1錫」(「フッ化第一スズ」と同義。)を含むが、「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩」に該当する成分を含むものでないから、本件訂正発明1における「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしている。
甲1発明の練歯磨は、「アルギニンまたはその誘導体」に該当する成分も「リジンまたはその誘導体」に該当する成分も含んでいないから、本件訂正発明1における「アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤」並びに「リジンまたはその誘導体とノニオン界面活性および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤」を「除く」との条件を満たしている。
本件訂正発明1の口腔ケア組成物においては、「亜鉛イオン源を実質的に含まない」との条件、及び、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物、アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤、並びにリジンまたはその誘導体とノニオン界面活性および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤を除く」との条件以外に、「第一スズイオン源」、「アミノ酸」、「増粘剤および/または研磨剤」以外の成分を含むことを排除するものでないから、甲1発明の練歯磨が「パラベン」等の他の複数の成分を含むことは、本件訂正発明1と甲1発明との相違点にならない。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸と、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物(但し、フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物、アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤、並びにリジンまたはその誘導体とノニオン界面活性および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤を除く)。」
<相違点1-1>
本件訂正発明1は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」ことを特定しているのに対し、甲1発明は、「酢酸トコフェロール」及び「ラウリル硫酸ナトリウム」を含むものである点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明1と甲1発明とは、相違点1-1で相違しており、当該相違点は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明1は甲1に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
上記1(1)イで説示したとおり、甲1発明を認定する根拠とした甲1に記載の実施例26の練歯磨は、甲1において、トコフェロール又はそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含有する、トコフェロール又はそのエステル誘導体の安定化剤を配合した口腔用組成物に係る発明の具体例の一つとして記載されているものであって、当該発明は「アルキル硫酸エステルの水溶性塩の存在下においてもトコフェロールやそのエステル誘導体を長期間安定に保持することができる口腔用組成物を提供すること」(摘記甲1c)を目的とするものであるから、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩」は、当該発明の前提とされている構成成分であり、これらの成分を口腔用組成物から除くのであれば、「トコフェロール又はそのエステル誘導体の安定化剤」としての「錫塩」や「アミノ酸」を配合する意味も損なわれてしまうため、甲1発明の練歯磨において、その前提となる成分である「トコフェロール又はそのエステル誘導体」及び「アルキル硫酸エステルの水溶性塩」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるものとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 申立人の主張について
申立人は、令和5年10月27日付け意見書において、先の訂正請求により訂正された請求項1に係る発明1の甲1に基づく進歩性欠如について、概略、次のように主張している(上記意見書の2~3頁)。
アミノ酸類及び錫塩が、それぞれ抗歯周病の効果を有する成分であることは、既に知られており、技術常識ともいえることであって、例えば、甲6には、アミノ酸が歯周病の予防、改善効果を有すること、その配合量が0.01~10wt%であることが記載され(請求項1、【0027】、【0030】、【0033】)、甲2には、プラーク/歯肉炎の治療に有効な口腔用組成物が記載され、フッ化第1スズ、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、グリシン、エチレンジアミン四酢酸、又はそれら混合物の、スズ塩を、それぞれ約0.05%~約1.1%、約0.1%~約11%含んでよいことが記載されている(クレーム1、2欄下から9~6行、3欄13~16行)。そのため、トコフェロール又はその誘導体及びアルキル硫酸エステルの水溶性塩が除外されるか否かにかかわらず、歯槽膿漏や歯肉炎等の予防用途に使用する口腔用組成物において、いずれも抗歯周病の効果を有することが知られている又は技術常識である、アミノ酸類及び錫塩を選択し、通常用いられる範囲の配合量とすることは、当業者にとって明らかに容易である。
しかしながら、アミノ酸類及び錫塩のいずれもが抗歯周病の効果を有することが既知であったとしても、甲1発明の練歯磨において、その前提となる構成成分である「トコフェロール又はそのエステル誘導体」及び「アルキル硫酸エステルの水溶性塩」を含まない組成に変更することが、当業者において動機付けられるものとはいえないことは、上記(イ)bで説示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件訂正発明2、5、7~9について
次に示すとおり、本件訂正発明2、5、7~9は、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定するものである。
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「亜鉛イオン源を本質的に含まない」ことを特定するものである。
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「9.0以下のpHを有する」ことを特定するものである。
本件訂正発明7は、本件訂正発明1、2又は5のいずれかの口腔ケア組成物が含む「増粘剤」について、「組成物の0.01重量%~5重量%の量で存在」し、「増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される」ことを特定するものである。
本件訂正発明8は、本件訂正発明1、2、5又は7のいずれかの口腔ケア組成物が含む「研磨剤」について、「組成物の1重量%~35重量%の量で存在」し、「カルシウム含有研磨剤、シリカ研磨剤、又はこれらの組み合わせから選択される」ことを特定するものである。
本件訂正発明9は、本件訂正発明1、2、5、7又は8のいずれかの口腔ケア組成物が、「組成物の1重量%~60重量%の保湿剤を更に含み、前記保湿剤が、ポリオールである」ことを特定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明2、5、7~9も、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明11について
(ア) 対比
本件訂正発明11と、甲1発明とを対比する。
甲1発明の「歯槽膿漏や歯肉炎等の歯周疾患を予防又は治療するための練歯磨」は、本件訂正発明11における「口腔ケア組成物」に相当する。
甲1発明の練歯磨が「フッ化第1錫」を含んでいることは、本件訂正発明11における、「口腔ケア組成物を製造するため」の「第一スズイオン源」の「使用」に相当する。
甲1発明の練歯磨が、「グリシン」、「アスパラギン」及び「グルタミン酸ナトリウム」を含んでいることは、本件訂正発明11における、「口腔ケア組成物を製造するため」の「シトルリン」の「使用」と、「アミノ酸」の「使用」である限りにおいて共通する。
甲1発明における「ヒドロキシエチルセルロース」と「キサンタンガム」は、本件訂正発明11における「増粘剤」に相当し、甲1発明における「無水ケイ酸」は、本件訂正発明11における「研磨剤」に相当する。
本件訂正発明11における口腔ケア組成物は、「第一スズイオン源」、「シトルリン」、「増粘剤」及び「研磨剤」以外の成分を含むことを排除するものでないから、甲1発明の練歯磨が「酢酸トコフェロール」等の他の成分を含むことは、本件訂正発明11と甲1発明との相違点にならない。
そうすると、本件訂正発明11と甲1発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「増粘剤および/または研磨剤を含有する口腔ケア組成物を製造するための、第一スズイオン源およびアミノ酸の使用。」
<相違点1-2>
口腔ケア組成物を製造するための「アミノ酸」が、本件訂正発明11では「シトルリン」であるのに対し、甲1発明では、「グリシン」、「アスパラギン」及び「グルタミン酸ナトリウム」である点。
<相違点1-3>
口腔ケア組成物が、本件訂正発明11では、「対象における歯肉健康を促進するため」のものであるのに対し、甲1発明では、「歯槽膿漏や歯肉炎等の歯周疾患を予防又は治療するため」のものである点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明11と甲1発明とは、相違点1-2及び相違点1-3で相違しており、そのうち相違点1-2は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明11は甲1に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
相違点1-2について検討する。
甲1において、「トコフェロール及びその誘導体を安定化させる効果」に優れる成分の一つとして、「アミノ酸」が、他の複数の成分(水溶性のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、錫塩、アミノ酸誘導体)とともに並列して挙げられており(摘記甲1d)、「安定化剤として使用されるアミノ酸」の具体例として、甲1発明で用いられた「グリシン」、「アスパラギン」及び「グルタミン酸ナトリウム」とともに、多くのアミノ酸が列記されているが(摘記甲1f)、そこに「シトルリン」は含まれておらず、甲1の記載全体をみても、「シトルリン」について何らの記載もない。
これに対して、本件明細書には、「本発明は、口腔ケア組成物における、亜鉛イオン源の非存在でのアミノ酸と第一スズイオン源との組み合わせが、少なくとも歯肉創傷治癒及び抗菌効果を含む、歯肉健康上の利益を促進する」(【0010】)と記載され、「好ましくは、本発明で使用されるアミノ酸は、アルギニン、リジン、シトルリン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、及び・・・から選択される。」(【0045】)と記載されており、実際に、1.160重量%の「塩化第一スズ二水和物」(「第一スズイオン源」)及び2.00重量%の「シトルリン」を含み、亜鉛イオン源を含まない歯磨き組成物(【0084】~【0085】【表1】「実施例2」:「増粘剤」である「キサンタンガム」及び「カラギーナン」並びに「研磨剤」である「シリカ研磨剤」も含む。)が、抗菌剤である第一スズイオンによるバイオフィルム中の内毒素中和を改善することを裏付ける試験結果が記載され(【0087】~【0102】「実施例B」)、上記実施例2の歯磨き組成物が、ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒を効果的に改善することを裏付ける試験結果も記載されている(【0103】~【0109】「実施例C」)。
このような本件訂正発明11が奏する効果は、「シトルリン」についての何らの記載もない甲1の記載からは当業者が予測し得ない格別顕著なものである。
そうすると、甲1発明における「グリシン」、「アスパラギン」及び「グルタミン酸ナトリウム」に代えて又は加えて、甲1に例示すらされていない「シトルリン」を敢えて採用し、本件訂正発明11のような、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果をも奏するものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、相違点1-3について検討をするまでもなく、本件訂正発明11は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 小括
よって、本件訂正発明11は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 本件訂正発明12~13について
本件訂正発明12は、本件訂正発明11の使用において、
「歯肉健康」の「促進」を、
「(i)口腔内の歯肉創傷治癒を改善することと、
(ii)口腔内の細菌活性の低減を改善することと
を含む」
と限定するものである。
本件訂正発明13は、本件訂正発明11又は12の使用において、
「歯肉健康」の「促進」を、
「a)0時間~72時間、
b)0時間~48時間、
c)0時間~24時間、
からなる群から選択される期間内に生じ、0時間が、前記口腔ケア組成物を投与する時間である」
と限定するものである
そして、上記ウで説示したとおり、本件訂正発明11は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明11の使用を限定した本件訂正発明12~13も、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件訂正発明15について
(ア) 対比
本件訂正発明15は、上記第2の3(2)サのとおり、訂正事項11により、本件訂正前の本件発明3のうち本件訂正前の本件発明1の口腔ケア組成物を引用する部分のみを独立形式として新たに請求項15とし、「アミノ酸」を選択肢のうちの「シトルリン」に限定したものである。
そして、本件訂正発明15は、本件訂正発明1と比較すると、アミノ酸を「シトルリン」に限定している一方、「(但し、・・・を除く)」という、口腔ケア組成物から特定の態様を除くとの条件を有しないものであり、その余の発明特定事項は共通している。
そうすると、上記ア(ア)における本件訂正発明1と甲1発明の対比を参照すれば、本件訂正発明15と甲1発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)アミノ酸と、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物。」
<相違点1-4>
口腔ケア組成物が含む「アミノ酸」が、本件訂正発明15では、「組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリン」であるのに対し、甲1発明では、
「グリシン 0.5重量%
アスパラギン 0.8重量%
グルタミン酸ナトリウム 0.8重量%」
である点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明15と甲1発明とは、相違点1-4で相違しており、当該相違点は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明15は甲1に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
上記ウ(イ)bで述べたとおり、甲1には、「シトルリン」について何らの記載もないのに対し、本件明細書には、1.160重量%の「塩化第一スズ二水和物」(「第一スズイオン源」)及び2.00重量%の「シトルリン」を含み、亜鉛イオン源を含まない、実施例2の歯磨き組成物(「増粘剤」である「キサンタンガム」及び「カラギーナン」並びに「研磨剤」である「シリカ研磨剤」も含む。)が、抗菌剤である第一スズイオンによるバイオフィルム中の内毒素中和を改善することを裏付ける試験結果、及び、ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒を効果的に改善することを裏付ける試験結果が記載されており、このような本件訂正発明15が奏する効果は、「シトルリン」についての何らの記載もない甲1の記載からは当業者が予測し得ない格別顕著なものである。
そうすると、甲1発明における
「グリシン 0.5重量%
アスパラギン 0.8重量%
グルタミン酸ナトリウム 0.8重量%」
に代えて又は加えて、甲1に何らの記載もない「シトルリン」を敢えて採用して「組成物の0.1重量%~5重量%」の含有量とし、本件訂正発明15のような、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果をも奏するものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、本件訂正発明15は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明15は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
カ 本件訂正発明16~21について
本件訂正請求項16~21は、独立形式で記載されているが、本件訂正請求項15の記載と比較すると、本件訂正発明16~21は、以下のように、本件訂正発明15の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定したものであるという関係にある。
本件訂正発明16は、本件訂正発明15の口腔ケア組成物において、
「前記第一スズイオン源が、前記組成物の0.05重量%~4重量%の量で存在し、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、ヨウ化第一スズ、塩化フッ化第一スズ、ヘキサフルオロジルコン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、リンゴ酸第一スズ、グリシン酸第一スズ、炭酸第一スズ、リン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、メタリン酸第一スズ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される」
ことを特定するものである。
本件訂正発明17は、本件訂正発明15の口腔ケア組成物において、
「前記組成物が、9.0以下のpHを有する」
ことを特定するものである。
本件訂正発明18は、本件訂正発明15の口腔ケア組成物において、
「前記組成物の0.05重量%~4重量%のフッ化物イオン源を更に含み、前記フッ化物イオン源が、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される」
ことを特定するものである。
本件訂正発明19は、本件訂正発明15の口腔ケア組成物において、
「前記増粘剤が、前記組成物の0.01重量%~5重量%の量で存在し、前記増粘剤が、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせから選択される」
ことを特定するものである。
本件訂正発明20は、本件訂正発明15の口腔ケア組成物において、
「前記研磨剤が、前記組成物の1重量%~35重量%の量で存在し、前記研磨剤が、カルシウム含有研磨剤、シリカ研磨剤、又はこれらの組み合わせから選択される」
ことを特定するものである。
本件訂正発明21は、本件訂正発明15の口腔ケア組成物において、
「前記組成物の1重量%~60重量%の保湿剤を更に含み、前記保湿剤が、ポリオールである」
ことを特定するものである。
そして、上記オで説示したとおり、本件訂正発明15は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明15の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明16~21も、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 甲1を主引例とした場合の取消理由1及び取消理由2のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~2、5、7~9、11~13、15~21は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 甲2を主引例とした場合
甲2を主引例とした場合については、上記第4の2(1)ア(イ)及びイ(イ)のとおり、先の取消理由通知では、本件特許の設定登録時の請求項1~9、11~14に係る発明は新規性が欠如し、同請求項1~14に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘しており、上記第4の2(2)ア(イ)及びイ(イ)のとおり、取消理由通知(決定の予告)では、先の訂正請求により訂正された本件特許の請求項1~9、11~13に係る発明は新規性が欠如し、同請求項1~13に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘していた。
本件訂正により、請求項3~4、6、10、14は削除されている。
以下、本件訂正請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に係る発明について、甲2を主引例とした場合の新規性及び進歩性を検討する。
ア 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と、上記1(2)イで認定した甲2発明を対比する。
甲2発明の「プラーク及び歯肉炎の治療のための歯磨剤組成物」は、本件訂正発明1の「口腔ケア組成物」に相当する。
甲2発明における「フッ化第一スズ」及び「塩化第一スズ二水和物」は、本件訂正発明1における「第一スズイオン源」に相当し、それらの含有量の合計「1.595重量%(=0.454重量%+1.141重量%)」は、本件訂正発明1における「組成物の0.01重量%~5重量%」という第一スズイオン源の含有量の条件を満たしている。
本件明細書の【0028】の記載によれば、「アミノ酸」には、遊離形態と塩形態の両方が含まれるとされていることから、甲2発明の歯磨剤組成物が「0.772重量%」の「グリシン酸Na」を含むことは、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸」を含むことに相当する。
甲2発明における「PEG-12」、「カラギーナンNa」及び「ヒドロキシエチルセルロース」は、本件訂正発明1における「増粘剤」に相当し、甲2発明における「シリカ」は、本件訂正発明1における「研磨剤」に相当する。
甲2発明の歯磨剤組成物は、本件訂正発明1において「実質的に含まない」とされている「亜鉛イオン源」に該当する成分を含むものではない。
甲2発明の歯磨剤組成物は、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体」に該当する成分を含んでいないから、本件訂正発明1における「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしている。
甲2発明の歯磨剤組成物は、「フッ化第一スズ」、「グリシン酸Na」及び「塩化第一スズ二水和物」を含んでおり、甲2には、「第2の第一スズ塩は、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、EDTA、グリシン、及び、それらの混合物の、第一スズ塩である。これらの化合物は、既知の第一スズのキレートであり、本組成物中に、・・・、in-situでキレートが形成される別々の可溶性の第一スズ及びキレート剤として加えることができる。」(摘記甲2e)と記載されているから、組成物中に「グリシンの第一スズ塩」が存在するといえるので、本件訂正発明1における「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」との条件を満たしていない。
甲2発明の歯磨剤組成物は、「アルギニンまたはその誘導体」に該当する成分も「リジンまたはその誘導体」に該当する成分も含んでいないから、本件訂正発明1における「アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤」並びに「リジンまたはその誘導体とノニオン界面活性および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤」を「除く」との条件を満たしている。
本件訂正発明1の口腔ケア組成物においては、「亜鉛イオン源を実質的に含まない」との条件、及び、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物、アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤、並びにリジンまたはその誘導体とノニオン界面活性および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤を除く」との条件以外に、「第一スズイオン源」、「アミノ酸」、「増粘剤および/または研磨剤」以外の成分を含むことを排除するものではないから、甲2発明の歯磨剤組成物が「サッカリンNa」等の他の複数の成分を含んでいることは、本件訂正発明1と甲2発明との相違点にならない。
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸と、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤、並びにリジンまたはその誘導体とノニオン界面活性および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤を除く)。」
<相違点2-1>
本件訂正発明1は、「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」を「除く」ことを特定しているのに対し、甲2発明は、「フッ化第一スズ」及び「グリシンの第一スズ塩」を含むものである点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明1と甲2発明とは、相違点2-1で相違しており、当該相違点は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明1は甲2に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
上記1(2)イで説示したとおり、甲2発明を認定する根拠とした甲2に記載の実施例VIの歯磨剤組成物は、甲2において、
「(a)安全有効量のフッ化第一スズ;
(b)安全有効量の、α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン
四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩;及び
(c)薬学的に許容しうる担体
を含み、カルシウムイオン源を実質的に含まない、「第1組成物」、
及び、
(a)安全有効量のピロリン酸イオン源;
(b)薬学的に許容しうる担体、
を含む、「第2組成物」、
を有する口腔用組成物」(摘記甲2a)
に係る発明を構成する、「第1組成物」の具体例の一つとして記載されているものであり、当該口腔用組成物の発明において、「第1組成物」は「第一スズ組成物」とも称され、当該「第1組成物」中の「フッ化第一スズ」及び「別の第一スズ化合物」は、別の組成物である「第2組成物」(「ピロリン酸組成物」とも称される。)中のピロリン酸イオンとの併用により、着色の低減とともに、改善された抗プラーク/抗歯周病の効果をもたらすとされているから(摘記甲2b)、当該「第1組成物」においては、「フッ化第一スズ」及び「別の第一スズ化合物」である「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩」(甲2発明における「グリシンの第一スズ塩」。)は、当該口腔用組成物の発明の前提となる必須の構成成分である。
そうすると、甲2発明の歯磨剤組成物について、「フッ化第一スズ」及び「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩」である「グリシンの第一スズ塩」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるものとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件訂正発明2、5、7~9について
上記(1)イで説示したとおり、本件訂正発明2、5、7~9は、いずれも本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定するものである。
そして、上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明2~5、7も、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明11について
(ア) 対比
本件訂正発明11と、甲2発明とを対比する。
甲2発明の「プラーク及び歯肉炎の治療のための歯磨組成物」は、本件訂正発明11における「口腔ケア組成物」に相当する。
甲2発明の歯磨組成物が「フッ化第一スズ」及び「塩化第一スズ二水和物」を含んでいることは、本件訂正発明11における、口腔ケア組成物を製造するための「第一スズイオン源」の「使用」に相当する。
甲2発明の歯磨組成物が「グリシン酸Na」を含んでいることは、本件訂正発明11における、「口腔ケア組成物を製造するため」の「シトルリン」の「使用」と、「アミノ酸」の「使用」である限りにおいて共通する。
甲2発明における「PEG-12」、「カラギーナンNa」及び「ヒドロキシエチルセルロース」は、本件訂正発明11における「増粘剤」に相当する。
甲2発明における「シリカ」は、本件訂正発明11における「研磨剤」に相当する。
本件訂正発明11における口腔ケア組成物は、「第一スズイオン源」、「シトルリン」、「増粘剤」及び「研磨剤」以外の成分を含むことを排除するものではないから、甲2発明の歯磨剤組成物が「サッカリンNa」等の他の複数の成分を含むことは、本件訂正発明11と甲2発明との相違点にならない。
そうすると、本件訂正発明11と甲2発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「増粘剤および/または研磨剤を含有する口腔ケア組成物を製造するための、第一スズイオン源およびアミノ酸の使用。」
<相違点2-2>
口腔ケア組成物を製造するための「アミノ酸」が、本件訂正発明11では「シトルリン」であるのに対し、甲2発明では「グリシン酸Na」である点。
<相違点2-3>
口腔ケア組成物が、本件訂正発明11では、「対象における歯肉健康を促進するため」のものであるのに対し、甲2発明では、「プラーク及び歯肉炎の治療のため」のものである点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明11と甲2発明とは、相違点2-2及び相違点2-3で相違しており、そのうち相違点2-2は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明11は甲2に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
相違点2-2について検討する。
上記ア(イ)bで述べたように、甲2発明を認定する根拠とした甲2に記載の実施例VIの歯磨剤組成物は、甲2の請求項1に記載の「第1組成物」の具体例として記載されているものであり、当該「第1組成物」においては、「別の第一スズ化合物」である「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの、第一スズ塩」(甲2発明における「グリシンの第一スズ塩」。)が、必須の構成成分であるところ、甲2には、当該「グリシン」に代えて又は加えて、別のアミノ酸を用いることは記載されていないし、甲2の記載全体をみても、「シトルリン」については何らの記載もない。
これに対し、上記(1)ウ(イ)bで説示したとおり、本件明細書には、1.160重量%の「塩化第一スズ二水和物」(「第一スズイオン源」)及び2.00重量%の「シトルリン」を含み、亜鉛イオン源を含まない、実施例2の歯磨き組成物(「増粘剤」である「キサンタンガム」及び「カラギーナン」並びに「研磨剤」である「シリカ研磨剤」も含む。)が、抗菌剤である第一スズイオンによるバイオフィルム中の内毒素中和を改善することを裏付ける試験結果、及び、ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒を効果的に改善することを裏付ける試験結果が記載されており、このような本件訂正発明11が奏する効果は、「シトルリン」についての何らの記載もない甲2の記載からは当業者が予測し得ない格別顕著なものである。
そうすると、甲2発明における「グリシン酸Na」に代えて又は加えて、甲2に何らの記載もない「シトルリン」を敢えて採用し、本件訂正発明11のような、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果をも奏するものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、相違点2-3について検討をするまでもなく、本件訂正発明11は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 小括
よって、本件訂正発明11は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 本件訂正発明12~13について
上記(1)エで説示したように、本件訂正発明12~13は、いずれも本件訂正発明11の使用を限定したものである。
そして、上記ウで説示したとおり、本件訂正発明11は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明11の使用を限定した本件訂正発明12~13も、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件訂正発明15について
(ア) 対比
上記(1)オ(ア)で説示したように、本件訂正発明15は、本件訂正発明1と比較すると、アミノ酸を「シトルリン」に限定している一方、「(但し、・・・を除く)」という、口腔ケア組成物から特定の態様を除くとの条件を有しないものであり、その余の発明特定事項は共通している。
そうすると、上記ア(ア)における本件訂正発明1と甲2発明の対比を参照すれば、本件訂正発明15と甲2発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)アミノ酸と、
を含み、
増粘剤および/または研磨剤を更に含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物。」
<相違点2-4>
口腔ケア組成物が含む「アミノ酸」が、本件訂正発明15では、「組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリン」であるのに対し、甲2発明では、
「グリシン酸Na 0.772重量%」
である点。
(イ) 相違点の判断
a 新規性について
上記(ア)のとおり、本件訂正発明15と甲2発明とは、相違点2-4で相違しており、当該相違点は、口腔ケア組成物における具体的な組成の特定に係る事項であるから、実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明15は甲2に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
上記ウ(イ)bで述べたとおり、甲2には、「シトルリン」について何らの記載もないのに対し、本件明細書には、1.160重量%の「塩化第一スズ二水和物」(「第一スズイオン源」)及び2.00重量%の「シトルリン」を含み、亜鉛イオン源を含まない、実施例2の歯磨き組成物(「増粘剤」である「キサンタンガム」及び「カラギーナン」並びに「研磨剤」である「シリカ研磨剤」も含む。)が、抗菌剤である第一スズイオンによるバイオフィルム中の内毒素中和を改善することを裏付ける試験結果、及び、ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒を効果的に改善することを裏付ける試験結果が記載されており、このような本件訂正発明15が奏する効果は、「シトルリン」についての何らの記載もない甲2の記載からは当業者が予測し得ない格別顕著なものである。
そうすると、甲2発明における
「グリシン酸Na 0.772重量%」
に代えて又は加えて、甲2に何らの記載もない「シトルリン」を敢えて採用して「組成物の0.1重量%~5重量%」の含有量とし、本件訂正発明15のような、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果をも奏するものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、本件訂正発明15は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明15は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
カ 本件訂正発明16~21について
上記(1)カで説示したように、本件訂正請求項16~21は、独立形式で記載されているが、本件訂正請求項15の記載と比較すると、本件訂正発明16~21は、本件訂正発明15の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定したものであるという関係にある。
そして、上記オで説示したとおり、本件訂正発明15は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明15の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明16~21も、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 甲2を主引例とした場合の取消理由1及び取消理由2のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~2、5、7~9、11~13、15~21は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 取消理由2(進歩性)について
(1) 甲3を主引例とした場合について
甲3を主引例とした場合については、上記第4の2(1)イ(ウ)のとおり、先の取消理由通知では、本件特許の設定登録時の請求項1~14に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘しており、上記第4の2(2)イ(ウ)のとおり、取消理由通知(決定の予告)では、先の訂正請求により訂正された本件特許の請求項11~13に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘していた。
本件訂正により、請求項3~4、6、10、14は削除されている。
以下、本件訂正請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に係る発明について、甲3を主引例とした場合の進歩性を検討する。
ア 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と、上記1(3)イで認定した甲3発明とを対比する。
甲3発明の「抗菌製剤」は、「歯周疾患の慢性炎症時の出血の予防及び浮腫の抑制、並びに、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症の原因菌やそれらの菌塊(バイオフィルムやプラーク)の抑制のための」ものであり、う蝕、歯周病、口内炎等の口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これらの感染症の予防や治療に有用なものであるから(摘記甲3b【0005】)、本件訂正発明1の「口腔ケア組成物」に相当する。
甲3発明の抗菌製剤が「0.5重量%のフッカ第一スズ」を含むことは、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源」を含むことに相当する。
甲3発明の抗菌製剤が「0.5重量%のアルギニン塩酸塩」を含むことは、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸」を含むことに相当する。
甲3発明の抗菌製剤は、本件訂正発明1において「実質的に含まない」とされている「亜鉛イオン源」に該当する成分を含むものではない。
甲3発明の抗菌製剤は、「フッカ第1スズ」(「フッ化第一スズ」と同義。)を含むが、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体」、「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩」に該当する成分、及び、「リジンまたはその誘導体」に該当する成分を含んでいないから、本件訂正発明1における、
「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」、
「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」、
並びに
「リジンまたはその誘導体とノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤」
を「除く」との条件を満たしている。
甲3発明の抗菌製剤は、「アルギニン塩酸塩」を含んでいるから、本件訂正発明1における「アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤」を「除く」との条件を満たしていない。
そうすると、本件訂正発明1と甲3発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸と、
を含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物、並びにリジンまたはその誘導体とノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤を除く)。」
<相違点3-1>
本件訂正発明1は、口腔ケア組成物が「アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤」を「除く」ことを特定しているのに対し、甲3発明の抗菌製剤は「アルギニン塩酸塩」を含むものである点。
<相違点3-2>
本件訂正発明1は、口腔ケア組成物が「増粘剤および/または研磨剤を更に含」むことを特定しているのに対し、甲3発明では、そのような特定がされていない点。
(イ) 相違点の判断
相違点3-1について検討する。
上記1(3)イで説示したとおり、甲3発明を認定する根拠とした甲3に記載の実験例3のNo.6の溶液は、甲3において、請求項1に記載の「アルギニンまたはその誘導体および抗菌活性を示す化合物を配合することを特徴とする抗菌製剤」(摘記甲3a)に係る発明の具体例の一つとして記載されているものであり、甲3には、「アルギニンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を配合することにより、共存蛋白の影響をほとんど受けず、微生物の懸濁液はもとよりバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対しても優れた抗菌効果を発揮」することが記載されているから(摘記甲3b【0003】)、「アルギニン塩酸塩」を含むことは、甲3発明における課題解決のための必要不可欠の構成であるといえ、甲3発明の抗菌製剤において、その必須成分である「アルギニン塩酸塩」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるものとはいえない。
したがって、相違点3-2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 申立人の主張について
申立人は、令和5年10月27日付け意見書において、本件訂正発明1の甲3に基づく進歩性欠如について、概略、次のように主張している(上記意見書の5頁)。
アルギニンはアミノ酸の一種であり、アミノ酸はアルギニンの他にも多数あることは極めて周知の事項であり(例えば、甲1の3頁左上欄11行~右上欄14行にも様々なアミノ酸が例示されている。)、甲3発明には、アルギニン以外のアミノ酸を用いることを妨げる阻害要因は全くないから、当業者ならば、甲3の記載から(必要があれば甲1を参照して)、アルギニンの代わりに他のアミノ酸を用いて同様の効果があるか確認する動機付けを得るといえる。
しかしながら、甲3発明の抗菌製剤において、その必須成分である「アルギニン塩酸塩」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるものとはいえないことは、上記(イ)で説示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件訂正発明2、5、7~9について
上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明2、5、7~9も、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明11について
(ア) 対比
本件訂正発明11と、甲3発明とを対比する。
上記ア(ア)で述べたのと同様の理由により、甲3発明の「抗菌製剤」は、本件訂正発明11における「口腔ケア組成物」に相当する。
甲3発明の抗菌製剤が「フッカ第一スズ」を含むことは、本件訂正発明11における口腔ケア組成物を製造するための「第一スズイオン源」の「使用」に相当する。
甲3発明の抗菌製剤が「アルギニン塩酸塩」を含んでいることは、本件訂正発明11における、「口腔ケア組成物を製造するため」の「シトルリン」の「使用」と、「アミノ酸」の「使用」である限りにおいて共通する。
そうすると、本件訂正発明11と甲3発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物を製造するための、第一スズイオン源およびアミノ酸の使用。」
<相違点3-3>
口腔ケア組成物を製造するための「アミノ酸」が、本件訂正発明11では「シトルリン」であるのに対し、甲3発明では「アルギニン塩酸塩」である点。
<相違点3-4>
本件訂正発明11では、口腔ケア組成物が「増粘剤および/または研磨剤を含有する」と特定されているのに対し、甲3発明では、そのような特定がされていない点。
<相違点3-5>
口腔ケア組成物が、本件訂正発明11では、「対象における歯肉健康を促進するため」のものであるのに対し、甲3発明では、「歯周疾患の慢性炎症時の出血の予防及び浮腫の抑制、並びに、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症の原因菌やそれらの菌塊(バイオフィルムやプラーク)の抑制のため」のものである点。
(イ) 相違点の判断
相違点3-3について検討する。
上記ア(イ)で説示したように、「アルギニン塩酸塩」を含むことは、甲3発明における課題解決のための必要不可欠の構成であるといえ、甲3には、「アルギニン塩酸塩」に代えて又は加えて、他のアミノ酸を併用することは記載されていないし、「シトルリン」について何らの記載もない。
ところで、甲5には、「a.有効量の遊離または塩形の塩基性アミノ酸」及び「b.有効量の抗細菌剤」を含む「口腔ケア組成物」について記載され(摘記甲5a【請求項1】)、塩基性アミノ酸(例えばアルギニン)が、抗細菌剤(例えばトリクロサン)の効果を増大させ得ることが記載され(摘記甲5b【0006】)、アルギニン以外の塩基性アミノ酸の例の一つとして「シトルリン」も記載されているが(摘記甲5d【0028】)、実際に抗細菌効果の増強等を確認しているのは、塩基性アミノ酸としてアルギニンを用いた場合のみであり(摘記甲5f【0087】~【0106】)、「シトルリン」については、アルギニンと同様に、アルギニン分解細菌にアンモニアを産生させることを確認したに留まる(摘記甲5g【0109】~【0113】)。
これに対し、上記2(1)ウ(イ)bで説示したとおり、本件明細書には、1.160重量%の「塩化第一スズ二水和物」(「第一スズイオン源」)及び2.00重量%の「シトルリン」を含み、亜鉛イオン源を含まない、実施例2の歯磨き組成物(「増粘剤」である「キサンタンガム」及び「カラギーナン」並びに「研磨剤」である「シリカ研磨剤」も含む。)が、抗菌剤である第一スズイオンによるバイオフィルム中の内毒素中和を改善することを裏付ける試験結果、及び、ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒を効果的に改善することを裏付ける試験結果が記載されており、このような本件訂正発明11が奏する効果は、「シトルリン」について何らの記載もない甲3の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものである。
そうすると、甲3発明の抗菌製剤における必須の成分である「アルギニン塩酸塩」に代えて又は加えて、甲3に何らの記載もない「シトルリン」を敢えて採用し、本件訂正発明11のような、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果をも奏するものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、相違点3-4及び相違点3-5について検討をするまでもなく、本件訂正発明11は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明11は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件訂正発明12~13について
上記ウで説示したとおり、本件訂正発明11は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明11の使用を限定した本件訂正発明12~13も、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件訂正発明15について
(ア) 対比
上記2(1)オ(ア)で説示したように、本件訂正発明15は、本件訂正発明1と比較すると、アミノ酸を「シトルリン」に限定している一方、「(但し、・・・を除く)」という、口腔ケア組成物から特定の態様を除くとの条件を有しないものであり、その余の発明特定事項は共通している。
そうすると、上記ア(ア)における本件訂正発明1と甲3発明の対比を参照すれば、本件訂正発明15と甲3発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)アミノ酸と、
を含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物。」
<相違点3-2'>
本件訂正発明15は、口腔ケア組成物が「増粘剤および/または研磨剤を更に含」むことを特定しているのに対し、甲3発明では、そのような特定がされていない点。
<相違点3-6>
口腔ケア組成物が含む「アミノ酸」が、本件訂正発明15では、「組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリン」であるのに対し、甲3発明では、「0.5重量%のアルギニン塩酸塩」である点。
(イ) 相違点の判断
事案に鑑み、まず相違点3-6について検討する。
上記ウ(イ)で説示したように、「アルギニン塩酸塩」を含むことは、甲3発明における課題解決のための必要不可欠の構成であるといえ、甲3には、「シトルリン」について何らの記載もないのに対し、本件明細書には、1.160重量%の「塩化第一スズ二水和物」(「第一スズイオン源」)及び2.00重量%の「シトルリン」を含み、亜鉛イオン源を含まない、実施例2の歯磨き組成物(「増粘剤」である「キサンタンガム」及び「カラギーナン」並びに「研磨剤」である「シリカ研磨剤」も含む。)が、抗菌剤である第一スズイオンによるバイオフィルム中の内毒素中和を改善することを裏付ける試験結果、及び、ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒を効果的に改善することを裏付ける試験結果が記載されており、このような本件訂正発明15が奏する効果は、「シトルリン」についての何らの記載もない甲3の記載からは当業者が予測し得ない格別顕著なものである。
そうすると、甲3発明の抗菌製剤における必須成分である「0.5重量%のアルギニン塩酸塩」に代えて又は加えて、甲3に何らの記載もない「シトルリン」を敢えて採用し、「組成物の0.1重量%~5重量%」の含有量として、本件訂正発明15のような、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果をも奏する口腔ケア組成物とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、相違点3-2'について検討をするまでもなく、本件訂正発明15は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 申立人の主張について
申立人は、令和5年10月27日付け意見書において、本件訂正発明15の甲3に基づく進歩性欠如について、概略、次のように主張している(上記意見書の9頁)。
「シトルリン」はアミノ酸の1種であり、体内で尿素回路を構成すること等はよく知られているところ、甲3には、他のアミノ酸を転用することを妨げる記載はないから、当業者ならばアミノ酸として「シトルリン」を使用する動機づけは十分ある。
しかし、甲3には「シトルリン」について何らの記載もなく、甲3発明の抗菌製剤の必須の成分である「アルギニン塩酸塩」に代えて又は加えて、敢えて「シトルリン」を採用することは、当業者において動機付けられるものといえないことは、上記(イ)で説示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明15は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件訂正発明16~21について
上記2(1)カで説示したように、本件訂正請求項16~21は、独立形式で記載されているが、本件訂正請求項15の記載と比較すると、本件訂正発明16~21は、本件訂正発明15の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定したものであるという関係にある。
そして、上記オで説示したとおり、本件訂正発明15は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明15の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明16~21も、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 甲3を主引例とした場合の取消理由2のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~2、5、7~9、11~13、15~21は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 甲4を主引例とした場合について
甲4を主引例とした場合については、上記第4の2(1)イ(エ)のとおり、先の取消理由通知では、本件特許の設定登録時の請求項1~14に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘しており、上記第4の2(2)イ(エ)のとおり、取消理由通知(決定の予告)では、先の訂正請求により訂正された本件特許の請求項11~13に係る発明は進歩性が欠如する旨を指摘していた。
本件訂正により、請求項3~4、6、10、14は削除されている。
以下、本件訂正請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に係る発明について、甲4を主引例とした場合の進歩性を検討する。
ア 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と、上記1(4)イで認定した甲4発明とを対比する。
甲4発明の「抗菌製剤」は、「歯周疾患の慢性炎症時の出血の予防及び浮腫の抑制、並びに、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症の原因菌やそれらの菌塊(バイオフィルムやプラーク)の抑制のための」ものであり、う蝕、歯周病、口内炎等の口腔感染症をはじめとする種々の感染症の原因菌やそれらの菌塊を抑制し、これらの感染症の予防や治療に有用なものであるから(摘記甲4b【0005】)、本件訂正発明1の「口腔ケア組成物」に相当する。
甲4発明の抗菌製剤が「0.5重量%のフッカ第一スズ」を含むことは、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源」を含むことに相当する。
甲4発明の抗菌製剤が「0.5重量%のリジン塩酸塩」を含むことは、本件訂正発明1の口腔ケア組成物が「組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸」を含むことに相当する。
甲4発明の抗菌製剤は、「フッカ第1スズ」(「フッ化第一スズ」と同義。)を含むが、「トコフェロールまたはそのエステル誘導体」、「α-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩」に該当する成分、及び、「アルギニンまたはその誘導体」に該当する成分を含んでいないから、本件訂正発明1における、
「トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物」、
「フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物」、
並びに
「アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤」
を「除く」との条件を満たしている。
甲4発明の抗菌製剤は、「リジン塩酸塩」及びノニオン界面活性剤である「プルロニック」を含んでいるから、本件訂正発明1における「リジンまたはその誘導体とノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤」を「除く」との条件を満たしていない。
そうすると、本件訂正発明1と甲4発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%のアミノ酸と、
を含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物(但し、トコフェロールまたはそのエステル誘導体とアルキル硫酸エステルの水溶性塩とを含む口腔用組成物、フッ化第一スズ、及びα-ヒドロキシ酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、又はグリシンの第一スズ塩を含む口腔用組成物、アルギニンまたはその誘導体を含む抗菌製剤を除く)。」
<相違点4-1>
本件訂正発明1が、口腔ケア組成物が「リジンまたはその誘導体とノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む抗菌製剤」を「除く」ことを特定しているのに対し、甲4発明の抗菌製剤は「リジン塩酸塩」及び「プルロニック」を含むものである点。
<相違点4-2>
本件訂正発明1が、「増粘剤および/または研磨剤を更に含」むことを特定しているのに対し、甲4発明は、そのような特定がされていない点。
(イ) 相違点の判断
相違点4-1について検討する。
上記1(4)イで説示したとおり、甲4発明を認定する根拠とした甲4に記載の実験例3のNo.6の溶液は、甲4において、請求項1に記載の「リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物とノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤からなることを特徴とする抗菌製剤」(摘記甲4a)に係る発明の具体例の一つとして記載されているものであり、甲4には、「リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物から選ばれる1種または2種以上を配合し、さらにノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を追加配合することにより、共存蛋白の影響をほとんど受けず、微生物の懸濁液はもとよりバイオフィルムやプラークなど微生物の集合体や塊に対しても優れた抗菌効果を発揮」することが記載されているから(摘記甲4b【0003】)、「リジン塩酸塩」及び「プルロニック」を含むことは、甲4発明における課題解決のための必要不可欠の構成であるといえ、甲4発明の抗菌製剤において、その必須成分である「リジン塩酸塩」及び「プルロニック」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるものとはいえない。
したがって、相違点4-2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 申立人の主張について
申立人は、令和5年10月27日付け意見書において、本件訂正発明1の甲4に基づく進歩性欠如について、概略、次のように主張している(上記意見書の5頁)。
リジンはアミノ酸の一種であり、アミノ酸はリジンの他にも多数あることは極めて周知の事項であり(例えば、甲1の3頁左上欄11行~右上欄14行にも様々なアミノ酸が例示されている。)、甲4発明には、リジン以外のアミノ酸を用いることを妨げる阻害要因は全くないから、当業者ならば、甲4の記載から(必要があれば甲1を参照して)、リジンの代わりに他のアミノ酸を用いて同様の効果があるか確認する動機付けを得るといえる。
しかしながら、甲4発明の抗菌製剤において、その必須成分である「リジン塩酸塩」及び「プルロニック」を含まない組成に変更することは、当業者において動機付けられるものとはいえないことは、上記(イ)で説示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件訂正発明2、5、7~9について
上記アで説示したとおり、本件訂正発明1は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明1の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明2、5、7~9も、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明11について
(ア) 対比
本件訂正発明11と、甲4発明とを対比する。
上記ア(ア)で述べたのと同様の理由により、甲4発明の「抗菌製剤」は、本件訂正発明11における「口腔ケア組成物」に相当する。
甲4発明の抗菌製剤が「フッカ第一スズ」を含むことは、本件訂正発明11における口腔ケア組成物を製造するための「第一スズイオン源」の「使用」に相当する。
甲4発明の抗菌製剤が「リジン塩酸塩」を含んでいることは、本件訂正発明11における、「口腔ケア組成物を製造するため」の「シトルリン」の「使用」と、「アミノ酸」の「使用」である限りにおいて共通する。
そうすると、本件訂正発明11と甲4発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物を製造するための、第一スズイオン源およびアミノ酸の使用。」
<相違点4-3>
口腔ケア組成物を製造するための「アミノ酸」が、本件訂正発明11では「シトルリン」であるのに対し、甲4発明では「リジン塩酸塩」である点。
<相違点4-4>
本件訂正発明11では、口腔ケア組成物が「増粘剤および/または研磨剤を含有する」と特定されているのに対し、甲4発明では、そのような特定がされていない点。
<相違点4-5>
口腔ケア組成物が、本件訂正発明11では、「対象における歯肉健康を促進するため」のものであるのに対し、甲4発明では、「歯周疾患の慢性炎症時の出血の予防及び浮腫の抑制、並びに、う蝕、歯周病、口内炎などの口腔感染症の原因菌やそれらの菌塊(バイオフィルムやプラーク)の抑制のため」のものである点。
(イ) 相違点の判断
相違点4-3について検討する。
上記ア(イ)で説示したように、「リジン塩酸塩」を含むことは、甲4発明における課題解決のための必要不可欠の構成であるといえ、甲4には、「リジン塩酸塩」に代えて又は加えて、他のアミノ酸を併用することは記載されていないし、「シトルリン」について何らの記載もない。
これに対し、上記2(1)ウ(イ)bで説示したとおり、本件明細書には、1.160重量%の「塩化第一スズ二水和物」(「第一スズイオン源」)及び2.00重量%の「シトルリン」を含み、亜鉛イオン源を含まない、実施例2の歯磨き組成物(「増粘剤」である「キサンタンガム」及び「カラギーナン」並びに「研磨剤」である「シリカ研磨剤」も含む。)が、抗菌剤である第一スズイオンによるバイオフィルム中の内毒素中和を改善することを裏付ける試験結果、及び、ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒を効果的に改善することを裏付ける試験結果が記載されており、このような本件訂正発明11が奏する効果は、「シトルリン」について何らの記載もない甲4の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものである。
そうすると、甲4発明の抗菌製剤における必須の成分である「リジン塩酸塩」に代えて又は加えて、甲4に何らの記載もない「シトルリン」を敢えて採用し、本件訂正発明11のような、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果をも奏するものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、相違点4-4及び相違点4-5について検討をするまでもなく、本件訂正発明11は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明11は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件訂正発明12~13について
上記ウで説示したとおり、本件訂正発明11は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明11の使用を限定した本件訂正発明12~13も、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件訂正発明15について
(ア) 対比
上記2(1)オ(ア)で説示したように、本件訂正発明15は、本件訂正発明1と比較すると、アミノ酸を「シトルリン」に限定している一方、「(但し、・・・を除く)」という、口腔ケア組成物から特定の態様を除くとの条件を有しないものであり、その余の発明特定事項は共通している。
そうすると、上記ア(ア)における本件訂正発明1と甲4発明の対比を参照すれば、本件訂正発明15と甲4発明には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)アミノ酸と、
を含み、
亜鉛イオン源を実質的に含まない、口腔ケア組成物。」
<相違点4-2'>
本件訂正発明15は、口腔ケア組成物が「増粘剤および/または研磨剤を更に含」むことを特定しているのに対し、甲4発明では、そのような特定がされていない点。
<相違点4-6>
口腔ケア組成物が含む「アミノ酸」が、本件訂正発明15では、「組成物の0.1重量%~5重量%のシトルリン」であるのに対し、甲4発明では、「0.5重量%のリジン塩酸塩」である点。
(イ) 相違点の判断
事案に鑑み、まず相違点4-6について検討する。
上記ウ(イ)で説示したように、「リジン塩酸塩」を含むことは、甲4発明における課題解決のための必要不可欠の構成であるといえ、甲4には、「シトルリン」について何らの記載もないのに対し、本件明細書には、1.160重量%の「塩化第一スズ二水和物」(「第一スズイオン源」)及び2.00重量%の「シトルリン」を含み、亜鉛イオン源を含まない、実施例2の歯磨き組成物(「増粘剤」である「キサンタンガム」及び「カラギーナン」並びに「研磨剤」である「シリカ研磨剤」も含む。)が、抗菌剤である第一スズイオンによるバイオフィルム中の内毒素中和を改善することを裏付ける試験結果、及び、ヒト歯肉線維芽細胞の創傷治癒を効果的に改善することを裏付ける試験結果が記載されており、このような本件訂正発明15が奏する効果は、「シトルリン」についての何らの記載もない甲4の記載からは当業者が予測し得ない格別顕著なものである。
そうすると、甲4発明の抗菌製剤における必須成分である「0.5重量%のリジン塩酸塩」に代えて又は加えて、甲4に何らの記載もない「シトルリン」を敢えて採用し、「組成物の0.1重量%~5重量%」の含有量として、本件訂正発明15のような、抗菌効果のみならず、優れた歯肉創傷治癒の効果をも奏する口腔ケア組成物とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、相違点4-2'について検討をするまでもなく、本件訂正発明15は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ) 申立人の主張について
申立人は、令和5年10月27日付け意見書において、本件訂正発明15の甲4に基づく進歩性欠如について、概略、次のように主張している(上記意見書の9頁)。
「シトルリン」はアミノ酸の1種であり、体内で尿素回路を構成すること等はよく知られているところ、甲4には、他のアミノ酸を転用することを妨げる記載はないから、当業者ならばアミノ酸として「シトルリン」を使用する動機づけは十分ある。
しかし、甲4には「シトルリン」について何らの記載もなく、甲4発明の抗菌製剤の必須の成分である「リジン塩酸塩」に代えて又は加えて、敢えて「シトルリン」を採用することは、当業者において動機付けられるものといえないことは、上記(イ)で説示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件訂正発明15は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件訂正発明16~21について
上記2(1)カで説示したように、本件訂正請求項16~21は、独立形式で記載されているが、本件訂正請求項15の記載と比較すると、本件訂正発明16~21は、本件訂正発明15の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定したものであるという関係にある。
そして、上記オで説示したとおり、本件訂正発明15は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件訂正発明15の口腔ケア組成物の組成又はpHを限定した本件訂正発明16~21も、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 甲4を主引例とした場合の取消理由2のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1~2、5、7~9、11~13、15~21は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 取消理由3(産業上の利用可能性)について
上記第4の2(1)ウのとおり、先の取消理由通知において、本件特許の設定登録時の請求項14に係る発明は、産業上利用することができる発明に該当しないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものである旨を指摘していた。
本件訂正により、請求項14は削除されたため、取消理由3については、対象となる請求項が存在しないものとなった。
5 取消理由4(明確性)について
上記第4の2(2)ウのとおり、取消理由通知(決定の予告)においては、先の訂正請求により訂正された請求項1~10の記載の明確性要件違反について、概略、次の(ア)~(ウ)の点を指摘していた。
(ア) 請求項4~9が直接的に又は間接的に記載を引用する請求項1は、組成物について、「(但し、・・・ピロリン酸イオン源を含む口腔用組成物を除く)」と規定しているが、「第一スズイオン源」の選択肢として「ピロリン酸第一スズ」を含むとする請求項4~9の記載は、請求項1の記載と矛盾しており、「ピロリン酸第一スズ」を含む組成物が、請求項4~9に記載の組成物に該当するか否か明確に把握することができない
(イ) 請求項3~9が直接的に又は間接的に記載を引用する請求項1、並びに、請求項10は、組成物について、「アルギニンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を含む抗菌製剤」並びに「リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を含む抗菌製剤」を「除く」と規定しているが、組成物中に存在する「アミノ酸」の選択肢として「アルギニン」及び「リジン」を含むとする、請求項3及び10の記載は、請求項1及び10の記載と矛盾しており、「アルギニン」又は「リジン」を含む組成物が、請求項3~10に記載の組成物に該当するか否かを明確に把握することができない。
(ウ) 請求項1~10は、組成物について「アルギニンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を含む抗菌製剤」並びに「リジンまたはその誘導体と抗菌活性を示す化合物を含む抗菌製剤」を「除く」と規定しているが、「抗菌活性を示す化合物」なる記載では、具体的に如何なる化合物までが該当するか、その範囲を明確に把握できず、請求項1~10に記載の組成物から具体的に如何なる組成の抗菌製剤までが除外されるのか明確に特定できない。
本件訂正により、先の訂正請求により訂正された請求項1に記載されていた「(但し、・・・ピロリン酸イオン源を含む口腔用組成物を除く)」なる事項は存在しないものとなり、「アミノ酸」の選択肢として「アルギニン」及び「リジン」を含むことが規定されていた請求項3及び10は削除され、先の訂正請求により訂正された請求項1に記載されていた「抗菌活性を示す化合物」なる事項も存在しないものとなったため、取消理由4は全て解消している。
第6 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
先の取消理由通知の取消理由と申立理由の対応関係、及び、取消理由通知(決定の予告)の取消理由と先の取消理由通知の取消理由の対応関係は、上記第4の2(1)オ及び(2)エに示したとおりである。
以下、取消理由通知において採用しなかった申立理由について検討する。
1 申立理由1(甲1及び甲2に基づく新規性欠如)について
上記第4の1(1)ア及びイで述べたとおり、申立人は、本件特許の設定登録時の請求項1~14に係る発明について、甲1及び甲2に基づく新規性欠如を主張しているが、同請求項10に係る発明については、先の取消理由通知において、甲1に基づく新規性欠如を指摘しなかった。
しかし、本件訂正により、請求項10は削除されたため、当該申立理由については、対象となる請求項が存在しないものとなった。
2 申立理由4(明確性)について
上記第4の1(4)で述べたとおり、申立人は、本件特許の設定登録時の請求項1~9、14の記載は、組成物がフッ化第一スズを含む場合、第一スズイオン源とフッ化物イオン源のどちらとして含有されるのか、どちらの含有量と判断すべきか、当業者が理解できないため、特許を受けようとする発明が明確でない旨を主張している。
本件訂正により、請求項3~4、6、14は削除されている。
また、本件訂正により、本件訂正前の請求項3のうち、同請求項1を引用するもの、及び、同請求項4~9のうち、同請求項1を引用する同請求項3を引用するものについて、それぞれ独立形式の新たな請求項15~21とされた。
そこで、以下、本件訂正請求項1~2、5、7~9、15~21の記載について、申立理由4の明確性を検討する。
本件訂正請求項1~2、5、7~9、15~17、19~21において、「フッ化物イオン源」について何ら規定されていないから、組成物がフッ化第一スズを含む場合でも、第一スズイオン源とフッ化物イオン源のどちらとして含有されるのか、どちらの含有量と判断すべきか、という問題は生じ得ない。
本件訂正請求項18には、
「a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
・・・
を含み、」
及び
「前記組成物の0.05重量%~4重量%のフッ化物イオン源を更に含み、前記フッ化物イオン源が、・・・、フッ化第一スズ、・・・からなる群から選択される、」
という記載がある。
ここで、本件訂正請求項18に記載の組成物が「フッ化第一スズ」を含む場合、当該成分は「第一スズイオン源」としても「フッ化物イオン源」としても含まれると理解できるし、組成物中のフッ化第一スズの量は、「第一スズイオン源」及び「フッ化物イオン源」のいずれの含有量としても把握できるから、申立人が主張するような記載の不備はない。
よって、本件訂正請求項1~2、5、7~9、15~21の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された補正された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10、14〕、〔11~13〕、15、16、17、18、19、20、21について訂正することを認める。
先の取消理由通知書及び/又は取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び証拠、並びに、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の訂正後の請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に係る特許を取り消すことはできない。また、その他に本件特許の訂正後の請求項1~2、5、7~9、11~13、15~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項3~4、6、10、14は、上記第2のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による本件特許の請求項3~4、6、10、14に係る発明の特許についての特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、本件特許の請求項2及び3に係る発明の特許についての特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701042