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特許異議申立

2016-701156

軋み音を低減した接触用部品

審判番号
2016-701156
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-078458外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年12月19日
審決日
2017年03月13日
公報発行日
2017年05月26日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5937716号発明「軋み音を低減した接触用部品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5937716号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5937716号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成22年4月7日に出願した特願2010-88620号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年4月7日に新たな特許出願としたものであって、平成28年5月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、同年12月19日付け(受理日:同年12月21日)で特許異議申立人 千阪 実木(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕100質量部に、ASTM D445-46T又はJIS 8803によるウベローデ粘度計により測定した25℃における動粘度が200~100,000cStであるシリコーンオイル〔B〕0.1~8質量部を配合してなり、 該ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕は、ジエン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔b1〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔b2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕を含有し、 前記ジエン系ゴム質重合体〔a1〕及び前記エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕の合計量が、前記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕全体を100質量%として5~30質量%であり、 該ジエン系ゴム質重合体〔a1〕と該エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕の質量比〔a1〕:〔a2〕が10~66:90~34であり、 前記ビニル系単量体〔b1〕及び〔b2〕が芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む 熱可塑性樹脂組成物からなり、該熱可塑性樹脂組成物又は他の熱可塑性樹脂からなる他の部材と接触し擦れ合う部品に使用されることを特徴とする接触用部品の製造方法。 【請求項2】 ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕が、更に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体〔b3〕の(共)重合体〔C〕を含有してなる請求項1に記載の接触用部品の製造方法。 【請求項3】 エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕のエチレン:α-オレフィンの質量比が5~95:95~5である請求項1又は2に記載の接触用部品の製造方法。 【請求項4】 エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕が、エチレン・プロピレン共重合体である請求項1乃至3の何れか1項に記載の接触用部品の製造方法。 【請求項5】 他の熱可塑性樹脂がポリカーボネート/ABSである請求項1乃至4の何れか1項に記載の接触用部品の製造方法。」 第3 特許異議申立て理由の概要 特許異議申立人は、証拠として、原出願の出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である以下の文献を提出し、おおむね次の取消理由を主張している。 (理由)本件特許発明1ないし5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 甲第1号証.特開2000-119477号公報 甲第2号証.特開2002-20574号公報 第4 特許異議申立て理由についての判断 1 甲第1及び2号証の記載等 (1)甲第1号証の記載及び甲1発明 ア 甲第1号証の記載 甲第1号証には、次の記載がある。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)エチレン/炭素数3~20のα-オレフィン/非共役ジエン=5~95/95~5/0~20重量%からなる融点(Tm)が0℃以上のゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体の群から選ばれた少なくとも1種からなる単量体成分をグラフト重合して得られ、かつ、グラフト率が10~100%であり、メチルエチルケトン可溶分の固有粘度〔η〕が0.2~0.8dl/gであるゴム変性熱可塑性樹脂1~99重量%、ならびに(B)ゴム質重合体(b)〔ただし、上記ゴム質重合体(a)を除く〕の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体の群から選ばれた少なくとも1種からなる単量体成分をグラフト重合して得られるグラフト重合体を必須成分とするゴム強化スチレン系樹脂99~1重量%〔ただし、(A)+(B)=100重量%〕の合計量100重量部に対し、(C)ポリオレフィン系ワックスおよび/またはシリコーンオイル0.1~7重量部を配合してなるゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物(I)。」 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、摺動性、耐衝撃性、成形品表面外観、さらには難燃性に優れたゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、ブタジエンゴムでスチレン-アクリロニトリル樹脂(AS樹脂)を強化したABS樹脂やアクリルゴムでAS樹脂を強化したAAS樹脂などのゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂は、耐衝撃性、成形性、成形品表面外観および耐熱性に優れた材料として知られている。しかしながら、これらの材料は、摺動性が劣るので、ゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂の優れた特性を保持しつつ、さらに摺動性をも要求される機器、機構などの部材への展開はできなかった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の技術の課題を背景になされたもので、特定のエチレン-α-オレフィン系ゴムの存在下に特定量のビニル系単量体をグラフト重合して得られる特定の物性を有するゴム変性熱可塑性樹脂を配合した、摺動性、耐衝撃性、成形品表面外観、耐傷つき性、さらには難燃性のバランスに優れたゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。」 ・「【0010】ゴム質重合体(a)の配合割合は、(A)ゴム変性熱可塑性樹脂全体に対し、5~40重量%が好ましく、さらに好ましくは10~35重量%である。」 ・「【0031】本発明のゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物(I)中の(A)ゴム変性熱可塑性樹脂の配合割合は、(A)成分および(B)成分の合計量を100重量%として、1~99重量%、好ましくは3~70重量%、さらに好ましくは5~50重量%である。」 ・「【0034】(B)ゴム強化スチレン系樹脂中のゴム質重合体(b)の配合割合は、ゴム質重合体(b)および単量体成分の合計量に対し、好ましくは5~50重量%、さらに好ましくは10~40重量%である。」 ・「【0044】本発明のゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物(I)中の(B)ゴム強化スチレン系樹脂の配合割合は、上記(A)成分および(B)成分の合計量を100重量%として、1~99重量%、好ましくは30~97重量%、さらに好ましくは50~95重量%である。」 ・「【0049】(C)成分のシリコーンオイルの23℃での溶融粘度は、10~50,000CPであり、好ましくは30~30,000CP、さらに好ましくは50~20,000CPである。シリコーンオイルの溶融粘度が10CP未満では、得られる樹脂組成物の成形品表面外観低下、摺動試験におけるトルク変動大などの摺動性に問題が生じる。一方、シリコーンオイルの溶融粘度が50,000CPを超えると、樹脂組成物中のシリコーンオイルの樹脂への均一分散性が悪くなり、樹脂組成物の摺動性、耐衝撃性、成形品表面外観などが悪くなる。」 ・「【0078】 【実施例】以下、実施例を挙げ本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何等制約されるものではない。なお、実施例中、部および%は特に断らない限り重量基準である。また、実施例中の各種評価は、次のようにして測定した値である。」 ・「【0083】本発明の実施例および比較例に使用される各成分は次のとおりである。 参考例1 ゴム質重合体(a-1)の調製 窒素置換した20リットルオートクレーブに精製トルエン8リットル、精製トルエン40ml中に溶解したアルミニウム原子換算で60mmolのメチルアルミノキサンを加え、40℃に昇温した後、エチレンを3.3リットル/Hr、プロピレンを1.9リットル/Hrで連続的に供給した。次いで、精製トルエン12ml中に溶解したジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド12μmolを添加して重合を開始した。反応中は温度を40℃に保ち、連続的にエチレン、プロピレンを供給しつつ、20分間反応させた。その後、メタノールを添加して反応を停止させ、水蒸気蒸留にてクラム状ゴム質重合体(a-1)を回収した。(a-2)~(a-6)も、上記と同様に重合して得た。表1に得られた(a-1)~(a-6)の組成および物性を示す。これらを、下記(A)ゴム変性熱可塑性樹脂の製造に使用した。 【0084】 【表1】 【0085】参考例2 (A)ゴム変性熱可塑性樹脂(A-1)の調製 リボン型攪拌翼を備えた内容積10リットルのステンレス製オートクレーブに、ゴム質重合体(a-1)を20部、スチレンを55部、アクリロニトリルを25部、トルエンを100部仕込み、攪拌後、昇温しゴム質重合体(a-1)を完全溶解し均一溶液を得た。t-ドデシルメルカプタン0.1部とベンゾイルパーオキサイド0.5部、ジクミルパーオキサイド0.1部を添加し、95℃一定になるように制御しながら攪拌回転数200rpmにて重合反応を行わせた。反応開始6時間後から1時間を要して120℃まで昇温し、さらに2時間反応を行って終了した。重合転化率は97%であった。100℃まで冷却後、2、2-メチレンビス-4-メチル-6-ブチルフェノール0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し細かく粉砕した後、40mmφベント付き押し出し機(220℃、700mmHg真空)にて実質的に揮発分を留去するとともに重合体をペレット化した。(A-2)~(A-10)も、上記と同様に溶液重合で得た。表2~3に、得られた(A-1)~(A-10)の組成および物性を示す。これらを、ゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物の製造に使用した。 【0086】 【表2】 」 ・「【0088】参考例3 ゴム質重合体(b)の調製 ポリブタジエンを乳化重合してゴム質重合体(b)を得た。得られたゴム質重合体(b)のガラス転移温度(Tg)は-80~-100℃、平均粒子径は、0.25μmであった。これを下記(B)ゴム強化スチレン系樹脂に使用した。 参考例4 (B)ゴム変性スチレン系樹脂の調製 上記ゴム質重合体(b)40部の存在下に、スチレン43部、アクリロニトリル17部を乳化重合し(B)ゴム変性スチレン系樹脂を得た。得られた(B)ゴム変性スチレン系樹脂のグラフト率は55%、固有粘度〔η〕は0.55dl/gであった。これを、ゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物の製造に使用した。 【0089】参考例5 (B′)共重体の調製 スチレン72部、アクリロニトリル28部を溶液重合し、(B′)共重合体を得た。得られた(B′)共重合体の固有粘度〔η〕は、0.55dl/gであった。これを、(I)、(II)および(III)のゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物に配合する共重合体(B′)として使用した。 参考例6 (C)成分の調製 ポリオレフィン系ワックス(C-1)として、酸化変性ポリエチレンワックス(商品名;サンワックスE-250P、三洋化成(株)製)を使用した。(C-1)の140℃での溶融粘度は、140CPであった。シリコーンオイル(C-2)として、シリコーンオイル(商品名;SH200-100CS、東芝シリコーン(株)製)を使用した。(C-2)の23℃での溶融粘度は、100CPであった。」 ・「【0093】実施例1~9、比較例1~18 表4~6に示す配合処方で、一軸押し出し機のバレル設定温度200℃で溶融混練りし、樹脂組成物をペレット化した。得られたペレットを充分乾燥した後、射出成形機を用いてシリンダー温度200℃、金型温度50℃で試験片を作成し、上記評価方法で評価した。評価結果を、表4~6に示す。 【0094】 【表4】 」 ・「【0098】 【発明の効果】本発明のゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物は、摺動性、耐衝撃性、成形品表面外観および難燃性に優れており、樹脂組成物の新たな用途への展開を広げることが可能であり、例えばOA、家電分野、電気・電子分野、雑貨分野、サニタリー分野、自動車分野などの各種ハウジング、ケース、パーツ、トレー、フレーム、シャーシなどの材料に有用である。」 イ 甲1発明 甲第1号証には、エチレン及びプロピレンからなるゴム質重合体(a-1)及びポリブタジエンを乳化重合して得られたゴム質重合体(b)の合計量が、(A-1)ゴム変性熱可塑性樹脂、(B)ゴム変性スチレン系樹脂、及び(B′)共重合体の合計を100重量%とした場合、どの程度の割合かは記載されておらず、また、ポリブタジエンを乳化重合して得られたゴム質重合体(b)とエチレン及びプロピレンからなるゴム質重合体(a-1)の質量比も記載されていないが、甲第1号証の【0008】、【表2】及び【表4】に基づき、甲第1号証の実施例5に関して、計算すると、前者は14重量%であり、後者は71:29である。 したがって、これらに基づき、上記アを整理すると、甲第1号証には、その実施例5をもとにした、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「(A-1)ゴム変性熱可塑性樹脂、(B)ゴム変性スチレン系樹脂、及び(B′)共重合体の合計100重量部に、 23℃での溶融粘度が100CPであるシリコーンオイル(C-2)0.5重量部を配合してなり、 (B)ゴム変性スチレン系樹脂は、ポリブタジエンを乳化重合して得られたゴム質重合体(b)の存在下にスチレン及びアクリロニトリルを乳化重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂であり、(A-1)ゴム変性熱可塑性樹脂は、エチレン及びプロピレンからなるゴム質重合体(a-1)の存在下にスチレン及びアクリロニトリルを重合して得られたゴム変性熱可塑性樹脂であり、 エチレン及びプロピレンからなるゴム質重合体(a-1)及びポリブタジエンを乳化重合して得られたゴム質重合体(b)の合計量が、(A-1)ゴム変性熱可塑性樹脂、(B)ゴム変性スチレン系樹脂、及び(B′)共重合体の合計を100重量%として14重量%であり、 ポリブタジエンを乳化重合して得られたゴム質重合体(b)とエチレン及びプロピレンからなるゴム質重合体(a-1)の質量比が71:29であり、 ポリブタジエンを乳化重合して得られたゴム質重合体(b)及びエチレン及びプロピレンからなるゴム質重合体(a-1)の存在下に重合させる単量体はスチレン及びアクリロニトリルを含む ゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物であり、 摺動性に優れる 樹脂組成物の製造方法。」 (2)甲第2号証の記載 甲第2号証には、次の記載(以下、総称して「甲第2号証に記載された事項」という。)がある。 ・「【0002】 【従来の技術】ABS樹脂、ASA樹脂は非晶性プラスチックであるため、結晶性プラスチックであるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタールなどの樹脂と比較すると摩擦係数が高く、自動車内のエアコン吹き出し口やカーステレオのボタン等のように、他樹脂とかん合する場合に、摩擦係数が大きいために図1に示されるようなスティックスリップ現象が発生し、異音(軋み音ともいう)が発生することもよく知られている。スティックスリップ現象とは、2つの物体が擦れ合う時に発生するもので、図2(a)のモデルで示されるように駆動速度Vで動く台の上にバネでつながれた物体Mが置かれた場合、Mは先ず静摩擦力の作用によりVで移動する台とともに図2(b)のように右方向に移動する。そしてバネによって元に戻されようとする力が、この静摩擦力と等しくなったとき、MはVとは逆の方向に滑り出す。このときに、Mは今度は動摩擦力を受けることになるので、バネの力とこの動摩擦力が等しくなった図2(c)の時点で滑りが止まり、すなわち駆動台に付着することになり、再びVと同じ方向に移動することになる(図2(d))。これをスティックスリップ現象といい、図1に示されるように静摩擦係数μsと、ノコギリ波形下端のμlの差のΔμが大きいと、きしみ音の発生原因となる。また、動摩擦係数はμsとμlの中間になる。特にグリシジル(メタ)アクリレート変成ゴム強化スチレン系樹脂のような成形体の表面が艶消し性を有する樹脂は、その独特の樹脂表面性のために、摩擦係数が特に大きく異音がよく発生することも知られている。 【0003】このような問題を改善すべく、ABS樹脂の摩擦係数を低下させるために、界面活性剤などを添加し自己潤滑性を向上させ、摺動性の改善を図る技術が種々が提案されている。たとえば、特公昭63-56267号公報には、ポリカーボネート樹脂およびABS樹脂かならなる樹脂に有機ケイ素化合物を配合する技術が、また特許第2798396号公報には、ABS樹脂に難燃剤、難燃助剤およびシリコーンオイルを配合しる技術が、また特許第2688619号公報には、ABS樹脂、MBS樹脂およびHIPS(ハイインパクトポリスチレン)樹脂にシリコーンオイルを配合する技術が、また特許第2659467号公報には、ABS樹脂にアルカンスルホネート系界面活性剤を配合する技術が、さらには特開平10-316833号公報には、ABS樹脂にエポキシ基、カルボキシル基および酸無水物基から選ばれる少なくとも1種の反応基をを含有する変性ポリオルガノシロキサンを配合し、撥水性を高め浴室内やトイレ内の水回り部品に使用する技術が開示されている。 【0004】しかしながら、市場の厳しい要求に対して、前記のものはいずれも摩擦係数が高く、まだ異音が発生し不満足なものである。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】前記、艶消しABS樹脂、艶消しASA樹脂において、機械的強度、成形加工性、低温耐衝撃性をあまり低下させることなく、摩擦係数を低減し、自動車のエアコン吹き出し口やカーステレオ等の、樹脂-樹脂で勘合している部分の摩擦係数及びΔμを低減させ、樹脂摺動面の滑り性を改善することができる技術が要求されている。」 ・「【0021】 ・・・(略)・・・また、本発明で用いられるポリオルガノシロキサン構造を持つ未変性シリコーンオイルの動粘度は特に制限はないが、10~100000cSt、さらに100~10000cStのものが好ましい。具体的なポリオルガノシロキサンとして、ポリジメチルシロキサンやポリメチルフェニルシロキサンが挙げられ、公知の方法で製造される。」 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「(A-1)ゴム変性熱可塑性樹脂、(B)ゴム変性スチレン系樹脂、及び(B′)共重合体」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕」に相当するから、甲1発明における「(A-1)ゴム変性熱可塑性樹脂、(B)ゴム変性スチレン系樹脂、及び(B′)共重合体の合計100重量部」は、本件特許発明1における「ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕100質量部」に相当する。 甲1発明における「シリコーンオイル(C-2)」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「シリコーンオイル〔B〕」に相当するから、甲1発明における「シリコーンオイル(C-2)0.5重量部」は、本件特許発明1における「シリコーンオイル〔B〕0.1~8質量部」に相当する。 甲1発明における「ポリブタジエンを乳化重合して得られたゴム質重合体(b)」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「ジエン系ゴム質重合体〔a1〕」に相当するから、甲1発明における「ポリブタジエンを乳化重合して得られたゴム質重合体(b)の存在下にスチレン及びアクリロニトリルを乳化重合して得られたゴム変性スチレン系樹脂」である「(B)ゴム変性スチレン系樹脂」は、本件特許発明1における「ジエン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔b1〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕」に相当する。 甲1発明における「エチレン及びプロピレンからなるゴム質重合体(a-1)」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕」に相当するから、甲1発明における「エチレン及びプロピレンからなるゴム質重合体(a-1)の存在下にスチレン及びアクリロニトリルを重合して得られたゴム変性熱可塑性樹脂」である「(A-1)ゴム変性熱可塑性樹脂」は、本件特許発明1における「エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔b2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕」に相当する。 上記相当関係を踏まえると、甲1発明における「エチレン及びプロピレンからなるゴム質重合体(a-1)及びゴム質重合体(b)の合計量が、(A-1)ゴム変性熱可塑性樹脂、(B)ゴム変性スチレン系樹脂、及び(B′)共重合体の合計を100重量%として14重量%」であることは、本件特許発明1における「前記ジエン系ゴム質重合体〔a1〕及び前記エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕の合計量が、前記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕全体を100質量%として5~30質量%」に相当する。 上記相当関係を踏まえると、甲1発明における「ポリブタジエンを乳化重合して得られたゴム質重合体(b)及びエチレン及びプロピレンからなるゴム質重合体(a-1)の存在下に重合させる単量体はスチレン及びアクリロニトリルを含む」は、本件特許発明1における「前記ビニル系単量体〔b1〕及び〔b2〕が芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む」に相当する。 甲1発明における「ゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「熱可塑性樹脂組成物」に相当する。 甲1発明における「ゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物」は「摺動性に優れる」という効果を発揮するため、接触用部品であることは明らかである。 したがって、両者は、次の点で一致する。 「ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕100質量部に、 シリコーンオイル〔B〕0.1~8質量部を配合してなり、 該ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕は、ジエン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔b1〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔b2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕を含有し、 前記ジエン系ゴム質重合体〔a1〕及び前記エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕の合計量が、前記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕全体を100質量%として5~30質量%であり、 前記ビニル系単量体〔b1〕及び〔b2〕が芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む 熱可塑性樹脂組成物からなる 接触用部品の製造方法。」 そして、次の点で相違する。 <相違点1> 「シリコーンオイル〔B〕」に関して、本件特許発明1においては、「ASTM D445-46T又はJIS 8803によるウベローデ粘度計により測定した25℃における動粘度が200~100,000cSt」であるのに対し、甲1発明においては、「23℃での溶融粘度が100CP」である点。 <相違点2> 「ジエン系ゴム質重合体〔a1〕とエチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体〔a2〕の質量比」に関して、本件特許発明1においては、「10~66:90~34」であるのに対し、甲1発明においては、「71:29」である点。 <相違点3> 「接触用部品」に関して、本件特許発明1においては、「該熱可塑性樹脂組成物又は他の熱可塑性樹脂からなる他の部材と接触し擦れ合う部品に使用される」ものであるのに対して、甲1発明においては、そのような使用の用途の明示がない点。 (2)判断 事案に鑑み、相違点2及び3について判断する。 ア 相違点2について 相違点2について検討する。 甲第1号証には、ジエン系ゴム質重合体とエチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体の質量比に関し、特に着目し、当該質量比を所定の数値範囲となるようにするとの記載はない。 この点に関して、特許異議申立人は、甲第1号証の【0010】、【0031】、【0034】及び【0044】等の記載から、計算により、ジエン系ゴム質重合体とエチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体の質量比として、22~98:78~1を求め、甲第1号証には、この数値範囲が開示されており、この数値範囲内から適宜選択し、「71:29」と極めて近似する「10~66:90~34」の範囲内とすることは、設計的事項に過ぎず、当業者にとって容易である旨主張している。 しかし、甲第1号証においては、ジエン系ゴム質重合体とエチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体の質量比は、あくまでも計算により導かれた値としてのものに留まるものであって、その値は、甲1発明の根拠となる実施例5では、71:29であり、それ以外の実施例1ないし4及び6ないし9においても、ジエン系ゴム質重合体の質量比はより大きくなっており(本件特許の審査において、下記平成28年4月5日に提出された意見書中の表によると、実施例1は、85.7:14.3、実施例2ないし4は、71.4:28.6、実施例6及び9は、83.3:16.7、実施例7及び8は、80.6:19.4である。)、ジエン系ゴム質重合体の質量比が66以下であるとしたものは記載されていないし、当該質量比に着目すべきであるとの示唆もない。 したがって、甲第1号証には、ジエン系ゴム質重合体とエチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体の質量比として、「71:29」に代えて、「10~66:90~34」とする動機付けとなる記載はない。 また、甲第2号証にも、ジエン系ゴム質重合体とエチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体の質量比に関する記載はない。 よって、甲1発明において、甲第2号証に記載された事項を考慮しても、ジエン系ゴム質重合体とエチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体の質量比として、「71:29」に代えて、「10~66:90~34」として、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ・平成28年4月5日に提出された意見書中の表 平成28年4月5日に提出された意見書には、次の表が記載されている。 イ 相違点3について 相違点3について検討する。 用途に関して、甲第1号証には、「従来、従来、ブタジエンゴムでスチレン-アクリロニトリル樹脂(AS樹脂)を強化したABS樹脂やアクリルゴムでAS樹脂を強化したAAS樹脂などのゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂は、耐衝撃性、成形性、成形品表面外観および耐熱性に優れた材料として知られている。しかしながら、これらの材料は、摺動性が劣るので、ゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂の優れた特性を保持しつつ、さらに摺動性をも要求される機器、機構などの部材への展開はできなかった。」(【0002】)及び「本発明のゴム変性スチレン系熱可塑性樹脂組成物は、摺動性、耐衝撃性、成形品表面外観および難燃性に優れており、樹脂組成物の新たな用途への展開を広げることが可能であり、例えばOA、家電分野、電気・電子分野、雑貨分野、サニタリー分野、自動車分野などの各種ハウジング、ケース、パーツ、トレー、フレーム、シャーシなどの材料に有用である。」(【0098】)と記載されていることから、甲1発明は、「摺動性をも要求される機器、機構などの部材」への展開を想定するものであり、具体的には、「OA、家電分野、電気・電子分野、雑貨分野、サニタリー分野、自動車分野などの各種ハウジング、ケース、パーツ、トレー、フレーム、シャーシ」への展開を想定するものといえる。 しかし、甲第1号証には、他の部材と接触し擦れ合う部品に使用されることは記載されていないし、それを示唆する記載もない。また、「摺動性をも要求される機器、機構などの部材」が他の部材と接触し擦れ合う部品のことであることは、原出願の出願時の技術常識であったともいえないし、摺動性に優れることだけでは、必ずしも他の部材と接触し擦れ合うことにより発生する軋み音を低減することにはならない。 さらに、甲第2号証には、「自動車のエアコン吹き出し口やカーステレオ等の、樹脂-樹脂で勘合している部分の摩擦係数及びΔμを低減させ、樹脂摺動面の滑り性を改善することができる技術が要求されている。」(【0005】)等の記載があるが、甲1発明のような特定の組成の熱可塑性樹脂組成物を他の部材と接触し擦れ合う部品に使用することの動機付けとなる記載はない。 したがって、甲1発明において、甲第2号証に記載された事項を考慮しても、「接触用部品」の使用に係る用途を「該熱可塑性樹脂組成物又は他の熱可塑性樹脂からなる他の部材と接触し擦れ合う部品に使用される」ものとして、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 3 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 4 むすび したがって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しない。 第5 結語 したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-701156

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