特許異議申立
2017-700481
水まわり用ガラス部材
- 審判番号
- 2017-700481
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-029699外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年05月15日
- 審決日
- 2017年08月08日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (C03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6028878号発明「水まわり用ガラス部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6028878号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本件特許第6028878号は、平成28年2月19日(優先権主張:平成27年2月23日)に出願された特願2016-29699号の特許請求の範囲に記載された請求項1~11に係る発明について、平成28年10月28日に設定登録がされたものであり、その後、全請求項に係る特許に対し、特許異議申立人「柴田 都」(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2.本件発明
本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、「本件発明1~11」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。
【請求項1】
屋内水まわり環境で用いられる水まわり用ガラス部材であって、
ガラス基材と、
前記ガラス基材の表面に設けられ、炭素原子を主に含むアモルファスカーボン層と、
を備え、
前記アモルファスカーボン層は、
密度が1.1g/cm3より大きく2.0g/cm3未満であり、
膜厚が4nm以上20nm以下であり、
前記アモルファスカーボン層が形成される前後の色差(ΔE)を前記膜厚で除算した値(X)が0.2よりも大きく0.9未満であることを特徴とする
水まわり用ガラス部材。
【請求項2】~【請求項7】略
【請求項8】
水まわり用ガラスの表面にアモルファスカーボン層が形成された水まわり用ガラス部材の製造方法において、
容器内に設けられた基材支持部に水まわり用ガラスを配置する工程と、
前記容器内を減圧する工程と、
前記容器内に原料を導入し、前記容器内を所定圧力に調整する工程と、
前記原料をプラズマ化して前記アモルファスカーボン層の密度を1.1g/cm3より大きく2.0g/cm3未満の範囲とすることが可能な程度に該プラズマ中のラジカルを多くした高密度プラズマを生成する高密度プラズマ生成工程と、
前記基材支持部に電圧を印加する工程と、
前記高密度プラズマを前記水まわり用ガラスの表面に堆積させ、前記水まわり用ガラスの表面に膜厚が4nm以上20nm以下であり、前記アモルファスカーボン層が形成される前後の色差(ΔE)を前記膜厚で除算した値(X)が0.2よりも大きく0.9未満であるアモルファスカーボン層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする、水まわり用ガラスの製造方法。
【請求項9】~【請求項11】略
第3.申立理由
申立人は、証拠として、下記の甲第1~5号証(以下、「甲1~5」という。)を提出し、本件発明1~7は、甲1~3に記載された発明に基いて、本件発明8~11は、甲1~5に記載された発明に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであると主張している。
甲1:特開2000-72488号公報
甲2:「潤滑経済2011年9月号」株式会社潤滑通信社、2011.9.5、p.36-43
甲3:特開2006-89073号公報
甲4:特開2012-185877号公報
甲5:特開2007-92108号公報
第4.当審の判断
1.甲1発明の認定
甲1には、【0013】に、
「そのような安定化の材料として種々の材料を検討した結果、カーボンを主成分とする層(以下、単にカーボン層という)が最も安定化に優れていることが見出された。そのなかでもアモルファスカーボン層と呼ばれている膜が適している。・・・」こと、
【0037】に、
「【作用】本発明において、カーボン層はガラス表面を安定化し、水の乾きジミ、水アカ等無機の汚れがガラス表面に固着するのを防止し、また、これらの汚れをガラス表面からとれやすくする。・・・」こと、
【0047】に、
「・・・洗浄した厚さ2mmのフロートガラス板をスパッタ装置内にセットし、・・・次に表1の条件で表2に示すようなシリコン層(膜厚1nm)/カーボン層(10nm)の2層膜を成膜し、積層体を得た。・・・」ことがそれぞれ記載されている。
これらの記載から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「水アカ等無機の汚れがガラス表面に固着するのを防止する積層体であって、フロートガラス板上に、1nmのシリコン層と、10nmのアモルファスカーボン層が成膜された積層体。」
2.発明の対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「フロートガラス板」「積層体」が、それぞれ本件発明1の「ガラス基材」「ガラス部材」に相当するから、本件発明1のうち、
「ガラス部材であって、ガラス基材と、前記ガラス基材の表面に設けられ、炭素原子を主に含むアモルファスカーボン層と、を備え、前記アモルファスカーボン層は、膜厚が4nm以上20nm以下であるガラス部材。」
の点は、甲1発明と一致し、次の点で両者は相違する。
相違点1:本件発明1が「屋内水まわり環境で用いられる水まわり用」ガラス部材であるのに対し、甲1発明は「水アカ等無機の汚れがガラス表面に固着するのを防止する」積層体である点。
相違点2:本件発明1のアモルファスカーボン層の「密度が1.1g/cm3より大きく2.0g/cm3未満」であるのに対し、甲1発明のアモルファスカーボン層の密度が不明な点。
相違点3:本件発明1の「前記アモルファスカーボン層が形成される前後の色差(ΔE)を前記膜厚で除算した値(X)が0.2よりも大きく0.9未満である」のに対し、甲1発明のXの値が不明な点。
3.相違点の判断
事案に鑑み、相違点3から検討する。
申立人は、甲3の【0030】に、プラスチック容器の内面にアモルファスカーボン被膜と珪素含有被膜からなる被覆層を設けた場合に、本件発明1の色差(ΔE)に相当する着色透明度の変化(ΔE*)を2.5以下とすることで優れた無色透明性が得られる旨記載されていることや、甲2の表2に記載されたアモルファス炭素膜である各種DLC膜の「色(膜厚500nm程度)」及び「耐環境性(耐高湿度,耐水)」の関係から、甲1発明において相違点3を解消することは、必要とされる透明性と耐環境性に応じて当業者が容易に想到し得たことであると主張している。
そこで検討するに、甲3に具体的に開示されたアモルファスカーボン被膜の膜厚とΔE*は、【表1】に記載された比較例1の「膜厚146Å、ΔE*=1.0」と、比較例3の「膜厚453Å、ΔE*=3.6」のみであり、これらは、いずれもXが0.2以下である。一方、甲2の記載からは、Xの値を推認することはできない。
してみると、甲2、甲3の記載を考慮しても、甲1発明において相違点3を解消することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
4.まとめ
したがって、相違点1,2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件発明1を引用しこれを減縮した本件発明2~7も同様である。
次に、本件発明8は、本件発明1の製造方法に係る発明と認められるが、甲4及び甲5に、アモルファスカーボン層を形成した場合の色差(ΔE)に関する記載や示唆はない。
してみると、甲2~5の記載を考慮しても、本件発明8の「前記アモルファスカーボン層が形成される前後の色差(ΔE)を前記膜厚で除算した値(X)が0.2よりも大きく0.9未満であるアモルファスカーボン層を形成する工程」は、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明8は、甲1~5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。本件発明8を引用しこれを減縮した本件発明9~11も同様である。
第5.むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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