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特許異議申立

2025-701097

原料排出制御装置及び原料装入装置

審判番号
2025-701097
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-561110
登録番号
7683730
請求日
2025年11月26日
審決日
2026年02月27日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】JFEスチール株式会社
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】川原 敬祐
  • 【権利者代理人】吉澤 雄郎
  • 【異議申立人】岩谷 幸祐
審判長/審判官
  • 審判長 井上 猛
  • 審判官 石川 雄太郎
  • 審判官 佐藤 陽一
分類
P1651.121-Y (C21B) / P1651.536-Y (C21B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7683730号発明「原料排出制御装置及び原料装入装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7683730号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7683730号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、2023年(令和 5年) 8月 7日(優先権主張 令和 4年 8月22日)を国際出願日とする出願(特願2023-561110号。以下「本願」という。)であって、令和 7年 5月19日にその特許権の設定登録がなされ、同年 5月27日にその特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和 7年11月26日に、請求項1~5(全請求項)に係る特許に対し、特許異議申立人である岩谷 幸祐(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1~5に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」といい、これらを総称して「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 「【請求項1】 原料ホッパから排出される原料の排出量を制御する原料排出制御装置であって、 前記原料ホッパに装入される前に前記原料の性状値を測定する原料性状測定装置と、 前記原料の性状値に基づいて前記原料の排出量を制御する制御装置と、 を備え、 前記原料の性状値は、少なくとも前記原料の粒径を含み、 前記原料性状測定装置は、少なくとも距離測定装置及び画像測定装置のいずれかを含む、原料排出制御装置。 【請求項2】 前記原料の性状値は、前記原料の形状、水分及び表面状態の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の原料排出制御装置。 【請求項3】 前記制御装置は、前記原料ホッパから排出される原料の排出量を制御可能な流量調整ゲートの開度を調整することによって前記原料の排出量を制御する、請求項1に記載の原料排出制御装置。 【請求項4】 前記制御装置は、前記原料の性状値の少なくとも1つの値から算出される値が予め設定された閾値を超えた場合に、前記原料の排出量を変更する、請求項1に記載の原料排出制御装置。 【請求項5】 請求項1から4のいずれか一項に記載の原料排出制御装置を用いて前記原料の排出量を制御し、高炉内に原料を装入する、原料装入装置。」 第3 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証、甲第2号証を提出し、以下の申立理由1~申立理由2-2により、本件特許の請求項1~5に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。 1 申立理由1(進歩性) 本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2-1(実施可能要件) 本件明細書には、原料性状測定装置における具体的な測定条件が示されていないが、本件発明の効果を評価するパラメータである決定係数R2が、測定条件により大きく影響するのは明らかであるから、具体的な測定条件が記載されていない本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~5について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 よって、本件発明1~5について、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由2-2(実施可能要件) 排出速度の差分値の推定値と排出速度の差分値の実績値との対比において、比較例の決定係数R2は0.57(図6A)であり、実施例の決定係数R2は0.64(図6B)である。一方、排出速度の推定値と排出速度の実績値との対比における実施例の決定係数R2は0.39~0.60(図4B~図4E)であり、これらは、排出速度の差分値の対比における比較例の決定係数R2である0.57を大きく下回る数値を含むものである。 ここで、本件明細書には、同一条件下であれば、決定係数R2の値が大きくなる方がより精度よく原料の排出速度等を推定できることが記載されているが、どのような条件下で決定係数R2を算出し、どのような数値範囲に決定係数R2を制御すれば、原料の排出速度等を精度よく推定できるかについて、本件明細書中に具体的な記載はない。 そうすると、当業者は、本件発明の効果を発揮できる操業条件を見つけるために、過度の試行錯誤を繰り返し行うことが必要である。 よって、本件発明1~5について、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 4 証拠方法 ・甲第1号証:特開平2-138407号公報 ・甲第2号証:伊藤友彦、外3名、“データサイエンスによる高炉操業ガイダンス技術 その2”、JFE技報、2022年2月、No.49、p.36~41 第4 当合議体における判断 以下に述べるように、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由1(進歩性)について (1)甲第1号証に記載された発明 ア 本願の優先日前に公知となった甲第1号証には、「ベルレス高炉における原料装入方法」(発明の名称)に関する記載があり、その請求項1には、「ベルレス高炉の炉頂部にホッパを上下2段に設置し、前記上下2段のホッパにそれぞれ設けた流量調節弁から順次排出される原料を分配シュートを介して高炉内に装入するに際し、予め原料の粒径毎に炉頂部の炉壁側温度と装入原料の鉱石・コークス層厚比との関係を求めておき、前記の関係を用いて目標とする炉壁側温度および鉱石・コークス層厚比とに基いて原料の粒径を決定する一方、予め上部ホッパの下端部に設けた上部流量調節弁の開度と当該上部流量調節弁から原料がほぼ30%排出されるときの原料の無次元平均粒径との関係に基いて前記決定した原料の粒径を満たす上部流量調節弁の開度を決定して上部ホッパから下部ホッパに原料を排出することを特徴とするベルレス高炉における原料装入方法。」の発明が記載されている。 イ また、上記アの記載によれば、甲第1号証には、ベルレス高炉に原料を装入する装置として、次の発明(以下「甲1発明」という。)も記載されていると認められる。 <甲1発明> ベルレス高炉の炉頂部にホッパを上下2段に設置し、前記上下2段のホッパにそれぞれ設けた流量調節弁から順次排出される原料を分配シュートを介して高炉内に装入するベルレス高炉における原料装入装置であって、予め原料の粒径毎に炉頂部の炉壁側温度と装入原料の鉱石・コークス層厚比との関係を求めておき、前記の関係を用いて目標とする炉壁側温度および鉱石・コークス層厚比とに基いて原料の粒径を決定する一方、予め上部ホッパの下端部に設けた上部流量調節弁の開度と当該上部流量調節弁から原料がほぼ30%排出されるときの原料の無次元平均粒径との関係に基いて前記決定した原料の粒径を満たす上部流量調節弁の開度を決定して上部ホッパから下部ホッパに原料を排出するベルレス高炉における原料装入装置。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明における、「上部ホッパ」及び「排出される原料」は、本件発明1における「原料ホッパ」及び「排出される原料」に相当する。 (イ)甲1発明の「原料装入装置」は、上下2段のホッパにそれぞれ設けた流量調節弁から順次排出される原料を分配シュートを介して高炉内に装入する装置であるが、上下2段のホッパから原料を排出する装置であるともいえる。 そうすると、甲1発明の「原料装入装置」と、本件発明1の「原料排出制御装置」とは、「原料排出装置」である限りにおいて共通する。 (ウ)以上から、本件発明1と甲1発明とは、「原料ホッパから原料を排出する原料排出装置。」である点で一致するとともに、以下の点で相違する。 <相違点1> 原料排出装置が、本件発明1では、「原料排出制御装置」であり、「原料ホッパから排出される原料の排出量を制御する」ものであるのに対し、甲1発明では、原料を排出する装置でもある「原料装入装置」であり、「上部流量調節弁の開度を決定して上部ホッパから下部ホッパに原料を排出する」ものであるが、排出の際に、「原料の排出量を制御する」ものであるのか否かが不明である点。 <相違点2> 本件発明1の「原料排出制御装置」は、「前記原料ホッパに装入される前に前記原料の性状値を測定する原料性状測定装置と、前記原料の性状値に基づいて前記原料の排出量を制御する制御装置と、を備え、前記原料の性状値は、少なくとも前記原料の粒径を含み、前記原料性状測定装置は、少なくとも距離測定装置及び画像測定装置のいずれかを含む」のに対し、甲1発明の「原料装入装置」は、原料が上部ホッパに装入される前に前記原料の性状値を測定する原料性状測定装置と、前記原料の性状値に基づいて前記原料の排出量を制御する制御装置を備えるのかが不明であり、そのため、前記原料の性状値が、少なくとも前記原料の粒径を含み、前記原料性状測定装置が、少なくとも距離測定装置及び画像測定装置のいずれかを含むのかが不明である点。 イ 判断 (ア)相違点1について a 相違点1が実質的な相違点であるかについて 甲1発明の「原料装入装置」において、上部ホッパから下部ホッパに排出される原料の量は、決定した上部流量調節弁の開度の大小に応じて増減するものと認められるから、上部流量調節弁の開度を決定する甲1発明の「原料装入装置」は、上部ホッパから下部ホッパに排出される原料の排出量を制御する装置であると認められる。 そうすると、甲1発明の「上部流量調節弁の開度を決定して上部ホッパから下部ホッパに原料を排出する」「原料装入装置」は、本件発明1の「原料ホッパから排出される原料の排出量を制御する原料排出制御装置」に相当する。 よって、相違点1は、実質的な相違点ではない。 (イ)相違点2について a 相違点2が実質的な相違点であるかについて 甲第1号証には、原料が上部ホッパに装入される前に前記原料の性状値を測定する原料性状測定装置と、前記原料の性状値に基づいて前記原料の排出量を制御する制御装置と、を備えることが記載されていないから、甲1発明の「原料装入装置」が、これらの装置を備えるかは不明である。また、技術常識を考慮しても、甲1発明の「原料装入装置」が、これらの装置を備えるかは不明である。 よって、相違点2は、実質的な相違点である。 b 相違点2の容易想到性について (a)甲1発明は、「予め原料の粒径毎に炉頂部の炉壁側温度と装入原料の鉱石・コークス層厚比との関係を求めておき、前記の関係を用いて目標とする炉壁側温度および鉱石・コークス層厚比とに基いて原料の粒径を決定する一方、予め上部ホッパの下端部に設けた上部流量調節弁の開度と当該上部流量調節弁から原料がほぼ30%排出されるときの原料の無次元平均粒径との関係に基いて前記決定した原料の粒径を満たす上部流量調節弁の開度を決定して上部ホッパから下部ホッパに原料を排出する」ものであるから、前もって、原料の粒径毎に炉頂部の炉壁側温度と装入原料の鉱石・コークス層厚比との関係を求める際に、原料の粒径が測定されるものと解されるが、実際に、高炉に原料を装入するに当たっては、原料が上部ホッパに装入される前に原料の粒径が測定されるわけではなく、目標とする炉壁側温度及び鉱石・コークス層厚比とに基いて、上部流量調節弁の開度が決定されるだけである。 そうすると、甲1発明の「原料装入装置」において、原料が上部ホッパに装入される前に原料の粒径を測定するために、原料が上部ホッパに装入される前に前記原料の性状値を測定する原料性状測定装置を備えることが動機付けられるとはいえず、また、前記原料の性状値に基づいて前記原料の排出量を制御する制御装置を備えることが動機付けられるともいえない。 また、このことは、甲第2号証の「2.高炉装入前コークス粒度分布計」の項目(第37~38ページ)に、高炉装入前のコークス粒度を測定するために、レーザー距離計とカメラを用いることが記載されていても変わるものではない。甲第2号証には、ベルレス高炉における原料装入装置に関し、原料が上部ホッパに装入される前に前記原料の性状値を測定しておき、前記原料の性状値に基づいて前記原料の排出量を制御することについては記載されていない。 (b)以上によれば、甲1発明において、相違点2に係る発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 c 申立人の主張について (a)申立人は特許異議申立書の第5ページ下から第4行~第7ページ下から第2行において、「一方で、甲1の3頁左上欄8-13行に「粒度そのものを独立して測定する手段は無く、操業結果としての炉内温度分布を固定ゾンデ5により測定して管理している。装入原料の炉壁部の粒径は鉱石水分、コークス水分により変化し、それを検出、制御できないための操業の外乱因子となっていた。」と記載されているように、甲1が出願された1988年当時、装入原料の粒径を検出、制御できる技術が確立されていなかった。このため、甲1の発明では炉壁側温度および鉱石・コークス層厚比から「原料の粒径」を決定するという課題解決手段が採用されている。」 「以上、甲2に記載の内容を整理すると、甲2には、コークスの粒径によって炉況が不安定になること、コークスの粒径は短い周期で変動すること、リアルタイムで粒度分布を監視するため、レーザー距離計とカメラを用いること、オペレータが参考にする主要プロセス変数に原料のチャージ数(原料の排出量)があることが示されている。 よって、甲2に記載された発明は、甲1と技術分野(高炉の操業制御)が関連しており、甲1と課題(コークスなどの原料の性状変動)および作用(原料の粒径に基づく高炉の操業制御)が共通している。また、前掲のように、甲1には、「粒度そのものを独立して測定する手段」があれば、それを利用することについての示唆がある。 以上により、本件特許発明1は、甲1および甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明である。」と主張する。 (b)しかしながら、申立人が指摘する、甲第1号証の第3ページ左上欄第6~13行の記載は、「一方、高炉12の半径方向の原料の粒度分布は層厚比Lo/Lcとともに炉内の通気抵抗を左右する因子であるが、粒度そのものを独立して測定する手段は無く、操業結果としての炉内温度分布を固定ゾンデ5により測定して管理している。」であり、この記載における「粒度」は、「高炉12の半径方向の原料の粒度(分布)」であると認められる。 ここで、甲第1号証には、高炉の半径方向の原料の粒度分布、特に、炉壁部近傍の原料の粒度分布について、「炉壁部近傍には下部ホッパ3から排出される原料の最初の30%が堆積しているが、原料の挙動を模型実験で測定したところこの部分の粒径が上部ホッパ2の流量調節弁により制御できることが明らかになった。」との記載はあるものの、当該記載をみても、高炉の半径方向の原料の粒度分布が、上部ホッパに装入される前に原料の粒径を測定することで制御できるのかは不明である。 そうすると、仮に「粒度そのものを独立して測定する手段」があったとしても、甲第1号証の高炉の半径方向の原料の粒度分布の制御に関する記載から、甲1発明の「原料装入装置」において、原料が上部ホッパに装入される前に前記原料の粒径を測定するために、原料性状測定装置を設けることが動機付けられるとはいえない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件特許の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~5についても同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)申立理由1(進歩性)のまとめ 以上のとおり、本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2-1(実施可能要件) (1)本件発明1~5について ア 本件明細書の段落【0027】~【0069】には、本件発明1~4の原料排出制御装置10についての記載がある。特に、段落【0028】~【0038】、【0063】~【0069】には、原料排出制御装置10が備える制御装置11についての記載があり、段落【0040】~【0062】には、原料排出制御装置10が備える原料性状測定装置12についての記載がある。また、段落【0019】~【0026】には、本件発明1~4の原料排出制御装置10を用いて前記原料の排出量を制御し、高炉内に原料を装入する、原料装入装置1についての記載がある。 イ ここで、原料排出制御装置10が備える制御装置11及び原料性状測定装置12はいずれも一般的に入手可能な製品を用いて構成することが可能であることが記載されており(段落【0030】、【0050】、【0054】)、上記アのとおり、本件明細書には、制御装置11及び原料性状測定装置12をどのように用いれば、高炉内に装入する原料の排出量を制御できるかも記載されているから、本件明細書には、本件発明1~5の原料排出制御装置を生産ないし使用することが記載されていると認められる。 ウ そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~5について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。 (2)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書の第9ページ下から第2行~第10ページ第10行において、本件明細書には、原料性状測定装置における具体的な測定条件が示されていないが、本件発明の効果を評価するパラメータである決定係数R2が、測定条件により大きく影響するのは明らかであるから、具体的な測定条件が記載されていない本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~5について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない旨を主張する。 イ しかしながら、申立人が提出した甲第2号証に記載されているとおり、原料性状測定装置(距離測定装置、画像測定装置)を用いて原料の性状を測定することは技術常識であるから、本件明細書に、原料性状測定装置における具体的な測定条件が示されていなくても、当業者であれば、原料性状測定装置を用いて原料の性状を測定することができ、本件発明1~5を実施することができると認められる。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (3)申立理由2-1(実施可能要件)のまとめ 以上のとおり、本願の発明の詳細な説明は、本件発明1~5について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 したがって、申立理由2-1(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由2-2(実施可能要件) (1)本件発明1~5について ア 上記2(1)で述べたとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~5について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。 (2)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書の第10ページ第11行~第11ページ第17行において、概略、以下のように主張する。 「排出速度の差分値の推定値と排出速度の差分値の実績値との対比において、比較例の決定係数R2は0.57(図6A)であり、実施例の決定係数R2は0.64(図6B)である。一方、排出速度の推定値と排出速度の実績値との対比における実施例の決定係数R2は0.39~0.60(図4B~図4E)であり、これらは、排出速度の差分値の対比における比較例の決定係数R2である0.57を大きく下回る数値を含むものである。 ここで、本件明細書には、同一条件下であれば、決定係数R2の値が大きくなる方がより精度よく原料の排出速度等を推定できることが記載されているが、どのような条件下で決定係数R2を算出し、どのような数値範囲に決定係数R2を制御すれば、原料の排出速度等を精度よく推定できるかについて、本件明細書中に具体的な記載はない。 そうすると、当業者は、本件発明の効果を発揮できる操業条件を見つけるために、過度の試行錯誤を繰り返し行うことが必要である。」 イ しかしながら、排出速度と排出速度の差分値とは異なる物理量であるから、排出速度の対比における実施例の決定係数R2が、排出速度の差分値の対比における比較例の決定係数R2を大きく下回る数値であったとしても、技術的に矛盾するものではない。また、そもそも、本件発明は、決定係数R2を制御して、操業条件を適正化する発明でもない。いずれにしろ、申立人の主張は、本件発明についての実施可能要件の判断を左右するものではない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (3)申立理由2-2(実施可能要件)のまとめ 以上のとおり、本願の発明の詳細な説明は、本件発明1~5について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 したがって、申立理由2-2(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701097

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