特許異議申立
2023-700815
液晶組成物及び液晶素子
- 審判番号
- 2023-700815
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-564049
- 登録番号
- 7220499
- 請求日
- 2023年08月08日
- 審決日
- 2024年05月28日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】九州ナノテック光学株式会社
- 【権利者代理人】有吉 修一朗
- 【権利者代理人】森田 靖之
- 【権利者代理人】筒井 宣圭
- 【権利者代理人】遠藤 聡子
- 【異議申立人】渡邉 一弘
- 【異議申立人】水野 英利
- 審判長/審判官
- 審判長 塩見 篤史
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(C09K) / P1651.121-YAA(C09K) / P1651.536-YAA(C09K) / P1651.537-YAA(C09K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7220499号発明「液晶組成物及び液晶素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7220499号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、5、6について訂正することを認める。
特許第7220499号の請求項4に係る特許を維持する。
特許第7220499号の請求項1-3、5、6についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和4年3月18日の出願であって、令和5年2月2日に特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月10日に特許掲載公報が発行され、その後、同年8月8日に渡邉一弘(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立てがされ、同年8月10日に水野英利(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年11月28日付けで取消理由を通知し、特許権者は、取消理由通知の指定期間内である同年1月29日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、特許権者は、同年2月2日に手続補正書を提出し、特許権者から訂正請求があったことを、同年同月22日付けで申立人A及び申立人Bに通知し、申立人Bは同年3月29日に意見書を提出し、申立人Aは何ら応答せず、特許権者は同年5月15日に上申書を提出したものである。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~6からなる。訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%である請求項1に記載の液晶組成物。」と記載されているのを、独立形式に改め、『重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む液晶組成物であって、前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり、かつ、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり、0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーである、液晶組成物。』との記載とする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1~3、5、6
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1を削除するというものであり、訂正事項2は、請求項2を削除するというものであり、訂正事項3は、請求項3を削除するというものであり、訂正事項5は、請求項5を削除するというものであり、訂正事項6は、請求項6を削除するというものであるから、当該訂正事項1~3、5、6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、請求項1を削除するというものであり、訂正事項2は、請求項2を削除するというものであり、訂正事項3は、請求項3を削除するというものであり、訂正事項5は、請求項5を削除するというものであり、訂正事項6は、請求項6を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項1は、請求項1を削除するというものであり、訂正事項2は、請求項2を削除するというものであり、訂正事項3は、請求項3を削除するというものであり、訂正事項5は、請求項5を削除するというものであり、訂正事項6は、請求項6を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項1~6について特許異議の申し立てがされているので、訂正前の請求項1~3、5、6に係る訂正事項1~3、5、6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとして、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正前の請求項4に係る特許発明は、具体的なガラス転移温度と当該ガラス転移温度を有する有機化合物を特定していなかったところ、訂正後の請求項4に係る特許発明は、これを特定する内容となった。
すなわち、訂正後の請求項4は「(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーである」との記載により、訂正後の請求項4に係る特許発明において、具体的なガラス転移温度と当該ガラス転移温度を有する有機化合物を特定し、さらに限定するものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、訂正前の請求項4に、「(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーである」という発明特定事項を追加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
前記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、訂正前の請求項4に、「(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーである」という発明特定事項を追加するものであり、この発明特定事項は、本件特許明細書の段落[0100]~[0105]、本件特許明細書の段落[0127]~[0132]、本件特許明細書の段落[0148]~[0153]、及び本件特許明細書の段落[0171]~[0175]に記載された事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~6について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項4に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)一群の請求項について
訂正前の請求項1~6のうち、請求項1、5及び6は独立請求項である。
そして、訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1により記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項ごと、及び、請求項ごとに請求されたものである。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~6に係る発明は、令和6年2月2日の手続補正書により補正された同年1月29日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」等、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む液晶組成物であって、
前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり、かつ、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、
(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、
(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、
(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーである、
液晶組成物。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
令和5年11月28日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由1~理由4である。
理由1(新規性)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2(進歩性)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
申立人Aの提示した甲号証を「甲A第1号証」又は「甲A1」などといい、申立人Bの提示した甲号証を「甲B第1号証」又は「甲B1」などという。
甲A第6号証:特開平6-208107号公報
甲A第7号証:特表平8-500681号公報
甲A第8号証:特表平6-504145号公報
甲A第9号証:Journal of Molecular Structure, 2019, Vol.1188, p.51-56
甲A第10号証:「紫外線硬化システム」、221~226頁及び252頁、加藤清視、総合技術センター、1989年2月28日刊行
甲A第11号証:国際公開第2015/151348号
甲A第12号証:特開2010-37411号公報
甲B第1号証:特開2021-66875号公報
甲B第4号証:製品カタログ「ウレタンアクリレート アートレジン(ART RESIN)」根上工業株式会社,<https://www.negamikogyo.co.jp/products/urethane-acrylate/>、令和5年7月12日(出力日)、根上工業株式会社
甲B第7号証:製品情報「ライトアクリレート」共栄社化学株式会社,[令和5年7月16日検索]インターネット
<http://www.kyoeisha.co.jp/product/kinou/lightacrylate.php>
甲B第8号証:製品情報「ビスコート#200,CTFA」大阪有機化学工業株式会社,[令和5年7月16日検索]インターネット
https://www.ooc.co.jp/products/chemical/monofunctional/CTFA
理由3(実施可能要件)本件特許の請求項1~6に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
1 申立人Aによる(2-3)について
(1)取消理由
本件特許発明における「液晶化合物」の語について、かかる語自体の意味は明確である。しかしながら、液晶としての性能を広範囲に亘る温度領域で発揮させ、広範囲でのネマチック領域を持たせる観点からは、単独の「液晶化合物」でこれらの性能を達成することは不可能であり、甲第4号証及び甲第5号証に示されるとおり、種々の液晶化合物を混合した「液晶混合物」として使用することが、液晶に係る当業者の技術常識である。
このような技術常識の下、本件特許明細書では、段落0097に「液晶化合物としてネマチック液晶化合物を使用した。使用されたネマチック液晶化合物の物性値を表1に示す。」と記されるのみであって、具体的な「液晶化合物」の化学式(組成式、構造式)の開示が一切なく、段落0098の表1にかかるネマチック液晶化合物のTniが121℃であり、Tcnが-50℃であり、Δεが10であり、Δnが0.24であることが示されるのみである。
このため、本件発明を実施しようとする当業者は、本件特許発明に具体的に使用できる「液晶化合物」の選定に過度の試行錯誤を強いられる。したがって、本件特許明細書の開示内容では、当業者は本件特許発明を実施できない。
2 申立人Bによる2~4官能チオールモノマー等について
(1)取消理由
発明の詳細な説明は、0℃以下のガラス転移温度を有したチオールモノマーも、0℃以下のガラス転移温度を有したチオールオリゴマーも、0℃以下のガラス転移温度を有したチオールポリマーも、いずれも記載していない。さらに、発明の詳細な説明は、リン酸アク(メタク)リレート化合物、およびポリエステルアクリレートについても、ガラス転移温度すら示していない。
そして、0℃以下のガラス転移温度を有したチオールモノマーも、0℃以下のガラス転移温度を有したチオールオリゴマーも、0℃以下のガラス転移温度を有したチオールポリマーも、さらには、リン酸アク(メタク)リレート化合物、およびポリエステルアクリレートも、周知のものであるとはいえない。
そうすると、発明の詳細な説明は、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物に、チオール化合物、リン酸アク(メタク)リレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いる場合、当業者が発明を実施できる程度に十分かつ明確に記載されていない。
したがって、本件特許発明は、発明の詳細な説明の記載が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号の要件を満たさない。
理由4(サポート要件)本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
1 本件特許発明の課題について
本件特許発明の課題は、本件特許明細書段落0009からみて、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができる液晶組成物、及び0℃以下においても駆動できる液晶素子を提供することにあると認める。
2 申立人Aによる(3-2)について
(1)取消理由
(3-2)本件特許発明5においては、「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10質量%以上であり」(以下、「要件M」という。)に関して、本件特許明細書の段落0062に「本発明の液晶組成物において、0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、必ずしも本発明の液晶組成物の全量基準で60質量%以下でなくともよい。しかし、このような構成であれば、液晶組成物の散乱性を維持し易いと共に電場応答性を阻害しないようにし易いので好ましい。」と記載されるに留まる。すなわち「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物」の含有量が、本件特許発明5の液晶組成物の全量基準で60質量%を超える場合についての言及は何らなされていない。さらに、本件特許明細書には、要件Mのうち「0℃以下のTgを有する前記有機化合物の含有量が、液晶組成物の全量基準で60質量%を超える」実施例の開示はなされていない。
そして、本件特許明細書の段落0040に「また、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量が60質量%以下であることによって、液晶組成物の散乱性を維持し易いと共に電場応答性を阻害しないようにし易い。」と記載されるように、「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物」の含有量が、本件特許発明5の液晶組成物の全量基準で60質量%を超える場合は、液晶組成物の散乱性を維持し易いと共に電場応答性を阻害しないようにし易いものとはならず、前記1の課題を解決できるとはいえない。
したがって、本件特許発明5のうち、少なくとも「0℃以下のTgを有する前記有機化合物の含有量が、液晶組成物の全量基準で60質量%を超える」部分については、本件特許明細書でサポートされていない。
第5 前記第4における理由1(進歩性)についての判断
1 甲号証について
甲A第6号証:特開平6-208107号公報
甲A第7号証:特表平8-500681号公報
甲A第8号証:特表平6-504145号公報
甲A第9号証:Journal of Molecular Structure, 2019, Vol.1188, p.51-56
甲A第10号証:「紫外線硬化システム」、221~226頁及び252頁、加藤清視、総合技術センター、1989年2月28日刊行
甲A第11号証:国際公開第2015/151348号
甲A第12号証:特開2010-37411号公報
甲A第13号証:特開2011-26526号公報
甲B第1号証:特開2021-66875号公報
甲B第2号証:再公表特許第2020/095511号
甲B第3号証:特開2021-88704号公報
甲B第4号証:製品カタログ「ウレタンアクリレート アートレジン(ART RESIN)」根上工業株式会社,
<https://www.negamikogyo.co.jp/products/urethane-acrylate/>、令和5年7月12日(出力日)、根上工業株式会社
甲B第5号証:製品カタログ「ウレタンアクリレート EBECRYL(エベクリル)、KRM」ダイセル オルネクス株式会社,[令和5年7月12日検索],インターネットhttp://www.daicel-allnex.com/products/product02.html
甲B第6号証:製品カタログ「ヒドロキシアルキル類 4-HBA」大阪有機化学工業株式会社,[令和5年7月12日検索],インターネット<https://www.ooc.co.jp/products/chemical/monofunctional/4-HBA>
甲B第7号証:製品情報「ライトアクリレート」共栄社化学株式会社,[令和5年7月16日検索]インターネット
<http://www.kyoeisha.co.jp/product/kinou/lightacrylate.php>
甲B第8号証:製品情報「ビスコート#200,CTFA」大阪有機化学工業株式会社,[令和5年7月16日検索]インターネット
https://www.ooc.co.jp/products/chemical/monofunctional/CTFA
甲B第9号証:製品概要「単官能アクリレート SR285」「単官能メタクリレート CD550」「単官能メタクリレート CD552」巴工業株式会社,[令和5年7月17日検索]インターネット
https://www.tomo-e.eo.jp/chemical/products/detai1.php?id=25QU044
甲B第10号証:製品概要「3官能アクリレート SR454」巴工業株式会社,[令和5年7月17日検索]インターネット
https://www.tomo-e.co.jp/chemical/products/detai1.php?id=25QU044
甲B第11号証:特開平7-5440号公報
甲B第12号証:再公表特許第2018/143017号
甲B第13号証:特開2020-16710号公報
甲B第14号証:日本学術振興会第142委員会編,液晶デバイスハンドブック,初版,日刊工業新聞社,1989年9月29日,p.167,174-175
2 甲号証の記載について
(1)甲A第6号証
A6a「【請求項1】 PDLCフィルムの前駆体が
a) 式Iの1種ないしそれ以上の化合物を含有する液晶混合物30-85重量%
【化1】
[図:0001414176000001.jpg]
ここでZ1およびZ2はおたがいに独立しており、単結合、-CH2CH2-,-COO-,-OCO-、あるいは-C≡C-であり、
【化2】
[図:0001414176000002.jpg]
【化3】
[図:0001414176000003.jpg]
これら両基はたがいに独立であり、トランス-1,4-シクロヘキシレン、1、4フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレンあるいは3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンおよびこれら両基のうちのいずれかはピリミジン-2,5-ジイル、ピリヂン-2,5-ジイル、トランス-1,3-ジオキサン-2,5-ジイルであり、X1及びX2はおたがいに独立であり、水素あるいは弗素であり、QはCF2OCF2、C2F4、OC2F4あるいは単結合であり、Yは水素、弗素、塩素あるいはCNであり、nは0、1、あるいは2であり、Rは13炭素原子までのアルキル基であり、そのなかでは1個または2個の隣り合ってないCH2グループが-O-および/または-CH=CH-で置換されており、
b) 少なくとも以下の4成分から成るポリマーマトリクスの前駆体15-68重量%、
・1種又はそれ以上の少なくとも二官能性のチオールモノマーおよび/またはオリゴマーの少なくとも5%を含有する成分A、
・1種又はそれ以上の少なくとも二官能性のエンタイプのモノマーおよび/またはオリゴマーの少なくとも10重量%を含有する成分B、
・1種又はそれ以上の250g/molより少ないモル分子量を有する単官能性のエンタイプのモノマーおよび/またはオリゴマーの少なくとも3重量%を含有する成分C、
・場合によってはエンタイプあるいはチオールタイプの化合物以外の重合可能な化合物を含有する成分D、
c)ラデイカル性の光開始剤0.1-5重量%、
PDLCフィルムの前駆体の量に関係してa),b),c)で示される量比で、しかもポリマーマトリクスの前駆体の量に関係する成分A,B,C量比で成ることを特徴とする
・光学的に等方性の、透明なポリマーマトリクッスの中で微小液滴を形成している液晶混合物から成るPDLCフィルムを2層の電極層の間に含有し、
・液晶混合物の屈折率の一がポリマーマトリックスの屈折率にマッチしていて、
・2種類のスイッチング状態の一の中では入射光の分極とは独立に他の状態と比較される少ない透過を有している電気光学システム。」
A6b「【0021】
【表1】
[図:0001414176000004.jpg]
表1には次の略号が使用されている。
LCI 液晶混合物I,その組成は以下の通り。
EHA エチルヘキシルアクリレート
E 270 エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー)
TMPTA 2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート
TMPTMP トリメチロールプロパン トリ(3-メルカプトプロピオネート)
D1173 ダロキュアー(Darocur)(登録商標)1173(E.Merckドイツを通じて入手)
Tmin ならびにTmax は最低ならびに最高の透過であり、Vsat はTmaxが観測される最低電圧に対応する飽和電圧である。実施例1-4の中で得られたPDLCフィルムはPDLCフィルムの前駆体を20μmのセルに充填し、3mW/cm2 を放出する低出力キセノンランプでその後に5分間照射することによって得られた。表1から明らかになることは最大透過はPDLCフィルムの前駆体の量に関して2%ならびにマトリックスの前駆体の量に関して5%のTMPTMP濃度では極めて貧弱であるということである。このことはマトリックスの屈折率およびLCIの常光線屈折率(n0 (LCI)=1.527)のミスマッチによっては説明できなく、その理由はマトリックスの量に関して5から10%にTMPTMP濃度を増大したときには、PDLCフィルムの屈折率は僅かに0.2%だけ変化し、実施例3の貧弱な透過値はSEMで確認したように悪い形態(スイスチーズでない)によるからである。PDLCフィルムの前駆体の量に関して4%ならびにマトリックスの前駆体の量に関して10%のTMPTMPの濃度では、硬化PDLCフィルムは良好な透過の値を示し、しかしながら50Vのかなり高い飽和電圧を示すが、TMPTMP濃度がマトリックスの前駆体の量に関して20%にまで増加したときには、この電圧を39Vにまで低下させることができる。 TMPTMP濃度が10%から20%に(マトリックスの前駆体の量に関して)変化したときには僅かに変更されるに過ぎない。広範囲な実験によって本発明者が見出したことはマトリックスの前駆体のチオール成分Aの百分率が好ましくはスイスチーズ形態および良好な電気光学特性を得るためにやや高くあるいは高く選択されているということである。特にチオール成分の百分率がマトリックスの前駆体の量に関して7.5%より少なくあってはならないこと、好ましくは10%より多いこと、特に少なくとも15%であるべきである。特に好ましいのは1種またはそれ以上のチオールの少なくとも20%からなるポリマーマトリックスの前駆体をもつPDLCフィルムが好ましい。しかしながらチオール成分の高い百分率はPDLCフィルムの前駆体の屈折率に比較的高いないしは高いと言う結果を生じ、このことは硬化中に一般的にはさらに増大する。寛容できない硬化フィルムにおいてはマトリックスの前駆体の技術に関しては、このことは通常屈折率のミスマッチを生ずる。他の点は通常のポリマーマトリックスのチオール-エンに基く前駆体はしばしば液体混合物の低い溶解度を示し、チオール成分中では液晶混合物の低いないしは極めて低い溶解度によることである。このことは低下したコントラスト(より低いoff状態不透明)および高いスイッチング電圧を生ずる。本発明者による広範囲な実験の結果見出されたことは、特に上記の欠点を示さないあるいは僅かにした示さない改良された特性を有する電気光学システムがポリマーマトリックスが少なくとも以下の成分から成り立っているならば得られるということである。
・1種又はそれ以上の少なくとも2官能性のチオールモノマーおよび/あるいはオリゴマーの少なくとも5%含有する成分A
・1種又はそれ以上のエンタイプの少なくとも2官能性のチオールモノマーおよび/あるいはオリゴマーの少なくとも10%含有する成分B
・1種又はそれ以上の250g/molより少ないモル分子量を有するエンタイプの少なくとも単官能性のモノマーおよび/あるいはオリゴマーの少なくとも3%重量含有する成分C
・場合によってはエンタイプあるいはチオールタイプの化合物以外の重合可能な化合物を含有する成分D、ただしポリマーマトリックスの前駆体の量に関係する百分率量があたえられること。
図1には電気光学特性線が60%のE7、40%のNOA65から成る通常のシステム(図1a)および60.0%のE7、32.0%のNOA65、7.8%のEHA、0.2%のDarocur1173を含有する本発明(図1b)によるシステムのために比較されている。NOA65は約40%のトリメチロールプロパントリスチオールを含有し、2官能性のエン成分としてトリメチロールジアリルエーテルから成っている。NOA65はさらに光開始剤としてベンゾフェノンを含有している。本発明によるシステムはNOA65に基いており、追加の低分子量エン成分として2-エチルヘキシル-アクリレート(EHA)(M=184g/mol)を含有している。先行技術のシステムの特性および本発明によるシステムは以下の表のなかで比較されている。
【0022】
【表2】
[図:0001414176000005.jpg]
両システムは2枚のITOコーテイングされたガラス製の基体の間にそれぞれの前駆体をキャピラリー充填し、その後に硬化して(中圧水銀ランプ、500mW/cm2のエネルギーを生ずる)得られた。セル厚さは20μmが選択された。透過率1.0はセルのない(すなわち空気について)装置と比較している。図1からは本発明によるシステムは明らかに通常のNOA65/E7システムより優れていることは明らかである。本発明のシステムはより低いoff状態透過を示しており、少なくとも100V以下の電圧についてはより高い透過を示し、明らかなより低い閾電圧およびより急激な電気光学特性線を示している。EHAの追加はPDLCフィルムの未硬化前駆体の屈折率の顕著な減少を結果として生じ、透過特性の劇的な改善として観察されうるはるかに優れた屈折率インデックスマッチングになる。図2は55%のE7および45%のLCIからなる通常のシステムについての電気光学特性線(図2a)および55.0%のLCI、36.0%のNOA65、8.8%のEHAおよび0.2%のDarocur1173から成る本発明によるシステムについての電気光学特性線(図2b)の比較を示している。これらのシステムに利用されている液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)は以下の成分から成っている、
6.75% 4-エチル-4’-シアノビフェニール
18.76% 4-ペントキシ-4’-シアノビフェニール
8.75% 4-ヘキソキシ-4’-シアノビフェニール
10.01% 4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)-4’-シアノビフェニール
4.97% 4-ペンチル-4’-シアノターフェニール
30.00% 4-ペンチル-4’-シアノビフェニール
18.76% 4-(4-プロピルフェニール)-3-フルオロ-4’-シアノビフェニール
および以下の特性を示す、
透明点 95℃
誘電異方性 17.0(1kHz,20℃)
複屈折 0.267(589nm,20℃)
常光線屈折率 n0=1.527
図2から読み取れることは高い常光線屈折率を有する液晶混合物が使用されたときには、本発明によるシステムは先行技術であるチオール-エンシステムシステムより優れていることであり、off状態透過、on状態透過および閾電圧に関して改良が認められている。本発明者たちはチオール-エンに基くシステムの透過特性は液晶混合物のみの組成を変更することによってある限定された、しかも不十分な度合いだけ改善できるということをまったく一般的に見出した。液晶混合物の常光線屈折率は制限された範囲内でのみ変更可能であり、しかも通常のチオール-エンに基くシステムの中での溶解度はその組成の変更には敏感ではない。本発明者たちはチオール-エンに基くシステムの光学特性の決定的改良がポリマーマトリックスの前駆体の組成を改善することによって得られることができることを発見した。特に明らかになったことは
・1種またはそれ以上の250g/molより少ないモル分子量を有するエンタイプの単官能性のモノマーおよび/あるいはオリゴマーの少なくとも3%重量含有するエン成分Cを
・1種またはそれ以上の少なくとも2官能性のチオールモノマーおよび/あるいはオリゴマーの少なくとも5%含有する成分A
・1種またはそれ以上のエンタイプの2官能性あるいは多官能性モノマーおよび/またはオリゴマーの少なくとも10%含有する成分B
・場合によってはエンタイプあるいはチオールタイプの化合物以外の重合可能な化合物を含有する成分D、
からなる多かれ少なかれ通常のチオール-エンシステムに添加することはマトリックスの前駆体の特性および電気光学システムの特性の顕著な改良になったことである。このことは特に前駆体がマトリックスの前駆体およびカーボニトリルに基く液晶混合物からなるようなPDLCシステムについて真実である。成分Cに適する低分子量化合物の例は塩化ビニル、ビニリデンクロライド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアマイド、メタクリルアマイド、メチルアクルレート、-メタクリレート、エチルアクリレート、-メタクリレート、n-あるいはターシャリ-ブチルアクリレートあるいは-メタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、あるいは-メタクリレート、2-エチルヘキシルアクイリレート、-メタクルレート、ベンジルアクリレートあるいは-メタクリレート、フェニールオキシエチルアクリレートあるいは-メタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートあるいは-メタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートあるいは-メタクリレート、低級のアルコキシエチルアクリレートあるいは-メタクリレート、テトラヒドロフリルアクリレートあるいはメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレートおよびスチレンである。オクタフルオロペンチルアクリレートのように部分的にあるいは全面的に弗素化したモノマーも好ましい。部分的にハロゲン化された、しかも特に弗素化された単官能性のエン-化合物および/または単官能性のエンオリゴマーは400g/molの高いモル分子量、特に350g/molまでのモル分子量を有することができる。
・・・
【0024】
【表3】
[図:0001414176000006.jpg]
表に記載したシステムは図1bのシステムと同じ方法で作製された。この特別なシステムには、PDLCフィルムの量に関するEHA(=成分C)の割合が少なくとも6%、特に7%が最適であることが見出された。成分Cの割合は好ましくはPDLCフィルムに関しては4.25-25%であり、特に6-20%である。成分Cの割合の最適範囲が各システムの特異な組成にある程度は依存するが、極めて一般的にはPDLCフィルムの量に関して成分Cの割合は好ましくは3.5-15%,特に4と15%の間、特異的に5.5と13の間、極めて特異的には6と10%の間にあることが見出された。本発明による硬化済みPDLCフィルムはスイスチーズ形態を示している。以上に記載した異なった成分の百分率の範囲を考慮して、専門家は何等の発明の努力無しに容易に各々の特異な場合についてマトリックスの前駆体の液晶混合物、チオール成分A、およびアクリル酸塩に基く成分BおよびC、さらには場合によっては追加成分Dの最適割合を決定できる。通常は幾つかの実験で異なった成分についての最適濃度範囲を評価するのに十分である。本発明による電気光学システムはその有利な特性によって特徴付けられている。その特徴とは低いoff状態および高いon状態透過にあり、このことは屈折率の改良されたマッチングおよびマトリックスの前駆体中の液晶混合物のかなり高い、ないしは高い溶解度によるのである。マトリックスの前駆体中の液晶混合物の容認できるないしは良好な溶解度はさらに良好なスイッチング電圧になって現われている。SFM-タイプの化合物に基く前駆体を有するシステムはさらに高い保持率、極めて低い保持率の温度依存性を示し、従ってアクチブマトリックスアドレッシングには適している。本発明は以下の実施例によってさらに説明される。全明細書を通じてパーセントは重量%であり、温度はセッシ温度である。
実施例5-10
この実施例では電気光学システムは表4に記載したそれぞれの成分をITOコーテイングしたガラス性の基体間に充填し、その後に硬化した(中圧水銀ランプ、500mW/cm2 のエネルギーを発生し、硬化時間は約5.5秒)ことによって得られた。電気光学システムの厚さは実施例5-9では20μm,実施例10では15μmである。システムはV10、V90、Vsat 、Tmin およびTmax によって特徴付けられている。閾電圧V10では、特異なデバイス用の最大透過の10%が観測され、従ってV90では最大透過の90%が観測される。透過の値は1.0にセットしているセルなし(すなわち空気中)で測定した透過を参考にしている。実施例5-10に記載された電気光学システムは良好な電気光学特性によって、特に高いコントラストおよび透過の良好な値によって特徴付けられている。
【0025】
【表4】
[図:0001414176000007.jpg]
* ; Ebecryl 1800 上記参照
** ; Ebecryl 210 同上
*** ; Ebecryl 270 同上
LCI ; 同上
NOA 65 ; 同上
BA ; ブチルアクリレート
HDDA ; ヘキサンジオールジアクリレート
D1173 ; Darocur 1173
OFPA ; オクタフルオロペンチルアクリレート
TMPTMP ; トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート)
I 651 ; イグラクーア(Igracur 登録商標)651 (=市販の光開始剤)
I 681 ; イグラクーア(Igracur 登録商標)681 (=市販の光開始剤)
その他
例えばVsat/Vは電圧で測定した飽和電圧の意味である。」
(2)甲A第7号証
A7a「【特許請求の範囲】
1 PDLCフィルムが以下の特性
[図:0001414176000008.jpg]
[図:0001414176000009.jpg]
れる液晶混合物の平均屈折率を意味する]
*平均の液滴直径≦2μm
*PDLCフィルムの厚さ 5μm≦d≦75μm
*背面散乱度≧20%
を示すことを特徴とする
- 2枚の電極層間に光学的に等方性の、透明なポリマーマトリックスの中でミ
クロ液滴を形成する液晶混合物から成るPDLCフィルムを含み、
- 液晶混合物の屈折率の一つがポリマーマトリックスの屈折率nMに合致し、
- その透過率を電圧を印加することによって変動させることができる
ペーパーホワイトPDLCシステム。」
A7b「実施例1
[図:0001414176000010.jpg]
からなるポリマーの前駆体および液晶混合物BLO13(メルク(Merck)社、プール(Poole)市、英国から入手)が1:3の量比の混合物を硬化することによってPDLCフィルムがえられる。
使用した略語は以下の意味を有する,
[図:0001414176000011.jpg]
ポリマーの前駆体とBL013の混合物をそれぞれ電極層を形成している2枚のガラス板の間に充填し、中圧キセノンランプ(ヘレウス(Heraeus)サンテスト(Suntest) 3mW/cm2)で20分間硬化する。スペーサーで規定されたフィルム厚さは50μmである。SEM検査の結果では大抵の液滴は直径0.4ないし0.7μmの間にあり、一部に
[図:0001414176000012.jpg]
-nM|は約0.1に達する。液晶混合物BLO13
[図:0001414176000013.jpg]
マー(液晶を含有していない)の屈折率はnp=1.486である。しかしながら、一部の液晶混合物がマトリックスに溶解するから、この値は約nM=1.52の値に増大する。
得られたPDLCシステム(背面を使用していない)を白色光源(ハロゲン電球、眼球保護フィルター付き)で露光する。その透過率を2゜の集光角度でフォトメーターを使用して測定する。図1から明らかなように、このPDLCシステムは約0.79の極めて低い透過率を示している。上記のように測定した背面散乱は30%であることが判明した。
その後に黒色の背面をクランプを使って後ろ側の基質にとりつける。そのギャップは約100μmである。得られた電気光学システムはoff状態では勝れた隠蔽能を示す。背面はそのシステムをスイッチオンするまで見ることは出来ないが、スイッチオンするとその背面は極めてはっきりとみえる。off状態ではフィルムは白色にみえる。
実施例2
BLO36(メルク社、プール市、英国から入手できる液晶混合物)と実施例1の中で記載したポリマーの前駆体の3:2の量比の混合物を使用して実施例1の方法を繰り返した。フィルムの厚さは50μmに達する。
PDLCシステム(背面を使用していない)は以下の特性を示す。
[図:0001414176000014.jpg]
その後に黒色の背面をクランプを使って後ろ側の基質にとりつける。そのギャップは約100μmである。
得られた電気光学システムはoff状態では勝れた隠蔽能を示す。背面はそのシステムをスイッチオンするまで見ることは出来ないが、スイッチオンするとその背面は極めてはきっりとみえる。off状態ではフィルムは白色にみえる。」(第28ページ第5行~第30ページ下から第2行)
(3)甲A第8号証
A8a「
[図:0001414176000015.jpg]
[図:0001414176000016.jpg]
[図:0001414176000017.jpg]
」
A8b「表1からは正しいスイスチーズ形態はオリゴマーおよびモノマ-の特異な濃度によって得られることを導くことが出来る。しかしながら、液晶混合物の特性を変化させる場合には、得られた形態の劇的な破壊がしばしば観測される。例えば式Iによるカーボニトリル化合物から成る液晶混合物
6.75%の4-エチル-4’-シアノビフェニール
18.76%の4-ペントキシ-4’-シアノビフェニール
8.75%の4-ヘキソキシ-4’-シアノビフェニール
10.01%の4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)-4’-シアノビフェニール
4.97%の4-ペンチル-4’-シアノタ-フェニール
18.76%の4-(4-プロピルフェニール)-2-フルオロ-4’-シアノビフェニール
30.00%の4-ペンチル-4’-シアノビフェニール
をブチルアクリレート24%およびエベクリル270を含有する混合物中で使用するならば、不合格形態を有するPDLCフィルムがダロクア1116の1%の添加および硬化の後に得られるが、一方ではE7を液晶混合物として含有する対応する前駆体は正しいスイスチーズ形態を示した。以下では、LCIIとして示すこの液晶混合物は以下の特性を示す。
透明点 95℃
誘電異方性 17.0(1kHz、20℃)
複屈折 0.267(589nm、20℃)
・・・
表3ではLCIは上記の液晶混合物である。TMPTMPはトリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート)を示し、BAはブチルアクリレート、HDDAはヘキサンジオールジアクリレート、D1173はダロクア1173およびE270はエベクリル270と脂肪族ウレタンジアクリレートである。
・・・
図4では電気光学特性ラインが本発明による電気工学システムについて示されており、本発明の前駆体は以下の組成を有している。
液晶混合物 60 %LCII
成分A 3.96%TMPTMP
成分B 18.0 %EHA
4.8 %HDDA
成分C 12.24%E270
光開始剤 1%D1173
PDLCフィルムの厚さは20μmであり、EHAは2-エチル-ヘキサノールアクリレートである。図4から硬化済みのフィルムはスイスチーズ形態、低いスイッチング電圧VIGおよびTONおよびTOFFについては良好な値を示している。」(第11ページ左下欄第4行~第16ページ右上欄第16行)
(4)甲A第9号証
なお、摘記事項の後ろに特許異議申立人による仮訳を掲載した。
A9a「
[図:0001414176000018.jpg]
[図:0001414176000019.jpg]
」(第52ページ左欄第16~21行)
市販のネマチック液晶混合物BL036(アルキルシアノビフェニル、E.Merck社製)をホスト液晶として使用した。BL036は、-20℃~95℃の温度範囲でネマチック相を示す。
(5)甲A第10号証
A10a「
[図:0001414176000020.jpg]
・・・
[図:0001414176000021.jpg]
・・・
[図:0001414176000022.jpg]
・・・」(第252ページ)
(6)甲A第11号証
A11a「[0340]
[ウレタン変性エポキシ-アミン付加物の製造]
次に、150mLのフラスコ(反応容器)に、上記で得られたエポキシ-アミン付加物50gとエタノール50gとを入れ、撹拌を行ってエポキシ-アミン付加物を溶解させることにより、エポキシ-アミン付加物の50%エタノール溶液を調製した。
その後、上記で得られたエタノール溶液に、室温下、ウレタンジアクリレート[ダイセル・オルネクス(株)製、商品名「EBECRYL270」、分子量1500、ガラス転移温度-27℃]21.2gを滴下し、4時間撹拌を行うことによって、ウレタン変性エポキシ-アミン付加物(エポキシ-アミン付加物とEBECRYL270の付加物)のエタノール溶液121.2gを得た。」
(7)甲A第12号証
A12a「【0069】
表1および表2中の略号は以下の通りである。また、以下の「Tg」の各値は、その単量体のホモポリマーのガラス転移温度を示す。
・「A1」:合成例1で得たウレタンアクリレート(重量平均分子量3,600)
・「A2」:合成例2で得たウレタンアクリレート(重量平均分子量4,500)
・「A3」:合成例3で得たウレタンアクリレート(重量平均分子量4,700)
・「A4」:ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール及び2-ヒドロキシエチルアクリレートの反応により得られたウレタンアクリレート(日本シイベルヘグナー(株)製、商品名アクチラン290)、重量平均分子量10,000)
・「X1」:合成例4で得たウレタンアクリレート(重量平均分子量540)
・「X2」:合成例5で得たウレタンアクリレート(重量平均分子量2,600)
・「ACMO」:アクリロイルモルフォリン((株)興人製、商品名ACMO、Tg145℃)
・「FA-513A」:ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成(株)製、商品名ファンクリルFA-513A、Tg120℃)
・「AdA」:アダマンチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名AdA、Tg153℃)
・「HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名HEA、Tg-15℃)
・「HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名4-HBA、Tg-80℃)
・「ECA」:エチルカルビトールアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名ビスコート#190、Tg-69℃)
・「THFA」:テトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名THFA、Tg60℃)
・「C6DA」:1,6-ヘキサンジオールアクリレート(第一工業製薬(株)製、商品名ニューフロンティアHDDA、Tg63℃)
・「Irg.184」:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガキュア184)」
(8)甲A第13号証
A13a「【請求項1】
第1成分として、一般式(I-1)
【化1】
[図:0001414176000023.jpg]
(式中、X1は水素原子、又はメチル基を表し、Z1は単結合、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基表すが、Z1中の一つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして、互いに独立して酸素原子、-COO-、-OCO-、-CO-で置換されていても良く、A1は一般式(I-2)~(I-5)
【化2】
[図:0001414176000024.jpg]
で表される置換基を表すが、一般式(I-2)~(I-5)中の1つ以上のメチレン基は、互いに独立して酸素原子、硫黄原子、-CO-で置換されていても良く、一つ以上の-CH2-CH2-結合は、-CH=CH-結合に置換されていても良い。)で表される化合物を少なくとも1種含有し、
第2成分として、一般式(II-1)、及び一般式(II-2)
【化3】
[図:0001414176000025.jpg]
(式中、X2は水素原子、又はメチル基を表し、Z2は単結合、炭素数1~24までのアルキレン基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されていても良く、
R1、及びR2は、水素原子、又は炭素原子数1~12までのアルキル基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されていても良く、
A2は環状基が1~3個の環式化合物基を表すが、Z2と直接結合する環状基の結合原子は窒素原子ではなく、
Z3は水素原子、又は炭素数1~24までのアルキル基を表すが、該アルキル基中の1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、-CO-、-COO-、-OCO-、又は一般式(II-3)
【化4】
[図:0001414176000026.jpg]
(R3は、水素原子、又は炭素原子数1~12までのアルキル基を表すが、該アルキレン基中1つ以上のメチレン基は互いに独立して酸素原子、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されていても良い。)
で置換されていても良く、且つ直鎖であっても分岐していても良く、
nは0又は1、mは0、1、2又は3を表すが、mが2又は3を表す場合に複数存在するZ3は同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる少なくと
も1種の重合性化合物を含有し
第3成分として、非重合性液晶化合物を少なくとも1種含有し、
第4成分として、光重合開始剤を少なくとも1種含有する高分子分散型液晶組成物。
【請求項2】
第5成分として、多官能のアクリレートモノマー化合物、又は多官能のアクリレートオリゴマー化合物を含有する請求項1記載の高分子分散型液晶組成物。
【請求項3】
第5成分である多官能のアクリレートモノマー化合物、又は多官能のアクリレートオリゴマー化合物が、ウレタン系、又はポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマーであることを特徴とする、請求項2記載の高分子分散型液晶組成物。
・・・
【請求項5】
第5成分であるウレタン系、又はポリエステル系アクリレートオリゴマーの分子量が5000~30000であることを特徴とする、請求項3又は4記載の高分子分散型液晶組成物。
・・・
【請求項8】
請求項1、及び2記載の高分子分散型液晶組成物に加えて、第6成分として一般式(VI-1)
【化8】
[図:0001414176000027.jpg]
で表される基を持つ、(メタ)アクリレート化合物を0.001~2質量%含有する、請求項1~7記載の高分子分散型液晶組成物。」
A13b「【0003】
この高分子分散型液晶素子には、いくつかの種類があり、例えば、NCAPと呼ばれるタイプ(特許文献1)、PDLCと呼ばれるタイプ(特許文献2、特許文献3)、PNLCと呼ばれるタイプ(特許文献4)等が提案されている。この高分子分散型液晶素子を調光ガラスのような大面積を必要とする用途に用いる場合は、一般的に初めからガラス基板で挟むのではなく、一旦プラスチックフィルム間に挟んだ調光フィルムを作製し、その調光フィルムを合わせガラスで挟む方法を用いる場合が多い。
・・・
【0032】
モノマー組成物として、一般式(I-1)の化合物に加えて、一般式(II-1)、及び一般式(II-2)で表される化合物群から少なくとも1種類以上を加えることで、より低電圧駆動が可能となる。
・・・
【0060】
更に、熱安定性、機械的強度等を増すために、第5成分として、多官能(メタ)アクリレートを添加し、ポリマーに架橋構造を導入することもできる。
【0061】
多官能(メタ)アクリレートの中でも、2官能アクリレートが好ましい。更に、基板との密着性を重視するには、ウレタン系、又はポリエステル系アクリレートオリゴマーであることが好ましく、ウレタンアクリレートオリゴマーであることが更により好ましい。ウレタンアクリレートオリゴマーにはポリエステル系、ポリエーテル系などがあるが、ポリエーテル系の方が好ましい。分子量としては下限値として2000が好ましく、5000がより好ましく、7000が更により好ましく、上限値として30000が好ましく、20000がより好ましく、15000が更により好ましい。これは、あまり分子量が小さいと硬化収縮のため密着性が悪化してしまう。逆にあまり分子量が大きいと架橋間距離が長くなるため、隙間が大きくなり、液晶化合物を取り込みやすくなる。すなわち高温下での環境に放置すると、ポリマーが液晶を吸収してしまい、特性が大きく変化してしまう。また、高分子分散型液晶組成物は、通常液晶化合物の組成物と非液晶化合物(又は組成物)の混合物になるが、非液晶化合物を液晶組成物中に添加することで、液晶組成物のネマチック-アイソトロピック転移点(Tni)が低下することになる。一般に高分子分散型液晶組成物はこのTni以上の均一状態の温度で取り扱いをするため、Tniは低い方が好ましく、Tniを15~20℃にすることが好ましい。この非液晶化合物を液晶中に添加するとこによるTniの低下度合いは、用いる非液晶化合物の分子量に大きく左右され、分子量が小さいほど低下度合いは大きくなる。そのため、分子量が小さい方がより高い液晶組成物を用いることができ、より高い動作温度域を有する高分子分散型液晶素子を得ることができる。この観点からも、分子量があまりに大きいと、作製された高分子分散型液晶素子の動作温度範囲が狭くなってしまい好ましくない。
・・・
【0063】
より密着性を重視した組成のためには、一般式(VI-1)
・・・
【0065】
で表される基を有する化合物を添加することが好ましい。具体的には下記の化合物を添加することが好ましい。」
(9)甲B第1号証
B1a「【請求項1】
第一成分として、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、および式(3)で表される化合物を含む液晶組成物、
第二成分として重合性化合物、および第三成分として光重合開始剤を含有する重合性組成物。
【化1】
[図:0001414176000028.jpg]
(式(1)において、R1は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり、L1およびL2は、その一方が水素であり、他方がフッ素である。)
【化2】
[図:0001414176000029.jpg]
(式(2)において、R2は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは独立して、1,4-シクロヘキシレン、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレンであり;aは1、2、または3である。)
【化3】
[図:0001414176000030.jpg]
(式(3)において、R3は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、R4は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、またはシアノであり;環Bは独立して、1,4-シクロヘキシレン、または1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレンであり;bは1、2、または3である。)
・・・
【請求項3】
第一成分として、式(2-1)で表される化合物および式(2-2)で表される化合物よりなる群から選択された少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載の重合性組成物。
【化4】
[図:0001414176000031.jpg]
(式(2-1)および(2-2)において、R2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。)
・・・
【請求項8】
第一成分として、式(3-1-1)で表される化合物、式(3-2-1)で表される化合物、式(3-3-1)で表される化合物、式(3-1-2)で表される化合物、式(3
-2-2)で表される化合物、および式(3-3-2)で表される化合物よりなる群から選択された少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載の重合性組成物。
【化6】
[図:0001414176000032.jpg]
(式(3-1-1)、(3-2-1)、(3-3-1)、式(3-1-2)、式(3-2-2)、および式(3-3-2)において、R3は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、R5は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルである。)
【請求項9】
第一成分として、式(3-2-3)で表される化合物、および式(3-3-3)で表される化合物よりなる群から選択された少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載の重合性組成物。
【化7】
[図:0001414176000033.jpg]
(式(3-2-3)、および(3-3-3)において、R3は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルである。)」
B1b「【0085】
化合物(1)において、L1およびL2は、その一方が水素であり、他方がフッ素である。好ましいL1およびL2の組み合わせは、下限温度を下げるためにはL1がフッ素およびL2が水素であり、かかる化合物は式(1-1)で表される。誘電率異方性を上げるためにはL1が水素およびL2がフッ素であり、かかる化合物は式(1-2)で表される。
【0086】
【化15】
[図:0001414176000034.jpg]
」
B1c「【0105】
化合物(1)、(2)、および(3)の組み合わせの好ましい例としては、以下の組み合わせが挙げられる。
化合物(1-1)と、化合物(2-1)および化合物(2-2)からなる群より選択された少なくとも1種の化合物と、化合物(3-1-1)および化合物(3-2-1)との組み合わせ。
化合物(1-1)と、化合物(2-1)および化合物(2-2)からなる群より選択され
た少なくとも1種の化合物と、化合物(3-1-1)、化合物(3-2-1)および化合物(3-2-2)との組み合わせ。
化合物(1-1)と、化合物(2-1)および化合物(2-2)からなる群より選択された少なくとも1種の化合物と、化合物(3-1-1)、化合物(3-2-1)および化合物(3-2-3)との組み合わせ。
これら組み合わせの液晶組成物を含む重合性組成物からは、耐光性に優れた液晶複合体が得られ、かかる液晶複合体からは、低温域(例えば-10から-30℃)でも駆動可能な液晶調光素子が作製できる。」
B1d「【0146】
【化21】
[図:0001414176000035.jpg]
【0147】
【化22】
[図:0001414176000036.jpg]
」
B1e「【0164】
好ましい非液晶性多官能モノマーの他の例は、2以上のアクリロイルオキシ(-OCO-CH=CH2)またはメタクリロイルオキシ(-OCO-(CH3)C=CH2)(メタクリロイルオキシ、アクリロイルオキシを総称して(メタ)アクリロイルオキシと称する。)を有するウレタンアクリレートオリゴマーまたはウレタンメタクリレートオリゴマー(アクリレート、メタクリレートを総称して(メタ)アクリレートと称する。)である。
ここでウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、ポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物を主骨格として有する化合物であり、その主骨格中にはイソシアネート結合(-OCO-NH-)が含まれている化合物である。
・・・
【0202】
重合性組成物に含まれる重合性化合物の全重量に基づいて、非液晶性多官能モノマーの好ましい割合は、塗工に必要な粘性の維持、密着性の維持、耐熱性の維持のため、約20重量%以上であり、密着性の維持、低駆動電圧、液晶組成物との溶解性を上げるため、約80重量%以下である。さらに好ましい割合は、約20重量%以上約75重量%以下の範囲である。特に好ましい割合は約25重量%以上約70重量%以下の範囲である。
・・・
【0206】
重合性組成物に含まれる第一成分および第二成分の全重量に基づいて、第二成分である重合性化合物の好ましい割合は、散乱特性の出現のため、約3重量%以上であり、液晶組成物との溶解性のため、約60重量%以下である。さらに好ましい割合は、約5重量%以上約60重量%以下の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%以上約55重量%以下の範囲である。」
B1f「【実施例】
【0230】
実施例によって本発明の具体例をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、実施例の重合性組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した重合性化合物は、NMR分析などによって同定した。重合性化合物、重合性組成物および液晶調光素子の特性は、下記の方法によって測定した。
・・・
【0244】
(実施例1)
<液晶組成物(1)の調製>
表3に記載の各化合物を表3の組成比となるように混合し、液晶性化合物のみからなる液晶組成物(1)を調製した。なお、液晶組成物(1)に含まれる各化合物は、国際公開89/12621号、特公昭63-007169号公報、特開昭58-121248号公報、特開昭56-68636号公報、特許2582031号公報、欧州特許0062470号明細書、Huadong Ligong Daxue Xuebao(1996) Pages217-220、欧州特許119756号明細書、特開昭54-016457号公報等に記載の方法を参考とすることで、合成できる。
【0245】
【表3】
[図:0001414176000037.jpg]
【0246】
液晶組成物(1)の物性を上記方法に従って測定した。測定結果を表4に記載した。
【0247】
【表4】
[図:0001414176000038.jpg]
【0248】
<組成物(1-1)の調製>
第一成分である液晶組成物(1)および第三成分であるイルガキュア(商標)651を、重量比100/1.0で混合して、組成物(1-1)を調製した。なおイルガキュア(商標)651は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンである。
【0249】
<重合性組成物>
組成物(1-1)、トリエチレングルコールジアクリレート、およびドデシルアクリレート(本願明細書記載の化合物(5-3))を、それぞれの重量比でw/w/w=60/35/5となるように混合し、重合性組成物MLC-1を調製した。
【0250】
<セルPDLC-1-1の作製>
セルPDLC-1-1は、以下の手順で作製した。
(1)配向処理を施していない2枚の透明導電膜(インジウムスズ酸化物(ITO)膜)の電極(大きさ:10mm×10mm)が形成されたガラス基板を、ガラス基板の間の距離が10μmであり、かつ、電極が内側になるように配置し、該ガラス基板間に重合性組成物MLC-1を挿入し、セルを作製した。
(2)該セルを液晶組成物(1)のNI点以上の温度である100℃のホットプレート上で2分間、加熱した。
(3)光源の光を、該ガラス基板に垂直になるように、かつ、該ガラス基板の表面は、ウシオ電機社製のUVD-S365で計測すると照度が15mW/cm2になるように設定した後、1分間照射し、セル内の重合性組成物MLC-1を重合させた。
(4)室温で放置した。
【0251】
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置を用いて、室温で観察したところ、得られたセルPDLC-1-1中のガラス基板の間に形成された液晶複合体は、室温で液晶相を維持していた。また、ガラス基板の電極間に電場を印加することで、ガラス基板間の液晶複合体に含まれる液晶組成物に電場をかけることができた。得られたセルPDLC-1-1について、上述した方法にしたがって、ヘイズおよび色差(室温、60V電場印加)を測定し、駆動の確認を行った。ヘイズおよび駆動の確認結果を表15に記載する。
【0252】
<セルPDLC-1-2の作製>(耐候性試験)
スガ試験機株式会社製のキセノンウエザーメーターSX75を用い、ブラックパネル温度63±2℃、槽内温度35℃、槽内相対湿度40%RHの条件で、セルPDLC-1-1を専用のサンプルホルダに設置し、照度180W/m2のUVAを300時間照射した。UVA照射により得られたセルPDLC-1-2とした。得られたセルPDLC-1-2について、上述した方法にしたがって、ヘイズおよび色差(室温、60V電場印加)を測定した。セルPDLC-1-1とセルPDLC-1-2での測定で得られた値から、上述した方法にしたがって、ヘイズ変化率(%)、色差変化率(%)を算出した。これらの値を表15に記載する。
・・・
【0346】
(実施例10)
<液晶組成物(10)の調製>
表28に記載の各化合物を表28の組成比となるように混合し、液晶性化合物のみからなる液晶組成物(10)を調製した。なお、液晶組成物(10)に含まれる各化合物は、国際公開89/12621号公報、特公昭63-7169号公報、特開昭58-121248号公報、特開昭54-16457号公報、特開昭56-68636号公報、特許2582031号公報、欧州特許62470号明細書、欧州特許119756号明細書、特許3203739号公報、CN102399117A等に記載の方法を参考とすることで、合成できる。
【0347】
【表28】
[図:0001414176000039.jpg]
【0348】
液晶組成物(10)の物性を上記方法に従って測定した。測定結果を表29に記載した。
【0349】
【表29】
[図:0001414176000040.jpg]
【0350】
<組成物(10-1)の調製>
第一成分である液晶組成物(10)および第三成分であるイルガキュア(商標)651を、重量比100/1.0で混合して、組成物(10-1)を調製した。
【0351】
<重合性組成物>
組成物(10-1)、N,N-ジエチルアクリルアミド、ウレタンアクリレートオリゴマーUN6202、本願明細書記載の化合物(5-8)およびM1が水素である化合物(5-16)を、それぞれの重量比でw/w/w/w/w=60/5/10/23/2となるように混合し、重合性組成物MLC-10を調製した。
【0352】
<セルPDLC-10-1の作製>
セルPDLC-10-1は、以下の手順で作製した。
(1)配向処理を施していない2枚の透明導電膜(インジウムスズ酸化物(ITO)膜)の電極(大きさ:10mm×10mm)が形成されたガラス基板を、ガラス基板の間の距離が15μmであり、かつ、電極が内側になるように配置し、該ガラス基板間に重合性組成物MLC-10を挿入し、セルを作製した。
(2)該セルを液晶組成物(1)の等方液体相への転移点以上の温度である30℃のホットプレート上で2分間、加熱した。
(3)光源の光を、該ガラス基板に垂直になるように、かつ、該ガラス基板の表面は、ウシオ電機社製のUVD-S365で計測すると照度が15mW/cm2になるように設定した後、30℃のホットプレート上で1分間照射し、セル内の重合性組成物MLC-10を重合させた。
(4)室温で放置した。
【0353】
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置を用いて、室温で観察したところ、得られたセルPDLC-10-1中のガラス基板の間に形成された液晶複合体は、室温で液晶相を維持していた。また、ガラス基板の電極間に電場を印加することで、ガラス基板間の液晶複合体に含まれる液晶組成物に電場をかけることができた。得られたセルPDLC-10-1について、上述した方法にしたがって、ヘイズおよび色差(室温、80V電場印加)を測定し、駆動の確認を行った。ヘイズおよび駆動の確認結果を表46に記載する。
【0354】
<セルPDLC-10-2の作製>(耐候性試験)
セルPDLC-1-1をセルPDLC-10-1に変えたこと以外はセルPDLC-1-2と同様な操作でセルPDLC-10-2を作製した。得られたセルPDLC-10-2について、上述した方法にしたがって、ヘイズおよび色差(室温、80V電場印加)を測定した。セルPDLC-10-1とセルPDLC-10-2での測定で得られた値から、上述した方法にしたがって、ヘイズ変化率(%)、色差変化率(%)を算出した。これらの値を表46に記載する。」
(10)甲B第2号証
B2a「【0010】
本発明の課題は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、正に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、光に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数のような特性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を含有し、調光に適した液晶複合体を提供することである。別の課題は、これらの特性の少なくとも2つのあいだで適切なバランスを有する液晶組成物を含有し、調光に適した液晶複合体を提供することである。別の課題は、このような液晶複合体を有する液晶調光素子を提供することである。別の課題は、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなヘイズ率、高い耐候性、長い寿命のような特性を有する液晶調光素子を提供することである。
・・・
【0199】
[組成物(M1)]
3-HB-C (1-1) 10%
3-HB(F)-C (1-1) 15%
3-HHB-F (1-9) 4%
2-HHB(F)-F (1-9) 11%
3-HHB(F)-F (1-9) 11%
5-HHB(F)-F (1-9) 10%
3-HHB(F)-C (1-9) 8%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-28) 1%
3-HB-O2 (2-2) 10%
3-HHB-1 (2-9) 8%
3-HHB-3 (2-9) 8%
3-HHB-O1 (2-9) 4%
NI=95.5℃;Tc<-20℃;η=22.3mPa・s;Δn=0.100;Δε=8.1;Vth=1.50V.
・・・
【0201】
[組成物(M3)]
5-BB-C (1-2) 20%
3-HHB(F)-C (1-9) 10%
2-HBB-F (1-16) 5%
3-HBB-F (1-16) 5%
5-HBB-F (1-16) 5%
2-HBB(F)-F (1-16) 6%
3-HBB(F)-F (1-16) 6%
5-HBB(F)-F (1-16) 13%
3-HBB(F,F)-F (1-16) 10%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-28) 1%
3-HB-O2 (2-2) 10%
2-BB(F)B-3 (2-12) 9%
NI=86.7℃;Tc<-20℃;η=31.6mPa・s;Δn=0.162;Δε=8.6;Vth=1.68V.
・・・
【0206】
[組成物(M8)]
5-BB-C (1-2) 20%
3-HHB(F)-C (1-9) 10%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-41) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-41) 6%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-41) 6%
3-HB-O2 (2-2) 12%
3-HHB-1 (2-9) 7%
3-HHB-O1 (2-9) 4%
2-BB(F)B-3 (2-12) 3%
2-BB(F)B-5 (2-12) 10%
3-BB(F)B-5 (2-12) 12%
3-BB(2F,5F)B-3 (2-13) 7%
NI=102.9℃;Tc<-20℃;η=75.6mPa・s;Δn=0.193;Δε=10.8;Vth=2.11V.
【0207】
[組成物(M9)]
5-BB-C (1-2) 20%
3-HHB(F)-C (1-9) 10%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-41) 6%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-41) 6%
3-HB-O2 (2-2) 12%
3-HHB-1 (2-9) 8%
3-HHB-O1 (2-9) 5%
2-BB(F)B-3 (2-12) 3%
2-BB(F)B-5 (2-12) 10%
3-BB(F)B-5 (2-12) 12%
3-BB(2F,5F)B-3 (2-13) 8%
NI=104.1℃;Tc<-20℃;η=64.6mPa・s;Δn=0.192;Δε=9.6;Vth=2.09V.
・・・
【0209】
[組成物(M11)]
5-BB-C (1-2) 20%
3-HHB(F)-C (1-9) 10%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-41) 6%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-41) 6%
3-HB-O2 (2-2) 14%
3-HHB-1 (2-9) 6%
3-HHB-O1 (2-9) 4%
2-BB(F)B-3 (2-12) 4%
2-BB(F)B-5 (2-12) 10%
3-BB(F)B-5 (2-12) 12%
3-BB(2F,5F)B-3 (2-13) 8%
NI=100.1℃;Tc<-20℃;η=60.0mPa・s;Δn=0.193;Δε=9.4;Vth=2.07V.」
(11)甲B第3号証
B3a「【0006】
そのほかに、電磁波信号の位相制御に使用される素子は、使用できる温度範囲が広いこと、素子の応答時間が短いことなどが求められ、液晶組成物の特性としては、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、熱に対する安定性、低い粘度なども求められる。
・・・
【0010】
本発明の目的は、周波数1GHz~10THzの電磁波信号の位相制御に使用される素子に使用される材料として、上記に示した要求特性が良好で、かつ特性バランスに優れた
液晶組成物を提供することである。
・・・
【0103】
[実施例2] 液晶組成物7
1-BB-3 (1-1) 9%
3-HB-O2 (-) 8%
1-BB(F)B-2V (1-4) 6%
2-BB(F)B-2V (1-4) 6%
3-BB(F)B-2V (1-4) 5%
2-BB(F)B-5 (1-4) 10%
3-BB(F)B-5 (1-4) 10%
3-BB(2F,5F)B-3 (1-5) 5%
5-HBB(F)B-2 (2-2) 6%
5-HBB(F)B-3 (2-2) 7%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-6) 1%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F (3-13) 17%
3-BB(F)B-C (3-33) 10%
NI=126.1℃;Tc<-20℃;Δn=0.240;Δε=8.1」
(12)甲B第4号証
B4a「
[図:0001414176000041.jpg]
」(第12ページ)
B4b「
[図:0001414176000042.jpg]
」(最終ページ)
(13)甲B第5号証
B5a「
[図:0001414176000043.jpg]
」(第5ページ)
(14)甲B第6号証
B6a「
[図:0001414176000044.jpg]
・・・
[図:0001414176000045.jpg]
」
(15)甲B第7号証
B7a「
[図:0001414176000046.jpg]
」(第5ページ)
(16)甲B第8号証
B8a「
[図:0001414176000047.jpg]
・・・
[図:0001414176000048.jpg]
」(第1~3ページ)
(17)甲B第9号証
B9a「
[図:0001414176000049.jpg]
」
(18)甲B第10号証
B10a「
[図:0001414176000050.jpg]
」
(19)甲B第11号証
B11a「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、重合性樹脂組成物、光重合開始剤または硬化剤、液晶および増粘材を含有することを特徴とする印刷可能な調光液晶素子用液晶樹脂配合物、ならびにこの配合物を使用する調光液晶素子の製造法およびこのような方法により製造されるべき調光液晶素子に関する。
・・・
【0014】この液晶樹脂配合物に配合されるべき重合性樹脂組成物としては、光重合性のものと熱重合性のものとを挙げることができるが、本発明の目的が達成される限りは特別の制限を受けない。
【0015】光重合性樹脂組成物としては、例えば、アクリロイル基をもつアクリレートオリゴマー(例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリカーボネートアクリレートなど)やアクリルモノマー(例えば、アルキル骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレートアルコキシアルキレングリコール骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、シクロヘキシル骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、テトラヒドロフルフリル骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、イソボルニル骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、ジシクロペンタニル骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、ジシクロペンテニル骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、シロキサン骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、エステル骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、トリメチロールプロパン骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、ペンタエリスリトール骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、イソシアネート骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、ビスフェノールA骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、ビスフェノールF骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、ビスフェノールS骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、フェノールノボラック骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールA骨格を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、アミノ基を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、リン酸基を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、フェニル基を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、ベンジル基を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、フェノキシ基を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、水酸基を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、カルボキシル基を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、グリシジル基を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、フッ素原子を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、塩素原子を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレート、臭素原子を有する単官能アクリレート及び多官能アクリレートなど)が挙げられる。また上記のアクリルオリゴマーやアクリルモノマーのアクリロイル基の内の少なくとも一つがメタクロイル基に変わったものも使用できる。また、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプトラクタム、モルホリンアクリレート、酢酸ビニル、ビニルアセテート、スチレンなどのビニル基を有するものやアリル基を有するものなどが使用できる。光重合性樹脂組成物は、これらの化合物の1種のみを用いることもできるし、複数種併用してもよい。
・・・
【0024】また、重合性樹脂組成物が光重合性のものであるか熱重合性によるものであるかにより、適宜、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系やヒンダードアミン系などの光安定剤、ホスファイト系やヒンダードフェノール系の抗酸化剤、熱重合禁止剤、チオール化合物、光鋭感剤、光増感剤、連鎖移動禁止剤、重合禁止剤、接着性付与剤、消泡剤、架橋剤、界面活性剤、熱効果性樹脂、熱効果性促進剤、熱可塑性樹脂、カチオン重合性樹脂、カチオン重合開始剤、アゾ系やアゾメチン系、アントラキノン系、キノフタロン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、ナフタルイミド系、オキサジン系、クマリン系、キノン系、メロシアニン系、フタロシアニン系、アントラピリドン系、キサンテン系及びアジン系の染料、顔料、フォトクロミック色素、エレクトロクロミック色素、蛍光色素、エレクトロルミネッセンス物質の粉体、非線形物質などを加えることができる。また、調光液晶素子のセルギャプを制御するためにシリカやガラス、プラスチック、セラミックなどの球状または円筒状のスペーサーを加えてもよい。この時のセルギャプは2から100μmの範囲で設定できる。また、溶媒も適宜使用することができる。」
(20)甲B第12号証
B12a「【0012】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<液晶素子>
本実施形態の液晶素子10は、図1に示すように、第1基材11及び第2基材12からなる一対の基材と、第1基材11と第2基材12との間に配置された液晶層13と、を備えている。液晶層13は、高分子マトリクスと液晶とを有する高分子/液晶複合材料層で
ある高分子分散型液晶層であり、本実施形態では、層中にポリマーネットワークが形成されたポリマー分散型液晶(PDLC)である。液晶素子10は、ポリマーネットワーク中に存在している液晶分子の配向を電界によって制御することにより、光を透過する透過状態と、光を散乱させる不透過状態とが切り替わる調光素子である。
・・・
【0018】
<液晶組成物>
次に、液晶層13の形成に用いる液晶組成物について説明する。液晶組成物は、液晶と重合性化合物とを含む。
【0019】
液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましい。また、これらの液晶にコレステリック液晶やカイラル剤、強誘電性液晶などを添加して使用してもよい。
【0020】
重合性化合物としては、ラジカル重合性を示す化合物であることが好ましく、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能チオール化合物、及びスチレン系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、「特定重合性化合物」ともいう。)を含むことがより好ましく、多官能(メタ)アクリレート化合物であることが特に好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを含むことを意味する。」
(21)甲B第13号証
B13a「【0011】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<液晶素子>
本実施形態の液晶素子10は、高分子分散型液晶素子であり、図1に示すように、第1基材11及び第2基材12からなる一対の基材と、第1基材11と第2基材12との間に配置された液晶層13と、を備えている。液晶素子10は、液晶層13に形成されたポリマーネットワーク13a中に存在している液晶分子13bの配向を電界によって制御することにより、光を透過する透過状態と、光を散乱させる不透過状態とが切り替わる調光素子である。
・・・
【0030】
(重合性化合物)
液晶組成物中に配合される重合性化合物としては、液晶に溶解可能であれば特に限定されないが、ラジカル重合性を示す化合物であることが好ましい。重合性化合物の具体例としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能チオール化合物、スチレン系化合物等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを含むことを意味する。」
(22)甲B第14号証
22a「
[図:0001414176000051.jpg]
・・・
[図:0001414176000052.jpg]
・・・
[図:0001414176000053.jpg]
」(第167、174,175ページ)
3 甲号証に記載された発明
(1)甲A6に記載された発明
ア 甲A6発明11
甲A6には実施例1のPDLC前駆体として「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)60%、TMPTMP(トリメチロールプロパン トリ(3-メルカプトプロピオネート))8%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)7.9%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))7.9%、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)15.8%及びD1173(ダロキュアー(Darocur)(登録商標)1173(E.Merckドイツを通じて入手))0.4%からなるPDLC前駆体。」の発明が記載されているといえる(摘記A6b参照)。
イ 甲A6発明12
甲A6には実施例2のPDLC前駆体として「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)60%、TMPTMP(トリメチロールプロパン トリ(3-メルカプトプロピオネート))4%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)8.9%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))8.9%、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)17.9%及びD1173(ダロキュアー(Darocur)(登録商標)1173(E.Merckドイツを通じて入手))0.4%からなるPDLC前駆体。」の発明が記載されているといえる(摘記A6b参照)。
ウ 甲A6発明13
甲A6には実施例3のPDLC前駆体として「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)60%、TMPTMP(トリメチロールプロパン トリ(3-メルカプトプロピオネート))2%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)9.4%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))9.4%、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)18.8%及びD1173(ダロキュアー(Darocur)(登録商標)1173(E.Merckドイツを通じて入手))0.4%からなるPDLC前駆体。」の発明が記載されているといえる(摘記A6b参照)。
エ 甲A6発明14
甲A6には実施例4のPDLC前駆体として「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)60%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)9.9%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))9.9%、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)19.8%及びD1173(ダロキュアー(Darocur)(登録商標)1173(E.Merckドイツを通じて入手))0.4%からなるPDLC前駆体。」の発明が記載されているといえる(摘記A6b参照)。
オ 甲A6発明15
甲A6には実施例10の成分として「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)50%、Ebecryl 270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))20%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)15%、TMPTMP(トリメチロールプロパン トリ(3-メルカプトプロピオネート))7%、HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)7.5%及びI 681(イグラクーア(Igracur 登録商標)681 (=市販の光開始剤))0.5%からなる組成物。」の発明が記載されているといえる(摘記A6b参照)。
カ 甲A6発明21
甲A6には実施例1のPDLC前駆体から得られたシステムとして「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)60%、TMPTMP(トリメチロールプロパン トリ(3-メルカプトプロピオネート))8%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)7.9%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))7.9%、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)15.8%及びD1173(ダロキュアー(Darocur)(登録商標)1173(E.Merckドイツを通じて入手))0.4%からなるPDLC前駆体を2枚のITOコーテイングされたガラス製の基体の間に充填して、硬化して得られたシステム。」の発明が記載されているといえる(摘記A6b参照)。
キ 甲A6発明22
甲A6には実施例2のPDLC前駆体から得られたシステムとして「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)60%、TMPTMP(トリメチロールプロパン トリ(3-メルカプトプロピオネート))4%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)8.9%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))8.9%、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)17.9%及びD1173(ダロキュアー(Darocur)(登録商標)1173(E.Merckドイツを通じて入手))0.4%からなるPDLC前駆体を2枚のITOコーテイングされたガラス製の基体の間に充填して、硬化して得られたシステム。」の発明が記載されているといえる(摘記A6b参照)。
ク 甲A6発明23
甲A6には実施例3のPDLC前駆体から得られたシステムとして「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)60%、TMPTMP(トリメチロールプロパン トリ(3-メルカプトプロピオネート))2%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)9.4%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))9.4%、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)18.8%及びD1173(ダロキュアー(Darocur)(登録商標)1173(E.Merckドイツを通じて入手))0.4%からなるPDLC前駆体を2枚のITOコーテイングされたガラス製の基体の間に充填して、硬化して得られたシステム。」の発明が記載されているといえる(摘記A6b参照)。
ケ 甲A6発明24
甲A6には実施例4のPDLC前駆体から得られたシステムとして「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)60%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)9.9%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))9.9%、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)19.8%及びD1173(ダロキュアー(Darocur)(登録商標)1173(E.Merckドイツを通じて入手))0.4%からなるPDLC前駆体を2枚のITOコーテイングされたガラス製の基体の間に充填して、硬化して得られたシステム。」の発明が記載されているといえる(摘記A6b参照)。
コ 甲A6発明25
甲A6には実施例10の成分から得られた電気工学システムとして「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)50%、Ebecryl 270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))20%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)15%、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)7%、HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)7.5%及びI 681(イグラクーア(Igracur 登録商標)681(=市販の光開始剤))0.5%からなる組成物を2枚のITOコーテイングされたガラス製の基体の間に充填して、硬化して得られたシステム。」の発明が記載されているといえる(摘記A6b参照)。
(2)甲A7に記載された発明
ア 甲A7発明1
甲A7には実施例2の混合物として「BLO36(メルク社、プール市、英国から入手できる液晶混合物)と、TMPTMP(トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート))9.9%、EHA(2-エチルヘキサノールアクリレート)45.0%、HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)12.0%、E270(市販のオリゴマー エベクリル270(Ebecryl)(脂肪族ウレタンジアクリレート、分子量約1200/モル)30.6%及びD1173(光開始剤)(ダロキュア(Darocur)(登録商標)1173(E.Merck社、ダルムシュタット(Darmstadt)市 ドイツから入手)2.5%からなるポリマー前駆体の3:2の量比の混合物。」の発明が記載されているといえる(摘記A7b参照)。
イ 甲A7発明2
甲A7には実施例2の混合物から得られたPDLCシステムとして「BLO36(メルク社、プール市、英国から入手できる液晶混合物)と、TMPTMP(トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート))9.9%、EHA(2-エチルヘキサノールアクリレート)45.0%、E270(市販のオリゴマー エベクリル270(Ebecryl)(脂肪族ウレタンジアクリレート、分子量約1200/モル)30.6%及びD1173(光開始剤)(ダロキュア(Darocur)(登録商標)1173(E.Merck社、ダルムシュタット(Darmstadt)市 ドイツから入手)2.5%からなるポリマー前駆体の3:2の量比の混合物それぞれ電極層を形成している2枚のガラス板の間に充填し、得られたPDCLシステム。」の発明が記載されているといえる(摘記A7b参照)。
(3)甲A8に記載された発明
甲A8にはPDLCシステム前駆体として
「液晶混合物 60 %LCII
( 6.75%の4-エチル-4’-シアノビフェニール
18.76%の4-ペントキシ-4’-シアノビフェニール
8.75%の4-ヘキソキシ-4’-シアノビフェニール
10.01%の4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)-4’-シアノビフェニール
4.97%の4-ペンチル-4’-シアノタ-フェニール
18.76%の4-(4-プロピルフェニール)-2-フルオロ-4’-シアノビフェニール
30.00%の4-ペンチル-4’-シアノビフェニール)
成分A 3.96%TMPTMP(トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート))
成分B 18.0 %EHA(2-エチル-ヘキサノールアクリレート)
4.8 %HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)
成分C 12.24%E270(エベクリル270と脂肪族ウレタンジアクリレート)
光開始剤 1%D1173(ダロクア1173)
からなるPDLCシステム前駆体。」の発明(以下、「甲A8発明」という。)が記載されているといえる(摘記A8a、A8b参照)。
(4)甲B1に記載された発明
ア 甲B1発明1
甲B1には実施例10の重合性組成物として「以下の組成からなる液晶組成物(10)および第三成分であるイルガキュア(商標)651を、重量比100/1.0で混合して、調製した組成物(10-1)、N,N-ジエチルアクリルアミドと、ウレタンアクリレートオリゴマーUN6202、および本願明細書記載の化合物(5-8)およびM1が水素である化合物(5-16)を、それぞれの重量比でw/w/w/w/w=60/5/10/23/2となるように混合し、調製した重合性組成物MLC-10。
[図:0001414176000054.jpg]
[図:0001414176000055.jpg]
[図:0001414176000056.jpg]
」の発明が記載されているといえる(摘記B1d、B1f参照)。
イ 甲B1発明2
甲B1にはセルPDLC-10-1として「配向処理を施していない2枚の透明導電膜(インジウムスズ酸化物(ITO)膜)の電極(大きさ:10mm×10mm)が形成されたガラス基板を、電極が内側になるように配置し、該ガラス基板間に以下の組成からなる液晶組成物(10)および第三成分であるイルガキュア(商標)651を、重量比100/1.0で混合して、調製した組成物(10-1)、N,N-ジエチルアクリルアミドと、ウレタンアクリレートオリゴマーUN6202、および本願明細書記載の化合物(5-8)およびM1が水素である化合物(5-16)を、それぞれの重量比でw/w/w/w/w=60/5/10/23/2となるように混合し、調製した重合性組成物MLC-10を挿入し、作製したセルPDLC-10-1。
[図:0001414176000057.jpg]
[図:0001414176000058.jpg]
[図:0001414176000059.jpg]
」の発明が記載されているといえる(摘記B1d、B1f参照)。
なお、甲B1発明1において、例えば、液晶組成物(10)の化合物を上から順に「組成物(10)第1化合物」などという。
4 対比・判断
(1)甲A6発明11~甲A6発明25を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明4
(ア)甲A6発明11~15との対比
本件特許発明4と甲A6発明11~15を対比する。
甲A6発明11~15の「液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)」は、BL036は-20℃~95℃の温度範囲でネマチック相を示すから(摘記9a参照)、本件特許発明4の「液晶化合物」及び「前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり」に相当する。
甲A6発明11~15の「PDLC前駆体」又は「組成物」は、液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)を含むから、本件特許発明4の「液晶組成物」に相当する。
甲A6発明11~15の「EHA(エチルヘキシルアクリレート)」及び「E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))」は、それぞれ、1官能アクリレートエステルモノマー及び2官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー又はポリマー及びであり、いずれも、本件特許発明4の「重合可能な有機化合物」に相当し、EHA(エチルヘキシルアクリレート)のホモポリマー、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))のガラス転移温度は、それぞれ、-85℃又は-55℃、及び、-27℃であるから(摘記10a、11a参照)、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである」に相当する。
甲A6発明11~15の「EHA(エチルヘキシルアクリレート)7.9%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))7.9%」、「EHA(エチルヘキシルアクリレート)8.9%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))8.9%」、「EHA(エチルヘキシルアクリレート)9.4%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))9.4%」、「EHA(エチルヘキシルアクリレート)9.9%、E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))9.9%」及び「Ebecryl 270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))20%、EHA(エチルヘキシルアクリレート)15%」は、「EHA(エチルヘキシルアクリレート)」及び「E 270(エベクリル(Ebecryl)270(市販のポリウレタンジアクリレート オリゴマー))」の含有量の合計が、それぞれ、15.8%、17.8%、18.8%、19.8%及び35%であるから、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり」を充足する。
また、甲A6発明11~14のPDLC前駆体において、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)のホモポリマーのガラス転移温度は250℃より大きいから(摘記10a参照)、TMPTA(2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール トリアクリレート)は0℃を超えるガラス転移温度を有するものであり、その含有量は、それぞれ、15.8%、17.9%、18.8%、19.8%であり、甲A6発明15の組成物においてHDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)のホモポリマーのガラス転移温度は63℃であるから(摘記12a参照)、HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)のガラス転移温度は63℃であり、その含有量は7.5%であるから、本件特許発明4の「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり」を充足する。
ここで、甲A6発明11~13、15の組成物において、TMPTMP(トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート))のガラス転移温度が0℃以下である、あるいは、0℃を超える、のいずれか不明であるが、TMPTMP(トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート))の含有量がそれぞれ、8%、4%、2%、7%であることから、ガラス転移温度が0℃以下である、あるいは、0℃を超える、のいずれの場合であっても、上記で検討した甲A6発明11~13、15の混合物の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物」及び「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物」に相当する化合物の含有量にTMPTMPの含有量を加えた場合の合計がそれぞれ、「23.8%」及び「23.8%」(甲A6発明11)、「21.8%」及び「21.9%」(甲A6発明12)、「20.8%」及び「20.8%」(甲A6発明13)、「42%」及び「14.5%」(甲A6発明15)、となるから、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり」及び「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり」を充足する。
そうすると、本件特許発明4と甲A6発明11~15は、「重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む液晶組成物であって、
前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである
液晶組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A6-1>
液晶組成物が、本件特許発明4では、(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、
(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、
(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、
(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであるのに対し、甲A6発明11~15ではそのような特定がない点。
(イ)相違点についての検討
相違点A6-1は、実質的な相違点である。
そして、甲A6には本件特許発明4の前記(1)~(4)の化合物について記載も示唆もないから、甲A6発明11~15のPDLC前駆体において前記(1)~(4)の化合物を採用する動機付けがあるとはいえない。
また、甲A7~甲A13にも本件特許発明4の前記(1)~(4)の化合物について記載も示唆もないから、甲A6発明11~15のPDLC前駆体において前記(1)~(4)の化合物を採用する動機付けがあるとはいえない。
(ウ)本件特許発明4の効果について
本件特許発明4の液晶組成物は、前記(イ)の相違点に基づいて、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができるという優れた効果を奏するものであるといえる。
(エ)小括
したがって、本件特許発明4は、甲A6に記載された発明ではなく、甲A6に記載された発明及び甲A7~甲A13に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)甲A7発明1又は2を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明4
(ア)甲A7発明1との対比
本件特許発明4と甲A7発明1を対比する。
甲A7発明1の「BLO36(メルク社、プール市、英国から入手できる液晶混合物)」は、BL036は-20℃~95℃の温度範囲でネマチック相を示すから(摘記9a参照)、本件特許発明4の「液晶化合物」及び「前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり」に相当する。
甲A7発明1の「混合物」は、BLO36(メルク社、プール市、英国から入手できる液晶混合物)を含むから、本件特許発明4の「液晶組成物」に相当する。
甲A7発明1の「EHA(2-エチルヘキサノールアクリレート)」及び「E270(市販のオリゴマー エベクリル270(Ebecryl)(脂肪族ウレタンジアクリレート、分子量約1200/モル)」は、それぞれ、1官能アクリレートエステルモノマー及び2官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー又はポリマー及びであり、いずれも、本件特許発明4の「重合可能な有機化合物」に相当し、EHA(2-エチルヘキサノールアクリレート)のホモポリマー、E270(市販のオリゴマー エベクリル270(Ebecryl)(脂肪族ウレタンジアクリレート、分子量約1200/モル)のガラス転移温度は、それぞれ、-85℃又は-55℃、及び、-27℃であるから(摘記10a、11a参照)、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである」に相当する。
甲A7発明1の混合物は、「BLO36(メルク社、プール市、英国から入手できる液晶混合物)」と「EHA(2-エチルヘキサノールアクリレート)」及び「E270(市販のオリゴマー エベクリル270(Ebecryl)(脂肪族ウレタンジアクリレート、分子量約1200/モル)」を含むポリマー前駆体の3:2の量比の混合物であるから、甲A7発明1の混合物の「EHA(2-エチルヘキサノールアクリレート)」及び「E270(市販のオリゴマー エベクリル270(Ebecryl)(脂肪族ウレタンジアクリレート、分子量約1200/モル)」の混合物中の含有量は30.24%((45.0+30.6)×(2/(2+3))であるから、甲A7発明1の「EHA(2-エチルヘキサノールアクリレート)45.0%、E270(市販のオリゴマー エベクリル270(Ebecryl)(脂肪族ウレタンジアクリレート、分子量約1200/モル)30.6%」は、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり」を充足する。
また、甲A7発明1の組成物において、HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)のホモポリマーのガラス転移温度は63℃であるから(摘記12a参照)、HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)のガラス転移温度は63℃であり、その含有量は4.8%(12.0×2/(2+3))であるから、本件特許発明4の「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり」を充足する。
ここで、甲A7発明1の組成物において、TMPTMP(トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート))のガラス転移温度が0℃以下である、あるいは、0℃を超える、のいずれか不明であるが、TMPTMP(トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート))の含有量が3.96%(9.9×2/(2+3))であることから、ガラス転移温度が0℃以下である、あるいは、0℃を超える、のいずれの場合であっても、上記で検討した甲A7発明1の混合物の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物」及び「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物」に相当する化合物の含有量にTMPTMPの含有量を加えた場合の合計がそれぞれ、34.2%(30.24+3.96)、8.76%(4.8+3.96)となるから、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり」及び「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり」を充足する。
そうすると、本件特許発明4と甲A7発明1は、「重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む液晶組成物であって、
前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである
液晶組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A7-1>
液晶組成物が、本件特許発明4では、(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、
(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、
(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、
(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであるのに対し、甲A7発明1ではそのような特定がない点。
(イ)相違点についての検討
相違点A7-1は、実質的な相違点である。
そして、甲A7には本件特許発明4の前記(1)~(4)の化合物について記載も示唆もないから、甲A7発明1の混合物において前記(1)~(4)の化合物を採用する動機付けがあるとはいえない。
また、甲A6及び甲A8~甲A13にも本件特許発明4の前記(1)~(4)の化合物について記載も示唆もないから、甲A7発明1の混合物において前記(1)~(4)の化合物を採用する動機付けがあるとはいえない。
(ウ)本件特許発明4の効果について
本件特許発明4の液晶組成物は、前記(イ)の相違点に基づいて、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができるという優れた効果を奏するものであるといえる。
(エ)小括
したがって、本件特許発明4は、甲A7に記載された発明ではなく、甲A7に記載された発明並びに甲A6及び甲A8~甲A13に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)甲A8発明を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明4
(ア)甲A8発明との対比
本件特許発明4と甲A8発明を対比する。
甲A8発明の「液晶混合物 60 %LCII
( 6.75%の4-エチル-4’-シアノビフェニール
18.76%の4-ペントキシ-4’-シアノビフェニール
8.75%の4-ヘキソキシ-4’-シアノビフェニール
10.01%の4-(トランス-4-ペンチルシクロヘキシル)-4’-シアノビフェニール
4.97%の4-ペンチル-4’-シアノタ-フェニール
18.76%の4-(4-プロピルフェニール)-2-フルオロ-4’-シアノビフェニール
30.00%の4-ペンチル-4’-シアノビフェニール)」は、その組成からみて、甲A6に記載の液晶混合物LCI(BL036としてMerck社、プール(Poole)、英国を通じて市販品を入手可能)であり(摘記6b参照)、BL036は-20℃~95℃の温度範囲でネマチック相を示すから(摘記9a参照)、本件特許発明4の「液晶化合物」及び「前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり」に相当する。
甲A8発明の「PDLCシステム前駆体」は、BLO36(メルク社、プール市、英国から入手できる液晶混合物)を含むから、本件特許発明4の「液晶組成物」に相当する。
甲A8発明の「EHA(2-エチル-ヘキサノールアクリレート)」及び「E270(エベクリル270と脂肪族ウレタンジアクリレート)」は、それぞれ、1官能アクリレートエステルモノマー及び2官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー又はポリマー及びであり、いずれも、本件特許発明4の「重合可能な有機化合物」に相当し、EHA(2-エチルヘキサノールアクリレート)のホモポリマー、E270(エベクリル270と脂肪族ウレタンジアクリレート)のガラス転移温度は、それぞれ、-85℃又は-55℃、及び、-27℃であるから(摘記10a、11a参照)、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである」に相当する。
甲A8発明の「成分B 18.0 %EHA(2-エチル-ヘキサノールアクリレート)」、「成分C 12.24%E270(エベクリル270と脂肪族ウレタンジアクリレート)」は、その含有量の合計は30.24%であるから、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり」を充足する。
また、甲A8発明の組成物において、HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)のホモポリマーのガラス転移温度は63℃であるから(摘記12a参照)、HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)のガラス転移温度は63℃であり、その含有量は4.8%であるから、本件特許発明4の「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり」を充足する。
ここで、甲A7発明1の組成物において、TMPTMP(トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート))のガラス転移温度が0℃以下である、あるいは、0℃を超える、のいずれか不明であるが、TMPTMP(トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート))の含有量が3.96%であることから、ガラス転移温度が0℃以下である、あるいは、0℃を超える、のいずれの場合であっても、上記で検討した甲A7発明1の混合物の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物」及び「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物」に相当する化合物の含有量にTMPTMPの含有量を加えた場合の合計がそれぞれ、34.2%(30.24+3.96)、8.76%(4.8+3.96)となるから、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり」及び「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり」を充足する。
そうすると、本件特許発明4と甲A8発明は、「重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む液晶組成物であって、
前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であり、かつ、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである
液晶組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A8-1>
液晶組成物が、本件特許発明4では、(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、
(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、
(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、
(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであるのに対し、甲A8発明ではそのような特定がない点。
(イ)相違点についての検討
この点は、実質的な相違点である。
そして、甲A8には本件特許発明4の前記(1)~(4)の化合物について記載も示唆もないから、甲A8発明の混合物において前記(1)~(4)の化合物を採用する動機付けがあるとはいえない。
また、甲A6、甲A7及び甲A9~甲A13にも本件特許発明4の前記(1)~(4)の化合物について記載も示唆もないから、甲A8発明の混合物において前記(1)~(4)の化合物を採用する動機付けがあるとはいえない。
(ウ)本件特許発明4の効果について
本件特許発明4の液晶組成物は、前記(イ)の相違点に基づいて、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができるという優れた効果を奏するものであるといえる。
(エ)小括
したがって、本件特許発明4は、甲A8に記載された発明ではなく、甲A8に記載された発明並びに甲A6、甲A7及び甲A9~甲A13に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(4)甲B1発明1及び甲B1発明2を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明4
(ア)甲B1発明1との対比
本件特許発明4と甲B1発明1を対比する。
甲B1発明1の「液晶組成物(10)」は本件特許発明4の「液晶化合物」に相当する。
甲B1発明1の「重合性組成物MLC-10」は、液晶組成物を含むから、本件特許発明4の「液晶組成物」に相当する。
甲B1発明1の「ウレタンアクリレートオリゴマーUN6202」及び「M1が水素である化合物(5-16)
[図:0001414176000060.jpg]
」は、それぞれ、本件特許発明4の「2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー」及び「1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー」に相当し、ウレタンアクリレートオリゴマーUN6202のガラス転移温度は-55℃であり(摘記B4b参照)、「M1が水素である化合物(5-16)は、2-ヒドロキシエチルアクリレートであり、そのガラス転移温度は-15℃であるから(摘記7a参照)、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである」に相当する。
甲B1発明1の「ウレタンアクリレートオリゴマーUN6202」及び「M1が水素である化合物(5-16)
[図:0001414176000061.jpg]
」の含有量は12質量%(10+2)であるから、本件特許発明4の「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり」を充足する。
また、甲A8発明の組成物において、化合物(5-8)
[図:0001414176000062.jpg]
は27℃のガラス転移温度を有するものであり(摘記8a参照)、その含有量は、甲B1発明1で23質量%であるから、本件特許発明4の「0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり」を充足する。
そうすると、本件特許発明4と甲B1発明1は、「重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含む液晶組成物であって、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で10~60質量%であり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物の含有量は、前記液晶組成物の全量基準で1~40質量%であり、
0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、
2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、
2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである
液晶組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点B1-1>
本件特許発明4では、前記液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であるのに対し、甲B1発明1はそのような特定がない点。
<相違点B1-2>
液晶組成物が、本件特許発明4では、(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、
(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、
(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、
(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであるのに対し、甲B1発明1ではそのような特定がない点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず、相違点B1-2について検討する。
この点は、実質的な相違点である。
そして、甲B1には本件特許発明4の前記(1)~(4)の化合物について記載も示唆もないから、甲B1発明1の重合性組成物MLC-10において前記(1)~(4)の化合物を採用する動機付けがあるとはいえない。
また、甲B2~甲B14にも本件特許発明4の前記(1)~(4)の化合物について記載も示唆もないから、甲B1発明1の重合性組成物MLC-10において前記(1)~(4)の化合物を採用する動機付けがあるとはいえない。
(ウ)本件特許発明4の効果について
本件特許発明4の液晶組成物は、前記(イ)の相違点に基づいて、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができるという優れた効果を奏するものであるといえる。
(エ)特許異議申立人の主張及び当審の判断について
申立人Bは、令和6年3月29日提出の意見書において、前記相違点B1-2(前記意見書においては「相違点3」)について「相違点3のうち、(1)は本件特許明細書の段落[0100]に記載の表2であって、実施例1において用いた複数の有機化合物の名称と物性値とに基づくものであり、(2)は、本件特許明細書の段落[0127]に記載の表6であって、実施例2において用いた複数の有機化合物の名称と物性値とに基づくものであり、(3)は、本件特許明細書の段落[0148]に記載の表10であって、実施例3において用いた複数の有機化合物の名称と物性値とに基づくものであり、(4)は、本件特許明細書の段落[0171]に記載の表15であって、実施例4において用いた複数の有機化合物の名称と物性値とに基づくものであり、いずれも実施例相当に訂正されたものである。
しかしながら、上述したように、本件明細書に記載の実施例1~4と比較例1とを参酌すれば、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物と、固体相-ネマチック相転移温度が0℃以下の液晶化合物と、を用いれば、0℃以下で駆動できる液晶素子を得られる確度が高まる、と解するのが自然であり、上記(1)から(4)のいずれかに記載の有機化合物の総称、官能基数、および、ガラス転移温度に複数の有機化合物を特定したとしても、単に液晶素子を得られる確度が高まるのみであって、これらを特定することによる際立つ効果も異質な効果も認められないから、液晶素子を製造できる単なる技術的な常識の範囲といえる材料の選択であるという以外に、特別な効果を奏するものであるとはいえない。
そうすると、相違点3が実質的な相違点であるとはいえない。」と主張する。
しかし、前記(イ)で検討したとおり、相違点B1-2は実質的な相違点であり、甲B1~甲B14には本件特許発明4の前記(1)~(4)の化合物について記載も示唆もない以上、その化合物を採用する動機付けがあるとはいえない。
よって、申立人Bの前記主張は採用できない。
(オ)小括
したがって、本件特許発明4は、甲B1に記載された発明ではなく、甲B1に記載された発明及び甲B2~甲B14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第6 前記第4の理由3(実施可能要件)について
1 申立人Aによる(2-3)について
例えば、段落0098の表1にあるネマチック液晶化合物のTniが121℃であり、Tcnが-50℃であり、Δεが10であり、Δnが0.24であるような物性値として所望するものを決め、当該物性値を有する液晶混合物を得るために、例えば、「LiqCryst」(独ハンブルグ大学のフォルクマル・フィル教授によって開発されたデータベース)などの通常知られた液晶データベースを参照し、複数の液晶化合物を混合して、当該物性値にとすることができる。
また、特許権者の令和6年5月15日提出の上申書とともに提出された乙第4号証(大分大学理工学部教授 氏家誠司氏作成の報告書「混合法による液晶物性制御」、2024年2月29日)の第1頁のタイトル及び第1~9行には後記の記載があり、液晶において、化合物の混合によって融点や誘電率といった物性値を制御することは一般的に行われていたといえる。
[図:0001414176000063.jpg]
そうすると、本件発明を実施しようとする当業者は、本件特許発明に具体的に使用できる「液晶化合物」の選定に過度の試行錯誤を強いられるとまではいえず、したがって、本件特許明細書の開示内容では、当業者は本件特許発明を実施できないとはいえない。
2 申立人Bによる2~4官能チオールモノマー等について
本件訂正により、本件特許発明4は、0℃以下のガラス転移温度を有したチオールモノマー、0℃以下のガラス転移温度を有したチオールオリゴマーも、0℃以下のガラス転移温度を有したチオールポリマー、リン酸アク(メタク)リレート化合物、およびポリエステルアクリレートが、含まれないものとなったので、本件特許発明4は、発明の詳細な説明の記載が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえないから、特許法第36条第4項第1号の要件を満たさないとはいえない。
第7 前記第4の理由4(サポート要件)について
1本件特許発明の課題について
本件特許発明の課題は、本件特許明細書段落0009からみて、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができる液晶組成物、及び0℃以下においても駆動できる液晶素子を提供することにあると認める。
2 申立人Aによる(3-2)について
本件訂正により本件特許発明5は削除されたので、この取消理由は存在しなくなった。
第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人Aの主張のうちは取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は以下のとおりである。
理由A1(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~6に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
(1-1)本件特許発明1の要件D及び要件Eで列挙される「0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物」には、「2~4官能オリゴマーアクリレートモノマー」、「2~4官能オリゴマーアクリレートオリゴマー」、「2~4官能オリゴマーアクリレートポリマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー」なる表現が存在する。ここで、「モノマー」「オリゴマー」「ポリ」「ポリマー」の語が指す範囲及び語の用い方の区別につき、例えば甲第1号証において「モノマー」については「単量体ともいう。重合反応により高分子の基本構造となり得る化合物をいう。1種のモノマーが複数種の構成単位をつくる場合もある。」と記載されるが、「オリゴマー」については「モノマーの重合により得られる低分子量生成物のことをオリゴマー(低重合体)という。ポリマーとの区別は明確ではないが、通常二量体以上、分子量数千までを含めている。」と記載されるとおり、ポリマーとの区別は明確ではない。
一方で、本件特許明細書において「モノマー」「オリゴマー」「ポリ」「ポリマー」の各語を、どのような意味でどのように区別して用いているかの定義等の説明は何ら存在しない。
このため、例えば、「2~4官能オリゴマーアクリレートモノマー」とは”2~4官能のモノマーの低分子量生成物(低重合体)アクリレートの単量体”と解さざるを得ず、「2~4官能オリゴマーアクリレートオリゴマー」とは”2~4官能のモノマーの低分子量生成物(低重合体)アクリレートの低分子量生成物(低重合体)’’と解さざるを得ず、「2~4官能オリゴマーアクリレートポリマー」とは、”2~4官能モノマーの低分子量生成物(低重合体)アクリレートの高分子量体”と解さざるを得ないこととなるが、これらはどのような分子量の「有機化合物」を意味するのかは全く不明となる。
さらに、「ポリエステル」についても明確でなく本件特許明細書中にも何ら説明がないため、「2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー」とは、どのような分子量の「有機化合物」を指すのかが上記と同様に明確ではない。
すなわち、「モノマー」「オリゴマー」「ポリ」「ポリマー」の語が並列的に用いられる本件特許明細書において、「0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物」として列挙される対象物が意味する分子量の範囲の区別が当業者にとっては明確ではなく、少なくとも「2~4官能オリゴマーアクリレートモノマー」、「2~4官能オリゴマーアクリレートオリゴマー」、「2~4官能オリゴマーアクリレートポリマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー」が、どのような分子量の「有機化合物」を指すのかが著しく不明確である。本件特許発明1を直接的又は間接的に引用する本件特許発明2~6についても同様である。
(1-2)本件特許発明1の要件Dにおいて挙げられる「2~4官能脂肪族ウレタンアクリレート」(モノマー/オリゴマー/ポリマー)と、要件Eにおいて挙げられる「2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレート」(モノマー/オリゴマー/ポリマー)、「1~6官能アク(メタク)リレートエステル」(モノマー/オリゴマー/ポリマー)が指す”有機化合物”について、これらがどのように区別されているのかについて、当業者が理解できる記載は本件特許明細書中には一切ない。例えば本件特許明細書の表2、表3、表6、表7、表10、表11、表15及び表16に開示される「2官能脂肪族ウレタンアクリレート」は本件特許発明2の要件Hにおいて「2官能脂肪族ウレタンアクリレート」(モノマー/オリゴマー/ポリマー)として記載される語ではあるが、本件特許発明2は本件特許発明1に従属する発明であるところ、かかる「2官能脂肪族ウレタンアクリレート」は「2官能脂肪族オリゴマーアクリレート」の範疇であるとも、「2官能アクリレートエステル」の範疇に含まれるとも言えることから、「2官能脂肪族ウレタンアクリレート」を本件特許発明1の要件Dの有機化合物として認識するべきなのか、要件Eの有機化合物として認識すべきなのかは明確ではない。さらに、少なくとも各々のオリゴマーとポリマーとがどのように区別されるべきなのかについてもそもそも明確でないことは、(1-1)で前述したとおりである。
したがって、少なくとも、本件特許発明1における要件Dの「2~4官能脂肪族ウレタンアクリレート」(モノマー/オリゴマー/ポリマー)と、要件Eの「2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレート」(モノマー/オリゴマー/ポリマー)、「1~6官能アク(メタク)リレートエステル」(モノマー/オリゴマー/ポリマー)の区別が不明確である。本件特許発明1を直接的又は間接的に引用する本件特許発明2~6についても同様である。
(1-3)本件特許発明1及び本件特許発明2を構成する要件D、E、G、H、I、J、Kで列挙される「有機化合物」にて用いられている「官能」の語が指しているものが何なのかについて本件特許明細書には何らの説明がない。
例えば「2~4官能チオールオリゴマー」あるいは「2~4官能チオールポリマー」は、(i)官能基として「チオール基」を2~4個有する、「オリゴマー」あるいは「ポリマー」を指すのか、それとも(ii)官能基として「チオール基」を2~4個有する「モノマー」を反応させた「オリゴマー」あるいは「ポリマー」を指すのかが不明確であり、仮に(i)の場合にはさらに、「2~4官能チオール」が有する「チオール基」を反応させた「オリゴマー」あるいは「ポリマー」なのか、それとも「2~4官能チオール」が他に反応性基を有していてかかる反応性基が反応した結果の「チオール基」を2~4個有する「オリゴマー」あるいは「ポリマー」なのか、不明確である。なお、少なくとも各々のオリゴマーとポリマーとがどのように区別されるべきなのかについてもそもそも明確でないことは、(1-1)で前述したとおりである。
また、「1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマー」とは、官能基として「アク(メタク)リレート」を1~6個有する「ポリマー」なのか、官能基として「エステル基」を1~6個有するアク(メタク)リレートである「ポリマー」なのかが不明確である。
他に列挙される「有機化合物」についても同様に不明確である。このため、当業者は本件特許明細書に列挙される各「有機化合物」が意図する範囲とそれらの区別を、明確に理解して捉えることができない。本件特許発明1を直接的又は間接的に引用する本件特許発明3~6についても同様である。
(1-4)「アク(メタク)リレート」なる表記について、IUPACで定められる有機化合物命名法には、このような表記による命名は存在しない。また特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で検索可能な、日本国内で発行済の公開特許公報の全てを検索しても、かかる表記は本件特許明細書以外にはただ1件、特開2009-294586号公報の要約書(明細書本文では用いられていない)であり、一般的な技術的用語であるとは到底言えない。にもかかわらず本件特許明細書に「アク(メタク)リレート」の定義については何らの説明が存在しない。したがって、「アク(メタク)リレート」とは何を意味するのかが、当業者にとって不明確である。
理由A2(実施可能要件)本件特許の請求項1~6に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(2-1)「0℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する有機化合物」との規定につき、少なくとも「モノマーである有機化合物」自体にはTgは存在しないのが当業者の技術常識である。
本件特許明細書において、上述したとおり「モノマー」「オリゴマー」「ポリマー」の語が指す範囲及びこれらの語の用い方の区別について明確ではなく、本件特許明細書中にもこれらの語の定義等の説明が何ら存在しない以上、『0℃以下のTgを有する有機化合物』との定義自体が不明確であり、本件特許明細書の開示内容では、当業者は本件特許発明を実施できない。
(2-2)本件特許明細書における各「有機化合物」の化学式(組成式、構造式)や、又は仮に「有機化合物」が「オリゴマー」又は「ポリマー」を包含するものとした場合の、「オリゴマー」又は「ポリマー」の各構成単位の化学構造式について、本件特許明細書には具体的な開示は一切なく、特許権者が製造したのか、市販品を用いたのかについても何ら開示されていない。
前述したように「0℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する有機化合物」自体が不明確である。一方、FOXの式自体は、甲第2号証及び甲第3号証に示されるように当業者に公知であり、本件特許明細書の段落0103でも「Foxの式に基づいて算出された駆動臨界点すなわち重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度も表3に示す。」と、また段落0105で「FOXの式は、共重合体のガラス転移温度を算出する場合に使用される式として知られている。」と記載される。
しかしながら、本件特許発明が解決しようとする課題である「0℃以下においても液晶素子を駆動させることができ、0℃以下においても重合後の液晶組成物が柔軟性を保つことができ、液晶駆動を阻害せず、高い遮蔽性と高い透明性を有する」効果を奏するためには、大前提として「重合可能な有機化合物」と、「液晶化合物」が「液晶組成物」を安定して構成できていること、すなわち混合物が安定に混合された状態であって、硬化後に安定な高分子ネットワークを形成できる必要があることは当業者にとって知られており、単に「重合可能な有機化合物」のガラス転移温度(Tg)を規定するだけでは到底達成できない。ここでFOXの式によって共重合体のTgを算出する際に、共重合体単位であるモノマ一種、さらに言えばモノマーの構造(モノマーの嵩高さ、柔軟性、長鎖部分の有無等)は影響し、例えば高分子の主鎖がたわみにくい場合や、側鎖の嵩張りが大きくたわみにくい場合はTgは高くなり、柔らかい長鎖アルキル基が存在するとTgは低くなることは、当業者における一般的な技術常識として知られている。甲第3号証にも側鎖のエステル基の化学構造、具体的にはアルキル鎖の構造と耐寒性(Tgと直結する)について記載されている。また、甲第6号証ではその実施例3において、実施例3の貧弱な透過値はSEMで確認したように悪い形態(スイスチーズ状でない)ことによること、すなわちポリマーネットワークが十分に形成されず電気光学性能に影響が出ている旨が記載されており、液晶組成物を構成するモノマーの分子構造及び含有量がPDLCにおける液晶の基本的な性能に影響することが示されている。
さらに、甲第13号証には、甲第13号証の高分子分散型液晶組成物の第5成分として含有させる多官能(メタ)アクリレートの分子量について、その下限値及び上限値が記載され、あまり分子量が小さいと硬化収縮のため密着性が悪化し、逆にあまり分子量が大きいと架橋間距離が長くなるため、隙間が大きくなり、液晶化合物を取り込みやすくなり、特性が大きく変化してしまうことが記載されている。加えて、高分子分散型液晶組成物は、通常液晶化合物の組成物と非液晶化合物(又は組成物)の混合物になるが、非液晶化合物を液晶組成物中に添加することによる、液晶組成物のネマチックーアイソトロピック転移点(Tni)の低下度合いは、用いる非液晶化合物の分子量に大きく左右されることも記載されている。
このような技術常識の下で、本件特許明細書の実施例及び比較例では「有機化合物」の化学式(組成式、構造式)の開示が一切なく「アクリレートエステル」「チオールモノマー」「脂肪族ウレタンアクリレート」「ポリエステルアクリレート」の「官能基数」と「Tg」で特定されるのみであり、加えて上記「(1)明確性違反について」で指摘したとおり「モノマー」「オリゴマー」「ポリマー」の語が指す範囲及びこれらの語の用い方の区別についても明確ではない。
したがって、本件特許発明を実施しようとする当業者は、本件特許発明に具体的に適用できる「有機化合物」の選定及び組合せに際して、過度の試行錯誤を強いられざるを得ない。すなわち、本件明細書の開示内容では、当業者は本件特許発明を実施できない。
理由A3(サポート要件)本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(3-1)本件特許発明2においては、その要件G,H,I,J及びKを、本件特許発明2の作用効果の発現のためにすべて満たす必要があるのかどうかが明確には読み取れないところ、要件J「単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマーもしくは単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマーもしくは単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマー」を含有する液晶組成物の実施例は、本件特許明細書には開示されていない。そのため、本件特許発明2が要件G,H,I,J及びkをすべて満たさなければならないのであれば、本件特許発明2は本件特許明細書でサポートされていない。
2 申立人Bの主張のうちは取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は以下のとおりである。
理由B1(実施可能要件)本件特許の請求項1~6に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許明細書には、以下の記載がある。なお、下線は、申立人Bが付与した。
「[0047]
また、本発明の液晶組成物が含む有機化合物は、さらに具体的には例えば、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
[0064]
また、本発明の液晶組成物において、有機化合物は必ずしも、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つでなくてもよい。
[0065]
しかし、このような構成であれば、液晶組成物の密着性が向上し、また、未硬化成分が発生し難くなるので好ましい。また、このような構成であれば、液晶組成物において架橋構造を形成し易くなるので好ましい。さらに、このような構成であれば、液晶組成物に低収縮性と深硬化性(硬化性の向上)を付与でき、また、液晶組成物にさらなる柔軟性を付与できるので好ましい。また、このような構成であれば、液晶組成物の表面が改質され、基材界面との密着性を向上できるので好ましい。また、このような構成であれば、高分子ネットワークが密で複雑な構造となり、高分子ネットワークに沿って液晶化合物がランダムに配向するため、散乱性能が向上するので好ましい。
[0099]
表1から明らかなように、実施例1で使用されたネマチック液晶化合物の固体相-ネマチック相転移温度(Tcn)は-50℃であり、0℃以下であった。また、使用された複数の有機化合物の名称と物性値を表2に示す。
[0100]
[表2]
[図:0001414176000064.jpg]
[0101]
表2において、「Tg」はガラス転移温度を示す。
また、表2において、「等方比率」は、有機化合物それぞれを、表1に示すネマチック液晶化合物に添加して重合したときに、得られる液晶組成物が等方性を示すときの有機化合物それぞれの含有量を示し、単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
[0103]
また、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点すなわち重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度も表3に示す。
[0104]
[表3]
[図:0001414176000065.jpg]
[0126]
また、液晶化合物として、実施例1と同じ液晶化合物を使用した。すなわち、表1に示す物性値を有するネマチック液晶化合物を使用した。
また、重合開始剤として、α-フェニルベンゾインを使用した。
また、使用された複数の有機化合物の名称と物性値を表6に示す。
[0127]
[表6]
[図:0001414176000066.jpg]
[0128]
表6において、「Tg」はガラス転移温度を示す。
また、表6において、「等方比率」は、有機化合物それぞれを、表1に示すネマチック液晶化合物に添加して重合したときに、得られる液晶組成物が等方性を示すときの有機化合物それぞれの含有量を示し、単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
[0130]
また、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点すなわち重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度も表7に示す。 [0131] [表7]
[図:0001414176000067.jpg]
[0147]
また、液晶化合物として、実施例1と同じ液晶化合物を使用した。すなわち、表1に示す物性値を有するネマチック液晶化合物を使用した。
また、重合開始剤として、α-フェニルベンゾインを使用した。
また、使用された複数の有機化合物の名称と物性値を表10に示す。
[0148]
[表10]
[図:0001414176000068.jpg]
[0149]
表10において、「Tg」はガラス転移温度を示す。
また、表10において、「等方比率」は、有機化合物それぞれを、表1に示すネマチック液晶化合物に添加して重合したときに、得られる液晶組成物が等方性を示すときの有機化合物それぞれの含有量を示し、単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
[0151]
また、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点すなわち重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度も表11に示す。
[0152]
[表11]
[図:0001414176000069.jpg]
[0170]
表14から明らかなように、実施例4で使用されたスメクチック液晶化合物のスメクチック相-ネマチック相転移温度(Tsn)は-20℃であり、0℃以下であった。
また、使用された複数の有機化合物の名称と物性値を表15に示す。
[0171]
[表15]
[図:0001414176000070.jpg]
[0172]
表15において、「Tg」はガラス転移温度を示す。
また、表15において、「等方比率」は、有機化合物それぞれを、表14に示すスメクチック液晶化合物に添加して重合したときに、得られた液晶組成物が等方性を示すときの有機化合物それぞれの含有量を示し、単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
[0173]
また、液晶組成物の全量を基準とした、スメクチック液晶化合物の含有量と、有機化合物それぞれの含有量と、有機化合物それぞれの重合を開始させる重合開始剤の含有量とを表16に示す。
[0174]
[表16]
[図:0001414176000071.jpg]
[0192]
表19から明らかなように、比較例1で使用されたネマチック液晶化合物の固体相-ネマチック相転移温度(Tcn)は3℃であり、0℃を超えていた。
また、使用された複数の有機化合物の名称と物性値を表20に示す。
[0193]
[表20]
[図:0001414176000072.jpg]
[0194]
表20において、「Tg」はガラス転移温度を示す。
また、表20において、「等方比率」は、有機化合物それぞれを、表19に示すネマチック液晶化合物に添加して重合したときに、得られる液晶組成物が等方性を示すときの有機化合物それぞれの含有量を示し、単位は、液晶組成物の全量を基準とした質量%である。
[0195]
また、液晶組成物の全量を基準とした、ネマチック液晶化合物の含有量と、有機化合物それぞれの含有量と、有機化合物それぞれの重合を開始させる重合開始剤の含有量とを表21に示す。
[0196]
[表21]
[図:0001414176000073.jpg]
」。
本件特許明細書における発明の詳細な説明は、実施例、および比較例における有機化合物について、段落[0100]、[0127]、[0148]、[0171]、[0193]に記載の通り、有機化合物の総称と官能基数と共に、ガラス転移温度を示すものである。
しかし、発明の詳細な説明は、まず、ガラス転移温度を有した「アクリレートエステル」や「脂肪族ウレタンアクリレート」との記載が、モノマーを示すのか、オリゴマーを示すのか、ポリマーを示すのか、あるいはこれらの組み合わせを示すのかを、明らかにしていない。仮に、0℃以下のガラス転移温度を有する「脂肪族ウレタンアクリレート」が、「脂肪族ウレタンアクリレートポリマー」であるとする場合、「脂肪族ウレタンアクリレートポリマー」のガラス転移温度が、「脂肪族ウレタンアクリレートポリマー」同士の硬化前のガラス転移温度であるのか、「脂肪族ウレタンアクリレートポリマー」同士の硬化後のガラス転移温度であるのかも、明らかにしていない。
ガラス転移温度について、段落[0101]、[0128]、[0149]、[0172]、[0194]には、「「Tg」はガラス転移温度を示す」と記載されるが、当該ガラス転移温度を有した具体的な有機化合物の名称の記載がなく、有機化合物の総称とともに、当該有機化合物のTgが開示されるのみであるから、ガラス転移温度を測定する対象が、有機化合物に含まれるポリマー同士の重合前の当該有機化合物のものであるのか、有機化合物に含まれるポリマー同士の重合後の硬化物のものであるのか、あるいはこれらの両方であるのか、さらにはそれ以外であるのかが定かではなく、測定方法などの記載も認められないため、測定方法などからも当該ガラス転移温度を有する有機化合物を具体的に理解することもできない。
このように、発明の詳細な説明は、(4A)ガラス転移温度が何のどのような状態におけるガラス転移温度であるかを曖昧なものとするものであるから、ガラス転移温度の定義そのものを曖昧としている。このため、ガラス転移温度に基づいて有機化合物を特定するにしても、結局のところ、有機化合物の総称に含まれる極めて多数の有機化合物について、当該有機化合物と当該有機化合物の重合体とのガラス転移温度を用い、当該有機化合物を用いた液晶素子を製造して、0℃以下の駆動が可能であるか否かの検証を強いるなど、発明の詳細な説明は、当業者に過度な試行錯誤を強いるものであるといえる。
理由B2(サポート要件)本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許明細書には、以下の記載がある。なお、下線は、申立人Bが付与した。
「[0009]
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができる液晶組成物、及び0℃以下においても駆動できる液晶素子を提供することを目的とする。
[0207]
すなわち、本発明の液晶組成物において、液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であるので、0℃以下という低温環境においても重合後の液晶組成物が柔軟性を保つことができ、液晶駆動を阻害しない。
[0208]
また、本発明の液晶組成物において、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量が10質量%以上であるので、重合したこの有機化合物のガラス転移温度も0℃以下に下がった状態とすることができ、0℃以下という低温環境においても、液晶組成物が柔軟性を保つことができる。
[0209]
従って、本発明の液晶組成物は、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができ、また、このような本発明の液晶組成物を有する液晶層を備える本発明の液晶素子は、0℃以下においても駆動できる。」。
本件特許明細書におけるこれらの記載から、本件特許発明1~本件特許発明6が解決しようとする技術課題は、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができる液晶組成物、及び0℃以下においても駆動できる液晶素子を提供することであるといえる。
本件特許発明1、5は、液晶組成物であり、本件特許発明1の有機化合物は、(D)0℃以下のガラス転移温度を有し、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、(E)2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
本件特許発明6は、液晶素子であり、本件特許発明6の有機化合物は、(T)0℃以下のガラス転移温度を有し、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、2~4官能チオールモノマー、2~4官能チオールオリゴマー、2~4官能チオールポリマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートモノマー、単官能リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー及び単官能リン酸アク(メタク)リレートポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つと、(U)2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレートポリマー、2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー、2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー、2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルモノマー、1~6官能アク(メタク)リレートエステルオリゴマー及び1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
(4)実施可能要件違反について記載したように、本件特許明細書の段落[0100]、[0103]には、実施例1に使用された有機化合物のなかに、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物として、2官能のアクリレートエステルと、単官能アクリレートエステルと、2官能の脂肪族ウレタンアクリレートと、が記載されている。また、実施例1に使用された有機化合物の重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度として、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点である-42℃が記載されている。
本件特許明細書の段落[0127]、[0131]には、実施例2に使用された有機化合物のなかに、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物として、2官能のアクリレートエステルと、2官能の脂肪族ウレタンアクリレートと、が記載されている。また、実施例2に使用された有機化合物の重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度として、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点である-13℃が記載されている。
本件特許明細書の段落[0148]、[0152]には、実施例3に使用された有機化合物のなかに、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物として、単官能のアクリレートエステルと、2官能のアクリレートエステルと、が記載されている。また、実施例3に使用された有機化合物の重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度として、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点である-52℃が記載されている。
本件特許明細書の段落[0171]、[0174]には、実施例4に使用された有機化合物のなかに、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物として、単官能のアクリレートエステルと、2官能のアクリレートエステルと、が記載されている。また、実施例4に使用された有機化合物の重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度として、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点である-27.4℃が記載されている。
本件特許明細書の段落[0193]、[0196]には、比較例に使用された有機化合物のなかに、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物として、単官能のアクリレートエステルと、2官能のアクリレートエステルと、が記載されている。また、比較例に使用された有機化合物の重合後の高分子ネットワークのガラス転移温度として、FOXの式に基づいて算出された駆動限界点である-14.6℃が記載されている。
一方、本件特許明細書の実施例、および比較例の全体を見ても、0℃以下で駆動できる液晶素子として、0℃以下のガラス転移温度を有した有機化合物は、2官能のアクリレートエステル、単官能アクリレートエステル、および2官能の脂肪族ウレタンアクリレートの組み合わせ(実施例1)、2官能のアクリレートエステルと、2官能の脂肪族ウレタンアクリレートとの組み合わせ(実施例2)、および、単官能のアクリレートエステルと、2官能のアクリレートエステルとの組み合わせ(実施例3、4、比較例)、の3通りのみである。
すなわち、本件特許明細書の実施例、および比較例の全体を見ても、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物であって、かつ構成要件(D)(T)に該当する有機化合物は、2官能の脂肪族ウレタンアクリレートのみである(実施例1、2)。
また、本件特許明細書の実施例、および比較例の全体を見ても、0℃以下の応答時間を開示する(C)0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物であって、構成要件(E)に該当する有機化合物は、2官能のアクリレートエステルと、単官能アクリレートエステルとのみである。
本件特許明細書の全体を見ても、0℃以下のガラス転移温度を有するチオールモノマー、チオールオリゴマー、チオールポリマー、0℃以下のガラス転移温度を有するリン酸アク(メタク)リレートモノマー、リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー、リン酸アク(メタク)リレートポリマー、0℃以下のガラス転移温度を有するポリエステルアクリレートモノマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートポリマー、これらを使用した液晶素子について、0℃以下の応答時間は、一切開示されていない。
したがって、本件特許発明1、5、6における構成要件(C)~構成要件(E)は、0℃以下の応答時間を何ら開示しないモノマー、オリゴマー、およびポリマーによる組み合わせを、極めて多く含むものである。
ここで、本件特許明細書の段落[0207]~[0209]には、「本発明の液晶組成物において、液晶化合物の、固体相-ネマチック相転移温度またはスメクチック相-ネマチック相転移温度が0℃以下であるので、0℃以下という低温環境においても重合後の液晶組成物が柔軟性を保つことができ、液晶駆動を阻害しない。また、本発明の液晶組成物において、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量が10質量%以上であるので、重合したこの有機化合物のガラス転移温度も0℃以下に下がった状態とすることができ、0℃以下という低温環境においても、液晶組成物が柔軟性を保つことができる。従って、本発明の液晶組成物は、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができ、また、このような本発明の液晶組成物を有する液晶層を備える本発明の液晶素子は、0℃以下においても駆動できる。」との記載がある。
また、本件特許明細書の段落[0064]、[0065]には、「また、本発明の液晶組成物において、有機化合物は必ずしも、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマー、・・・からなる群から選ばれる少なくとも1つでなくてもよい。」「しかし、このような構成であれば、液晶組成物の密着性が向上し、また、未硬化成分が発生し難くなるので好ましい。また、このような構成であれば、液晶組成物において架橋構造を形成し易くなるので好ましい。さらに、このような構成であれば、液晶組成物に低収縮性と深硬化性(硬化性の向上)を付与でき、また、液晶組成物にさらなる柔軟性を付与できるので好ましい。」との記載がある。
これらの記載を参酌すれば、本件特許明細書における発明の詳細な説明は、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物を含むことが、重合したこの有機化合物のガラス転移温度を0℃以下に下げて、0℃以下という低温環境においても、液晶組成物が柔軟性を保てるから、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができる、という機序を示しているように解される。また、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物に、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマーを含むことは、液晶組成物にさらなる柔軟性を付与できるから、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができる、という機序を示しているように解される。
しかし、2官能の脂肪族ウレタンアクリレートを含む本件特許明細書の実施例2は、-5℃の応答時間として、1.0秒を示すが、2官能の脂肪族ウレタンアクリレートを含まない本件特許明細書の実施例3、4は、-10℃の応答時間として、さらに短い0.2秒以下を示す。これらの比較によれば、本件特許明細書における発明の詳細な説明は、構成要件(D)に該当する有機化合物として唯一開示する2官能の脂肪族ウレタンアクリレートについて、2官能の脂肪族ウレタンアクリレートを含まない実施例3、4の方が、2官能の脂肪族ウレタンアクリレートを含む実施例2よりも、0℃以下の応答性に優れていることを示すものでもある。すなわち、仮に、構成要件(D)に該当する2官能の脂肪族ウレタンアクリレートを含むことによって、液晶組成物に柔軟性を付与できるとしても、それによって0℃以下という低温環境で応答時間を長くしてしまうことを示すものでもある。
結局のところ、本件特許明細書における発明の詳細な説明は、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物に、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートを含むことが、0℃以下という低温環境においても、液晶組成物が柔軟性を保てるから、0℃以下においても液晶素子を駆動させることができる、と示しながらも、反対に、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物に、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートを含むことが、これらを含まない水準と比べて低温環境の応答時間を長くしてしまう、という相反する結果を示すものである。このため、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の存在が、本件特許明細書における発明の詳細な説明は、0℃以下という低温環境において液晶素子を駆動できる、とする何かしらの機序を示すものでもない。
すると、本件特許明細書における発明の詳細な説明は、0℃以下のガラス転移温度を有するチオールモノマー、チオールオリゴマー、チオールポリマー、0℃以下のガラス転移温度を有するリン酸アク(メタク)リレートモノマー、リン酸アク(メタク)リレートオリゴマー、リン酸アク(メタク)リレートポリマー、0℃以下のガラス転移温度を有するポリエステルアクリレートモノマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートポリマー、これらを使用した液晶素子について、0℃以下という低温環境において液晶素子を駆動できることを記載したものではなく、本件特許発明1、5、6は、発明の詳細な説明に記載されていない発明について記載されたものである。
理由B3(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~6に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
本件特許発明1、5は、液晶組成物であり、(A)重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含み、(C)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、(D)2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマーのいずれか1つを含むものである。
本件特許発明6は、液晶素子であり、液晶素子の構成要件(K)のなかの液晶層が、構成要件(A)重合可能な有機化合物と、液晶化合物とを含むものであり、(C)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、(D)2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、2~4官能脂肪族ウレタンアクリレートポリマーのいずれか1つを含むものである。
一方、本件特許発明1、5、6のいずれにおいても、0℃以下のガラス転移温度を有する有機化合物を特定するための「0℃以下のガラス転移温度」が、有機化合物同士の重合による硬化前の有機化合物が有するガラス転移温度であるのか、有機化合物同士の重合前の有機化合物が有するガラス転移温度であるのか、これらの両方であるのか、あるいはこれら以外の他の状態における有機化合物のガラス転移温度であるか、不明である。
ガラス転移は、高温度である液体であるガラスなどの物質が温度の効果によりある温度範囲で急激にその粘度を増し、ほとんど流動性を失って非晶質固体となる変化であり、液体もしくはゴム状態などの溶融状態から流動性のないガラス状態になる境界の温度であるから、重合前の有機化合物にも適用される物性値であり、重合後の有機化合物にも適用される物性値である。ガラス転移温度は、示差熱分析(DTA)や示差走査熱量測定(DSC)などの様々な測定方法のなかのいずれの測定方法によるものであるが、特定の対象が硬化前の有機化合物か、硬化後の有機化合物であるか、硬化状態が高分子ネットワークの構造を構築しているのか、硬化状態が高分子ネットワーク構造を構築していないのかによって、当然ながら大きく変わるものである。
本件特許明細書の段落[0107]には、「そして、塗布された液晶組成物とカラムスペーサ形成用樹脂とに紫外線を照射し、液晶組成物に含まれる有機化合物を硬化及び重合させて液晶層6を得た。」との記載があるから、液晶素子が備える液晶組成物は、硬化した後の液晶組成物であるといえる。しかし、こうした記載を参酌したとしても、本件特許発明6の液晶組成物における有機化合物のガラス転移温度が、硬化前の有機化合物のものであるか、硬化後の有機化合物のものであるかは、定かではない。本件特許発明1、5の液晶組成物における有機化合物のガラス転移温度もまた、硬化前の有機化合物のものであるか、硬化後の有機化合物のものであるかは、定かではない。
また、塗布されて硬化する前の液晶組成物における有機化合物が、2~4官能モノマーを含むとすれば、当該有機化合物を硬化及び重合させたものを含む液晶層は、2~4官能モノマーが重合した2~4官能ポリマーを少なくとも含むものになる。塗布されて硬化する前の液晶組成物における有機化合物が、2~4官能ポリマーを含むとすれば、当該有機化合物を硬化及び重合させたものを含む液晶層は、2~4官能ポリマーが重合した2~4官能ポリマーを含むものになる。
とすると、仮に、本件特許発明6における「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物」が「2~4官能ポリマー」である場合、本件特許発明6の「2~4官能ポリマー」における「ガラス転移温度」は、塗布されて硬化する前の「2~4官能ポリマー」を特定する物性値であるのか、硬化した後の「2~4官能ポリマー」を特定する物性値であるのか、あるいは両方か、さらにはそれ以外であるのか、定かではない。本件特許発明1における「0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物」が「2~4官能ポリマー」である場合も、本件特許発明1の「2~4官能ポリマー」における「ガラス転移温度」は、塗布されて硬化する前の「2~4官能ポリマー」を特定する物性値であるのか、硬化後の「2~4官能ポリマー」を特定する物性値であるのか、あるいは両方か、さらにはそれ以外であるのか、定かではない。
本件特許明細書の段落[0101]、[0128]、[0149]、[0172]、[0194]には、「「Tg」はガラス転移温度を示す」と記載されるが、具体的な有機化合物の名称ではなく、有機化合物の総称とともに、当該有機化合物のTgが開示されるのみであるから、ガラス転移温度を測定する対象が、有機化合物同士の重合前の当該有機化合物のものであるのか、有機化合物同士の重合後の硬化物のものであるのか、あるいはこれらの両方であるのか、さらにはそれ以外であるのか定かではなく、測定方法などの記載も認められないため、測定方法などからも特定することができない。
なお、本件特許明細書の段落[0208]には、「本発明の液晶組成物において、0℃以下のガラス転移温度を有する重合可能な有機化合物の含有量が10質量%以上であるので、重合したこの有機化合物のガラス転移温度も0℃以下に下がった状態とすることができ、0℃以下という低温環境においても、液晶組成物が柔軟性を保つことができる。」との記載がある。
これらの記載を参酌しても、重合前のガラス転移温度が0℃以下である有機化合物が10質量%以上であるから、当該有機化合物を含む有機化合物の重合後のガラス転移温度も0℃以下に下がったのか、あるいは、重合後のガラス転移温度が0℃以下である有機化合物が10質量%以上であるから、当該有機化合物を含む有機化合物の重合後のガラス転移温度も0℃以下に下がったのか、それ以外であるのか、定かではない。
以上のように、本件特許明細書の全体を参酌しても、本件特許発明1、5の有機化合物を特定するガラス転移温度、特にポリマーである有機化合物のガラス転移温度は、硬化前の有機化合物を特定するものであるのか、硬化後の有機化合物を特定するものであるのか、これらの両方であるのか、それ以外のものであるのか定かではなく、技術常識を参酌しても、本件特許発明1の範囲がこれにより確定される程度に正確であるとは、到底いえない。
本件特許発明1と同一の表現を用いる本件特許発明6の有機化合物のガラス転移温度もまた、硬化前の有機化合物を特定するものであるのか、硬化後の有機化合物を特定するものであるのか、これらの両方であるのか、これら以外のものであるのか定かではなく、技術常識を参酌しても、本件特許発明6の範囲がこれにより確定される程度に正確であるとは、到底いえない。
第9 前記第8 1について
1 理由A1(明確性要件)について
(1-1)「2~4官能オリゴマーアクリレートモノマー」、「2~4官能オリゴマーアクリレートオリゴマー」、「2~4官能オリゴマーアクリレートポリマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートモノマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー」、「2~4官能ポリエステルアクリレートポリマー」は、ぞれぞれ、モノマーとしての2~4官能オリゴマーアクリレート、オリゴマーとしての2~4官能オリゴマーアクリレート、ポリマーとしての2~4官能オリゴマーアクリレート、モノマーとしての2~4官能ポリエステルアクリレート、オリゴマーとしての2~4官能ポリエステルアクリレート、ポリマーとしての2~4官能ポリエステルアクリレートと解することができ、さらに、本件訂正により、本件特許発明4は、
(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、
(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、
(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、
(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであると特定されているから、本件特許発明4は明確である。
(1-2)「2官能脂肪族ウレタンアクリレート」は、「2官能脂肪族オリゴマーアクリレート」の範疇であると解すべきであり、「2官能アクリレートエステル」であるとは解されないから、「2官能脂肪族オリゴマーアクリレート」と「2官能アクリレートエステル」は、いずれも、明確である。
確かに、「2~4官能脂肪族オリゴマーアクリレート」(モノマー/オリゴマー/ポリマー)と「1~6官能アク(メタク)リレートエステル」(モノマー/オリゴマー/ポリマー)は明確に区別されていないかもしれないが、それぞれに含まれるものの範囲は明確であり、その結果、両者で特定される有機化合物の範囲は明確である。
さらに、本件訂正により、本件特許発明4は、
(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、
(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、
(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、
(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであると特定されているから、有機化合物の範囲は明確である。
そうすると、本件特許発明4は明確である。
(1-3)「2~4官能チオールオリゴマー」あるいは「2~4官能チオールポリマー」は、(i)官能基として「チオール基」を2~4個有するモノマーを重合した「オリゴマー」あるいは「ポリマー」を指すことは明らかであり、「1~6官能アク(メタク)リレートエステルポリマー」とは、官能基として「エステル基」を1~6個有するモノマーを重合した「アク(メタク)リレートポリマー」であることが明らかであるから、他に列挙される「有機化合物」についても同様に解することができ、本件特許発明4は明確である。
(1-4)「アク(メタク)リレート」なる表記は、「(メタ)アクリレート」のことであることは明らかであり、アクリレート又はメタクリレートを意味することは明らかであるから、本件特許発明4は明確である。
2 理由A2(実施可能要件)について
(2-1)「モノマーである有機化合物」自体にはTgは存在しないから、そのTgはモノマーを重合したもののTgと解され、前記(1-1)で検討したのと同じ理由で、「モノマー」「オリゴマー」「ポリマー」の語が指す範囲及びこれらの語の用い方の区別について明確であり、本件特許明細書中にこれらの語の定義等の他の説明が何ら存在しない以上、「0℃以下のTgを有する有機化合物」との定義自体は明確であり、本件特許明細書の開示内容では、当業者は本件特許発明を実施できないとはいえない。
(2-2)本件訂正により、本件特許発明4は、(1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、
(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、
(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、
(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであるものに特定されたから、本件特許発明を実施しようとする当業者は、本件特許発明4に具体的に適用できる「有機化合物」の選定及び組合せに際して、過度の試行錯誤を強いられるとはいえず、本件明細書の開示内容では、当業者は本件特許発明を実施できないとはいえない。
3 理由A3(サポート要件)について
(3-1)本件訂正により、本件特許発明2は削除されたので、この取消理由は存在しなくなった。
第10 前記第8 2について
1 理由B1(実施可能要件)について
ガラス転移温度を測定する対象は、有機化合物のホモポリマーであることは明らかであり、その測定方法も出願時の技術常識であり、本件訂正により、本件特許発明4は、 (1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、
(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、
(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、
(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであるものに特定されている。してみれば、有機化合物の総称に含まれる極めて多数の有機化合物について、当該有機化合物と当該有機化合物の重合体とのガラス転移温度を用い、当該有機化合物を用いた液晶素子を製造して、0℃以下の駆動が可能であるか否かの検証を強いる必要はないから、発明の詳細な説明は、当業者に過度な試行錯誤を強いるものであるとはいえない。
2 理由B2(サポート要件)について
本件訂正により、本件特許発明4は、 (1)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-60℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、100℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能ポリエステルアクリレートモノマーである、
(2)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-8℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーと、-55℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、98℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、65℃のガラス転移温度を有する4官能アクリレートエステルモノマーである、
(3)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-69℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-35℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、60℃のガラス転移温度を有する4官能チオールモノマーと、54℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、40℃のガラス転移温度を有する3官能アクリレートエステルモノマーである、または、
(4)0℃以下のガラス転移温度を有する前記有機化合物は、-71℃のガラス転移温度を有する単官能アクリレートエステルモノマーと、-20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであり、
0℃を超えるガラス転移温度を有する前記有機化合物は、14℃のガラス転移温度を有する2官能脂肪族ウレタンアクリレートモノマーと、43℃のガラス転移温度を有する3官能チオールモノマーと、20℃のガラス転移温度を有する2官能アクリレートエステルモノマーであるものに特定されている。してみれば、前記(1)~(4)のものは実施例として前記課題を解決できることが記載されているから、本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載されていない発明について記載されたものであるとはいえない。
3 理由B3(明確性要件)について
本件特許発明4の有機化合物を特定するガラス転移温度は、その有機化合物のホモポリマーのものであることは明らかであるから、本件特許発明4は明確である。
第11 むすび
以上のとおりであるから、令和5年11月28日付けの取消理由通知及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件訂正前の請求項1~3、5、6は本件訂正により削除されたため、請求項1~3、5、6についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700815