特許異議申立
2023-701057
撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法
- 審判番号
- 2023-701057
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-245421
- 登録番号
- 7252757
- 請求日
- 2023年10月04日
- 審決日
- 2025年07月30日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日華化学株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】酒巻 順一郎
- 【異議申立人】竹口 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 光本 美奈子
- 分類
- P1651.113-YB (C09K) / P1651.121-YB (C09K) / P1651.536-YB (C09K) / P1651.537-YB (C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7252757号発明「撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7252757号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7252757号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年12月27日に出願され、令和5年3月28日に特許権の設定登録がされ、同年4月5日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年10月4日に特許異議申立人である竹口美穂(以下「申立人」という。)により、請求項1~4に係る特許について特許異議の申立てがされ、当審合議体から令和6年5月29日付けで取消理由を特許権者に通知したところ、同年7月29日に特許権者から訂正の請求(以下この請求を「本件訂正請求」といい、この請求による訂正を「本件訂正」という。)がされると共に意見書が提出され、同年9月9日に申立人より意見書が提出された。
その後、当審合議体から令和7年1月29日付けで訂正拒絶理由通知を特許権者に通知したところ、当該通知に対しての特許権者からの応答はなく、令和7年3月26日付けで取消理由(決定の予告)を特許権者に通知したところ、同年5月27日に特許権者から意見書及び実験成績証明書が提出された。これに対し、同年6月26日に申立人から上申書が提出された。
第2 本件訂正についての判断
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7252757号の明細書を、本訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正事項
本件訂正は次の訂正事項からなる。下線は、訂正箇所であり、合議体が付した。
願書に添付した明細書の段落【0213】の、
「・・・結果を表3~5に示す。
5:明瞭な爪痕が認められる
4:爪痕が認められる
3:少し爪痕が認められる
2:殆ど爪痕が認められない
1:爪痕が全くない」とあるのを、
「・・・結果を表3~5に示す。」に訂正する。
3 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~4のうち、請求項2~4は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項であるから、本件訂正前の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
また、上記訂正事項に係る訂正は、願書に添付した明細書を訂正するものであるが、いずれも上記の一群の請求項に関係し、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われるものである。
(2)訂正の目的
ア 明瞭でない記載の釈明を目的とするものか否か
(ア)前提
「明瞭でない記載の釈明」とは、それ自体意味の不明瞭な記載、又は、他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることをいう。
(イ)判断
訂正前の明細書の段落【0213】の1~5は、同段落【0214】~【0216】の【表3】~【表5】に記載される実施例1~15及び比較例1~9の撥水剤組成物に、染色を行ったポリエステル100%布を浸漬処理した後、130℃で2分間乾燥し、更に170℃で30秒間熱処理した加工布表面を爪でひっかき、目視により評価した際の爪痕の状態を5段階に区分して記載するものである。当該区分は数字が大きい程悪い評価であることを定義するものであるから、【表3】~【表5】の実施例及び比較例の撥水剤組成物の耐チョークマーク性の評価は、実施例の方が比較例に対して総じて悪い評価となっている。一方、【表3】~【表5】は、耐チョークマーク性の他に、撥水剤組成物の撥水性評価、風合評価、耐久撥水性評価、コーティングに対する剥離強度、及び、はじき性評価についても記載するものであり、耐チョークマーク性以外の評価では一貫して、数字が大きなものが良い評価、数字が小さなものが悪い評価とされている。また、本件明細書の段落【0007】、【0011】、【0018】には、本件発明は、耐チョークマーク性の高い撥水剤組成物を提供するものである旨の記載がなされている。
そうしてみると、訂正前の明細書の段落【0213】の爪痕に関する1~5の区分は、訂正前の明細書の他の記載との間に不合理を生じていると認識し得るとしても、チョークマーク評価の1~5の区分が本来どのような意味であったかを明らかにする記載は訂正前の明細書になされていない。そして、上記訂正事項により、訂正前の明細書の段落【0213】に記載されたチョークマーク評価の1~5の各数値の評価基準の説明を削除する結果、訂正後の明細書の【表3】~【表5】に「チョークマーク(ポリエステル)」と表示された行に記載された1~5の数値は、どのような評価基準に基づく数値なのかが不明瞭となっている。
したがって、上記訂正事項は、明細書に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものとはいえない。
よって、上記訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものではない。
イ 誤記の訂正を目的とするものか否か
(ア)前提
「誤記の訂正」とは、本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面などの記載から明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。
(イ)判断
上記訂正事項において、訂正前の記載は、チョークマーク評価の1~5の各数値に、評価基準の説明が付されたものであり、訂正後の記載は、当該評価基準についての説明が削除されたものであるところ、評価基準についての説明を削除したものが、削除する前のものと同一の意味でないことは明らかであるから、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められない。
したがって、上記訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものとは認められない。
ウ その他の目的に該当するか否か
上記訂正事項は、明細書を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的としないものであることは明らかである。
4 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる各号のいずれも目的とするものではないため、本件訂正は認められない。
第3 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項番号にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということもある。)。
「【請求項1】
下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A1)に由来する構成単位及び下記一般式(A-2)で表される化合物(A2)に由来する構成単位を含有する非フッ素系ポリマー(α)と、
シリコーン樹脂(β)と、
を含み、
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(A1)と前記化合物(A2)との合計質量が、前記非フッ素系ポリマー(α)を構成する単量体成分の全量に対して、60~100質量%であり、
前記非フッ素系ポリマー(α)の質量及び前記シリコーン樹脂(β)の質量の比率(α)/(β)が、15/85~85/15である、撥水剤組成物。
【化1】
[図:0001425710000001.jpg]
[式(A-1)中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は置換基を有していてもよい炭素数12~30の1価の炭化水素基を表す。]
【化2】
[図:0001425710000002.jpg]
[式(A-2)中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数1~6の2価の炭化水素基を表し、Zはエステル基またはアミド基を表し、Wは-CO-R13(式中、R13は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す)で表される基、-NH-CO-NH2で表される基、又は下記式(A-3)で表される基を表す。
【化3】
[図:0001425710000003.jpg]
]
【請求項2】
前記非フッ素系ポリマー(α)が、塩化ビニル及び塩化ビニリデンのうち少なくとも1種の単量体(VC)に由来する構成単位を更に含有する、請求項1に記載の撥水剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の撥水剤組成物が付着した繊維製品からなる、撥水性繊維製品。
【請求項4】
繊維製品を、請求項1又は2に記載の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程、を備える、撥水性繊維製品の製造方法。」
第4 特許異議の申立ての理由及び証拠方法
申立人は、下記1~4の特許異議申立の理由(以下「申立理由1」~「申立理由4」ともいう。)を主張し、下記5の甲第1号証~甲第9号証(以下番号順に「甲1」等ともいう。)を提出した。
1 申立理由1(甲1に基づく新規性及び進歩性)
(1) 新規性
本件発明1~4は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2) 進歩性
本件発明1~4は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(甲1、甲2、甲4~甲6に基づく進歩性)
本件発明1~4は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明、並びに、甲1、甲2及び甲4~甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(甲7、甲2~甲6に基づく進歩性)
本件発明1~4は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲7に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
4 申立理由4(サポート要件)及び申立理由5(実施可能要件)
下記(1)及び(2)の理由から、本件発明1~4の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本件特許の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(1) 本件明細書の段落【0213】の記載を参酌すると、最も耐チョークマーク性が悪い場合を「5」とし、最も耐チョークマーク性がよい場合を「1」としているが、実施例には、耐チョークマーク性が悪い「4」、「5」の評価のものが含まれている。また、耐チョークマーク性を向上させることを解決するためには、撥水剤組成物が含まれる処理液の濃度が低いことが必須の要件として要請されるべきところ、本件発明1~4にはそれが規定されていない。
(2) 耐久撥水性の効果について、架橋剤を併用しない場合の効果は実施例で裏付けられていないし、架橋剤をどの程度含有させると、耐久撥水性と風合いとを両立できるかについて、発明の詳細な説明から当業者が認識できない。
5 証拠方法の一覧
申立人は、次の甲1~甲9を提出した。
甲1:特開2018-95879号公報
甲2:特開2017-155095号公報
甲3:特開2018-119250号公報
甲4:国際公開第2018/054712号
甲5:SILTECH CORPORATION「Silwax(R)D222」TECHNICAL DATA SHEET、2009年9月、検索日2023年9月6日、インタ-ネット<URL:https://www.siltech.com/wp-content/uploads/2017/11/TP5028.pdf>
甲6:SILTECH CORPORATION「Alkyl Silicones」パンフレット、2008年、検索日2023年6月5日、インタ-ネット<URL:http://www.scientificspectator.com/documents/silicone%20spectator/Siltech%20Alkyl%2OSilicone%20Brochure.pdf>
甲7:特開2018-104632号公報
甲8:特表2019-534908号公報
甲9:SILTECH CORPORATIONのウェブペ-ジ、検索日2023年9月6日、インタ-ネット<https://www.siltech.com/products/alkylated-silicones-si1wax/#Si1waxD222>
第5 取消理由及び取消理由(決定の予告)の概要
請求項1~4に係る特許に対して通知した取消理由及び取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである(前記第4 3の申立理由3に相当)。
本件発明1~4は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲7に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
合議体は、技術常識を示すための文献として、以下の参考文献を提示した。
参考文献1:特開2013-155459号公報
参考文献2:特開2017-145521号公報
第6 甲各号証及び参考文献の記載
1 文献等の記載
(1)甲7の記載
甲7には、次の記載がある。
「【請求項1】
(A)非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単
位を有する非フッ素重合体、
(B)融点52~88℃を有するワックス、
(C)水性媒体、および
(D)乳化剤
を含んでなる水性分散液である撥水撥油剤であって、
非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体が式:
CH2=CA11-C(=O)-O-A12
[式中、A11は、水素原子またはメチル基であり、
A12は、炭素数18~30の直鎖または分岐の炭化水素基である。]
で示される化合物であり、
乳化剤がソルビタンエステルおよび他の乳化剤を含んでなり、乳化剤の親水性親油性バランス(HLB)が7.5~13.5である撥水撥油剤。
・・・
【請求項3】
非フッ素重合体が、ハロゲン化オレフィンから誘導された繰り返し単位をさらに有する請求項1または2に記載の撥水撥油剤。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、非フッ素重合体および高分子界面活性剤を含む表面処理剤に関する。具体的には、本発明は、繊維製品(例えば、カーペット)、紙、不織布、石材、静電フィルター、防塵マスク、燃料電池の部品に、優れた撥水性、防汚性を付与できる。」
「【発明の効果】
【0009】
本発明の表面処理剤(撥水撥油剤)は、粒子の沈降が起こらず、ロールにポリマーが付着して生地汚れが生じることがない。
本発明によれば、優れた撥水性、防汚性および汚れ脱離性、例えば、撥水性の優れた耐久性が得られる。
さらに、チョーク性および風合いが良好である。
本発明の表面処理剤は、撥水剤、防汚剤として使用できる。」
「【0015】
(A)非フッ素重合体
非フッ素重合体は、フッ素原子を含まない。非フッ素重合体は、含フッ素単量体、例えば、フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体を含まない。非フッ素重合体は、非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位を有する重合体である。
【0016】
本発明において、非フッ素重合体(A)は、(A1)非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位のみからなってよいが、繰り返し単位(A1)に加えて、
(A2)非フッ素非架橋性単量体から誘導された繰り返し単位および(A3)非フッ素架橋性単量体から誘導された繰り返し単位の一方または両方を有することが好ましい。
【0017】
(A1)非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体
非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体は、式:
CH2=CA11-C(=O)-O-A12
[式中、A11は、水素原子またはメチル基であり、A12は、炭素数18~30の直鎖または分岐の炭化水素基である。]で示される化合物である。
非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体は、フルオロアルキル基を有しない。非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体は、フッ素原子を含有してもよいが、フッ素原子を含有しないことが好ましい。
A11は、水素原子であることが好ましい。
A12は、直鎖状または分岐状の炭化水素基である。直鎖状または分岐状の炭化水素基は、特に直鎖状の炭化水素基であってよい。直鎖状または分岐状の炭化水素基は、炭素数が18~30である。直鎖状または分岐状の炭化水素基は、炭素数18~28、特に18または22であることが好ましく、一般に飽和の脂肪族炭化水素基、特にアルキル基であることが好ましい。
【0018】
非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体の好ましい具体例は、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートである。ステアリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体が存在することにより、非フッ素重合体が与える撥水性、撥油性および風合いが高くなる。」
「【0027】
非フッ素非架橋性単量体(A2)はハロゲン化オレフィンであってもよい。ハロゲン化オレフィンは、1~10の塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されている炭素数2~20のハロゲン化オレフィンであってよい。ハロゲン化オレフィンは、炭素数2~20の塩素化オレフィン、特に1~5の塩素原子を有する炭素数2~5のオレフィンであることが好ましい。ハロゲン化オレフィンの好ましい具体例は、ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、例えば塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデンである。
【0028】
(A3)非フッ素架橋性単量体
非フッ素重合体は、非フッ素架橋性単量体(A3)から誘導された繰り返し単位を有していてよい。非フッ素架橋性単量体(A3)は、フッ素原子を含まない単量体である。非フッ素架橋性単量体(A3)は、少なくとも2つの反応性基および/またはエチレン性不飽和二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。非フッ素架橋性単量体(A3)は、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、などである。
【0029】
非フッ素架橋性単量体(A3)としては、例えば、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレン、ク
ロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
【0030】
非フッ素非架橋性単量体(A2)および/または非フッ素架橋性単量体(A3)を共重合させることにより、撥水撥油性や防汚性およびこれらの性能の耐クリ-ニング性、耐洗濯性、溶剤への溶解性、硬さ、感触などの種々の性質を必要に応じて改善することができる。」
「【0032】
(B)ワックス
ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、動植物蝋、および鉱物蝋などが挙げられる。パラフィンワックスが好ましい。ワックスを構成する化合物の具体例は、ノルマルアルカン(例えば、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、トリトリアコンタン、テトラトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサトリアコンタン)、ノルマルアルケン(例えば、1-エイコセン、1-ドコセン、1-トリコセン、1-テトラコセン、1-ペンタコセン、1-ヘキサコセン、1-ヘプタコセン、1-オクタコセン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、トリトリアコンタン、テトラトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサトリアコンタン)である。ワックスを構成する化合物の炭素数は、20~60、例えば、25~45であることが好ましい。ワックスの分子量は、300~700であることが好ましい。
・・・
【0034】
ワックス(B)の量は、非フッ素重合体(A)100重量部に対して、1~200重量部、5~150重量部であることが好ましい。
あるいは、撥水撥油剤において、非フッ素重合体(A)とワックス(B)の重量比は、30/70~95/5、例えば40/80~90/10であってよい。
」
「【0063】
(E)他の成分
表面処理剤は、非フッ素重合体、ワックス、水性媒体および乳化剤以外の他の成分として、添加剤を含有してもよい。
添加剤の例は、含ケイ素化合物、アクリルエマルションなどである。添加剤の他の例は、乾燥速度調整剤,架橋剤,造膜助剤,相溶化剤,界面活性剤,凍結防止剤,粘度調整剤,紫外線吸収剤,酸化防止剤,pH調整剤,消泡剤,風合い調整剤,すべり性調整剤,帯電防止剤,親水化剤,抗菌剤,防腐剤,防虫剤,芳香剤,難燃剤等である。
他の成分の量は、表面処理剤に対して、20重量%以下、例えば0.1~10重量%であってよい。」
「【0072】
本発明の処理剤は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、該処理剤を有機溶媒または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤(例えば、ブロックドイソシアネート)と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、本発明の処理剤に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などを添加して併用することも可能である。基材と接触させる処理液における撥水撥油性重合体の濃度は0.01~10重量%(特に、浸漬塗布の場合)、例えば0.05~10重量%であってよい。
【0073】
本発明の処理剤(例えば、撥水撥油剤)で処理される被処理物としては、繊維製品、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極およびガス拡散支持体)、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスターなどを挙げることができる。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。
【0074】
繊維製品は、繊維、布等の形態のいずれであってもよい。
本発明の処理剤は、内部離型剤あるいは外部離型剤としても使用できる。
【0075】
撥水撥油性重合体は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品など)に適用することができる。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着または噴霧してよい。処理された繊維製品は、撥油性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、100℃~200℃で加熱される。
【0076】
あるいは、撥水撥油性重合体はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法などにおいて繊維製品に適用してよい。
【0077】
処理される繊維製品は、典型的には、布であり、これには、織物、編物および不織布、衣料品形態の布およびカーペットが含まれるが、繊維または糸または中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸など)であってもよい。繊維製品材料は、天然繊維(例えば、綿または羊毛など)、化学繊維(例えば、ビスコースレーヨンまたはレオセルなど)、または、合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミドまたはアクリル繊維など)であってよく、あるいは、繊維の混合物(例えば、天然繊維および合成繊維の混合物など)であってよい。本発明の撥水撥油性重合体は、セルロ-ス系繊維(例えば、綿またはレーヨンなど)を疎油性および撥油性にすることにおいて特に効果的である。また、本発明の方法は一般に、繊維製品を疎水性および撥水性にする。
・・・
【0079】
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。」
「【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下において、部または%または比は、特記しない限り、重量部または重量%または重量比を表す。
試験の手順は次のとおりである。
【0081】
スプレー撥水性試験
処理剤分散液を固形分濃度が1.5重量%になるよう水道水により希釈した試験溶液を調製し、綿ツイル布をこの試験溶液に浸してからマングルに通し、160℃で2分間、熱処理した試験布で撥水性を評価した。JIS-L-1092(AATCC-22)のスプレー法に準じて処理布の撥水性を評価した。下記に記載する表1に示されるように撥水性No.によって表す。点数が大きいほど撥水性が良好なことを示し、状態によっては中間値(95、85、75)をつける。
【0082】
【表1】
[図:0001425710000004.jpg]
【0083】
漏水量試験
処理剤分散液を固形分濃度が1.5重量%になるよう水道水により希釈した試験溶液を調製し、ポリエステルタフタ布をこの試験溶液に浸してからマングルに通し、160℃で2分間、熱処理した試験布を作成した。JIS-L-1092(C)法に記載のブンデスマン試験にしたがって、降雨量を80cc/分、降雨水温を20℃、降雨時間を10分とする条件で降雨させ、漏水量(mL)を測定した。
【0084】
機械的安定性試験
処理剤分散液を水道水で1%に希釈し、これをホモミキサーで3,000rpm×10分撹拌し、発生したスカムを黒の綿布に濾過した。
◎: スカムが全くない
○: スカムが僅かにある
△: スカムがある
×: スカムが多い
【0085】
風合い試験
手触りにより試験布の風合いを評価した。
◎: 非常にやわらかい
○: やわらかい
△: やや硬い
×: 硬い
【0086】
チョークマーク試験
重合体分散液を固形分濃度が1.5重量%になるよう水道水により希釈した試験溶液を調製し、ポリエステルタフタ布(灰色)をこの試験溶液に浸してからマングルに通し、160℃で2分間、熱処理した試験布を作成した。作成した試験布を平らな場所に置き、試験布の表面を爪で軽く掻き、チョーク様に残る爪で掻いた軌跡を目視判定評価した。
◎: 軌跡が全くない
○: 軌跡が薄く見える
△: 軌跡が見える
×: 軌跡が濃く見える」
「【0090】
製造例A4
1Lオートクレーブにステアリルアクリレート=150g、ジアセトンアクリルアミド=4g、純水=360g、トリプロピレングリコール=60g、ソルビタンモノステアレート(HLB4.7)=4g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO20)(HLB16.5)=12g、ラウリルメルカプタン=1.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。オートクレーブ内を窒素置換後、塩化ビニル50gを圧入で仕込み、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩=2.0gを添加し、60℃で3時間反応させ、重合体の水性分散液(平均HLB13.6)を得た。更に純水で固形分濃度を30%に調整した。生成重合体の単量体組成は、単量体仕込み組成にほぼ一致した。
【0091】
製造例A5
1Lオートクレーブにステアリルアクリレート=150g、ジアセトンアクリルアミド=4g、純水=360g、トリプロピレングリコール=60g、ソルビタンモノステアレート(HLB4.7)=12g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO50)(HLB17.8)=5g、ラウリルメルカプタン=1.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させたオートクレーブを窒素置換後、塩化ビニル50gを圧入で仕込み、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩=2.0gを添加し、60℃で3時間反応させ、重合体の水性分散液(平均HLB8.6)を得た。更に純水で固形分濃度を30%に調整した。生成重合体の単量体組成は、単量体仕込み組成にほぼ一致した。
【0092】
製造例A6
1Lオートクレーブにステアリルアクリレート=150g、ジアセトンアクリルアミド=4g、純水=360g、トリプロピレングリコール=60g、ソルビタンモノパルミテート(HLB6.7)=12g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO50)(HLB17.8)=5g、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド=1g、ラウリルメルカプタン=1.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。オートクレーブ内を窒素置換後、塩化ビニル50gを圧入で仕込み、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩=2.0gを添加し、60℃で3時間反応させ、重合体の水性分散液(平均HLB10.0)を得た。更に純水で固形分濃度を30%に調整した。生成重合体の単量体組成は、単量体仕込み組成にほぼ一致した。
【0093】
製造例A7
1Lオートクレーブにステアリルアクリレート=150g、ジアセトンアクリルアミド=4g、純水=360g、トリプロピレングリコール=60g、ソルビタンモノステアレート(HLB4.7)=12g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO20)(HLB16.5)=5g、ラウリルメルカプタン=1.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。オートクレーブ内を窒素置換後、塩化ビニル50gを圧入で仕込み、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩=2.0gを添加し、60℃で3時間反応させ、重合体の水性分散液(平均HLB8.2)を得た。更に純水で固形分濃度を30%に調整した。生成重合体の単量体組成は、単量体仕込み組成にほぼ一致した。
【0094】
製造例A8
1Lオートクレーブにステアリルアクリレート=150g、ジアセトンアクリルアミド=4g、純水=360g、トリプロピレングリコ-ル=60g、ソルビタンモノラウレート(HLB8.6)=12g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO50)(HLB17.8)=5g、ラウリルメルカプタン=1.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。オートクレーブ内を窒素置換後、塩化ビニル50gを圧入で仕込み、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩=2.0gを添加し、60℃で3時間反応させ、重合体の水性分散液(平均HLB11.3)を得た。更に純水で固形分濃度を30%に調整した。生成重合体の単量体組成は、単量体仕込み組成にほぼ一致した。
【0095】
製造例A9
1Lオートクレーブにステアリルアクリレート=150g、ジアセトンアクリルアミド=4g、純水=360g、トリプロピレングリコール=60g、ソルビタンモノステアレート(HLB4.7)=12g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO50)(HLB17.8)=5g、ラウリルメルカプタン=1.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。オートクレーブ内を窒素置換後、塩化ビニル50gを圧入で仕込み、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩=2.0gを添加し、60℃で3時間反応させ、重合体の水性分散液(平均HLB8.6)を得た。更に純水で固形分濃度を30%に調整した。生成重合体の単量体組成は、単量体仕込み組成にほぼ一致した。
【0096】
製造例A10
1Lオートクレーブにステアリルアクリレート=190g、ジアセトンアクリルアミド=4g、純水=360g、トリプロピレングリコール=60g、ソルビタンモノステアレート(HLB4.7)=10g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO50)(HLB17.8)=7g、ラウリルメルカプタン=1.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。オートクレーブ内を窒素置換後、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩=2.0gを添加し、60℃で3時間反応させ、重合体の水性分散液(平均HLB10.1)を得た。更に純水で固形分濃度を30%に調整した。生成重合体の単量体組成は、単量体仕込み組成にほぼ一致した。」
「【0103】
製造例B1
高圧反応容器にパラフィンワックス(融点66℃,針入度12(25℃))=150g、純水=350g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO7)(HLB10.7)=8.5g、ソルビタンモノステアレート(HLB4.7)=6.5gを入れて密封し、攪拌下に110-120℃に昇温後、高圧下で30分間高圧乳化し、ワックスの水性分散体(平均HLB8.1)を得た。更に純水で固形分を30%に調整した。
・・・
【0105】
製造例B3
高圧反応容器にパラフィンワックス(融点75℃,針入度6(25℃))=150gを使用した以外は、製造例B1と同様の方法にてワックスの水性分散体を得た。更に純水で固形分を30%に調整した。
【0106】
製造例B4
高圧反応容器にパラフィンワックス(融点82℃,針入度5(25℃))=150gを使用した以外は、製造例B1と同様の方法にてワックスの水性分散体を得た。更に純水で固形分を30%に調整した。
【0107】
製造例B5
高圧反応容器にパラフィンワックス(融点75℃,針入度6(25℃))=150g、純水=350g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO10)(HLB12.7)=12g、ソルビタンモノステアレート(HLB4.7)=3gを入れて密封し、攪拌下に110-120℃に昇温後、高圧下で30分間高圧乳化し、ワックスの水性分散体(平均HLB10.9)を得た。更に純水で固形分を30%に調整した。」
「【0114】
実施例1~12および比較例1~9
製造例で得られた重合体の水性分散液とワックスの水性分散液を混合して、処理剤水性分散液(撥水撥油剤)を製造し、試験を行った。試験の結果を表2に示す。表2における「平均HLB」は、処理剤水性分散液における乳化剤(すなわち、重合体の水性分散液とワックスの水性分散体における乳化剤)の加重平均HLBである。
【0115】
【表2】
[図:0001425710000005.jpg]
」
(2)甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】
非フッ素系撥水剤用の撥水助剤であって、下記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンを含む、撥水助剤。
【化1】
[図:0001425710000006.jpg]
[式(1)中、R20、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、R23は、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数3~22のアルキル基を表し、R30、R31、R32、R33、R34及びR35はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数1~4のアルコキシ基、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数3~22のアルキル基を表し、aは0以上の整数を表し、bは1以上の整数を表し、(a+b)は10~200であり、aが2以上の場合、複数存在するR20及びR21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数存在するR22及びR23はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
請求項1に記載の撥水助剤と、非フッ素系撥水剤とを含む、非フッ素系撥水剤組成物。
【請求項3】
前記非フッ素系撥水剤が、下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)に由来する構成単位を含有する非フッ素系ポリマーを含む、請求項2に記載の非フッ素系撥水剤組成物。
【化2】
[図:0001425710000007.jpg]
[式(A-1)中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は置換基を有していてもよい炭素数12以上の1価の炭化水素基を表す。]
・・・
【請求項9】
前記オルガノ変性シリコーンの含有量が、前記非フッ素系ポリマー100質量部に対して1~50質量部である、請求項3~8のいずれか一項に記載の非フッ素系撥水剤組成物。
【請求項10】
繊維製品を、請求項2~9のいずれか一項に記載の非フッ素系撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程、を備える、撥水性繊維製品の製造方法。」
「【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、非フッ素系撥水剤の耐久撥水性を向上させることができる撥水助剤及びそれを含む非フッ素系撥水剤組成物を提供することができる。
【0029】
また、本発明の非フッ素系撥水剤組成物は、フルオロアルキル基又はフッ素を有する化合物を含まない撥水剤組成物でありながらも優れた撥水性を示し、フッ素系撥水剤に代わるものとしての利用が可能であり、フッ素供給源や環境等への影響の懸念を解消することができる。なお、繊維製品等に撥水剤組成物を付着させた後は通常熱処理することが好ましいが、本発明の非フッ素系撥水剤組成物はフルオロアルキル基を有する単量体を用いていないため、130℃以下の温和な条件で熱処理した場合であっても高い撥水性を発揮させることができ、また、130℃を超える高温で熱処理した場合には、熱処理時間をフッ素系撥水剤の場合よりも短くすることできる。したがって、被処理物の熱による変質が抑えられるため、風合が柔軟となり、しかも熱処理にかかる熱量を削減できる等コスト面でも優れている。」
「【0061】
本実施形態にて使用される上記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)は、置換基を有していてもよい炭素数が12以上の1価の炭化水素基を有する。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。この場合、撥水性がより優れるものとなる。炭素数12以上の1価の炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基等のうちの1種以上が挙げられる。本実施形態では、上記一般式(A-1)において、R2は無置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0062】
上記炭化水素基の炭素数は、12~24であることが好ましい。炭素数が12未満であると、非フッ素系ポリマーを繊維製品等に付着させた場合、十分な撥水性を発揮できない。一方、炭素数が24を超えると、炭素数が上記範囲にある場合と比較して、非フッ素系ポリマーを繊維製品等に付着させた場合、繊維製品の風合が粗硬になる傾向にある。
【0063】
上記炭化水素基の炭素数は、12~21であることがより好ましい。炭素数がこの範囲である場合は、撥水性と風合が特に優れるようになる。炭化水素基として特に好ましいのは、炭素数が12~18の直鎖状のアルキル基である。
【0064】
上記(A)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコシル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸メリシルが挙げられる。」
「【0139】
また、本実施形態の非フッ素撥水剤組成物における上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンの配合量は、得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、非フッ素系ポリマー100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、3~30質量部であることがより好ましく、10~25質量部であることがさらに好ましい。」
「【実施例】
【0154】
以下に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0155】
<撥水助剤の調製>
(合成例1)
撹拌機、温度計、還流冷却機、窒素ガス導入管及び滴下ロートを備えた反応容器に、SiH基当量が63.2g/molであり、重合度が50であるメチルハイドロジェンシリコーン63.2gを入れ、窒素を流し、温度が65℃になるまで加熱しながら均一となるまで混合した。ヒドロシリル化触媒として、塩化白金(IV)のエチレングリコールモノブチルエーテル・トルエン混合溶液を、系内の反応物に対し白金濃度が5ppmとなるように添加した。反応物の温度が120℃となったところで、1モルの1-ドデセン168.3gを滴下し、120℃で6時間反応させた。付加反応完了の確認は、得られたオルガノ変性シリコーンのFT-IR分析を行い、メチルハイドロジェンシリコーンのSiH基由来の吸収スペクトルが消失したことを確認することで行った。こうして、上記一般式(1)におけるaが0、bが50、R22がメチル基、R23がドデシル基、R30、R31、R32、R33、R34及びR35がメチル基であるオルガノ変性シリコーンが得られた。さらに得られたオルガノ変性シリコーン20質量部に炭素数12~14の分岐高級アルコールのエチレンオキサイド9モル付加物3質量部を添加し、混合した。次いで、水77質量部を少量ずつ混合しながら添加し、水に乳化せしめて、シリコーン乳化物を得た。
【0156】
(合成例2)
1モルの1-ドデセン168.3gの代わりに、1モルの1-ヘキセン84.2gを用いたこと以外は合成例1と同様にしてオルガノ変性シリコーン及びシリコーン乳化物を得た。なお、オルガノ変性シリコーンは、上記一般式(1)におけるaが0、bが50、R22がメチル基、R23がヘキシル基、R30、R31、R32、R33、R34及びR35がメチル基であるオルガノ変性シリコーンが得られた。
【0157】
(合成例3)
1モルの1-ドデセン168.3gの代わりに、1モルの1-オクタデセン252.5gを用いたこと以外は合成例1と同様にしてオルガノ変性シリコーン及びシリコーン乳化物を得た。なお、オルガノ変性シリコーンは、一般式(1)のaが0、bが50、R22がメチル基、R23がオクタデシル基、R30、R31、R32、R33、R34及びR35がメチル基であるオルガノ変性シリコーンが得られた。
【0158】
(合成例4)
1モルの1-ドデセン168.3gの代わりに、0.5モルの1-ドデセン84.2g、及び、0.5モルのα-メチルスチレン59.1gを用いたこと以外は合成例1と同様にしてオルガノ変性シリコーン及びシリコーン乳化物を得た。なお、オルガノ変性シリコーンは、一般式(1)のaが0、bが50、R22がメチル基、R23がドデシル基又はメチルスチレン基、R30、R31、R32、R33、R34及びR35がメチル基であるオルガノ変性シリコーンが得られた。」
「【0164】
(合成例9)
500mLフラスコに、アクリル酸ステアリル60g、ノイゲンXL-100(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=14.7)2g、ノイゲンXL-60(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=12.5)2g、ステアリルジメチルアミン塩酸塩3g、トリプロピレングリコール25g及び水207.70gを入れ、45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを混合液に添加し、窒素雰囲気下で60℃にて6時間ラジカル重合させて、ポリマー濃度20質量%の非フッ素系ポリマー分散液を得た。
【0165】
(合成例10~36)
表1~6に記載の材料を用いた以外は、合成例9と同様に重合を行い、表7~10に示すポリマー濃度の非フッ素系ポリマー分散液をそれぞれ得た。」
「【0173】
<撥水剤組成物の調整>
(実施例1~37及び比較例1~9)
合成例1~8で得られた撥水助剤(シリコーン乳化物)と合成例9~36で得られたポリマー分散液とを表11~15に記載の質量比で混合し、撥水剤組成物とした。
【0174】
上記で得られた撥水剤組成物について評価を行った。
【0175】
(繊維製品の撥水性評価)
JIS L 1092(1998)のスプレー法に準じてシャワー水温を27℃として試験をした。本試験においては、染色を行ったポリエステル100%布又はナイロン100%布を、実施例及び比較例の撥水剤組成物をポリマーの含有量が3質量%となるように水で希釈した処理液に浸漬処理(ピックアップ率60質量%)した後、130℃で2分間乾燥し、更に表7~10に示すような条件で熱処理して、得られた布の撥水性を評価した。結果は目視にて下記の等級で評価した。なお、特性がわずかに良好な場合は等級に「+」をつけ、特性がわずかに劣る場合は等級に「-」をつけた。結果を表16~22に示す。
撥水性:状態
5:表面に付着湿潤のないもの
4:表面にわずかに付着湿潤を示すもの
3:表面に部分的湿潤を示すもの
2:表面に湿潤を示すもの
1:表面全体に湿潤を示すもの
0:表裏両面が完全に湿潤を示すもの
【0176】
(繊維製品の風合評価)
風合は、染色を行ったポリエステル100%布を、実施例及び比較例の撥水剤組成物をポリマーの含有量が3質量%となるように水で希釈した処理液に浸漬処理(ピックアップ率60質量%)した後、130℃で2分間乾燥し、更に170℃で30秒間熱処理したものを用いて評価した。結果はハンドリングにて下記に示す5段階で評価した。結果を表16~22に示す。
1:硬い ~ 5:柔らかい
【0177】
(繊維製品の耐久撥水性評価)
JIS L 1092(1998)のスプレー法に準じてシャワー水温を27℃として試験をした。本試験においては、染色を行ったポリエステル100%布を、ポリマーの含有量が3質量%、UNIKA RESIN 380-K(架橋剤、ユニオン化学工業株式会社製、トリメチロールメラミン樹脂)の含有量が0.3質量%及びUNIKA CATALYST 3-P(界面活性剤、ユニオン化学工業株式会社製、アミノアルコール塩酸塩)の含有量が0.2質量%となるように、実施例及び比較例の撥水剤組成物及び上記各薬剤を水で希釈した処理液に浸漬処理(ピックアップ率60質量%)した後、130℃で2分間乾燥し、更に170℃で60秒間熱処理して得られた布(L-0)、及びJIS L 0217(1995)の103法による洗濯を10回(L-10)行った後の布の撥水性を上記撥水性評価方法と同様に評価した。また、ナイロン100%布の場合も、熱処理温度を170℃から160℃に変えたこと以外は、ポリエステル100%布の場合と同様に評価した。結果を表16~22に示す。
【0178】
(繊維製品のコーティングに対する剥離強度)
JIS K 6404-5(1999)に準拠して試験を行った。本試験においては、染色を行ったナイロン100%布を、実施例及び比較例の撥水剤組成物をポリマー含有量が3質量%となるように水で希釈した処理液に、浸漬処理(ピックアップ率60質量%)した後、130℃で2分間乾燥し、更に160℃で30秒熱処理して得られたものを基布とした。その得られた基布に、熱圧着装置を用いて、ホットメルト接着テープ(サン化成株式会社製「MELCOテープ」)を150℃で1分間熱接着させ、基布とシームテープとの層間の剥離強度をオートグラフ(AG-IS、島津製作所(株)製)にて測定した。掴み具の移動速度を100mm/minで引っ張り、応力の平均値を剥離強度[N/inch]とした。結果を表16~22に示す。」
「【0179】
【表1】
[図:0001425710000008.jpg]
・・・
【0182】
【表4】
[図:0001425710000009.jpg]
」
「【0185】
【表7】
[図:0001425710000010.jpg]
」
「【0187】
【表9】
[図:0001425710000011.jpg]
」
「【0189】
【表11】
[図:0001425710000012.jpg]
」
「【0194】
【表16】
[図:0001425710000013.jpg]
【0195】
【表17】
[図:0001425710000014.jpg]
」
(3)甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
「【請求項1】
塩化ビニル及び塩化ビニリデンのうち少なくともいずれか1種の単量体(VC)に由来する構成単位を含有する非フッ素系ポリマーであって、該非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量を基準として前記単量体(VC)の含有割合が50質量%以上である非フッ素系ポリマー(α)と、
下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)に由来する構成単位を含有する非フッ素系ポリマーであって、該非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量を基準として前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)の含有割合が50質量%以上である非フッ素系ポリマー(β)、及び
/又は、シリコーン樹脂(γ)と、を含む、撥水剤組成物。
【化1】
[図:0001425710000015.jpg]
[式(A-1)中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は置換基を有していてもよい炭素数12~30の1価の炭化水素基を表す。]
・・・
【請求項5】
前記撥水剤組成物が前記非フッ素系ポリマー(β)を含み、
前記非フッ素系ポリマー(β)における前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)がアクリル酸エステル単量体(a1)とメタクリル酸エステル単量体(a2)とを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)に含まれる前記アクリル酸エステル単量体(a1)の質量と前記メタクリル酸エステル単量体(a2)の質量との比(a1)/(a2)が30/70~90/10である、請求項1~4のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【請求項6】
前記撥水剤組成物が前記シリコーン樹脂(γ)を含み、
前記シリコーン樹脂(γ)が、アミノ変性シリコーン、シリコーンレジン、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びアルキル変性シリコーンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の撥水剤組成物における、前記非フッ素系ポリマー(α)と、前記非フッ素系ポリマー(β)及び/又は前記シリコーン樹脂(γ)とが付着した繊維製品からなる、撥水性繊維製品。
【請求項8】
繊維製品を、請求項1~6のいずれか一項に記載の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程、を備える、撥水性繊維製品の製造方法。」
「【0022】
本発明によれば、撥水性に優れた撥水性繊維製品を得ることができ、得られる製品はコーティングに対する十分な剥離強度を有することもできる撥水剤組成物を提供することができる。
【0023】
本発明の撥水剤組成物によれば、処理した基材にウレタン樹脂又はアクリル樹脂等をコーティングした場合でも、撥水性とコーティングに対する剥離強度を両立することができる。また、本発明の撥水剤組成物がシリコーン樹脂(γ)を含む場合には、繊維製品の風合いを向上しながら、撥水性とコーティングに対する剥離強度を両立する撥水性繊維製品を得ることができる。」
「【0117】
また、得られる繊維製品の風合いをより向上させる観点から、本実施形態の撥水剤組成物はシリコーン樹脂(γ)を含有することが好ましい。この場合、非フッ素系ポリマー(α)及び非フッ素系ポリマー(β)の合計の質量と、シリコーン樹脂(γ)の質量との比率[(α)+(β)]/(γ)が、95/5~20/80であることが好ましく、90/10~30/70であることがより好ましく、80/20~40/60であることがさらにより好ましく、80/20~50/50であることがさらにより一層好ましい。」
(4)甲4の記載
甲4は英語のため、申立人が提出した抄訳を記載し、抄訳のない箇所については、甲4に対応する日本語公報である甲8の記載を翻訳として採用した。
ア 請求項1
[図:0001425710000016.jpg]
イ 請求項3
[図:0001425710000017.jpg]
ウ 請求項6
[図:0001425710000018.jpg]
エ 請求項7
[図:0001425710000019.jpg]
オ 第2頁第1行~第5行
[図:0001425710000020.jpg]
カ 第5頁第21行~第6頁第2行
[図:0001425710000021.jpg]
キ 第6頁第13行~第20行
[図:0001425710000022.jpg]
ク 第8頁第15行~第22行
[図:0001425710000023.jpg]
ケ 第8頁第24行~第9頁第6行
「以下の実施例は本発明を説明するのに役立つ。特段の指示がない限り、温度は摂氏度であり、部は質量部であり、そして、パーセントは質量パーセントに関する。質量部は、リットルに対するキログラムの比率において体積部に関連する。
化学物質:
・オクタデシルジメチルアミン(CAS:124-28-7)
・Tergitol TMN-10:>87% ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル(CAS:60828-78-6)
・ジプロピレングリコール(CAS:25265-71-8)
・酢酸(CAS:64-19-7)
・Paraffin2222又はSasolwax 7040 約70℃で融解
(CAS:8002-74-2; 64742-51-4)
・Silwax D222、34乃至42℃の融解範囲(CAS:73891-93-7)
・ベヘニルメタクリレート 1822(BEMA 1822)(CAS:90551-86-3)
・ステアリルメタクリレート(MA 16-18)(CAS:90551-83-0)
・2-ヒドロキシエチルメタクリレート(CAS:868-77-9)
・塩化ビニリデン(CAS:75-35-4)
・Wako V 50:2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)
二塩酸塩(CAS:2997-92-4)
・撥油及び撥水製品のためのPHOBOL(登録商標)XAN extender」
(甲8の【0034】~【0035】)
コ 第9頁第8行~第30行
[図:0001425710000024.jpg]
サ 第9頁第32行~第10頁第9行
[図:0001425710000025.jpg]
シ 第10頁第1行~第12行
[図:0001425710000026.jpg]
ス 第10頁第14行~第28行
[図:0001425710000027.jpg]
セ 第10頁第30行~第11頁第1行
[図:0001425710000028.jpg]
ソ 第11頁~第12頁
[図:0001425710000029.jpg]
[図:0001425710000030.jpg]
(5)甲5の記載
甲5には、次の記載がある。甲5は英語のため、申立人が提出した抄訳を記載する。
[図:0001425710000031.jpg]
(6)甲6の記載
甲6には、次の記載がある。甲6は英語のため、申立人が提出した抄訳を記載する。
ア 第4頁
[図:0001425710000032.jpg]
イ 第5頁
[図:0001425710000033.jpg]
(7)参考文献1
参考文献1には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、地球環境や安全性に配慮した製造方法並びに素材を使用しつつ、難燃性、撥水性がともに優れたポリエステル製カーテンに関するものである」
「【0021】
従来より、ワックス系撥水剤は撥水性を付与するという目的よりも、むしろ生地の硬仕上げを目的に使用されているため、適度な張りや形態保持性が要求される椅子張りやカーシート等の用途に主として使用されてきた。従って、柔軟でしなやかなドレープ感が要求されるカーテン用途にはフッ素系撥水剤が活用されている背景もあって、ワックス系撥水剤が使用されることはなかった。本発明ではワックス系撥水剤中の付着量に適正範囲を設けることによって、撥水性、難燃性、風合いの全てを満足することが可能になった。すなわち、安定した難燃性を保持しつつも生地の柔軟性を損なわないためには、ワックス系撥水剤中の固形分の付着量は通常より大幅に低く設定する必要があり、1.2重量%以下に設定する必要がある。1.2重量%以下にすることで爪で引っ掻いたりした時にできるチョークマーク発生の問題もない。逆に、撥水剤中の固形分付着量が少ない場合は、充分な撥水性が得られなくなったり、撥水剤の付着ムラに伴い生地の場所によって撥水性能ムラが生じる等の問題が出てくるため、ワックス系撥水剤中の固形成分の付着量は0.2重量%以上に設定する必要がある。」
(8)参考文献2
参考文献2には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性を有する撥水性布帛およびその製造方法に関する。」
「【0056】
また、繊維布帛への撥水性樹脂の付着量は、繊維布帛100g当たり0.01g~10gがよく、より好ましくは0.05g~5gがよい。撥水性樹脂の付着量が上限(10g)を超えると、十分な引裂強力や縫目強力が得られないおそれがあるとともにチョークマークが発生するおそれがある。」
(9)甲1
甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
(A1)式:
CH2=CA11ーC(=O)ーOーA12
[式中、A11は、水素原子またはメチル基であり、
A12は、炭素数8-30の直鎖状または分岐状の炭化水素基である。]
で示される非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位、および
(A2)ラジカル重合性基を有するシリコーンマクロマーから誘導された繰り返し単位
を必須成分とする含ケイ素重合体を含む撥水剤。」
「【0001】
本発明は、フッ素原子を有しない含ケイ素重合体を含む撥水剤に関する。具体的には、本発明は、基材に、優れた撥水性、撥油性、防汚性を付与できる。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、優れた撥水撥油性(特に撥水性)、柔軟な風合いおよび良好な耐チョークマーク性を繊維製品に与える表面処理剤(撥水撥油剤、特に撥水剤)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(A1)式:
CH2=CA11ーC(=O)ーOーA12
[式中、A11は、水素原子またはメチル基であり、
A12は、炭素数8ー30の直鎖状または分岐状の炭化水素基である。]
で示される非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位、および
(A2)ラジカル重合性基を有するシリコーンマクロマーから誘導された繰り返し単位
を必須成分とする含ケイ素重合体を含む撥水剤
を提供する。」
「【実施例】
・・・
【0073】
製造例1
500mlのポリ容器にトリプロピレングリコール 30g、ステアリルアクリレート 76g、N-メチロールアクリルアミド 1.5g、片末端メタクリル変性シリコーン(数平均分子量:4600)2.5g、純水 180g、ジオクタデシルアンモニウムクロライド 3g、ソルビタンモノオレエート 2g、ポリオキシエチレントリデシルエーテル 2.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル 2.5g を仕込み、60℃に加熱し、ホモミキサーで1分、2000rpmで攪拌した後、超音波で15分間、乳化分散させた。乳化分散物を500mlのオートクレーブに移し、窒素置換後、ラウリルメルカプタン 0.2g、塩化ビニルを20g仕込んだ。更に2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩 1gを添加し、60℃に昇温し、4時間、反応させて重合体の水性分散液を得た。この分散液を更に純水で希釈して固形分濃度 30%の水分散液1を調製した。
【0074】
製造例2ー11および23
表1に示す配合で製造例1と同様の方法で重合し、水希釈することで固形分濃度30%の水分散液2ー11を得た。
【0075】
製造例12
500mlのポリ容器にトリプロピレングリコール30g、ステアリルアクリレート 76g、N-メチロールアクリルアミド 1.5g、片末端メタクリル変性シリコーン(数平均分子量:4600)2.5g,純水 180g、ジオクタデシルアンモニウムクロライド 3g、ソルビタンモノオレエート 2g、ポリオキシエチレントリデシルエーテル 2.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル 2.5g を仕込み、60℃に加熱し、ホモミキサーで1分、2000rpmで攪拌した後、超音波で15分間、乳化分散させた。乳化分散物を500mlのオートクレーブに移し、窒素置換後、ラウリルメルカプタン 0.2g、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩 1gを仕込み、60℃で1時間反応させた。1時間反応した後、ステアリルアクリレートは99モル%以上、反応していることを確認した。その後、塩化ビニル 20gを圧入充填し、更に3時間反応させて重合体の水性分散液を得た。この分散液を更に純水で希釈して固形分濃度30%の水分散液12を調製した。
【0076】
製造例13ー22および24
表2に示す配合で製造例12と同様の方法で重合し、水希釈することで固形分濃度30%の水分散液13ー22を得た。」
2 甲7に記載された発明
甲7の段落【0080】、【0091】、【0103】、【0105】、表2における、製造例A5で得られた重合体の水性分散液、製造例B3で得られたワックス、及び、それらを混合して得られた実施例7の撥水発油剤についての記載、並びに、同段落【0073】~【0077】、【0079】の撥水撥油剤を繊維製品に適用する方法についての記載に着目して整理すると、甲7には、次の発明(以下、「甲7A発明」、「甲7B発明」、「甲7C発明」という。)が記載されているといえる。
(甲7A発明)
「1Lオートクレーブにステアリルアクリレート150g、ジアセトンアクリルアミド4g、純水360g、トリプロピレングリコール60g、ソルビタンモノステアレート(HLB4.7)12g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO50)(HLB17.8)5g、ラウリルメルカプタン1.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させたオートクレーブを窒素置換後、塩化ビニル50gを圧入で仕込み、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩2.0gを添加し、60℃で3時間反応させて得られた重合体の水性分散液(平均HLB8.6)を純水で固形分濃度を30%に調整したものを70重量%と、高圧反応容器にパラフィンワックス(融点75℃、針入度6(25℃))150g、純水350g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO7(HLB10.7)8.5g、ソルビタンモノステアレート(HLB4.7)6.5gを入れて密封し、攪拌下に110~120℃に昇温後、高圧下で30分間高圧乳化して得られたワックスの水性分散体(平均HLB8.1)を純水で固形分を30%に調整したものを30重量%と、を含む撥水撥油剤。」
(甲7B発明)
「甲7A発明の撥水撥油剤で、浸漬、噴霧、塗布により処理された繊維製品。」
(甲7C発明)
「甲7A発明の撥水撥油剤で、繊維製品を、浸漬、噴霧、塗布により処理する工程を含む、繊維製品の製造方法。」
第7 当審における判断
1 取消理由及び取消理由(決定の予告)に記載した取消理由について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲7A発明を対比すると、甲7A発明の「ステアリルアクリレート」は、本件発明1の「一般式(A-1)」において、R1が水素であり、R2が炭素数18の1価の炭化水素基であるアクリル酸エステル単量体であるから、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル単量体(A1)」に相当する。
また、甲7A発明の「ジアセトンアクリルアミド」は、本件発明1の「一般式(A-2)」において、R11が水素であり、Zがアミド基であり、R12が炭素数4の2価の炭化水素基であり、Wが-CO-R13であり、R13が炭素数1の1価の炭化水素基である化合物であるから、本件発明1の「化合物(A2)」に相当する。
さらに、甲7A発明の「重合体」は、フッ素を含まないモノマー成分である、「ステアリルアクリレート」、「ジアセトンアクリルアミド」及び「塩化ビニル」を重合させて得られたものであるから、本件発明1の「非フッ素系ポリマー(α)」に相当する。
そして、甲7A発明の重合体は、ステアリルアクリレート(150g)とジアセトンアクリルアミド(4g)の合計量(150+4=154(g))は、ステアリルアクリレート(150g)とジアセトンアクリルアミド(4g)と塩化ビニル(50g)の合計である単量体成分全量(150+4+50=204(g))の約75.5%であるから、本件発明1の「前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(A1)と前記化合物(A2)との合計質量が、前記非フッ素系ポリマー
(α)を構成する単量体成分の全量に対して、60~100質量%であ」るという発明特定事項を充足する。
加えて、甲7A発明の「撥水撥油剤」は、本件発明1の「撥水剤組成物」に相当する。
以上より、両者は
「下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A1)に由来する構成単位及び下記一般式(A-2)で表される化合物(A2)に由来する構成単位を含有する非フッ素系ポリマー(α)を含み、
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(A1)と前記化合物(A2)との合計質量が、前記非フッ素系ポリマー(α)を構成する単量体成分の全量に対して、60~100質量%である、
撥水剤組成物。
【化1】
[図:0001425710000034.jpg]
[式(A-1)中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は置換基を有していてもよい炭素数12~30の1価の炭化水素基を表す。]
【化2】
[図:0001425710000035.jpg]
[式(A-2)中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数1~6の2価の炭化水素基を表し、Zはエステル基またはアミド基を表し、Wは-CO-R13(式中、R13は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す)で表される基、-NH-CO-NH2で表される基、又は下記式(A-3)で表される基を表す。
【化3】
[図:0001425710000036.jpg]
]」の点で一致し、以下の点(以下「相違点」という。)で相違する。
(相違点)
本件発明1の撥水剤組成物は、シリコーン樹脂(β)を含み、非フッ素系ポリマー(α)の質量及びシリコーン樹脂(β)の質量の比率(α)/(β)が、15/85~85/15であるのに対して、甲7A発明では、シリコーン樹脂(β)ではなく、パラフィンワックスを含み、非フッ素系ポリマーの質量及びパラフィンワックスの質量の比率(非フッ素系ポリマー/パラフィンワックス)が70/30である点。
イ 検討
特許権者の令和7年5月27日提出の意見書における主張を踏まえて、甲7の記載を再検討したところ、甲7の【0006】には、【発明が解決しようとする課題】として、「本発明の1つの目的は繊維などの撥水撥油加工の加工安定性、例えばガムアップ性が改良された表面処理剤(撥水撥油剤、特に撥水剤)を提供することにある。
本発明の別の目的は、化学的安定性(夾雑物安定性)および機械的安定性に優れた表面処理剤を提供することである。
本発明の他の目的は、優れた撥水撥油性を有する表面処理剤を提供することである。」と記載され、請求項1には、撥水撥油剤が「融点52~88℃を有するワックス」を含むことが記載されており、甲7の【表2】には、同組成の非フッ素重合体を同割合で配合した実施例1と比較例5では、融点が50℃のワックスを用いた比較例5において、融点66℃のパラフィンワックスを用いた実施例1と比較して機械的安定性が劣ることが記載されている。
一方、甲4の請求項1には「55℃乃至75℃の融解範囲を有するパラフィンワックス及び25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックスの群から選択される少なくとも1種の成分」として、「55℃乃至75℃の融解範囲を有するパラフィンワックス」と「25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックス」が択一的に記載されているものの、甲4には両者がもたらす機械的安定性についての記載はなく、甲4の記載から、シリコンワックスには融点が25℃乃至55℃の範囲のものが存在することは明らかである。
参考資料1及び2のとおり、撥水剤の付着量が多くなるとチョークマークが発生しやすいことが本件特許の出願当時の技術常識であり、長鎖アクリル酸エステル共重合体を含む非フッ素系ポリマーにシリコーン樹脂を配合して撥水性、耐久撥水性等の性能を改善することが、本件特許の出願日前の周知技術(要すれば、甲2及び甲3等参照)であるとしても、いずれの証拠からも、甲7の非フッ素重合体に、パラフィンワックスにかえてシリコーン樹脂を配合することにより、融点52~88℃を有するパラフィンワックスと同程度の機械的安定性がもたらされることが明らかといえない以上、甲7A発明において、融点が75℃であるパラフィンワックスをシリコーン樹脂に換えることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、甲7の段落【0063】では、表面処理剤に配合する非フッ素重合体、ワックス、水性媒体および乳化剤以外の任意の添加剤の一例として「含ケイ素化合物」が挙げられているにすぎず、含ケイ素化合物にはシリコーン樹脂以外の様々なものが含まれることに加え、参考資料1及び2のとおり、撥水剤の付着量が多くなるとチョークマークが発生しやすいとの本件特許の出願当時の技術常識をふまえると、甲7A発明において、【0063】の「含ケイ素化合物」との記載に基づき、さらにシリコーン樹脂を添加して、シリコーン樹脂が非フッ素系ポリマーの質量に対し15/85~85/15となるようにすることを、当業者が容易に想起したとはいえない。
ウ 令和7年6月26日に提出された上申書における申立人の主張について
(ア)申立人の主張
a 特許権者は令和7年5月27日提出の意見書において、甲7の段落【0033】に融点が52~88℃であることが好ましいと記載される同【0032】の「(B)ワックス」には当然「シリコンワックス」が含まれると主張するが、同【0032】にシリコンワックスは記載されていない以上、前記第6 1(4)の甲4のオ及びカの記載から、当業者であれば、甲7に記載される引用発明のパラフィンワックスにかえて、甲4に記載される25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックスを用いることを容易に想到し得る。
b 令和7年5月27日に提出された意見書における特許権者の「撥水性には、ワックスの濃度のみならず重合体の濃度も影響」し、「甲4の実施例の記載に接した当業者であれば、同等の撥水性が奏されるのは、重合体及びワックスの合計の濃度が高くなったためであると考え、「パラフィンワックスにかえて、より低濃度で撥水性を付与することが可能なシリコンワックス」とは考えない」との主張について
甲4の【表1】では、重合体とシリコンワックスの合計含有量が12.20gであるEX2(40)が、重合体とパラフィンワックスの合計量が18.96であるEX1(80)より、[II][%]と[II][ml]の評価結果が優れており、甲4には、シリコンワックスは、パラフィンワックスよりも低濃度で撥水性を付与できることが示されているから、特許権者の主張は失当である。
(イ)検討
a 前記(ア)aの主張について
甲7の段落【0032】及び【0033】の記載は以下のとおりである。
「【0032】
(B)ワックス
ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、動植物蝋、および鉱物蝋などが挙げられる。パラフィンワックスが好ましい。
・・・
【0033】
ワックスの融点は、52~88℃、好ましくは55~85℃、より好ましくは60~80℃、特に好ましくは65~78℃であってよい。」
このように、甲7の段落【0032】は、好適なワックスを列挙する記載であり、一方で、段落【0033】は、単に「ワックスの融点」と記載するものであるから、段落【0033】に記載された融点が、【0032】に具体的に記載されたワックスにのみに適用されると解することはできない。
また、甲4の前記第6 1(4)のオの「長期間の貯蔵後も高い安定性を有し」との記載は、機械的安定性について記載するものではなく、同カの「上記で示されたものより高い融解範囲を有するパラフィン及びシリコンワックスは、・・・これらの水性分散液を増加した粘度を有するものとし、そのため、これらの分散液の加工性は不十分になる」との記載も粘度と分散液の加工性の関係を記載するものである。
むしろ、申立人が指摘する甲7の【0032】に、ワックスとしてシリコンワックスが挙げられていないこともふまえると、甲7の記載に接した当業者が、引用発明のパラフィンワックスにかえて、25℃乃至55℃の融解範囲を有するシリコンワックスを用いることを動機付けられるとはいえない。
b 前記(ア)bの主張について
甲4の【表2】のEX2(40)とEX2(80)や【表3】のEX2(40)PL{5}とEX2(80)PL(10)の(II)[ml]の値から、甲4には、同種の重合体とワックスであれば、その量が高い程必ず撥水性が高くなることが開示されているとはいえないことに加え、EX2(40)とEX1(80)では重合体の量が異なることから、甲4のEX2(40)とEX1(80)の[II][ml]の相違が専らワックスの種類に起因することが甲4の記載から明らかとはいえない。また申立人の主張は、1種類のパラフィンワックスについて指摘するものであり、常にシリコンワックスがパラフィンワックスよりも撥水性が高いことを証明しているとはいえない。
したがって、前記(ア)bの主張も採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲7に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1にさらに技術的事項を追加したものであるから、前記(1)と同様の理由により、甲7に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得るものではない。
(3) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件発明1~4に係る特許は、取り消されるべきものではない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 申立理由1及び2(甲1に基づく新規性及び甲1を主引用例とする進歩性)について
前記第6 1(9)のとおり、甲1は、非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位とラジカル重合性基を有するシリコーンマクロマーから誘導された繰り返し単位を必須成分とする含ケイ素重合体を含む撥水剤を開示するものであり、いずれの実施例も、本件発明1~4の「シリコーン樹脂」に相当する樹脂を含むものではないから、本件発明1~4は、甲1に記載された発明ではない。
また、甲1~甲2及び甲4~甲6のいずれも、甲1に記載された、非フッ素(メタ)アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位とラジカル重合性基を有するシリコーンマクロマーから誘導された繰り返し単位を必須成分とする含ケイ素重合体である「500mlのポリ容器にトリプロピレングリコール 30g、ステアリルアクリレート 76g、N-メチロールアクリルアミド 1.5g、片末端メタクリル変性シリコーン(数平均分子量:4600)2.5g、純水 180g、ジオクタデシルアンモニウムクロライド 3g、ソルビタンモノオレエート 2g、ポリオキシエチレントリデシルエーテル 2.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル 2.5g を仕込み、60℃に加熱し、ホモミキサーで1分、2000rpmで攪拌した後、超音波で15分間、乳化分散させ」て得られた「重合体」(製造例1)とシリコーン樹脂を、質量の比率15/85~85/15で含む撥水剤組成物を製造することを、動機付けるものではない。
したがって、申立理由1及び2は採用できない。
(2)申立理由4(サポート要件)について
ア 前提
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と本願明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)の記載を対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
イ 本件明細書の記載
「【0007】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撥水性、耐久撥水性及び水はじき性に優れるとともに、風合いが良好であり、且つチョークマークが発生しにくい撥水性繊維製品、並びにその実現を可能とする撥水剤組成物及び撥水性繊維製品の製造方法を提供することを目的とする。」
「【0011】本発明の撥水剤組成物によれば、上記特定の非フッ素系ポリマー(α)と、シリコーン樹脂(β)とが組み合わせて含まれることにより、撥水性、耐久撥水性、水はじき性及び風合いに優れた撥水性繊維製品を得ることができ、得られる繊維製品はチョークマークが生じにくい。このような効果が得られる理由について本発明者らは以下のとおり推察する。上記非フッ素系ポリマー(α)は、化合物(A2)に由来する構成単位として、エステル基若しくはアミド基と、ウレイド基若しくはケトン基とを有することによって、凝集しやすい特性を有するものと考えられ、このような特性を有する非フッ素系ポリマー(α)とシリコーン樹脂(β)とが含まれる組成物によって処理された繊維は、繊維表面に凹凸構造が形成されやすくなるものと考えられる。そのため、繊維の風合いが損なわれず、チョークマークも発生しにくいような低濃度での処理条件で非フッ素系ポリマー(α)及びシリコーン樹脂(β)を繊維上に付着させても、凹凸構造が形成されることによって十分な撥水性、耐久撥水性及び水はじき性を付与できたと本発明者らは考えている。」
「【0024】上記(A1)成分は、置換基を有していてもよい炭素数が12~30の1価の炭化水素基を有する。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、撥水性と風合いの観点から、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。この場合、撥水性がより優れるものとなる。炭素数12~30の1価の炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基等のうちの1種以上が挙げられる。本実施形態では、上記一般式(A-1)において、R 2は無置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0025】上記炭化水素基の炭素数は、上記と同様の観点から、12~24であることが好ましい。
【0026】上記炭化水素基の炭素数は、12~22であることがより好ましい。炭素数がこの範囲である場合は、撥水性と風合が特に優れるようになる。炭化水素基として特に好ましいのは、炭素数が18~22の直鎖状のアルキル基である。」
「【0094】このようなシリコーン樹脂の中でも、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、シリコーンオイルが好ましく、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイルがより好ましく、得られる繊維製品の撥水性及び耐久撥水性を一層向上させることから、アルキル変性シリコーンが、又は、得られる繊維製品の風合いを一層向上させ、チョークマークの発生を一層低減できることから、アミノ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、ジメチルシリコーンが更に好ましい。」
本件明細書には、さらに実施例1~15及び比較例1~9が記載されている(【0193】~【0216】)。
ウ 本件発明が解決しようとする課題
前記【0007】の記載から、本件発明1~4は、撥水性、耐久撥水性及び水はじき性に優れるとともに、風合いが良好であり、且つチョークマークが発生しにくい撥水性繊維製品、並びにその実現を可能とする撥水剤組成物及び撥水性繊維製品の製造方法の提供を解決しようとする課題とするものである。
エ 申立人の主張4(1)について
本件明細書には、実施例1~15の組成物が撥水性、はじき性、剥離強度及び風合いが良好であることが開示されている。また、本件明細書の【0011】の記載から、当業者は、化合物(A2)に由来する構成単位として、エステル基若しくはアミド基と、ウレイド基若しくはケトン基とを有する非フッ素系ポリマー(α)は、凝集しやすい特性を有し、シリコーン樹脂(β)と共に含まれる組成物によって処理された繊維は、繊維表面に凹凸構造が形成されやすくなるため、繊維の風合いが損なわれず、チョークマークも発生しにくいような低濃度での処理条件で非フッ素系ポリマー(α)及びシリコーン樹脂(β)を繊維上に付着させても、凹凸構造が形成されることによって十分な撥水性、耐久撥水性及び水はじき性を付与できることを理解できる。
そうしてみると、本件明細書の【0213】及び【表3】~【表5】の記載から、各実施例及び比較例においてチョークマークがどの程度発生しているかは理解できないとしても、【0011】等の記載から、当業者は、本件発明1~4はチョークマークが発生しにくいとの課題も解決すると認識するものといえる。
したがって、申立人の主張4(1)をもって、本件発明1~4が本件発明1~4の課題を解決できず、サポート要件を満たさないということはできない。
オ 申立人の主張4(2)について
申立人が指摘するとおり、確かに、本願明細書の段落【0210】には、「ブロックドイソシアネート系架橋剤(NKアシストNY-50)を0.03質量%の濃度となるように添加し、処理液を調整した。」と記載され、【表3】~【表5】の洗濯30回の撥水性は、いずれも、このように架橋した処理液において確認されたものであると認められる。
しかしながら、実施例及び比較例の記載(【表3】~【表5】)から、洗濯0回における撥水性が高い程、洗濯30回での撥水性も高い傾向が把握され、比較例1、2、4及び5と実施例1、9~15等を対比すると、A1及びA2を含む各実施例では、A1またはA2を含まない比較例と比べて洗濯0回における撥水性が高いことが確認できる。これらの実施例及び比較例の記載に加え、本件明細書の【0011】、【0024】~【0026】及び【0094】等の記載から、当業者は本件発明1~4が比較例と比べて前記課題を解決することを理解できるといえる。
したがって、申立人の主張4(2)も採用できない。
カ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載された発明であるから、申立人の主張は採用できない。
(3)申立理由5(実施可能要件)について
ア 前提
本件発明1~3は「撥水剤組成物」または「撥水剤組成物が付着した繊維製品からなる、撥水性繊維製品」という物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
イ 検討
申立人は、申立理由4と同じ理由から、本件発明1~4は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載された発明でないと主張する。
しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1~3の組成物又は製品を製造し、また、使用できる程度の記載がなされている。本件発明4は「撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程を備える、撥水性繊維製品の製造方法」に係る発明であるところ、当業者は本願明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき、撥水性繊維製品を製造できると認められる。
したがって、本願が実施可能要件を満たさないとの申立理由5は採用できない。
第8 むすび
したがって、請求項1~4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701057