特許異議申立
2023-700641
硬化性組成物、膜、積層体及び表示装置
- 審判番号
- 2023-700641
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-205895
- 登録番号
- 7193306
- 請求日
- 2023年06月19日
- 審決日
- 2024年01月16日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】住友化学株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 【異議申立人】小松 一枝
- 【異議申立人】前田 知子
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 関根 裕
- 分類
- P1651.121-Y (C09K) / P1651.536-Y (C09K) / P1651.537-Y (C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7193306号発明「硬化性組成物、膜、積層体及び表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7193306号の請求項1-5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、平成30年10月31日の出願であって、令和4年12月12日に特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~5に係る特許に対し、令和5年6月19日に異議申立人 小松 一枝及び前田 知子(以下、「特許異議申立人ら」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年10月17日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年12月1日に意見書の提出を行った。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~5に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明5」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
ペロブスカイト化合物を含む蛍光粒子(A)、光重合性化合物(B)、光重合開始剤(C)及び酸化防止剤(D)を含み、
前記光重合開始剤(C)は、オキシム系化合物、アルキルフェノン化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物からなる群より選択される1種以上を含み、
前記酸化防止剤(D)は、フェノール系酸化防止剤を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
量子ドット(E)をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物を硬化させてなる膜。
【請求項4】
請求項3に記載の膜と、前記膜以外の層とを含む積層体。
【請求項5】
請求項3に記載の膜又は請求項4に記載の積層体を含む、表示装置。」
第3 取消理由通知に記載した取消理由について
令和5年10月17日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由1である。
理由1(進歩性)本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
甲第1号証:中国特許出願公開第107966854号明細書
甲第2号証:特開2018-124413号公報
第4 前記第3における理由1(進歩性)についての判断
1 甲号証について
甲第1号証と甲第2号証は、前記第3 理由1の甲第1号証及び甲第2号証。
甲第3号証:韓国公開特許第10-2018-0069687号公報
甲第4号証:大津隆行「重合防止剤の機能について」有機合成化学、第33巻第8号(1975) p634-640
甲第5号証:韓国登録特許第10-1906445号公報
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
なお、摘記事項の後ろに異議申立人らによる仮訳を掲載した。
1a「
[図:0001407845000001.jpg]
」
1.バックライトモジュール構造における量子ドット発光機能基板の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法。
S1、一定量のポリスチレンペレットを取り、撹拌条件下で希釈剤および/またはプレポリマーに溶解し、濃厚な溶液を取得し、
S2、測定した量子ドット粉末を上記の濃厚な溶液に加え、室温で均一に撹拌し、
S3、開始剤の添加を続け、暗所で均一に撹拌して、所望の量子ドットを含む混合溶液を取得し、
S4、上記の混合溶液に、可塑剤、レベリング剤、安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、消泡剤、およびカップリング剤などの1つ以上の添加剤を続けて加え、室温暗所で水に均一に撹拌し、所望の量子ドットを含むUV接着剤を取得し、
S5、コーティングプロセスにより、所望の量子ドットを含むUV接着剤を拡散板表面に均一に塗布し、
S6、コーティングプロセスが完了した後、UV接着剤を含む拡散板表面に光学フィルムの層をフィルム法によって被覆し、
S7、拡散板表面、量子ドットUV接着剤、光学フィルムを含む複合多層材料をUV光下に置き、拡散板上に量子ドット封止層と光学フィルムを複合貼り合わせ、量子ドット発光機能板が形成されるまで光硬化反応を行う方法。
1b「
[図:0001407845000002.jpg]
」
[0003]量子ドットディスプレイの応用業界では、パッケージング方法に関して、量子ドットは通常、発光ダイオード(LED)内、またはディスプレイの隣のガラスチューブ内に封入するか、または薄膜にしてバックライトモジュールとしてディスプレイに配置することができる。パッケージング方法に関係なく、無機材料として、ナノメートルサイズの量子ドットは、熱、水、酸素などの環境要因に非常に敏感であるため、製品化の過程で、研究者とメーカーは多くの労力とコストを費やすことになる。彼らは皆、水と酸素による傷害の問題を解決することに努力している。また、一般的な量子ドットフィルムパッケージは、通常、ポリエチレンテレフタレート(PET)バリアフィルムを上下層として貼り合わせる方式が採用されており、投入コストが高いなど、解決すべき課題は数多くある。このため、価格が高く、価格優位性がなく、大規模な製品化に適さない。また、量子ドットフィルムの位置も非常に限られており、光が光学フィルムの層を通過するとき、量子ドットフィルムによる反射の繰り返し回数を増やすために、量子ドットフィルムを限定された場所に配置する必要がある。配置が上に移動すると、赤と緑の光の変換が不十分になり、青みがかった色となる現象が発生する。これは、量子ドットが熱源から遠く離れている必要があるという原則に反している。緑色の量子ドットが劣化すると、量子ドット表示材料は「ますます青く」見えるため、量子ドット膜としての寿命もが短くなる。一般に、量子ドットディスプレイは、広い色域と自己発光、省電力、高コントラスト、高速応答などの利点があり、上記の技術的課題が解決されれば、将来の発展は非常に有望である。
[0004]従来技術の問題および欠陥を解決するために、本発明の目的は、組立効率を大幅に向上させ、生産コストを削減できるバックライトモジュール構造の量子ドット発光機能を提供することである。
1c「
[図:0001407845000003.jpg]
[図:0001407845000004.jpg]
」
[0010]S4、上記の混合系に可塑剤、レベリング剤、安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤などの1つ以上の添加剤を続けて添加する。室温遮光条件下で均一に撹拌し、所望の量子ドットを含むUV接着剤を得る。
1d「
[図:0001407845000005.jpg]
」
[0018]前記量子ドットはII-VI族(CdSe、CdS等)、III-V族(InP、InAsI等)あるいはIV-VI(PbSe等)族の元素組成量子ドット、ペロブスカイト量子ドット、または、遷移金属あるいは希土金属元素ドーピングの量子ドットとする。量子ドットの状態には、その場で生成される非担持型、コアシェル型量子ドット(CdSe/ZnS、CdS/HgS、CdTe/CdSe等)、モレキュラーシーブやポリスチレンビーズに担持された担持型がある。
1e「
[図:0001407845000006.jpg]
」
[0054]実施例1
[0055]ポリスチレンペレット40グラムを量り、室温で攪拌しながらスチレン100グラムに徐々に溶解し、12時間連続的に混合して粘桐な溶液を得た;ジビニルベンゼン5.5グラムとペロブスカイトセシウムハロゲン化鉛量子ドット2.0グラムを加え、攪拌した。5.5グラムのベンゾインジメチルエーテル開始剤を添加し続け、暗条件下で2時間攪拌し、カプセル化されていない量子ドットを含むUV硬化型接着剤を取得した。AT-TB-3000型コーティングテスターを使用して、このUV接着剤をポリスチレン(PS)製の拡散板に一定量塗布し、UV接着剤の厚さを約50μmにして表面に広げた。ポリエチレンテレフタレート(PET)製の光学フィルムを密着させ、波長365nmの高圧水銀灯下で光硬化反応させた後、60℃90%RHの環境下に置きます。温度と高湿度の老化実験、色座標をテストし、それぞれの経時変化曲線を作成した。
1f「
[図:0001407845000007.jpg]
」
(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
少なくとも光波長変換層を備える光波長変換シートであって、
前記光波長変換層が、バインダ樹脂と、量子ドットと、フェノール系化合物およびアミン系化合物からなる群から選択される1種以上の化合物とを含み、
前記光波長変換シートの一方の表面に前記量子ドットによって波長変換可能な光を照射したときの前記光波長変換シートの一方の表面に入射する前記光のピーク強度に対する前記量子ドットによって波長変換されずに前記光波長変換シートにおける前記一方の表面とは反対側の表面である他方の表面から出射する前記光のピーク強度の割合が、10%以上である、光波長変換シート。
・・・
【請求項8】
光波長変換組成物であって、
量子ドットと、フェノール系化合物およびアミン系化合物からなる群から選択される1種以上の化合物とを含む、光波長変換組成物。
・・・
【請求項10】
重合性化合物をさらに含む、請求項8に記載の光波長変換組成物。
・・・
【請求項13】
請求項10に記載の光波長変換組成物の硬化物からなる、光波長変換部材。」
2b「【0001】
本発明は、光波長変換シート、バックライト装置、画像表示装置、光波長変換組成物、および光波長変換部材に関する。
・・・
【0005】
光波長変換シートにおいては、量子ドットは水分や酸素によって劣化してしまい、発光効率が低下するおそれがあるので、光波長変換層の両面に、水分および酸素の透過を抑制するためのバリア部材を設けている。バリア部材は光波長変換層を挟むように設けられるので、従来の光波長変換シートは、バリア部材、光波長変換層、バリア部材の順で積層された構造となっている。」
2c「【0030】
量子ドットとしては、1種類の量子ドットを用いてもよいが、粒子径または材料等が異なることにより、それぞれ単独の波長域の発光帯を有する2種類以上の量子ドットを用いることも可能である。具体的には、光波長変換組成物は、第1の量子ドットと、第1の量子ドットとは異なる波長域の発光帯を有する第2の量子ドットとを含んでいてもよい。
・・・
【0032】
量子ドットは、例えば、第1の半導体化合物からなるコアと、およびこのコアを覆い、かつ第1の半導体化合物と異なる第2の半導体化合物からなるシェルと、シェルの表面に結合したリガンドとから構成されている。
・・・
【0035】
コアとシェルからなるコアシェル構造(コア/シェル)の具体的な組み合わせとしては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InP/ZnSSe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。」
2d「【0046】
<フェノール系化合物>
上記フェノール系化合物としては、特に限定されないが、優れた酸化防止機能を得る観点から、ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。「ヒンダードフェノール系化合物」とは、フェノール系化合物を構成する芳香環のフェノール性水酸基に対するオルト位の炭素上の水素原子が置換基(好ましくは置換又は無置換のアルキル基)で置換されている化合物を意味する。
・・・
【0049】
上記フェノール系化合物の市販品としては、例えば、IRGANOX1076、IRGANOX3114、IRGANOX1010(いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0050】
<アミン系化合物>
上記アミン系化合物としては、特に限定されないが、優れた酸化防止機能を得る観点から、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。「ヒンダードアミン系化合物」とは、分子中にピペリジン環を含み、上記ピペリジン環の2位及び6位の炭素上の全ての水素原子が置換基(好ましくは置換されていてもよいアルキル基)で置換された化合物を意味する。
・・・
【0053】
上記アミン系化合物の市販品としては、例えば、LA-52、LA-72、LA-82(いずれもADEKA社製)が挙げられる。
・・・
【0201】
量子ドットが耐熱性試験、耐湿熱性試験および耐光性試験によって劣化しやすいのは、以下のことが原因であると考えられる。まず、量子ドットの表面には硫黄系化合物やリン系化合物等からなるリガンドが配位しているが、このリガンドは光や熱で脱離しやすい。リガンドが量子ドットから脱離すると、量子ドットに水分や酸素が付着しやすくなるので、量子ドットは、酸化され、劣化してしまう。これにより、量子ドットが耐熱性試験、耐湿熱性試験および耐光性試験によって劣化してしまうものと考えられる。これに対し、本実施形態においては、光波長変換組成物や光波長変換層11においては、上記特定の化合物を含んでいるので、光波長変換組成物や光波長変換層11中に存在する酸素ラジカルや一重項酸素を捕捉することができる。すなわち、上記特定の化合物は、酸化防止剤として機能する。これにより、量子ドット17の酸化による劣化を抑制することができるので、光波長変換組成物、光波長変換層11、および光波長変換シート10の耐熱性、耐湿熱性、および耐光性を向上させることができる。」
2e「【0211】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
【0212】
<光波長変換組成物の調製>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、光波長変換組成物を得た。
(光波長変換組成物1)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99質量部
・ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(製品名「IRGANOX1076」、BASF社製):1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0213】
(光波長変換組成物2)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99質量部
・ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(製品名「IRGANOX1076」、BASF社製):1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM-03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0214】
(光波長変換組成物3)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):90質量部
・ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(製品名「IRGANOX1076」、BASF社製):10質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0215】
(光波長変換組成物4)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99.9質量部
・ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(製品名「IRGANOX1076」、BASF社製):0.1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0216】
(光波長変換組成物5)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99質量部
・1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(製品名「IRGANOX3114」、BASF社製):1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0217】
(光波長変換組成物6)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99質量部
・テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(製品名「IRGANOX3114」、BASF社製):1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0218】
(光波長変換組成物7)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99質量部
・(ミックスト1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(製品名「LA-52」、ADEKA社製):1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0219】
(光波長変換組成物8)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99質量部
・(ミックスト1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(製品名「LA-52」、ADEKA社製):1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM-03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0220】
(光波長変換組成物9)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):90質量部
・(ミックスト1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(製品名「LA-52」、ADEKA社製):10質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0221】
(光波長変換組成物10)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99.9質量部
・(ミックスト1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(製品名「LA-52」、ADEKA社製):0.1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0222】
(光波長変換組成物11)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99質量部
・ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(製品名「LA-72」、ADEKA社製):1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0223】
(光波長変換組成物12)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99質量部
・メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル(製品名「LA-82」、ADEKA社製):1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0224】
(光波長変換組成物13)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):100質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0225】
(光波長変換組成物14)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99質量部
・ベヘン酸アミド(東京化成工業社製):1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0226】
(光波長変換組成物15)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製):99質量部
・4-フェニルベンゾイルヒドラジン(東京化成工業社製):1質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.2質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRI
CH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.2質量部
・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
【0227】
<オーバーコート層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、オーバーコート層用組成物を得た。
(オーバーコート層用組成物1)
・アクリル酸亜鉛(製品名「ZN-DA」日本触媒社製):30質量部
・メタノール:70質量部
・光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184、BASFジャパン社製):1質量部
【0228】
(オーバーコート層用組成物2)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(製品名「アロニックス(登録商標)M-403」、東亞合成社製):30質量部
・メタノール:70質量部
・光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184、BASFジャパン社製):1質量部
【0229】
<光拡散層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、光拡散層用組成物1を得た。
(光拡散層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:99質量部
・光散乱性粒子(架橋ポリスチレン樹脂ビーズ、製品名「SBX-4」、積水化成品工業株式会社製、平均粒子径4μm):158質量部
・光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184、BASFジャパン社製):1質量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン=1:1(質量比)):170質量部【0230】
<実施例1>
大きさ7インチおよび厚みが50μmの光透過性基材としての2枚のポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の片面にそれぞれ上記光拡散層用組成物を、塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、80℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。その後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより膜厚が10μmの光拡散層を形成し、光拡散層付きPET基材を形成した。
【0231】
次いで、一方の光拡散層付きPET基材における光拡散層側の面とは反対側の面に光波長変換組成物1を塗布し、80℃で乾燥させて、塗膜を形成した。そして、塗膜に他方の光拡散層付きPET基材における光拡散層側の面とは反対側の面が接するように他方の光拡散層付きPET基材を塗膜に積層した。この状態で、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させ、膜厚が100μmの光波長変換層を形成するとともに、光波長変換層と、2枚の光拡散層付きPET基材とを一体化した。これにより、実施例1に係る光波長変換シートを得た。
【0232】
<実施例2~12>
実施例2~12においては、光波長変換組成物1の代わりに表1に示される各光波長変換組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0232】
<実施例2~12>
実施例2~12においては、光波長変換組成物1の代わりに表1に示される各光波長変換組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0233】
<実施例13>
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の一方の面に光波長変換組成物1を塗布し、80℃で乾燥させて、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させた。最後に、PET基材を剥離し、実施例13に係る膜厚が100μmの光波長変換層のみからなる光波長変換シートを得た。
【0234】
<実施例14>
実施例14においては、光波長変換組成物1の代わりに光波長変換組成物7を用いたこと以外は、実施例13と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0235】
<実施例15>
実施例13で作製した光波長変換シート(光波長変換層)の一方の面に、オーバーコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させて、膜厚5μmのオーバーコート層を得た。次いで、同様に、光波長変換層の他方の面に、オーバーコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させて、膜厚5μmのオーバーコート層を得た。これにより、光波長変換層と、光波長変換層の両面に形成されたオーバーコート層とからなる光波長変換シートを得た。
【0236】
<実施例16>
実施例16においては、オーバーコート層用組成物1の代わりにオーバーコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0237】
<実施例17>
実施例17においては、光波長変換組成物1の代わりに光波長変換組成物7を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0238】
<実施例18>
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の一方の面にウレタンアクリレートを含むプリズム層用組成物を均一に塗布して、プリズム層用組成物の塗膜を形成し、プリズムシート用積層体を形成した。そして、所望の単位プリズムの形状に対し逆形状の凹部を有し、かつ回転する成形用型にレンズ層用組成物の塗膜が成形用型側となるようにプリズムシート用積層体を走行速度20m/分で供給して成形用型によってプリズム層用組成物の塗膜に単位プリズムの形状を賦形するとともに、PET基材を介してプリズム層用組成物の塗膜に紫外線等の光を照射して、プリズム層用組成物の塗膜を硬化させた。最後に、硬化させたプリズム層用組成物の塗膜をPET基材と共に成形用型から剥離して、PET基材の一方の面にプリズム層が形成されたプリズムシートを得た。プリズム層は、シート状の本体部と、この本体部上に並べて配置され、かつ各々が配列方向と交差する方向に延びており、頂角が90°であり、幅が47μmであり、高さが30μmである複数の三角柱状の単位プリズムを有していた。
【0239】
次いで、プリズムシートにおけるPET基材のプリズム層側の面とは反対側の面に光波長変換組成物1を塗布し、80℃で乾燥させて、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、プリズムシートと一体化した膜厚が100μmの光波長変換層を形成した。これにより、実施例18に係る光波長変換シートを得た。
【0240】
<実施例19>
実施例19においては、光波長変換組成物1の代わりに光波長変換組成物7を用いたこと以外は、実施例18と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0241】
<実施例20>
まず、2枚のバリア部材を次のような方法で作製した。高周波スパッタリング装置において、電極に周波数13.56MHz、電力5kWの高周波電力を印加することにより、チャンバー内で放電を生じさせて、大きさ7インチおよび厚みが50μmの光透過性基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の片面にターゲット物質(シリカ)からなる、厚みが50nmであり、かつ屈折率が1.46であるシリカ蒸着層を形成した。これにより、PET基材の一方の面にシリカ蒸着層が形成されたバリア部材を2枚形成した。
【0242】
次いで、両方のバリア部材におけるシリカ蒸着層側の面とは反対側の面に上記光拡散層用組成物1を、塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、80℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。その後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより膜厚が10μmの光拡散層を形成し、光拡散層付きバリア部材を形成した。
【0243】
次いで、一方の光拡散層付きバリア部材のシリカ蒸着層側に光波長変換組成物1を塗布し、80℃で乾燥させて、塗膜を形成した。そして、塗膜における光拡散層付きバリア部材のシリカ蒸着層の面に、シリカ蒸着層が接するように他方の光拡散層付きバリア部材を積層した。この状態で、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、両方の光拡散層付きバリア部材に密着した膜厚が100μmの光波長変換層を形成した。これにより、実施例20に係る光波長変換シートを得た。
【0244】
<実施例21>
実施例21においては、光波長変換組成物1の代わりに光波長変換組成物7を用いたこと以外は、実施例20と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0245】
<比較例1~3>
比較例1においては、光波長変換組成物1の代わりに表2に示される各光波長変換組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0246】
<比較例4~6>
比較例4~6においては、光波長変換組成物1の代わりに表2に示される各光波長変換組成物を用いたこと以外は、実施例13と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0247】
<比較例7~9>
比較例7~9においては、光波長変換組成物1の代わりに表2に示される各光波長変換組成物を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0248】
<比較例10~12>
比較例10~12においては、光波長変換組成物1の代わりに表2に示される各光波長変換組成物を用いたこと以外は、実施例18と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0249】
<比較例13~15>
比較例13~15においては、光波長変換組成物1の代わりに表2に示される各光波長変換組成物を用いたこと以外は、実施例20と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0250】
<入射光(青色光)の出光比率測定>
上記実施例および比較例に係る光波長変換シートにおいて、光波長変換シートの一方の表面に入射する青色光のピーク強度に対する量子ドットによって波長変換されずに光波長変換シートの他方の表面から出射する青色光のピーク強度の割合である青色光の出光比率を測定した。
【0251】
具体的には、まず、Kindle Fire(登録商標)HDX7のバックライト装置を用意した。
このバックライト装置は、発光ピーク波長が450nmの青色発光ダイオード、導光板、第1のプリズムシート、および第2のプリズムシートをこの順に備えているものであった。そして、光波長変換シートがこのバックライト装置に組み込んでいない状態で、バックライト装置の青色発光ダイオードを点灯させて、バックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する青色光の輝度を、バックライト装置の厚み方向におけるバックライト装置の発光面(表面)から400mm離れた位置において、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で測定し、測定された輝度分布から光波長変換シートの一方の表面に入射する波長450nmの青色光のピーク強度を求めた。
【0252】
次いで、このバックライト装置に、光波長変換シートを組み込んだ。具体的には、実施例1~17、20、21および比較例1~9、13~15においては、青色発光ダイオード側が入光面となるように導光板を配置するとともに、導光板の出光面上に実施例1~17、20、21および比較例1~9、14~16に係る光波長変換シート、第1のプリズムシート、第2のプリズムシートをこの順で配置して、バックライト装置を得た。なお、第2のプリズムシートは、単位プリズムの配列方向が第1のプリズムシートの単位プリズムの配列方向と直交するように配置された。
【0253】
実施例18、19および比較例10~12においては、青色発光ダイオード側が入光面となるように導光板を配置するとともに、導光板の出光面上にプリズムシートにおけるプリズム面が出光側となるように実施例18、19および比較例10~12に係る光波長変換シート、第2のプリズムシートをこの順で配置して、バックライト装置を得た。なお、第2のプリズムシートは、単位プリズムの配列方向が実施例18、19および比較例10~12に係る光波長変換シートにおけるプリズムシートの単位プリズムの配列方向と直交するように配置された。このようにして、実施例18、19および比較例10~12に係る光波長変換シートが組み込まれたバックライト装置を得た。
【0254】
そして、光波長変換シートを組み込んだバックライト装置の青色発光ダイオードを点灯させ、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射した。この状態で、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、バックライト装置の厚み方向におけるバックライト装置の発光面(表面)から400mm離れた位置において、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で測定し、測定された輝度分布から光波長変換シートの他方の表面から出射した波長450nmの青色光のピーク強度を求めた。
【0255】
そして、求めたこれらのピーク強度から、入射光の出光比率を求めた。入射光の出光比率は、入射光の出光比率をAとし、光波長変換シートの一方の表面に入射する波長450nmの青色光のピーク強度をBとし、光波長変換シートの他方の表面から出射する波長450nmの青色光のピーク強度をCとし、下記式によって求めた。なお、入射光の出光比率は、3回測定して得られた値の平均値とした。
A=C/B×100
【0256】
<水蒸気透過率および酸素透過率測定>
上記実施例および比較例に係る光波長変換シートにおいて、水蒸気透過率および酸素透過率をそれぞれ測定した。光波長変換シートの水蒸気透過率は、JIS K7129:2008に準拠して、水蒸気透過率測定装置(製品名「PERMATRAN-W3/31」、MOCON社製)を用いて、40℃、相対湿度90%の条件下で測定した。また、光波長変換シートの酸素透過率は、JIS K7126:2006に準拠して、酸素ガス透過率測定装置(製品名「OX-TRAN 2/21」、MOCON社製)を用いて23℃、相対湿度90%の条件下で測定した。水蒸気透過率および酸素透過率は、それぞれ3回測定して得られた値の平均値とした。
【0257】
<耐熱性試験後における輝度維持率測定>
上記実施例および比較例に係る光波長変換シートにおいて、光波長変換シートを80℃の環境下に500時間放置する耐熱性試験を行い、光波長変換シートにおける耐熱性試験前の輝度に対する耐熱性試験後における輝度の維持率を調べた。具体的には、まず、Kindle Fire(登録商標)HDX7のバックライト装置を用意し、耐熱性試験前の光波長変換シートを、上記出光比率の測定と同様にこのバックライト装置に組み込んだ。
【0258】
そして、光波長変換シートを組み込んだバックライト装置の青色発光ダイオードを点灯させ、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、バックライト装置の厚み方向におけるバックライト装置の発光面(表面)から400mm離れた位置において、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
【0259】
次いで、バックライト装置から耐熱性試験前の光波長変換シートを外し、この光波長変換シートに、光波長変換シートを80℃の環境下に500時間放置する耐熱性試験を行った。そして、耐熱性試験後の光波長変換シートを上記と同様に上記バックライト装置に組み込んだ。この状態で、上記と同様に、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、バックライト装置の厚み方向におけるバックライト装置の発光面(表面)から400mm離れた位置において、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
【0260】
測定したこれらの輝度から、耐熱性試験前の輝度に対する耐熱性試験後の輝度の維持率をそれぞれ求めた。輝度維持率は、輝度維持率をDとし、耐熱性試験前のバックライト装置の発光面から出射する光の輝度をEとし、耐熱性試験後のバックライト装置の発光面から出射する光の輝度をFとし、下記式によって求めた。耐熱性試験の前後における輝度維持率は、3回測定して得られた値の平均値とした。
D=F/E×100
【0261】
<耐湿熱性試験後における輝度維持率測定>
上記実施例および比較例に係る光波長変換シートにおいて、光波長変換シートを60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐湿熱性試験を行い、光波長変換シートにおける耐湿熱性試験前の輝度に対する耐湿熱性試験後における輝度の維持率を調べた。具体的には、まず、Kindle Fire(登録商標)HDX7のバックライト装置を用意し、耐湿熱性試験前の光波長変換シートを上記出光比率の測定と同様にこのバックライト装置に組み込んだ。
【0262】
そして、光波長変換シートを組み込んだバックライト装置の青色発光ダイオードを点灯させ、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、バックライト装置の厚み方向におけるバックライト装置の発光面(表面)から400mm離れた位置において、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
【0263】
次いで、バックライト装置から耐湿熱性試験前の光波長変換シートを外し、この光波長変換シートに、光波長変換シートを80℃の環境下に500時間放置する耐湿熱性試験を行った。そして、耐湿熱性試験後の光波長変換シートを上記と同様に上記バックライト装置に組み込んだ。この状態で、上記と同様に、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、バックライト装置の厚み方向におけるバックライト装置の発光面(表面)から400mm離れた位置において、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
【0264】
測定したこれらの輝度から、耐湿熱性試験前の輝度に対する耐湿熱性試験後の輝度の維持率をそれぞれ求めた。輝度維持率は、輝度維持率をGとし、耐湿熱性試験前のバックライト装置の発光面から出射する光の輝度HEとし、耐湿熱性試験後のバックライト装置の発光面から出射する光の輝度をIとし、下記式によって求めた。耐湿熱性試験の前後における輝度維持率は、3回測定して得られた値の平均値とした。
G=I/H×100
【0265】
<耐光性試験後における輝度維持率測定>
上記実施例および比較例に係る光波長変換シートにおいて、光波長変換シートを42℃、相対湿度50%の環境下でカーボンアークランプからの光を200時間照射する耐光性試験を行い、光波長変換シートにおける耐光性試験前の輝度に対する耐光性試験後における輝度の維持率を調べた。具体的には、まず、Kindle Fire(登録商標)HDX7のバックライト装置を用意し、耐光性試験前の光波長変換シートを上記出光比率の測定と同様にこのバックライト装置に組み込んだ。
【0266】
そして、光波長変換シートを組み込んだバックライト装置の青色発光ダイオードを点灯させ、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、バックライト装置の厚み方向におけるバックライト装置の発光面(表面)から400mm離れた位置において、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
【0267】
次いで、バックライト装置から耐光性試験前の光波長変換シートを外し、この光波長変換シートに、42℃、相対湿度50%の環境下でカーボンアークランプからの光を200時間照射する耐光性試験を行った。そして、耐光性試験後の光波長変換シートを上記と同様に上記バックライト装置に組み込んだ。この状態で、上記と同様に、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、バックライト装置の厚み方向におけるバックライト装置の発光面(表面)から400mm離れた位置において、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
【0268】
測定したこれらの輝度から、耐光性試験前の輝度に対する耐光性試験後の輝度の維持率をそれぞれ求めた。輝度維持率は、輝度維持率をJとし、耐光性試験前のバックライト装置の発光面から出射する光の輝度をKとし、耐光性試験後のバックライト装置の発光面から出射する光の輝度をLとし、下記式によって求めた。耐光性試験の前後における輝度維持率は、3回測定して得られた値の平均値とした。
J=L/K×100
【0269】
<点状の輝度欠点評価>
上記実施例および上記比較例に係る耐熱性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置を用いて、バックライト装置における発光時の発光面に点状の輝度欠点が存在するかを目視で観察し、評価した。また、上記実施例および上記比較例に係る耐湿熱性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置や耐光性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置を用いて、同様に、バックライト装置における発光時の発光面に点状の輝度欠点が存在するかを目視で観察し、評価した。
○:点状の輝度欠点が確認されなかった。
△:点状の輝度欠点が数点確認された。
×:点状の輝度欠点が多数確認された。
【0270】
<光波長変換シートの周縁部の劣化幅測定>
実施例および比較例に係る耐熱性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置を用いて、バックライト装置における発光時の発光面における輝度分布を、光波長変換シートの厚み方向から、2D色彩輝度計(製品名「UA-200」、トプコンテクノハウス社製)を用いて、測定した。そして、測定した発光面の輝度分布から、発光面の中央部の輝度に対して輝度が80%となる発光面の位置(輝度80%位置)を求め、発光面における輝度80%位置に最も近い端から輝度80%位置までの最短距離を求めた。そして、この最短距離をランダムに20箇所について求め、この20箇所の最短距離の平均値を、光波長変換シートの周縁部の劣化幅とした。また、実施例および比較例に係る耐湿熱性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置や耐光性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置を用いて、同様にして、発光面の輝度分布を測定し、発光面の中央部の輝度に対して輝度が80%となる発光面の位置(輝度80%位置)を求め、発光面における輝度80%位置に最も近い端から輝度80%位置までの最短距離を求めた。
【0271】
以下、結果を表1~表4に示す。
【表1】
[図:0001407845000008.jpg]
【0272】
【表2】
[図:0001407845000009.jpg]
【0273】
【表3】
[図:0001407845000010.jpg]
【0274】
【表4】
[図:0001407845000011.jpg]
【0275】
以下、結果について述べる。表1~表4から分かるように、実施例1~19に係る光波長変換シートにおいては、フェノール系化合物やアミン系化合物を含んでいるので、フェノール系化合物やアミン系化合物を含まない比較例1~12に係る光波長変換シートに比べて、耐熱性試験後、耐湿熱性試験後および耐光性試験後の輝度維持率が高かった。また、実施例20、21に係る光波長変換シートにおいては、フェノール系化合物やアミン系化合物を含んでいるので、フェノール系化合物やアミン系化合物を含まない比較例13~15に係る光波長変換シートに比べて、耐熱性試験後、耐湿熱性試験後および耐光性試験後の輝度維持率が高かった。これは、光波長変換組成物1~12およびその硬化物である光波長変換層の耐熱性、耐熱性、耐光性が高く、また光波長変換組成物および光波長変換層がフェノール系化合物やアミン系化合物を含むと、量子ドットの劣化を抑制できることを意味している。比較例2、3、5、6、8、9、11、12、14、15で用いている光波長変換組成物14、15中のベヘン酸アミドや4-フェニルベンゾイルヒドラジンは、酸化防止剤としての機能を有するが、フェノール系化合物やアミン系化合物ではない。このことから、酸化防止剤としての機能を有する化合物であっても、量子ドットの劣化を抑制できるとは限らないことが理解できる。また、実施例1~21に係る光波長変換シートにおいては、入射光の出光比率が10%以上であった。これは、実施例1~21に係る光波長変換シートにおいては、フェノール系化合物やアミン系化合物が入射光(青色光)を吸収しにくいことを意味している。
【0276】
実施例1~19および比較例1~12に係る光波長変換シートにおいては、バリア部材を用いていなかったので、点状の輝度欠点は確認されなかった。また、実施例20、21に係る光波長変換シートにおいては、バリア部材を用いているが、フェノール系化合物やアミン系化合物を含んでいるので、点状の輝度欠点は確認されなかった。これに対し、フェノール系化合物やアミン系化合物を用いていない比較例13~15に係る光波長変換シートにおいては、点状の輝度欠点が確認された。これは、フェノール系化合物やアミン系化合物を用いると、量子ドットの劣化を抑制できることを意味している。
【0277】
実施例1~21に係る光波長変換シートにおいては、フェノール系化合物やアミン系化合物を用いているので、周縁部の劣化は抑制されていた。これは、フェノール系化合物やアミン系化合物を用いた場合には、量子ドットの劣化抑制効果を有することを意味している。これに対し、フェノール系化合物やアミン系化合物を用いていない比較例1~12に係る光波長変換シートにおいても、周縁部の劣化の結果は0mmであったが、これは、光波長変換層が露出していたため、耐熱性試験、耐湿熱性試験および耐光性試験において、全体的に量子ドットが劣化してしまい、周縁部と中央部で輝度の差がほぼ無かったためである。また、比較例13~15に係る光波長変換シートは、バリア部材によって中央部の劣化が比較的抑制されたが、周縁部の劣化が抑制されなかった。
【0278】
実施例1に係る光波長変換シートの全ヘイズ値は98.9%、内部ヘイズ値は96.7%、外部ヘイズ値は2.2%であり、実施例2に係る光波長変換シートの全ヘイズ値は99.3%、内部ヘイズ値は99.3%、外部ヘイズ値は0%であった。両方の光波長変換シートにおいては、外部ヘイズ値が内部ヘイズ値よりも小さくなっているので、両方とも耐久性試験前後に関わらず輝度が高いが、実施例1に係る光波長変換シートと実施例2に係る光波長変換シートを比べると、実施例2に係る光波長変換シートの方が耐湿熱性試験前後に関わらず輝度が高かった。これは、実施例2に係る光波長変換シートは光散乱性粒子としてのアルミナ粒子を含んでいるので、実施例2に係る光波長変換シートの内部ヘイズ値が実施例1に係る波長変換シートの内部ヘイズ値に比べて大きくなり、これにより外部ヘイズ値が小さくなったためである。したがって、光波長変換シートに光散乱性粒子を含ませて、内部ヘイズ値をより高めることによって、外部ヘイズ値をより小さくすることができ、これにより光波長変換効率をより向上できることが確認できた。なお、光波長変換シートにおける全ヘイズ値、内部ヘイズ値、ヘイズ値は以下のようにして測定した。まず、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7136に従って光波長変換シートの全ヘイズ値を測定した。その後、光波長変換シートの両面に、膜厚が25μmの透明光学粘着層(製品名「パナクリーンPD-S1」、パナック社製)を介して厚みが60μmのトリアセチルセルロース基材(製品名「TD60UL」、富士フイルム社製)を貼り付けた。これによって、光波長変換シートにおける表面の凹凸形状が潰れ、光波長変換シートの表面が平坦になった。この状態で、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7136に従ってヘイズ値を測定して内部ヘイズ値を求めた。そして、全ヘイズ値から内部ヘイズ値を差し引くことにより、外部ヘイズ値を求めた。なお、透明光学粘着層およびトリアセチルセルロース基材も光波長変換シートの内部ヘイズ値や外部ヘイズ値に影響を与えるおそれがあるが、光波長変換シートの内部散乱が極めて大きい場合には、これらが内部ヘイズ値や外部ヘイズ値に与える影響は極めて小さくなるので、無視できる。また、光波長変換シートの内部散乱が極めて大きい場合には、内部ヘイズ値が全ヘイズ値と同じ値になることがあるので、外部ヘイズ値が0%になることもある。
【0279】
また、実施例15、16に係る光波長変換シートにおいて、オーバーコート層に対してスクラッチ試験を行い、その際の垂直力および水平力を測定したところ、実施例15に係る光波長変換シートは、垂直力が21μNであり、水平力が-11μNであり、実施例15に係る光波長変換シートは、垂直力が11μNであり、水平力が-6μNであった。これらのオーバーコート層は緻密な膜となり、光波長変換層を大気暴露から防ぐ能力を有していたが、光波長変換層を大気暴露から防ぐ能力においては実施例15に係る光波長変換シートのオーバーコート層の方が実施例16に係る光波長変換シートのオーバーコート層よりも高いと言える。スクラッチ試験は、ナノインデンテーション装置(製品名「TI950 TriboIndenter」、HYSITRON(ハイジトロン)社製)を用いて、オーバーコート層の断面からオーバーコート層の内部方向に圧子(Cube Corner:Ti037_110410(12))を50nm押し込み、その深さを一定として、30秒間この圧子を移動速度4μm/minで水平方向に移動させることによって行い、その際の垂直力(荷重)および水平力を測定し、測定された垂直力および水平力の平均値を求め、さらにこのスクラッチ試験を5回繰り返すことによって求めた垂直力の5つの平均値の平均値(5回平均値)を垂直力とし、また水平力の5つの平均値の平均値(5回平均値)を水平力とした。
【0280】
上記実施例においては、緑色発光量子ドットや赤色発光量子ドットのコア材料としてCdSeを用いているが、コア材料としてInP、InAs等の非Cd系材料を用いても、上記実施例と同様の結果が得られた。」
(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
なお、摘記事項の後ろに異議申立人らによる仮訳を掲載した。
3a「
[図:0001407845000012.jpg]
」
請求の範囲
請求項1 無機発光粒子表面に結合したリガンド(ligand)を通じて共有結合で連結された抗酸化剤(antioxidant)で成り立つ発光体。
3b「
[図:0001407845000013.jpg]
」
[0004]しかし量子点や量子棒は外部から浸透する水分や酸素に非常に脆弱で発光特性が低下することがある。水分や酸素の浸透を防止するために量子点などの表面にポリエチレングリコール(po1yethy1eneg1yco1;PEG)のようなポリマーでカプセル化(encapsulation)して保護(passivation)する方法が提案された。この時、PEGはファンデルワールス力(Van Der Wa11s force)を利用して量子点表面にカプセル化されている。PEGに保護された量子点で有機層の密度が低いから、量子点を完璧に保護することが困難である。よって時間が経過することによって水分や酸素価量子点で浸透して量子点の発光特性の低下する問題がある。
3c「
[図:0001407845000014.jpg]
」
[0014]無機発光粒子と抗酸化剤は多数のリガンドを通じて強い共有結合で連結されていて、無機発光粒子表面で有機物の密度が著しく高い。外部環境に存在する酸素は無機発光粒子表面で浸透する前に無機発光粒子表面に多数連結された抗酸化剤によって消去される。よって酸素の浸透によって無機発光粒子が変質されるか劣化されないので、時間経過にもかかわらず元々の優れた発光効率を維持することができる。
3d「
[図:0001407845000015.jpg]
・・・」
[0017]図1は本発明の例示的な実施形態による発光体を概略的に図示した模式図である。図2は本発明の例示的な実施形態による発光体が含まれた発光フィルムの構造を概略的に図示した断面図である。図3は本発明の例示的な実施形態によって発光体が適用された発光フィルムを含む表示装置を概略的に図示した断面図である。図4は本発明の例示的な実施形態による表示装置を構成する表示パネルを概略的に図示した断面図である。図5は本発明の他の例示的な実施形態によって発光体が適用されることができる表示装置を概略的に図示した断面図である。図6は本発明の例示的な実施形態によって発光体が適用されたLEDパッケージを概略的に図示した断面図である。図7及び図8は本発明の例示的な実施形態によって発光体を発光物質層に適用した発光ダイオードを概略的に図示した断面図である。図9は本発明の例示的な実施形態による発光ダイオードを適用した発光装置の一例として、発光表示装置を概略的に図示した断面図である。図10は本発明の例示的な実施例によって量子点表面のリガンドを通じて抗酸化剤が共有結合になった発光体に対する赤外線(IR)分光を利用した分析結果を示したグラフである。比較例として、抗酸化剤と量子点が単純混合した発光組成物と、リガンドが表面に結合した量子点に対するIR分光分析結果をまた示す。図11は本発明の例示的な実施例によって合成された発光体の時間経過による量子収率(quantumyield;QY)を測定した結果を示したグラフである。図12は比較例によって量子点及び抗酸化剤が単純混合した発光組成物の時間経過による量子収率を測定した結果を示したグラフである。図13は本発明の例示的な実施形態によって合成されたペロブスカイト構造の量子棒が発光した状態を示す写真である。
・・・
3e「
[図:0001407845000016.jpg]
」
[0051]抗酸化剤(130)は外部から浸透した酸素と応じて酸素を除去することができる任意の抗酸化剤が可能である。 一つの例示的な実施形態で、抗酸化剤はビタミン系(vitamin)、アントシアニン系(Anthocyanins)、カルテノイド系(Cartenoids)、フラボイド系(Flavonoids)、カテキン系(Catechins)、ブチル化ヒドロキシアニソール(Buty1ated Hydroxy Aniso1e;BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(Buty1ated Hydroxy To1uene;BHT)、プロピルガレート(Propyl Gallate、pG)及びトルブチルハイドロキノン(Tertiary Buty1 Hydroquinone;TBHQ)で構成される群で選択されうる。
3f「
[図:0001407845000017.jpg]
・・・
[図:0001407845000018.jpg]
[図:0001407845000019.jpg]
」
[0169]実施例3;量子収率測定
[0170]実施例1で製造された発光体と、比較例2で製造された発光組成物の初期量子効率と、時間経過による量子収率を測定した。実施例1で製造された発光体に対する量子効率測定結果を図11に、比較例1で製造された組成物に対する量子効率測定結果を図12に示す。
[0171]図12に示すように、量子点と抗酸化剤が単純に混合した組成物は初期量子点効率も低いだけでなく、時間経過によって量子効率が急速に低下した。すなわち、比較例で製造された発光組成物は初期量子収率に比べて30日が経過した時点で量子収率が16%ほど減少した。
[0182]実施例7:発光ダイオード製作
[0183]実施例4で合成した発光体を発光物質層(EML)に使用した発光ダイオードを製作した。..o続いて次のような順序によって発光層及び陰極を積層した。・・・発光物質層(EML、合成例2の発光体(18mg/mL in ethano1)をスピンコーティング(2000rpm、40秒)と80℃で30分加熱;20nm)、・・・。蒸着後被膜形成のために蒸着チャンパで乾燥ボックス内に移して後続的にUV硬化工ポキシ及び水分ゲッターを使用してカプセル化した。
[0184]比較例3:発光ダイオード製作
[0185]実施例7と比較して、発光物質層で何らの処理をしないペロブスカイト量子棒(CsSnBr3)を適用したことを除いて実施例7の手続きを繰り返して発光ダイオードを製作した。
3g「
[図:0001407845000020.jpg]
」
(4)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「
[図:0001407845000021.jpg]
[図:0001407845000022.jpg]
」第634ページ左欄第1行~右欄第8行)
4b「
[図:0001407845000023.jpg]
」(第637ページ左欄第8~21行
(5)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
なお、摘記事項の後ろに異議申立人らによる仮訳を掲載した。
5a「
[図:0001407845000024.jpg]
」
請求の範囲
請求項1 マトリックス樹脂内カプセル化樹脂によって量子ドットがカプセル化された粒子が分散した量子ドットフィルム製造のために、量子ドット及び非極性ポリオレフィン系ワックスを含む内部相(innerphase)と、光硬化性重合化合物及び光開始剤を含む外部相(outerphase)で成り立って、前記外部相に内部相が液滴状態で分散した硬化性エマルジョン組成物を製造する段階;前記硬化性エマルジョン組成物を非極性ポリオレフィン系ワックスの融点以下に下げて内部相の量子ドットをカプセル化する段階;及び得られた分散液に光照射を行って外部相を硬化する段階を含んでなり、前記非極性ポリオレフィン系ワックスが下記化学式1及び化学式2の繰り返し構造を含む、量子ドットフィルムの製造方法:
[化学式1]
-[CH2-CH2]a-
[化学式2]
-[CH2-CHR1]b-
(前記化学式1及び2において、R1はC1~C15の線形または分枝型のアルキル基であり、0.Ol≦b≦O.96、a+b=lである。)
5b「
[図:0001407845000025.jpg]
」
[0053]また、量子ドット(22)はペロブスカイトナノ結晶粒子であっても良い。ペロブスカイトはABX3、A2BX4、ABX4またはAn-1BnX3n+l(nは2~6の整数)の構造を含んで、前記Aは有機アンモニウムまたはアルカリ金属物質で、前記Bは金属物質で、前記Xはハロゲン元素である。
5c「
[図:0001407845000026.jpg]
」
[0082]‘外部相組成物(Outerphasecomposition)'は硬化性エマルジョン組成物の外部に連続的に存在する組成物を意味する。前記外部相組成物は光硬化性重合化合物及び光開始剤を含む。
5d「
[図:0001407845000027.jpg]
」
[0086]好ましくは、マトリックス樹脂(10)はアクリル系高分子である。前記アクリル系高分子はアクリル系オリゴマー、アクリル系モノマー及びこれらの組合せで成り立った1種以上の組成の重合を通じて製造されることができ、最終硬化後得られたマトリックス樹脂(10)がアクリル系樹脂である。
5e「
[図:0001407845000028.jpg]
」
[0094]光開始剤は100nm~400nmの波長を有する紫外線領域の光を吸収して分子の分解によってラジカルを形成することができることならその種類に関係なく使用することができる。
5f「
[図:0001407845000029.jpg]
」
[0216](1)硬化性エマルジョン組成物製造
[0217]10mlガラス瓶にトルエン25gを入れてポリオレフィン系ワックス25mg及び量子点分散液0.06mlを投入した後、トルエンを除去して内部上組成物を製造した。前記量子点分散液はオクタデシルアミンをキャッピング層で具備するCdSe系量子点(商品名:Nanodot-HE、Ecof1ux社、韓国)を20mg/mlの濃度でトルエンに分散させて製造した。
[0218]ウレタンアクリレートオリゴマー(Urethaneacry1ateo1igamer) 0.5gにUV硬化開始剤(irgacurel84)を分散した光硬化性樹脂溶液を準備した。前記内部上組成物を光硬化性樹脂溶液と混合後減圧回転濃縮器を使用して溶媒をすべて除去したコーティング液を製造した。
[0219](2)波長変換シート製造
[0220]前記製造された硬化性エマルジョン組成物を100rpmで撹拌しながら100ないし110℃で透明になるまで加熱後再び常温に下げて内部上のポリエチレンワックスを固相化してカプセル化された量子点粒子が分散した分散液を得た。
[0221]前記分散液をPET基材の第1バリアフィルム(i-component、50μm)と第2バリアフィルム(i-component、50μm)の間に塗布して、前記塗膜に1000mJ/cm2の光量で1分間UVに露光して硬化させて波長変換シートを製造した。この時カプセル化された量子点粒子を含む量子点フィルムの厚さは80μmだった。
3 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
甲1には、実施例1において「ポリスチレンペレットをスチレンに溶解した溶液に、ペロブスカイトセシウムハロゲン化鉛量子ドット及びジビニルベンゼンを加え、ベンゾインジメチルエーテル開始剤を添加して取得した、カプセル化されていない量子ドットを含むUV硬化型接着剤であって、拡散板に塗布し、厚さ約50μmにして表面に広げて、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の光学フィルムに密着させ、光硬化されるUV接着剤。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1e参照)。
(2)甲2に記載された発明
甲2には、実施例1において光波長変換組成物1を硬化して光波長変換層とすることが記載されているから(摘記2e参照)、光波長変換組成物1として「・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製)、・ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(製品名「IRGANOX1076」、BASF社製)、・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm)、・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm)、・ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製)を配合した光波長変換組成物1であって、一方の光拡散層付きPET基材における光拡散層側の面とは反対側の面に塗布し、塗膜を形成し、塗膜に他方の光拡散層付きPET基材における光拡散層側の面とは反対側の面が接するように他方の光拡散層付きPET基材を塗膜に積層し、硬化して光波長変換層とする光波長変換組成物1。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる(摘記2e参照)。
4 対比・判断
(1)甲1発明を主引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲1発明との対比
甲1発明の「ペロブスカイトセシウムハロゲン化鉛量子ドット」及び「拡散板に塗布し、厚さ約50μmにして表面に広げて、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の光学フィルムに密着させ、光硬化されるUV接着剤」は、それぞれ、本件特許発明1の「ペロブスカイト化合物を含む蛍光粒子(A)」、及び「硬化性組成物」に相当する。
甲1発明の「ジビニルベンゼン」は、重合性不飽和基であるビニル基を含むから、本件特許発明1の「光重合性化合物(B)」に相当する。
甲1発明の「ベンゾインジメチルエーテル開始剤」は、本件特許明細書【0054】の(d5)で表される部分構造を有するアルキルフェノン化合物であるから、本件特許発明1の「光重合開始剤(C)」及び「前記光重合開始剤(C)は、オキシム系化合物、アルキルフェノン化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物からなる群より選択される1種以上を含み」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「ペロブスカイト化合物を含む蛍光粒子(A)、光重合性化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含み、
前記光重合開始剤(C)は、オキシム系化合物、アルキルフェノン化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物からなる群より選択される1種以上を含む、硬化性組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1は、酸化防止剤(D)を含み、前記酸化防止剤(D)は、フェノール系酸化防止剤を含むのに対し、甲1発明は酸化防止剤を含まない点。
(イ)相違点についての検討
甲1の[0010]には甲1発明の量子ドットを含むUV接着剤の添加剤として、酸化防止剤を添加することが記載されている(摘記1c参照)。
そして、甲2には、光波長変換シートにおいては、量子ドットは水分や酸素によって劣化してしまうこと、量子ドットを含む光波長変換シートに酸化防止機能を得る観点からフェノール系化合物を含むものが記載されている(摘記2a、2b、2d参照)。
また、甲3には、量子点(量子ドット)に、ブチル化ヒドロキシアニソール(Buty1ated Hydroxy Aniso1e;BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(Buty1ated Hydroxy To1uene;BHT)及びトルーブチルハイドロキノン(Tertiary Buty1 Hydroquinone;TBHQ)のような抗酸化剤を連結することが、記載されており(摘記3a、3e参照)、ここで、ブチル化ヒドロキシトルエン(Buty1ated Hydroxy To1uene;BHT)及びトルーブチルハイドロキノン(Tertiary Buty1 Hydroquinone;TBHQ)は、フェノール系化合物である。
しかし、甲2にはフェノール系化合物とアミン系化合物が同等のものとして記載されており(摘記2a、2d、2e参照)、甲3のフェノール系化合物(ブチル化ヒドロキシトルエン(Buty1ated Hydroxy To1uene;BHT)及びトルーブチルハイドロキノン(Tertiary Buty1 Hydroquinone;TBHQ))は9個の抗酸化剤の選択肢の2つである。
そうすると、甲1発明のUV接着剤を抗酸化剤を添加したものとするとしても、抗酸化剤として、甲2にアミン系化合物と同等のものとして記載されるフェノール系化合物を優先的に採用すること、あるいは、甲3に記載の9個の抗酸化剤のうちからフェノール系化合物を選択する動機付けがあるとはいえないし、甲4及び甲5にも酸化剤としてフェノール系化合物を採用することを動機づける記載はない。
(ウ)本件特許発明の効果について
甲2には酸化防止剤としてフェノール系化合物を含む光波長変換シートと酸化防止剤としてアミン系化合物を含むものは同等の効果を示すことが記載されているところ(摘記2e参照)、本件特許明細書の【表1】からみて、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を含む本件特許発明1の硬化性組成物は、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を含むものと比較して、経時安定性が高いという効果を奏するといえるから、本件特許発明1により奏される効果は、甲1発明及び甲2~甲5の記載から、当業者が予測できない顕著なものであるといえる。
(エ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2~5
本件特許発明2~5は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明との<相違点1>と同じ相違点を有するものであり、本件特許発明2~5は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)甲2発明を主引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲2発明との対比
甲2発明の「・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV-5500」、DIC社製)」は、重合性不飽和基であるビニル基を含むから、本件特許発明1の「光重合性化合物(B)」に相当する。
甲2発明の「・ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(製品名「IRGANOX1076」、BASF社製)」は、本件特許発明1の「酸化防止剤(D)」及び「酸化防止剤(D)は、フェノール系酸化防止剤を含む」に相当する(摘記2b、2d参照)。
甲2発明の「・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm)、・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm)」は、それぞれ、本件特許発明1の「ペロブスカイト化合物を含む蛍光粒子(A)」と「蛍光粒子(A)」の限りにおいて一致する。
甲2発明の「ラジカル重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製)」は、本件特許明細書【0054】の(d5)で表される部分構造を有するから、本件特許発明1の「光重合開始剤(C)」及び「前記光重合開始剤(C)は、オキシム系化合物、アルキルフェノン化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物からなる群より選択される1種以上を含み」に相当する。
甲2発明の「一方の光拡散層付きPET基材における光拡散層側の面とは反対側の面に光塗布し、塗膜を形成し、塗膜に他方の光拡散層付きPET基材における光拡散層側の面とは反対側の面が接するように他方の光拡散層付きPET基材を塗膜に積層し、硬化して光波長変換層とする光波長変換組成物1」は本件特許発明1の「硬化性組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、「蛍光粒子(A)、光重合性化合物(B)、光重合開始剤(C)及び酸化防止剤(D)を含み、
前記光重合開始剤(C)は、オキシム系化合物、アルキルフェノン化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物からなる群より選択される1種以上を含み、
前記酸化防止剤(D)は、フェノール系酸化防止剤を含む、硬化性組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
蛍光粒子(A)が、本件特許発明1では「ペロブスカイト化合物を含む蛍光粒子(A)」であるのに対し、甲2発明では「・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm)」、「・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm)」である点。
(イ)相違点についての検討
甲2発明の光波長変換組成物1の「・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm)」、「・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA-ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm)」は、いずれも、コアシェル構造を有するものである(摘記2c参照)。
一方、甲1には量子ドットを含むUV接着剤における量子ドットとしてコアシェル型量子ドットとともにペロブスカイト量子ドットが記載されており(摘記1c参照)、ペロブスカイト量子ドットとしてペロブスカイトセシウムハロゲン化鉛量子ドットが記載されており(摘記1e参照)、甲5には波長変換シートに含まれる量子ドットとしてペロブスカイトナノ結晶が記載されている(摘記5b、5f参照)。
しかし、甲2発明の硬化して光波長変換層とするコアシェル型量子ドットを含む光波長変換組成物1はコアシェル型量子ドットを含むことが前提であり(摘記2c【0032】)、コアシェル型量子ドットに代えて、甲1に記載の量子ドットを含むUV接着剤におけるコアシェル型量子ドットと同様に用いられるペロブスカイトセシウムハロゲン化鉛量子ドットのようなペロブスカイト量子ドット、あるいは、甲5に記載の波長変換シートに含まれる量子ドットであるペロブスカイトナノ結晶を採用する動機付けがあるとはいえないし、甲3及び甲4にもペロブスカイトナノ結晶を採用することを動機づける記載はない。
(ウ)本件特許発明の効果について
本件特許明細書の【表1】、特に、酸化防止剤が共通する実施例6と実施例9からみて、蛍光粒子(A)としてペロブスカイト化合物を含むものが、コアシェル型量子ドットを含むものと比較して、経時安定性が高いという効果を奏するといえるから、本件特許発明1により奏される効果は、甲2発明、並びに、甲1及び甲3~甲5の記載から、当業者が予測できない顕著なものであるといえる。
(エ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2~5
本件特許発明2~5は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲2発明との<相違点2>と同じの相違点を有するものであり、本件特許発明2~5は、2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
1 理由2(サポート要件)本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
記
・請求項1~5について
「特許請求項の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」(知財高裁大合議判決:知財高判平17.11.11 平成17年(行ケ)10042号 「偏光フィルムの製造方法」)である。
これに対し、特許権者は、本件特許発明に関して、当業者が予測し得ない「硬化性組成物の経時安定性(保管安定性)の向上」という効果を奏するものであり、進歩性を有すると主張した。そして、「硬化性組成物の経時安定性(保管安定性)の向上」という効果に基づいて進歩性が認められ特許されている。
そうすると、本件特許において、請求項の記載がサポート要件を満たすというためには、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明の記載、技術常識により、当業者が「硬化性組成物の経時安定性(保管安定性)の向上」という課題を解決できると認識できる範囲のもの」でなくてはならない。
本件特許明細書には、硬化性組成物の経時安定性について以下の記載がある。
「【0146】
<実施例1~9、比較例1及び2:硬化性組成物の調製及び硬化膜の作製>
(1)硬化性組成物の調製
製造例1で得られたペロブスカイト化合物からなる蛍光粒子(A)を含む分散液3、及び表1に示される他の配合成分を混合した後、トルエンをエバポレーターで除去することにより、硬化性組成物を調製した(比較例1及び2は、酸化防止剤の添加なし)。各配合成分の配合比は、硬化性組成物中の蛍光粒子(A)の含有量を1.0質量部(実施例9及び比較例2においては0.9質量部)としたときに、各配合成分の配合量が表1に示される量となるように調整した。表1において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。
【0147】
表1に示される各配合成分の詳細は次のとおりである。
〔a〕EH-A:2-エチルへキシルアクリレート
〔b〕TMPT-A:トリメチロールプロパントリアクリレート
〔c〕光重合開始剤(C):IGM Resins B.V社製 商品名「omnirad 819」(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド)
〔d〕アミン系1:アミン系酸化防止剤(BASF社製 商品名「Tinuvin 770」)
〔e〕アミン系2:アミン系酸化防止剤(クラリアント社製 商品名「Hostavin PR31」)
〔f〕フェノール系1:フェノール系酸化防止剤(BASF社製 商品名「Irganox 1076」)
〔g〕フェノール系2:フェノール系酸化防止剤((株)ADEKA製 商品名「アデカスタブ AO-40」)
〔h〕フェノール系3:フェノール系酸化防止剤((株)ADEKA製 商品名「アデカスタブ AO-80」)
〔i〕フェノール系4:リン-フェノール系酸化防止剤(住友化学(株)製 商品名「スミライザー GP」)
〔j〕硫黄系:硫黄系酸化防止剤(住友化学(株)製 商品名「スミライザー TPM」)
〔k〕リン系:リン系酸化防止剤((株)ADEKA製 商品名「アデカスタブ 1178」)
〔l〕量子ドット:InP/ZnSコアシェル型量子ドット(特開2016-65178号公報に記載の、一般的に知られている方法(Journal of American Chemical Society. 2007, 129, 15432-15433)で合成することができる量子ドット。)
【0148】
(2)硬化膜の作製
第1のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、バーコーターを用いて硬化性組成物を塗布した。塗布層の上に第2のPETフィルムを載せ、2枚のPETフィルムで塗布層を挟んだ後、空気中で高圧水銀灯からの紫外線(UVA)を塗布層に照射して、塗布層を硬化させた。得られた硬化膜の厚みは30μmであった。紫外線照射の積算光量は300mJ/cm2とした。
【0149】
[評価試験]
〔1〕耐熱試験
上記「(2)硬化膜の作製」において得られた、第1のPETフィルム/硬化性組成物の硬化膜/第2のPETフィルムからなる積層体について、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス株式会社製、C9920-02)を用いて、励起光450nm、室温、大気下にて量子収率(%)を測定した。この量子収率を「QY(成膜後)」(%)とする。
次に、第1のPETフィルム/硬化性組成物の硬化膜/第2のPETフィルムからなる積層体について、これを空気中、温度150℃で90分間保持する耐熱試験を実施し、耐熱試験後の積層体について、上記と同様にして量子収率(%)を測定した。この量子収率を「QY(耐熱試験後)」(%)とする。
下記式に基づき、QY維持率Aを算出した。
QY維持率A(%)=100×QY(耐熱試験後)/QY(成膜後)
QY維持率Aが高いほど、硬化膜の熱による量子収率の低下が小さい。実施例及び比較例におけるQY維持率Aを表1に示す。
【0150】
〔2〕硬化性組成物の経時安定性試験
硬化前の硬化性組成物をガラス状に塗布したサンプルについて、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス株式会社製、C9920-02)を用いて、励起光450nm、室温、大気下にて量子収率(%)を測定した。この量子収率を「QY(初期)」(%)とする。
次に、硬化前の硬化性組成物を空気中、温度23℃においてサンプル瓶中で12日間保持する経時安定性試験を実施し、経時安定性試験後のサンプルについて、上記と同様にして量子収率(%)を測定した。この量子収率を「QY(経時安定性試験後)」(%)とする。
下記式に基づき、QY維持率Bを算出した。
QY維持率B(%)=100×QY(経時安定性試験後)/QY(初期)
QY維持率Bが高いほど、硬化性組成物の経時安定性(保管安定性)が高い。実施例及び比較例におけるQY維持率Bを表1に示す。
【0151】
【表1】
[図:0001407845000030.jpg]
」
すなわち、本件特許明細書には、本件発明に係る実施例として、実施例3~6の硬化性組成物が示されている。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、「酸化防止剤(D)は、フェノール系酸化防止剤を含む」ことを発明特定事項とする本件特許発明の実施例としては、
ペロブスカイト化合物を含む蛍光粒子(A):シラザン改質したFAPbBr3粒子
光重合性化合物(B):2-エチルヘキシルアクリレートとトリメチロールプロパントリアクリレートを併用したもの
光重合開始剤(C):フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド
フェノール系酸化防止剤(D)として、
〔f〕フェノール系1:フェノール系酸化防止剤(BASF社製商品名「Irganox 1076」)
〔g〕フェノール系2:フェノール系酸化防止剤((株)ADEKA製商品名「アデカスタブ A0-40」)
〔h〕フェノール系3:フェノール系酸化防止剤((株)ADEKA製商品名「アデカスタブ A0-80」)
〔i〕フェノール系4:リンーフェノール系酸化防止剤(住友化学(株)製 商品名「スミライザー GP」)
の4種を用いたものが示されているに過ぎない。
すなわち、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例3~6の硬化性組成物が示されているのみである。
通常、蛍光粒子の性状が構成する元素成分のみならず、リガンド成分等の違いによっても変化するという当該技術分野の技術常識を参酌すると、上記4つの限られた実施例のみで、その他の本件特許発明の、「蛍光粒子(A)」、「光重合性化合物(B)」、「光重合開始剤(C)」「フェノール酸化防止剤(D)」に包含される多種多様な化合物から得られた全ての硬化性組成物が、上記課題を解決できる程度の前記効果を発現しうるものであるとは認められず、これらの4つの実施例から、本件特許発明の「蛍光粒子(A)」、「光重合性化合物(B)」、「光重合開始剤(C)」「フェノール酸化防止剤(D)」に包含される多種多様な化合物を含む全ての硬化性組成物が、「硬化性組成物の経時安定性(保管安定性)の向上」という課題を解決できるのかどうかは不明のままである。
よって、請求項1に係る発明並びに請求項1を引用する請求項2ないし5に係る発明は、請求項の記載がサポート要件を満たさない。
2 理由3(実施可能要件)本件特許の請求項1~5に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
記
・請求項1~5について
発明の詳細な説明に記載について、特許法第36条第6項第1号(実施可能要件)には「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と規定されている。そして、経済産業省令には、「第二十四条の二 特許法第三十六条第四項第一号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と定めている。
これに対し、本件の請求項1に係る発明は、「ペロブスカイト化合物を含む蛍光粒子(A)、光重合性化合物(B)、光重合開始剤(C)及び酸化防止剤(D)を含み、前記光重合開始剤(C)は、オキシム系化合物、アルキルフェノン化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物からなる群より選択される1種以上を含み、前記酸化防止剤(D)は、フェノール系酸化防止剤を含む、硬化性組成物。」である。
そして、特許権者は、本件特許発明に関して、当業者が予測し得ない「硬化性組成物の経時安定性(保管安定性)の向上」という効果を奏するものであり、進歩性を有すると主張した。そして、「硬化性組成物の経時安定性(保管安定性)の向上」という効果に基づいて進歩性が認められ特許されている。
そうすると、本件特許において、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすためには、発明の詳細な説明は、請求項に係る発明について「硬化性ノ組成物の経時安定性(保管安定性)の向上」という課題及びその解決手段について、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものでなければならない。
しかしながら、「エ-1 申立ての理由 その3」で述べたとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例3~6の硬化性組成物が開示されているのみである。これらの4つの実施例以外の、本件特許発明の「蛍光粒子(A)」、「光重合性化合物(B)」、「光重合開始剤(C)」「フェノール酸化防止剤(D)」に包含される多種多様な化合物から得られた硬化性組成物について、具体的な組成及び配合量、その保管安定性の評価結果についてはなにも記載されていない。
通常、蛍光粒子の性状が構成する元素成分のみならず、リガンド成分等の違いによっても変化するという当該技術分野の技術常識を参酌すると、上記4つの限られた実施例のみで、本件特許発明の、「蛍光粒子(A)」、「光重合性化合物(B)」、「光重合開始剤(C)」「フェノール酸化防止剤(D)」に包含される多種多様な化合物から得られた全ての硬化性組成物が、上記課題を解決できる程度の前記効果を発現しうるものであるとは認められず、これらの4つの実施例から、本件特許発明の「蛍光粒子(A)」、「光重合性化合物(B)」、「光重合開始剤(C)」「フェノール酸化防止剤(D)」に包含される多種多様な化合物を含む全ての硬化性組成物が、「硬化性組成物の経時安定性(保管安定性)の向上」という課題を解決できるのかどうかは不明のままである。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、上記4つの実施例以外の本件発明の硬化性組成物であって、上記課題を解決できる程度の対更化性組成物の経時安定性(保管安定性)の向上」という効果を奏する本件発明の硬化性組成物を得るための具体的組成及び配合量について教示がなんらない中で、上記課願を解決できる程度の「硬化性組成物の経時安定性(保管安定性)の向上」という効果を奏する硬化性組成物を得るためには、当業者にとって過度な実験・試行錯誤を要すると認められる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものではなく、請求項1に係る発明を実施できる程度に明瞭かつ十分に記載されているとは認められない。
第6 前記第5における理由2及び理由3についての判断
1 前記第5の理由2(サポート要件)
本件特許発明1の課題は、本件特許明細書の【0004】に記載のとおり、ペロブスカイト化合物を含む蛍光粒子を含む硬化性組成物であって、それを硬化させてなる膜の熱による量子収率の低下を抑制することができる硬化性組成物、それを硬化させてなる膜、並びに、該膜を含む積層体及び表示装置を提供することにあると認める。
ここで、本件特許明細書の記載から、前記第5 1 理由1に記載の実施例のものが前記課題を解決できることが理解できる。
そして、確かに、蛍光粒子の性状が構成する元素成分のみならず、リガンド成分等の違いによっても変化するという当該技術分野の技術常識を参酌すると、前記実施例のもの以外の「蛍光粒子(A)」、「光重合性化合物(B)」、「光重合開始剤(C)」及び「フェノール酸化防止剤(D)」に包含される多種多様な化合物から得られた全ての硬化性組成物は、熱による量子収率の低下が大きくなるものを含むかもしれないが、「蛍光粒子(A)」、「光重合性化合物(B)」、「光重合開始剤(C)」及び「フェノール酸化防止剤(D)」を含むことにより、熱による量子収率の低下を抑制できることは推認できるし、また、特許異議申立人らは、前記実施例のもの以外のものが前記課題を解決できるか不明のままであると主張するにとどまり、前記実施例のもの以外のもののうちに前記課題を解決できないものがあることを実証しているわけでもない。
そうすると、本件特許発明1および本件特許発明1を引用する発明は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を包含しているとまではいえない。
2 前記第5の理由3(実施可能要件)
本件特許明細書の実施例の記載、【0013】~【0073】の「蛍光粒子(A)」、光重合性化合物(B)」、「光重合開始剤(C)」及び「フェノール酸化防止剤(D)」の具体的な組成及び配合量についての記載から、当業者は本件特許発明1を実施できるといえるから、本件特許発明1を実施するために当業者にとって過度な実験・試行錯誤を要するとはいえない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものであり、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する発明を実施できる程度に明瞭かつ十分に記載されているといえる。
第7 むすび
以上のとおりであるから、令和5年10月17日付けの取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700641