特許異議申立
2022-700422
改善されたイントラ・クロマ符号化および復号のための方法および装置
- 審判番号
- 2022-700422
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-080856
- 登録番号
- 6968024
- 請求日
- 2022年05月16日
- 審決日
- 2023年03月28日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】インターデジタル ヴイシー ホールディングス, インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】大貫 敏史
- 【権利者代理人】江口 昭彦
- 【権利者代理人】内藤 和彦
- 【権利者代理人】阿部 豊隆
- 【異議申立人】ユニファイド パテンツ エルエルシー
- 【異議申立人代理人】竹本 如洋
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 川崎 優
- 審判官 田中 啓介
- 分類
- P1651.113-YAA(H04N) / P1651.121-YAA(H04N) / P1651.537-YAA(H04N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6968024号発明「改善されたイントラ・クロマ符号化および復号のための方法および装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6968024号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第6968024号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6968024号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、2010年8月11日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2009年8月12日、(US)米国)を国際出願日とする特願2012-524695号の一部を平成28年2月1日に出願した特願2016-17009号の一部を平成30年4月19日に特願2018-80856号として出願したものであって、令和3年10月28日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日 令和3年11月17日)がされた。
その後、令和4年5月16日に特許異議申立人 ユニファイド パテンツ エルエルシー により本件特許の請求項1に対して特許異議の申立てがされ、令和4年7月29日付けで当審において取消理由通知がなされた。
これに対して令和4年11月2日に特許権者より意見書が提出されるとともに、訂正請求がなされ、さらに、これに対して令和5年2月22日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨
令和4年11月2日に特許権者よりなされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを求めるというものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求による本件特許の訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(なお、下線は、訂正箇所を示す。)
(1)請求項1に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション(670)又は前記ブロックを符号化するために用いられる特定のルマ・パーティション・タイプから独立に決定されるブロックを符号化するために用いられる特定のクロマ・パーティション・タイプに基づいて、クロマ・パーティションを設定」と記載されているのを、
「前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション(670)に基づいて、クロマ・パーティションを設定」
に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「ビデオ符号化装置」と記載されているのを、
「ビデオ符号化装置であって、前記符号化器は、前記ブロックを符号化するために選択された特定のルマ・パーティション・タイプおよび特定のクロマ・パーティション・タイプのうち、前記特定のルマ・パーティション・タイプのみを信号により復号器に伝達する、ビデオ符号化装置」
に訂正する。
(2)本件特許明細書に係る訂正
ア 訂正事項3
本件特許明細書の段落【0029】に記載の、
「本明細書において使用される用語「スーパーブロック」は、1つ以上のマクロブロックを指す」
とあるのを、
「本明細書において使用される用語「スーパーブロック」は、複数のマクロブロックを指す」に訂正する。
3 訂正の適否についての判断
(1)請求項1に係る訂正について
ア 訂正事項1
a 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「クロマ・パーティションを設定する」ための基礎となる二つの情報である、
「前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション(670)」又は「前記ブロックを符号化するために用いられる特定のルマ・パーティション・タイプから独立に決定されるブロックを符号化するために用いられる特定のクロマ・パーティション・タイプ」
をそのうちの一つの情報である、
「前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション(670)」
に限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aから明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「クロマ・パーティションを設定する」ための基礎となる二つの情報である、
「前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション(670)」又は「前記ブロックを符号化するために用いられる特定のルマ・パーティション・タイプから独立に決定されるブロックを符号化するために用いられる特定のクロマ・パーティション・タイプ」
のうち一方の情報、すなわち、
「前記ブロックを符号化するために用いられる特定のルマ・パーティション・タイプから独立に決定されるブロックを符号化するために用いられる特定のクロマ・パーティション・タイプ」
を削除して、他方の情報、すなわち、
「前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション(670)」
に限定する、いわゆる、択一的記載要素の削除に該当するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1に関して、本件特許明細書の【0050】には、「クロマ・パーティション・タイプがルマ・パーティション・タイプによって決定される」と記載されており、本件特許明細書中には「ルマ・パーティション」を用いて「クロマ・パーティションを設定する」ことが裏付けられているものといえるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
イ 訂正事項2
a 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載の「符号化器」を、「ブロックを符号化するために選択された特定のルマ・パーティション・タイプおよび特定のクロマ・パーティション・タイプのうち、特定のルマ・パーティション・タイプのみを信号により復号器に伝達する」ものに限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aから明らかなように、訂正事項2は、発明特定事項である「符号化器」を、上位概念から、「ブロックを符号化するために選択された特定のルマ・パーティション・タイプおよび特定のクロマ・パーティション・タイプのうち、特定のルマ・パーティション・タイプのみを信号により復号器に伝達する」ものに限定する下位概念に改めるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2に関して、
本件特許明細書の【0028】には、「本明細書において使用される単語「信号伝達(signal)」は、特に、何かを対応する復号器に示すものを指す。例えば符号化器は、符号化器の側で使用した特定のパーティション・タイプおよび/またはパーティション・モードを復号器に知らせるために、クロマ符号化のための特定のパーティション・タイプおよび/またはパーティション・モードを信号により伝達する。」と、
同【0050】には、「クロマ・パーティション・タイプがルマ・パーティション・タイプによって決定される・・・(中略)・・・ルマ・パーティション・タイプのみを信号により伝達し、クロマ・パーティション・タイプは信号により伝達しない。この理由は、クロマ・パーティション・タイプは、ルマ・パーティション・タイプに基づいて決定されるからである」と、
同【0085】には、「ブロックを符号化するために選択された特定のルマ・パーティション・タイプおよび特定のクロマ・パーティション・タイプのうち、特定のルマ・パーティション・タイプのみが信号により伝達され」と、
それぞれ記載されている。
これらの記載によれば、訂正事項2に関し、「ブロックを符号化するために選択された特定のルマ・パーティション・タイプおよび特定のクロマ・パーティション・タイプのうち、特定のルマ・パーティション・タイプのみを信号により復号器に伝達する」ことは本件特許明細書中に裏付けられているものといえる。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)本件特許明細書に関する訂正について
ア 訂正事項3
a 訂正の目的について
本件特許明細書の【0003】には、「マクロブロック(16×16)」と、
同【0051】には、「方法1の例示的な実施形態(以下、「実施形態1」と呼ぶ)」において「スーパーブロックのサイズが32×32であると仮定する」と、
同【0065】には、「方法2」として「マクロブロック(MB)またはスーパーブロック」と、
同【0066】には、「方法2の例示的な実施形態(以下、「実施形態2」と呼ぶ)」において「スーパーブロックのサイズが32×32であると仮定する」と、
記載されており、これらの記載から、本件特許明細書中に記載される2つの実施形態のいずれについても、マクロブロックとスーパーブロックとは明確に区別され、両者は同じサイズではないことが読み取れる。
一方、本件特許明細書の【0029】には「本明細書において使用される用語「スーパーブロック」は、1つ以上のマクロブロックを指す」と記載されており、当該「スーパーブロック」の定義は、スーパーブロックが1つのみのマクロブロックを指す場合を含むものとして解釈し得る点において、明細書の記載に矛盾が生じている。
そこで、スーパーブロックが1つのみのマクロブロックを指す場合を含むような【0029】の記載は、スーパーブロックが複数のマクロブロックを指すものとして訂正することの可否について検討する。
本件特許明細書の【0065】の記載は、マクロブロックとスーパーブロックが明確に区別されるものであることを示すものであり、【0003】はマクロブロックのサイズが16×16であることを示すものであり、【0051】や【0066】の記載では、スーパーブロックのサイズの例として32×32が挙げられている。
ところで、「スーパー」という記載は、一般に「・・・を超える」という意味を有する英語の接頭辞であるところから、【0003】、【0065】の記載と、【0051】、【0066】の例示の記載とを合わせると、スーパーブロックとは、マクロブロックよりも大きいサイズを有するブロックを示すことを想定していると解される。
次に、本件特許明細書の【0005】には、「MPEG-4 AVC規格における基本的な符号化単位はマクロブロックである、即ち、サイズは16×16であるため、マクロブロック内部のパーティション・タイプは、全て、16×16、8×8、または4×4のいずれかである。」と記載されており、MPEG-4 AVC規格において、16×16のマクロブロックを符号化単位としている一方、【0008】には、「MPEG-4 AVC 規格の拡張版における大きなイントラ・パーティション」には、「イントラ_32×32では、クロマは、表1に示されている場合と同様に、4つのクロマ予測モードおよびカスケードされた8×8の変換を使用する。」という記載があり、本件特許の前提として、MPEG-4 AVC規格の拡張において、大きなイントラ・パーティションとして、32×32のブロックサイズについて検討しているといえる。
以上を総合すると、本件特許明細書及び図面の記載に接した当業者にとって、本件特許における「スーパーブロック」は、「複数のマクロブロックを指す」ものであり、その例として32×32のブロックサイズを有するものがあると理解するものといえる。
そうすると、訂正事項3は、本件特許明細書の【0029】の「本明細書において使用される用語「スーパーブロック」は、1つ以上のマクロブロックを指す」というスーパーブロックの定義についての記載であって、本件特許明細書の他の記載と不整合を生じている記載を、「本明細書において使用される用語「スーパーブロック」は、複数のマクロブロックを指す」を表すように訂正することで、不整合を解消しようとするものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるといえる。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aから明らかなように、訂正事項3は、明細書中の明瞭でない記載の釈明を行うものであるところ、当該訂正事項により「スーパーブロック」が「1つ以上のマクロブロックを指す」、すなわちブロックの大きさが16×16以上のブロックを含むものから、「複数のマクロブロックを指す」、すなわちブロックの大きさが16×16の場合を除くものにすることから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、明瞭でない記載の釈明により、「スーパーブロック」が「複数のマクロブロックを指す」とすることで、結果として「1つのみのマクロブロックを指す」場合が除かれるものであり、これによって新たな技術事項が導入されるものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
4 まとめ
したがって、本件訂正の訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を、訂正事項3は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的としており、かつ同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲の記載を、訂正事項1ないし3のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
訂正後の本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(下線は本件訂正により訂正された箇所を示す。)
ここで、本件訂正発明の各構成には、A~Fの符号を当審において付した。以下、構成A~構成F等という。
【請求項1】
A ピクチャ内の少なくとも1つのブロックについてのピクチャ・データを符号化する符号化器(400)を備え、
B 前記ブロックのイントラ・クロマ符号化のために、複数のパーティションタイプがサポートされており、
B1 前記複数のパーティションタイプは、クロマ・パーティション・タイプのセットとルマ・パーティション・タイプのセットを含み、
B2 前記クロマ・パーティション・タイプのセットは、前記ルマ・パーティション・タイプのセットとは異なり、
C 前記符号化器は、ルマ・モード(630)を解析し、ルマ・パーティション及びルマ・モード(660)を選択し、
C11 前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション(670)に基づいて、クロマ・パーティションを設定し、
C3 イントラ・ルマ・パーティション・タイプ及びクロマ・パーティション・タイプは、
C31 スーパーブロック内においてパーティション毎に独立に符号化され、
C32 ルマ及びクロマは、異なるイントラ予測モードを有し、
D スーパーブロック単位でパーティション・タイプ決定がなされ、
E 前記符号化器は、クロマ・モード(680)を選択し、前記ルマ・パーティション、前記ルマ・モード、及び前記クロマ・モードを符号化する、
F ビデオ符号化装置であって、
E1 前記符号化器は、前記ブロックを符号化するために選択された特定のルマ・パーティション・タイプおよび特定のクロマ・パーティション・タイプのうち、前記特定のルマ・パーティション・タイプのみを信号により復号器に伝達する、
F ビデオ符号化装置。
第4 取消理由通知の概要
1.(明確性)本件特許は、請求項1の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。
2.(新規性)請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
3.(進歩性)請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
記
甲第2号証:特開2008-172599号公報
1 本件発明の構成の明確性について
本件発明の解釈、とりわけ構成C31及び構成Dの「スーパーブロック」という記載の解釈、にあたり、本件明細書の記載について検討する。
本件明細書には「マクロブロック」及び「スーパーブロック」に関して、以下の記載がある。
ア 「【0003】
・・・イントラ符号化されたピクチャにおいて、マクロブロック(16×16)は、ピクチャにおける空間相関を利用して、イントラ・モードで符号化される。」
イ 「【0029】
さらに、本明細書において使用される用語「スーパーブロック」は、1つ以上のマクロブロックを指す。」
ウ 「【0051】
実施形態1
次に、方法1 の例示的な実施形態(以下、「実施形態1」と呼ぶ) について記載する。スーパーブロックのサイズが32×32であると仮定する。」
エ 「【0065】
方法2
第2の方法(方法2とも呼ぶ)においては、イントラ・ルマ・パーティション・タイプおよびクロマ・パーティション・タイプは、マクロブロック(MB)またはスーパーブロック内で独立して符号化される。MPEG-4 AVC規格における4:4:4のセパレート・モードとの差異は、スライスに基づくことなくマクロブロック/スーパーブロックに基づいて決定が行われ、ルマおよびクロマは、異なるイントラ予測モードを有することがある点である。」
オ 「【0066】
実施形態2
次に、方法2の例示的な実施形態(以下、「実施形態2」と呼ぶ)について記載する。スーパーブロックのサイズが32×32であると仮定する。」
上記アの記載によれば、「マクロブロック」とは16×16の大きさを有するブロックであり、これを踏まえ、上記イの記載によると、「スーパーブロック」は1つ以上のマクロブロック、すなわち、16×16以上の大きさを有するブロックであるといえる。
一方、上記記載エによれば、「マクロブロックまたはスーパーブロック内で独立に符号化される」という記載や「マクロブロック/スーパーブロック」という記載があることから、マクロブロックとスーパーブロックは区別されており、スーパーブロックはマクロブロックとは同じサイズではないことを意図しているといえる。
また、上記記載ウ、オによれば、実施形態1、2において「スーパーブロックのサイズが32×32である」と記載されているが、本件明細書の発明の詳細な説明中には、スーパーブロックがマクロブロックと同じ大きさ、すなわち16×16である実施形態は記載されていない。
そうすると、本件発明の構成C31及び構成Dにおいて、「スーパーブロック」とは、マクロブロックと同じ大きさのブロックを含むのか、それともマクロブロックと同じ大きさのブロックは含まないのか、明確ではない。
したがって、本件特許は、請求項1の記載に不備があり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。(取消理由1)
さらに、本件発明は、甲2発明であり、また甲2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。(取消理由2,3)
第5 異議申立時に提出された甲号証及び甲号証に記載された発明、技術事項について
1 甲第2号証について
(1)甲第2号証の記載事項
甲第2号証である特開2008-172599号公報には次の記載がある。(下線は合議体が付した。以下同様。)
ア 「【0008】
実施の形態1.
本実施の形態1では、(Y,Cb,Cr)色空間で定義される4:2:0、4:2:2の各クロマフォーマットの映像信号、および(R,G,B)、(Y,Cb,Cr)、(X,Y,Z)などの色空間で定義される4:4:4クロマフォーマットの映像信号のいずれかを入力として映像符号化を行いビットストリームを出力する符号化装置、および該符号化装置により生成される符号化ビットストリームを入力として画像信号を復元する復号装置について述べる。以降の説明においては、3つの色成分を(C0,C1,C2)成分と総称し、4:2:0、4:2:2クロマフォーマットのときのC0成分はY成分、C1成分はCb成分、C2成分はCr成分とみなす。
【0009】
本実施の形態1における符号化装置は、図1に示すように、時間サンプリングによりフレームないしはフィールドの単位で定義される画面情報(以降、ピクチャと呼ぶ)の時系列データとして表現される映像信号を入力とする。ピクチャを時系列に並べたデータ単位をシーケンスと呼ぶ。シーケンスは、いくつかのピクチャのグループ(GOP)に分割されることがある。GOPは、任意のGOPの先頭から他のGOPに依存せずに復号を実行できることを保証し、ビットストリームに対するランダムアクセスを保証するといった用途に利用する。ピクチャはさらにマクロブロックと呼ばれる正方ブロックに分割され、マクロブロックの単位で予測・変換・量子化処理を適用して映像圧縮を行う。・・・
【0010】
4:2:0、4:2:2、4:4:4の各クロマフォーマット時のマクロブロックは、図23においてW=H=16とした画素ブロックとして定義される。マクロブロックの単位で予測・変換・量子化処理を適用して映像圧縮を行うため、ビットストリームに多重されるマクロブロックの符号化データは、大別して2種類の情報からなる。」
イ 「【0012】
<符号化装置>
図4に、本実施の形態1の符号化装置の構成を示す。・・・
【0013】
入力映像信号3は、まずクロマフォーマット識別情報1、共通符号化・独立符号化識別情報2により、図2ないしは図3のいずれかのマクロブロックデータに分割され、イントラオンリー符号化指示情報4に従い、イントラ予測処理(C0成分イントラ予測モード決定部5、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6、C0成分イントラ予測画像生成部7、C1/C2成分イントラ予測画像生成部8)、動き補償予測処理(C0成分動き検出部9、C1/C2成分動き検出部10、C0成分動き補償部11、C1/C2成分動き補償部12)を行って、当該マクロブロックを符号化するにあたってもっとも効率のよい予測モードを選択し(符号化モード選択部14)、予測残差を変換・量子化し(C0成分予測残差符号化部18、C1成分予測残差符号化部19、C2成分予測残差符号化部20)、予測モードや動き情報などのサイド情報と量子化された変換係数とを可変長符号化してビットストリーム30を生成する(可変長符号化部27)。・・・
ウ 「【0014】
以下、本実施の形態1の特徴である、クロマフォーマット識別情報1、共通符号化・独立符号化識別情報2、イントラオンリー符号化指示情報4などに基づいて処理切り替えを行うイントラ予測処理、動き補償予測処理、予測残差符号化処理、可変長符号化処理(およびその結果得られるビットストリーム構成)についてそれぞれ詳細を説明する。
【0015】
(1)イントラ予測処理
イントラ予測処理は、図4のC0成分イントラ予測モード決定部5、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6、C0成分イントラ予測画像生成部7、C1/C2成分イントラ予測画像生成部8によって行われる。
【0016】
クロマフォーマットが4:2:0、4:2:2の場合は、Y成分の信号はC0成分イントラ予測モード決定部5によってC0成分イントラ予測モード100が決定される。ここで選択可能なモードはイントラ4x4予測モード、イントラ8x8予測モード、イントラ16x16予測モードの3種類がある。イントラ4x4予測モードとイントラ8x8予測モードについては、マクロブロックを4x4画素または8x8画素からなるブロックに分割して、図5に示すように個々のブロックごとに個別に近傍参照画素を用いた空間予測を行う。この予測方法の選択肢が9つあり、9つのうちのいずれの方法を用いて予測を行ったかをイントラ予測モードの形でサイド情報のひとつとして符号化する。図5の矩形でかこまれた4x4画素が予測対象の画素であり、斜線塗りつぶしの画素が予測画像生成のための参照画素である。矢印は参照画素が予測値に影響を与える方向を示す。Mode2は参照画素の平均値を予測値とする。図5は4x4ブロックの例を示しているが、8x8画素ブロックについても同様のモードが定義される。このような方向性を持った空間予測を行うことで被写体の輪郭やテクスチャパターンなど画像の構造情報に対して有効な予測を行うことができる。
【0017】
また、マクロブロックを細分化せずに16x16ブロックのままイントラ予測を行うモードとしてイントラ16x16予測モードがある(図6)。この場合は図6に示す4種類の空間予測方法を選択できる。これは絵柄が平坦な画像領域に対して少ないサイド情報で予測効果を高めるモードとして有効である。」
エ 「【0018】
Cb、Cr成分については、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6によって、Y成分とは個別のC1/C2成分イントラ予測モード101(C1、C2それぞれに対応するものを101a、101bとする。なお、4:2:0、4:2:2のときは101a、101bは常に同値であって、いずれか一方がビットストリームに多重化される。デコーダでは復号した値を101a、101bに設定する。)が決定される。4:2:0、4:2:2クロマフォーマットの際に選択可能なCb、Cr成分のイントラ予測モードは図7に示す。この図7は4:2:0フォーマットの場合を示す図面であるが、4:2:2フォーマットも同様のモードが用いられる。この4モードのうち、mode0のみ、Cb、Crのマクロブロック相当領域(4:2:0の場合は8x8画素ブロック、4:2:2の場合は8x16画素ブロック)を4x4ブロックに分割して、4x4ブロックの単位で周辺からの平均値予測を行う。例えば、左上の4x4ブロックに対しては領域a、領域xの全8画素を平均するか、aないしxの4画素を平均するかいずれかの値が予測値として用いられる。Mode1,2,3については、図5、図6と同様、方向性を持った空間予測となる。4:2:0、4:2:2クロマフォーマットでは、画像のテクスチャなど構造的な情報はY成分に集約され、色差成分信号であるCb、Cr成分については画像の構造情報が保存されない。そのため、このような簡易な予測モードで効率的な予測を行う。」
オ 「【0022】
以上の処理によって決定された各色成分ごとのイントラ予測モードに基づいて、C0成分イントラ予測画像生成部7、C1/C2成分イントラ予測画像生成部8において予測画像の生成が行われる。」
カ 「【0030】
(3)予測残差符号化処理
以上のイントラ予測処理の結果得られる最適なイントラ予測モードとその予測画像、および動き補償予測処理の結果得られる最適な動き情報(動きベクトル・参照画像インデックス)とその予測画像は、符号化モード選択部14にて評価され、最適な符号化モード15が選択される。符号化モード15がイントラ予測であれば、減算器16にて、入力映像信号3とイントラ予測による予測画像との差分がとられ、予測残差信号17aが得られる。符号化モード15が動き補償予測であれば、減算器16にて、入力映像信号3と動き補償予測による予測画像との差分がとられ、予測残差信号17aが得られる。
【0031】
得られた予測残差信号17aは、C0成分予測残差符号化部18、C1成分予測残差符号化部19、C2成分予測残差符号化部20により、変換・量子化されて情報圧縮される。C1成分予測残差符号化部19、C2成分予測残差符号化部20では、クロマフォーマット識別情報1、共通符号化・独立符号化識別情報2に応じて、C1/C2成分に対する処理を切り替える。
【0032】
クロマフォーマットが4:2:0、4:2:2の場合のY成分、ならびにクロマフォーマットが4:4:4の場合のC0成分に対しては、C0成分予測残差符号化部18において、図11に示す予測残差符号化処理が行われる。本処理ではまず、符号化モード15がイントラ8x8予測モードであるか、予測残差信号17aを8x8ブロック単位で整数変換するモードが選択されている場合は、マクロブロック内を4分割した8x8ブロックの単位で整数変換を行い、量子化パラメータ32に従う量子化処理を行い量子化係数データ21を得る。符号化モード15がそれ以外の場合は、まず4x4ブロック単位に整数変換を行い、続いて符号化モード15がイントラ16x16予測モードの場合は、各4x4ブロックの変換係数のDC成分のみを集めて4x4ブロックを構成し、アダマール変換を施す。DC成分に対してはこのアダマール変換係数に対して量子化パラメータ32に従う量子化を行い、残りの4x4ブロックのAC成分15個は個別に量子化処理を行う。符号化モード15がイントラ16x16予測モードでない場合は、16個の変換係数に対して同時に量子化パラメータ32に従う量子化処理を行う。」
キ 「【0038】
図13に、ビットストリーム30の全体図を示す。シーケンスレベルのヘッダ情報であるシーケンスパラメータセット(SPS)には、クロマフォーマット識別情報1、共通符号化・独立符号化識別情報2、イントラオンリー符号化指示情報4、画像サイズ情報31が多重化される。なお、共通符号化・独立符号化識別情報2はクロマフォーマットが4:4:4の場合のみ必要であるため、クロマフォーマット識別情報1が4:4:4である場合にのみ多重される。ピクチャレベルのヘッダ情報であるピクチャパラメータセット(PPS)には、ピクチャ先頭で用いる量子化パラメータ32の初期値などが多重される。画像符号化データはスライス以下に多重され、クロマフォーマット識別情報1、共通符号化・独立符号化識別情報2の値に応じて、図14、図15のようにデータ形式が異なる。
【0039】
クロマフォーマット識別情報1により、クロマフォーマットが4:2:0、4:2:2であると示される場合は、図14のようなスライス構造になる。図14において、SHはスライスヘッダ、MBはマクロブロック符号化データ、MBHはマクロブロックヘッダ、Txはx成分の量子化係数データである。このとき、スライスは図2の構成で、クロマフォーマットのサンプル比に従ったY、Cb、Crの画素からなるマクロブロックの符号化データを含み、MBHには符号化モード15に相当するマクロブロックタイプが含まれ、マクロブロックタイプがイントラ予測モードを示す場合は、C0すなわちY成分のイントラ予測モード100と、C1/C2すなわちCb/Cr成分で共通のイントラ予測モード101と、量子化係数データの量子化・逆量子化に用いる量子化パラメータ32などが含まれる。」
また、図4には以下の記載がある。
ク 「【図4】
[図:0001398255000001.jpg]
」
ケ 上記イを踏まえたクから、符号化装置には、C0成分イントラ予測モード決定部5、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6、C0成分イントラ予測画像生成部7、C1/C2成分イントラ予測画像生成部8、符号化モード選択部14、C0成分動き検出部9、C1/C2成分動き検出部10、C0成分動き補償部11、C1/C2成分動き補償部12、C0成分予測残差符号化部18、C1成分予測残差符号化部19、C2成分予測残差符号化部20、可変長符号化部27が含まれていることが見てとれる。
さらに、図7には以下の記載がある。
コ 「【図7】
[図:0001398255000002.jpg]
」
サ 上記エを踏まえたコから、4:2:2Cb/Crイントラ予測の際に選択可能なCb、Cr成分のイントラ予測モードは、8×16ブロックを、4×4ブロックに分割して周辺からの平均値予測を行うmode0、8×8に分割して右向き水平方向に予測を行うmode1、8×8に分割して下向き垂直方向に予測を行うmode2、8×8に分割して右45度上向きまたは左45度下向きに予測を行うmode3があることが見てとれる。
(2)甲2発明
上記(1)から、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。(甲2発明の各構成には、a~eの符号を、当審において付した。以下、構成a~構成e等という。また、各構成の末尾に、上記(1)における対応する記載事項の記号を付した。)
a (Y,Cb,Cr)色空間で定義される4:2:2のクロマフォーマットの映像信号を入力として映像符号化を行いビットストリームを出力する符号化装置であって、(ア)
4:2:2クロマフォーマットのときのC0成分はY成分、C1成分はCb成分、C2成分はCr成分とみなし、
前記符号化装置は、フレーム単位で定義されるピクチャの時系列データとして表現される映像信号を入力とするものであり、ピクチャはさらにマクロブロックと呼ばれる正方ブロックに分割され、マクロブロックの単位で予測・変換・量子化処理を適用して映像圧縮を行うものであり、4:2:2のクロマフォーマット時のマクロブロックはマクロブロックの単位で予測・変換・量子化処理を適用して映像圧縮を行うものであり、(ア)
前記符号化装置は、C0成分イントラ予測モード決定部5、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6、C0成分イントラ予測画像生成部7、C1/C2成分イントラ予測画像生成部8、符号化モード選択部14、C0成分動き検出部9、C1/C2成分動き検出部10、C0成分動き補償部11、C1/C2成分動き補償部12、C0成分予測残差符号化部18、C1成分予測残差符号化部19、C2成分予測残差符号化部20、可変長符号化部27を含み、(ク)(ケ)
前記符号化装置において、入力映像信号3は、マクロブロックデータに分割され、イントラ予測処理を行って、当該マクロブロックを符号化するにあたってもっとも効率のよい予測モードを選択し、予測残差を変換・量子化し、予測モードなどのサイド情報と量子化された変換係数とを可変長符号化してビットストリーム30を生成するものであり、(イ)
b、b-y、c、d イントラ予測処理は、C0成分イントラ予測モード決定部5、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6、C0成分イントラ予測画像生成部7、C1/C2成分イントラ予測画像生成部8によって行われ、(ウ)
クロマフォーマットが4:2:2の場合は、Y成分の信号はC0成分イントラ予測モード決定部5によってC0成分イントラ予測モードが決定され、ここで選択可能なモードはイントラ4x4予測モード、イントラ8x8予測モード、イントラ16x16予測モードの3種類があり、イントラ4x4予測モードとイントラ8x8予測モードについては、マクロブロックを4x4画素または8x8画素からなるブロックに分割して、個々のブロックごとに個別に近傍参照画素を用いた空間予測を行い、
予測方法の選択肢が9つあり、9つのうちのいずれの方法を用いて予測を行ったかをイントラ予測モードの形でサイド情報のひとつとして符号化するものであり、(ウ)
マクロブロックを細分化せずに16x16ブロックのままイントラ予測を行うモードとしてイントラ16x16予測モードの場合は4種類の空間予測方法を選択でき、(ウ)
b、b-cbcr、c、d Cb、Cr成分については、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6によって、Y成分とは個別のC1/C2成分イントラ予測モードが決定され、4:2:2クロマフォーマットの際に選択可能なCb、Cr成分のイントラ予測モードは、8×16ブロックを、4×4ブロックに分割して周辺からの平均値予測を行うmode0、8×8に分割して右向き水平方向に予測を行うmode1、8×8に分割して下向き垂直方向に予測を行うmode2、8×8に分割して右斜め上45度または左斜め下45度の向きに予測を行うmode3があり、(エ)、(コ)、(サ)
4モードのうち、mode0のみ、Cb、Crのマクロブロック相当領域(4:2:2の場合は8x16画素ブロック)を4x4ブロックに分割して、予測を行うものであり、(エ)
各色成分ごとのイントラ予測モードに基づいて、C0成分イントラ予測画像生成部7、C1/C2成分イントラ予測画像生成部8において予測画像の生成が行われ、(オ)
c、d、e クロマフォーマットが4:2:2の場合のY成分は、C0成分予測残差符号化部18において、符号化モードがイントラ8x8予測モードである場合は、マクロブロック内を4分割した8x8ブロックの単位で整数変換を行い、量子化パラメータ32に従う量子化処理を行い量子化係数データ21を得、それ以外の場合は、まず4x4ブロック単位に整数変換を行い、イントラ16x16予測モードの場合は、各4x4ブロックの変換係数のDC成分のみを集めて4x4ブロックを構成し、アダマール変換を施し、DC成分に対してはこのアダマール変換係数に対して量子化パラメータ32に従う量子化を行い、残りの4x4ブロックのAC成分15個は個別に量子化処理を行い、イントラ16x16予測モードでない場合は、16個の変換係数に対して同時に量子化パラメータ32に従う量子化処理を行うものであり、(カ)
ビットストリームにおいて、クロマフォーマットが4:2:2である場合は、スライス構造になり、スライスはクロマフォーマットのサンプル比に従ったY、Cb、Crの画素からなるマクロブロックの符号化データを含み、符号化モードに相当するマクロブロックタイプが含まれ、マクロブロックタイプがイントラ予測モードを示す場合は、Y成分のイントラ予測モードと、Cb/Cr成分で共通のイントラ予測モードと、量子化係数データの量子化・逆量子化に用いる量子化パラメータが含まれる、(キ)
a 符号化装置。
2 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証である中国特許出願公開第101159874号明細書には次の記載がある。(なお、以降の下線は、強調のために当審で付したものである。以下同様。)
ア「
[図:0001398255000003.jpg]
[図:0001398255000004.jpg]
」(第5頁第15行~第6頁最終行)
(仮訳:
図1を参照されたい。当該図は、従来技術においてH.264圧縮符号化技術で画像の圧縮符号化処理を行う処理プロセスの模式図である。図1から理解できるように、H.264圧縮符号化技術は、処理対象の画像を16×16画素サイズの基本処理マクロブロックに分割し、分割処理したマクロブロックに対して、マルチフレーム参照、フレーム内予測(Intra-frame Prediction)、マルチマクロブロックパターン、4×4整数変換/スケーリング/量子化、デブロッキング効果フィルタ、1/4画素動き推定、コンテキスト適応型可変長符号化(CAVLC:Context-based Adaptive Variable Length Coding)及びコンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC:Context-based Adaptive Binary Arithmetic Coding)のエントロピー符号化等の高度画像処理技術の処理を行っており、その圧縮符号化効率は、MPEG-2圧縮符号化技術、H.263圧縮符号化技術及びMPEG-4ASP(アドバンスドシンプルプロファイル、Advanced Simple Profile)の圧縮符号化技術の符号化効率より倍以上高められている。
上述した処理プロセスから理解できるように、H.264圧縮符号化技術の符号化プロセスでは、その主な特徴の1つとして、処理対象の画像データに対しフレーム内符号化(INTRA)予測処理を行い、INTRAフレームの符号化効率を大幅に向上させている。画像データに対しフレーム内符号化予測処理を行うプロセスにおいて、画像の輝度予測処理には、16×16ブロックの予測と4×4ブロックの予測の2つの予測単位がある。
図2を参照されたい。当該図は、従来技術の輝度予測処理において16×16ブロックの予測で採用される4つの予測パターンの模式図である。H.264の圧縮符号化技術において、16×16ブロックの予測処理には、
図2の図(a)に示す垂直方向予測(vertical)と、
図2の図(b)に示す水平方向予測(horizontal)と、
図2の図(c)に示す水平・垂直の平均予測(DC)と、
図2の図(d)に示す水平・垂直の加重予測(Plane)と、が含まれる。
つまり、16×16ブロックの予測処理には、上記4つの予測パターンが含まれる。
図3を参照されたい。当該図は、従来技術の輝度予測処理において4×4ブロックの予測で採用される9つの予測パターンの模式図である。H.264の圧縮符号化技術において、4×4ブロックの予測処理には、
図3の図(a)に示す垂直方向予測(vertical)と、
図3の図(b)に示す水平方向予測(horizontal)と、
図3の図(c)に示す水平・垂直の平均予測(DC)と、
図3の図(d)に示す左下方向の対角予測(Diagonal Down-Left)と、
図3の図(e)に示す右下方向の対角予測(Diagonal Down-Right)と、
図3の図(f)に示す垂直右方向予測(Vertical-Right)と、
図3の図(g)に示す垂直左方向予測(Vertical-Left)と、
図3の図(h)に示す水平下方向予測(Horizontal-Down)と、
図3の図(i)に示す水平上方向予測(Horizontal-Up)と、が含まれる。
つまり、4×4ブロックの予測処理には、上記9つの予測パターンが含まれる。)
イ「
[図:0001398255000005.jpg]
[図:0001398255000006.jpg]
」(第11頁第1行~第12頁第18行)
(仮訳:
以下では、それぞれの図と結びつけて、本発明にかかるフレーム内符号化に基づく画像色差予測方法の具体的な実施形態について詳述する。本発明にかかるフレーム内符号化に基づく画像色差予測方法で言及されるマルチメディアビデオ画像におけるマクロブロックとは、4:2:0フォーマットのマクロブロックを指し、すなわち、1つのマクロブロックは、16個の4×4画素の輝度ブロックY、4個の4×4画素の色差ブロックCb、及び4個の4×4画素の色差ブロックCrを含む。
図4を参照されたい。当該図は、本発明にかかる、フレーム内符号化に基づく画像色差予測方法に関するマクロブロックのフォーマットの模式図である。図中、番号0~15は16個のそれぞれ4×4画素の輝度ブロックYであり、番号16~19は4個のそれぞれ4×4画素の色差ブロックCbであり、番号20~23は4個のそれぞれ4×4画素の色差ブロックCrである。
図5を参照されたい。当該図は、本発明にかかる、フレーム内符号化に基づく画像色差予測方法の主要な実現原理のフローチャートである。その主な実現プロセスは、以下のステップを含む。
ステップS10、ビデオ画像のマクロブロック内の各色差ブロック(色差ブロックCb及びCrを含む)を複数の2n×2n画素のブロックに分割する。ここでn=0、1又は2である。すなわち、従来技術におけるマクロブロック内の各8×8画素の色差ブロックCb及びCrに基づいて、n=0の場合は各色差ブロックを64個の1×1画素のブロックに分割することができ、n=1の場合は各色差ブロックを16個の2×2画素のブロックに分割することができ、n=2の場合は、各色差ブロックを4個の4×4画素のブロックに分割することができる。複数の実験テストと分析を経て、本発明ではここで、最も好ましい実施形態として、n=2、すなわち各色差ブロックを4個の4×4画素のブロックに分割する場合について説明を行う。
ステップS20、ステップS10で分割した2n×2n画素の各ブロックを予測単位として、画像色差のフレーム内符号化予測処理を行う。このように、画像色差のフレーム内符号化予測処理プロセスにおいて、2n×2n画素のブロックでn=0、1又は2の場合、従来技術において8×8画素の色差ブロックを予測単位とする場合と比較して、異なる画素ブロック間の局所相関性をより適切に利用することができる。したがって、画像色差の符号化効率を高めることができる。
ここで、各マクロブロックにおいて分割された複数の2n×2n画素のブロックには、同じ予測パターンを採用して、画像色差のフレーム内符号化予測処理を行うことができる。ここで採用される同じ予測パターンは、水平方向予測(vertical)、垂直方向予測(horizontal)、水平・垂直方向予測(DC)、及び水平・垂直加重予測(Plane)の4つの予測パターンから選択することができ、2n×2n画素のブロックに適用されるPlane予測パターンは、8×8画素の色差ブロックに適用されるPlane予測パターンと類似のものとすることができる。
上述した複数の2n×2n画素のブロックに対し同じ予測パターンを採用して画像色差のフレーム内符号化予測処理を行う場合、当然ながら、画像色差のフレーム内符号化予測処理において8×8画素の色差ブロックを予測単位とした方が、2n×2n画素のブロック(例えば4×4画素のブロック)を予測単位として画像色差のフレーム内予測処理を行うよりも適切である状況が存在し得る。したがって、画像色差のフレーム内符号化予測処理プロセスでは、具体的状況に応じて、8×8画素の色差ブロック又は2n×2n画素のブロックを予測単位として取得することができる。
図6を参照されたい。当該図は、本発明にかかる、フレーム内符号化に基づく画像色差予測方法の第1実施例のフローチャートである。当該第1実施例の具体的な実施プロセスは次のとおりである。
ステップS11、ビデオ画像のマクロブロック内の各色差ブロック(色差ブロックCb及びCrを含む)を複数の2n×2n画素のブロックに分割する。ここでn=0、1又は2である。
ステップS12、画像輝度のフレーム内符号化予測処理プロセスにおいて16×16画素の輝度ブロックを予測単位として画像輝度のフレーム内符号化予測処理を行っているどうかを判断し、行っている場合はステップS13を実行し、そうでない場合はステップS14を実行する。
ステップS13、8×8画素の色差ブロック(すなわち色差ブロックCbとCrとの全体)を予測単位として、画像色差のフレーム内符号化予測処理を行う。
ステップS14、分割された2n×2n画素の各ブロックを予測単位として、画像色差のフレーム内符号化予測処理を行う。)
(2)甲1発明
上記記載から、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。
H.264圧縮符号化技術は、処理対象の画像を16×16画素サイズの基本処理マクロブロックに分割し、分割処理したマクロブロックに対して、マルチフレーム参照、フレーム内予測等の処理を行うものであり、
フレーム内符号化予測処理において、画像の輝度予測処理には16×16ブロックの予測と4×4ブロックの予測の2つの予測単位があり、16×16ブロックの予測処理には、4つの予測パターンが含まれ、4×4ブロックの予測処理には、9つの予測パターンが含まれ、
フレーム内符号化に基づく画像色差予測方法の実施プロセスとして、
ビデオ画像のマクロブロック内の各色差ブロック(色差ブロックCb及びCrを含む)を複数の2n×2n画素のブロックに分割し、ここでn=0、1又は2であり、
画像輝度のフレーム内符号化予測処理プロセスにおいて16×16画素の輝度を予測単位として画像輝度のフレーム内符号化予測処理を行っているかどうかを判断し、
行っている場合は8×8画素の色差ブロック(すなわち色差ブロックCbとCrとの全体)を予測単位として、画像色差のフレーム内符号化予測処理を行い、
そうでない場合は分割された2n×2n画素の各ブロックを予測単位として、画像色差のフレーム内符号化予測処理を行う、
画像の圧縮符号化処理プロセス。
3 甲第3号証について
(1)甲第3号証の記載事項
周知技術を示す甲第3号証である、インプレス標準教科書シリーズ 改訂三版 H.264/AVC教科書、第1版、2009年1月1日発行、株式会社インプレスR&D、pp.86~87、110~117には、次の記載がある。(下線は合議体が付した。)
ア 「
[図:0001398255000007.jpg]
」(pp.86 図4-1の囲み)
イ 「
[図:0001398255000008.jpg]
予測方向は、隣接ブロックの予測方向と相関が高くなります。そこで、図5-6に示すように、符号化済みの隣接ブロックの予測方向から、対象ブロックの予測方向を予測します。すなわち、左ブロックの予測方向に対応する予測モードと、上ブロックの予測方向に対応する予測モードを比較し、小さい番号(例:予測モード4より予測モード3の方が番号が小さい)の予測モードを対象ブロックの予測方向の予測値とします。
隣接ブロックから予測した対象ブロックの予測方向と、実際に予測を行う符号化対象ブロックの予測方向が同じ場合には、予測した予測方向と同じ予測方向か否かを示す予測モード・フラグで、「予測した予測方向と同じ予測方向」という情報のみを符号化します。」(pp.113 図5-6の囲み、pp.114 第1~8行)
ウ 「
[図:0001398255000009.jpg]
」
(pp.114 図5-7の囲み)
エ 「4 色差信号の画面内予測符号化
色差信号の画面内予測は、図5-9に示す8×8画素単位で行います。予測方向は、輝度信号の16×16画素単位の画面内予測と同様に、平均値予測、水平予測、垂直予測、平面予測の4通りです。予測モード3の平面予測や、予測モード0の平均値予測の計算方法も、ブロックの大きさが16画素であるか8画素であるかに起因する違いを除けば、16×16画素単位の画面内予測と同じです。
色差信号の予測モードは、輝度信号の予測モードと独立して選択できます。なお、色差信号はCbとCrの2通りがありますが、予測モード(予測の方法)はCbとCrで共通です。
色差信号の予測モードは、CbとCrそれぞれ1個ずつで、4×4画素単位の画面内予測のように16個と比べて小さいため、予測方向を示す予測モードは予測符号化せず、単純に4方向のいずれであるかを符号化します。」(pp.116 第6~15行)
ここで、上記ア、ウの図の囲み記載から、甲第3号証には以下の事項が記載されていると認められる。
・圧縮符号化処理を符号器が実行すること、
・4×4画面内予測では、マクロブロックの16個の輝度ブロックごとに予測モードを符号化すること。
(2)甲3技術
甲第3号証の記載事項から、甲第3号証には以下の周知技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されているといえる。
・圧縮符号化処理を符号器が実行すること、
・左に隣接するブロックのブロックの予測方向に対応する予測モードと、上に隣接するブロックの予測方向に対応する予測モードを比較するという、複数存在する予測モードの中から最適なものを決定するために行われる予測モードの解析を行うことで、符号化対象ブロックの予測方向に対応する予測モードを予測すること、
・色差(クロマ)信号の予測モードが、輝度(ルマ)信号の予測モードとは独立して選択できること、
・4×4画面内予測では、マクロブロックの16個の輝度ブロックごとに予測モードを符号化すること。
第6 異議申立人により意見書提出時に提出された甲号証及び甲号証に記載された技術事項について
特許異議申立人は令和5年2月22日付け意見書提出時に、甲第4号証を提出しており、その内容は以下のとおりである。
1 甲第4号証について
(1)甲第4号証の記載事項
甲第4号証である、特開2005-203905号公報には、次の記載がある。
「【0038】
符号化器12は、4×4画素、8×8画素、或いは16×16画素のブロック単位でフレーム内予測を行うイントラ予測器13とフレーム間予測を行うインター予測器14を有する。これらイントラ予測器13及びインター予測器14とは別に、画像符号化装置10は、符号化器12の外部に設けられたイントラ予測器16とインター予測器17を有する。このイントラ予測器16とインター予測器17は、4×4画素、8×8画素、或いは16×16画素のブロック単位又はブロック数個をグループ化したスーパーブロック単位で後述するようにイントラ予測残差とインター予測残差を求める。」
(2)甲4技術の認定
甲第4号証の記載事項から、甲第4号証には以下の技術事項(以下、「甲4技術」という。)が記載されているといえる。
イントラ予測器は、4×4画素、8×8画素、或いは16×16画素のブロック数個をグループ化したスーパーブロック単位でイントラ予測残差を求めること。
第7 取消理由通知についての当審の判断
1 本件訂正発明について
ア 対比
本件訂正発明と甲2発明とを対比する。
(ア)構成A、Fについて
甲2発明の構成aから、甲2発明における「符号化装置」は、フレーム単位で定義されるピクチャの時系列データとして表現される映像信号を入力とし、ピクチャをマクロブロックデータに分割して符号化するものである。
また、甲2発明の構成aから、甲2発明における「符号化装置」は、C0成分イントラ予測モード決定部5、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6、C0成分イントラ予測画像生成部7、C1/C2成分イントラ予測画像生成部8、符号化モード選択部14、C0成分動き検出部9、C1/C2成分動き検出部10、C0成分動き補償部11、C1/C2成分動き補償部12、C0成分予測残差符号化部18、C1成分予測残差符号化部19、C2成分予測残差符号化部20、可変長符号化部27が含まれている。
また、甲2発明の構成b、b-y、c、dから、イントラ予測処理はイントラ予測処理に関するC0成分イントラ予測モード決定部5、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6、C0成分イントラ予測画像生成部7、C1/C2成分イントラ予測画像生成部8によって行われる。
そうすると、上記各部を備えた甲2発明の「符号化装置」が、本件訂正発明の構成Aの「ピクチャ内の少なくとも1つのブロックについてのピクチャ・データを符号化する符号化器(400)」に相当する。
また、甲2発明の「符号化装置」を稼働させるためには電源等や筐体等の部材を必要とするところ、これらの部材を具備することは明らかであり、これらの部材を含めたものが、本件訂正発明の構成Fの「ビデオ符号化装置」に相当するといえる。
(イ)構成B、B1、B2について
(イ-1)まず、甲2発明の構成aを踏まえた構成b、b-cbcr、c、dから、甲2発明は「マクロブロックデータに分割され、イントラ予測処理を行って、当該マクロブロックを符号化する」にあたって、「Cb、Cr成分については、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6によって、Y成分とは個別のC1/C2成分イントラ予測モードが決定され」る。
次に、C1/C2成分イントラ予測モードがmode0の場合は、Cb、Cr成分のマクロブロック相当領域を4×4ブロックに分割して予測を行う一方、4:2:0/4:2:2Cb/Crイントラ予測において、8×8の大きさのブロックに画素ブロックを分割して右向き水平、下向き垂直、右斜め上または左斜め下の方向に予測をしているといえる。
そうすると、甲2発明において、マクロブロックを、イントラ予測処理を行って符号化するものにおいて、Cb、Cr成分のマクロブロック相当領域をイントラ符号化する際に、画素ブロックを分割するにあたって、複数種類の大きさのブロックへの分割方法があることがいえる。
すなわち、複数種類の大きさのブロックへの分割方法によって、マクロブロックに対して複数種類の分割されたブロックのタイプ、すなわち複数のパーティションタイプ、がサポートされているといえる。
以上から、甲2発明は、本件訂正発明の構成Bの「前記ブロックのイントラ・クロマ符号化のために、複数のパーティションタイプがサポートされており」に相当する構成を備えているといえる。
(イ-2)次に、甲2発明の構成aを踏まえた構成b、b-y、c、dから、甲2発明は「マクロブロックデータに分割され、イントラ予測処理を行って、当該マクロブロックを符号化する」にあたって、「クロマフォーマットが4:2:2の場合」において「Y成分の信号」の「イントラ予測モードが決定され」る「イントラ予測処理」を行うといえる。
ここで、「イントラ4x4予測モードとイントラ8x8予測モードについては、マクロブロックを4x4画素または8x8画素からなるブロックに分割」し、「イントラ16x16予測モード」は「マクロブロックを細分化せずに16x16ブロックのままイントラ予測を行うモード」である。
そうすると、上記(イ-1)と合わせると、イントラ予測において、Cb、Cr成分についてはマクロブロック相当領域が4x4または8x8の大きさのブロックに分けられるのに対して、Y成分については、Cb、Cr成分とは異なり、マクロブロックが16x16または8x8または4x4のいずれかに分けられるといえる。
以上から、甲2発明は、本件訂正発明の構成B1、B2の「前記複数のパーティションタイプは、クロマ・パーティション・タイプのセットとルマ・パーティション・タイプのセットを含み」「前記クロマ・パーティション・タイプのセットは、前記ルマ・パーティション・タイプのセットとは異な」ることに相当する構成を備えているといえる。
(ウ)構成Cについて
甲2発明の構成b、b-y、c、dにおいて、イントラ予測処理を行うにあたり、「クロマフォーマットが4:2:2の場合は、Y成分の信号はC0成分イントラ予測モード決定部5によってC0成分イントラ予測モードが決定され、ここで選択可能なモードはイントラ4x4予測モード、イントラ8x8予測モード、イントラ16x16予測モードの3種類があ」り、「イントラ4x4予測モードとイントラ8x8予測モードについては、マクロブロックを4x4画素または8x8画素からなるブロックに分割して、個々のブロックごとに個別に近傍参照画素を用いた空間予測を行い、予測方法の選択肢が9つあり、9つのうちのいずれの方法を用いて予測を行ったかをイントラ予測モードの形でサイド情報のひとつとして符号化するものであ」り、「イントラ16x16予測モードの場合は4種類の空間予測方法を選択でき」ることから、決定されるY成分のイントラ予測モードは、イントラ予測のブロックの大きさに関する3種類のイントラ予測モード及び4x4画素または8x8画素からなるブロックの場合は9つの選択肢のいずれか、16x16画素からなるブロックの場合は4つの予測方法のいずれかを選択するものである。
そうすると、C0成分イントラ予測モード決定部5により決定されるイントラ予測モードとは、イントラ予測のブロックの大きさに関する3種類の予測モードと、ブロックの大きさが決まった後の9つまたは4つの選択肢とを合わせたものであるといえる。
以上から、甲2発明の構成b、b-y、c、dにおいて、上記C0成分イントラ予測モード決定部5によってC0成分イントラ予測モードが決定されることは、本件訂正発明の構成Cの「符号化器は、ルマ・モードを解析し」「ルマ・パーティション及びルマ・モードを選択する」ことに相当する。
(エ)構成C11について
上記(イ-2)のとおり、甲2発明において、Y成分については、マクロブロックが16x16または8x8または4x4のいずれかに分けられるといえ、これは甲2発明が、本件訂正発明の構成C11の「前記ブロック」「を符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション」に対応する構成を備えるといえる。
また、上記(イ-1)のとおり、甲2発明の構成b、b-cbcr、c、dでは、4:2:2Cb/Crイントラ予測において、Cb、Cr成分のマクロブロック相当領域が8x8または4x4に分割されていることから、本件訂正発明の構成C2における「クロマ・パーティション・タイプを設定」することに対応する処理を行うものとはいえる。
ところで、上記(イ-1)のとおり、甲2発明においては、「Cb、Cr成分については」、「Y成分とは個別のC1/C2成分イントラ予測モードが決定され」ることや、Y成分におけるマクロブロックがどのような大きさに分けられるかに応じて、Cb、Cr成分のマクロブロック相当領域がどの大きさに決められるかについての制限はなく、8x8または4x4に分割されていることから、マクロブロックを符号化するために用いられるY成分の大きさとは独立にCb、Cr成分の大きさが決められるといえる。
そうすると、甲2発明においても、本件訂正発明と同様に、「前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション及びクロマ・パーティションを設定」するものとはいえるものの、甲2発明においては、本件訂正発明の構成C11における「前記ブロックまたは一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション(670)に基づいて、クロマ・パーティションを設定し」ているものではないといえる。
以上から、符号化器が選択した、「ルマ・パーティション」であって、「前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション」と、設定される「クロマ・パーティション」に関して、
本件訂正発明における構成C11は、「前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション」に基づいて「クロマ・パーティションを設定し」ているのに対して、
甲2発明は、「前記ブロックまたは一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション(670)に基づいて、クロマ・パーティションを設定し」ているものではない点で相違する。
(オ)構成C3、C31、C32、Dについて
(オ-1)甲2発明は、構成aにおいて特定されるように、マクロブロックの単位で予測を適用して映像圧縮を行うものであること、及び上記(イ-2)のとおり、イントラ予測において、Cb、Cr成分についてはマクロブロック相当領域が4x4または8x8の大きさのブロックに分けられるのに対して、Y成分については、マクロブロックが16x16または8x8または4x4のいずれかに分けられる。
そうすると、甲2発明は、本件訂正発明の構成C3、C31、Dと「イントラ・ルマ・パーティション・タイプ及びクロマ・パーティション・タイプは」「所定のブロック内においてパーティション毎に」「符号化され」ているものであって、「当該所定のブロック単位でパーティション・タイプ決定がなされ」ている点で共通するといえる。
しかしながら、当該「所定のブロック」について、本件訂正発明は「スーパーブロック」であるのに対して、甲2発明は「マクロブロック」である点で相違する。
(オ-2)さらには、甲2発明において、構成c、d、eにあるように、生成されたビットストリームにおいて、クロマフォーマットが4:2:2である場合に、マクロブロックタイプがイントラ予測モードを示す場合は、Y成分のイントラ予測モードと、Cb/Cr成分で共通のイントラ予測モードが、マクロブロックの符号化データに含まれているといえる。
ここで、Y成分のイントラ予測モードとは、上記(ウ)のとおり、C0成分イントラ予測モード決定部5により決定されるイントラ予測モードであって、イントラ予測のブロックの大きさに関する3種類の予測モードと、ブロックの大きさが決まった後の9つまたは4つの選択肢とを合わせたものであるといえる。
同様に、Cb、Cr成分のイントラ予測モードとは、上記(イ-1)のとおり、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6により決定されるものであり、4x4ブロックに分割して予測を行うmode0または8x8のブロックに分割して右向き水平、下向き垂直、右斜め上または左斜め下の方向に予測するmode1、mode2、mode3の4種類の予測モードである。
これらを総合すると、Y成分のイントラ予測モードと、Cb/Cr成分で共通のイントラ予測モードは成分毎に、かつブロック毎に個別にビットストリーム中に存在する、すなわち、成分毎に、かつブロック毎に、独立して符号化されるものである。
また、Y成分のイントラ予測モードと、Cb/Cr成分で共通のイントラ予測モードは、異なるものがあることは明らかである。
そうすると、甲2発明は、本件訂正発明の構成C3、C31、C32と、「イントラ・ルマ・パーティション・タイプ及びクロマ・パーティション・タイプは」「所定のブロック内においてパーティション毎に独立に符号化され」ている点、及び、「ルマ及びクロマは、異なるイントラ予測モードを有し」ている点で共通する。
しかしながら、「イントラ・ルマ・パーティション・タイプ及びクロマ・パーティション・タイプ」が「パーティション毎に独立に符号化され」る際に、どのようなブロック内においてパーティション毎に独立に符号化されるかに関して、(オ-1)と同様に、(オ-2)についても、本件訂正発明は「スーパーブロック内において」パーティション毎に独立に符号化されるのに対して、甲2発明は「マクロブロック内において」パーティション毎に独立に符号化される点で相違する。
(オ-3)(オ-1)(オ-2)をまとめると、「イントラ・ルマ・パーティション・タイプ及びクロマ・パーティション・タイプは」「所定のブロック内においてパーティション毎に」「独立に」「符号化され」ているものであって、「当該所定のブロック単位でパーティション・タイプ決定がなされ」るに際して、「所定のブロック単位」として、本件訂正発明は、スーパーブロック単位で行われるのに対して、甲2発明は、マクロブロック単位で行われる点で相違するといえる。
(カ)構成E、E1について
上記(イ-1)のとおり、甲2発明は「マクロブロックデータに分割され、イントラ予測処理を行って、当該マクロブロックを符号化する」にあたって、「Cb、Cr成分については」、C1/C2成分イントラ予測モード決定部6によって、「Y成分とは個別のC1/C2成分イントラ予測モードが決定され」ることから、本件訂正発明の構成Eと同様に、「符号化器は、クロマモードを選択し」ているといえる。
次に、上記(オ-2)のとおり、甲2発明において、Y成分のイントラ予測モードと、Cb/Cr成分で共通のイントラ予測モードは成分毎に、かつブロック毎に個別にビットストリーム中に存在する、すなわち、成分毎に、かつブロック毎に、独立して符号化されるものであるから、本件訂正発明の構成Eと同様に、「符号化器は、」「ルマ・モード、及び」「クロマ・モードを符号化する」といえる。
さらに、甲2発明において、構成c、d、eにあるように、「Y成分について、イントラ8x8予測モードである場合は、マクロブロック内を4分割した8x8ブロックの単位で整数変換を行い、量子化パラメータ32に従う量子化処理を行い量子化係数データ21を得、それ以外の場合は、まず4x4ブロック単位に整数変換を行い、イントラ16x16予測モードの場合は、各4x4ブロックの変換係数のDC成分のみを集めて4x4ブロックを構成し、アダマール変換を施し、DC成分に対してはこのアダマール変換係数に対して量子化パラメータ32に従う量子化を行い、残りの4x4ブロックのAC成分15個は個別に量子化処理を行い、イントラ16x16予測モードでない場合は、16個の変換係数に対して同時に量子化パラメータ32に従う量子化処理を行うことで、符号化を行う」ことから、本件訂正発明の構成Eと同様に、「ルマ・パーティション」「を符号化する」といえる。
一方、構成E1について、上記(エ)のとおり、甲2発明においては、「Cb、Cr成分については」、「Y成分とは個別のC1/C2成分イントラ予測モードが決定され」ることや、Y成分におけるマクロブロックがどのような大きさに分けられるかに応じて、Cb、Cr成分のマクロブロック相当領域がどの大きさに決められるかについての制限はなく、8x8または4x4に分割されていることから、マクロブロックを符号化するために用いられるY成分の大きさとは独立にCb、Cr成分の大きさが決められるといえる。
そうすると、甲2発明においては、復号器がルマ・パーティション・タイプとクロマ・パーティション・タイプの復号処理を行う場合、ブロックを符号化するために選択された特定のルマ・パーティション・タイプ及び特定のクロマ・パーティション・タイプの両者が復号器に伝達されなければ、各々のパーティション・タイプを復号できないことは明らかである。
そうすると、「前記ブロックを符号化するために選択された特定の」「パーティション・タイプ」を信号により復号器に伝達するにあたり、本件訂正発明は、構成E1のように、「前記特定のルマ・パーティション・タイプのみを信号により復号器に伝達する」のに対して、甲2発明は「前記特定のルマ・パーティション・タイプのみを信号により復号器に伝達する」ものではない点で相違するといえる。
(キ)以上を総合すると、本件訂正発明と甲2発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
A ピクチャ内の少なくとも1つのブロックについてのピクチャ・データを符号化する符号化器を備え、
B 前記ブロックのイントラ・クロマ符号化のために、複数のパーティションタイプがサポートされており、
B1 前記複数のパーティションタイプは、クロマ・パーティション・タイプのセットとルマ・パーティション・タイプのセットを含み、
B2 前記クロマ・パーティション・タイプのセットは、前記ルマ・パーティション・タイプのセットとは異なり、
C 前記符号化器は、ルマ・モードを解析し、ルマ・パーティション及びルマ・モードを選択し、
C11’ 前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション及びクロマ・パーティションを設定し、
C3 イントラ・ルマ・パーティション・タイプ及びクロマ・パーティション・タイプは、
C31’ 所定のブロック内においてパーティション毎に独立に符号化され、
C32 ルマ及びクロマは、異なるイントラ予測モードを有し、
D’ 所定のブロック単位でパーティション・タイプ決定がなされ、
E 前記符号化器は、クロマ・モードを選択し、前記ルマ・パーティション、前記ルマ・モード、及び前記クロマ・モードを符号化する、
F ビデオ符号化装置であって、
E1’ 前記符号化器は、前記ブロックを符号化するために選択された特定のパーティション・タイプを信号により復号器に伝達する、
F ビデオ符号化装置。
(相違点1)
符号化器が選択した、「ルマ・パーティション」であって、「前記ブロック又は一つ以上の近傍のブロックを符号化するために利用される前記選択されたルマ・パーティション」と、設定される「クロマ・パーティション」に関して、
本件訂正発明は、「前記選択されたルマ・パーティション」に基づいて「クロマ・パーティションを設定し」ているのに対して、
甲2発明は、「前記選択されたルマ・パーティションとは独立に、クロマ・パーティションを設定」するものであって、「前記選択されたルマ・パーティションに基づいて、クロマ・パーティションを設定し」ているものではない点。
(相違点2)
「イントラ・ルマ・パーティション・タイプ及びクロマ・パーティション・タイプは」「所定のブロック内においてパーティション毎に」「独立に」「符号化され」ているものであって、「当該所定のブロック単位でパーティション・タイプ決定がなされ」るに際して、「所定のブロック単位」として、
本件訂正発明は、スーパーブロック単位で行われるのに対して、
甲2発明は、マクロブロック単位で行われる点。
(相違点3)
「前記ブロックを符号化するために選択された特定の」「パーティション・タイプ」を信号により復号器に伝達するにあたり、
本件訂正発明は「前記特定のルマ・パーティション・タイプのみを信号により復号器に伝達する」のに対して、
甲2発明は、「前記特定のルマ・パーティション・タイプのみを信号により復号器に伝達する」ものではない点。
イ 相違点についての検討及び判断
事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。
イントラ・ルマ・パーティション・タイプ及びクロマ・パーティション・タイプを「所定のブロック内」においてパーティション毎に独立に符号化されているものであって、「当該所定のブロック単位でパーティション・タイプ決定がなされ」るに際して、「所定のブロック単位」として、スーパーブロック単位で行われる構成をとることは、甲4技術にも示されておらず、さらに例えば甲3技術のような周知技術でもない。
すなわち、甲4技術は、「イントラ予測器は、4×4画素、8×8画素、或いは16×16画素のブロック数個をグループ化したスーパーブロック単位でイントラ予測残差を求める」ものにすぎず、スーパーブロック単位でイントラ予測を行うものではないし、スーパーブロック内におけるパーティション毎に独立に符号化することを示すものでもなければ、スーパーブロック内で独立にパーティション・タイプを決定するものでもない。
そうすると、甲4技術を甲2発明におけるイントラ予測処理を行うための構成に適用しても、C0成分予測残差符号化部18、C1成分予測残差符号化部19、C2成分予測残差符号化部20において、スーパーブロック単位でイントラ予測残差を求めることができるにすぎず、スーパーブロック内におけるパーティション毎に独立に符号化することを示すものでもなければ、スーパーブロック内で独立にパーティション・タイプを決定するものでもない。
また、周知技術である甲3技術は、
・圧縮符号化処理を符号器が実行すること、
・左に隣接するブロックのブロックの予測方向に対応する予測モードと、上に隣接するブロックの予測方向に対応する予測モードを比較するという、複数存在する予測モードの中から最適なものを決定するために行われる予測モードの解析を行うことで、符号化対象ブロックの予測方向に対応する予測モードを予測すること、
・色差(クロマ)信号の予測モードが、輝度(ルマ)信号の予測モードとは独立して選択できること、
・4×4画面内予測では、マクロブロックの16個の輝度ブロックごとに予測モードを符号化すること、
であって、スーパーブロック内におけるパーティション毎に独立に符号化することを示すものでもなければ、スーパーブロック内で独立にパーティション・タイプを決定するものでもないことから、甲2発明に甲4技術を適用し、さらに甲3技術のような周知技術を適用したところで、本件訂正発明と甲2発明との上記相違点2を克服することはできない。
したがって、相違点1、3について検討するまでもなく、本件訂正発明は、当業者であっても、甲2発明及び甲4技術並びに周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件訂正発明についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正発明は、当業者であっても、甲2発明及び甲4技術並びに周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立書における特許異議申立の理由について
特許異議申立書に記載された特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。(特許異議申立書の4(3)申立ての根拠、(4)具体的理由のウ 取消理由1、エ 取消理由2、キ 取消理由5、6 証拠方法の記載)
(1)申立理由1
特許6968024号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許(以下、本件発明1に係る特許を「本件特許1」という。)は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
(2)申立理由2
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と周知技術に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
(3)申立理由3
本件発明1は、甲第2号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許1は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
(4)申立理由4
本件発明1は、甲第2号証に記載された発明と周知技術に記載された発明と周知技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許1は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
(5)申立理由5
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許1は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
(6)証拠方法
ア 甲第1号証:中国特許出願公開第101159874号明細書及び抄録文
イ 甲第2号証:特開2008-172599号公報
ウ 甲第3号証:インプレス標準教科書シリーズ 改訂三版 H.264/AVC教科書、第1版、2009年1月1日発行、株式会社インプレスR&D、pp.86-87、110~117
2.取消理由において採用しなかった特許異議申立理由についての検討
上記1(1)~(5)の特許異議申立理由1~5のうち、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由1、2、5について、以下で検討する。
本件訂正発明と上記「第5 異議申立時に提出された甲号証及び甲号証に記載された発明、技術事項について」の2の(1)の「甲第1号証の記載事項」に基づいて認定した、(2)の「甲1発明」とを対比すると、両者は「第7 取消理由通知についての当審の判断」の「1 本件訂正発明について」の「ア 対比」の(キ)において示した相違点のうち、少なくとも(相違点2)~(相違点3)を有する。
そうすると、本件訂正発明と甲1発明については、少なくとも上記(相違点2)~(相違点3)があることから、本件訂正発明と甲1発明とは同一の発明ではなく、上記申立理由1は理由がない。
また、本件訂正発明は、「第7 取消理由通知についての当審の判断」の「1 本件訂正発明について」の「イ 相違点についての検討及び判断」において示したのと同様に、当業者であっても、甲1発明及び甲4技術並びに甲3技術のような周知技術を考慮しても、相違点2を克服することはできないものといえる。
すなわち、本件訂正発明は、当業者であっても、甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではなく、上記申立理由2は理由がない。
さらに、上記「イ 相違点についての検討及び判断」において示したように、甲1発明や甲3技術のような周知技術に加えて、甲2発明や甲4技術を考慮しても、相違点2を克服することはできないものといえる。
したがって、本件訂正発明は、当業者であっても、甲1発明、甲2発明及び甲4技術並びに周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではなく、上記申立理由5も理由がない。
第9 令和5年2月22日に提出された特許異議申立人による意見書についての検討
1 訂正要件を具備しないことについて
特許異議申立人は令和5年2月22日に意見書を提出し、訂正事項3に係る訂正は訂正要件を具備しないとの主張(意見書第2頁下から4行~第22頁最終行、第33頁下から8~4行)を行っている。
そこで、上記主張について検討する。
上記「第2 訂正の適否についての判断」の3(2)アaのとおり、本件特許明細書【0029】の「本明細書において使用される用語「スーパーブロック」は、1つ以上のマクロブロックを指す」という記載を「本明細書において使用される用語「スーパーブロック」は、複数のマクロブロックを指す」と訂正することは、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
2 取消理由について
特許異議申立人は、仮に本件訂正が訂正要件を具備したとしても、取消理由を有する旨の主張(意見書第23頁第17行~第33頁第19行)を行っている。
しかしながら、上記第7の1のイ及び第8の2のとおり、甲第4号証の記載から導かれる甲4技術は「イントラ予測器は、4×4画素、8×8画素、或いは16×16画素のブロック数個をグループ化したスーパーブロック単位でイントラ予測残差を求める」ことにすぎず、甲4技術を甲2発明に適用しても、本件訂正発明と甲2発明との相違点2を克服するものではない。
したがって、本件訂正発明は、当業者であっても、甲1発明及び甲2発明、甲4技術並びに甲3技術のような周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおり、上記特許異議申立人の意見は採用できない。
第10 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由1~5及び証拠によっては、本件訂正発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700422