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特許異議申立

2017-700375

クロロシラン類の製造方法及び製造装置

審判番号
2017-700375
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-064816外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年04月17日
審決日
2017年06月12日
公報発行日
2017年07月28日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6008385号発明「クロロシラン類の製造方法及び製造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6008385号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 特許第6008385号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成24年 3月22日に出願したものであって、平成28年 9月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対して、特許異議申立人横山佳孝により特許異議の申立てがされたものである。 2 本件特許 特許第6008385号の請求項1~4に係る発明(以下、「本件特許発明1~4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものである。 3 申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠として、特開2010-189256号公報(甲第1号証)、特開2009-107654号公報(甲第2号証)、特開平10-287413号公報(甲第3号証)、及び、特開2010-202420号公報(甲第4号証)を提出し、本件特許発明1~4は、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない旨を主張している。 4 甲号証の記載 (1)甲第1号証(特開2010-189256号公報) 本件特許の出願前に頒布された甲第1号証には、「トリクロロシラン製造装置及びトリクロロシラン製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下同様)。 ア 「【請求項1】 反応炉内に供給された金属級シリコン粉末を塩化水素ガスによって流動させながら反応させ、この反応により生成されたトリクロロシランを反応炉から取り出すトリクロロシラン製造装置において、 前記反応炉の中心部空間内に上下方向に沿って配置される複数本のガス流制御部材と、 前記中心部空間を囲むリング状空間に上下方向に沿って配置され、熱媒体が流通される伝熱管とが設けられていることを特徴とするトリクロロシラン製造装置。」 イ 「【請求項4】 反応炉内に供給された金属級シリコン粉末を塩化水素ガスによって流動させながら反応させ、この反応により生成されたトリクロロシランを反応炉から取り出すトリクロロシラン製造方法において、 前記反応炉の中心部空間内に上下方向に沿って配置される複数本のガス流制御部材と、 前記中心部空間を囲むリング状空間に上下方向に沿って配置され、熱媒体が流通される伝熱管とを設けておき、前記ガス流制御部材の間に金属級シリコン粉末と塩化水素ガスとの上昇流を通過させながらこれらを反応させることを特徴とするトリクロロシラン製造方法。」 ウ 「【0016】 以下に本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。 このトリクロロシラン製造装置1は、反応炉2と、この反応炉2に原料として金属級シリコン粉末を供給する原料供給手段3と、その金属級シリコン粉末と反応させられる塩化水素ガス(HCl)を導入するガス導入手段4と、生成されたトリクロロシランガスを排出するガス取出し手段5とが備えられた構成とされている。 【0017】 反応炉2は、大部分がストレートの円筒状をなす上下方向に沿う胴体部6と、この胴体部6の下端に連結された底部7と、胴体部6の上端に連結された大径部8とから構成されている。・・・ 【0018】 原料供給手段3は、反応炉2の胴体部6の下部に接続された原料供給管21を介して、原料フィードホッパー22から金属級シリコン粉末(例えば直径が1μm以上且つ1000μm以下)を供給するようになっており、塩化水素ガスをキャリアガスとした気流移送によって金属級シリコン粉末を供給する構成である。 一方、ガス導入手段4は、ガス供給管23を介して反応炉2の底部7内に塩化水素ガス(HCl)を導入する構成である。」 エ 「【0027】 次に、このトリクロロシラン製造装置1によってトリクロロシランを製造する方法について説明する。 反応炉2の内部に、気流移送により原料供給管21を通じて金属級シリコン粉末を供給する。このとき、塩化水素ガスを気流移送のキャリアガスとして用いており、このキャリアガスの流量を制御することにより金属級シリコン粉末の供給量を調整する。 また、ガス導入手段4により反応炉2の底部7に塩化水素ガスを導入する。隔壁9には、反応炉2の底部7と胴体部6との間を連通するノズル24が設けられている。塩化水素ガスはノズル24を介して胴体部6内に噴出される。一方、金属級シリコン粉末Sは、隔壁9の上部に供給される。そして、金属級シリコン粉末Sが下方からの塩化水素ガスの上昇流に乗って流動しながら反応する。 【0028】 ・・・ なお、反応炉2の胴体部6の上部まで上昇したトリクロロシランガスは、反応炉2の頂部からガス取出し手段5に排出される。」 (2)甲第2号証(特開2009-107654号公報) 本件特許の出願前に頒布された甲第2号証には、「粉体物乾燥装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 ア 「【0005】 また、金属シリコン粉末は、トリクロロシラン製造用反応装置(例えば、特許文献2参照)内に供給され、底部から噴き出す塩化水素ガスによって装置内を流動しながら塩化水素ガスと反応し、トリクロロシランを生成する。ここで、金属シリコン粉末が水分を含んでいると、装置内での流動が不十分となってトリクロロシランを効率良く生成することができなくなってしまう。 そこで、フレキシブルコンテナパックに充填されて搬送・保管されていた金属シリコン粉末は、粉体物乾燥装置によって水分を除去した後にトリクロロシラン製造用反応装置に供給されている。」 (3)甲第3号証(特開平10-287413号公報) 本件特許の出願前に頒布された甲第3号証には、「多結晶シリコン製造装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 ガス化された塩素化シリコンと水素を主体としたガスを供給し、多結晶シリコンと塩化水素ガスとを反応平衡関係もしくはそれに近い状態にて発生せしめるA室(1)と、塩化水素を主体としたガスと金属シリコンとを供給し、ガス化された塩素化シリコンと水素とを反応平衡関係もしくはそれに近い状態にて発生せしめるB室(2)とからなるとともに、A室(1)にて発生および残余のガスを管路AB(31)を介してB室(2)に供給する部分と、B室(2)にて発生および残余のガスを管路BA(32)を介してA室(1)に供給する部分とからなる装置であって、B室(2)に金属シリコンを供給することによって、A室(1)から多結晶シリコンを取り出すことを可能にせしめたことを特徴とする多結晶シリコン製造装置。」 イ 「【請求項8】 請求項5記載のB室(2)に供給する金属シリコンを供給するためのホッパー(4)が、200℃以上400℃以下に加熱されているとともに、金属シリコン中に含まれる水の含有濃度が100ppm以下であることを特徴とする請求項5記載の多結晶シリコン製造装置。」 ウ 「【0085】さらに、B室(2)に供給される金属シリコンは、十分に水分を除去した乾燥されたものである必要がある。これは、本発明による反応系が塩化水素ガスや塩素化シリコンを主体としたものであるために、金属シリコン中に含まれる水分によって腐食性のガスが発生し、反応器や配管を損傷せしめる恐れがあるためである。 【0086】そのために、B室(2)に供給する金属シリコンを供給するためのホッパー(4)が、200℃以上400℃以下に加熱されていることが必要である。より好ましくは、250℃以上400℃以下に加熱されていることであり、更に好ましくは、300℃以上400℃以下に加熱されていることである。金属シリコン中に含まれる水の含有濃度が100ppm以下にまで、低減することができれば、腐食の問題は大幅に軽減することができるのである。」 (4)甲第4号証(特開2010-202420号公報) 本件特許の出願前に頒布された甲第4号証には、「クロロシラン類を使用するクローズド系の洗浄方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 ア 「【0002】 半導体原料や太陽電池として使用される高純度の多結晶シリコンは、シーメンス法と呼ばれる気相成長法により製造されている。この製造システムは、クロロシラン類を使用するクローズド系である。高純度多結晶シリコンの製造に使用されるクローズド系を図1により説明する。図1は特許文献1の図1に対応するものである。なお、クロロシラン類とはトリクロロシラン、四塩化硅素、ジクロシランなどである。 【0003】 まず、金属シリコン、四塩化珪素(STC:SiCl4)及び水素ガスを原料として転化炉によりトリクロロシラン(TCS:SiHCl3)が製造される(塩化工程)。製造されたトリクロロシランは、バージン蒸留系に送られ、ここで複数の蒸留塔に通されて高純度のトリクロロシランに精製される(精留工程)。この高純度のトリクロロシランは、後述する未反応蒸留系で精製された高純度のトリクロロシラン及び水素と共に還元炉に供給される。 【0004】 還元炉では、トリクロロシラン及び水素を原料とする還元反応により、加熱されたシード表面に多結晶シリコンが気相析出する(還元工程)。この反応に伴って、還元炉からは、未反応のトリクロロシラン及び水素、並びに反応生成物である四塩化珪素などからなる排ガスが排出される。この排ガスは、水素回収工程に送られる。この工程では、排ガスを-10℃以下に冷却して、排ガス中のトリクロロシラン及び四塩化珪素を液化し、水素から分離する(第1回収工程)。この工程で回収分離された水素は、還元炉に原料ガスとして供給される。 【0005】 一方、液化したトリクロロシラン及び四塩化珪素を主成分とするクロロシラン液は、未反応蒸留系に送られる。未反応蒸留系では、クロロシラン液を蒸留塔に通し、トリクロロシランを四塩化珪素及び不純物から分離する(第2回収工程)。塔頂部から取り出される高純度のトリクロロシランは、還元炉に原料ガスとして供給される。塔底部から取り出される不純物を含む四塩化珪素は、前述した転化工程に送られる。・・・」 イ 「【0014】 高純度多結晶シリコンの製造においては、水分が汚染源となること自体は知られている。すなわち、クローズド系内に水分が残留していると、その水分がクロロシラン類と反応して塩化水素を生成し、機器、部材を構成するステンレス鋼や炭素鋼を腐食させることによりリン、ボロンといった汚染物質を発生させるのである。この結果、特に運転開始直後の製品の品質が低下する。高純度多結晶シリコン製造のためのクローズド系の部分的な改造工事、オーバーホール工事後の工事箇所における汚染源は様々な異物が主体と考えられていたが、実際は水分が殆どであり、その結果として、乾燥した不活性ガスなどによる水分除去操作の有効性が高くなるということは、本発明者による知見事項である。」 ウ 「【0017】 本発明のクローズド系の洗浄方法は、かかる知見を基礎として完成されたものであり、クロロシラン類を使用し且つ外気から遮断されたクローズト系の運転開始前に当該クローズド系内へクロロシラン類を充填するに当たり、クローズド系内を不活性ガスで加圧置換し、その加圧置換から1時間以上経過した時点の系内ガスの露点が-20℃以下であることを確認した後に、クローズド系内へのクロロシラン類の充填を開始するものである。」 エ 「【0023】 加圧置換に使用する不活性ガスは当初露点が-20℃未満の乾燥ガスであることは言うまでもない。クロロシラン類を充填する箇所に水分が残留していると、その水分が、置換された不活性ガス中へ徐々に移行し、不活性ガス中の水分量が時間経過と共に増加しいく。すなわち、不活性ガスの露点が時間経過と共に上昇する。加圧置換から1時間以上経過してもなお露点が-20℃以下であれば、置換箇所の水分は各部から十分に除去されているということであり、また雰囲気中の水分量も少ないので、クロロシラン類を充填しても塩化水素の生成、これによる製品汚染の問題は回避される。」 オ 「【0025】 本発明のクローズド系の洗浄方法は、図1に示した高純度多結晶シリコンの製造に使用されるクローズド系の洗浄に特に適する。このクローズド系が塩化工程、精留工程、還元工程、第1回収工程、第2回収工程からなることは前述したとおりである。」 カ 「【発明の効果】 【0027】 本発明のクロロシラン類を使用するクローズド系の洗浄方法は、クローズド系内のクロロシラン類を充填する箇所を不活性ガスで予め加圧置換し、その加圧置換から1時間以上経過した時点の不活性ガスの露点が-20℃以下であることを確認した後に、その箇所へのクロロシラン類の充填を開始することにより、クロロシラン類の充填箇所から水分を事前に効果的に除去することができる。これにより塩化水素の発生を抑え、高い製品品質を維持することができる。また、共洗いの必要性を低減し、共洗い回数を減少させることにより、洗浄コストの大幅低減を可能にする。」 5 判断 (1)本件特許発明1について 甲第1号証には、上記4(1)イ~エの記載事項によれば、「金属級シリコン粉末を反応炉へ供給し、反応炉内に供給された金属級シリコン粉末を塩化水素ガスによって流動させながら反応させるトリクロロシラン製造方法において、金属級シリコン粉末は、反応炉の胴体部の下部に供給され、塩化水素ガスは反応炉の底部に導入され、反応炉内で生成されたトリクロロシランは反応炉の頂部から排出される、トリクロロシラン製造方法。」の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されている。 そこで、本件特許発明1と甲1発明1を対比すると、甲1発明1の「金属級シリコン粉末」は、本件特許発明1の「粒状の金属シリコン」に相当する。また、甲1発明1の「反応炉」は、供給された金属級シリコン粉末を塩化水素ガスによって流動させながら反応させてトリクロロシランを製造することから、本件特許発明1の「流動層方式」の「塩化反応炉」に相当する。さらに、甲1発明1の「金属級シリコン粉末は、反応炉の胴体部の下部に供給され」ること、「塩化水素ガスは反応炉の底部に導入され」ること、「反応炉内で生成されたトリクロロシランは反応炉の頂部から排出される」ことは、それぞれ、本件特許発明1の「粒状の金属シリコンが炉側面から投入される」こと、「ガス状の四塩化珪素及び水素ガス、或いは塩化水素ガスが炉底から注入され」ること、「当該反応炉内で生成されたクロロシラン類が塔頂から排出される」ことに相当する。 したがって、本件特許発明1と甲1発明1とは、「金属シリコンを塩化反応炉へ投入して炉内で塩化するクロロシラン類の製造方法において、前記塩化反応炉が流動層方式であって、且つ粒状の金属シリコンが炉側面から投入されると共に、ガス状の四塩化珪素及び水素ガス、或いは塩化水素ガスが炉底から注入され、当該反応炉内で生成されたクロロシラン類が塔頂から排出される方式であるクロロシラン類の製造方法」で一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 本件特許発明1は、「当該塩化反応炉に投入する前の金属シリコンを乾燥容器に収容し、当該乾燥容器内に露点が-20℃以下の乾燥ガスを注入することにより、前記金属シリコンを露点が-20℃以下の雰囲気中に保持して、当該金属シリコンの雰囲気露点が-20℃以下となるまで乾燥処理し、しかる後に当該金属シリコンを塩化反応炉へ投入する」ことを特定しているのに対して、甲1発明1では、このような特定がなされていない点。 上記相違点1について検討すると、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の段落【0025】及び【0030】の記載によれば、本件特許発明1は、金属シリコンを炉側面から投入される流動層方式の塩化反応炉を用いたクロロシラン類の製造方法において、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を行うことによって、原料投入管の反応炉付近における腐蝕及び閉塞の両方を抑制し、定期補修間隔の確実な延長を可能にし、操業コストを低減するとの効果を奏するものといえる。 これに対して、甲第2号証には、上記4(2)アの記載事項によれば、トリクロロシラン製造用反応装置内に供給した金属シリコン粉末を、底部から噴き出す塩化水素ガスによって流動させながら塩化水素ガスと反応させて、トリクロロシランを生成する方法において、粉体物乾燥装置によって、金属シリコン粉末の水分を除去した後にトリクロロシラン製造用反応装置に供給されることによって、装置内での金属シリコン粉末の流動が不十分とならないようにするとの技術的事項が記載されている。 甲第3号証には、上記4(3)ア~ウの記載事項によれは、塩素化シリコンと水素を主体としたガスを供給して、多結晶シリコンと塩化水素ガスとを発生せしめるA室と、塩化水素を主体としたガスと金属シリコンとを供給して、塩素化シリコンと水素とを発生せしめるB室とを備え、B室に金属シリコンを供給することによって、A室から多結晶シリコンを取り出す多結晶シリコン製造装置において、B室に供給する金属シリコンを乾燥して、金属シリコン中に含まれる水の含有濃度が100ppm以下にまで低減することによって、腐食性のガスの発生を抑制して、反応器や配管の損傷を防止するとの技術的事項が記載されている。 また、甲第4号証には、上記4(4)ア~カの記載事項によれば、金属シリコン、四塩化珪素及び水素ガスを原料にして転化炉においてトリクロロシランが製造される塩化工程と、製造されたトリクロロシランを高純度のトリクロロシランに精製する精留工程と、高純度のトリクロロシラン及び水素を原料にして還元炉において多結晶シリコンが気相析出する還元工程と、還元炉からの排ガスのトリクロロシラン及び四塩化珪素を液化して水素から分離する第1回収工程と、液化したトリクロロシラン及び四塩化珪素からトリクロロシランを分離する第2回収工程とからなり、分離回収した水素及びトリクロロシランは還元炉に供給され、分離回収した四塩化珪素は転化炉に供給される高純度多結晶シリコンの製造に使用されるクローズド系において、部分的な改造工事又はオーバーホール工事後の運転開始前に、当該クローズド系内に四塩化珪素やトリクロロシランなどのクロロシラン類を充填するに当たり、クローズド系内を不活性ガスで加圧置換して水分除去を行い、その加圧置換から1時間以上経過した時点の系内ガスの露点が-20℃以下であることを確認した後に、クローズド系内へのクロロシラン類の充填を開始ことによって、クロロシラン類を充填しても塩化水素の生成、及びこれに伴う製品汚染の問題を回避するとの技術的事項が記載されている。 しかしながら、甲第2号証~甲第4号証のいずれにも、金属シリコンを炉側面から投入される流動層方式の塩化反応炉の原料投入管の腐蝕及び閉塞の両方を抑制するとの課題は記載されていないし、当該課題を解決するために、当該金属シリコンを乾燥処理し、しかる後に当該金属シリコンを塩化反応炉へ投入することも記載されていない。 そうしてみると、甲1発明1の金属シリコンを炉側面から投入される流動層方式の塩化反応炉を用いたクロロシラン類の製造方法において、原料投入管の腐蝕及び閉塞の両方を抑制するために、「当該塩化反応炉に投入する前の金属シリコンを乾燥容器に収容し、当該乾燥容器内に露点が-20℃以下の乾燥ガスを注入することにより、前記金属シリコンを露点が-20℃以下の雰囲気中に保持して、当該金属シリコンの雰囲気露点が-20℃以下となるまで乾燥処理し、しかる後に当該金属シリコンを塩化反応炉へ投入する」ことは、甲第2号証~甲第4号証に記載された技術的事項を参酌しても、当業者が容易になし得たものではない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は、本件特許発明1を更に減縮したものである。 したがって、上記(1)における本件特許発明1に対する判断と同様の理由により、本件特許発明2は、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明から当業者が容易になし得たものではない。 (3)本件特許発明3について 甲第1号証には、上記4(1)ア、ウ及びエの記載事項によれば、「金属級シリコン粉末を塩化水素ガスによって流動させながら反応させてトリクロロシランを製造する反応炉を具備し、前記反応炉は、金属級シリコン粉末を反応炉の胴体部の下部に供給し、塩化水素ガスを反応炉の底部に導入し、反応炉内で生成されたトリクロロシランを反応炉の頂部から排出する反応炉である、トリクロロシラン製造装置。」の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されている。 そこで、本件特許発明3と甲1発明2を対比すると、両者は「金属シリコンを塩化してクロロシラン類を製造する塩化反応炉を具備し、前記塩化反応炉は流動層方式であって、且つ粒状の金属シリコンが炉側面から投入されると共に、ガス状の四塩化珪素及び水素ガス、或いは塩化水素ガスが炉底から注入され、当該反応炉内で生成されたクロロシラン類が塔頂から排出される方式であるクロロシラン類の製造装置。」で一致し、以下の点で相違している。 (相違点2) 本件特許発明3は、「塩化反応炉に投入する前の金属シリコンを一時的に収容して乾燥処理する乾燥容器」を具備し、「前記乾燥容器は、容器外から導入される乾燥ガスにより容器内の金属シリコンを乾燥処理する」ことが特定されているのに対して、甲1発明2では、このような特定がなされていない点。 上記相違点2について検討すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0026】及び【0030】の記載によれば、本件特許発明3は、金属シリコンを炉側面から投入される流動層方式の塩化反応炉を用いたクロロシラン類の製造装置において、上記相違点2に係る本件特許発明3の発明特定事項を備えることによって、原料投入管の反応炉付近における腐蝕及び閉塞の両方を抑制し、定期補修間隔の確実な延長を可能にし、操業コストを低減するとの効果を奏するものといえる。 そして、上記(1)で検討したとおり、甲第2号証~甲第4号証のいずれにも、金属シリコンを炉側面から投入される流動層方式の塩化反応炉の原料投入管の腐蝕及び閉塞の両方を抑制するとの課題は記載されていないし、当該課題を解決するために、金属シリコンを炉側面から投入される流動層方式の塩化反応炉を用いたクロロシラン類の製造装置において、塩化反応炉に投入する前の金属シリコンを一時的に収容して、容器外から導入される乾燥ガスにより乾燥処理する乾燥容器を具備することも記載されていない。 そうしてみると、甲1発明2の金属シリコンを炉側面から投入される流動層方式の塩化反応炉を具備するクロロシラン類の製造装置において、「塩化反応炉に投入する前の金属シリコンを一時的に収容して乾燥処理する乾燥容器」を具備し、「前記乾燥容器は、容器外から導入される乾燥ガスにより容器内の金属シリコンを乾燥処理する」ことは、甲第2号証~甲第3号証に記載された技術的事項を参酌しても、当業者が容易になし得たものではない。 (4)本件特許発明4について 本件特許発明4は、本件特許発明3を更に減縮したものである。 したがって、上記(3)における本件特許発明3に対する判断と同様の理由により、本件特許発明4は、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明から当業者が容易になし得たものではない。 (5)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、甲第2号証及び甲第3号証には、原料供給管の腐食抑制と管閉塞事故防止との本件特許発明1~4と共通する課題を解決するために、反応炉に投入する前の金属シリコンの水分を除去することが記載されているから、これら課題解決手段を参考にして、甲第1号証に記載された発明において、金属級シリコンを反応炉に投入する前に乾燥容器に収容することは当業者が容易に想到することができると主張している。 しかしながら、甲第2号証には、トリクロロシラン製造用反応装置内での金属シリコン粉末の流動性を改善させることが記載されているのみであり、また、甲第3号証には、腐食性のガスの発生を抑制して、反応器や配管の損傷を防止することが記載されているのみであって、原料投入管の腐蝕及び閉塞の両方を抑制するとの課題は記載されていない。 したがって、特許異議申立人の主張は妥当なものでない。 (6)まとめ 以上のとおり、特許異議申立人の主張は妥当なものでなく、本件特許発明1~4は、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反していない。 6 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700375

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