特許異議申立
2022-700978
ゲル化食品用粉末油脂およびこれを含有するゲル化食品
- 審判番号
- 2022-700978
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-049336
- 登録番号
- 7071178
- 請求日
- 2022年10月04日
- 審決日
- 2023年06月23日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ミヨシ油脂株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人牛木国際特許事務所
- 【異議申立人】中水 麻衣
- 審判長/審判官
- 審判長 磯貝 香苗
- 審判官 平塚 政宏
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(A23D) / P1651.121-YAA(A23D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7071178号発明「ゲル化食品用粉末油脂およびこれを含有するゲル化食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7071178号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、5について訂正することを認める。
特許第7071178号の請求項1、2、4及び5に係る特許を維持する。
特許第7071178号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7071178号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成30年3月16日(優先権主張 平成29年3月16日)の出願(特願2018-49336)であって、令和4年 5月10日にその特許権の設定の登録(請求項の数5)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対し、令和 4年10月 4日に特許異議申立人 中水 麻衣(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、令和 5年 2月16日付け取消理由通知書により取消理由が通知され、同年 4月20日に特許権者 ミヨシ油脂株式会社(以下「特許権者」という。)により訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)及び意見書の提出がされ、同年 5月 1日付け通知書により訂正請求があった旨が通知され、同年同月30日に申立人により意見書の提出がされたものである。
2 訂正の適否についての判断
(1)本件訂正請求による訂正の内容は、アないしエのとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「乳蛋白質/乳化剤の質量比が0.2~5.0である、ゲル化食品用粉末油脂。」と記載されているのを、「乳蛋白質/乳化剤の質量比が0.2~5.0であり、前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステルであり、該グリセリン脂肪酸エステルの含有量が1.6質量%以下である、ゲル化食品用粉末油脂。」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び4も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3のいずれか一項に記載のゲル化食品用粉末油脂を含有するゲル化食品。」と記載されているのを、「請求項1又は2に記載のゲル化食品用粉末油脂を含有するゲル化食品。」に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から3のいずれか一項に記載のゲル化食品用粉末油脂を用いて、ゲル化食品の保形性を向上させる方法。」と記載されているのを、「油脂、乳蛋白質および乳化剤を含有する粉末油脂であって、乳蛋白質/油脂の質量比が0.033~0.250であり、前記乳蛋白質の含有量が5.56質量%以下であり、乳蛋白質/乳化剤の質量比が0.2~5.0であるゲル化食品用粉末油脂を用いて、ゲル化食品の保形性を向上させる方法。」に訂正する。
なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-5〕に対して請求されたものである。また、特許権者は、訂正後の請求項5について、訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1による請求項1の訂正は、乳化剤の種類及び含有量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件特許の明細書には、乳化剤の種類及び含有量について「乳化剤は、…グリセリン脂肪酸エステル、…などを用いることができる。これらの中でも、…グリセリン脂肪酸エステル、…が好ましく考慮される。」(段落【0028】)と記載され、また、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルのみを用いた実施例1、2及び4ないし6における含有量は、1.0ないし1.6質量%の範囲であるから(段落【0062】表1)、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、この訂正は、「乳化剤」という発明特定事項を概念的により下位の「グリセリン脂肪酸エステル」とし、かつ、その含有量を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2及び4についての訂正も、同様である。
イ 訂正事項2について
訂正事項2による請求項3の訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とすること、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しないことは、いずれも明らかである。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3による請求項4の訂正は、訂正事項2による請求項3の削除に伴い、請求項4が請求項3を引用しないようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮、又は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、この訂正は、引用する請求項の一部を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しないことは、いずれも明らかである。
エ 訂正事項4について
訂正事項4による請求項5の訂正は、訂正前の請求項5が請求項1ないし3の引用形式であったものを、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めたものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、この訂正は、引用する請求項の一部を削除し、かつ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しないことは、いずれも明らかである。
(3)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、全請求項(請求項1ないし5)に対してされているので、訂正後の請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかを確認する必要はない。
(4)訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1ないし4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号を目的とし、かつ、同条第9項で準用する第126条第5項、第6項の規定に適合する。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求による訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、5について訂正することを認める。
3 本件特許発明
上記2のとおり訂正することを認めるので、本件訂正請求により訂正された請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
油脂、乳蛋白質および乳化剤を含有する粉末油脂であって、乳蛋白質/油脂の質量比が0.033~0.250であり、前記乳蛋白質の含有量が5.56質量%以下であり、乳蛋白質/乳化剤の質量比が0.2~5.0であり、前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステルであり、該グリセリン脂肪酸エステルの含有量が1.6質量%以下である、ゲル化食品用粉末油脂。
【請求項2】
前記乳蛋白質の含有量が4.61質量%以下である請求項1に記載のゲル化食品用粉末油脂。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
請求項1又は2に記載のゲル化食品用粉末油脂を含有するゲル化食品。
【請求項5】
油脂、乳蛋白質および乳化剤を含有する粉末油脂であって、乳蛋白質/油脂の質量比が0.033~0.250であり、前記乳蛋白質の含有量が5.56質量%以下であり、乳蛋白質/乳化剤の質量比が0.2~5.0であるゲル化食品用粉末油脂を用いて、ゲル化食品の保形性を向上させる方法。」
4 特許異議申立理由の概要
(1)令和 4年10月 5日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
ア 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1、2、4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
イ 申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前ににその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)証拠方法は次のとおりである(表記は、おおむね申立書の記載にしたがった。以下、順に「甲1」ないし「甲3」という。)。
ア 甲第1号証 :伊藤隆史(ミヨシ油脂株式会社)「粉末油脂の食品加工における役割と機能」;月刊フードケミカル2009年12月号 第67頁から第71頁
イ 甲第2号証 :特開2000-135070号公報
ウ 甲第3号証 :特開昭58-183038号公報
5 取消理由の概要
令和 5年 2月16日付け取消理由通知書により通知された取消理由の概要は次のとおりである。なお、取消理由1は申立理由1と同旨であり、取消理由2は、申立理由2の一部に相当する。
ア 取消理由1(甲1に基づく新規性)
本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるかから、本件特許の請求項1、2及び4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
イ 取消理由2(甲1に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の優先日前に当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 当審の判断
(1)取消理由1・申立理由1(甲1に基づく新規性)について
ア 甲1の記載事項、甲1に記載された発明
(ア)甲1は、「粉末油脂の食品加工における役割と機能」と題する論文であって、申立書にも摘記のとおり、次の記載がある。
・摘記1a(第67頁右欄第8行ないし第10行、表1)
「粉末油脂とは,『油脂を水に溶けやすくするため、粉末状に加工したもの』である。表1に当社の粉末油脂の一般組成を示す。」
「
[図:0001401660000001.jpg]
」
・摘記1b(第70頁左欄第1行ないし第15行)
「(2)ゲル化食品への粉末油脂の効果
ゲル化食品とは,寒天やゼラチン,ガム質などの多糖類を使用し固めたプリンやゼリーなどで,介護食には欠かせないものである。
こうしたゲル化食品に,粉末油脂を配合すると無数の微細な油滴(約1μm)が食品中に分散してゲル化の網目構造をもろくするために,ゲル化製品がやわらかくなる。また,油脂の効果でなめらかで口溶けの良い物性となる。ゲル化食品を軟化させるには,通常ゲル化剤の添加量を減らすなどの手法が取られるが,減らしすぎれば保水できず離水が起きてしまうという問題が出てくる。粉末油脂であれば,ゲル化剤の添加量を減らさずに軟化できるので離水させずにやわらかなプリンやゼリーを作ることができる。」
・摘記1c(第70頁左欄第23行ないし第32行、図3)
「図3に市販の「プリンの素」を使用した荷重-歪率曲線を示す。このプリンの素はゲル化剤として,ゼラチン,寒天,増粘多糖類が入っており,1袋に対し牛乳を加え加熱後,容器に分注して冷却する方法でプリンを作成する。最大荷重が大きい方が粉末油脂無添加のものであり,低い方が粉末油脂を外掛けで添加したものである。
粉末油脂を添加したプリンは,白度が向上し光沢があり,なめらかで口溶け感が良いものになる。冷却後,離水も起こしていない。」
「
[図:0001401660000002.jpg]
」
・摘記1d(第71頁左欄第14行ないし第21行)
「(4)介護食品への粉末油脂の利用メリット
以下に、介護食品の開発において粉末油脂を利用した場合のメリットを挙げる。
○1(当審注:丸囲み1を表す。以下同様。)少量の添加で食品に高いカロリーを付与できる…(中略)…
○2ゲル化食品の網目構造を弱くし(ゲル化阻害)、食品を軟化させ、なめらかな物性を付与できる。」
(イ)上記(ア)の摘記(特に、摘記事項1aの表1)よりみて、甲1には、次の発明が記載されているといえる。
<甲1発明A>
「食用油脂71.5%、コーンシロップ21.5%、カゼインナトリウム3.5%、乳化剤1.5%、酸化防止剤0.01%以下、水分2.0%以下であるゲル化食品用粉末油脂。」
<甲1発明B>
「甲1発明Aを使用したゲル化食品。」
イ 本件特許発明1と甲1発明Aを対比する。
(ア)甲1発明Aの「カゼインナトリウム」は、本件特許の明細書の段落【0025】において、本件特許発明1における「乳蛋白質」として例示されている化合物の一つであり、本件明細書の実施例においても利用されている化合物であって、その実施例においては、カゼインナトリウム中の乳蛋白質は92.1%とされている(【0062】の表1参照。)。
(イ)甲1発明Aのカゼインナトリウム中にも乳蛋白質を92.1%含有するとすれば、甲1発明Aにおいての乳蛋白質/油脂の質量比は、0.045(=(3.5×0.921)/71.5)であるから、本件特許発明1の「乳タンパク質/油脂の質量比が0.033~0.250」を満たす。
(ウ)また、甲1発明Aの乳蛋白質の含有量は、3.2%(=3.5×0.921)であるから、本件特許発明1の「乳蛋白質の含有量が5.56質量%以下」を満たす。
(エ)さらに、甲1発明Aの乳蛋白質/乳化剤の質量比は、2.2(=(3.5×0.921)/1.5)であるから、本件特許発明1の「乳蛋白質/乳化剤の質量比が0.2~5.0」を満たす。
ウ そうすると、本件特許発明1と甲1発明Aとは、
「油脂、乳蛋白質および乳化剤を含有する粉末油脂であって、乳蛋白質/油脂の質量比が0.033~0.250であり、前記乳蛋白質の含有量が5.56質量%以下であり、乳蛋白質/乳化剤の質量比が0.2~5.0である、ゲル化食品用粉末油脂。」
点で一致するが、乳化剤に関して、本件特許発明1は「1.6質量%以下」の「グリセリン脂肪酸エステル」であるのに対し、甲1発明Aは、乳化剤の含有量は「1.5%」であるが、その成分が不明である点で相違する。
そして、当該相違点は実質的なものであるから、本件特許発明1は甲1発明Aであるとはいえない。
エ 本件特許発明2及び4について
(ア)本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであるから、甲1発明Aと対比すると、上記エと同様の点で相違する。
そして、当該相違点は実質的なものであるから、同様の理由により、本件特許発明2は甲1発明Aであるとはいえない。
(イ)本件特許発明4は、請求項1を直接又は間接的に引用して、ゲル化食品を特定するものであるから、甲1発明Bと対比すると、上記エと同様の点で相違する。
そして、当該相違点は実質的なものであるから、同様の理由により、本件特許発明4は甲1発明Bであるとはいえない。
オ 取消理由1・申立理由1(甲1に基づく新規性)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2及び4は、甲1に記載された発明であるとはいえないので、特許法第29条第1項第3号に該当せず、よって、同法第113条第2号に該当しないから、取消理由1・申立理由1(甲1に基づく新規性)を根拠として本件特許の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
(2)取消理由2・申立理由2(甲1に基づく進歩性)について
ア 本件特許発明1と甲1発明Aを対比すると、両者は、上記(1)ウのとおり、乳化剤に関して、本件特許発明1は「1.6質量%以下」の「グリセリン脂肪酸エステル」であるのに対し、甲1発明Aは、乳化剤の含有量は「1.5%」であるが、その成分が不明である点で相違する。
イ 上記相違点について検討すると、甲1は、粉末油脂の一般組成として「1.5%」の「乳化剤」が記載されるに留まるものである。
そして、数多くの乳化剤の中から、特定成分である「グリセリン脂肪酸エステル」を選択し採用することは、甲1にはもちろん、他の甲号証のいずれにも記載ないし示唆されておらず、積極的な動機づけが見いだせない。
そして、本件特許発明1は、乳化剤として「1.6質量%以下」の「グリセリン脂肪酸エステル」を用いることにより、本件特許の明細書に記載されるとおり、ゲル化食品の保形性を向上させつつ、飲み込み易い食感を付与することのできるゲル化食品用粉末油脂およびこれを用いたゲル化食品が実現される(段落【0014】)という、格別かつ顕著な効果を奏するものである。
ウ 本件特許発明2及び4について
(ア)本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであるから、甲1発明Aと対比すると、上記アと同様の点で相違する。
そして、当該相違点の判断は上記イのとおりであるから、同様の理由により、本件特許発明2は甲1発明Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明4は、請求項1を直接又は間接的に引用して、ゲル化食品を特定するものであるから、甲1発明Bと対比すると、上記アと同様の点で相違する。
そして、当該相違点の判断は上記イのとおりであるから、同様の理由により、本件特許発明4は甲1発明Bに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
エ 申立人の主張について
申立人は、令和 5年 5月30日提出の意見書において、本件特許の明細書の記載からは、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルを含むことで得られる効果は、乳化安定性の向上という当然のことであり、当業者が予測できないような効果が得られているわけではなく、また、本件特許の明細書には、グリセリン脂肪酸エステルが他の乳化剤と比べて顕著な効果を奏することについての記載も示唆もされていない旨主張する。
そこで検討するに、本件特許の明細書の段落【0062】表1には、乳化剤として「1.6質量%以下」の「グリセリン脂肪酸エステル」を用いていない実施例9及び10(いずれもグリセリン脂肪酸エステルを過剰に含み、また、グリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤を含む。)では、「20℃、3時間」の「保形性」の評価が「◯」になっていて、「1.6質量%以下」の「グリセリン脂肪酸エステル」を用いた場合の同評価が「◎」になっているのとは対照的である。
よって、本件特許の明細書には、「1.6質量%以下」の「グリセリン脂肪酸エステル」を用いることにより、保形性に係る効果を確認することができるといえるから、申立人の上記主張は採用できない。
オ 取消理由2・申立理由2(甲1に基づく進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2及び4は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないので、特許法第29条第2項に該当せず、よって、同法第113条第2号に該当しないから、取消理由2・申立理由2(甲1に基づく進歩性)を根拠として本件特許の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
(3)申立理由2の一部(本件特許発明5の甲1に基づく進歩性)について
ア 本件特許発明5は、上記3のとおりの「ゲル化食品の保形性を向上させる方法」に係るものである。
イ これに対し、甲1の記載事項は、上記6(1)アの各摘記事項のとおりであるところ、引用発明として「ゲル化食品の保形性を向上させる方法」なる発明を認定することができない。
ウ そうすると、本件特許発明5は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないので、特許法第29条第2項に該当せず、よって、同法第113条第2号に該当しないから、取消理由2の一部(本件特許発明5の甲1に基づく進歩性)を根拠として本件特許の請求項5に係る特許を取り消すことはできない。
6 まとめ
以上のとおり、取消理由及び特許異議申立理由によって本件特許の請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すことはできず、また、他に本件特許の請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項3に係る特許は訂正によって削除されたから、請求項3に係る特許に対する特許異議の申立ては、その対象が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700978