特許異議申立
2017-700718
積層鉄心の製造方法
- 審判番号
- 2017-700718
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-014534外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月25日
- 審決日
- 2018年01月19日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】JFEスチール株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 【権利者代理人】酒井 宏明
- 【異議申立人】所 智恵子
- 分類
- P1651.113-YAA(H02K) / P1651.121-YAA(H02K) / P1651.537-YAA(H02K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6064923号発明「積層鉄心の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6064923号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-3]のとおり訂正することを認める。
特許第6064923号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本件特許第6064923号に係る出願は、平成26年1月29日の出願であって、平成29年1月6日に特許の設定登録がなされた。
これに対して、特許異議申立人 所智恵子より平成29年7月25日に、本件請求項1-3に係る発明の特許について特許異議の申立がなされ、平成29年9月14日付けで取消理由が通知され、これに対し特許権者より平成29年11月16日付けで意見書及び訂正請求書が提出され、平成29年11月28日付けで特許異議申立人に訂正請求があった旨が通知され、これに対し特許異議申立人は平成29年12月28日付けで意見書を提出したものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成29年11月16日付けの訂正請求(以下、「本件訂正」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項のとおりである。
・訂正事項
特許請求の範囲の請求項1に「前記ダボ同士を該接着剤で固着させるステップを含み、前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着される」とあるのを、「対向するダボ凸側側面とダボ凹側側面とを該接着剤で固着させるステップを含み、前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着され、前記ダボがVカシメである」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(a)訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る特許発明は「固着」及び「ダボ」の構成を特定していないものであったのに対し、訂正後の請求項1に係る発明は、「固着」及び「ダボ」の構成を具体的に特定し、更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(b)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項は、「固着」及び「ダボ」の構成を具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
また、上記訂正事項は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2、3の記載についても実質的に訂正するものであるが、上記訂正事項は訂正前の請求項1の記載以外に訂正前の請求項2、3の記載について何ら訂正するものではなく、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正後の請求項2、3に係る発明は、訂正前の請求項2、3に係る発明との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(c)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落【0027】には、「・・・また、対向するダボ凸側側面d3とダボ凹側側面d4とが接着剤Aにより固着されることにより、ダボDの側面(ダボ凸側側面d3、ダボ凹側側面d4)に充填された接着剤Aに、図2に矢印で示す剪断力f2が働く。この場合には、ダボ凸側側面d3とダボ凹側側面d4とが固着されずに鉄心材S2と鉄心材S3とが剥離しようとする場合より、剥離強度が増すと考えられる。」と記載され、また、段落【0024】には、「なお、本実施の形態において、ダボは、平面形状が矩形状に形成され、長辺方向の断面形状がV字状に形成される。これにより、Vカシメによる積層鉄心が製造される。」と記載されている。
したがって、願書に添付した明細書には、「対向するダボ凸側側面とダボ凹側側面とを接着剤で固着させる」こと、また「ダボがVカシメである」ことが記載されており、上記訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(d)一群の請求項について
訂正事項に係る訂正前の請求項1-3は、請求項1の記載を、請求項2、3がそれぞれ引用しているものであるから、当該訂正前の請求項1-3は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。
(e)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の請求項1-3について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1-3に係る訂正事項に関して、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(3)むすび
したがって、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正により訂正された請求項1-3に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-3に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
鋼板を用いた複数の鉄心材のそれぞれに凸形状のダボを形成し、鉄心材同士の該ダボを嵌合させて一体化する積層鉄心の製造方法であって、
前記鉄心材同士のダボを嵌合させた後、前記鉄心材の積層方向の外周面から中心方向に接着剤を浸透させることにより、対向するダボ凸側側面とダボ凹側側面とを該接着剤で固着させるステップを含み、前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着され、前記ダボがVカシメであることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
前記接着剤で固着されるダボの中心位置が、前記鉄心材の積層方向の外周面から8mm以内の位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
前記接着剤の粘度が200mPa・s以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層鉄心の製造方法。」
(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1-3に係る特許に対して平成29年9月14日付けで通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。
「1.本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2.本件特許の請求項1-3に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3.本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号および第2号の規定に適合していない。
[理由1](特許法第29条第1項第3号)
甲第1号証:特開2012-120299号公報
請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。
[理由2](特許法第29条第2項)
甲第1号証:特開2012-120299号公報
甲第2号証:特開2002-262485号公報
(1)請求項1に係る発明
請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載の発明および周知技術に基いて、この発明の属する分野において通常の知識を有する者が容易に想到し得たものである。
(2)請求項2に係る発明
請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載の発明および周知技術に基いて、この発明の属する分野において通常の知識を有する者が容易に想到し得たものである。
(3)請求項3に係る発明
請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載の発明に、甲第2号証に記載の事項を適用することにより、この発明の属する分野において通常の知識を有する者が容易に想到し得たものである。
[理由3](特許法第36条第6項第1号、第2号)
請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、明確でない。
発明の詳細な説明には、本件特許発明1の「ダボ同士を該接着剤で固着させる」ことに関し、以下の記載がある。
・「図2は、締結された鉄心材SのダボDの短辺方向の断面を示す模式図である。なお、以下では、図3に示すように、ダボDの周辺各部を、ダボ上面d1、ダボ下面d2、ダボ凸側側面d3、ダボ凹側側面d4、鉄心材上面c1、鉄心材下面c2と称する。図2に示すように、鉄心材S1および鉄心材S2のブロックと、鉄心材S3より下方のブロックとが剥離しようとする場合、鉄心材S2と鉄心材S3との間に図2に矢印で示す剥離力f1が働く。また、対向するダボ凸側側面d3とダボ凹側側面d4とが接着剤Aにより固着されることにより、ダボDの側面(ダボ凸側側面d3、ダボ凹側側面d4)に充填された接着剤Aに、図2に矢印で示す剪断力f2が働く。この場合には、ダボ凸側側面d3とダボ凹側側面d4とが固着されずに鉄心材S2と鉄心材S3とが剥離しようとする場合より、剥離強度が増すと考えられる。」(段落【0027】)
そうすると、「ダボ同士を該接着剤で固着させる」における「固着」とは、対向するダボ凸側側面d3とダボ凹側側面d4とが接着剤Aにより固着されるものとして、発明の詳細な説明に記載されている。
また、発明の詳細な説明には、本件特許発明1の「鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着される」ことに関し、以下の記載がある。
・「なお、ダボDの位置や接着剤Aの粘度を調整することにより、接着剤Aで固着するダボDの数を全ダボD数の30%以上とする。このように剥離強度が高くなったダボDの個数比率を30%以上とすることで、積層鉄心Cの剥離強度が向上する。」(段落【0028】)
・「剥離強度として、図5に矢印で示すように、積層鉄心Cを軸方向に平行に引っ張って、剥離が生じたときの力を測定した。また、鉄心材Sをはがして接着剤Aの浸透領域の幅(浸透距離)Xsの平均値と、この浸透領域内に形成されているダボDの個数の全ダボDに対する比率(個数比率)とを求めた。」(段落【0039】)
そうすると、「鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着される」の記載における「固着」は、ダボが接着剤Aの浸透領域内に位置するときに生じるものとして、発明の詳細な説明に記載されている。
しかし、本件特許発明1は「前記ダボ同士を該接着剤で固着させるステップを含み、前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着される」と記載されるものである。
そうすると、本件特許発明1の「固着」は、対向するダボ凸側側面d3とダボ凹側側面d4とが接着剤Aにより固着されるものなのか、それとも、ダボが接着剤Aの浸透領域内に位置することなのか明確でない。
仮に、本件特許発明1が、ダボが接着剤Aの浸透領域内に位置するときは必ず、対向するダボ凸側側面d3とダボ凹側側面d4との固着が行われることまでをも意味するとすれば、ダボが接着剤Aの浸透領域内に位置するとき、接着剤は必ずダボ側面にまで浸透するということにまで拡張して、発明の詳細な説明の記載を解釈しなければならないが、そのような拡張した解釈が可能なものとはいえない。
そうすると、本件特許発明1の「前記ダボ同士を該接着剤で固着させるステップを含み、前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着される」は、その「固着」に関する構成が明確でなく、また、発明の詳細な説明に記載されたものともいえない。
請求項2、3に係る発明は、請求項1を引用するものであり同様である。」
(3)甲1、2号証の記載
甲第1号証(特開2012-120299号公報)には、図面と共に、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加。)。
ア.「【請求項1】
積層された複数のコアシートの層間に接着剤を含浸させて接着固定したステータコアにおいて、
前記複数のコアシートは、両端部に位置する第1のコアシートと、前記第1のコアシート間に設けられ、積層方向に形成された溝を有する第2のコアシートとで構成され、
前記第1のコアシートと前記第2のコアシートの溝とによって前記接着剤が塗布される凹部を形成したことを特徴とするステータコア。」
イ.「【請求項6】
前記ステータコアの外周面に前記凹部を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のステータコア。」
ウ.「【請求項11】
前記凹部の容積は、前記複数のコアシートの層間の合計容積と略同一であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載のステータコア。」
エ.「【請求項12】
前記複数のコアシートの相互間は、かしめ固着されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載のステータコア。」
オ.「【請求項14】
積層された複数のコアシートの層間に接着剤を含浸させて接着固定したステータコアの製造方法において、
第1のコアシートの間に、積層方向に形成された溝を有する第2のコアシートを積層する工程と、
前記第1のコアシートと前記第2のコアシートの溝とによって形成された凹部に前記接着剤を塗布する工程と、
積層された前記複数のコアシートの層間に前記接着剤を含浸させる工程とを備えたことを特徴とするステータコアの製造方法。」
カ.「【0013】
実施の形態1.
図1および2は、この発明を実施するための実施の形態1に係るステータコア1aを示すものであって、図1はステータコアの構造を示す斜視図、図2はステータコアのコアシートを示す斜視図である。
【0014】
ステータコア1aは、図1に示すように、ヨーク部3と、このヨーク部3から突出したコイルを巻回するためのティース部2とを有する略T字形状の電磁鋼板からなるコアシート4が複数(ここでは20枚)積層され、これらが互いに接着固定されて構成されている。
【0015】
複数のコアシート4は、図2(a)に示す内周面側の端部50a、すなわちステータコア1aの内周面側の端部が直線状に形成された第1のコアシート4aと、図2(b)に示す内周面側の端部50b、すなわちステータコア1aの内周面側の端部が円弧状に形成された第2のコアシート4bとで構成されている。この第2のコアシート4bは、内周面側の端部の形状が円弧状である以外は第1のコアシート4bと同一の形状である。即ち、第2のコアシート4bは、第1のコアシート4aに対してステータコア1aの内周面側の端部に円弧状の溝13が形成されていると言える。
【0016】
第1のコアシート4aは、図1に示すように、ステータコア1aの両端に位置しており、この第1のコアシート4aの間に第2のコアシート4bが位置している。そして、この第1のコアシート4aと第2のコアシート4bの円弧状の溝13とによって、ステータコア1aの内周面40には凹部7が形成されており、すべてのコアシート4はこの凹部7から各コアシート4の層間に含浸させた接着剤によって接着固定されている。このように凹部7をステータコア1aの内周面40に形成することにより、後述する接着剤の含浸の際に、接着剤がコアシート4の側面全体に広がり易い。
【0017】
なお、凹部7は、その容積が積層固定したステータコア1aが運搬時や巻線時に分解しない接着強度を有するために必要な量の接着剤を塗布するだけの容積以上であれば良いが、必要量の接着剤を確実に塗布して高い接着強度を得るためには、コアシート4の層間の合計容積と略同一の容積になるように形成する。凹部7の容積は第2のコアシート4bの溝13の深さを変えることにより変更可能である。」
キ.「【0021】
次に、図4(a)に示すように、凹部7が鉛直上向きになるようにコアシート4を設置して、図4(b)に示すように、この凹部7に、例えばロックタイトLO-210(登録商標、ヘンケル社製)等の粘度が低く嫌気性である接着剤14を塗布する。このように嫌気性の接着剤14を用いることで、表面に露出した接着剤14は揮発して消滅し、不必要
な部分に接着剤が残存してモータ特性劣化や、形状精度劣化が発生することを防止することができる。なお、図4においては作図の都合上、固定治具15を図示していない。
【0022】
また、接着剤14は、1~5μmであるコアシート4間の隙間に十分に含浸できる程度の粘度であることが望ましい。なお、ここでは嫌気性の接着剤を用いたが、接着剤が残存して発生するモータ特性劣化や形状精度劣化が問題とならない場合においては、嫌気性の接着剤を用いなくてもよい。」
ク.「【0040】
実施の形態7.
図12はこの発明を実施するための実施の形態7に係るステータコアを示す斜視図である。実施の形態1ないし5では、ヨーク3と、このヨーク部3から突出したティース部2とを有する略T字形状コアシート4を用いてステータコアを構成するものを示したが、図12に示すように、環状に形成されたヨーク部3と、このヨーク部3から径方向に突出した複数のティース部2とを有するコアシート4を用いてステータコア1gを構成してもよい。このような構成においても上記と同様の効果を得ることができる。なお、本実施の形態においては凹部7をステータコアの外周面41に設ける構成を例示しているが、凹部7は実施の形態1~5のいずれのものも形成することができる。」
ケ.「【0041】
実施の形態8.
図13は、この発明を実施するための実施の形態8に係るステータコアの構成を示す斜視図である。本実施の形態に係るステータコア1hは、各コアシート4の相互間がかしめ部19の箇所において抜きかしめによってかしめ固着されているとともに、各コアシート4同士は層間に含浸させた接着剤により接着固定されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
また、このステータコア1hの製造方法は、第1のコアシート4aと第2のコアシート4bとを積層する際に、これらを抜きかしめにより固定して積層すること以外は実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。」
コ.「【0044】
一方、本実施の形態に係るステータコアは、図14(b)に示すように、隙間10に接着剤14を含浸させ、コアシート4同士を接着固定しているので、ステータコア1hの剛性が増大し、コイル23の巻回時のコイルテンションによるステータコア1hの内外周でのコアシート間の隙間10の差が大きくなることを抑制することができる。これにより、巻締りの少ない抜きステータコア1hを得ることができる。」
サ.図14(b)には、コアシートのそれぞれにかしめが形成され、かしめの形状が凸形状であり、コアシート同士のかしめを嵌合させていることが看取できる。
上記ケ.では、実施の形態8に係るステータコアの構成として、「各コアシート4の相互間がかしめ部19の箇所において」「かしめ固着されている」ことが示され、「このステータコア1hの製造方法は、第1のコアシート4aと第2のコアシート4bとを積層する際に、これらを抜きかしめにより固定して積層すること以外は実施の形態1と同様である」と記載されている。
そうすると、上記オ.の「第1のコアシートの間に、積層方向に形成された溝を有する第2のコアシートを積層する工程」等において、「各コアシートの相互間がかしめ部の箇所において」「かしめ固着」されることが開示されているといえるので、「第1のコアシートの間に、積層方向に形成された溝を有する第2のコアシートを積層する工程」は、「第1のコアシートの間に、積層方向に形成された溝を有する第2のコアシートを、各コアシートの相互間をかしめ部の箇所においてかしめ固着して積層する工程」といえる。
また、上記エ.の「【請求項12】」の記載において、「前記複数のコアシートの相互間は、かしめ固着されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載のステータコア。」とある。
ここで、上記エ.「【請求項12】」の「かしめ固着」は、上記ケ.の「実施の形態8.」における「かしめ部19の箇所において」行われる「かしめ固着」に相当し、上記イ.の「【請求項6】」の「前記ステータコアの外周面に前記凹部を設けたことを特徴とする」は、上記ク.の「実施の形態7.」における「凹部7をステータコアの外周面41に設ける構成」に相当するので、「実施の形態7.」と「実施の形態8.」との双方を実施することについて開示されているといえる。
そして、上記オ.の「前記第1のコアシートと前記第2のコアシートの溝とによって形成された凹部」につき、上記ク.「実施の形態7.」で「凹部7をステータコアの外周面41に設ける」ことは、「前記第1のコアシートと前記第2のコアシートの溝とにより、ステータコアの外周面に形成された凹部」といえる。
そうすると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「電磁鋼板からなるコアシートが複数積層され、積層された複数のコアシートの層間に接着剤を含浸させて接着固定したステータコアの製造方法において、
第1のコアシートの間に、積層方向に形成された溝を有する第2のコアシートを、各コアシートの相互間をかしめ部の箇所においてかしめ固着して積層する工程と、
前記第1のコアシートと前記第2のコアシートの溝とによりステータコアの外周面に形成された凹部に前記接着剤を塗布する工程と、
積層された前記複数のコアシートの層間に前記接着剤を含浸させる工程とを備えたステータコアの製造方法。」
甲第2号証(特開2002-262485号公報)には、図面と共に、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加。)。
ア.「【0007】
【課題を解決するための手段】本件発明は、極歯部を有する複数の固定子分割部材を環状に組み合わせた固定子を備える電動機であって、前記固定子分割部材は複数の電磁鋼板を積層し、各電磁鋼板を接着剤により連結したことを特徴とする電動機であり、一極歯毎に分割した固定子分割部材を構成するため、100mPa・S程度以下の低粘度接着剤(例えば、シアノアクリルレート系瞬間接着剤、嫌気性接着剤、UV硬化接着剤)を用い、複数の電磁鋼板を積層したものである。」
イ.「【0020】固定子極歯部20は、固定子コアシートを積層したもので、内周部21のコアシート積層面に接着剤を浸透させて積層固定したものである。接着剤は100mPa・S程度以下の低粘度なシアノアクリルレート系瞬間接着剤を用いる。」
そうすると、甲第2号証には、以下の技術的事項が記載されている。
「電磁鋼板である固定子コアシートを積層し、コアシート積層面に接着剤を浸透させて積層固定するにあたり、接着剤は100mPa・S程度以下の低粘度な接着剤を用いる。」
[なお、請求人が平成29年12月28日付け意見書で提出した、甲第8号証(特開2008-36671号公報)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
ア.「【0010】
本発明は、表面に絶縁被膜が形成されている電磁鋼板を打抜き、積層し、カシメで鋼板を結束するに際し、ポンチによって電磁鋼板の一部をダイスに押し込む時、絶縁被膜が鋼板剪断表面に密着して破断せず、剪断面間に電流が導通するのを防ぐことを特徴とする電磁鋼板のカシメ方法であり、そのようなカシメ方法を適用して結束した積層電磁鋼板である。
【0011】
電磁鋼板を打抜き、積層し、カシメで結束するに際し、電磁鋼板1を打抜く前に、図1に示すように、凸型ポンチ2によって電磁鋼板の一部をダイス3に押し込んで、あらかじめ凹凸部を形成する。この凹凸部を形成された電磁鋼板は、次いで所定形状に打抜かれ、同時に、直前に打抜かれた鋼板上に積層される。このとき、前に打抜かれた鋼板の凹部に、今回打抜かれた鋼板の凸部を嵌合させ、これら鋼板はカシメられる。このカシメは、通常、積層鋼板の複数個所で行われる。
【0012】
以上の動作が所定回繰り返されて、図2に示すような所定枚数の電磁鋼板が積層結束された積層電磁鋼板が製造される。
用いられるカシメの形態としては、図2(a)に示すような円又は楕円形ポンチを用いた丸平カシメや、図2(b)に示すように先端がV字形のポンチを用いたVカシメなどがある。」
イ.「【0039】
埋め込み磁石型同期電動機に使用される分割鉄心に、図6に示すようにカシメを実施した。図6において、分割鉄心11の継鉄部分には、Vカシメ16、17を用い、歯部には実施例1と同様に本発明の丸平カシメ15を用いた。
歯部のカシメ15を従来の丸平カシメとしたものと電動機の無負荷鉄損を比較したところ、本発明の丸平カシメを用いたものは鉄損が約20%低減できた。
【実施例7】
【0040】
実施例6の分割鉄心を作るにあたり、乾燥するのみで絶縁接着できる溶液に浸漬させ、その後、乾燥させた。カシメでは、前記押し込み量を積層鉄心形状を維持できる板厚の1/4ほどの深さに留めたが、乾燥したのみで絶縁接着できる溶液により積層間が接着結束できるので、巻線工程で鉄心にかかる応力に十分耐えられるようになった。
従来より、カシメなしで、乾燥したのみで絶縁接着できる溶液で積層間結束する方法があるが、本実施例では、打抜き工程で本発明カシメを使用することで鉄心形状を維持し、乾燥したのみで絶縁接着できる絶縁被膜を使用することで、積層間短絡を抑制した高強度の鉄心が実現できた。」
また、請求人が平成29年12月28日付け意見書で提出した、甲第9号証(特開2011-223844号公報)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】
電磁鋼板を順送り金型等で打ち抜き、計量整列し積層してなる積層鉄心於いて、当該積層鉄心の鉄心薄板形状の輪郭の外側方向に対して、微細な幅で連続する括れ部を一箇所或いは複数箇所有するタブを任意の位置に一個或いは複数個形成し、該タブを一箇所或いは複数箇所のかしめ或いは溶接、或いはその両方により固着し、積層した事を特徴とする積層鉄心。」
イ.「【請求項3】
電磁鋼板薄板から順送り金型等により鉄心コア形状の薄板を打ち抜き計量し、薄板を整列して積層する工程と、かしめ或いは溶接、或いはその両方より固着積層する工程と、積層鉄心の焼き鈍し工程と、接着剤の含浸工程と、積層鉄心の圧縮工程と、はみ出した接着剤の除去工程と、接着剤の硬化工程と、タブの切除工程を含むことを特徴とする、請求項1~請求項2のいずれか一項に記載の積層鉄心に係る製造方法。」
ウ.「【0041】
<接着剤の含浸工程>
積層鉄心は、かしめ5或いは溶接部6、或いはその両方により固着して、移動や搬送が可能な強度を保持しているので積層鉄心の接着剤の含浸工程は容易である。」
エ.「【0051】
又、本件のかしめ5、或いは溶接部6はタブ3の切除工程に於いて、タブ3と共に切除される為に、電磁鋼板の短絡等を気にかける必要が無く物理的に強固に固着する事が出来るものであれば、Vかしめ、ダボかしめ、割りかしめ、ピンかしめ等、どの様な形態のかしめ、溶接でも可能である。」]
(4)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)[理由1](特許法第29条第1項第3号)について
(本件発明1)
本件発明1と、甲1発明とを対比する
・甲1発明の「ステータコア」は、電磁鋼板からなるコアシートを積層させたステータのコア(鉄心)であるから、本件発明1の「積層鉄心」に相当し、甲1発明の「複数積層」される「電磁鋼板からなるコアシート」は、本件発明1の「鋼板を用いた複数の鉄心材」に相当する。
・本件発明1の「ダボ」は、接合部を意味するものであり、甲1発明の「かしめ部」も接合部に他ならないので、甲1発明の「かしめ部」は、本件発明1の「ダボ」に相当する。
・甲1発明の「かしめ部」が凸形状の箇所を有することは自明であり、甲1発明の「カシメ部の箇所」を設ける態様は、本件発明1の「凸形状のダボを形成」する態様に相当する。
また、甲1発明の「第1のコアシートの間に、積層方向に形成された溝を有する第2のコアシートを、各コアシートの相互間をかしめ部の箇所においてかしめ固着して積層する」態様は、本件発明の「鉄心材同士の該ダボを嵌合させて一体化する」態様に相当する。
・甲1発明の「前記第1のコアシートと前記第2のコアシートの溝とによりステータコアの外周面に形成された凹部に前記接着剤を塗布する工程」、「積層された前記複数のコアシートの層間に前記接着剤を含浸させる工程」と、本件発明1の「前記鉄心材の積層方向の外周面から中心方向に接着剤を浸透させることにより、対向するダボ凸側側面とダボ凹側側面とを該接着剤で固着させるステップを含み、前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着され、前記ダボがVカシメである」態様とは、「鉄心材の積層方向の外周から接着剤を浸透させることにより、該接着剤で固着させるステップを含」む点において共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「鋼板を用いた複数の鉄心材のそれぞれに凸形状のダボを形成し、鉄心材同士の該ダボを嵌合させて一体化する積層鉄心の製造方法であって、
前記鉄心材同士のダボを嵌合させた後、前記鉄心材の積層方向の外周から接着剤を浸透させることにより、該接着剤で固着させるステップを含む積層鉄心の製造方法。」の点において一致し、
以下の点において相違する。
<相違点1>
凸形状のダボに関し、本件発明1は「Vカシメ」であるのに対し、甲1発明はそのような構成を有していない点。
<相違点2>
接着剤で固着させることに関し、本件発明1は「前記鉄心材の積層方向の外周面から中心方向に接着剤を浸透させることにより、対向するダボ凸側側面とダボ凹側側面とを該接着剤で固着させるステップを含み、前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着され」るのに対し、甲1発明は、コアシートの外周面に設けた凹部から接着剤を浸透するものであり、接着剤の浸透が外周における面から行われるものでも、浸透方向について外周面から中心方向である方向のみに特定されるものでもなく、また、かしめ部のいかなる部位が接着剤で固定されるのか特定するものでもない点。
本件発明1は、甲1発明にない、相違点1及び2に関する事項を有するものであり、それによって、「鉄心材Sを積層させた後に外周面Rに接着剤Aを塗布することにより、簡便に鉄心材S間の空隙に接着剤A(含浸剤)を浸透させることができる」(段落【0031】)等の顕著な効果を奏するものであり、相違点1、2に係る構成が、実質的に甲第1号証に記載されているに等しい事項であるということもできないから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるということはできない。
(イ)[理由2](特許法第29条第2項)について
(本件発明1)
本件発明1と、甲1発明とを対比すると、上記(ア)[理由1](特許法第29条第1項第3号)について(本件発明1)で検討した、一致点、相違点<相違点1>、<相違点2>を有する。
そこで、相違点1、2に係る本件発明1の構成が、当業者に容易想到であるか否かについて検討する。
例えば、甲第8号証には「電磁鋼板を打抜き、積層し、カシメで結束するに際し」、「カシメの形態として」、「先端がV字形のポンチを用いたVカシメ」(上記甲第8号証摘記事項ア.)を用いること、また、「分割鉄心を作るにあたり、乾燥するのみで絶縁接着できる溶液に浸漬させ、その後、乾燥させた。カシメでは、前記押し込み量を積層鉄心形状を維持できる板厚の1/4ほどの深さに留めたが、乾燥したのみで絶縁接着できる溶液により積層間が接着結束できるので、巻線工程で鉄心にかかる応力に十分耐えられるようになった」(上記甲第8号証摘記事項イ.)ことが記載され、甲第9号証には「積層鉄心の鉄心薄板形状の輪郭の外側方向に」、「括れ部を一箇所或いは複数箇所有するタブを任意の位置に一個或いは複数個形成し、該タブを一箇所或いは複数箇所のかしめ或いは溶接、或いはその両方により固着し、積層した」(上記甲第9号証摘記事項ア.)こと、「物理的に強固に固着する事が出来るものであれば、Vかしめ、・・・等、どの様な形態のかしめ、溶接でも可能である。」(上記甲第9号証摘記事項イ.)ことが記載されているように、電磁鋼板を積層し、カシメで結束するに際し、カシメの形態としてVカシメを用いることや、Vカシメによる結束に加え、接着できる溶液等、他の結束手段を同時に用いることは周知の技術であるといえるので、甲1発明の「かしめ部の箇所」について、単に周知のVカシメを用いる程度のことは、甲1発明において適宜採用可能な構成であるといえる。
しかし、本件発明1は、Vカシメを採用することで、カシメ部での隙間が大きくなり、接着剤がより浸透しやすくなる(平成29年11月16日提出の特許権者の意見書、2頁下から9~6行)という、Vカシメが有する特徴を、前記相違点2の「前記鉄心材の積層方向の外周面から中心方向に接着剤を浸透させることにより、対向するダボ凸側側面とダボ凹側側面とを該接着剤で固着させるステップを含み、前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着され」るという構成に組み合わせて用いることで、「鉄心材Sを積層させた後に外周面Rに接着剤Aを塗布することにより、簡便に鉄心材S間の空隙に接着剤A(含浸剤)を浸透させることができる」(段落【0031】)ことに加えて、「特に板厚が0.50mm以下の薄い鉄心材Sを使用して製造された積層鉄心では、ダボD位置での強度が低下するため剥離強度が低下するが、本実施の形態の積層鉄心の製造処理によれば、剥離強度を向上させることが可能である。」(段落【0032】)という顕著な効果を奏するものであり、本件発明1は、甲1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(本件発明2)
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の構成要素を付加したものに相当するから、本件発明1と同様、甲1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(本件発明3、甲第2号証の記載事項の適用について)
甲第2号証には、コアシート積層面に浸透させる接着剤の粘度に関する記載はあるものの、前記相違点1、2に関する事項は記載されていない。
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の構成要素を付加したものに相当するから、本件発明3は、甲1発明に甲第2号証の記載事項を適用したとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)[理由3](特許法第36条第6項第1号、第2号)について
(ウ-1)
本件特許発明1の「固着」は、「対向するダボ凸側側面とダボ凹側側面とを該接着剤で固着させ」るものであり、かつ、「前記鉄心材の積層方向の外周面から中心方向に接着剤を浸透させることにより」、「前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着され」るものであるから、その「固着」に関する構成は明確である。
(ウ-2)
発明の詳細な説明には、本件特許発明1の「接着剤で固着させる」ことに関し、以下の(a)~(c)の記載がある。
(a)「図2は、締結された鉄心材SのダボDの短辺方向の断面を示す模式図である。なお、以下では、図3に示すように、ダボDの周辺各部を、ダボ上面d1、ダボ下面d2、ダボ凸側側面d3、ダボ凹側側面d4、鉄心材上面c1、鉄心材下面c2と称する。図2に示すように、鉄心材S1および鉄心材S2のブロックと、鉄心材S3より下方のブロックとが剥離しようとする場合、鉄心材S2と鉄心材S3との間に図2に矢印で示す剥離力f1が働く。また、対向するダボ凸側側面d3とダボ凹側側面d4とが接着剤Aにより固着されることにより、ダボDの側面(ダボ凸側側面d3、ダボ凹側側面d4)に充填された接着剤Aに、図2に矢印で示す剪断力f2が働く。この場合には、ダボ凸側側面d3とダボ凹側側面d4とが固着されずに鉄心材S2と鉄心材S3とが剥離しようとする場合より、剥離強度が増すと考えられる。」(段落【0027】)
(b)「なお、ダボDの位置や接着剤Aの粘度を調整することにより、接着剤Aで固着するダボDの数を全ダボD数の30%以上とする。このように剥離強度が高くなったダボDの個数比率を30%以上とすることで、積層鉄心Cの剥離強度が向上する。」(段落【0028】)
(c)「剥離強度として、図5に矢印で示すように、積層鉄心Cを軸方向に平行に引っ張って、剥離が生じたときの力を測定した。また、鉄心材Sをはがして接着剤Aの浸透領域の幅(浸透距離)Xsの平均値と、この浸透領域内に形成されているダボDの個数の全ダボDに対する比率(個数比率)とを求めた。」(段落【0039】
そうすると、本件特許発明1の「固着」に関する「前記鉄心材同士のダボを嵌合させた後、前記鉄心材の積層方向の外周面から中心方向に接着剤を浸透させることにより、対向するダボ凸側側面とダボ凹側側面とを該接着剤で固着させるステップを含み、前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着され」る構成は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
本件特許発明1の「前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着され」について、その臨界的な異議が不明であるから、本件特許明細書に記載されておらず、特許法36条第6項第1号に違反しているとの申立理由について。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1の「前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着され」ることに関し、以下の記載がある。
(1)「ダボDの位置や接着剤Aの粘度を調整することにより、接着剤Aで固着するダボDの数を全ダボD数の30%以上とする。このように剥離強度が高くなったダボDの個数比率を30%以上とすることで、積層鉄心Cの剥離強度が向上する。」(段落【0028】)
(2)「本実施例では、表1に示す板厚(0.35mm,0.20mm)の電磁鋼板を鉄心材Sに用いて、図4に示す集中巻きブラシレスDCモータの固定鉄心(直径200mm、バックヨーク幅15mm)を製造し、剥離強度を測定した。その際、図4に長方形で示す位置にダボDを形成した。ダボDは短辺1mm、長辺3mm、ダボ高さは板厚の1.5倍のサイズのV字状とし、外周面Rに最も近いダボDの中心までの距離Xkを5~12mmの範囲で変化させた。次に、大気圧下で、粘度が異なる接着剤Aを外周面Rから塗布し、3時間放置して鉄心材S間に浸透させて鉄心材S同士を固着させた。剥離強度として、図5に矢印で示すように、積層鉄心Cを軸方向に平行に引っ張って、剥離が生じたときの力を測定した。また、鉄心材Sをはがして接着剤Aの浸透領域の幅(浸透距離)Xsの平均値と、この浸透領域内に形成されているダボDの個数の全ダボDに対する比率(個数比率)とを求めた。」(段落【0039】)
(3)【表1】には、「全ダボ個数に占める接着剤浸透領域内のダボ個数の比率(%)」として、「0」、「6」、「7」、「30」、「50」の数値が示されている。
そうすると、本件特許発明1の「前記鉄心材に形成される複数のダボのうちの30%以上が前記接着剤で固着され」ることについて、本件特許明細書に記載されていないとすることはできない。また、ダボの個数比率を30%以上とすることで、積層鉄心の剥離強度が向上するという臨界的な意義についても、本件特許明細書に記載されていないとすることはできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1-3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700718