特許異議申立
2016-701162
モニタリングシステム及びモニタリング方法
- 審判番号
- 2016-701162
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-140863外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月21日
- 審決日
- 2018年03月26日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人栄光特許事務所
- 【異議申立人】辰巳 功
- 【異議申立人代理人】近藤 惠嗣
- 分類
- P1651.113-YAA(H04N) / P1651.121-YAA(H04N) / P1651.537-YAA(H04N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5939341号発明「モニタリングシステム及びモニタリング方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5939341号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕,6について訂正することを認める。
特許第5939341号の請求項1、2、4-6に係る特許を維持する。
特許第5939341号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5939341号の請求項1-6に係る特許についての出願は、平成27年7月14日に出願されたものであって、平成28年5月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成28年12月21日に特許異議申立人辰巳功により請求項1-6に対して特許異議の申立てがされ、平成29年3月15日付けで取消理由通知がされ、平成29年5月19日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年7月12日付けで特許異議申立人辰巳功から意見書が提出され、平成29年8月23日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成29年11月28日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、平成30年1月30日に意見書の提出及び訂正請求がされたものである。
2.訂正の適否
(1)訂正の内容
平成30年1月30日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のとおりである(下線は特許権者による。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりの請求項1として訂正する。
【請求項1】
撮像エリアを撮像するカメラと、
前記撮像エリアの音声を収音するマイクアレイと、
前記撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントを検出するセンサと、
前記カメラにより撮像された前記撮像エリアの画像データを表示する表示部と、
前記センサにより前記イベントが検出されると、前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に導出する信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、導出された前記音パラメータと音の大きさに関する複数の閾値との比較に応じて、前記音パラメータを異なる視覚情報に段階的に変換した音源画像情報を、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に重畳して前記表示部に表示させる、
モニタリングシステム。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4の「請求項1~3のうちいずれか一項に記載のモニタリングシステム」と記載されているのを「請求項1に記載のモニタリングシステム」に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5の「請求項1~4のうちいずれか一項に記載のモニタリングシステム」と記載されているのを「請求項1に記載のモニタリングシステム」に訂正する。
オ 訂正事項5
明細書の段落【0007】の「前記カメラにより撮像された前記撮像エリアの画像データを表示する表示部と、前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に導出する信号処理部と、を備え、」を「前記撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントを検出するセンサと、前記カメラにより撮像された前記撮像エリアの画像データを表示する表示部と、前記センサにより前記イベントが検出されると、前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に導出する信号処理部と、を備え、」に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を以下の事項により特定されるとおりの請求項6として訂正する。
【請求項6】
カメラとマイクアレイとセンサとを含むモニタリングシステムにおけるモニタリング方法であって、
前記カメラにおいて撮像エリアを撮像し、
前記マイクアレイにおいて前記撮像エリアの音声を収音し、
前記センサにより前記撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントが検出されると、前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に導出し、
導出された前記音パラメータと音の大きさに関する複数の閾値との比較に応じて、前記音パラメータを異なる視覚情報に段階的に変換した音源画像情報を、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に重畳して表示部に表示させる、
モニタリング方法。
キ 訂正事項7
明細書の段落【0008】の「また、本発明は、カメラとマイクアレイと含むモニタリングシステムにおけるモニタリング方法であって、前記カメラにおいて撮像エリアを撮像し、前記マイクアレイにおいて前記撮像エリアの音声を収音し、前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に導出し、」を「また、本発明は、カメラとマイクアレイとセンサとを含むモニタリングシステムにおけるモニタリング方法であって、前記カメラにおいて撮像エリアを撮像し、前記マイクアレイにおいて前記撮像エリアの音声を収音し、前記センサにより前記撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントが検出されると、前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に導出し、」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア、イ及びオの訂正は、実質的に、訂正前の請求項3を訂正後の請求項1とするとともに、訂正前の請求項2を引用する請求項3を訂正後の請求項2とするものであるから、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、上記ウの訂正は、訂正前の請求項4が、訂正前の請求項1~3のうちいずれか一項を引用するものであったのを、実質的に、訂正前の請求項3のみを引用するものとする訂正であり、上記エの訂正は、訂正前の請求項5が、訂正前の請求項1~4のうちいずれか一項を引用するものであったのを、実質的に、訂正前の請求項3のみを引用するものとする訂正であるから、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、上記ア~オの訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。
上記カ、キの訂正は、明細書の発明の詳細な説明の段落【0018】、【0046】の記載に基づいて、訂正前の請求項6に対して、「センサ」に係る構成を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)小括
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕,6について訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1-6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(符号A~Hは当審において付与した。以下、それぞれ「構成要件A」~「構成要件H」という。)
〔本件発明1〕
【請求項1】
(A)撮像エリアを撮像するカメラと、
(B)前記撮像エリアの音声を収音するマイクアレイと、
(G)前記撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントを検出するセンサと、
(C)前記カメラにより撮像された前記撮像エリアの画像データを表示する表示部と、
(H)前記センサにより前記イベントが検出されると、
(D)前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に導出する信号処理部と、を備え、
(E)前記信号処理部は、導出された前記音パラメータと音の大きさに関する複数の閾値との比較に応じて、前記音パラメータを異なる視覚情報に段階的に変換した音源画像情報を、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に重畳して前記表示部に表示させる、
(F)モニタリングシステム。
〔本件発明2〕
【請求項2】
請求項1に記載のモニタリングシステムであって、
前記音パラメータは、音圧である、
モニタリングシステム。
〔本件発明3〕
【請求項3】
(削除)
〔本件発明4〕
【請求項4】
請求項1に記載のモニタリングシステムであって、
前記マイクアレイにより収音された音声データを出力する音声出力部、を更に備え、
前記表示部に表示された前記音源画像情報が指定された場合、前記信号処理部は、前記マイクアレイから、指定された前記音源画像情報に対応する前記撮像エリアの画像データの位置に向かう方向に指向性を形成して前記音声出力部に出力させる、
モニタリングシステム。
〔本件発明5〕
【請求項5】
請求項1に記載のモニタリングシステムであって、
前記カメラと前記マイクアレイとが同軸に配置された、
モニタリングシステム。
〔本件発明6〕
【請求項6】
カメラとマイクアレイとセンサとを含むモニタリングシステムにおけるモニタリング方法であって、
前記カメラにおいて撮像エリアを撮像し、
前記マイクアレイにおいて前記撮像エリアの音声を収音し、
前記センサにより前記撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントが検出されると、前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に導出し、
導出された前記音パラメータと音の大きさに関する複数の閾値との比較に応じて、前記音パラメータを異なる視覚情報に段階的に変換した音源画像情報を、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に重畳して表示部に表示させる、
モニタリング方法。
(2)取消理由(決定の予告)の概要
訂正前の請求項1、2、5、6に係る特許に対して平成29年11月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1、2、5、6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
甲2号証:特開2013-15468号公報
(3)甲号証の記載
(3-1)甲2号証の記載事項
取消理由(決定の予告)で引用した甲2号証(特開2013-15468号公報)には、「異音診断装置および異音診断方法」(発明の名称)として、図面とともに以下の記載がなされている(下線は強調のため当審で付与した。)。
【0001】
本発明は、診断対象物から発生する異音の発生箇所を診断する異音診断装置および異音診断方法に関する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る異音診断装置の全体構成の例、および、その異音診断装置を診断対象物の異音診断に適用する場合に設定される仮想スクリーンの例を示した図である。図1では、紙面の左の奥側に、異音診断装置100が描かれ、また、紙面の右の前側に、異音診断の対象となる診断対象物70が描かれ、さらに、診断対象物70の位置には、診断対象物70を上下方向に切断し、区分するような仮想スクリーン80が4つ描かれている。
【0011】
異音診断装置100は、診断対象物70およびその周囲から発せられる音響信号を集音する集音装置10、診断対象物70の外観画像を撮像する撮像装置20、集音装置10で集音された音響信号を増幅する増幅回路装置30、増幅回路装置30で増幅された音響信号をディジタル信号に変換するA/D(アナログ/ディジタル)変換装置40、ディジタル化された音響信号に基づき、異音診断処理を実行する情報処理装置50、などを含んで構成される。
【0012】
集音装置10は、三脚13の上部に円環状のフレーム12が設けられ、さらに、音響センサとして複数のマイクロホン11が、その円環状のフレーム12上の互いに等間隔となる位置に取り付けられて構成される。ここで、複数のマイクロホン11は、いずれも同じ音響特性を有し、無指向性であるものとする。なお、図1の例では、フレーム12には、16個のマイクロホン11が取り付けられているが、その数は、16個に限定されない。また、この例のように、複数ないし多数のマイクロホン11が配列された構成は、マイクロホンアレイと呼ばれている。
【0013】
撮像装置20は、診断対象物70の外観を撮像するカメラであり、図1の例では、複数のマイクロホン11が取り付けられたフレーム12の中心の位置、すなわち、複数のマイクロホン11が取り付けられた円環を含む平面(以下、マイクロホンアレイ面という)上で、その円環の中心の位置に設けられる。このとき、撮像装置20の視線の中心軸(以下、光軸という)は、当該マイクロホンアレイ面に略垂直であるとし、その光軸は、診断対象物70の中心部を向いているものとする。
【0017】図2に示すように、情報処理装置50は、音圧信号取得部51、仮想スクリーン設定部52、音圧レベル計算部53、音圧マップ生成部54、音圧異常領域抽出部55、音圧マップ表示部56、撮像画像取得部57などの処理機能ブロックを備える。情報処理装置50は、また、音圧信号記憶部61、仮想スクリーンデータ記憶部62、マイクロホン配置データ記憶部63、音圧レベル記憶部64、基準音圧レベル記憶部65、音圧マップ記憶部66、撮像画像記憶部67などの記憶機能ブロックを備える。なお、処理機能ブロックとは、図示しないCPUが、予め、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することによって実現される機能ブロックをいう。以下、各処理機能ブロックの機能について説明する。
【0018】
音圧信号取得部51は、集音装置10に設けられた各マイクロホン11で集音され、増幅回路装置30で増幅され、A/D変換装置40でディジタル信号化された音響信号(以下、音圧信号という)を取得し、その取得した音圧信号を、集音したマイクロホン11に対応させて音圧信号記憶部61に格納する。また、撮像画像取得部57は、撮像装置20によって撮像された診断対象物70の外観画像を、撮像装置20から取得して、撮像画像記憶部67に格納する。
【0019】
仮想スクリーン設定部52は、図1を用いて説明したように、撮像装置20から診断対象物70の後面側に到るまでの空間のいずれかの位置に、撮像装置20の光軸に略垂直な仮想スクリーン80を仮想的に複数個設定する。このとき、仮想スクリーン80の数、仮想スクリーン80を設定する位置(例えば、撮像装置20からの距離)、撮像装置20の水平画角81、垂直画角82などのデータは、予め、仮想スクリーンデータ記憶部62に記憶されているものとする。なお、仮想スクリーンデータ記憶部62に記憶されているこれらのデータは、オペレータがキーボードなどを用いて、適宜、変更できるものとする。
【0020】
音圧レベル計算部53は、仮想スクリーン設定部52によって設定されたそれぞれの仮想スクリーン80について、そのスクリーン面を格子状に分割し、各格子点の座標を計算する。さらに、音圧レベル計算部53は、それぞれの仮想スクリーン80面上の各格子点について、その格子点における音圧レベルを計算し、得られた音圧レベルを各仮想スクリーン80上の各格子点に対応付けて音圧レベル記憶部64に格納する。
【0021】
ここで、各仮想スクリーン80上の各格子点の座標は、例えば、撮像装置20の位置を原点とし、撮像装置20の光軸をz軸とし、前記原点を通り、マイクロホンアレイ面に含まれる水平方向の直線をx軸とし、前記原点を通り、x軸およびz軸に垂直な直線をy軸とする座標系に基づき計算される。
【0024】
音圧マップ生成部54は、音圧レベル記憶部64から各仮想スクリーン80上の各格子点の音圧レベルを読み出し、各仮想スクリーン80上に、例えば、5デシベルごとの等音圧レベル線を生成し、等音圧レベル線による音圧マップを生成する。そして、その生成した音圧マップを各仮想スクリーン80に対応付けて、音圧マップ記憶部66に格納する。
【0029】
音圧マップ表示部56は、情報処理装置50に付属する液晶ディスプレイなどの表示装置59に、撮像装置20によって撮像され、撮像画像記憶部67に格納されている診断対象物70の外観画像を表示するとともに、その診断対象物70の外観画像の上に重ね合わせて、音圧マップ記憶部66に格納されている音圧マップを表示する。この表示は、各仮想スクリーン80別に行われる。
【0032】
音圧マップは、図3(a)~(d)に示すように、診断対象物70の外観画像の上に、例えば、10デシベルごとの等音圧レベル線で描かれる。このとき、等音圧レベル線で囲まれた領域は、適宜、網掛け表示または着色表示される。その場合、網掛け表示や着色表示着色を半透明に行い、下地の診断対象物70の外観画像が透けて見えるようにしてもよい。
(3-2)甲2号証に記載された発明
(3-2-1)【0001】には、診断対象物から発生する異音の発生箇所を診断する「異音診断装置」が記載され、【0011】には、異音診断装置が、診断対象物およびその周囲から発せられる音響信号を集音する「集音装置」、診断対象物の外観画像を撮像する「撮像装置」、異音診断処理を実行する「情報処理装置」などからなることが記載されている。
(3-2-2)【0012】には、「集音装置」が、複数のマイクロホンからなる「マイクロホンアレイ」により構成されることが記載され、【0013】には、「撮像装置」が「カメラ」であり、マイクロホンアレイの中心位置に設けられることが記載されている。
(3-2-3)【0017】~【0020】には、「情報処理装置」の音圧レベル計算部が、各マイクロホンで集音した音響信号から、仮想スクリーン面を格子状に分割した各格子点毎の音圧レベルを計算することが記載され、【0024】には、音圧マップ生成部が、音圧レベルに基づいて、仮想スクリーン上に、所定デシベルごとの等音圧レベル線を生成し、等音圧レベル線による音圧マップを生成することが記載されている。
ここで、音圧マップは、【0032】及び図3に記載のように、等音圧レベル線で描かれ、等音圧レベル線で囲まれた領域は、適宜、網掛け表示または着色表示されるものである。
(3-2-4)【0029】には、「情報処理装置」に「表示装置」が付属すること、また、「情報処理装置」の音圧マップ表示部が、「表示装置」に、撮像された診断対象物の外観を表示するとともに、音圧マップを重ね合わせて表示することが記載されている。
してみれば、甲2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる(符号2a~2eは、当審において付与した。以下、それぞれ「構成2a」~「構成2e」という。)。
(甲2発明)
(2a)診断対象物の外観画像を撮像するカメラと、
(2b)診断対象物およびその周囲から発せられる音響信号を集音するマイクロホンアレイと、
(2c)撮像された診断対象物の外観画像を表示する表示装置と、
(2d)仮想スクリーン面を格子状に分割した各格子点について計算した音圧レベルに基づいて、所定のデシベルごとの等音圧レベル線に囲まれた領域が着色された音圧マップを生成し、撮像装置によって撮像された外観画像の上に、音圧マップを重ね合わせて表示装置に表示させる情報処理装置と、を備えた、
(2e)異音診断装置。
(4)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)特許法29条2項について
(ア-1)本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア-1-1)本件発明1の構成要件A~Cと、甲2発明の構成2a~2cとの対比
甲2発明の構成2aの「カメラ」は、診断対象物を含む、一定の撮像範囲を撮像することは明らかであるから、本件発明1の構成要件Aの「カメラ」に相当する。
また、甲2発明の構成2bの「マイクロホンアレイ」が収音する、診断対象物及びその周囲から発せられる音響信号は、カメラの撮像範囲の音声であるといえるから、甲2発明の構成2bの「マイクロホンアレイ」は、本件発明1の構成要件Bの「マイクアレイ」に相当する。
そして、甲2発明の構成2cの「表示装置」は、カメラによって撮像された画像を表示するから、本件発明1の構成要件Cの「表示部」に相当する。
よって、甲2発明の構成2a~2cと本件発明1の構成要件A~Cは一致する。
(ア-1-2)本件発明1の構成要件D、Eと、甲2発明の構成2dとの対比
甲2発明の「音圧レベル」は、本件発明1の「音の大きさを特定する音パラメータ」に相当するから、甲2発明における「所定のデシベルごとの等音圧レベル線に囲まれた領域が着色された音圧マップ」は、図3の記載からも明らかなように、音の大きさに関する複数の閾値との比較に応じて、音圧を異なる視覚情報に段階的に変換した音源画像情報であるといえる。
そうすると、甲2発明の構成2dの「情報処理装置」と本件発明1の構成要件D、Eの「信号処理部」とは、「前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを導出」し、「導出された前記音パラメータと音の大きさに関する複数の閾値との比較に応じて、前記音パラメータを異なる視覚情報に段階的に変換した音源画像情報を、前記撮像エリアの画像データに重畳して前記表示部に表示させる」点で共通し、本件発明1が、「音パラメータ」を「画像データを構成する画素の所定単位毎」に導出し、「音源画像情報」を「画像データを構成する画素の所定単位毎」に重畳して表示するのに対し、甲2発明は、音圧レベルを、仮想スクリーン面を格子状に分割した各格子点について計算し、等音圧線を示す音圧マップを重畳表示するものであり、音圧レベルを「画像データを構成する画素の所定単位毎に」導出し、音圧マップを「画像データを構成する画素の所定単位毎に」重畳して表示すると特定されていない点で相違する。
(ア-1-3)本件発明1の構成要件G、Hについて
甲2発明は、本件発明1の構成要件G、Hに相当する構成を具備していない。
(ア-1-4)本件発明1の構成要件Fと、甲2発明の構成2eとの対比
甲2発明の「異音診断装置」は、カメラとマイクロホンアレイと表示装置と情報処理装置とからなる「システム」を構成しているといえ、その表示装置には、診断対象物の外観と、診断対象物が発する音とを表示するものであるから、診断対象物の状況をモニタリングする機能を備えているといえる。
よって、甲2発明の構成2eは、本件発明1の構成要件Fと相違しない。
(ア-1-5)一致点、相違点
したがって、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致ないし相違している。
(一致点)
撮像エリアを撮像するカメラと、
前記撮像エリアの音声を収音するマイクアレイと、
前記カメラにより撮像された前記撮像エリアの画像データを表示する表示部と、
前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを導出する信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、導出された前記音パラメータと音の大きさに関する複数の閾値との比較に応じて、前記音パラメータを異なる視覚情報に段階的に変換した音源画像情報を、前記撮像エリアの画像データに重畳して前記表示部に表示させる、
モニタリングシステム。
(相違点2-1)
本件発明1は、「音パラメータ」を、「画像データを構成する画素の所定単位毎」に導出し、「音源画像情報」を「画像データを構成する画素の所定単位毎に重畳」して表示するのに対し、甲2発明は、音圧レベルを、仮想スクリーン面を格子状に分割した各格子点について計算し、等音圧線を示す音圧マップを重畳表示するものであり、音圧レベルを「画像データを構成する画素の所定単位毎に」導出し、音圧マップを「画像データを構成する画素の所定単位毎に」重畳して表示すると特定されていない点。
(相違点2-2)
本件発明1は、「撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントを検出するセンサ」を備え、「信号処理部」が、「前記センサにより前記イベントが検出されると、前記音パラメータを導出する」のに対し、甲2発明は、「撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントを検出するセンサ」を具備しておらず、情報処理装置が「前記センサにより前記イベントが検出される」ことに応じて処理を行うと特定されていない点。
(ア-1-5)判断
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
上記相違点2-2に係る、「撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントを検出するセンサ」によりイベントを検出し、処理を開始させる構成は、当業者にとって周知技術であるとはいえず、また、自明のものであるともいえない。
したがって、甲2発明において、上記した相違点2-2に係る構成を得ることは、当業者であっても、容易に想到し得ることとはいえない。
なお、異議申立人が提示する甲1号証(特開2014-137323号公報)には、段落【0021】及び【0027】において、異常診断装置が起動され、指示が入力されたら処理を開始することは記載されているものの、上記相違点2-2に対応する構成は開示されておらず、また、平成29年5月19日付け意見書に添付した甲3号証(特開2009-118318号公報)にも、上記相違点2-2に対応する構成は記載されていないから、これらの記載を考慮しても、当審の上記判断は変わらない。
したがって、本件発明1は、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ア-2)本件発明2、4、5及び6について
本件特許の請求項2、4、5は、請求項1を引用しており、上記した相違点2-2に係る構成を備えている。また、請求項1とは発明のカテゴリーが異なる請求項6も、上記相違点2-2に対応する構成を備えている。
ここで、相違点2-2についての判断は、上記のとおりであるから、本件発明2、4、5及び6も、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたとすることはできない。
イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議理由について
(ア)理由1(特許法36条6項2号)
異議申立人辰巳功は、請求項1、6における「画素の所定単位毎」との記載が不明確であり、請求項1-6に係る特許は、発明が明確でないとして、特許法36条6項2号の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張しているので、以下、検討する。
(ア-1)判断
異議申立人の指摘に係る「画素の所定単位毎」との記載は、請求項1において、「撮像エリアの画像データを構成する画素」と、信号処理部が導出する「音パラメータ」との対応関係(以下、前者という。)を特定するとともに、「撮像エリアの画像データを構成する画素」と、画像データに重畳して表示する「音源画像情報」との対応関係(以下、後者という。)を特定する記載である。
そして、「画素の所定単位毎」との記載は、前者については、信号処理部が、画像データにおける所定数の画素、例えば、一つ一つの画素、あるいは、4個の画素単位に対応して、音パラメータを導出することを明確に特定し、後者については、画像データにおける所定数の画素に対応して、音源画像情報が重畳表示されることを明確に特定しているものであり、何ら不明確なものではない。
また、請求項6においても同様である。
よって、「画素の所定単位毎」との記載により、請求項1-6に係る発明が不明確であるとはいえない。
(イ)理由2(特許法29条1項3号または2項)
異議申立人辰巳功は、甲1号証及び甲2号証を提出して、請求項1-6に係る特許は、甲1号証に記載された発明と同一である、または、甲1号証に記載された発明及び甲2号証の記載事項ならびに技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとして、特許法29条1項3号または同条2項の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張しているので、以下、検討する。
(イ-1)甲1号証の記載事項
異議申立人辰巳功が提出した甲1号証(特開2014-137323号公報)には、「異常診断装置およびこれを用いた異常診断方法」(発明の名称)として、図面とともに以下の記載がなされている(下線は強調のため当審で付与した。)。
【0001】
本発明は、音によって異常を診断する異常診断装置およびこれを用いた異常診断方法に関する。
【0015】
図1は、第1の実施形態に於ける異常診断装置1の構成を示す図である。
診断対象物7は、動作時に所定量の音を発生する機器であり、例えば、モータ、コンプレッサ、発電機などである。
カメラ2は、診断対象物7を撮像して、カメラ画像を動画として出力するものである。カメラ2は、異常診断装置1に接続されている。なお、カメラ2は、診断対象物7が外観上の可動部分を有していないならば、これを1フレームだけ撮像して、カメラ画像を静止画像として出力するものであってもよい。
マイクロホンアレイ3は、複数のマイクで構成され、診断対象物7の音圧信号を測定するものである。このマイクロホンアレイ3は、異常診断装置1に接続されて、集音した音圧信号を出力する。
【0016】
異常診断装置1は、A/D変換器11と、音響信号処理部12と、記憶部13と、モニタ14と、ネットワーク処理部15と、ネットワークインタフェース16と、アラーム処理部17と、スピーカ18と、を備える。異常診断装置1には、カメラ2とマイクロホンアレイ3とが接続され、必要に応じて診断対象物7が接続されている。
異常診断装置1は、マイクロホンアレイ3が集音した音圧信号に基づいて、診断対象物7の異常性を診断し、カメラ2が撮像したカメラ画像と重畳してモニタ14に表示するものである。異常診断装置1は、診断対象物7が複数の動作モードを有しているとき、いずれの動作モードに於いて動作しているかを判断することにより、この動作モードに於ける異常を特定する。異常診断装置1は更に、診断対象物7の動作モードを指令することにより、所定の動作モードで動作させて異常を特定することができる。
【0017】
A/D変換器11は、アナログ信号をデジタル信号に変換するものである。A/D変換器11は、マイクロホンアレイ3の複数のマイクに接続されていると共に、音響信号処理部12に接続されている。A/D変換器11は、マイクロホンアレイ3の各マイクが集音したアナログの音圧信号を、デジタルの音圧信号に変換して出力する。
音響信号処理部12は、音圧マップ作成部121(音圧マップ作成手段)と、異常領域判定部122(異常領域判定手段)と、異常項目診断部123(異常項目診断手段)と、音圧マップ表示部124(音圧マップ表示手段)と、を有する。音響信号処理部12は、A/D変換器11が出力した音圧信号を処理して異常を判定し、カメラ画像と重畳して表示するものである。音響信号処理部12は、図示しないCPU(Central Processing Unit)がファームウェアプログラムを実行することによって具現化される。
【0018】
音圧マップ作成部121は、音圧信号を信号処理して、カメラ画像に対応する音圧マップを計算するものである。音圧マップは、カメラ画像に対応する2次元の各計算点に於ける音圧レベルの情報、または、パワースペクトルの情報を含み、これらの情報をカメラ画像内の位置情報と対応させたものである。音圧レベルは、音圧信号の強さである。パワースペクトルは、周波数ごとに分割した音圧信号のレベルである。パワースペクトルは、例えば、FFT(Fast Fourier Transform)によって算出することができる。
異常領域判定部122は、音圧マップに基づいて、各計算点に於ける異常の有無を判定するものである。
【0019】
異常項目診断部123は、音圧マップに基づいて、各計算点に於ける異常項目(異常原因項目)を診断するものである。異常項目(異常原因項目)とは、異常性を有する評価項目であり、例えば、カメラ画像内の所定の位置情報と対応する音圧レベルの情報、所定周波数に於ける音圧信号のレベルの情報(パワースペクトル)、または、カメラ画像内の所定の位置情報と対応する音圧信号の所定周波数に於ける音圧レベルの情報(パワースペクトル)などである。なお、所定の位置情報または所定の周波数は、それぞれ単数であっても複数であってもよい。
音圧マップ表示部124は、音圧マップなどをカメラ画像に重ねた診断結果の画面を、モニタ14に表示すると共に、ネットワーク処理部15などにより、端末8に送信するものである。
【0021】
図2は、第1の実施形態に於ける正常データ学習処理のフローチャートである。
異常診断装置1が起動され、正常データ学習指示が入力されたならば、音響信号処理部12は、正常データ学習処理を開始する。この正常データ学習処理は、参考文献1(田村希志臣、「よくわかるMTシステム-品質工学によるパターン認識の新技術」、日本規格協会、2009年8月)の42~45頁に於いて、詳細に記載されている。
ステップS10~S16に於いて、音圧マップ作成部121は、既定数の音圧マップを記録する処理を繰り返す。ここで既定数は、この正常データ学習処理を行う上で予め定められた回数である。しかし、これに限られずに、既定の時間だけ正常データ学習処理を繰り返してもよい。
【0027】
図4は、第1の実施形態に於ける異常診断処理のフローチャートである。
異常診断装置1が起動されて異常診断の指示が入力されたならば、異常診断装置1は、異常診断処理を開始する。このとき、診断対象物7は、正常品と同一の位置に設置されている。これにより、マイクロホンアレイ3は、正常品に係る音圧マップと診断対象物7に係る音圧マップとを比較することができる。
ステップS30~S32の処理は、音圧マップ作成部121によって行われる。
ステップS30に於いて、音圧マップ作成部121は、マイクロホンアレイ3によって、診断対象物7の音を測定し、測定したアナログの音圧信号をA/D変換器11によりデジタルの音圧信号に変換する。
(イ-2)甲1号証に記載された発明
(イ-2-1)【0015】、【0016】には、「異常診断装置」に関し、診断対象物を撮像する「カメラ」と診断対象物の音圧信号を測定する「マイクロホンアレイ」とが接続されること、及び、診断対象物の異常性を診断し、カメラが撮像した画像と重畳して表示する「モニタ」を備えることが記載されている。
(イ-2-2)【0017】には、「異常診断装置」が、音圧マップ作成部、異常領域判定部、音圧マップ表示部等を有する「音響信号処理部」を備えることが記載され、【0018】には、音圧マップ作成部がカメラ画像に対応する音圧マップを計算すること、及び、異常領域判定部が音圧マップに基づいて、異常の有無を判定することが記載されている。また、【0019】には、音圧マップ表示部が、音圧マップなどをカメラ画像に重ねた診断結果の画面をモニタに表示することが記載されている。
(イ-2-3)【0021】、【0027】には、異常診断装置が起動され、指示が入力されたら処理を開始することが記載されている。
してみれば、甲1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(符号1a~1fは、当審において付与した。以下、それぞれ「構成1a」~「構成1f」という。)。
(甲1発明)
(1a)診断対象物を撮像するカメラと、
(1b)診断対象物の音圧信号を測定するマイクロホンアレイと、
(1c)撮像された診断対象物の画像を表示するモニタと、
(1d)カメラ画像に対応する音圧マップを計算し、音圧マップに基づいて、異常の有無を判定し、音圧マップなどをカメラ画像に重ねた診断結果の画面をモニタに表示させる音響信号処理部と、を備え、
(1e)指示が入力されたら処理を開始する、
(1f)異常診断装置
(イ-3)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下の2点で相違する。
(相違点1-1)
本件発明1の「信号処理部」は、「前記マイクアレイにより収音された音声データを用いて、前記撮像エリアの音の大きさを特定する音パラメータを、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に導出する」とともに、「導出された前記音パラメータと音の大きさに関する複数の閾値との比較に応じて、前記音パラメータを異なる視覚情報に段階的に変換した音源画像情報を、前記撮像エリアの画像データを構成する画素の所定単位毎に重畳して前記表示部に表示させる」のに対し、甲1発明の「音響信号処理部」は、カメラ画像に対応する音圧マップを計算し、音圧マップに基づいて、異常の有無を判定し、音圧マップなどをカメラ画像に重ねた診断結果の画面をモニタに表示させるものである点。
(相違点1-2)
本件発明1は、「撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントを検出するセンサ」を備え、「信号処理部」が、「前記センサにより前記イベントが検出されると、前記音パラメータを導出する」のに対し、甲1発明における音響信号処理部は、指示入力により処理を開始するものの、「撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントを検出するセンサ」を具備しておらず、「前記センサにより前記イベントが検出される」と、音響信号処理部が処理を行うと特定されていない点。
(イ-4)判断
本件発明1と甲1発明とは、上記のとおりの相違点を有するから、両者は同一であるとはいえない。
また、事案に鑑み、上記相違点1-2について検討すると、当該相違点に係る、「撮像エリアにおける音源の表示を指示するイベントを検出するセンサ」によりイベントを検出し、処理を開始させる構成は、甲2号証には記載されておらず、また、当業者の技術常識を考慮しても、自明のものとはいえない。
なお、当該構成は、甲3号証にも記載されていない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2号証の記載事項ならびに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ-5)本件発明2、4、5及び6について
本件特許の請求項2、4、5は、請求項1を引用しており、上記した相違点1-2に係る構成を備えている。また、請求項1とは発明のカテゴリーが異なる請求項6も、上記相違点1-2に対応する構成を備えている。
ここで、相違点1-2についての判断は、上記のとおりであるから、本件発明2、4、5及び6も、甲1発明及び甲2号証の記載事項ならびに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)まとめ
以上のとおりであるから、異議申立人の主張はいずれも理由がない。
4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、2及び4-6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2及び4-6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項3に係る特許は、訂正により、削除されたため、請求項3に係る特許に対して、特許異議申立人辰巳功がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-701162