特許異議申立
2016-701128
粘接着剤用ブロック共重合体組成物及び粘接着剤組成物
- 審判番号
- 2016-701128
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-526884外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月09日
- 審決日
- 2017年09月14日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5942103号発明「粘接着剤用ブロック共重合体組成物及び粘接着剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5942103号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第5942103号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5942103号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)7月18日(優先権主張 平成24年7月25日 日本国)の国際出願に基づくものであり、平成28年6月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人奥村安記子(以下、「異議申立人」という)により特許異議の申立てがされ、平成29年3月8日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月9日に意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、異議申立人からは意見書の提出がなかったものである。
第2 訂正の適否
上記平成29年5月9日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。
1 訂正事項
特許請求の範囲の請求項1に「前記成分(a)に対する前記成分(b)の数平均分子量比が2.0~4.0である、粘接着剤用ブロック共重合体組成物」とあるのを、
「前記成分(a)に対する前記成分(b)の数平均分子量比が2.0~4.0であり、前記共役ジエン単量体単位が1,3-ブタジエン単位である粘接着剤用ブロック共重合体組成物」と訂正する。
特許請求の範囲の請求項2~8はそれぞれ直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、上記請求項1の訂正と連動して同じように訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項は、成分(a)及び成分(b)のブロック共重合体に含有される「共役ジエン単量体単位」を、願書に添付した明細書の段落【0027】の「成分(a)、(b)を構成する重合体ブロックBの共役ジエン化合物は、共役二重結合を有するジオレフィンであれば特に限定されないが、具体的には、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。このなかでも、共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。」との記載に基づき、「1,3-ブタジエン単位」と限定するものであって、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない
(2)上記訂正事項は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(3)よって、上記訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし8に係る発明(以下、請求項1に係る発明を項番に対応して「本件発明1」、「本件発明1」に対応する特許を「本件特許1」などどいい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
成分(a):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、数平均分子量が10,000以上、60,000以下である水添されていないブロック共重合体:50質量%以上、90質量%以下と、
成分(b):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、数平均分子量が120,000を超えて、200,000以下である水添されていないブロック共重合体:10質量%以上、50質量%以下と、を含み、
ブロック共重合体組成物における前記成分(a)及び前記成分(b)の前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が25~50質量%であり、
15質量%トルエン溶液における粘度が10~40mPa・sであり、
前記成分(a)に対する前記成分(b)の数平均分子量比が2.0~4.0であり、
前記共役ジエン単量体単位が1,3-ブタジエン単位である
粘接着剤用ブロック共重合体組成物。
【請求項2】
前記成分(a)は、式(A-B)によって表されるジブロック共重合体であり、
前記成分(b)は、式(A-B)3X(Xは、カップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示す。)によって表される3分岐ブロック共重合体である、
請求項1に記載の粘接着剤用ブロック共重合体組成物。
【請求項3】
前記成分(a)に対する前記成分(b)の前記数平均分子量比が2.3~3.6である、請求項1又は2に記載の粘接着剤用ブロック共重合体組成物。
【請求項4】
前記成分(a):80質量%を超えて、90質量%以下と、
前記成分(b):10質量%以上、20質量%未満と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘接着剤用ブロック共重合体組成物。
【請求項5】
前記成分(a):50質量%以上、80質量%以下と、
前記成分(b):20質量%以上、50質量%以下と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘接着剤用ブロック共重合体組成物。
【請求項6】
前記成分(b)の数平均分子量が130,000以上、200,000以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘接着剤用ブロック共重合体組成物。
【請求項7】
前記成分(b)の数平均分子量が160,000以上、200,000以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の粘接着剤用ブロック共重合体組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の粘接着剤用ブロック共重合体組成物:100質量部と、
粘着付与剤:100~400質量部と、
軟化剤:50~150質量部と、
を、含有する、粘接着剤組成物。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし8に係る発明に対して平成29年3月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1ないし8に係る発明は、いずれも下記甲第1号証に記載された発明であるか、下記甲第1号証に記載された発明及び下記甲第2号証、下記甲第3号証に記載された周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるか、同法同条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由」という。)。
甲第1号証:特開平10-130349号公報
甲第2号証:国際公開第2005/075555号
甲第3号証:特開2004-238548号公報
以下、各甲号証を、単に、「甲1」などという。
第5 当審の判断
1 甲1~甲3に記載の事項
(1)甲1(特開平10-130349号公報)
(1-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式(I):(A-B)nX (I)
(式中、Aは芳香族ビニル単量体の重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックであり、Xは4官能性またはそれ以上の多官能性カップリング剤の残基であり、nは4以上の整数である)で表わされる4以上の分枝をもつ分枝体成分を5~50重量%含有し、
下記一般式(II):
A′-B (II)
(式中、A′はAと同一または異なる芳香族ビニル単量体の重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックであるで表わされるジブロック体成分を50~95重量%含有してなる重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体。
【請求項2】 有機リチウム開始剤と芳香族ビニル単量体とを接触させて、重合活性末端を有する芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAを生成し、次いで、イソプレンを添加して、重合活性末端を有するイソプレンの重合体ブロックBが芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAに直接結合したA-Bブロック共重合体を生成せしめ、次いで、少くとも4官能性のカップリング剤を添加して、A-Bブロック共重合体の一部を上記式(I)で表わされる4以上の分枝をもつ分枝体成分に変えることを特徴とする請求項1記載の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体を製造する方法。
【請求項3】 請求項1記載の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体と粘着付与樹脂とを含んでなることを特徴とする粘接着剤組成物。」
(1-2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ホットメルト接着剤その他の粘接着剤として有用な芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体、その製造方法、およびこのブロック共重合体を含む粘接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から粘接着剤組成物のベースポリマーとしてポリスチレン-ポリイソプレンブロック共重合体をはじめとする各種のブロック共重合体が用いられており、特に、ホットメルト接着剤組成物のベースポリマーとしてスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を用いることが知られている。
【0003】使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの製造においては、スパイラルスプレーなどの手段によって熱可塑性樹脂シートや熱可塑性繊維不織布などにホットメルト接着剤を適用することが行われているが、ポリエチレンシートなどの被着体の焼け防止およびホットメルト接着剤の劣化防止などの見地から低粘度低適用温度のホットメルト接着剤が望まれている。ホットメルト接着剤に望まれる粘度は概して150℃において5,000cps以下である。従来、このような低粘度特性を有し、且つ適性な剥離接着力および剪断接着破壊温度(SAFT)を示すホットメルト接着剤用スチレン-イソプレンブロック共重合体は知られていなかった。
【0004】米国特許第5,399,627号明細書には、ポリスチレン-ポリイソプレンジブロック共重合体の末端に少量のポリブタジエンブロックを結合させてから4官能カップリング剤にてカップリングさせた、主成分の4分枝体と未反応のジブロック成分とからなるスチレン-イソプレンブロック共重合体が開示されている。このブロック共重合体は未反応のジブロック成分の含有量が29重量%以下と低く、ホットメルト接着剤として使用した際の剥離接着力は決して高いものではなかった。
【0005】また、特開平1-266156号公報には、ポリスチレン-ポリイソプレンジブロック共重合体を開始剤と等当量以上の4官能カップリング剤と反応させた3分枝の分枝状成分と未反応のジブロック成分とからなるブロック共重合体が開示されている。しかしながら、このブロック共重合体から調製される接着剤は剥離接着力および剪断接着破壊温度が満足できるものではなかった。さらに、同公報には、多量のポリスチレン-ポリイソプレンジブロック体と少量の3分枝体からなるスチレン-イソプレンブロック共重合体が例示されている。しかしながら、この共重合体を用いた接着剤は、剪断接着破壊温度が満足できるものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ホットメルト接着剤に要求される種々の特性、特に、低粘度低適用温度を有し、しかも、剥離接着力と剪断接着破壊温度とが良好にバランスされ、且つ高い値を示すホットメルト接着剤などの粘接着剤として有用なブロック共重合体およびその製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、低粘度低適用温度を有し、しかも、剥離接着力と剪断接着破壊温度とが良好にバランスされ、且つ高い値を示すホットメルト接着剤などの粘接着剤として有用な粘接着剤組成物を提供することにある。」
(1-3)「【0013】分枝体成分における芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAの割合は、格別限定されるものではないが、本発明のブロック共重合体全体中の芳香族ビニル単量体の重合体ブロックの含有量が10~50重量%、好ましくは25~50重量%、より好ましくは35~45重量%となることが望ましく、そのためには、分枝体成分中における芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAの含有量も10~50重量%、好ましくは25~50重量%、より好ましくは35~45重量%程度であることが望ましい。芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAの相対的割合が過小であると剪断接着破壊温度が低下し、また、この割合が過大であると剥離接着力が低下する。
【0014】分枝体成分の分子量は格別限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)として、本発明のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000、好ましくは50,000~250,000、より好ましくは80,000~150,000となるように適宜選択される。」
(1-4)「【0018】ジブロック体成分の分子量は格別限定されないが、GPCにより測定されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)として、本発明のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が通常3,000~250,000、好ましくは15,000~200,000、より好ましくは20,000~150,000となる範囲で適宜選定される。」
(1-5)「【0024】(5)製法
本発明の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体を製造する方法は、格別限定されるものではないが、先ず、重合活性末端を有するイソプレンの重合体ブロックBが芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAに直接結合したA-Bジブロック共重合体を調製し、次いで、A-Bジブロック共重合体の一部をカップリングさせて4つ以上の分枝をもつブロック共重合体とすることによって、4つ以上の分枝をもつ分枝体成分とジブロック体成分とを一時に得る方法が好ましい。すなわち、好ましい製造方法は、有機リチウム開始剤と芳香族ビニル単量体とを接触させて、重合活性末端を有する芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAを生成し、次いで、イソプレンを添加して、重合活性末端を有するイソプレンの重合体ブロックBが芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAに直接結合したA-Bブロック共重合体を生成せしめ、次いで、少くとも4官能性のカップリング剤を添加して、A-Bブロック共重合体の一部を上記式(I)で表わされるブロック共重合体に変えることを特徴とする方法である。」
(1-6)「【0044】実施例1
ブロック共重合体の調製
50リットルの耐圧反応器を用い、n-ブタン/シクロヘキサン=30/70の割合の混合溶剤18.75kg、ジブチルエーテル(比誘電率3.06/25℃)240ミリモル、開始剤n-ブチルリチウム230ミリモルを存在させ、30℃で1時間、まずスチレン3.04kgを添加して重合し、続いてイソプレン4.96kgを添加し、反応温度が50℃から60℃の間になるように還流冷却により温度制御しながら約1時間半重合した。次いで、カップリング剤としてテトラメトキシシラン25ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行った。こののち、反応混合物に重合停止剤としてメタノールを50ml、酸化防止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを40g加えてよく混合し、得られた混合溶液を少量ずつ85~95℃に加熱された温水中に滴下して溶剤を揮発させた。得られたポリマーを粉砕し、85℃で熱風乾燥してブロック共重合体を得た。このブロック共重合体のスチレン含有量は38重量%、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は96,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.43であり、4分枝体35.3%、3分枝体4.7%、2分枝体1.2%およびジブロック体58.8%が含まれていた。
【0045】粘接着剤組成物上記ブロック共重合体30部を攪拌翼型混練機に投入し、これに粘着付与樹脂(アルコンM-100;脂環族系炭化水素樹脂、荒川化学工業(株)製)50部、ナフテン系プロセスオイル(シェルフレックス371、シェル化学製)20部および酸化防止剤(イルガノックス1010、チバガイギー(株)製)0.2部を添加して系内を窒素ガスで置換したのち、160~180℃で混練して粘接着剤組成物を調製した。粘接着剤組成物の溶融粘度は150℃においてブルックフィールドサーモゼル粘度計により測定した。厚さ30μmのポリエステルフィルムに粘接着剤組成物を30μmの厚さにコーティングし、接着物性評価に供した。
【0046】接着物性評価剥離接着力(N/m)は被着体としてステンレス鋼またはポリエチレンを使用してPSTC-1(粘着テープ委員会(米)による180°剥離接着試験)に準じて測定した。剪断接着破壊温度(℃)は被着体としてステンレス鋼を使用し接着部10×25mm・1kg荷重・温度上昇速度0.5℃/minにて測定した。評価結果は表1に示す。
【0047】実施例2~6、比較例1~7
カップリング剤として、テトラメトキシシラン(TMS)に代えてテトラクロロシラン(TCS;実施例2、実施例3および比較例1)またはフェニリトリクロロシラン(PTCS;比較例2)を表1に示す量用い、または、テトラメトキシシラン(TMS)の使用量(カップリング剤/開始剤モル比)を表1に示すように変え(実施例4、実施例5、実施例6および比較例3)た他は、実質的に実施例1と同様な手法によりブロック共重合体組成物を調製し、その特性を評価した。さらに、実施例1と同様にそれぞれのブロック共重合体組成物から接着剤組成物を調製し、接着物性を評価した。結果を表1および表2に示す。」
(1-7)「【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
注:カップリング剤 TMS:テトラメトキシシラン
TCS:テトラクロルシラン
PTCS:フェニルトリクロルシラン
市販ブロック共重合体組成物A:クレイトンD1124P(シェル社製)
市販ブロック共重合体組成物B:ベクター4211(デキサコ社製)
市販ブロック共重合体組成物C:ベタター4411(デキサコ社製)」
(1-8)「【0052】
【発明の効果】本発明の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体はホットメルト接着剤組成物その他の粘接着剤組成物として有用であって、本発明のブロック共重合体から得られる粘接着剤組成物は低粘度低適用温度を有し、しかも、剥離接着力と剪断接着破壊温度とが良好にバランスされ、且つ高い値を示す。
【0053】本発明のブロック共重合体から調製されるホットメルト接着剤組成物は下記の基準特性を満足する。
150℃溶融粘度:5,000cps以下
剪断接着破壊温度:66℃以上
剥離接着力(対スチール):1,000N/m以上
(対ポリエチレン):500N/m以上」
(2)甲2(国際公開第2005/075555号)
(2-1)「請求の範囲
[1]〔A〕デカリン溶媒中135℃で測定した極限粘度が3.5dl/g以上のエチレン・α-オレフィン系共重合体5~60質量%、
〔Β〕ポリオレフィン系樹脂1~20質量%及び
〔C〕鉱物油系軟化剤30~94質量%(但し、〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計は100質量% である。)の合計100質量部に対し、
〔D〕水添ジエン系重合体0.1~50質量部を含有し、
少なくとも前記〔A〕エチレン・α-オレフィン系共重合体及ぴ前記〔B〕ポリオレフイン 系樹脂が、架橋剤の存在下で動的に熱処理されてなる、
熱可塑性エラストマ一組成物。」
(2-2)「[0001]本発明は、熱可塑性エラストマ一組成物及ぴそれを用いた成形品、低硬度のシール材に関し、更に詳しくは、成形加工性に優れ、硬度が低く、柔軟性があり、ゴム弾性(反発弾性、圧縮永久歪み)に優れ、鉱物油系軟化剤のブリードアウトがない熱可塑エラストマ一組成物及び成形品、更に熱可塑エラストマ一組成物を用いた低硬度のシール材に関する。」
(2-3)「[0053]上記水添ジエン系重合体は、5質量%トルエン溶液とした場合の30℃における溶液粘度は、好ましくは5mPa・s以上であり、より好ましくは10mPa・s以上である。このトルエン溶液粘度は、分子量の代用指標であり、5mPa・s未満では、得られる熱可塑性エラストマ一組成物の機械的強度が低下する傾向にある。」
(3)甲3(特開2004-238548号公報)
(3-1)「【請求項1】
(A)モノアルケニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックよりなるブロック共重合体(a)と、モノアルケニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックよりなるブロック共重合体(b)とからなるブロック共重合体組成物であり、(a)のGPC測定によるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で6万~12万、(b)のGPC測定によるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で1万~6万、ブロック共重合体組成物中における全モノアルケニル芳香族化合物含有量[S](重量%)とブロック共重合体(b)の含有量[b](重量%)が、下記式
5[S]-175≦[b]≦5[S]-125
40<[S]≦50、50≦[b]≦95
を満たすものであって、15%トルエン溶液粘度が10~40cPであるブロック共重合体組成物100重量部、
(B)粘着付与性樹脂20~600重量部、
(C)軟化剤0~300重量部
を含有してなることを特徴とする粘接着剤組成物。」
(3-2)「【0013】
本発明のブロック共重合体組成物(A)の25℃における15%トルエン溶液粘度は得られる粘接着剤組成物の粘着力、保持力等の粘接着剤性能の観点から10cP以上であり、得られる粘接着剤組成物の溶融粘度、加工性、耐熱性の観点から40cP以下である。25℃における15%トルエン溶液粘度は、12~38cPが好ましく、より好ましくは15~35cpである。」
2 甲1に記載の発明
(1)甲1A発明について
甲1の上記(1-1)の【請求項1】には、「下記一般式(I):
(A-B)nX (I)
(式中、Aは芳香族ビニル単量体の重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックであり、Xは4官能性またはそれ以上の多官能性カップリング剤の残基であり、nは4以上の整数である)で表わされる4以上の分枝をもつ分枝体成分を5~50重量%含有し、
下記一般式(II):
A′-B (II)
(式中、A′はAと同一または異なる芳香族ビニル単量体の重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックであるで表わされるジブロック体成分を50~95重量%含有してなる重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体。」が記載されている。
ここで、上記「分枝体成分」の分子量に関する上記(1-3)の段落【0014】の記載によれば、上記「分枝体成分」の重量平均分子量(Mw)は、10,000~500,000であり、上記「ジブロック体成分」の分子量に関する上記(1-4)の記載によれば、上記「ジブロック体成分」の重量平均分子量(Mw)は、3,000~250,000であるといえる。
そして、上記「芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体」中の芳香族ビニル単量体の重合体ブロックの含有量に関する上記(1-3)の記載によれば、上記「芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体」中の芳香族ビニル単量体の重合体ブロックの含有量は、10~50重量%であるといえる。
また、上記(1-2)の段落【0001】の記載によれば、上記「芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体」は、「粘接着剤」に有用なものとされているから、粘接着剤用のブロック共重合体であるといえる。
さらに、上記「芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体」の製造方法である上記(1-1)の【請求項2】、上記(1-5)及び上記(1-6)の段落【0044】を参照すると、上記製造方法は、まず、芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAを生成し、次いで、イソプレンを添加して、イソプレンの重合体ブロックBが芳香族ビニル単量体の重合体ブロックAに直接結合したA-Bブロック共重合体を生成せしめ、次いで、少くとも4官能性のカップリング剤を添加して、A-Bブロック共重合体の一部を(A-B)nXで表わされる4以上の分枝をもつ分枝体成分に変えることで、4以上の分枝をもつ分枝体成分(一般式(I)で表される(共)重合体)と4以上の分枝をもつ分枝体成分に変えられなかった残りのA-Bブロック共重合体(一般式(II)で表される(共)重合体)とを同時に得るというものであるから、上記「一般式(II)」の「A′」は、「A」と同じ芳香族ビニル単量体の重合ブロックであるといえる。
これらの記載事項をまとめると、甲1には、
「下記一般式(I):
(A-B)nX (I)
(式中、Aは芳香族ビニル単量体の重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックであり、Xは4官能性またはそれ以上の多官能性カップリング剤の残基であり、nは4以上の整数である)で表わされ、重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000である4以上の分枝をもつ分枝体成分を5~50重量%含有し、
下記一般式(II):
A-B (II)
(式中、Aは芳香族ビニル単量体の重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックである)で表わされ、重量平均分子量(Mw)が3,000~250,000であるジブロック体成分を50~95重量%含有してなる重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000の芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体であって、芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体の重合体ブロックの含有量が、10~50重量%である粘接着剤用芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体。」(以下、「甲1A発明」という。)が記載されているといえる。
(2)甲1B発明について
甲1の上記(1-6)の段落【0044】には、上記「甲1A発明」のブロック共重合体の具体例である「実施例1」の調製方法が、記載されているところ、「比較例2」のブロック共重合体は、この調製方法で用いる「カップリング剤」である「テトラメトキシシラン(TMS)」に代えて、「フェニリトリクロロシラン(PTCS)」(当審注:「フェニルトリクロロシラン」の誤記であると認める。)を用いて調製されたことが記載されている(上記(1-6)の段落【0047】)。
また、「A」及び「B」は、実施例1と同じものである。
そして、「比較例2」として調製されたブロック共重合体は、上記(1-7)の段落【0050】【表2】の記載によれば、「ブロック共重合体のスチレン含有量(%)が、36%、共重合体分子量(Mw)が92,000、分子量分布(Mw/Mn)が、1.30、組成(%)が、ジブロック体成分が66.5%、2分枝体成分が2.4%、3分枝体成分が31.4%、4分枝体成分が0%」(スチレン含有量(%)及び組成(%)の(%)は、上記(1-1)の【請求項1】及び上記(1-3)の段落【0013】等の記載からみて、重量%を意味しているといえる。)であるブロック共重合体が記載されている。
上記(1-6)の段落【0047】の記載によれば、「比較例2」のブロック共重合体は、実施例1のブロック共重合体から「粘接着剤組成物」を調製する手法と同様な手法により(上記(1-6)の段落【0045】)、「接着剤組成物」を調製して、接着物性を評価しており、上記(1-7)の段落【0050】【表2】には、剪断接着破壊温度(℃)は、65℃と各実施例(71~67℃)に比べて若干低いものの、剥離接着力(対スチール:1,050N/m以上、対ポリエチレン:520N/m以上)に関しては、基準特性として示されている値(上記(1-8)の段落【0053】:対スチール:1,000N/m以上、対ポリエチレン:500N/m以上)を十分満足する特性が得られていることからすると、「比較例2」のブロック共重合体も、各実施例と同様に、粘接着剤用に用いるものとして把握できるものであるといえる。
ここで、比較例2の上記「ブロック共重合体」を、甲1A発明の記載形式に則って整理すると、甲1には、
「下記一般式(I-1):
(A-B)2X′ (I-1)
で表わされる2の分枝をもつ分枝体成分を2.4重量%
下記一般式(I-2):
(A-B)3X′ (I-2)
で表わされる3の分枝をもつ分枝体成分を31.4重量%
(式中、Aはスチレンの重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックであり、X′はフェニルトリクロロシラン(多官能性カップリング剤)の残基である)含有し、
下記一般式(II):
A-B (II)
(式中、Aはスチレンの重合体ブロックであり、Bはイソプレンの重合体ブロックである)で表わされるジブロック体成分を66.5重量%含有してなる重量平均分子量(Mw)が92,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が、1.30である粘接着剤用スチレン-イソプレンブロック共重合体であって、スチレン-イソプレンブロック共重合体中のスチレンの重合体ブロックの含有量が、36重量%である粘接着剤用スチレン-イソプレンブロック共重合体。」(以下、「甲1B発明」という。)が記載されているといえる。
3 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 「甲1A発明」を主引用発明として
本件発明1と甲1A発明を対比すると、甲1A発明の「A(Aで表される芳香族ビニル単量体の重合体ブロック)」及び「粘接着剤用芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体」は、それぞれ、本件発明1の「ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)」及び「粘接着剤用ブロック共重合体組成物」に相当し、甲1A発明の「B(Bで表されるイソプレンの重合体ブロック)」は、本件発明1の「(1,3-ブタジエン単位である)共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)」と、「共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)」という点で共通する。
また、上記「2 甲1に記載の発明」(1)で述べたように、(A-B)nXは、A-B同士をカップリング剤により結合したものであることを踏まえると、甲1A発明の「(A-B)nXで表される分枝体成分」の重量平均分子量(Mw)は、「A-Bで表されるジブロック体成分」の重量平均分子量(Mw)よりも大きいといえるから、甲1A発明の「(A-B)nXで表される分枝体成分」及び「A-Bで表されるジブロック体成分」は、それぞれ、本件発明1の「(成分(b)の数平均分子量が120,000を超えて、200,000以下である水添されていない)ブロック共重合体」及び「(成分(a)の数平均分子量が10,000以上、60,000以下である水添されていない)ブロック共重合体」に対応すると共に、それぞれ、「分子量が小さいブロック共重合体」及び「分子量が大きいブロック共重合体」という点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲1A発明は、「成分(a):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、分子量が小さいブロック共重合体と、
成分(b):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、分子量が大きいブロック共重合体と、を含む粘接着剤用ブロック共重合体組成物。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
(相違点1)
分子量の小さい重合体ブロック及び分子量の大きい重合体ブロックに関し、本件発明1では、成分(a)及び成分(b)のブロック共重合体が、それぞれ「水添されていない」のに対し、甲1A発明では、「(A-B)nX」及び「A-B」が、それぞれ「水添されていない」かどうか明らかではない点。
(相違点2)
分子量の小さい重合体ブロック及び分子量の大きい重合体ブロックの分子量に関し、本件発明1では、成分(a)及び成分(b)のブロック共重合体が、それぞれ「数平均分子量が10,000以上、60,000以下」及び「数平均分子量が120,000を超えて、200,000以下」であると共に、分子量の小さい重合体ブロックに対する分子量の大きい重合体ブロックの数平均分子量比が2.0~4.0であるのに対し、甲1A発明では、「(A-B)nX」及び「A-B」が、それぞれ「重量平均分子量(Mw)が3,000~250,000」及び「重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000」であるものの、分子量の小さい重合体ブロックに対する分子量の大きい重合体ブロックの数平均分子量比については明らかでない点。
(相違点3)
分子量の小さい重合体ブロック及び分子量の大きい重合体ブロックの含有量に関し、本件発明1では、成分(a)及び成分(b)のブロック共重合体に含有量が、それぞれ「50質量%以上、90質量%以下」及び「10質量%以上、50質量%以下」であるのに対し、甲1A発明では、「(A-B)nX」及び「A-B」が、それぞれ「50~95重量%」及び「5~50重量%」である点。
(相違点4)
分子量の小さい重合体ブロック及び分子量の大きい重合体ブロックに含まれるビニル芳香族単量体単位の含有量に関し、本件発明1では、「25~50質量%」であるのに対し、甲1A発明では、「10~50重量%」である点。
(相違点5)
本件発明1の粘度に関し、本件発明1は、「15質量%トルエン溶液における粘度が10~40mPa・s」とされているのに対し、甲1A発明は、15質量%トルエン溶液における粘度は明らかでない点。
(相違点6)
成分(a)及び成分(b)の「共役ジエン単量体単位」に関し、本件発明1は、「1,3-ブタジエン」であるのに対し、甲1A発明は、「イソプレン」である点。
事案に鑑み、まず、上記(相違点6)について、以下検討する。
まず、甲1A発明の技術的な背景について見るに、甲1の上記(1-2)の記載によれば、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの製造においては、ホットメルト接着剤を適用することが行われているが、ポリエチレンシートなどの被着体の焼け防止およびホットメルト接着剤の劣化防止などの見地から、概して150℃において5,000cps以下である低粘度低適用温度のホットメルト接着剤が望まれていたが(段落【0003】)、(従来技術である)米国特許第5,399,627号明細書に記載されるスチレン-イソプレンブロック共重合体は、ホットメルト接着剤として使用した際の剥離接着力が高いものではなく(段落【0004】)、(従来技術である)特開平1-266156号公報に記載されるポリスチレン-ポリイソプレンジブロック共重合体、及びスチレン-イソプレンブロック共重合体を用いた接着剤は、剪断接着破壊温度が満足できるものではなかった(段落【0005】)ように、従来、低粘度特性を有し、且つ適性な剥離接着力および剪断接着破壊温度(SAFT)を示すホットメルト接着剤用スチレン-イソプレンブロック共重合体は知られていなかった(段落【0003】)。
そして、この課題を、甲1A発明は、スチレン(芳香族ビニル)-イソプレンブロック共重合体の範囲で改良を加えることにより解決し、低粘度特性(低粘度低適用温度を有する)を有し、且つ適性な剥離接着力および剪断接着破壊温度(SAFT)を示すホットメルト接着剤用スチレン(芳香族ビニル)-イソプレンブロック共重合体を提供するものであるといえる。
そうすると、甲1A発明は、甲1A発明に記載されるように、「B」単位としては、「イソプレンの重合体ブロック」を前提とするものであって、この単位を本件発明1の「1,3-ブタジエン」の重合体ブロックを含め、「イソプレンの重合体ブロック」以外の重合体ブロックに置換することは想定されないというべきである。
また、仮に、甲1A発明の「イソプレンの重合体ブロック」を他の重合体ブロックに置換することができる可能性があり、イソプレンが、本件発明1の「1,3-ブタジエン」と同様に「共役ジエン化合物」という点で共通するとしても、「イソプレン」と「1,3-ブタジエン」では化学構造が異なりその化学的性質がまったく等価であるということはできず、甲1A発明において、「イソプレンの重合体ブロック」を、「1,3-ブタジエンの重合体ブロック」とした場合に、この共重合体を用いた粘接着剤が、「イソプレンの重合体ブロック」を用いた場合と、少なくとも同等の低粘度低適用温度、適性な剥離接着力および剪断接着破壊温度を示すのかは不明であるから、当業者であっても、甲1A発明において、「イソプレンの重合体ブロック」を「1,3-ブタジエンの重合体ブロック」に置換しようとするとはいえない。
さらに、甲2及び甲3を見ても、甲1A発明において、「イソプレンの重合体ブロック」を「1,3-ブタジエンの重合体ブロック」に置換することを示唆する記載は見当たらない。
本件発明の効果についても、本件発明1は、本件明細書の段落【0013】の記載によれば、「粘着力や粘着性等の粘接着剤特性の性能バランスに優れ、溶融粘度が低く、優れた溶解性、塗工性、吐出安定性、及び表面肌を有する粘接着剤組成物となる」という効果を奏するものであるところ、特に、「優れた溶解性、塗工性、吐出安定性、及び表面肌を有する」点については、上記(1-8)の段落【0052】に記載される「低粘度低適用温度を有し、しかも、剥離接着力と剪断接着破壊温度とが良好にバランスされ、且つ高い値を示す」という甲1A発明の効果とは異なり、かつ甲1A発明の効果から予測できないものであるから、本件発明1は、甲1A発明に対して、格別の効果を奏するものであるといえる。
よって、上記(相違点1)~(相違点5)を検討するまでもなく、上記(相違点6)は、実質的な相違点であって、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲1A発明であるとはいえないし、甲1A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 「甲1B発明」を主引用発明として
本件発明1と甲1B発明を対比すると、甲1B発明の「(Aで表される)スチレンの重合体ブロック」、「(Bで表される)イソプレンの重合体ブロック」及び「粘接着剤用スチレン-イソプレンブロック共重合体」は、それぞれ、本件発明1の「ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)」、「共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)」及び「粘接着剤用ブロック共重合体組成物」に相当する。
また、甲1B発明の「(A-B)2Xで表わされる2の分枝をもつ分枝体成分、及び(A-B)3Xで表わされる3の分枝をもつ分枝体成分」及び「A-Bで表わされるジブロック体成分」は、それぞれ、本件発明1の「(成分(b)の数平均分子量が120,000を超えて、200,000以下である水添されていない)ブロック共重合体」及び「(成分(a)の数平均分子量が10,000以上、60,000以下である水添されていない)ブロック共重合体」に対応すると共に、それぞれ、「分子量が大きいブロック共重合体」及び「分子量が小さいブロック共重合体」という点で共通し、それぞれの含有量は、本件発明1の「10~50質量%」及び「50~90質量%」に包含される。
さらに、甲1B発明で「スチレン-イソプレンブロック共重合体中のスチレンの重合体ブロックの含有量が、36重量%である」構成は、本件発明1の「ブロック共重合体組成物における前記成分(a)及び前記成分(b)の前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が25~50質量%で」ある構成に包含される。
そうすると、本件発明1と甲1B発明は、「成分(a):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、分子量が小さいブロック共重合体:50~90質量%と、
成分(b):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、分子量が大きいブロック共重合体:10~50質量%と、を含み、
ブロック共重合体組成物における前記成分(a)及び前記成分(b)の前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が25~50質量%である粘接着剤用ブロック共重合体組成物。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
(相違点1)
分子量の小さい重合体ブロック及び分子量の大きい重合体ブロックに関し、本件発明1では、成分(a)及び成分(b)のブロック共重合体が、それぞれ「水添されていない」のに対し、甲1B発明では、「(A-B)2Xで表わされる2の分枝をもつ分枝体成分、及び(A-B)3Xで表わされる3の分枝をもつ分枝体成分」及び「A-Bで表わされるジブロック体成分」が、それぞれ「水添されていない」かどうか明らかではない点。
(相違点2)
分子量の小さい重合体ブロック及び分子量の大きい重合体ブロックの分子量に関し、本件発明1では、成分(a)及び成分(b)のブロック共重合体が、それぞれ「数平均分子量が10,000以上、60,000以下」及び「数平均分子量が120,000を超えて、200,000以下」であると共に、分子量の小さい重合体ブロックに対する分子量の大きい重合体ブロックの数平均分子量比が2.0~4.0であるのに対し、甲1B発明では、「(A-B)2Xで表わされる2の分枝をもつ分枝体成分、及び(A-B)3Xで表わされる3の分枝をもつ分枝体成分」及び「A-Bで表わされるジブロック体成分」のそれぞれの数平均分子量、及び分子量の小さい重合体ブロックに対する分子量の大きい重合体ブロックの数平均分子量比が明らかでない点。
(相違点3)
本件発明1の粘度に関し、本件発明1は、「15質量%トルエン溶液における粘度が10~40mPa・s」とされているのに対し、甲1B発明は、15質量%トルエン溶液における粘度は明らかでない点。
(相違点4)
成分(a)及び成分(b)の「共役ジエン単量体単位」に関し、本件発明1は、「1,3-ブタジエン」であるのに対し、甲1B発明は、「イソプレン」である点。
事案に鑑み、まず、上記(相違点4)について、検討する。
甲1B発明は、甲1A発明の「実施例」に対する「比較例」(比較例2)となるものであり、上記(1-7)の【表1】及び【表2】の結果によれば、甲1での解決しようとする課題に対応する、対スチールの「剥離接着力(N/m)」及び「剪断接着破壊温度(℃)」で甲1A発明の各「実施例」に及ばないものである。
そうすると、甲1A発明の「実施例」に対する「比較例」である甲1B発明に、甲1B発明の「スチレン-イソプレンブロック共重合体」等の組成を変更して、さらに改良しようとする動機付けがそもそもあるとはいえないから、当業者であっても、甲1B発明において、「イソプレンの重合体ブロック」を「1,3-ブタジエンの重合体ブロック」に置換することができるとはいえない。
また、仮に、甲1B発明の「スチレン-イソプレンブロック共重合体」等をさらに改良しようとすることがあり得たとしても、上記「ア 「甲1A発明」を引用発明として」で述べたのと同様に、「イソプレン」と「1,3-ブタジエン」では化学構造が異なりその化学的性質がまったく等価であるということはできず、甲1B発明において、「イソプレンの重合体ブロック」を、「1,3-ブタジエンの重合体ブロック」とした場合に、この共重合体を用いた粘接着剤が、「イソプレンの重合体ブロック」を用いた場合と、少なくとも同等の低粘度低適用温度、適性な剥離接着力および剪断接着破壊温度を示すのかは不明であるから、当業者であっても、甲1B発明において、「イソプレンの重合体ブロック」を「1,3-ブタジエンの重合体ブロック」に置換しようとするとはいえない。
さらに、甲2及び甲3を見ても、甲1B発明において、「イソプレンの重合体ブロック」を「1,3-ブタジエンの重合体ブロック」に置換することを示唆する記載は見当たらない。
よって、上記(相違点1)~(相違点3)を検討するまでもなく、上記(相違点4)は、実質的な相違点であって、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲1B発明であるとはいえないし、甲1B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ まとめ
本件発明1は、甲1A発明又は甲1B発明であるとはいえず、本件特許1は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるとすることはできないし、甲1A発明又は甲1B発明、及び甲第2号証、甲第3号証に記載された周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、同法同条第2項の規定に違反してされたものであるとすることもできない。
(2)本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2ないし8は、いずれも甲1A発明又は甲1B発明であるとはいえないし、甲1A発明又は甲1B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本件特許2ないし8は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるとすることはできないし、同法同条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。
第6 むすび
上記「第5」で検討したとおり、本件特許1ないし8は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、上記取消理由及び上記取消理由と同趣旨の特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許1ないし8を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1ないし8を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-701128