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特許異議申立

2016-700689

ポリシロキサン組成物及びその硬化物

審判番号
2016-700689
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-531784外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年08月05日
審決日
2017年03月23日
公報発行日
2017年06月30日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5856060号発明「ポリシロキサン組成物及びその硬化物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5856060号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。 特許第5856060号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5856060号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、2011年8月16日(優先権主張 平成22年8月31日)を国際出願日とする特許出願(特願2012-531784号)であって、平成27年12月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人信越化学工業株式会社(以下、単に「特許異議申立人」という。)により請求項1ないし15に係る特許について特許異議の申立てがされ、平成28年10月28日付けで請求項1ないし15に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年12月16日付け(受理日:同年12月19日)で意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、平成29年1月5日付けで特許異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知がされたところ、特許異議申立人から意見書が提出されなかったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項(1)ないし(3)のとおりである。 訂正事項(1) 請求項1において、 「(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン」とあるのを、 「(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない)」と訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし15も同様に訂正する。)。 訂正事項(2) 明細書の発明の詳細な説明の記載(段落【0011】)において、 「(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン」とあるのを、 「(A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない)」と訂正する。 訂正事項(3) 明細書の発明の詳細な説明の記載(段落【0031】)において、 「なお、(A)成分は、一価有機基として水酸基やメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素原子数1~12のアルコキシ基を有していてもよい。」とあるのを削除する。 2.訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書の訂正をする場合であって、請求項毎に訂正の請求をする場合に、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行っているか否か、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 上記訂正事項(1)の訂正は、請求項1において、「(但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない)」との特定を付加するもの、すなわち、いわゆる除くクレームとすることで、分子中に加水分解性シリル基を有するものを除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 上記訂正事項(2)及び(3)の訂正は、訂正事項(1)の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項(2)及び(3)は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正の請求は、全ての請求項について行われているので、当該明細書の訂正に係る全ての請求項について行われている。 エ そして、これら訂正は一群の請求項ごとに適法に請求されたものである。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の明細書の発明の詳細な説明の段落【0011】及び【0031】、並びに、訂正後の請求項1ないし15について訂正を認める。 第3 本件発明について 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし15に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」~「本件特許発明15」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 (A)一分子中に少なくとも2個の不飽和脂肪族炭化水素基を含有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない) (B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有する少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサン (C)ヒドロシリル化反応触媒、及び、 (D)長短径比が1~1.5であり、且つ、全粒子中における粒子径50μm以上の粒子の割合が5重量%以下である無機粒子 を含むポリシロキサン組成物であり、 (A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率が0.5~10重量%であり、 ポリシロキサン組成物に対する(D)無機粒子の配合比率が55~85体積%であり、 [(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.04~8であり、 25℃における粘度が500Pa・s以下であるポリシロキサン組成物。 【請求項2】 前記(A)オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が0.05~20Pa・sである、請求項1記載のポリシロキサン組成物。 【請求項3】 前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率が0.1重量%以上である、請求項1又は2記載のポリシロキサン組成物。 【請求項4】 前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度が0.1Pa・s以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。 【請求項5】 [(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.1~7である、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。 【請求項6】 [(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基の重量分率]×[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子の重量分率]の値が0.5~4.5である請求項1乃至5のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。 【請求項7】 [(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子のモル数]/[(A)オルガノポリシロキサン中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル数]の値が0.5~1.5である、請求項1乃至6のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。 【請求項8】 前記(C)ヒドロシリル化反応触媒が白金族金属系触媒である、請求項1乃至7のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。 【請求項9】 前記(D)無機粒子が少なくとも1種の金属酸化物粒子を含む、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。 【請求項10】 前記金属酸化物粒子がシリカである、請求項9記載のポリシロキサン組成物。 【請求項11】 少なくとも1種の(E)接着付与剤を含む、請求項1乃至10のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。 【請求項12】 溶剤を含まない、請求項1乃至11のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。 【請求項13】 30℃~300℃の線膨張係数が100×10-6/K以下である硬化物を与える、請求項1乃至12のいずれかに記載のポリシロキサン組成物。 【請求項14】 30℃~300℃の線膨張係数が50×10-6/K以下である硬化物を与える、請求項13記載のポリシロキサン組成物。 【請求項15】 請求項1乃至14のいずれかに記載のポリシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化物。」 第4 取消理由の概要 当審において平成28年10月28日付けで通知した取消理由の概要は、請求項1ないし9及び11ないし15に係る発明は、本件特許の優先日前の平成17年11月24日に頒布された特開2005-325212号公報(特許異議申立人による特許異議の申立てにおける甲第1号証。以下、「甲1文献」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は取り消すべきものであり(以下、「取消理由1」という。)、請求項10に係る発明は、甲1文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、その特許は取り消すべきものである(以下、「取消理由2」という。)、というものである。 第5 当審の判断 1.取消理由1の検討 (1)本件特許発明1に係る特許についての検討 ア 甲1文献に記載された発明 甲1文献の実施例1の記載から、甲1文献には、以下の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。 「(A)成分 成分a-1: 100質量部 (B)成分 成分b-1:25℃の粘度が5mPa・sの(CH3)3SiO[SiH(CH3)O]8Si(CH3)3で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH含有量0.01451mol/g) 2.0質量部 成分b-2:塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(白金含有量1%) 0.2質量部 (C)成分 成分c-1:平均粒径10μmの球状酸化アルミニウム粉末(アドマファインAO-41R、商品名、(株)アドマテックス製) 1600質量部 成分c-2:平均粒径0.7μmの球状酸化アルミニウム粉末(アドマファインAO-502、商品名、(株)アドマテックス製) 400質量部 (F)成分 成分f-1:トリアリルイソシアヌレート 1質量部 成分f-2:エチニルシクロヘキサノール/50%トルエン溶液 0.3質量部 を配合してなる熱伝導性シリコーンゴム組成物。」 また、甲1文献の実施例2の記載から、甲1文献には、以下の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。 「(A)成分 成分a-2: 100質量部 (B)成分 成分b-1:25℃の粘度が5mPa・sの(CH3)3SiO[SiH(CH3)O]8Si(CH3)3で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH含有量0.01451mol/g) 2.0質量部 成分b-2:塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(白金含有量1%) 0.2質量部 (C)成分 成分c-1:平均粒径10μmの球状酸化アルミニウム粉末(アドマファインAO-41R、商品名、(株)アドマテックス製) 1600質量部 成分c-2:平均粒径0.7μmの球状酸化アルミニウム粉末(アドマファインAO-502、商品名、(株)アドマテックス製) 400質量部 (F)成分 成分f-1:トリアリルイソシアヌレート 1質量部 成分f-2:エチニルシクロヘキサノール/50%トルエン溶液 0.3質量部 を配合してなる熱伝導性シリコーンゴム組成物。」 イ 本件特許発明1と甲1発明1との対比 本件特許発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「成分a-1」は本件特許発明1における「(A)成分」に、「成分b-1」は「(B)成分」に、「成分b-2」は「(C)成分」に、「成分c-1」及び「成分c-2」は「成分(D)」に、各々対応するといえる。 そこで、甲1発明1における「成分a-1」と本件特許発明1における「(A)成分」とを対比すると、甲1発明1における「成分a-1」は、 との構造を有するものであり、当該構造式の右端には加水分解性シリル基としてのトリメトキシシリル基を有するものであるところ、本件訂正請求により、請求項1において、「但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない」との事項を本件特許発明1における発明特定事項とする訂正がなされたことにより、本件特許発明1における成分(A)は、「分子中に加水分解性シリル基を有さない」ものであるから、甲1発明1における「成分a-1」と重複するところはなく、両者は相違する。 そうすると、他の点について検討するまでもなく、本件特許発明1と甲1発明1とは相違する。 ウ 本件特許発明1と甲1発明2との対比 本件特許発明1と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2における「成分a-2」は本件特許発明1における「(A)成分」に、「成分b-1」は「(B)成分」に、「成分b-2」は「(C)成分」に、「成分c-1」及び「成分c-2」は「成分(D)」に、各々対応するといえる。 そこで、甲1発明2における「成分a-2」と本件特許発明1における「(A)成分」とを対比すると、甲1発明2における「成分a-2」は、 との構造を有するものであり、当該構造式の右端には加水分解性シリル基としてのトリメトキシシリル基を有するものであるところ、本件訂正請求により、請求項1において、「但し、分子中に加水分解性シリル基を有さない」との事項を本件特許発明1における発明特定事項とする訂正がなされたことにより、本件特許発明1における成分(A)は、「分子中に加水分解性シリル基を有さない」ものであるから、甲1発明2における「成分a-2」と重複するところはなく、両者は相違する。 そうすると、他の点について検討するまでもなく、本件特許発明1と甲1発明2とは相違する。 エ 本件特許発明1についての小括 したがって、本件特許発明1は、甲1文献に記載された発明であるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし15に係る特許についての検討 本件特許発明2ないし15は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、上記(1)にて示した判断と同様の理由により、甲1文献に記載された発明であるとはいえない。 2.取消理由2の検討 (1)本件特許発明10に係る特許についての検討 ア 本件特許発明10と甲1発明1との対比 本件特許発明10は、第3のとおり、金属酸化物粒子がシリカであることを特定するものである。 そこで、本件特許発明10と甲1発明1とを対比すると、1.(1)イで述べたとおり、本件特許発明10における成分(A)は、「分子中に加水分解性シリル基を有さない」ものであるから、甲1発明1における「成分a-1」と重複するところはなく、成分(A)が「分子中に加水分解性シリル基を有」するか否かの点で両者は相違する。 この相違点について検討すると、甲1文献においては、「(A)一分子中に(i)2個以上のケイ素原子結合アルケニル基と(ii)1個以上の加水分解性シリル基とを有するオルガノポリシロキサン」(特許請求の範囲請求項1)、「(A)成分の一分子中に(i)2個以上、好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個のケイ素原子結合アルケニル基と(ii)1個以上、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の加水分解性シリル基とを有するオルガノポリシロキサンは、本組成物の主剤(ベースポリマー)となるものであり、(C)成分の熱伝導性充填剤を多量に配合しても取扱性及び成形性がよく、かつ良好なゴム物性と接着性とを有する硬化物となり得るという本組成物の特徴を付与する成分である。(A)成分の構造としては、下記一般式(I)で表される構造であることが好ましい。 」(段落【0014】)及び「本発明においては、組成物の粘度及び可塑度を低下させる効果を更に向上させるため、下記一般式(II)で表される片末端又は両末端3官能の加水分解性シリル基含有オルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。 」(段落【0019】)と記載されていることから、甲1発明1における「成分a-1」において、(A)成分の構造中に加水分解性シリル基を有することは甲1文献における特徴を付与する部分であると認められることから、当該成分a-1に代えて、加水分解性シリル基を有しないオルガノポリシロキサンを(A)成分として使用することの動機付けは存在しないといわざるを得ない。 そうすると、この相違点は、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明10と甲1発明2との対比 本件特許発明10と甲1発明2とを対比すると、1.(1)ウで述べたとおり、本件特許発明10における成分(A)は、「分子中に加水分解性シリル基を有さない」ものであるから、甲1発明2における「成分a-2」と重複するところはなく、成分(A)が「分子中に加水分解性シリル基を有」するか否かの点で両者は相違する。 この相違点について検討すると、アで述べたとおり、甲1発明2における「成分a-2」において、(A)成分の構造中に加水分解性シリル基を有することは甲1文献における特徴を付与する部分であると認められることから、当該成分a-2に代えて、加水分解性シリル基を有しないオルガノポリシロキサンを(A)成分として使用することの動機付けは存在しないといわざるを得ない。 そうすると、この相違点は、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲1発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明10についての小括 したがって、本件特許発明10は、甲1文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件特許発明1ないし15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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