特許異議申立
2016-701196
光半導体装置
- 審判番号
- 2016-701196
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-257022外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月27日
- 審決日
- 2017年09月05日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】信越化学工業株式会社
- 【権利者代理人】好宮 幹夫
- 【権利者代理人】小林 俊弘
- 【異議申立人】東レ・ダウコーニング 株式会社
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5941974号発明「光半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5941974号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第5941974号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5941974号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成23年9月2日に出願した特願2011-192013号の一部を平成26年12月19日に新たな特許出願としたものであって、平成28年5月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1ないし8に係る特許について、特許異議申立人東レ・ダウコーニング株式会社により特許異議の申立てがされたものである。
以後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年3月28日:取消理由通知(3月31日発送)
同年5月10日:意見書(特許権者)
同年5月31日:取消理由通知(6月5日発送)
同年6月27日:意見書(特許権者)
同年7月13日:訂正請求書・意見書
同年7月25日:通知書(7月28日発送)
同年8月28日:意見書(特許異議申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正の趣旨
平成29年7月13日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正を、以下「本件訂正」という。)は、特許第5941974号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について、訂正することを求めるものである。
2 訂正の内容
特許請求の範囲の請求項1に「前記成分(A)中のアルケニル基に対する前記成分(B)中のヒドロシリル基のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.70~1.00となる量」とあるのを、
「前記成分(A)中のアルケニル基に対する前記成分(B)中のヒドロシリル基のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.80~1.00となる量」に訂正する(本件訂正請求書第2ないし3頁。)。
以下、訂正事項という。
3 訂正の適否
訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項
(1)上記訂正事項は、モル比(SiH基/アルケニル基)の数値範囲を狭くすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)また、訂正前の請求項1ないし8は、訂正前の請求項2ない8が、請求項1の記載を引用し、上記訂正事項により記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前において「一群の請求項」に該当するものであるから、本件訂正は、一群の請求項ごとになされたものであって、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する
4 訂正の適否のまとめ
本件訂正請求は適法であることから、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-8]について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし8に係る発明(以下「本件発明1ないし本件発明8」という。)は、その訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものである。
第4 取消理由
当審において、訂正前の請求項1ないし8に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
【理由1】
本件特許の請求項1ないし4、7及び8に係る発明(以下「本件発明1ないし本件発明4」等という。)は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第1号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当する。
よって、本件発明1ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8に係る特許は、取り消すべきものである。
【理由2】
本件発明1ないし本件発明8は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第1号証ないし甲第3号証)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし本件発明8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである。
【理由3】
本件発明1ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第1号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当する。
よって、本件発明1ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8に係る特許は、取り消すべきものである。
【理由4】
本件発明5及び本件発明6は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第1号証ないし甲第3号証)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明5及び本件発明6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2010-226093号公報
甲第2号証:特開2007-327019号公報
甲第3号証:特開2006-203201号公報
第5 当審の判断
1 刊行物の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証(特開2010-226093号公報)には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「光半導体素子を載置するパッケージと、鉄、銅等からなる基体の表面に銀メッキが施されてなるリードにダイボンド部材を介して接合された光半導体素子と、該光半導体素子を封止するシリコーン樹脂組成物の硬化物を備える光半導体装置であって、
該硬化物の固体29Si-DD/MAS分析から求められる
(ΦSiO3/2)単位(但しΦはフェニル基を表す)の量が、0.13モル/100g~0.37モル/100gであり、
前記シリコーン樹脂組成物が、
(A)成分として、
(A-1)
フェニルトリクロロシラン(70mol%)とジメチルビニルクロロシラン(30mol%)を共加水分解縮合して得られる脂肪族不飽和基含有シリコーンレジン(樹脂A-1a)、及び
(A-2)
(k及びlは各々0~1,000の整数で、かつ10≦k+l≦1,000、好ましくは90≦k+l≦800を満足し、さらに0≦l/(k+l)≦0.5を満足する整数である。)で示される、25℃における粘度が10~500,000mPa・sである直鎖状の両末端に脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンからなる脂肪族不飽和基含有オルガノポリシロキサンを含み、(A-1)と(A-2)の質量比は、80:20であり、
(B)成分として、
(B-1)
で示される、直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(B-2)
で示される、分岐状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、を含み、
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、それが有するケイ素原子結合水素原子が、(A)成分中の脂肪族不飽和基に対して、モル基準で0.7であり、
さらに、
(C)白金族金属系触媒及び(D)接着助剤を含む、光半導体装置。」
(2)甲第2号証
甲第2号証(特開2007-327019号公報)には、以下の記載がある。
「【0024】
本組成物において、(B)成分の含有量は、前記(A)成分中の脂肪族不飽和結合を有する一価炭化水素基に対する、本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.3~5の範囲内となる量であり、好ましくは、これが0.6~3の範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満となる量であると、得られる組成物の硬化が不十分となるためであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物の耐熱性が低下するためである。」
「【0039】
[実施例1]
温度計、攪拌機、Dean-Stark管と還流冷却管を備えた200mLのフラスコをアルゴンガスで置換し、このフラスコに3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン50.0g、平均式:HO[CH3(CH2=CH)SiO]10Hで表されるシラノール基末端メチルビニルポリシロキサン25.0g、1,3,5,7-テトラフェニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン25.0gを仕込んだ。次に、攪拌しながら、水酸化カリウム0.02gを添加し、加熱し、生成したメタノールを還流しながら一部を留去し、130℃で1時間保持した。その後、室温まで冷却し、10質量%のトリメチルクロロシランのトルエン溶液0.5gを滴下し、1時間攪拌した。反応液を濾過し、濾液を減圧下で加熱することにより、メタノール、トルエン、低沸点物を留去して、粘度25mPa・sの淡黄色透明液体78gを得た。この淡黄色透明液体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析により、質量平均分子量が1,400であり、13C-および29Si-核磁気共鳴スペクトル分析により、平均単位式:[CH3(C6H5)SiO2/2]0.15[CH3(CH2=CH)SiO2/2]0.24(EpSiO3/2)0.19(CH3O1/2)0.42(式中、Epは3-グリシドキシプロピル基を示す。)で表されるオルガノポリシロキサンであることが確認された。なお、このオルガノポリシロキサンは、平均式: R2.40SiO0.80で表され、全R基中のフェニル基の含有率は11モル%であり、全R基中のビニル基の含有率は17モル%であり、全R基中の3-グリシドキシプロピル基の含有率は14モル%であり、全R基中のメトキシ基の含有率は30モル%である。このオルガノポリシロキサンを接着促進剤(C-1)とした。」
(3)甲第3号証
甲第3号証(特開2006-203201号公報)には、以下の記載がある。
「【請求項7】
該リードフレームを処理する該段階が、その上に該基体を有する該リードフレームをプラズマ処理することを含む請求項1の方法。」
2 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点>
成分(A)中のアルケニル基に対する成分(B)中のヒドロシリル基のモル比(SiH基/アルケニル基)に関して、
本件発明1は、「0.80~1.00」であるのに対して、
甲1発明は、「0.70」である点。
イ 上記<相違点>について検討する。
(ア)甲第1号証の【0052】には「(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、それが有するケイ素原子結合水素原子が、(A)成分中の脂肪族不飽和基に対して、モル基準で、0.5~4.0、さらには0.7~2.0であることが好ましい。」と記載されている。
そして、該「0.5」及び「0.7」が、「(A)成分」と「(B)成分」とが付加反応して充分に硬化するのに必要なモル比の下限値を規定したものであることは明らかである。
この記載を踏まえて、実施例のモル比を見ると、それぞれ、「1.5(実施例1)」、「2.4(実施例2)」、「1.7(実施例3)」、「2.0(実施例4)」 、「1.5(実施例5)」に設定されていることから、甲第1号証には、モル比(SiH基/アルケニル基)を「1」より大きくすることで、シリコーン樹脂組成物を充分に硬化させた発明が記載されているものと認められる。
(イ)そうすると、甲第1号証の【0052】に、モル比の下限値として「0.5」や「0.7」が記載されているとしても、モル比の範囲を「0.80~1.00」に限定する技術思想が記載されているとはいえない。
また、甲第1号証ないし甲第3号証の記載を見ても、モル比を「0.80~1.00」とする動機がない。
(ウ)そして、本件発明1では、モル比を「0.80~1.00」とすることにより、封止樹脂である付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物の変色を抑制することができるという効果を奏することができ、この効果は、甲1発明の奏する効果、甲第2号証及び甲第3号証の記載から予測し得るものではない。
(エ)以上の検討によれば、甲1発明において、上記<相違点>に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ よって、本件発明1は、甲1発明と同一であるとも、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明2ないし本件発明8について
ア 本件発明2ないし本件発明8は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるところ、上記(1)で検討したように、本件発明1は、甲1発明と同一であるとも、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。
イ そうすると、本件発明2ないし本件発明8も、同様に、甲1発明と同一であるとも、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。
3 まとめ
本件発明1ないし本件発明8は、甲1発明と同一であるとも、当業者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもないことから、取消理由【理由1】ないし【理由4】によっては、本件発明1ないし本件発明8に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
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