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特許異議申立

2017-700584

赤色発光窒化物系蛍光体

審判番号
2017-700584
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-523223外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年06月12日
審決日
2017年12月19日
公報発行日
2018年03月30日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.536-YAA(C09K) / P1652.537-YAA(C09K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6060259号発明「赤色発光窒化物系蛍光体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6060259号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6060259号の請求項1ないし5、7ないし22に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第6060259号の請求項1~22に係る特許についての出願は、平成28年12月16日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年6月12日(受理日)に特許異議申立人中水麻衣(以下、単に「異議申立人」ともいう。)より請求項1~5及び7~22に対して特許異議の申立てがされ、同年9月1日付けで取消理由が通知され、同年12月4日に意見書の提出及び訂正請求がされたものである。 なお、異議申立人は、意見書の提出を希望していない。 2.訂正の適否 (1)訂正の内容 本件訂正請求の趣旨は、特許第6060259号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める、というものであって、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を次の訂正事項1のとおりに訂正することを求めるというものである。 (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1に 「Caである、元素Mと、 Srである、元素M’と、 ケイ素と、 アルミニウムと、 窒素と、 Euである、元素REと、を含む、窒化物系組成物を有する赤色発光蛍光体であって、 前記赤色発光蛍光体が、その中に組み込まれたM及びAlを有するM’2Si5N8:REの一般結晶構造を有し、Mが、前記一般結晶構造中で実質的に格子間位置に位置し、Alが、前記一般結晶構造中でSiの一部と置き換わり、前記赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける変化が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される、赤色発光蛍光体。」とあるのを、 「Caである、原子価vを有する元素Mと、 Srである、元素M’と、 ケイ素と、 アルミニウムと、 窒素と、 Euである、元素REと、を含む、窒化物系組成物を有する赤色発光蛍光体であって、 前記赤色発光蛍光体が、その中に組み込まれたM及びAlを有するM’2Si5N8:REの一般結晶構造を有し、Mが、前記一般結晶構造中で実質的に格子間位置に、x/vの量で位置し、ここでxが、0.1≦x<0.4を満たし、Alが、前記一般結晶構造中でSiの一部xと置き換わり、前記赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける変化が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される、赤色発光蛍光体。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件について (訂正事項1) ア 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記訂正事項1は、【0024】の「赤色発光蛍光体は、化学式M(x/v)M’2Si5-xAlxN8:RE(式中、Mは原子価vを有する少なくとも1つの一価、二価、又は三価金属であり、M’はMg、Ca、Sr、Ba、及びZnのうちの少なくとも1つであり、REはEu、Ce、Tb、Pr、及びMnのうちの少なくとも1つである)によって表される窒化物系組成物を含むことができ、xが0.1≦x<0.4を満たし、前述の赤色発光蛍光体がM’2Si5N8:REの一般結晶構造を有し、Alが前述の一般結晶構造中でSiと置き換わり、Mが前述の一般結晶構造中に実質的に格子間位置に位置する。」という記載等に基き、請求項1に係る赤色発光蛍光体において、「Caである、元素M」について、その原子価vを規定し、同赤色発光蛍光体の一般結晶構造中で実質的に格子間位置に位置する元素Mの量について、0.1≦x<0.4を満たす、x/vの量で位置することを限定し、さらに、同一般結晶構造中の、AlのSiに一部置き換わる量をxと限定するものであり、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、請求項1を引用する請求項2~6も同様に訂正されるものであって、当該請求項2~6に係る訂正は、請求項1と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 一群の請求項について 訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものであるとともに、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われたものである。 ウ 独立特許要件について 上記アで述べたように、上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許異議の申立ての対象とされていない請求項6について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件について検討する。 (訂正後の請求項6についての独立特許要件の検討) 請求項6には、「前記赤色発光蛍光体がEu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.20Si4.80N8である、請求項1に記載の赤色発光蛍光体。」と記載され、請求項6は請求項1を引用しているところ、異議申立人は、訂正前の請求項1に係る発明(以下、項番号に対応して、「訂正前発明1」などという。)について特許異議の申立てをしているので、まず、訂正前発明1に対する特許異議の申立ての理由について検討することとする。 (訂正前発明1についての異議申立人の主張) 異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前発明1に対して、概ね、次の(ア)~(ウ)のように主張している。 (ア)明確性要件(特許法第36条第6項第2号)について 訂正前発明1は、「Caである、元素Mと、Srである、元素M’と、ケイ素と、アルミニウムと、窒素と、Euである、元素REと、を含む、窒化物系組成物を有する赤色発光蛍光体であって、前記赤色発光蛍光体が、その中に組み込まれたM及びAlを有するM’2Si5N8:REの一般結晶構造を有する」点を発明特定事項としている。 ここで、「M’2」の化学量の添字「2」に関して、本件発明の詳細な説明においては、その数字が小数点以下を含む範囲においていかなる範囲を取り得るかについて、何ら記載がない。 これに対し、訂正前発明1を引用する訂正前発明5は、「前記赤色発光蛍光体がCa0.1Sr2.0Al0.20Si4.80N8:Euである」点を発明特定事項とし、訂正前発明1を引用する訂正前発明6は、「赤色発光蛍光体がEu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.20Si4.80N8である」点を発明特定事項としている。 一方、訂正前発明1の課題は、「赤色及び他の色でもまた広い範囲にわたるピーク発光波長を有し、温度及び湿度安定性などの、蛍光体の向上した物理的特性を有する、安定化したケイ素窒化物系蛍光体、及び安定化したM2Si5N8系蛍光体」(【0009】)を提供することであるところ、そのような訂正前発明1の課題を解決する「M2Si5N8系蛍光体」であることが確認された蛍光体の具体例は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「試料2」すなわち、「式Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.2Si4.8N8」のもののみである(【0060】等参照)。 そうすると、Sr又はM’の化学量の添字の数字に関して、訂正前発明1では、「2」であり、訂正前発明1を引用する訂正前発明5では「2.0」であり、訂正前発明1を引用する訂正前発明6では、「1.95」であり、発明の詳細な説明の具体例では、「1.95」であるから、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、訂正前発明1における「M’2」の化学量の添字「2」についての小数点以下を含む範囲を合理的に理解できない。 したがって、訂正前発明1は、明確ではなく、訂正前の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、取り消されるべきものである。 (イ)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について 上記(ア)で述べたように、訂正前発明1の課題は、「赤色及び他の色でもまた広い範囲にわたるピーク発光波長を有し、温度及び湿度安定性などの、蛍光体の向上した物理的特性を有する、安定化したケイ素窒化物系蛍光体、及び安定化したM2Si5N8系蛍光体」(【0009】)を提供することであるところ、そのような本件特許発明の課題を解決する「M2Si5N8系蛍光体」であることが確認された蛍光体の具体例は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「試料2」すなわち、「式Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.2Si4.8N8」のもののみである。 これに対し、訂正前発明1は、赤色発光蛍光体におけるEuの比率、Caの比率、及びA1の比率を限定していない。 そして、蛍光体においては、構成元素及び賦活剤等の種類、及び添加量が一部異なるだけでも、作用、機能が大きく異なることは、当業者において出願時の技術常識である。 そうすると、訂正前発明1に含まれる赤色発光蛍光体の、全てが本件特許発明の課題を解決することができるとは認められず、出願時の技術常識に照らしても、訂正前発明1に係る発明の範囲まで、本件発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 したがって、訂正前の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、取り消されるべきものである。 (ウ)実施可能要件について 訂正前発明1は、「赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける変化が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される」点を発明特定事項としている。 一方、上記(ア)で述べたように、本件特許発明の課題は、「赤色及び他の色でもまた広い範囲にわたるピーク発光波長を有し、温度及び湿度安定性などの、蛍光体の向上した物理的特性を有する、安定化したケイ素窒化物系蛍光体、及び安定化したM2Si5N8系蛍光体」(【0009】)を提供することであるところ、そのような本件特許発明の課題を解決する「M2Si5N8系蛍光体」であることが確認された蛍光体の具体例は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「試料2」すなわち、「式Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.2Si4.8N8」のもののみである。 そして、上記(イ)で述べたように、蛍光体においては、構成元素及び賦活剤等の種類、及び添加量が一部異なるだけでも、作用、機能が大きく異なることは、当業者において出願時の技術常識である。 そうすると、「式Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.2Si4.8N8」以外の赤色発光蛍光体を含む訂正前発明1は、上記発明特定事項を満たすものであるかどうかは、明らかではない。 そして、そのような発明特定事項を満たす赤色発光蛍光体を得るための手段や指針が、当業者にとって自明なものであるともいえない。 したがって、上記発明特定事項を有する訂正前発明1を得るためには、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があるといえることから、訂正前発明1について、本件発明の詳細な説明に、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないことから、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、取り消されるべきものである。 (訂正前発明1についての異議申立て理由に対する当審の判断) (ア)明確性要件(特許法第36条第6項第2号)について 訂正後の請求項1に係る発明(以下、項番号に対応して、「訂正発明1」などという。)の一般結晶構造を示す「M’2Si5N8:RE」という表記において、「RE」は、【0012】に「REは蛍光体賦活体を表し」と記載されるように、蛍光体に微量に含まれる蛍光体賦活体を意味することは、当業者にとって明らかである。 そして、【0012】に「表記法『:RE』は一般的に置換的である希土類元素によるドーピングを表すが、粒界での、粒子表面上での、及び蛍光体材料の結晶構造中での格子間位置でのドーピングをもまた含み得る。」と記載されているように、訂正前発明1において、「RE」(蛍光体賦活体)は、「M’2Si5N8」の結晶構造の一部原子を置換する物質である場合と、結晶構造の一部原子を置換せずに、「M’2Si5N8」の結晶構造の格子間位置に入り込む物質である場合とがあることも、当業者にとって明らかである。 そうすると、訂正発明5の「Ca0.1Sr2.0Al0.20Si4.80N8:Eu」という記載は、訂正発明1の「Caである、原子価vを有する元素M」が、「前記一般結晶構造中で実質的に格子間位置に位置」し、「Alが、前記一般結晶構造中でSiの一部xと置き換わり」、「RE」(蛍光体賦活体)が「Eu」である「M’2Si5N8:RE」についての、一具体的例を示すものであるということができる。 また、訂正発明6の「Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.20Si4.80N8」という記載は、訂正発明1の「Caである、原子価vを有する元素M」が、「前記一般結晶構造中で実質的に格子間位置に位置」し、「Alが、前記一般結晶構造中でSiの一部xと置き換わり」、「RE」(蛍光体賦活体)が「Eu」であって、Srの一部がEuで置換された「M’2Si5N8:RE」についての一具体例を示すものであるということができる。 そうすると、訂正発明1と訂正発明1を引用する訂正発明5及び6とは矛盾するものではなく、訂正発明1における「M’2」の化学量の添字「2」についての小数点以下を含む範囲は合理的に理解できるものであって、訂正後の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 (イ)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について 訂正発明1は、赤色発光蛍光体におけるCaの比率及びA1の比率について、「Caである、原子価vを有する元素M」「が、前記一般結晶構造中で実質的に格子間位置に、x/vの量で位置し、ここでxが、0.1≦x<0.4を満たし、Alが、前記一般結晶構造中でSiの一部xと置き換わ」ることが規定されていることから、「Ca」の比率が「x/v」であること、及び、「Al」の比率が「x」であることが規定されているといえる。 また、訂正発明1において、「RE」(蛍光体賦活体)は、「Euである」ところ、訂正発明1のような赤色発光蛍光体において、「Eu」のような「RE」(蛍光体賦活体)の量は、そもそも微量であって、その量によって、該赤色発光蛍光体の「ピーク発光波長」、「温度及び湿度安定性などの、蛍光体の向上した物理的特性」が影響を受けるものではない。 そうすると、訂正発明1において、Euの比率が特定されなくても、訂正前発明1に含まれる赤色発光蛍光体に本件特許発明の課題を解決することができるものではないものが含まれるとはいえない。 以上のとおり、訂正発明1においては、Caの比率、及びA1の比率は特定されており、Euの比率が特定されなくても本件特許発明の課題を解決することができるものではないとはいえないのであるから、訂正発明1に係る発明の範囲まで、本件発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。 したがって、訂正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 (ウ)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について 本件明細書の発明の詳細な説明には、訂正発明1の赤色発光蛍光体に含まれる「試料2」、すなわち、「式Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.2Si4.8N8」が、本件発明の課題を解決することが確認されることが記載されている。 そして、上記(イ)で述べたように、訂正発明1においては、Caの比率、及びA1の比率は特定されており、Euの比率が特定されなくても本件発明の課題を解決することができるものではないとはいえないのであるから、上記「式Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.2Si4.8N8」以外の赤色発光蛍光体を含む訂正発明1は、「赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける変化が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される」という上記発明特定事項を満たすものである蓋然性が高い。 したがって、上記発明特定事項を有する訂正発明1を得るために、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があるとはいえないことから、訂正発明1について、本件発明の詳細な説明に、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、本件明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 (訂正発明6について) 上述したように、訂正前発明1についての異議申立て理由は、訂正発明1については、理由がない。 そして、訂正発明6は、訂正発明1を引用し、さらに限定するものであるから、訂正発明1と同様に、上記異議申立て理由は、理由がない。 また、訂正発明6について、他に訂正発明6が独立特許要件を満たさないとする理由を発見しない。 ウ 以上のことから、上記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 3.本件発明 上記2で述べたように、本件訂正は認められるから、本件の請求項1~22に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~22に記載された、次の事項によって特定されるとおりのものである(以下、項番号に対応して、「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」という。)。 「【請求項1】 Caである、原子価vを有する元素Mと、 Srである、元素M’と、 ケイ素と、 アルミニウムと、 窒素と、 Euである、元素REと、を含む、窒化物系組成物を有する赤色発光蛍光体であって、 前記赤色発光蛍光体が、その中に組み込まれたM及びAlを有するM’2Si5N8:REの一般結晶構造を有し、Mが、前記一般結晶構造中で実質的に格子間位置に、x/vの量で位置し、ここでxが、0.1≦x<0.4を満たし、Alが、前記一般結晶構造中でSiの一部xと置き換わり、前記赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける変化が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される、赤色発光蛍光体。 【請求項2】 前記赤色発光蛍光体が、Ca、Sr、Si、Al、N、及びEuからなる、請求項1に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項3】 前記赤色発光蛍光体が、青色LEDによる励起の下、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後のフォトルミネッセンス強度における減少が、30%以下であるように構成される、請求項1に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項4】 前記赤色発光蛍光体が、200nm~420nmの範囲の波長の放射光を吸収し、623nmを超えるフォトルミネッセンスのピーク発光波長を有する光を発光する、請求項1に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項5】 前記赤色発光蛍光体がCa0.1Sr2.0Al0.20Si4.80N8:Euである、請求項1に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項6】 前記赤色発光蛍光体がEu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.20Si4.80N8である、請求項1に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項7】 化学式M(x/v)M’2Si5-xAlxN8:RE(式中、 Mは、原子価vを有するCaであり、 M’は、Srであり、 REは、Euである)によって表される窒化物系組成物を含む赤色発光蛍光体であって、 xが、0.1≦x<0.4を満たし、前記赤色発光蛍光体が、M’2Si5N8:REの一般結晶構造を有し、Alが、前記一般結晶構造中でSiの一部と置き換わり、Mが、前記一般結晶構造中で実質的に格子間位置に位置する、赤色発光蛍光体。 【請求項8】 前記赤色発光蛍光体が、Ca、Sr、Si、Al、N、及びEuからなる、請求項7に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項9】 xが、0.10≦x<0.25を満たす、請求項7に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項10】 前記赤色発光蛍光体が、青色LEDによる励起の下、85℃及び85%の湿度での1000時間の時効処理後のフォトルミネッセンス強度における減少が、30%以下であるように構成される、請求項7に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項11】 前記赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける偏差が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される、請求項7に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項12】 前記赤色発光蛍光体が、200nm~420nmの範囲の波長の放射光を吸収し、623nmを超えるフォトルミネッセンスのピーク発光波長を有する光を発光する、請求項7に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項13】 前記赤色発光蛍光体が、 Eu0.05Ca0.075Sr1.95Al0.15Si4.85N8と、 Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.20Si4.80N8と、 Eu0.05Ca0.125Sr1.95Al0.25Si4.75N8と、 Eu0.05Ca0.15Sr1.95Al0.30Si4.70N8と、 Eu0.05Ca0.2Sr1.95Al0.40Si4.60N8と、からなる群から選択される、請求項7に記載の蛍光体。 【請求項14】 前記赤色発光蛍光体がCa0.1Sr2.0Al0.20Si4.80N8:Euである、請求項7に記載の赤色発光蛍光体。 【請求項15】 200nm~480nmの範囲内の発光波長を有する励起源と、 化学式M(x/v)M’2Si5-xAlxN8:RE(式中、 Mは、原子価vを有するCaであり、 M’は、Srであり、 REは、Euである)によって表される窒化物系組成物を含む赤色発光蛍光体であって、xが、0.1≦x<0.4を満たし、M’2Si5N8:REの一般結晶構造を有し、Alが、前記一般結晶構造中でSiの一部と置き換わり、Mが、前記一般結晶構造中で実質的に格子間位置に位置し、励起放射光を前記励起源から吸収し、620nm~650nmの範囲内のピーク発光波長を有する光を発光するように構成される、赤色発光蛍光体と、 黄色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体のうちの少なくとも1つと、を備える、白色光照明源。 【請求項16】 前記赤色発光蛍光体が、励起放射光を前記励起源から吸収し、628nm~634nmの範囲内のピーク発光波長を有する光を発光するように構成される、請求項15に記載の白色光照明源。 【請求項17】 前記赤色発光蛍光体が、式Eu:Ca0.1Sr2.0Al0.20Si4.80N8を有する、請求項15に記載の白色光照明源。 【請求項18】 前記黄色発光蛍光体及び前記緑色発光蛍光体のうちの少なくとも1つが、式Ce:Lu3Al5O12を有する、請求項15に記載の白色光照明源。 【請求項19】 前記励起源が、420nm~470nmの範囲内の発光波長を有する、請求項15に記載の白色光照明源。 【請求項20】 前記赤色発光蛍光体が、Ca、Sr、Si、Al、N、及びEuからなる、請求項15に記載の白色光照明源。 【請求項21】 xが、0.10≦x<0.25を満たす、請求項15に記載の白色光照明源。 【請求項22】 前記赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける変化が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される、請求項15に記載の白色光照明源。」 4.当審の判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について 取消理由通知に記載した、訂正前の特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載に対する取消理由の概要は、次のとおりである。 ア 訂正前発明1~4、7~12、15、16及び18~22についての明確性要件(特許法第36条第6項第2号) (ア)訂正前発明1における「M’2」の化学量の添字「2」についての小数点以下を含む範囲を合理的に理解できない。 したがって、訂正前発明1は明確ではなく、訂正前発明1を引用する訂正前発明2~4についても、同様な理由により、明確ではない。 (イ)訂正前発明7における「M’2」の化学量の添字「2」についての小数点以下を含む範囲を合理的に理解できない。 したがって、訂正前発明7は明確ではなく、訂正前発明7を引用する訂正前発明8~12についても、同様な理由により、明確ではない。 (ウ)訂正前発明15における「M’2」の化学量の添字「2」についての小数点以下を含む範囲を合理的に理解できない。 したがって、訂正前発明15は明確ではなく、訂正前発明15を引用する訂正前発明16、18~22についても、同様な理由により、明確ではない。 イ 訂正前発明1~5及び7~22についてのサポート要件(特許法第36条第6項第1号) 訂正前発明の課題は、「赤色及び他の色でもまた広い範囲にわたるピーク発光波長を有し、温度及び湿度安定性などの、蛍光体の向上した物理的特性を有する、安定化したケイ素窒化物系蛍光体、及び安定化したM2Si5N8系蛍光体」(【0009】)を提供することであるところ、そのような訂正前発明の課題を解決する「M2Si5N8系蛍光体」であることが確認された蛍光体の具体例は、本件明細書の発明の詳細な説明の「試料2」すなわち、「式Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.2Si4.8N8」のもののみであって、訂正前発明1~5及び7~22は、赤色発光蛍光体におけるEuの比率、Caの比率、及びA1の比率を限定していない。 そして、蛍光体においては、構成元素及び賦活剤等の種類、及び添加量が一部異なるだけでも、作用、機能が大きく異なることは、当業者において出願時の技術常識であるところ、訂正前発明1~5及び7~22に含まれる赤色発光蛍光体の、全てが本件発明の課題を解決することができるとは認められず、出願時の技術常識に照らしても、訂正前発明1~5及び7~22に係る発明の範囲まで、本件発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 ウ 訂正前発明1~5、10、11及び22についての実施可能要件(特許法第36条第4項第1号) 訂正前発明1及び訂正前発明1を引用する訂正前発明2~5、訂正前発明10、訂正前発明11及び訂正前発明22について、それぞれ、 (ア)訂正前発明1~5は、「赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける変化が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される」点を発明特定事項とし、 (イ)訂正前発明10は、「赤色発光蛍光体が、青色LEDによる励起の下、85℃及び85%の湿度での1000時間の時効処理後のフォトルミネッセンス強度における減少が、30%以下であるように構成される」点を発明特定事項とし、 (ウ)訂正前発明11は、「赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける偏差が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される」点を発明特定事項とし、 (エ)訂正前発明22は、「赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける変化が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される」点を発明特定事項としている。 これに対し、訂正前発明の課題は、「赤色及び他の色でもまた広い範囲にわたるピーク発光波長を有し、温度及び湿度安定性などの、蛍光体の向上した物理的特性を有する、安定化したケイ素窒化物系蛍光体、及び安定化したM2Si5N8系蛍光体」(【0009】)を提供することであるところ、そのような訂正前発明の課題を解決する「M2Si5N8系蛍光体」であることが確認された蛍光体の具体例は、本件明細書の発明の詳細な説明の「試料2」すなわち、「式Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.2Si4.8N8」のもののみであって、蛍光体においては、構成元素及び賦活剤等の種類、及び添加量が一部異なるだけでも、作用、機能が大きく異なることは、当業者において出願時の技術常識であるから、「式Eu0.05Ca0.1Sr1.95Al0.2Si4.8N8」以外の赤色発光蛍光体を含む訂正前発明1~5、訂正前発明10、訂正前発明11及び訂正前発明22が、それぞれ、上記(ア)~(エ)で述べた発明特定事項を満たすものであるかどうかは、明らかではなく、そのような発明特定事項を満たす赤色発光蛍光体を得るための手段や指針が、当業者にとって自明なものであるともいえない。 そうすると、訂正前発明1~5、訂正前発明10、訂正前発明11及び訂正前発明22を得るためには、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があるといえることから、訂正前発明1~5、訂正前発明10、訂正前発明11及び訂正前発明22について、本件発明の詳細な説明に、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 (2)判断 上記2(2)ウの「(訂正前発明1についての異議申立て理由に対する当審の判断)」で述べたように、本件発明1について、明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について、規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 そして、本件発明2~5は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、同様に、明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について、規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 次に、本件発明7について検討すると、本件発明7は、実質的に、本件発明1の「赤色発光蛍光体」に係る発明特定事項のうち、「赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける変化が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される」点を削除したものといえる。 そうすると、上記の削除された発明特定事項は、本件発明1における、「M’2」の化学量の添字「2」の解釈に関する明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、Caの比率、A1の比率、及び、Euの比率に関するサポート要件(特許法第36条第6項第1号)、並びに、実施可能要件について(特許法第36条第4項第1号)の判断を左右するものではないから、本件発明1と同様に、本件発明7に関し、明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について、規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 また、本件発明7を引用する本件発明8~12は、本件発明7をさらに限定するものであるから、本件発明7と同様に、明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について、規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 そして、本件発明15について検討すると、本件発明15は、実質的に、本件発明1に係る発明特定事項のうち、「赤色発光蛍光体が、85℃及び85%の相対湿度での1000時間の時効処理後の色度座標CIE Δx及びCIE Δyにおける変化が、各座標に対して0.03未満、又はそれと等しいように構成される」点を削除した「赤色発光蛍光体」を備え、さらに、「200nm~480nmの範囲内の発光波長を有する励起源」と「黄色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体のうちの少なくとも1つ」とを備えた「白色光照明源」であって、換言すれば、本件発明7と、「200nm~480nmの範囲内の発光波長を有する励起源」と、「黄色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体のうちの少なくとも1つ」とを備えた「白色光照明源」としたものといえる。 そうすると、本件発明7について、「200nm~480nmの範囲内の発光波長を有する励起源」と「黄色発光蛍光体及び緑色発光蛍光体のうちの少なくとも1つ」とを備えた「白色光照明源」とする点については、本件発明7における、「M’2」の化学量の添字「2」の解釈に関する明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、Caの比率、A1の比率、及び、Euの比率に関するサポート要件(特許法第36条第6項第1号)、並びに、実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)についての判断を左右するものではないから、本件発明7と同様に、本件発明15に関し、明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について、規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 また、本件発明15を引用する本件発明16~22は、本件発明15をさらに限定するものであるから、本件発明15と同様に、明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について、規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~5及び7~22に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件請求項1~5及び7~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700584

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