特許異議申立
2017-700197
外用消炎鎮痛剤製品
- 審判番号
- 2017-700197
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-185232外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月27日
- 審決日
- 2017年10月23日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ライオン株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人英明国際特許事務所
- 【異議申立人】黒川 真一
- 分類
- P1651.121-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5983183号発明「外用消炎鎮痛剤製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
1.特許第5983183号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
2.特許第5983183号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5983183号(請求項の数は8、以下「本件特許」という。)は、平成24年8月24日(優先権主張平成23年8月26日)に特許出願され、平成28年8月12日にその特許権が設定登録され、その後、特許異議申立人黒川真一(以下、単に「異議申立人」という。)より本件特許の請求項1~8に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。
平成29年4月26日付け:取消理由の通知
同年7月25日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
同年9月25日 :意見書の提出(異議申立人)
第2 訂正の可否
1.訂正の内容
平成29年7月25日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、実質的に以下(1)~(3)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり訂正する。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~8についても併せて訂正する。なお、訂正前の請求項1~8は、一群の請求項である。
・本件訂正前
「【請求項1】
(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が30~70質量%である液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品。」
・本件訂正後
「【請求項1】
(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が40~70質量%である、均質な液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品」
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7を以下のとおり訂正する。
また、請求項7を引用する請求項8についても併せて訂正する。
・本件訂正前
「【請求項7】
液体組成物が、さらに組成物中15~65質量%の水を含有する請求項1~6のいずれか1項記載の外用消炎鎮痛剤製品。」
・本件訂正後
「【請求項7】
液体組成物が、さらに組成物中15~52質量%の水を含有する請求項1~6のいずれか1項記載の外用消炎鎮痛剤製品。」
(3)訂正事項3
明細書の段落【0006】を、以下のとおり訂正する。
・本件訂正前
「従って、本発明は下記外用消炎鎮痛剤製品を提供する。
[1].(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が30~70質量%である液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品。
・・・
[7].液体組成物が、さらに組成物中15~65質量%の水を含有する[1]~[6]のいずれかに記載の外用消炎鎮痛剤製品。
・・・」
・本件訂正後
「従って、本発明は下記外用消炎鎮痛剤製品を提供する。
[1].(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が40~70質量%である、均質な液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品。
・・・
[7].液体組成物が、さらに組成物中15~52質量%の水を含有する[1]~[6]のいずれかに記載の外用消炎鎮痛剤製品。
・・・」
2.本件訂正の可否についての判断
(1)訂正事項1について
この訂正は、請求項1に係る発明である「外用消炎鎮痛剤製品」に関し、(B)成分の含有量を「30~70質量%」から「40~70質量%」へと減縮するとともに、ロールオン容器に充填される「液体組成物」について「均質な」という要件を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、(B)成分の含有量を「40~70質量%」とすることは、願書に添付した明細書の段落【0016】に記載されており、また、「液体組成物」を「均質な」ものとすることは、同段落【0024】に記載されているから、この訂正は新規事項の追加に該当しない。そして、この訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
この訂正は、組成物中の水の含有量を「15~65質量%」から「15~52質量%」へと減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、水の含有量を52質量%にすることは、願書に添付した明細書の段落【0055】の実施例24に記載されているから、この訂正は新規事項の追加に該当しない。そして、この訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
この訂正は、明細書の段落【0006】の記載について、特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。
よって、結論1.のとおり、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2の2.で検討のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(なお、請求項2~8の記載は省略する。)。
「【請求項1】
(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が40~70質量%である、均質な液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品」
第4 取消理由についての判断
1.取消理由の概要
平成29年4月26日付け取消理由の内容は、概略、以下のとおりである。(なお、以下、「甲第1号証」等を「甲1」等と省略して表記する。)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
引用文献1:特開2011-046746号公報(甲1)
引用文献2:米国特許第2937392号明細書(甲2)
引用文献3:米国特許出願公開第2010/0256100号明細書(甲3)
引用文献4:久光製薬株式会社、”『ココサロ(登録商標)』新発売のお知らせ”、[online]、平成22年6月、[平成28年10月15日検索]、インターネット <URL:http://www.hisamitsu.co.jp/company/pdf/newitem_100615.pdf>(甲4-1)
引用文献5:サンケイリビング新聞社、”読者がおすすめ! 仕事中・ランチタイムに気分を上げるお気に入りアイテム/シティリビングWeb東京版”、[online]、平成23年2月16日、[平成28年10月15日検索]、インターネット <URL:http://city.living.jp/tokyo2/tokusyu/110216/01.html>(甲4-2)
引用文献6:特開昭48-099316号公報(審査において提示された周知技術を示す文献)
引用文献7:特開昭61-137814号公報(審査において提示された周知技術を示す文献)
2.取消理由についての判断
(1)引用文献の記載事項
引用文献1には、以下の事項(1-1)~(1-5)が記載されている。
(1-1)「【請求項3】
フェニル酢酸誘導体又はその薬学的に許容される塩、及びメントール類を含有する消炎鎮痛剤。」(特許請求の範囲参照)
(1-2)「【0008】
本発明の消炎鎮痛剤は、フェニル酢酸誘導体又はその薬学的に許容される塩、及びメントール類を含有することを特徴とする。本発明の消炎鎮痛剤の剤型は特に制限されず、例えば、液剤(ローション剤、乳剤等)、軟膏剤、クリーム剤、硬膏剤、ゲル剤、エアゾール剤などの形態で使用することができる。好ましい剤型は、ローション剤、貼付剤である。」
(1-3)「【0017】
液剤を調製する場合、通常の液剤の調製方法により調製することができる。例えば上記各成分を上記溶剤に順次添加し、必要に応じて加熱し、溶解することによって調製することができる。」
(1-4)「【0032】
実施例1
下記表1に示す液剤を調製し、この液剤を肩こりを訴える10名の被験者の肩に適用した。適用後30分、60分後の肩こり改善度合いを各人ごとに評価し、その改善度合いによって評価点を付け、これを表2に示した。この評価点の平均値を肩こり改善度の指標とした。」
(1-5)「【0038】
処方例2(ローション剤)
4-ビフェニル酢酸 3g
l-メントール 3g
プロピレングリコール 10g
エタノール 40mL
イソプロパノール 20g
精製水 適 量
合 計 100mL」
また、引用文献2には以下の事項(2-1)~(2-3)が、引用文献3には以下の事項(3-1)~(3-3)が、引用文献4には以下の事項(4-1)及び(4-2)が、引用文献5には以下の事項(5-1)及び(5-2)が、引用文献6には以下の事項(6-1)が、引用文献7には以下の事項(7-1)及び(7-2)が、それぞれ記載されている。なお、引用文献2,3は英語文献であるため、異議申立人による抄訳文に基づく訳文を示す(下線は当審による。)。
(2-1)「本発明は、液体のインク、化粧品、医薬製剤、食品及び他の液体物質のロールオンアプリケータに関する。」(第1欄第15~17行参照)
(2-2)「ロールオンアプリケータは今日でも一般的に使用されている。それらは、液体のための容器と、ボールシートと、前記シート上に回転可能に支持されたボールとを有するノズルを含む。選択された表面に液体を塗布するためには、ノズルが下方を向くように容器を反転させ、次いでその容器をボールがその転がり接触で表面を横切って移動させるだけでよい。ボールは、容器の液体内容物で被覆され、次に、選択された表面を同じ材料で被覆する。」(第1欄第21~30行参照)
(2-3)「ここでノズルアセンブリを見ると、・・・。ボール34は、金属、好ましくはステンレススチール、又はニッケル、クロムなどの金属のような防食及び防錆材料でめっきされたスチールでできている。」(第2欄第56~62行参照)
(3-1)「[0002] 本発明は、高レベルのサリチル酸及び/又はその少なくとも1つの誘導体を含有する化粧用及び/又は皮膚病用の組成物を含むロールオンアプリケータ構造を特徴とするパッケージング及び塗布アセンブリ、特に、脂性の及び/又はにきびの多い及び/又は脂漏性の皮膚に対するケア用に用いられるものに関する。」
(3-2)「[0009] さらに、アプリケータボールを使用するロールオン装置は、身体消臭剤の容器及び塗布のために広く使用されている。
[0010] ロールオンタイプの化粧品及び/又は衛生用品の例には、消臭剤や、ガーニエ(Garnier)によって栄養学的範囲で販売されているカフェインアイロールオン製品が含まれる。
[0011] ロールオンタイプの化粧品の容器及び塗布のためのアセンブリの他の例は、米国特許第5,553,957号、米国特許第4,033,700号、米国特許第4,021,125号、及び米国特許第6,132,126号といった特許文献に記載されている。」
(3-3)「[0034] 1つの好ましい実施形態では、アプリケータ要素は、好ましくはボール、より好ましくは金属ボール、及び非常に好ましくはステンレススチールボールである。」
(4-1)「
」(第2頁下段参照)
(4-2)「
」(第3頁上段参照)
(5-1)「ステンレスボールで塗りやすいし、気分転換したいときにサっと塗れるのがいいですね。ダイエットにいいというウワサがあったグレープフルーツの香りを使っています(笑)。(矢島美穂さん、金融、31歳)」
(5-2)「写真/久光製薬「ココサロ」(ボディ用ローション)ラベンダーの香り、グレープフルーツの香り、ユーカリの香り 各498円」
(6-1)「特許請求の範囲
主基剤として高級脂肪酸エステル類、ラノリン類、グリコール類等の単独若しくは混合を用いこれに鎮痛消炎主剤を入れたものに、被膜形成物質としてアルミニウムオクトエートを添加しロ-ルオンタイプ又はエアゾール剤型の持続性効果をもたらしめることを特徴とする外用鎮痛消炎剤の製法。」
(7-1)「(1)低級一価アルコールと低級一価脂肪酸エステルとを主成分とする溶媒に、分子内に酢酸基又はプロピオン酸基を有する非ステロイド系の消炎鎮痛薬、及びメチルメタアクリレートとブチルメタアクリレートの共重合体からなる被膜形成物質を含有せしめたことを特徴とする消炎鎮痛外用液剤。」(特許請求の範囲参照)
(7-2)「本発明によって得られる外用液剤は、例えばロールオンタイプの容器を用いることで手軽に治療に供することができる。」(第4頁右下欄第8~10行参照)
(2)引用発明
上記記載事項(1-1)、(1-2)、(1-4)、(1-5)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下の組成を有するローション剤であって、肩こり改善のために使用可能な消炎鎮痛剤
4-ビフェニル酢酸 3g
l-メントール 3g
プロピレングリコール 10g
エタノール 40mL
イソプロパノール 20g
精製水 適 量
合 計 100mL」
(3)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、後者における「4-ビフェニル酢酸」、「エタノール及びイソプロパノール」、「l-メントール」、「ローション剤」、「消炎鎮痛剤」はそれぞれ、前者における「(A)消炎鎮痛成分」、「(B)低級アルコール」、「(C)メントール」、「液体組成物」、「外用消炎鎮痛剤」に相当する。
そして、エタノールの密度が0.789g/mLであること、イソプロパノールの密度が0.785g/mLであること、及びプロピレングリコールの比重が水=1に対して1.04であることを考慮すると、引用発明の組成は、概ね以下のような組成であるといえる(要すれば、特許異議申立書第19頁第13行から第20頁第7行を参照のこと)。
「4-ビフェニル酢酸 約3.3質量%( 3.0g)
l-メントール 約3.3質量%( 3.0g)
プロピレングリコール 約10.9質量%( 10.0g)
エタノール 約34.3質量%(約31.6g)
イソプロパノール 約21.7質量%( 20.0g)
精製水 約26.6質量%(約24.5g)」
そうすると、引用発明における(B)成分の含有量は約56.0質量%となるから、本件発明1における「(B)成分の含有量が40~70質量%である」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明は、以下の点で一致及び相違する。
<一致点>
「(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が40~70質量%である液体組成物を備えた、外用消炎鎮痛剤製品」
<相違点>
相違点1:
本件発明1においては、「液体組成物」が「均質な」ものであることが特定されているのに対し、引用発明では、そのことが特定されていない点。
相違点2:
本件発明1においては「液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器」を備えることが特定されているのに対し、引用発明においてはそのことが特定されていない点。
イ.相違点の判断
a.相違点1について
引用文献1には、引用発明のローション剤が均質であることについて明記はされていないが、段落【0017】に「液剤を調製する場合、通常の液剤の調製方法により調製することができる。例えば上記各成分を上記溶剤に順次添加し、必要に応じて加熱し、溶解することによって調製することができる。」(記載事項(1-3)参照)と記載されているように、ローション剤のような液体組成物を調製するに当たって、各成分を溶解して用いるべきであることは本件特許の優先日時点での技術常識であり、単に混合しただけで溶解しない場合には、加熱等の手段を講じることは、当業者が当然に行うことである。
そして、液体組成物において各成分が溶解していれば、当該液体組成物が均質であるといえることは明らかであるから、引用発明のローション剤が均質であることは、明記されていないとしても、記載されているに等しい事項といえる。よって、この点は実質的な相違点ではない。
なおこの点に関し、特許権者は、平成29年7月25日付け意見書において、実験成績証明書(乙第1号証)を示しつつ、引用発明のローション剤が均質でないことを主張しているが、当該実験成績証明書に記載された実験においては、各成分を溶解するために加熱などの工程を行ったことは記載されていないから、当該実験のみをもって、引用発明の液体組成物が均質なものではないと結論づけることはできない。
b.相違点2について
引用文献1には、「ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器」を用いることは記載されていないものの、剤型は特に制限されないことが記載されており(記載事項(1-2)参照)、また、消炎鎮痛成分を含有する液体組成物の容器としてロールオン容器を使用し得ること(記載事項(6-1)、(7-1)、(7-2)参照)、及び医薬等に用いるロールオン容器の塗布ボールとしてステンレス製のものを使用し得ること(記載事項(2-1)~(2-3)、(3-1)~(3-3)参照)は、本件特許の優先日時点での技術常識である。
そして、引用文献5には、「ココサロ(登録商標)」という商品について、「ステンレスボールで塗りやすい」というユーザーの評価が記載されており(記載事項(5-1)、(5-2)参照)、引用文献4によると、「ココサロ(登録商標)」は、水、エタノール及びメントールが配合されているローションをロールオン容器に充填した製品であると認められる(記載事項(4-1)、(4-2)参照)。
そうすると、水、エタノール及びメントールを含有するローション剤である引用発明を、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器に充填して用いることによって、「ココサロ(登録商標)」と同様に「塗りやすい」との効果が奏されることは、当業者が当然に期待し得ることであるといえる。
しかしながら、本件発明1によって奏される効果の一つである「塗布ムラの改善」については、引用文献1~7に記載も示唆もされておらず、また、本件特許の優先日時点の技術常識からも予測できない効果である。かかる効果に関し、本件特許の明細書には、本件発明1の外用消炎鎮痛剤製品を用いた場合に、接触角が30度未満、ぬれ性が2.9秒以下であり、塗布ムラの評価が「◎」又は「○」であったことを示す試験結果が多数示されている(実施例1~27)。他方、特許権者が平成29年7月25日付け意見書とともに提出した実験成績証明書(乙第2号証)においては、引用文献4及び5に記載された「ココサロ(登録商標)」を用いて同様の試験を行った場合に、接触角が50度、ぬれ性が5秒以上、塗布ムラの評価が「△」であったことが示されている。これらの結果から、「塗布ムラの改善」に関して、本件発明1が、引用文献4及び5に記載された「ココサロ(登録商標)」よりも優れた効果を有するものであること、すなわち、単にローション剤をステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器に充填して用いるだけでは奏されることのない優れた効果を奏するものであることが裏付けられる。
そうすると、引用発明を、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器に充填して用いることによって、引用文献1~7の記載、及び本件特許の優先日時点の技術常識からは予測し難い格別な効果が奏されるといえるから、上記相違点2を想到容易であるということはできない。
ウ.小括
以上のとおり、本件発明1は、引用文献1~7に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
(4)本件発明2~8
請求項2~8の記載は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。そして、本件発明1が、引用文献1~7に記載の発明に基づいて想到容易であるということができないことは上述のとおりであるから、本件発明2~8も同様の理由により、想到容易であるということはできない。
3.まとめ
以上のとおり、本件発明1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第5 特許異議申立理由について
1.特許異議申立理由の概要
異議申立人の主張する異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
・申立理由
本件発明1~8は、甲1~甲3に記載された発明、及び本件特許の優先日時点の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
甲1:特開2011-046746号公報(取消理由における引用文献1)
甲2:米国特許第2937392号明細書(取消理由における引用文献2)
甲3:米国特許出願公開第2010/0256100号明細書(取消理由における引用文献3)
2.当合議体の判断
本件発明1~8が、取消理由における引用文献1~7に記載の発明に基づいて想到容易であるということができないことは上記第4の2.で述べたとおりであるから、当合議体は、上記申立理由に理由がないと判断する。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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