特許異議申立
2026-700327
細胞製造装置の包装体、細胞製造方法およびそのための管理システム
- 審判番号
- 2026-700327
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2025-542122
- 登録番号
- 7763389
- 請求日
- 2026年04月16日
- 審決日
- 2026年06月18日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団
- 【権利者代理人】弁理士法人京都七条特許事務所
- 【異議申立人】柴田 都
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 谷垣 圭二
- 審判官 後藤 亮治
- 分類
- P1651.121-Y (C12M) / P1651.537-Y (C12M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条、特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7763389号発明「細胞製造装置の包装体、細胞製造方法およびそのための管理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7763389号の請求項1~23に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許についての手続の経緯
特許第7763389号(請求項の数23。以下「本件特許」という。)の特許出願(特願2025-542122号)は、2024年(令和6年)10月24日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和5年10月26日、令和6年7月22日)、その特許権の設定の登録日及び特許掲載公報の発行日は、次のとおりである。
特許権の設定の登録日 令和7年10月23日
特許掲載公報の発行日 同月31日
以下、最先の優先権主張にかかる令和5年10月26日を「優先日」という。
2 本件特許異議の申立てについての手続の経緯
令和8年 4月16日 :特許異議申立書の提出
(特許異議申立人:柴田 都 請求項1~23(全請求項)に対して)
第2 本件発明
本件特許の請求項1~23の特許発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~23に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
細胞製造装置の包装体であって、
当該包装体は、細胞製造装置と包装資材とを有し、
前記細胞製造装置は、人工多能性幹細胞を製造するための構成として、
加工用容器、
液体培地を収容する少なくとも1つの培地容器、および、
初期化因子を含有する流体を収容する第1供給用容器
を有し、
前記培地容器および前記第1供給用容器は、それぞれの内容物が閉鎖系を保ちながら前記加工用容器内に送られるように、
(i)連通状態と非連通状態に切り替え可能な接続管路を介して前記加工用容器に接続されているか、または、
(ii)前記接続管路を介して、かつ、相互の誤接続を防止するように構成された固有のコネクターを介して、前記加工用容器に接続可能であり、
前記加工用容器は、体細胞を含有する溶液を外部から受入れるための開閉可能な注入用ポートと、内容物を排出するための開閉可能な排出用ポートとを少なくとも有し、
前記加工用容器、前記培地容器および前記第1供給用容器は、密閉容器であり、
前記細胞製造装置は、滅菌された状態で前記包装資材にて包装されており、
前記包装資材で包装されている前記細胞製造装置は、前記体細胞を加工するための細胞加工装置に含まれる閉鎖系の加工回路部分であって、
前記細胞加工装置は、該閉鎖系の加工回路部分と装置本体部分とを有して構成され、
前記装置本体部分は、該閉鎖系の加工回路部分を作動させる作動機構と、該作動機構を制御する制御部とを有し、
前記閉鎖系の加工回路部分は、閉鎖系を保ったままで前記装置本体部分に対して着脱可能であり、かつ、該装置本体部分から取り外された状態の閉鎖系として組み立てられたものであって、該装置本体部分に取り付けられた該閉鎖系の加工回路部分は、前記制御部の制御下で前記作動機構によって作動し、それにより、該閉鎖系の加工回路部分の内部において前記体細胞が加工される、
前記細胞製造装置の包装体。
【請求項2】
前記加工用容器は、
前記注入用ポートを通じて注入される体細胞を含有する溶液から、人工多能性幹細胞の製造に用いられる体細胞を分離するように構成されており、かつ、
該体細胞以外の含有成分を該加工用容器の外部に排出して、加工すべき体細胞を該加工用容器の内部に残すように構成されており、
該加工用容器の内部において、該内部に残された該体細胞が加工される、
請求項1に記載の細胞製造装置の包装体。
【請求項3】
前記加工用容器は、人工多能性幹細胞の製造に用いられる体細胞を、連続遠心分離によって分離するように構成されている、請求項2に記載の細胞製造装置の包装体。
【請求項4】
前記細胞製造装置は、加工用容器内で製造される人工多能性幹細胞から分化細胞を製造するための構成として、人工多能性幹細胞の分化誘導物質を含有する流体を収容する1以上の第2供給用容器を有し、
前記第2供給用容器は密閉容器であり、
前記第2供給用容器は、その内容物が閉鎖系を保ちながら前記加工用容器内に送られるように、
(iii)連通状態と非連通状態に切り替え可能な接続管路を介して加工用容器に接続されているか、または、
(iv)連通状態と非連通状態に切り替え可能な接続管路を介して、かつ、相互の誤接続を防止するように構成された固有のコネクターを介して、加工用容器に接続可能である、
請求項1に記載の細胞製造装置の包装体。
【請求項5】
前記培地容器および前記第1供給用容器のうちの一方または両方が、それぞれに前記細胞製造装置から分離し、かつ、それぞれに別の包装資材にて包装されて、当該包装体が互いに独立した2以上の包装体に分離している、
請求項1に記載の細胞製造装置の包装体。
【請求項6】
前記細胞製造装置が、前記細胞加工装置を用いて細胞を製造する細胞製造者から発行された仕様データに基づいて、該細胞製造者とは別の装置組立者によって閉鎖系として組み立てられ、当該包装体として包装され、かつ、該細胞製造者に提供されるものである、請求項1に記載の細胞製造装置の包装体。
【請求項7】
前記細胞製造者と前記装置組立者が、互いに異なる事業体である、請求項6に記載の細胞製造装置の包装体。
【請求項8】
前記仕様データは、
前記体細胞の提供者の情報と、
前記細胞製造装置が閉鎖系の加工回路部分として装着されるべき前記装置本体部分の情報と、
前記細胞製造装置の構成の情報と、
前記細胞製造装置の使用日とを、
少なくとも含んでおり、
前記細胞製造装置には、読取り装置によって読取り可能な識別コードが表示されており、該識別コードを通じて、前記仕様データに含まれた前記体細胞の提供者の情報と、製造された該細胞製造装置の実際の構成の情報とが、別途設けられる管理装置から取得可能であり、
前記細胞製造装置の実際の構成の情報は、前記仕様データに含まれた細胞製造装置の構成の情報に対応付けられて、前記管理装置の記憶装置に格納されている、
請求項6に記載の細胞製造装置の包装体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞製造装置の包装体を用いた細胞製造方法であって、
当該細胞製造方法は、
前記包装体を準備する工程と、
前記準備した包装体から前記細胞製造装置を取り出して、該細胞製造装置を前記細胞加工装置の装置本体部分に閉鎖系の加工回路部分として取り付ける工程と、
前記細胞加工装置の制御部の制御下で該細胞加工装置の作動機構を作動させ、それにより、前記閉鎖系の加工回路部分としての前記細胞製造装置を作動させて、前記細胞製造装置の前記加工用容器内において、人工多能性幹細胞を製造する工程とを有し、
前記人工多能性幹細胞を製造する工程が、
前記体細胞を含有する溶液を前記注入用ポートを通じて前記加工用容器内に注入し、かつ、液体培地を前記培地容器から前記加工用容器内に送り、かつ、初期化因子を含有する流体を前記第1供給用容器から前記加工用容器内に送り、それにより、該加工用容器内において、液体培地中で初期化因子を体細胞に接触させる工程(s10)と、
前記加工用容器内において、前記液体培地中で前記体細胞を培養して、人工多能性幹細胞を樹立する工程(s20)とを有する、
前記細胞製造方法。
【請求項10】
前記細胞製造装置の包装体が、請求項2または3に記載の包装体であって、
前記工程(s10)において、
前記体細胞を含有する溶液を前記注入用ポートを通じて前記加工用容器内に注入し、
次に、人工多能性幹細胞の製造に用いられる体細胞を該加工用容器内において分離し、かつ、該体細胞以外の含有成分を該加工用容器の外部に排出して、加工すべき体細胞を該加工用容器の内部に残し、
次に、前記培地容器から液体培地を送り、かつ、前記第1供給用容器から初期化因子を含有する流体を送り、それにより、該加工用容器内において、前記液体培地中で体細胞に初期化因子を接触させる、
請求項9に記載の細胞製造方法。
【請求項11】
前記細胞製造装置の包装体が、請求項4に記載の細胞製造装置の包装体であって、
前記工程(s20)の後に、人工多能性幹細胞の分化誘導物質を含有する流体を前記第2供給用容器から前記加工用容器内に送り、それにより、該加工用容器内において分化細胞を形成する工程(s30)をさらに有する、
請求項9に記載の細胞製造方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞製造装置の包装体のための管理システムであって、
当該管理システムは、管理装置および読取り装置を有し、
製造される全ての前記包装体における細胞製造装置およびそれを取り巻く包装資材のうちの一方または両方には、それぞれの包装体の識別コード(D1)が、前記読取り装置によって読取り可能であるように表示されており、
前記読取り装置は前記識別コードを読取るためのものであり、
前記管理装置は、データ受信部および属性情報保持部を有し、
前記データ受信部は前記読取り装置によって読取られた前記識別コードを入力データとして受入れ、
前記属性情報保持部には製造される全ての前記包装体のそれぞれの識別コード(D1)とそれぞれの製品属性情報(P1)とが互いに関係付けられた状態で格納され、
前記管理装置は、前記データ受信部が受入れた識別コード(D1)と、属性情報保持部に格納された識別コード(D1)と製品属性情報(P1)とを参照して、前記読取られた識別コード(D1)に関係付けられた製品属性情報(P1)を出力するように構成されており、
前記包装体の細胞製造装置は、着脱可能な閉鎖系の加工回路部分とそれを作動させる機構と制御部とを備えた細胞加工装置における、該着脱可能な閉鎖系の加工回路部分であって、
前記管理装置は、仕様データ保持部をさらに有し、該仕様データ保持部は、
用いられる体細胞を含有する溶液または提供者の属性情報と、
使用される前記包装体のまたはその細胞製造装置の製品属性情報と、
該細胞製造装置の使用日と、
該細胞製造装置が該加工回路部分として設置される、前記細胞加工装置の識別情報とを
少なくとも含んだ仕様データ(S1a)を格納しており、
当該管理システムは、前記仕様データを入力するためのデータ入力装置を有し、
前記包装体は、前記仕様データ(S1a)に基づいて組み立てられるものであり、
前記管理装置は、
細胞が製造される日に、細胞の製造者によって前記読取り装置を通じて入力された
用いられる体細胞を含有する溶液または提供者の属性情報と、
使用される包装体のまたはその細胞製造装置の製品属性情報と、
細胞が製造される日の情報と、
使用される細胞加工装置の識別情報とを
少なくとも含んだ仕様データ(S1b)を、データ受信部で受入れ、かつ、
前記データ受信部で受入れた前記仕様データ(S1b)と、前記仕様データ保持部に格納されていた仕様データ(S1a)とが一致する場合に、一致することを示す信号を出力するように構成されている、
前記管理システム。
【請求項13】
前記細胞製造装置には、該細胞製造装置の識別コード(D10)が、前記読取り装置によって読取り可能であるように表示されており、
前記属性情報保持部に格納された全ての前記包装体のそれぞれの製品属性情報(P1)には、各包装体の細胞製造装置のそれぞれの識別コード(D10)とそれぞれの製品属性情報(P10)とが互いに関係付けられた状態で含まれており、
前記管理装置は、前記データ受信部が受入れた識別コード(D10)と、属性情報保持部に格納された識別コード(D10)と製品属性情報(P10)とを参照して、前記受入れた識別コード(D10)に関係付けられた製品属性情報(P10)を出力するように構成されている、
請求項12に記載の管理システム。
【請求項14】
前記細胞製造装置における物質を収容する各密閉容器には、各密閉容器に収容されたそれぞれの物質の識別コード(D20)が、前記読取り装置によって読取り可能であるように表示されており、
前記各包装体の細胞製造装置のそれぞれの製品属性情報(P10)には、各密閉容器に収容されたそれぞれの物質の識別コード(D20)とそれぞれの製品属性情報(P20)とが互いに関係付けられた状態で含まれており、
前記管理装置は、前記データ受信部が受入れた識別コード(D20)と、属性情報保持部に格納された識別コード(D20)と製品属性情報(P20)とを参照して、前記受入れた識別コード(D20)に関係付けられた製品属性情報(P20)を出力するように構成されている、
請求項13に記載の管理システム。
【請求項15】
前記細胞製造装置を構成する各部品には、各部品の識別コード(D30)が、読取り装置によって読取り可能であるように表示されており、
前記各包装体の細胞製造装置のそれぞれの製品属性情報(P10)には、該細胞製造装置を構成する各部品の識別コード(D30)とそれぞれの製品属性情報(P30)とが互いに関係付けられた状態で含まれており、
前記管理装置は、前記データ受信部が受入れた識別コード(D30)と、属性情報保持部に格納された識別コード(D30)と製品属性情報(P30)とを参照して、前記受入れた識別コード(D30)に関係付けられた製品属性情報(P30)を出力するように構成されている、
請求項13に記載の管理システム。
【請求項16】
前記細胞製造装置で加工されるべき体細胞を含有する溶液が収容された容器には、各容器内の体細胞のまたはその提供者のコード(D2)が、読取り装置によって読取り可能であるように表示されており、
前記属性情報保持部には、コード(D2)とそれぞれの属性情報(P2)が格納され、コード(D2)とそれぞれの属性情報(P2)は、互いに関係付けられ、かつ、加工に用いられる包装体の識別コード(D1)または該包装体の細胞製造装置の識別コード(D10)に関係付けられ、
前記管理装置は、前記データ受信部が受入れたコード(D2)と、属性情報保持部に格納されたコードと属性情報とを参照して、前記受入れたコード(D2)に関係付けられた属性情報(P2)を出力し、かつ、加工に用いられる包装体の識別コード(D1)または該包装体の細胞製造装置の識別コード(D10)を出力するように構成されている、
請求項13に記載の管理システム。
【請求項17】
前記属性情報保持部には、前記細胞製造装置によって製造された細胞が適用されるべき患者のコード(D3)とその属性情報(P3)が格納されており、該患者のコード(D3)とその属性情報(P3)は、互いに関係付けられ、かつ、加工に用いられる包装体の識別コード(D1)または該包装体の細胞製造装置の識別コード(D10)に関係付けられており、
前記管理装置は、前記データ受信部が受入れた識別コード(D1)または識別コード(D10)と、前記属性情報保持部に格納された識別コードと属性情報とを参照して、前記製造された細胞が適用されるべき患者のコード(D3)とその属性情報(P3)を出力するように構成されている、
請求項13に記載の管理システム。
【請求項18】
前記細胞加工装置のうち、前記閉鎖系の加工回路部分を除いた部分には、該細胞加工装置の識別コード(D11)が、読取り装置によって読取り可能であるように表示されており、
前記属性情報保持部には、前記細胞加工装置の識別コード(D11)とその製品属性情報(P11)が格納されており、
前記細胞加工装置の識別コード(D11)とその製品属性情報(P11)は、互いに関係付けられ、かつ、加工に用いられる包装体の識別コード(D1)または該包装体の細胞製造装置の識別コード(D10)に関係付けられて、前記属性情報保持部に格納されており、
前記管理装置は、前記データ受信部が受入れた識別コード(D1)または識別コード(D10)と、前記属性情報保持部に格納された識別コードと製品属性情報とを参照して、識別コード(D11)とその製品属性情報(P11)を出力するように構成されている、
請求項13に記載の管理システム。
【請求項19】
前記細胞加工装置の制御部は、前記管理装置から出力される前記一致することを示す信号を受入れるように構成され、かつ、該信号を受入れた場合にのみ、前記細胞加工装置の始動を可能にするように構成されている、請求項13に記載の管理システム。
【請求項20】
請求項6~8のいずれか1項に記載の包装体における細胞製造装置のための品質管理システムであって、
前記包装体の製造工程は、
前記包装体中の細胞製造装置を構成する複数の要素の各々を、それぞれの要素の技術分野に属する要素製造者が製造する、各要素ごとの要素製造工程と、
前記要素製造工程で製造された各要素を集めて、装置組立者が、前記細胞製造装置へと組み立てる、装置組立工程とを有し、
当該品質管理システムは、
工程管理装置と、
該工程管理装置に対してデータ通信可能に接続される複数の端末装置とを有し、
前記端末装置は、前記細胞製造装置のユーザーである細胞製造者、前記装置組立者、および、前記各要素製造者によって利用されるように配置され、
前記細胞製造装置は、該細胞製造装置の構成を示す仕様データに基づいて組み立てられるものであり、
該仕様データは、患者の治療のための目的細胞の製造注文を医療機関から受けた細胞製造者によって、前記細胞製造装置が該目的細胞を製造するための構成を有するように、かつ、該細胞製造装置が該目的細胞を製造するために選択された細胞加工装置に適合するように、設計されたものであり、
該仕様データには、前記患者の識別コードが関連付けられており、
前記工程管理装置は、
前記細胞製造者または装置組立者から、前記端末装置を通じて、前記仕様データとそれに関連付けられた前記患者の識別コードを受信し、記憶領域に格納し、
実際に製造される細胞製造装置において前記仕様データに対応する実際の仕様データを格納するための記憶領域を確保し、
前記装置組立者から製造注文をうけた各要素製造者が前記仕様データに基づいて製造した各要素の実際のデータを、各要素製造者から受信し、実際の仕様データを格納するための前記記憶領域に格納し、
各要素製造者から納入された各要素を用いて前記細胞製造装置を組み立てた前記装置組立者から、該細胞製造装置の全体的な配置に関するデータを受信し、該データを格納するための前記記憶領域に格納し、
元の仕様データと、実際の仕様データとが、一致するか否かを判定し、判定結果を出力する、
前記品質管理システム。
【請求項21】
前記各端末装置には、識別コードを読取る機能が供えられ、
前記包装体の包装資材の表面、および、前記細胞製造装置の各要素には、それぞれの識別情報を示す識別コードが表示されている、
請求項20に記載の品質管理システム。
【請求項22】
前記識別コードが2次元シンボルの形態にて表示されている、請求項21に記載の品質管理システム。
【請求項23】
前記細胞製造者と前記装置組立者と前記各要素製造者が、互いに異なる事業体である、請求項20に記載の品質管理システム。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
特許異議の申立ての理由の概要は、次のとおりである。
1 理由1(進歩性の欠如)
(1) 本件発明1~11は、甲第1号証(特許第4846782号公報)に記載された発明及び甲第2号証(特開2014-100588号公報)に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~11に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2) 本件発明12~23は、甲第1号証(特許第4846782号公報)に記載された発明、甲第2号証(特開2014-100588号公報)に記載された技術及び甲第3号証(特開2020-58号公報)に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項12~23に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 理由2(明確性要件違反)
本件特許は、次の(1)及び(2)に示すとおり、特許請求の範囲の記載に不備があるため、請求項1~23に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
(1) 明確性要件違反1
請求項1に記載された「閉鎖系」との記載について、本件特許の明細書を参酌しても、その技術的範囲(密閉の程度、外部との遮断態様、無菌性のレベル)が当業者にとって一義的に確定しない。
したがって、本件発明1及び請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明2~23は明確でない。
(2) 明確性要件違反2
請求項5の「当該包装体が互いに独立した2以上の包装体に分離している」との記載を踏まえると、請求項1の「包装体」は、単一の包装体を指す場合と分離された複数の包装体を指す場合との双方を含みうることになり、単体であるのか複数体であるのかが判然としない。
したがって、本件発明1及び請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明2~23は明確でない。
第4 各文献に記載された事項及び甲1発明の認定
1 甲第1号証に記載された事項及び甲1発明の認定
(1) 甲第1号証に記載された事項
本件特許の優先日前に発行された甲第1号証(特許第4846782号公報)には、次の事項が記載されている(なお、当合議体により、後記(3)の甲1発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
ア 請求項1~6
「【請求項1】
成人幹細胞及び血小板を含む細胞サブセットを、採取、収集、処理、及び移植するためのシステムであって、ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセットを具備し、前記セットが:
- 骨又は静脈穿刺用の針を含む、骨髄又はその他の細胞サブセットの供給源を患者から採取するための採取装置と;
- 前記患者から採取された細胞サブセットを収集、処理、及び再注入するための少なくとも1つのチャンバと;
- 処理された細胞を前記患者に送り戻すための前記再注入チャンバに事前に接続されているか、又は接続可能である移植装置と;を具備し、
前記少なくとも1つのチャンバが、前記採取装置によって前記患者から採取された細胞を捕獲するための前記採取装置に事前に接続されているか、若しくは接続可能な収集チャンバと;前記捕獲された細胞に処理及び移送作業を実施する処理装置と協同するのに適した処理チャンバと;処理された細胞を貯蔵して前記患者に送り戻すための再注入チャンバとを含み;前記処理チャンバが、中空の概ね円筒の遠心分離処理チャンバであり、かつ前記円筒の軸の回りを回転でき、処理対象の前記細胞及び前記処理された細胞のための入口/出口を有し、前記処理チャンバが、前記細胞を受けるための様々なサイズの分離空間を画定するために前記遠心分離処理チャンバ内に液体密封式に運動可能に装着された移動可能なピストンを含み、前記ピストンが、前記入口から処理対象の選択量の細胞を前記分離空間内に取り込み、かつ前記出口から前記分離空間内から処理された細胞を外に出すように移動可能であり;前記収集、処理、及び再注入チャンバは分離されかつ事前に連結されているか若しくは相互に接続可能であるか、又は多目的処理チャンバが収集-処理チャンバ、処理-再注入チャンバ、若しくは収集-処理-再注入チャンバの機能をまとめて提供する、システムにおいて、
前記ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセットが機能的に閉鎖されたパックに納められ、前記納められた要素が、機能的な閉鎖システムを提供するために、前もって接続されているか、又はそれらを無菌的な様式で相互接続するための無菌的コネクタを備えているか、若しくはそれに適合していることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記ディスポーザブル要素のセットがトレーのような支持体の上にブリスターパックに包装されており、前記ブリスターパックが相互接続した全セットを収納するための1つのコンパートメント、又は前記セットの別部分と接続するための無菌コネクタを含む、前記セットの一部分をそれぞれ収納する複数のコンパートメントを有する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記ディスポーザブル要素のセットが、ディスポーザブル要素の3キット、即ち収集キット、処理キット、及び移植キットを含む、請求項1又は2記載のシステム。
【請求項4】
前記収集キットが、骨髄採取装置単独、又は:少なくとも1本のシリンジ;前記収集チャンバを形作っている移送バッグ、及び場合によって前記処理キットとの接続のための無菌コネクタと組み合わせて含んでいる、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記収集キットがシリンジと移送バッグとを接続している、又は接続できるフィルタを更に含む、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記処理キットが、処理チャンバと少なくとも1つのディスポーザブル容器とを含み、前記ディスポーザブル容器が少なくとも1つのストップコックバルブ又はマルチポートバルブによって前記処理チャンバに接続され、前記ストップコックバルブ又はマルチポートバルブが液体の前記処理チャンバへと前記処理チャンバからの選択的移送、及び液体の前記ディスポーザブル容器へ及び/又は前記ディスポーザブル容器からの選択的移送を可能にし、前記処理チャンバが前記収集キットと接続しているか、又は前記収集キットとの接続のための無菌コネクタを有するか、若しくは無菌的に接続するのに適しており、かつ前記処理チャンバは前記移植キットとも接続しているか、又は前記移植キットとの接続のための無菌コネクタを有するか、若しくは無菌的に接続するのに適合している、請求項3、4又は5記載のシステム。」
イ 段落【0001】~【0014】
「【発明の分野】
【0001】
本発明は、組織再生を目的とする、それら細胞を局所的に再注入するための骨髄、末梢血、臍帯血、又は脂肪組織に存在する細胞サブセットの採集、自動処理、及び移植に関する。細胞サブセットは、典型的には成人幹細胞又は血小板であるが、より一般的には赤血球及び白血球のような細胞の亜集団を含む。このような処置は、おそらくは細胞処理実験室を持たない病院環境又は医療施設で行われ、かつ専門外の技師によって実施されると思われる。発明は、透明なチューブを通過する細胞のサブセットをモニタリングする新規タイプの光学センサーを記述する。
【発明の背景】
…(中略)…
【0004】
再生医療分野での幹細胞によってもたらされた新しい局面は、これらの技術に一般的でない環境においてこれら細胞を扱うという実務的な問題に直面している。主要な問題の一つは、細胞を安全に処理できるクリーンルームが無いことである。一例を挙げれば、心臓学、整形外科学、及び神経学の分野は全て幹細胞に基づく治療を実験的に行っているが、適切に細胞を処理する設備は持っていない。このような理由から、患者のベッドサイドにオンライン細胞処理システムを提供するために、閉鎖系の中で迅速に成人幹細胞又は一般的に任意の細胞サブセットを自動的に処理できる簡便なシステムが求められている。
【発明の開示】
【0005】
発明は、再生医療での組織修復を狙った細胞サブセットの採取、収集、処理、及び移植を可能にするシステムを提供する。本発明のシステムは、請求項1に記載するような、パックに納められたディスポーザブル滅菌液体移送要素のセットを具備し、前記納められた要素が、機能的な閉鎖システムを提供するために、前もって接続されているか、又はそれらを無菌的な様式で相互接続するための無菌的コネクタを備えているか、もしくはそれに適合している。このようなシステムは、手順を実施するための個別のキットが入ったトレーのような支持体に載せて提供できる。個別キットには、無菌的にそれらを相互接続する無菌コネクタがあらかじめ取付けられているか、又は取付けることができるか、或いは溶着して用いるTerumoのSCDのような無菌接続装置を用いて接続できる。
【0006】
本発明は、患者ベッドサイドでオンライン細胞処理システムを提供できる、閉鎖系で細胞サブセットを自動的に処理/濃縮するための簡便なシステムを提供する。本発明の態様は、従属クレームに記載する。
【0007】
一つの態様では、患者から細胞サブセットを捕獲するのに用いられる収集容器は、分離チャンバとしても使用できるようにデザインできる。同様に、分離した細胞を収集するのに用いる貯蔵容器は、細胞を患者に送り戻す再注入容器としても役立つようにデザインできる。細胞の分離はバフィーコート収集を目的にでき、又は密度勾配に基づく分離プロセスを用い、続いてEP-B-912 250 (Claude Fell)及びPCT/IB99/020523 (Biosafe)に記載されているようなシステムに基づいて細胞を洗浄することで実施できる。細胞を処理する別の方法はWO03/009889 (CellGenix/Biosafe)に記載のようなモノクローナル抗体をコーティングしたマイクロビーズを使う方法である。
【0008】
透明チューブに流入する細胞の吸収及び反射を測定できる光学検出器を併用すると、血小板のような特定の細胞サブセットを更に正確に収集して濃縮血小板を作ることができる。このような濃縮血小板は別の分離手順によって、又はある細胞サブセットを目的とする手順の副産物として得ることができる。発明はまた、記載のシステムを、別の目的で濃縮血小板を調製するために使用することも想定している。
【0009】
かくして発明は、閉鎖系を用いることで汚染リスクを最小限にする、ベッドサイド介入のための完全統合システムを提供する。それは高レベルの自動化を提示し、いかなる特殊な細胞処理の専門技術にも依存しない。これはどのような細胞供給源(成人幹細胞、血小板のような)にも適しているが、自己又は同種異系条件での骨髄幹細胞の調製に特に適している。
…(中略)…
【0013】
幹細胞、より具体的には間葉性幹細胞は、現在の知識によれば骨髄中に存在しているが、研究は間葉性幹細胞が臍帯血、末梢血、又は脂肪組織にも存在していることを示唆している。原理はこれら様々な幹細胞供給源にも応用できるだろうが、本明細書に記載するプロセスは骨髄の処理に関するものである。
【0014】
プロセスは、最初に局所麻酔下に骨盤帯域から骨髄を採取することからなる。例えばTyco型の骨髄採取器を用いて骨に穿孔をあける。前もって抗凝固剤、通常はヘパリン又はクエン酸/リン酸液を充填しておいた1本以上のシリンジを使って骨髄を吸引する。典型的には50mlの体積が集められるが、別の体積のこともある。吸引した骨髄は、一般的には、濾過され、又は濾過されずにPVC収集バッグに移され、攪拌機にかけることができる。次にPVC収集バッグを、無菌的技術を用いて、好ましくはEP-B-912 250 及びPCT/IB99/02052に記載のシステムに接続し、次にそれに合う形で幹細胞の分離及び濃縮を行う。別の遠心分離処理チャンバ(例えば回転軸が円筒形の処理チャンバの軸と平行でないもの)、又は可撓性の容器を使うこともできる。」
ウ 段落【0015】~【0019】
「【0015】
EP-B-0 912 250 (CFELL)は、分離対象の生物学的液体を受けるための1セットの容器、及び場合によっては追加の溶液のための1種類以上の追加容器を具備する、構成要素への生物学的液体の処理・分離のためのシステムを記載している。中空の遠心分離処理チャンバは、回転駆動ユニットに前記処理チャンバを嵌合させることによって、回転軸の回りを回転できる。処理チャンバは処理対象となる生物学的液体及び処理された生物学的液体の構成要素用に、軸方向に入口/出口を有している。この入口/出口は、生物学的液体の遠心分離処理が全て行われる体積可変性の分離空間につながっている。処理チャンバは、処理チャンバの端壁から伸びる概ね円筒形である壁を具備し、この概ね円筒形の壁は、回転軸と同軸の、中空開放型の円筒空間を占有する中空の処理チャンバをその中に画定しており、軸方向の入口/出口は、中空処理チャンバ内に開口して、概ね円筒形の壁と同軸に前記端壁内に設けられている。処理チャンバは概ね円筒形の壁の内側に、ピストンのような軸方向に移動可能な部材を含んでいる。体積可変式の分離空間は、概ね円筒形の壁と、処理チャンバの概ね円筒形の壁の内側に在る軸方向に移動可能な部材とによって処理チャンバの上部に画定されており、このとき移動可能部材の軸方向の運動が分離空間の体積を変え、移動可能部材は処理チャンバ内を軸方向に移動して、遠心処理前又は処理中に選択された量の処理対象の生物学的液体を入口から分離空間内に取り込み、かつ遠心分離処理中又は処理後に分離空間から処理済みの生物学的液体の構成要素を出口から出す。可動部材の位置をモニタリングし、それによって生物学的液体の取込み量及び分離された構成要素の排出量を制御する手段が提供される。システムは更に処理チャンバと選択された容器との選択的連絡を確立する、又は処理チャンバと容器の連絡を絶つための分配バルブ装置を具備する。
…(中略)…
【0019】
ある細胞サブセットを選別するために好ましい方法は、目的の細胞亜集団により特異的に狙いを定めることができる密度勾配媒体を用いる。これは、赤血球及びその他不要の細胞サブセットによる汚染を減らして生成物の純度を上げるだろう。密度勾配媒体は、標的とするサブセットに応じて選ばれる。例えば、単核球を標的とする場合は、Ficoll(商標)を基礎とする媒体を用いることができる。このような場合は、最初に密度勾配媒体を分離チャンバ内に入れる。次にピストンを、典型的には下げながら、典型的には5ml/分の速度で骨髄をゆっくりと入れて、密度勾配媒体層の上に細胞を沈積させる。赤血球及び顆粒球は密度勾配媒体層を通過する傾向があり、一方単核球及び血小板は層の前に留まるだろう。骨髄が全体積導入され、これを装置上部の光学ラインセンサー(図8)が感知すると、ピストンは停止し、例えば10~20分の沈降段階が開始する。生成物の吸引が完了するとシステムによって追加の希釈が、システムに接続した等張液を利用して自動的に行われる。遠心分離速度を上げてこの沈降時間を短縮することができる。次にピストンを上に動かして収集を開始する。上清液は血漿のみを含んでいる。次に最初の細胞が続いて流出チューブを不透明にし、これを光学ラインセンサーが感知する。これが引き金となって、標的の幹細胞を含む単核球の収集が始動する。オペレータメニューによって前もって定めた体積に達するか、又は流出ラインが再び透明になったら細胞収集段階は停止し、分離チャンバ体積中の残留物は、チャンバが完全に空になるまで廃棄バック集められる。この段階で、等張溶液を使って分離チャンバから全ての残存赤血球を洗い流す。収集した細胞を分離チャンバに再び入れ、それに続いて、又は先行して食塩水のような洗浄溶液/アルブミン溶液(これに替わってリン酸緩衝化溶液もしくはその他のものも使用できる)を再度入れる。細胞と洗浄溶液を混合する。ピストンは所定の容積後又はチャンバが完全に満たされると停止する。次に新たな沈降段階が実施され、その間に沈降中に生成される上清を使って収集バッグを洗浄し、痕跡量残った密度勾配媒体を取り除くことができる。次に上清(洗浄溶液及び密度勾配媒体からなる)を外に出す。最初の細胞が流出ラインに再度現れたらプロセスを停止するか、又は洗浄効果を上げるためにプロセスを繰り返すこともできる。細胞は最終的に、収集した細胞のその後の使用を容易にするよう特別にデザインされた収集容器に集められる。必要に応じてチャンバを洗浄する。このような細胞は、患者の標的臓器への再導入に容易に利用できるか、又は選択又は拡大を目的として更に操作することができる。それができるように、システムは細胞を所望培地内に直接浮遊できてもよい。」
エ 段落【0023】~【0026】、【図1】
「【0023】
図1に概略的に描かれているように全てのプロセスが患者のベッドサイドで実施でき、従ってオンラインプロセスと見なすことができる。これは安全、ロジスティック、及び対応時間に大きな利益を与え、かつ特別な細胞処理の専門技術に依存しない。」
「【図1】
[図:0001437446000001.jpg]
」
「【0024】
…(中略)…
【0025】
発明は、収集、分離、及び移植それぞれを実施するための個別のディスポーザブル無菌セットが既に納められているシステム又は「カスタムパック」を提供する。このようなパックは、3つのコンパートメントを有する「ブリスターパック」に納めることができ、それぞれのコンパートメントにディスポーザブルセット又はキットが1つ入っている:骨髄採取用の1セット:骨髄分離用の1セット、好ましくはEP-B-912 250 及びPCT/IB99/020523に記載されているシステムに基づくタイプの1セット、並びに細胞を再注入するための1セットが入っている。各セットは様々に変形させることができ、最も広い用途を持つセットは移植用セットであるが、それは治療対象となる組織(例えば骨、筋肉、血管等)によって異なるからである。個々のセットの構成を図2~7に描く。
【0026】
これらのセットは、完全閉鎖システムの使用を望む場合、全てを事前に接続しても、又は3つの内の2つを事前に接続してもよい。事前に接続しない場合の実際的な解決法は、PALLから販売されているMedlockシステム(ACD参照)のような、並びに米国特許第3,650,093号、第5,868,433号、第6,536,805号、及び第6,655,655号に記載されている特別にデザインされた無菌的コネクタを用い、接続を確実に無菌的接続下で行い、それによって閉鎖システムの基準を満たすことからなる。別の可能性は、滅菌接続装置を用いてセットを接続することだろう。上記の構成-事前接続、又は無菌接続装置又は無菌接続装置を用いた接続-のいずれもが、機能的な閉鎖システムを提供するだろう。このような機能的閉鎖システムは、クリーンルーム又は層流システムを必要としないが、このことは、通常これらの必要条件を満たす設備を持たない作業室又は介入ユニットの環境にとって非常に重要な便益である。」
オ 段落【0028】~【0030】、【図3A】、【図3B】
「【0028】
図3Aは、フィルタ無しの収集キットを示しており、図3Bはフィルタ付き収集キットを示している。収集キットには、骨髄吸引の実施に必要な全てが組み入れられている:
a.投入点は、例えば骨髄採取器(例えばTYCOタイプのもの)であり、典型的には骨穿刺用の針、又は静脈穿刺用の針を具備している。投入点は、ストップコックバルブ又はその他のバルブを利用してその他のキットのその他構成要素に直接接続できる。
b.必要に応じて、吸引を行うための1又は複数本のシリンジ(1...n)。
c.フィルタは、図3Bに描かれているように、収集後に骨髄を濾過するために収集キットに挿入できる。
d.次に収集した骨髄(濾過済み又は未濾過)を、処理前に移送バッグに貯蔵する。
e.該当する場合には、追加のシリンジを用いて骨髄に希釈生成物を追加、及び/又はフィルタを濯ぐことができる。
f.無菌コネクタ(Pall ACD又は同等物)が使用できる。」
「【図3A】
[図:0001437446000002.jpg]
」
「【図3B】
[図:0001437446000003.jpg]
」
「【0029】
…(中略)…
【0030】
これら全ての構成について、骨針は静脈針に交換できる。」
カ 段落【0031】~【0033】、【図4】、【図5A】、【図5B】
「【0031】
図4は前記の収集キットに無菌的接続によって接続するのに適合している処理キットを示す。
a.無菌的接続は、無菌コネクタ(Pall CAD等のような)又は無菌条件下のスパイクコネクタを介して実施できるだろう。
b.場合によって、ドリップチャンバを用いて処理経路内への気泡の侵入を防いでもよい。
c.流路の方向は、本例では3方向活栓を装備したストップコックバルブランプ、又は、例えばマルチポートバルブのような別のタイプのバルブによって選択できる。
d.分離プロセスには、例えば、EP-B-912 250 及びPCT/IB99/02052に記載の分離チャンバを用いる。
e.追加の生成物(等張液、培地等)は、1又は複数の接続(スパイクコネクタ、..-1...n)を備えたラインによって導き入れられる。
f.廃棄された生成物及び密度勾配媒体投入には、サテライトバッグ又は廃棄物バッグが用いられる。
g.場合によっては、中間バッグが取付けられた排出ラインが生成物を移植キットに導く。
h.このラインには無菌コネクタ(Pall ACD又は同等物)を用いることができる。」
「【図4】
[図:0001437446000004.jpg]
」
「【0032】
…(中略)…
【0033】
図5Aは、移植キットの考え得る個別要素を示し、図5Bは移植キットを作り上げている1つの、可能な組み合わせを示す。移植キットは、無菌的接続を介して上記初期キットに接続するのに適しており、移植のための最終生成物を含むだろう。無菌的接続は、無菌条件下に無菌コネクタ(Pall ACDもしくはその他のような)又はスパイクコネクタによって実行できるだろう。」
「【図5A】
[図:0001437446000005.jpg]
」
「【図5B】
[図:0001437446000006.jpg]
」
キ 段落【0037】~【0042】、【図7】
「【0037】
図7は、例えばEP-B-912 250 及びPCT/IB99/020523に記載の回転可能な処理チャンバb3が分離シリンジであり、これが細胞の収集及び移植にも用いられる一体式骨髄処理セットの図である。収集キットaは、投入点、例えば処理チャンバb3と接続するための無菌コネクタが取付けられた骨髄採取器(例えばTYCO型のもの)からなる。処理キットbは、洗浄バッグb2及び密度勾配媒体/廃棄物バッグb4に接続しているストップコックバルブb1、並びに無菌コネクタを介してストップコックバルブb1又は収集キットa、又は移植キットcに接続可能な分離/処理/移植体チャンバb3を含む。移植キットcは、処理チャンバb3と接続するための無菌コネクタが取付けられた、移植体用特殊装置(例えば心筋梗塞用カテーテル)からなる。」
「【図7】
[図:0001437446000007.jpg]
」
「【0038】
…中略…
【0042】
この態様は、収集、処理、及び再注入の作業を連続的に実施するために、無菌コネクタを用いて処理チャンバb3を収集キットaに、又はストップコックバルブb1を介して処理キットの残りの部分に、又は移植キットcに接続することに拠っている。これによって、不使用の要素を含まず、都合良く使用できる特に小型のシステムができる。」
(2) 図面から読み取れる事項の認定
段落【0028】及び【0031】の記載を踏まえて【図4】を見ると、次の事項(以下「甲1認定事項」という。)が看取できる。
<甲1認定事項>
「移送バッグに接続されたライン(【図4】におけるa、bに接続されたライン)、中間バッグに接続されたライン(gに接続されたライン)、分離チャンバに接続されたライン(dに接続されたライン)、サテライトバッグ又は廃棄物バッグに接続されたライン(fが接続されたライン)、追加の生成物(等張液、培地等)が導き入れられるライン(eに接続されたライン)が、3方向活栓を装備したストップコックバルブランプ(c)を介して互いに接続されていること。」
(3) 甲1発明の認定
前記(2)において認定した事項及び前記(1)に摘記した甲第1号証の記載事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<甲1発明>
「成人幹細胞及び血小板を含む細胞サブセットを、採取、収集、処理、及び移植するためのシステムが具備し、(請求項1)
機能的に閉鎖されたパックに納められ、納められた要素が、機能的な閉鎖システムを提供するために、前もって接続されているか、又はそれらを無菌的な様式で相互接続するための無菌的コネクタを備えているディスポーザブル滅菌液体移送要素のセットであって、(請求項1)
前記セットが:
- 骨又は静脈穿刺用の針を含む、骨髄又はその他の細胞サブセットの供給源を患者から採取するための採取装置と;
- 前記患者から採取された細胞サブセットを収集、処理、及び再注入するための少なくとも1つのチャンバと;
- 処理された細胞を前記患者に送り戻すための前記再注入チャンバに事前に接続されているか、又は接続可能である移植装置と;を具備し、(請求項1)
これらのセットは、完全閉鎖システムの使用を望む場合、全てを事前に接続しても、又は3つの内の2つを事前に接続してもよく、(【0026】)
前記少なくとも1つのチャンバが、
前記採取装置によって前記患者から採取された細胞を捕獲するための前記採取装置に事前に接続されているか、若しくは接続可能な収集チャンバである、例えば移送バッグと;(請求項1、【0028】)
前記捕獲された細胞に処理及び移送作業を実施する処理装置と協同するのに適した処理チャンバである、例えばEP-B-912 250に記載の分離チャンバと;(請求項1、【0031】)
処理された細胞を貯蔵して前記患者に送り戻すための再注入チャンバである、例えば中間バッグとを含み;(請求項1、【0031】)
前記処理チャンバが、中空の概ね円筒の遠心分離処理チャンバであり、かつ前記円筒の軸の回りを回転でき、処理対象の前記細胞及び前記処理された細胞のための入口/出口を有し、前記処理チャンバが、前記細胞を受けるための様々なサイズの分離空間を画定するために前記遠心分離処理チャンバ内に液体密封式に運動可能に装着された移動可能なピストンを含み、前記ピストンが、前記入口から処理対象の選択量の細胞を前記分離空間内に取り込み、かつ前記出口から前記分離空間内から処理された細胞を外に出すように移動可能であり;(請求項1)
遠心分離処理チャンバは、回転駆動ユニットに前記処理チャンバを嵌合させることによって、回転軸の回りを回転でき、遠心処理前又は処理中に選択された量の処理対象の生物学的液体を入口から分離空間内に取り込み、かつ遠心分離処理中又は処理後に分離空間から処理済みの生物学的液体の構成要素を出口から出すものであり、(【0015】)
前記収集、処理、及び再注入チャンバは分離されかつ事前に連結されているか若しくは相互に接続可能であり、(請求項1)
追加の生成物(等張液、培地等)は、1又は複数の接続(スパイクコネクタ)を備えたラインによって導き入れられ、(【0031】)
拡大を目的として操作することができるように、システムは細胞を所望培地内に直接浮遊できてもよく、(【0019】)
廃棄された生成物及び密度勾配媒体投入には、サテライトバッグ又は廃棄物バッグが用いられ、(【0031】)
移送バッグに接続されたライン、中間バッグに接続されたライン、分離チャンバに接続されたライン、サテライトバッグ又は廃棄物バッグに接続されたライン、追加の生成物(等張液、培地等)が導き入れられるラインが、3方向活栓を装備したストップコックバルブランプを介して互いに接続されている、(甲1認定事項)
ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット。」
2 甲第2号証に記載された事項
本件特許の優先日前に発行された甲第2号証(特開2014-100588号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 段落【0003】~【0004】
「【0003】
本発明は、単一デバイスおよび使い捨て品に種々の細胞処理ステップを統合し、完全自動過程で制御されて、手動細胞移転、工程管理、細胞生成物への関連リスク、およびリスク削減対策の要件を排除し、したがって、直接使用の準備ができている細胞療法生成物の製造のためのデバイスおよび方法を提供する。
【0004】
本発明は、概して、生物材料の処理に関する。より具体的には、本発明は、生体試料の成分を培養および/または分離するように、かつ、磁気分離の適用を含む、分離技法によって試料の成分をさらに分離するように、生物材料の処理のためのシステム、デバイス、および方法を提供する。」
イ 段落【0032】~【0134】、【図3】、【図13】
「【0032】
したがって、本発明のシステムは、典型的には、試料処理ユニットおよび試料分離ユニットの両方を含む。システムはまた、複数の試料処理ユニットおよび/または複数の試料分離ユニットを備えるか、または含有してもよい。本発明の複合処理/分離システムは、密度に基づいた分離、免疫親和性分離、免疫磁気を含む磁気分離、細胞培養/刺激/活性化、洗浄、または最終処方ステップを含む、種々の複雑な細胞処理ステップを自動的に行うようにプログラムすることができる、閉鎖システムを含むことができる。この目的で、システムは、コンピュータ上で実行することができるコンピュータプログラムによって制御されてもよい。細胞処理ステップはまた、サイトカイン、DNAやRNAのような遺伝物質、ウイルス、転写因子、抗原、または他の化学物質を含む、細胞へのある物質の送達を含むことができる。
…(中略)…
【0034】
本発明のシステムの試料処理ユニットで行われる、密度に基づく分離過程は、無制限に、細胞洗浄、バフィーコート生成、密度媒体、例えば、FicollTM、PercollTM(GE Healthcare)を使用する、密度に基づく分離、密度標識化(例えば、Rosettesep(Stem Cell technologies)、または他の密度標識化手段)に基づく分離、沈殿の速度、例えば、血小板の除去、水簸、細胞接着、および同等物による分離を含む。本システムの試料処理ユニットで行うことができる、付加的な処理ステップ/技法は、増殖を含む細胞培養、刺激、分化、再分化、抗原負荷、トランスフェクション、形質導入、培養、付着または懸濁中、多細胞型の多層または混合、静止状態または強制的な培養、または混合を含む。投入材料は、血液、白血球分離、骨髄、脂肪吸引、乳汁、任意の体液、組織からの細胞、例えば、種々の臓器からの細胞、腫瘍細胞、単細胞、細胞集塊、細胞集合体、機械的に、または酵素と併せて解離された組織を含むが、それらに限定されない。
…(中略)…
【0088】
図3に描写されるような、自動細胞分離器具の一実施形態は、機械的、電気機械的、および磁性構成要素を含む。機械構成要素は、器具外殻または筐体15と、調整可能な容器ホルダ21と、蠕動ポンプ64と、前濾過カラムホルダ32と、分離カラムホルダ42とを含んでもよい。電気機械的構成要素は、ソレノイドピンチ弁1-11と、蠕動ポンプ64を駆動する内部モータ(図示せず)と、磁界の内外に分離カラムホルダ42を移動させる(それにより、分離カラム40を移動させる)か、または磁石50を移動させる、内部モータ(図示せず)と、流体回路中の流体の存在を検出するために使用される、気泡検出器(超音波センサ)65とを含んでもよい。磁性手段は、永久磁石および電磁石を含んでもよい。これらの個々の構成要素は、多数の容易に入手可能な代替物から選択されてもよく、本発明の改良型磁気分離システムの一般的説明から逸脱することなく、種々の構成で組み合わされてもよいことが理解されるであろう。」
「【図3】
[図:0001437446000008.jpg]
」
「【0089】
分離デバイスの好ましい実施形態では、流体経路、溶液および収集容器、懸濁フィルタ、前濾過カラム、分離カラム、およびコネクタは、分離システムに対する事前に組み立てられた使い捨て構成要素として提供される。分離デバイスは、分離過程の実施のために、分離器具上に載置される。分離過程の完了時に、生成物収集容器が除去されてもよく、残りの分離デバイス構成要素は処分される。
【0090】
好ましくは、内蔵マイクロプロセッサ(図示せず)が、器具の電気機械的構成要素の全てを制御し、ソフトウェアが、標準的順序で適切な操作を行うようにシステムに命令する。ディスプレイ62および操作者キーパッド60は、操作者が自動システム動作を監視し、手動モードでの器具の動作を制御することを可能にする。プリンタ(図示せず)が、過程情報、標識等を印刷するために、マイクロプロセッサに接続されてもよい。
…(中略)…
【0124】
したがって、図13を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。図示されるように、処理システムは、種々の連結された構成要素、流量チャネル、緩衝剤、試薬等を含む。多数の構成が利用可能であり、現在の構成は、例証目的で提供されていることが認識されるであろう。図13を参照すると、構成要素は、システム緩衝剤300と、スパイクポート301と、滅菌フィルタ302と、血漿/処理中バッグ303と、磁気標識試薬容器304と、スパイクポート305と、磁気試薬滅菌フィルタ306と、滅菌フィルタ307と、緩衝剤/媒体バッグ308と、細胞培養培地ポートと、補助ポート309と、おそらくフィルタを含む、下向きの単一方向弁310と、上向きの単一方向弁311と、試料バッグ312と、試料バッグコネクタ313と、試料フィルタ314と、試料ポート315と、フィルタ316と、分離前フィルタ320と、処理中貯蔵バッグ321と、磁気分離カラム322と、廃棄物バッグ323と、体積低減ユニット324と、陽性留分バッグ325と、陰性留分バッグ326と、滅菌空気フィルタ327と、ポンプ328と、圧力センサ1への空気フィルタ329と、圧力センサ2への空気フィルタ330と、試料/細胞処理ユニット332とを含む。」
「【図13】
[図:0001437446000009.jpg]
」
「【0125】
…(中略)…
【0134】
細胞療法に必要とされる細胞製剤の製造は、規定の特性を伴う規定の細胞生成物を得るように、基本的操作の種々の組み合わせを含むことができる。これらの基本的操作の全てを、単一の閉鎖管類セットの中で行うことができ、そうでなければ必要とされる手動試料移転ステップの危険性を排除することが、本発明に特有である。」
3 甲第3号証に記載された事項
本件特許の優先日前に発行された甲第3号証(特開2020-58号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 請求項1~3
「【請求項1】
情報管理装置と、
前記情報管理装置と通信ネットワークを介して接続され、検査、実験、又は、細胞培養のプロセスを管理するためのシステムであるプロセス管理システムにおいて用いられる端末装置と、
を備え、
前記端末装置は、前記プロセスにおいて取得した情報であるプロセス情報を前記情報管理装置に、前記通信ネットワークを介して送信し、
前記情報管理装置は、前記端末装置から受信した前記プロセス情報を蓄積する、
情報管理システム。
【請求項2】
前記プロセスの作業者を識別するための識別コードを読み取り可能な読取装置をさらに備え、
前記端末装置は、前記識別装置が識別コードを読み取ることによって識別された作業者に関する情報を、前記プロセス情報と共に前記情報管理装置に送信し、
前記情報管理装置は、前記端末装置から受信した前記プロセス情報を、前記作業者に関する情報と関連付けて蓄積する、
請求項1に記載の情報管理システム。
【請求項3】
前記プロセスにおいて使用される試薬に関する情報を識別するための識別コードを読み取り可能な読取装置をさらに備え、
前記端末装置は、前記識別装置が識別コードを読み取ることによって識別された試薬に関する情報を、前記プロセス情報と共に前記情報管理装置に送信し、
前記情報管理装置は、前記端末装置から受信した前記プロセス情報を、前記試薬に関する情報と関連付けて蓄積する、
請求項1に記載の情報管理システム。」
イ 段落【0007】~【0009】
「【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である情報管理システムは、情報管理装置と、前記情報管理装置と通信ネットワークを介して接続され、検査、実験、又は、細胞培養のプロセスを管理するためのシステムであるプロセス管理システムにおいて用いられる端末装置と、を備え、前記端末装置は、前記プロセスにおいて取得した情報であるプロセス情報を前記情報管理装置に、前記通信ネットワークを介して送信し、前記情報管理装置は、前記端末装置から受信した前記プロセス情報を蓄積するものである。
【0008】
上記情報管理システムは、前記プロセスの作業者を識別するための識別コードを読み取り可能な読取装置をさらに備え、前記端末装置は、前記識別装置が識別コードを読み取ることによって識別された作業者に関する情報を、前記プロセス情報と共に前記情報管理装置に送信し、前記情報管理装置は、前記端末装置から受信した前記プロセス情報を、前記作業者に関する情報と関連付けて蓄積しても良い。
【0009】
上記情報管理システムは、前記プロセスにおいて使用される試薬に関する情報を識別するための識別コードを読み取り可能な読取装置をさらに備え、前記端末装置は、前記識別装置が識別コードを読み取ることによって識別された試薬に関する情報を、前記プロセス情報と共に前記情報管理装置に送信し、前記情報管理装置は、前記端末装置から受信した前記プロセス情報を、前記試薬に関する情報と関連付けて蓄積しても良い。」
ウ 段落【0017】~【0023】
「【0017】
情報管理サーバ11は、各プロセス管理システム12から送信されたバリデーション用のデータを含む各種データを蓄積して管理する情報管理装置である。また、情報管理サーバ11においてセキュリティ管理を行っても良く、情報管理サーバ11を承認システムとして使用することもできる。
…(中略)…
【0020】
プロセス情報には、当該プロセス管理システム12において使用される器具を制御するための制御データや管理データ、各器具のログデータ等が含まれる。端末装置は、各プロセス管理システム12において使用される器具と有線又は無線(例えばブルートゥース(登録商標))により接続されており、端末装置から所定の器具に制御信号を送信することにより該器具の動作を制御すると共に、該器具からログデータを受信する。
【0021】
各プロセス管理システム12に設けられた端末装置には、バーコードや2次元コード等の識別コードを読み取り可能な読取装置(例えばバーコードリーダー)が接続されても良い。この場合、作業者は、各々に付与された識別コード(個人認証用のコードなど)を読取装置に読み取らせた上で、所定の器具を用いて所定の作業を行う。それにより、端末装置は、読取装置が識別コードを読み取ることによって識別された作業者に関する情報を、プロセス情報と共に情報管理サーバ11に送信する。これに応じて、情報管理サーバ11は、端末装置から受信したプロセス情報を、作業者に関する情報と関連付けて蓄積する。作業者に関する情報は、作業者の氏名やID番号の他、所属や担当作業等を含んでも良く、情報管理サーバ11へのログイン、プロセスの識別、プロセスの信頼性の検証等のために使用される。
【0022】
また、読取装置に、各プロセス管理システム12において行われる所定のプロセスで使用される試薬に関する情報を識別するための識別コードを読み取らせても良い。端末装置は、読取装置が識別コードを読み取ることによって識別された試薬に関する情報を、プロセス情報と共に情報管理サーバ11に送信する。これに応じて、情報管理サーバ11は、端末装置から受信したプロセス情報を、試薬に関する情報と関連付けて蓄積する。試薬に関する情報は、試薬の名称、メーカー、製品番号、製造番号、製造年月日、内容量等を含み、プロセスの信頼性の検証等のために使用される。
【0023】
試薬に関する情報は、端末装置から直接、又は、情報管理サーバ11を介して、在庫購買管理システム13に送信しても良い。在庫購買管理システム13において、試薬に関する情報は、在庫管理や購買管理等に使用される。また、端末装置から直接、又は、情報管理サーバ11を介して、各種プロセスにおいて使用される消耗品(例えば、分注装置のノズルチップなど)に関する情報を送信しても良い。」
第5 当審の判断
1 理由1(進歩性の欠如)について
(1) 本件発明1について
ア 対比分析
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 「細胞製造装置の包装体」の発明であることについて
a 甲1発明における「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」は、「前記患者から採取された細胞サブセットを収集、処理、及び再注入する」ために用いられるから、細胞を扱う装置であるといえる。
b また、甲1発明において、「拡大を目的として操作することができるように、」「細胞を所望培地内に直接浮遊でき[る]」こと、すなわち、細胞を培養することが想定されており、このことは、本件発明1における「細胞製造」に相当する。
c 前記a及びbから、甲1発明における「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」は、本件発明1における「細胞製造装置」に相当する。
d そうすると、甲1発明における「機能的に閉鎖されたパックに納められ[た]」「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」は、本件発明1における「細胞製造装置の包装体」に相当する。
e 以上の検討結果を踏まえると、「細胞製造装置の包装体」の発明である本件発明1と「機能的に閉鎖されたパックに納められ[た]」「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」の発明である甲1発明は、「細胞製造装置の包装体」の発明である点において一致する。
(イ) 「細胞製造装置と包装資材とを有[する]」ことについて
甲1発明における「機能的に閉鎖されたパック」は、本件発明1における「包装資材」に相当する。
そのため、前記(ア)の対比分析の結果も踏まえると、甲1発明は、本件発明1における「当該包装体は、細胞製造装置と包装資材とを有し」に相当する構成を備える。
(ウ) 「細胞製造装置」が有する「容器」について
a 「加工用容器」について
(a) 甲1発明における「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」が「具備[する]」「処理チャンバ」においては、「遠心分離処理」や「導き入れられ[た]」「培地」を用いた環境での培養処理が行われることが想定される。
(b) ここで、本願明細書の【0032】の「加工」の定義(細胞を「加工する」とは、細胞の培養、細胞を含んだ溶液の希釈、細胞の洗浄、細胞を含んだ溶液からの目的とする細胞の分離などの処理を施すことを意味する)を踏まえると、甲1発明における「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」が「具備[する]」「処理チャンバ」は、本件発明1における「細胞製造装置」が「有[する]」「加工用容器」に相当する。
b 「培地容器」及び「第1供給用容器」について
(a) 本件発明1における次のiの構成が「組み立て」前から「閉鎖系」が保たれていることを前提とし、iiの構成が使用時においても「閉鎖系」が保たれていることを特定するものであることを踏まえると、本件発明1の「包装体」とは、時系列的な観点からみて、「閉鎖系」を破る作業である「内容物」の「収容」作業がすでに完了した後の状態にあるものをいうのであって、「内容物」は既に「包装体」の「細胞製造装置」が有する「培地容器」や「第1供給用容器」に「収容[された]」状態にあると解するのが相当である。
i 「前記閉鎖系の加工回路部分は、閉鎖系を保ったままで前記装置本体部分に対して着脱可能であり、かつ、該装置本体部分から取り外された状態の閉鎖系として組み立てられたものであ[る]」こと
ii 「それぞれの内容物が閉鎖系を保ちながら前記加工用容器内に送られる」こと
そして、このような解釈は、本件特許の明細書の段落【0007】等に記載された本件発明1が解決しようとする課題や、段落【0100】等に記載された本件発明1に対応する実施態様とも整合するものである。
(b) そうすると、本件発明1において、「液体培地を収容する少なくとも1つの培地容器」、及び、「初期化因子を含有する流体を収容する第1供給用容器」は、それぞれ、既に液体培地が収容された少なくとも1つの培地容器、及び、既に初期化因子を含有する流体が収容された第1供給用容器を意味することになる。
(c) 前記(a)及び(b)の解釈を踏まえると、甲1発明は、「成人幹細胞及び血小板を含む細胞サブセットを、採取、収集、処理、及び移植するためのシステム」が具備するものであるから、「人工多能性幹細胞を製造するための構成」を備えるものではない。そして、「採取」という文言に着目すると、「成人幹細胞」が既に存在することを前提としているから、甲1発明は、そもそも「初期化因子」(体細胞から多能性幹細胞に人工的に変化させるための誘導因子)を必要としないシステムであるというべきであって、本件発明1のごとく既に初期化因子を含有する流体が収容された容器の存在を想定するものではない。また、甲1発明において、「培地」は、「1又は複数の接続(スパイクコネクタ)を備えたラインによって導き入れられ[る]」ものであることから、本件発明1のごとく既に液体培地が収容された容器の存在を想定するものではない。
(d) したがって、甲1発明は、「人工多能性幹細胞を製造するための構成として」、本件発明1における「液体培地を収容する少なくとも1つの培地容器」、「初期化因子を含有する流体を収容する第1供給用容器」に相当する構成を備えない。
(エ) 「加工用容器」との「接続」について
a 前記(ウ)aで検討したとおり、甲1発明における「処理チャンバ」は、本件発明1における「加工用容器」に相当する。
b 甲1発明において、「培地」が「導き入れられ[る]」ところ、細胞を含む液体を処理する際に細胞の生存に適した環境を保つべきことは明らかであるから、当業者であれば、液体である「培地」が(少なくとも)「処理チャンバ」に「導き入れられ[る]」態様を観念できるといえる。
加えて、甲1発明は「閉鎖システムを提供する」から、甲1発明において、液体である「培地」が、閉鎖された状態を保ちながら「導き入れられ[る]」ことは明らかである。
c 本件発明1における「培地容器」は、「液体培地を収容する」から、その「内容物」は「液体培地」である。
d 前記a~cから、甲1発明において、「処理チャンバ」に液体である「培地」が閉鎖された状態を保ちながら「導き入れられ[る]」ことは、本件発明1において「液体培地」が「閉鎖系を保ちながら前記加工用容器内に送られるように[される]」ことに相当する。
e 前記dに加え、甲1発明において、「培地」「が導き入れられるラインが、3方向活栓を装備したストップコックバルブランプを介して」「分離チャンバに接続されたライン」「に接続されている」ことも踏まえると、甲1発明は、本件発明1と、「液体培地」の供給源は、「液体培地」が「閉鎖系を保ちながら前記加工用容器内に送られるように、(i)連通状態と非連通状態に切り替え可能な接続管路を介して前記加工用容器に接続されている」という点において共通する。
(オ) 「注入用ポート」、「排出用ポート」について
a 甲1発明における「処理チャンバ」は「処理対象の前記細胞及び前記処理された細胞のための入口/出口」を有するところ、当該「処理対象の前記細胞」「のための入口」、「前記処理された細胞のための」「出口」は、それぞれ、本件発明1における「体細胞を含有する溶液を外部から受入れるための」「注入用ポート」、「内容物を排出するための」「排出用ポート」に相当する。
b また、甲1発明において、「分離チャンバに接続されたライン」が「3方向活栓を装備したストップコックバルブランプを介して」「接続されている」ことを踏まえると、甲1発明における「入口」及び「出口」が、本件発明1でいうところの「開閉可能な」ものであるといえる。
c したがって、甲1発明の「処理チャンバ」が、「分離チャンバに接続されたライン」が「3方向活栓を装備したストップコックバルブランプを介して」「接続されている」「処理対象の前記細胞」「のための入口」、「前記処理された細胞のための」「出口」を有することは、本件発明1の「前記加工用容器は、体細胞を含有する溶液を外部から受入れるための開閉可能な注入用ポートと、内容物を排出するための開閉可能な排出用ポートとを少なくとも有[する]」ことに相当する。
(カ) 「密閉容器」について
a 前記(ウ)aで検討したとおり、甲1発明における「処理チャンバ」は、本件発明1における「加工用容器」に相当する。
b 甲1発明は「閉鎖システムを提供する」から、甲1発明における「処理チャンバ」が本件発明1でいうところの「密閉容器」であることは明らかである。
c したがって、甲1発明において「処理チャンバ」が「密閉容器」であることは、本件発明1において「加工用容器」「は、密閉容器であ[る]」ことに相当する。
(キ) 「滅菌された状態」での「包装」について
a 前記(ア)cで検討したとおり、甲1発明における「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」は、本件発明1における「細胞製造装置」に相当する。
b そして、前記(イ)を踏まえると、甲1発明における「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」が「機能的に閉鎖されたパックに納められ[ている]」ことは、本件発明1における「包装資材にて包装されて[いる]」ことに相当するところ、細胞の処理に関する器具は通常滅菌された状態で保管されることを踏まえると、本件発明1における「前記細胞製造装置は、滅菌された状態で前記包装資材にて包装されて[いる]」ことに相当する。
(ク) 「細胞加工装置」、「閉鎖系の加工回路部分」について
a 甲1発明における(「処理チャンバ」を「具備[する]」)「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」及び「回転駆動ユニット」からなる構成は、細胞を「遠心分離処理」するための装置として機能しているといえるから、本願明細書の【0032】の「加工」の定義も踏まえると、本件発明1における「体細胞を加工するための細胞加工装置」に相当する。
b 前記aから、甲1発明が備える「機能的に閉鎖されたパックに納められ[ている]」、「機能的な閉鎖システムを提供するために、前もって接続されている」「採取装置」、「収集チャンバ」、「処理チャンバ」及び「再注入チャンバ」を「具備[する]」「ディスポーザブル滅菌液体移送要素」に関する構成が、細胞を「遠心分離処理」するための装置として機能していることは、本件特許の明細書の段落【0019】に記載された「回路」の定義も踏まえると、本件発明1において「前記包装資材で包装されている前記細胞製造装置は、前記体細胞を加工するための細胞加工装置に含まれる閉鎖系の加工回路部分であ[る]」ことに相当する。
(ケ) 「細胞加工装置」の構成について
甲1発明における「回転駆動ユニット」は、本件発明1における「装置本体部分」に相当し、前記(ク)で検討した事項も踏まえると、甲1発明が備える「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」及び「回転駆動ユニット」に関する構成は、本件発明1において「前記細胞加工装置は、該閉鎖系の加工回路部分と装置本体部分とを有して構成され[る]」に相当する構成を備えるといえる。
(コ) 「装置本体部分」の構成について
前記(ケ)で検討したとおり、甲1発明における「回転駆動ユニット」は、本件発明1における「装置本体部分」に相当する。
そして、甲1発明における「回転駆動ユニット」が「処理チャンバ」を回転させるための機構と、当該機構を制御する構成を備えることは明らかであって、このことは、前記(ク)bも踏まえると、本件発明1において「前記装置本体部分は、該閉鎖系の加工回路部分を作動させる作動機構と、該作動機構を制御する制御部とを有[する]」ことに相当する。
(サ) 「閉鎖系の加工回路部分」の「装置本体部分」への取り付けについて
a 甲1発明において、「遠心分離処理チャンバは、回転駆動ユニットに前記処理チャンバを嵌合させることによって、回転軸の回りを回転でき、遠心処理前又は処理中に選択された量の処理対象の生物学的液体を入口から分離空間内に取り込み、かつ遠心分離処理中又は処理後に分離空間から処理済みの生物学的液体の構成要素を出口から出すものであ[る]」ことから、甲1発明において、「処理チャンバ」を、「ディスポーザブル滅菌液体移送要素」を構成する他の要素から分離せずに、「回転駆動ユニットに」「嵌合させること」が想定されているといえる。
b 前記aを踏まえると、本件発明1における「閉鎖系の加工回路部分」に対応する構成である、甲1発明における「機能的な閉鎖システムを提供するために、前もって接続されている」「ディスポーザブル滅菌液体移送要素」が、本件発明1における「閉鎖系を保ったままで前記装置本体部分に対して着脱可能であり、かつ、該装置本体部分から取り外された状態の閉鎖系として組み立てられたものであ[る]」に相当する構成を備えることは明らかである。
(シ) 取り付け後の「閉鎖系の加工回路部分」について
前記(コ)及び(サ)を踏まえると、甲1発明は、「機能的な閉鎖システムを提供するために、前もって接続されている」「ディスポーザブル滅菌液体移送要素」に関して、本件発明1における「装置本体部分に取り付けられた該閉鎖系の加工回路部分は、前記制御部の制御下で前記作動機構によって作動し、それにより、該閉鎖系の加工回路部分の内部において前記体細胞が加工される」に相当する構成を備える。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件発明1と甲1発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
なお、本件発明1における「(ii)前記接続管路を介して、かつ、相互の誤接続を防止するように構成された固有のコネクターを介して、前記加工用容器に接続可能であり」との構成は、本件発明1において任意に選択できる事項として特定されており、必須の構成ではないことから、甲1発明との相違点として認定していない。
(ア) 一致点
「細胞製造装置の包装体であって、
当該包装体は、細胞製造装置と包装資材とを有し、
前記細胞製造装置は、加工用容器、を有し、
液体培地の供給源は、液体培地が閉鎖系を保ちながら前記加工用容器内に送られるように、連通状態と非連通状態に切り替え可能な接続管路を介して加工用容器に接続されており、
前記加工用容器は、体細胞を含有する溶液を外部から受入れるための開閉可能な注入用ポートと、内容物を排出するための開閉可能な排出用ポートとを少なくとも有し、
前記加工用容器は、密閉容器であり、
前記細胞製造装置は、滅菌された状態で前記包装資材にて包装されており、
前記包装資材で包装されている前記細胞製造装置は、前記体細胞を加工するための細胞加工装置に含まれる閉鎖系の加工回路部分であって、
前記細胞加工装置は、該閉鎖系の加工回路部分と装置本体部分とを有して構成され、
前記装置本体部分は、該閉鎖系の加工回路部分を作動させる作動機構と、該作動機構を制御する制御部とを有し、
前記閉鎖系の加工回路部分は、閉鎖系を保ったままで前記装置本体部分に対して着脱可能であり、かつ、該装置本体部分から取り外された状態の閉鎖系として組み立てられたものであって、該装置本体部分に取り付けられた該閉鎖系の加工回路部分は、前記制御部の制御下で前記作動機構によって作動し、それにより、該閉鎖系の加工回路部分の内部において前記体細胞が加工される、
前記細胞製造装置の包装体」の発明である点。
(イ) 相違点
「細胞製造装置」について、
本件発明1においては、
「人工多能性幹細胞を製造するための構成として」
「密閉容器」である、
「液体培地を収容する少なくとも1つの培地容器」(液体培地の供給源)
及び
「初期化因子を含有する流体を収容する第1供給用容器」
を有しており、
「前記培地容器および前記第1供給用容器は、それぞれの内容物が閉鎖系を保ちながら前記加工用容器内に送られるように」構成されているのに対して、
甲1発明においては、
成人幹細胞及び血小板を含む細胞サブセットを、採取、収集、処理、及び移植するためのものであり、培地は導き入れられるものであって、培地を収容する培地容器を備えるものではなく、初期化因子を含有する流体を収容する第1供給用容器を有するものではない点。
ウ 判断
(ア) 細胞製造装置が、「人工多能性幹細胞を製造するための構成として」「液体培地を収容する少なくとも1つの培地容器」及び「初期化因子を含有する流体を収容する第1供給用容器」(以下「人工多能性幹細胞構成」という。)を有していることについて
a 甲1発明(及び技術常識)に基づく検討
(a) 発明の基本思想の相違からみた検討
甲1発明は、甲第1号証の段落【0001】の記載を踏まえると、組織再生を目的とする、それら細胞を局所的に再注入するための骨髄、末梢血、臍帯血、又は脂肪組織に存在する細胞サブセットとして、典型的には成人幹細胞又は血小板を想定しており、より一般的には赤血球及び白血球のような細胞の亜集団を含む細胞サブセットを想定して、その採集、自動処理、及び移植に関するものである。
甲1発明の解決しようとする課題は「閉鎖系を用いることで汚染リスクを最小限にする、ベッドサイド介入のための完全統合システムを提供する」(同段落【0009】参照。)ことであり、かかる課題を解決するために、「成人幹細胞及び血小板を含む細胞サブセットを、採取、収集、処理、及び移植するためのシステムが具備」する「機能的に閉鎖されたパックに納められ」た「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセットであって」、「骨又は静脈穿刺用の針を含む、骨髄又はその他の細胞サブセットの供給源を患者から採取するための採取装置」を含み、「追加の生成物(等張液、培地等)は、1又は複数の接続(スパイクコネクタ)を備えたラインによって導き入れられ」る構成を、その解決手段の一部としたものである。
すなわち、甲1発明は、「機能的に閉鎖されたパックに納められ」た「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」を、ベッドサイドの「成人幹細胞及び血小板を含む細胞サブセットを、採取、収集、処理、及び移植するためのシステム」に装着した上で、各種処理に必要となる「骨髄又はその他の細胞サブセット」や「培地」を、システム内に導き入れるものであって、「ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセット」自体に、「骨髄又はその他の細胞サブセット」や「培地」を含むことは想定していない。
ここで、一般に、細胞培養の培地や、iPS細胞の初期化因子の保管にはそれぞれに最適化した温度管理、期限管理などが厳格に求められることが、技術常識であることを踏まえると、ベッドサイドで被処理物をシステム内に導き入れる甲1発明と、被処理物を細胞製造装置の包装体に含めた状態で流通させる本件発明1とは、要求される保管の厳格度合いに違いが生じることが明らかであるから、その基本思想において、両者は大きく異なるものといえる。
したがって、甲1発明において、基本思想がそもそも異なる本件発明1のごとく「人工多能性幹細胞を製造するための構成」とすることを動機付けることはできない。ましてや、その上で、「液体培地を収容する少なくとも1つの培地容器」及び「初期化因子を含有する流体を収容する第1供給用容器」を設けることを動機付けることもできない。
(b) 細胞処理に要する期間・工程の相違からみた検討
加えて、甲1発明においては、クリーンルームのような設備ではなく、患者のベッドサイドにおける細胞処理を行うことが想定されていること(甲第1号証の段落【0004】~【0006】等参照)、送液手段として「処理チャンバ」「内に液体密封式に運動可能に装着された移動可能なピストン」が用いられているところ、当該手段は、(一度に送液できる液体の体積が「処理チャンバ」の最大容積未満に限られる、「処理チャンバ」の容積を変動させずに送液できないなど)細胞処理装置において通常用いられる蠕動ポンプ等の手段と比較して送液制御の柔軟性の観点で劣る手段であること、「回転駆動ユニット」以外の外部制御モジュールの使用が想定されていないこと等の事情を踏まえると、甲1発明は、それほど期間を要しない比較的単純な細胞処理を行うシステムを想定したものであると解するのが相当である。
一方で、人工多能性幹細胞の樹立には、体細胞を適切に選別し、体細胞に対して初期化因子を適切に導入し、適切なタイミングで初期化因子を除去した上で、適切な環境で培養して人工多能性幹細胞を樹立するという長期にわたる複雑な多段工程が必要であることは技術常識である。
したがって、人工多能性細胞についての記載も示唆もない甲第1号証に記載された発明であって、それほど期間を要しない比較的単純な細胞処理を行うシステムが想定されていると解される甲1発明において、長期にわたる複雑な多段工程を要する人工多能性幹細胞の樹立に関する、前記人工多能性幹細胞構成を採用すること、並びに、「液体培地を収容する少なくとも1つの培地容器」及び「初期化因子を含有する流体を収容する第1供給用容器」を含ませることを動機付けることはできない。
b 甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術事項に基づく検討
細胞製造装置を「人工多能性幹細胞を製造する」ものとして構成することや、そのことに伴って「液体培地を収容する少なくとも1つの培地容器」及び「初期化因子を含有する流体を収容する第1供給用容器」を設けるようにすることは、甲第2号証及び甲第3号証の何れの文献にも記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に対して甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術事項をどのようにして適用したとしても、甲1発明は前記人工多能性幹細胞構成を備えたものとはならない。
(イ) その他の構成について
前記(ア)において説示したとおり、甲1発明を前記人工多能性幹細胞構成を備えたものとすることは、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術事項を踏まえたとしても、当業者が容易に想到し得たことではないから、前記相違点におけるその他の構成について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものでない。
(ウ) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、異議申立書において、前記人工多能性幹細胞構成の採用に関連する主張として、「成人幹細胞及び血小板を含む細胞サブセットを、採取、収集、処理、及び移植するに際して(甲第1号証の請求項1等)、ディスポーザブル滅菌液体移送要素のセットにおける第2のバッグを、初期化因子を含有する流体を収容する第1供給用容器とすることも、当業者であれば自明な事項である。」と主張している。
しかしながら、甲1発明において、相違点に係る構成を採用することが容易想到でないことは前記(ア)において検討したとおりであって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(エ) まとめ
したがって、本件発明1は、当業者が甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものでない。
(2) 本件発明2~23について
本件発明2~23は、少なくとも前記相違点に係る本件発明1の構成と同一の構成を備えるから、前記(1)ウにおいて検討したのと同様の理由により、当業者が甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものでない。
2 理由2(明確性要件違反)について
(1) 明確性要件違反1について
本件特許の明細書の段落【0021】には、「閉鎖系」の定義について次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。
「【0021】本発明において「密閉容器」とは、気密または液密に閉鎖された容器のみならず、各ポートや配管を閉鎖した場合に、外部から微生物やウイルスが入り込まない程度に、即ち容器内の無菌性が保たれる程度に、内部が閉鎖された容器である。例えば、細菌やウイルスは通過し得ないが、流体(とりわけガス)が通過し得る程度の多孔質フィルター(例えば、孔径0.2μm程度以下、とりわけ0.1~0.2μm程度)が入出用ポートに設けられた閉鎖容器は、外気が該多孔質フィルターを通過して容器内に流入し得るが、細菌やウイルスは流入し得ず、閉鎖容器内の無菌性は保たれるので、密閉容器である。また、閉鎖容器の壁部がガス透過性膜となっており、細菌やウイルスなどは通過し得ず、O2ガス分子やCO2ガス分子が透過可能であるような閉鎖容器も、密閉容器である。「閉鎖系」も同様に、気密や液密に閉鎖された系のみならず、外部から微生物やウイルスが入り込まない程度に、即ち系内の無菌性が保たれる程度に閉鎖された系である。」
そして、段落【0021】に記載された定義を踏まえると、「閉鎖系」とは、必要に応じて孔径が制御されたフィルターや適宜選択されたガス透過性膜等を用いつつ、外部から微生物やウイルスが入り込まない程度に閉鎖された系であることが把握できるから、当該記載により本件発明1~23は明確であって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(2) 明確性要件違反2について
請求項1において、「前記培地容器および前記第1供給用容器」について、「(i)…(中略)…接続管路を介して前記加工用容器に接続されている」状態だけでなく、「(ii)前記接続管路を介して、…(中略)…、前記加工用容器に接続可能」な状態であってもよいことが記載されており、後者の記載に基づくと、加工回路部分の構成要素である「培地容器」、「第1供給用容器」及び「加工用容器」の全てが単一の包装資材に包装された単一の「包装体」として構成されている態様だけでなく、これらの要素のうちの少なくとも一つが他とは異なる包装資材に包装された態様、すなわち、分離された複数の「包装体」として構成される態様をも把握することができる。
したがって、請求項1の記載から、「包装体」は、単一のものも分離した複数のものも含むことが把握できるから、請求項1の記載は、請求項5における「当該包装体が互いに独立した2以上の包装体に分離している」との記載と矛盾するものではない。
したがって、請求項1及び5における上記記載は明確であって、本件発明1~23が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~23に係る特許はいずれも、特許法113条2号又は同条4号に該当するものではなく、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~23に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1~23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2026-700327