特許異議申立
2016-700658
粘着剤組成物及び粘着フィルム
- 審判番号
- 2016-700658
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-204147外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月01日
- 審決日
- 2017年09月01日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(C09J) / P1651.536-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条4項1号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5851166号発明「粘着剤組成物及び粘着フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5851166号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第5851166号の請求項1、3ないし8に係る特許を維持する。
特許第5851166号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯等
1 本件特許異議の申立てに係る特許
本件特許異議の申立てに係る特許第5851166号は、特許権者である藤森工業株式会社より、平成23年9月20日、特願2011-204147号として出願され、平成27年12月11日、発明の名称を「粘着剤組成物及び粘着フィルム」、請求項の数を「8」として特許権の設定登録を受けたものである。
2 手続の経緯
本件特許に対して、平成28年8月1日、特許異議申立人である有馬照夫(以下、「異議申立人」という)より特許異議の申立てがなされ、同年10月21日付けで取消理由が通知され、同年12月14日付けで特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、これに対し、平成29年1月26日付けで異議申立人より意見書が提出され、同年3月8日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年5月11日付けで特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、これに対し、同年6月22日付けで異議申立人より意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否
上記平成29年5月11日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件明細書及び特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、一群の請求項を構成する請求項1ないし8について訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。
なお、平成28年12月14日付けでなされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種との合計が50~95重量部、
(B)水酸基及びカルボキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が5~50重量部、
(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43~4.0重量部、
からなる重量平均分子量が20万~200万の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.01~5重量部、
を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなる粘着剤組成物。」とあるのを、
「白濁防止性能を有する粘着剤組成物であって、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種との合計が50~95重量部、
(B)水酸基及びカルボキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が5~50重量部、
(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43~4.0重量部、
をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた重量平均分子量が20万~200万の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.01~5重量部、
を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなり、
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する粘着剤組成物。」と訂正する。
(請求項1を引用する請求項3~8も同様に訂正されることとなる。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層が、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.0%以下である請求項1または2に記載の粘着剤組成物。」とあるのを、
「前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層が、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.0%以下である請求項1に記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物。」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「基材の片面上に、請求項1から3のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルム。」とあるのを、
「基材の片面上に、請求項1又は3のいずれかに記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルム。」と訂正する。
(請求項4を引用する請求項5~7も同様に訂正されることとなる。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に「光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1から3のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルム。」とあるのを、
「光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1又は3のいずれかに記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルム。」と訂正する。
(6)訂正事項6
本件特許明細書の段落【0012】に「前記課題を解決するため、本発明は、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と・・・(略)・・・(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43~4.0重量部、からなる重量平均分子量が20万~200万の共重合体、および、(D)架橋剤が0.01~5重量部、を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなる粘着剤組成物を提供する。」とあるのを、
「前記課題を解決するため、本発明は、白濁防止性能を有する粘着剤組成物であって、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と・・・(略)・・・(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43~4.0重量部、
をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた重量平均分子量が20万~200万の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.01~5重量部、
を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなり、
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する粘着剤組成物を提供する。」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、本件明細書の段落【0011】の「本発明の目的は、粘着剤層を厚塗りされた粘着フィルムを、高温・高湿度の雰囲気下に長期間放置しても白濁することのない、白濁防止性能を有する粘着剤組成物、及び粘着フィルムを提供することである。」との記載等、及び、特許請求の範囲の請求項2の「前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である」との記載等に基づいて、粘着剤組成物を、「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」、及び「(前記)粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する粘着剤組成物」に限定し、また、同段落【0025】の「本発明に用いられる共重合体は、架橋剤と反応する官能基モノマーとして、前記(C)の水酸基含有ビニルモノマーを含むことから、カルボキシル基含有ビニルモノマーを含まないものとすることができる。」との記載等に基づいて、重量平均分子量が20万~200万の共重合体に関し、カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させたものであることを限定するものである。
また、上述したように、上記訂正事項1は、「粘着剤組成物」及び「重量平均分子量が20万~200万の共重合体」をそれぞれ限定するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当しない。さらに、上記訂正事項1により、「(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種」、「(B)水酸基及びカルボキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種」及び「(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種」から共重合体が形成されていることを意味する「・・・からなる」との特定が、訂正前の請求項1に係る発明から削除されているが、訂正後の「(A)・・・、(B)・・・、(C)・・・をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた」との特定でも、上記(A)~(C)の各モノマー以外のモノマーが重合成分として含まれることになるとはいえないから、訂正前の請求項1に係る発明の「・・・からなる」との特定が、削除されたことは、請求項1に係る発明を拡張し又は変更するものではない。
したがって、この訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。
(2)訂正事項2について
上記訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると共に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかであるから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。
(3)訂正事項3~5について
上記訂正事項3~5は、上記(1)で述べたように、本件明細書の段落【0011】の記載等に基づいて、粘着剤組成物を、「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」とすると共に、請求項3、4、8それぞれにおいて、引用する請求項から、上記訂正事項2により削除された請求項2を削除し、引用請求項を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項3~5が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかであるから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。
(4)訂正事項6について
上記訂正事項6は、上記訂正事項1に係る訂正に起因する特許請求の範囲(請求項1)の記載内容と明細書の記載内容との不一致を整合するように明細書の記載内容を正すものである。また、上記訂正事項6は、請求項1~8からなる一群の請求項の全てについて行うものである。
そうすると、この訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。
3 小括
上記「2」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1ないし8〕について訂正することを求めるものであり、それらの訂正事項はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし8に係る発明(以下、請求項1に係る発明を項番に対応して「本件発明1」、「本件発明1」に係る特許を「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
白濁防止性能を有する粘着剤組成物であって、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種との合計が50~95重量部、
(B)水酸基及びカルボキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種が5~50重量部、
(C)官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種、または水酸基含有(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種が0.43~4.0重量部、
をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた重量平均分子量が20万~200万の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.01~5重量部、
を、前記(A)と前記(B)との合計が100重量部となる割合で含有してなり、
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する粘着剤組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層が、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.0%以下である請求項1に記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物。
【請求項4】
基材の片面上に、請求項1又は3のいずれかに記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の粘着フィルムが用いられた、タッチパネル用フィルム。
【請求項6】
請求項4に記載の粘着フィルムが用いられた、電子ペーパー用フィルム。
【請求項7】
請求項4に記載の粘着フィルムが用いられた、有機EL用フィルム。
【請求項8】
光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1又は3のいずれかに記載の白濁防止性能を有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルム。」
第4 平成29年3月8日付けで通知した取消理由(決定の予告)、及びこの取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立理由の概要
1 取消理由(決定の予告)の概要
請求項1ないし8(請求項1ないし8に係る特許)(当審注:取り下げられたものと見なされた平成28年12月14日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲に記載された請求項。以下、「第2」と区別して「先の請求項」という。)に対して平成29年3月8日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
先の請求項1ないし8に係る発明は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物1に記載された事項又は刊行物2ないし5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、先の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由」という。)。
記
刊行物1:特開2010-66755号公報(異議申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開2003-329838号公報(異議申立人が特許異議申立書中で引用した文献)
刊行物3:特開2010-285548号公報(異議申立人が提出した甲第2号証)
刊行物4:特開2011-28069号公報(異議申立人が提出した甲第3号証)
刊行物5:特開2011-99078号公報(異議申立人が提出した甲第4号証)
2 平成29年3月8日付けで通知した取消理由(決定の予告)に採用しなかった申立理由の概要
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「申立理由」という。特許異議申立書第17頁第20行~第18頁第3行参照。)
第5 当審の判断
1 取消理由(決定の予告)について
ア 刊行物に記載の事項
(ア)刊行物1(特開2010-66755号公報)
(ア-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなる粘着剤付き光学フィルムであって、該粘着剤層は、
(A)(A-1)下式(I)
【化1】
(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数1~10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1~14のアルキル基を表す)
で示される(メタ)アクリル酸エステル80~96重量%、
(A-2)分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する不飽和単量体3~15重量%、および、
(A-3)極性官能基を有する不飽和単量体0.1~5重量%
を含む単量体混合物から得られる共重合体であって、重量平均分子量(Mw)が100万~200万、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分子量分布が3~7であるアクリル樹脂100重量部、
(B)有機カチオンを有し、融点が80℃以下であるイオン性化合物0.2~8重量部、並びに
(C)架橋剤0.01~5重量部
を含有する粘着剤組成物から形成されており、該接着剤層は70~99重量%のゲル分率を有することを特徴とする粘着剤付き光学フィルム。」
(ア-2)
「【0008】
本発明の課題は、高い帯電防止性が付与されるとともに、その帯電防止性が経時によって変化しにくく、大型化しても白ヌケ抑制に優れる粘着剤層を光学フィルムの表面に設けた粘着剤付き光学フィルムを提供することにある。本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、アクリル酸エステルを主要な成分とし、分子内に芳香環を含有させた不飽和単量体に由来する構造単位を含むアクリル樹脂、および、特定のイオン性化合物を配合し、この組成物を光学フィルムの表面に粘着剤層として設けることにより、白ヌケ防止性、帯電防止性および耐久性に優れた粘着剤付き光学フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。」
(ア-3)
「【0031】
極性官能基を有する不飽和単量体(A-3)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレートの如き、遊離カルボキシル基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-または3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの如き、水酸基を有する不飽和単量体;アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,5-ジヒドロフランの如き、複素環基を有する不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き、複素環とは異なるアミノ基を有する不飽和単量体などを挙げることができる。これらの極性官能基を有する不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数のものを用いてもよい。
【0032】
これらのなかでも、不飽和単量体(A-3)の極性官能基は、遊離カルボキシル基、水酸基、アミノ基またはエポキシ環であることが好ましい。とりわけ水酸基を有する不飽和単量体を、アクリル樹脂(A)を構成する極性官能基含有不飽和単量体(A-3)の一つとして用いるのが好ましい。また、水酸基を有する不飽和単量体に加えて、他の極性官能基を有する不飽和単量体、例えば、遊離カルボキシル基を有する不飽和単量体を併用するのも有効である。」
(ア-4)
「【0056】
[架橋剤(C)]
以上のようなアクリル樹脂(A)およびイオン性化合物(B)に、さらに架橋剤(C)を配合して、粘着剤組成物とする。架橋剤(C)は、アクリル樹脂(A)中の特に極性官能基含有不飽和単量体に由来する構造単位と架橋し得る官能基を分子内に少なくとも2個有する化合物であり、具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物などが例示される。」
(ア-5)
「【0084】
粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常は30μm以下であるのが好ましく、また10μm以上であるのが好ましく、さらに好ましくは15~25μmである。粘着剤層の厚みが30μm以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましく、またその厚みが10μm以上であると、そこに貼合されている光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。従来から一般に、液晶セルガラスに貼着される粘着剤層の厚みは、25μmが標準とされていたが、本発明においては、その厚みを20μm以下としても、粘着剤層として十分な性能を発揮する。」
(ア-6)
「【0108】
[重合例9]
単量体組成を、(A-1)としてアクリル酸ブチル78.4部およびアクリル酸2-メトキシエチル10.0部、(A-2)としてアクリル酸2-フェノキシエチル10.0部、(A-3)としてアクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部およびアクリル酸0.6部に変更し、それ以外は、重合例1と同様にしてアクリル樹脂の酢酸エチル溶液を得た。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが1,540,000、Mw/Mnが4.9であった。これをアクリル樹脂Iとする。アクリル樹脂I中の水酸基含有不飽和単量体であるアクリル酸2-ヒドロキシエチルに由来する構造単位は1%であり、またカルボキシル基含有不飽和単量体であるアクリル酸に由来する構造単位は0.6%である。」
(ア-7)
「【0110】
重合例1~10の単量体組成、重量平均分子量、Mw/Mnの一覧を表1に示す。表中、BAはアクリル酸ブチルを、MEAはアクリル酸2-メトキシエチルを、PEAはアクリル酸2-フェノキシエチルを、HEAはアクリル酸2-ヒドロキシエチルを、AAはアクリル酸を、それぞれ意味する。
【0111】
【表1】
」
(ア-8)
「【0124】
[実施例1~8および比較例1~6]
(a)粘着剤の製造
重合例1~10で得たアクリル樹脂A~Jの固形分それぞれ100部に対し、表2に示すそれぞれの量のイオン性化合物、0.5部のシラン系化合物(KBM-403)、および、表2に示すそれぞれの量の架橋剤(コロネートL)を混合し、さらに固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物とした。架橋剤(コロネートL)は、上述のとおり固形分濃度75%の酢酸エチル溶液であるが、表2に示す添加量は、その固形分量である。
【0125】
(b)粘着剤付き光学フィルムの作製
上の各粘着剤組成物を、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名“PET 3811”、リンテック(株)から入手、セパレーターと呼ぶ)の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、90℃で1分間乾燥させ、シート状の粘着剤を得た。次いで、ヨウ素が吸着配向したポリビニルアルコール偏光子の両面をトリアセチルセルロースからなる保護フィルムで挟んだ3層構造の偏光板の片面に、上で得たシート状粘着剤のセパレーターと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼り合わせたのち、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤付き偏光板を得た。」
(ア-9)
「【0129】
また、温度80℃の乾燥条件下で300時間保管する耐熱試験を行った場合(表2では「耐熱」と表記)と、温度60℃、相対湿度90%で300時間保管する耐湿熱試験を行った場合(表2では「耐湿熱」と表記)と、70℃に加熱した状態から-30℃に降温し、次いで70℃に昇温する過程を1サイクル(1時間)として、これを100サイクル繰り返す耐ヒートショック試験を行った場合(表2では「耐HS」と表記)のそれぞれについて、試験後の光学積層体を目視で観察した。結果を以下の基準で分類し、表2にまとめた。
【0130】
〈熱、湿熱およびヒートショックに対する耐久性(表2ではそれぞれ、「耐熱」、「耐湿熱」および「耐HS」と記す)の評価基準〉
◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著に認められる。」
(ア-10)
「【0133】
【表2】
」
(イ)刊行物2(特開2003-329838号公報)
(イ-1)
「【請求項1】
光学フィルムの一方の面に粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、粘着剤層が、(A)アルキル(メタ)アクリレート、(B)N-置換(メタ)アクリルアミド及び/又はN,N-置換(メタ)アクリルアミド1~12重量%、(C)水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー0.01~3重量%を重合成分として含有してなるカルボキシル基を有さない(メタ)アクリル系ポリマーを含有する組成物の架橋物により形成されていることを特徴とする粘着型光学フィルム。」
(イ-2)
「【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光学フィルムを液晶パネル等のガラス基板に貼着するための粘着剤層が設けられた粘着型光学フィルムであって、リワーク性、耐久性の両者に優れ、さらにパネル面に糊残りが生じにくいものを提供することを目的とする。また当該粘着型光学フィルムに用いる光学フィルム用粘着剤組成物を提供すること、さらには当該粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。」
(イ-3)
「【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の粘着型光学フィルムの粘着剤層は、(A)アルキル(メタ)アクリレート、(B)N-置換(メタ)アクリルアミド及び/又はN,N-置換(メタ)アクリルアミド1~12重量%、(C)水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー0.01~3重量%を重合成分として含有してなるカルボキシル基を有さない(メタ)アクリル系ポリマーを含有する組成物の架橋物により形成される。なお、アクリル系ポリマーはカルボキシル基含有モノマー成分を含有しない。アクリル系ポリマーがカルボキシル基含有モノマー成分を含有すると、接着力が強くなり、リワーク性が悪くなる。また、糊残りが発生しやすくなる。」
(ウ)刊行物3(特開2010-285548号公報)
(ウ-1)
「【請求項1】
トルエン放散量が10μg/g以下であり、ホルムアルデヒド放散量が3μg/g以下であることを特徴とする光学部材用粘着テープ。」
(ウ-2)
「【0005】
従って、本発明の目的は、臭気やVOCの発生が極めて少ない光学部材用粘着テープを提供することにある。」
(ウ-3)
「【0065】
本発明の光学部材用粘着テープは光学部材に対して用いられ、特に限定はされないが、例えば、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)、光学部材の表面に本発明の粘着テープを貼付することにより得られる粘着型光学部材を製造する用途等に好適に用いられる。上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材をいう。光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)、入力装置等の機器を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護フィルム、プリズム、カラーフィルター、ハードコートフィルム、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材が挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態をも含むものとし、例えば、「偏光板」は「偏光フィルム」、「偏光シート」も含むものとする。
【0066】
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネル等が挙げられる。」
(エ)刊行物4(特開2011-28069号公報)
(エ-1)
「【請求項1】
粘着型光学フィルムの製造方法であって、光学補償フィルム単体よりなる光学フィルムの表面、或いは表面に光学補償フィルム層または光学補償膜層を有する積層型の光学フィルムにおける光学補償フィルム層または光学補償膜層の表面に、粘着性ロール接触処理またはラビング処理を行った後、粘着性ロール接触処理またはラビング処理を行った光学補償フィルム面または光学補償膜面に粘着剤を施して粘着剤層を形成することを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法。」
(エ-2)
「【0007】
本発明の目的は、コロナ放電処理やプラズマ処理のような、高価で、しかも高電圧を伴う装置を使用せずに、安全に、しかも簡単に、光学補償フィルム単体の表面に、或いは積層型の光学フィルムの表面における光学補償フィルム層または光学補償膜層の上に、粘着剤層が高接着力で接着積層していて、粘着剤層が液晶パネルなどに糊残りすることのない、粘着型光学フィルムを製造する方法を提供することである。」
(エ-3)
「【0017】
本発明で用いる光学補償フィルム単体の種類、或いは積層型の光学フィルムの表面における光学補償フィルム層または光学補償膜層を構成する光学補償フィルムまたは光学補償膜の種類は特に制限されず、液晶表示装置(LCD)、有機EL、電子ペーパー、タッチパネルなどにおいて、その視野角の向上、コントラストの向上、色補償などのような光学補償機能を付与する目的で従来から用いられている位相差フィルムや位相差膜、視野角向上フィルム、視野角向上膜、色補償フィルム、色補償膜、輝度向上フィルム、輝度向上膜などの光学補償フィルムまたは光学補償膜からなっていることができる。」
(オ)刊行物5(特開2011-99078号公報)
(オ-1)
「【請求項1】
ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度が-10℃以上であるモノマーを必須のモノマー成分として形成されたポリマーを含有する粘着剤層を有し、60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率が0.65重量%以上であることを特徴とする光学用粘着シート。
【請求項2】
前記ポリマーがアクリル系ポリマーであり、前記粘着剤層がアクリル系粘着剤層である請求項1に記載の光学用粘着シート。
【請求項3】
全光線透過率が87%以上、ヘーズが3.0%以下である請求項1又は2に記載の光学用粘着シート。
【請求項4】
60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の全光線透過率が87%以上、ヘーズが3.5%以下である請求項1~3のいずれかの項に記載の光学用粘着シート。」
(オ-2)
「【0006】
従って、本発明の目的は、加湿により白濁化することなく視認性や外観の保持性に優れ、なおかつ、高温での接着信頼性にも優れた光学用粘着シートを提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、耐腐食性にも優れた光学用粘着シートを提供することにある。」
(オ-3)
「【0087】
本発明の粘着シートは、高温での粘着力に優れ、高温での被着体からの浮きや剥がれが防止又は抑止され、加湿による白濁化が起こらない。このため、光学部材を貼り合わせる用途や、光学製品の製造用途に用いられる光学用粘着シートとして使用できる。上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材をいう。光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)や入力装置等の光学製品を構成する部材又はこれらの機器(光学製品)に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある)が挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、たとえば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」も含むものとする。また、「機能性フィルム」は「機能性板」、「機能性シート」を含むものとする。
【0088】
上記表示装置(画像表示装置)としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネルなどが挙げられる。」
(オ-4)
「【0095】
上記粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ(三菱樹脂(株)製、「MRF75」)上に最終的な厚み(粘着剤層厚み)が175μmとなるように塗布し、塗布層を形成した。次いで、上記塗布層上に、PETセパレータ(三菱樹脂(株)製、「MRF38」)を設け、塗布層を被覆して酸素を遮断した。その後、このMRF75/塗布層/MRF38の積層体の上面(MRF38側)からブラックライト(東芝製)にて、照度5mW/cm2の紫外線を300秒間照射した。さらに130℃の乾燥機で2分間乾燥処理を行い、残存モノマーを揮発させて、アクリル系粘着剤層を形成し、厚さ175μmの両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。」
(オ-5)
「【0103】
【表1】
【0104】
表1中の略語は以下の通りである。
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
2MEA:アクリル酸2-メトキシエチル
BA:アクリル酸n-ブチル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
NVP:N-ビニル-2-ピロリドン
HEAA:ヒドロキシエチルアクリルアミド
AA:アクリル酸
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
コロネートHL:イソシアネート系架橋剤(多官能イソシアネート化合物)(日本ポリウレタン工業(株)製)
【0105】
(評価)
上記の実施例および比較例で得られた両面粘着シート(アクリル系粘着剤層)について、表2(当審注:表2の記載を省略する。)に示す評価を行った。ヘーズ及び全光線透過率、外観、引き剥がし粘着力の評価、耐腐食性試験は以下の通りに実施した。また、水分率は、前述の「粘着シートの水分率の測定方法」に従い、60℃、95%RHの環境下に120時間保存後の水分率、23℃、50%RHの環境下に72時間保存後の水分率、23℃、95%RHの環境下に120時間保存後の水分率を測定した。上記水分率の測定結果はそれぞれ表2の、「60℃95%RH120時間後水分率」、「23℃50%RH水分率」、「23℃95%RH120時間後水分率」の欄に示した。
・・(略)・・
【0107】
(2)外観(60℃、95%RHの環境下に120時間保存後)
上記(1)の測定で用いた、60℃、95%RHの環境下に120時間保存し、23℃、50%RHの環境下に取り出した直後(0時間後)の試験片(「スライドガラス/アクリル系粘着剤層/PETフィルム」の構成を有する)の外観を目視で確認した。目視で白濁が認められなかった場合を○(外観保持性良好)、白濁が認められた場合を×(外観保持性不良)として評価を行った。なお、評価結果は、表2の「60℃95%RH120時間保存後の外観」の欄に示した。」
イ 刊行物1に記載の発明
刊行物1の上記(ア-1)の【請求項1】には、「光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなる粘着剤付き光学フィルムであって、該粘着剤層は、
(A)(A-1)下式(I)(当審注:構造及びその構造に関する定義の記載を省略する。)で示される(メタ)アクリル酸エステル80~96重量%、
(A-2)分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する不飽和単量体3~15重量%、および、
(A-3)極性官能基を有する不飽和単量体0.1~5重量%
を含む単量体混合物から得られる共重合体であって、重量平均分子量(Mw)が100万~200万、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分子量分布が3~7であるアクリル樹脂100重量部、
(B)有機カチオンを有し、融点が80℃以下であるイオン性化合物0.2~8重量部、並びに
(C)架橋剤0.01~5重量部
を含有する粘着剤組成物から形成されており、該接着剤層は70~99重量%のゲル分率を有することを特徴とする粘着剤付き光学フィルム。」が記載されているところ、
上記「粘着剤組成物」の上記「アクリル樹脂」の具体例として、上記(ア-6)及び(ア-7)の[重合例9]に関する記載によれば、単量体組成が、上記(A-1)としてアクリル酸ブチル78.4部およびアクリル酸2-メトキシエチル10.0部、上記(A-2)としてアクリル酸2-フェノキシエチル10.0部、上記(A-3)としてアクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部およびアクリル酸0.6部であり、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが1,540,000、Mw/Mnが4.9であるアクリル樹脂」が記載されているといえる。
そして、この「アクリル樹脂」を含有する上記「粘着剤組成物」に関し、上記(ア-8)及び上記(ア-10)の【表2】によれば、上記[重合例9]によるアクリル樹脂(【表2】の「実施例8」におけるアクリル樹脂I)の固形分100部に対し、イオン性化合物2.0部、架橋剤0.4部を混合することが記載されているといえる。
そうすると、刊行物1には、「粘着剤組成物」として
「(A-1)アクリル酸ブチル78.4部およびアクリル酸2-メトキシエチル10.0部、
(A-2)アクリル酸2-フェノキシエチル10.0部、および、
(A-3)アクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部およびアクリル酸0.6部
からなる単量体混合物から得られる共重合体であって、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが1,540,000、Mw/Mnが4.9であるアクリル樹脂100部、
イオン性化合物2.0部、
シラン系化合物0.5部、並びに
架橋剤0.4部を含有する粘着剤組成物。」(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているといえる。
ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と刊行物発明を対比すると、刊行物発明の「アクリル酸ブチル」、「アクリル酸2-フェノキシエチル」、「アクリル酸2-メトキシエチル」、「アクリル酸2-ヒドロキシエチル」、「アクリル樹脂」、「GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw」及び(含有量を表す)「部」は、それぞれ、本件発明1の「アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種」(以下、「モノマー(A-1)」という。)、「フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種」(以下、「モノマー(A-2)」という。)、「アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種」(以下、「モノマー(B)」という。)、「官能基にカルボキシル基を含有せず水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーである、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種」(以下、「モノマー(C)」という。)、「共重合体」、「重量平均分子量」及び「重量部」に相当する。
また、刊行物発明は、アクリル樹脂を100部としているところ、本件発明1は、前記(A)(「モノマー(A-1)」と、「モノマー(A-2)」との合計」)と前記(B)(「モノマー(B))の合計を100重量部としているから、本件発明1のこれらのモノマーに対応する刊行物発明の「アクリル酸ブチル」(78.4部)、「アクリル酸2-フェノキシエチル」(10.0部)、「アクリル酸2-メトキシエチル」(10.0部)の合計を100部として、刊行物発明の「「アクリル酸ブチル」と「アクリル酸2-フェノキシエチル」の合計」(78.4部+10.0部)、「アクリル酸2-メトキシエチル」(10.0部)、「アクリル酸2-ヒドロキシエチル」(1.0部)、「架橋剤」(0.4部)の重量割合を換算すると、「アクリル酸ブチル」と「アクリル酸2-フェノキシエチル」の合計は、「89.8部」((78.4+10.0)×100/(78.4+10.0+10.0)、当審注:他の成分に関する計算式は省略する。)、「アクリル酸2-メトキシエチル」は、「10.2部」、「アクリル酸2-ヒドロキシエチル」は、「1.02部」、「架橋剤」は、「0.407部」となる。
そうすると、アクリル樹脂の各モノマーの含有量及び架橋剤の含有量に関し、刊行物発明の「アクリル酸ブチル」と「アクリル酸2-フェノキシエチル」の合計の含有量、「アクリル酸2-メトキシエチル」の含有量、「アクリル酸2-ヒドロキシエチル」の含有量、及び「架橋剤」の含有量は、それぞれ、本件発明1の「モノマー(A-1)」と、「モノマー(A-2)」との合計の含有量、「モノマー(B)」の含有量、「モノマー(C)」の含有量、及び「架橋剤」の含有量と、「89.8重量部」、「10.2重量部」、「1.02重量部」、及び「0.407重量部」で一致する。
また、刊行物発明の重量平均分子量は、本件発明1の重量平均分子量と、「1,540,000」で一致する。
さらに、刊行物発明の「(A-1)アクリル酸ブチル78.4部およびアクリル酸2-メトキシエチル10.0部、(A-2)アクリル酸2-フェノキシエチル10.0部、および、(A-3)アクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部およびアクリル酸0.6部からなる単量体混合物から得られる共重合体」は、本件発明1の「モノマー(A-1)と、モノマー(A-2)・・・モノマー(B)・・・モノマー(C)・・・をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた共重合体」と、「モノマー(A-1)と、モノマー(A-2)、モノマー(B)及びモノマー(C)のモノマー混合物を共重合させた共重合体」である点で共通している。
そうすると、本件発明1と刊行物発明は、「「モノマー(A-1)」と、「モノマー(A-2)」との合計が89.8重量部、
「モノマー(B)」が10.2重量部、
「モノマー(C)」が1.02重量部、
のモノマー混合物を共重合させた重量平均分子量が1,540,000の共重合体、および、
(D)架橋剤が0.407重量部、
を、前記「モノマー(A-1)」、「モノマー(A-2)」及び「モノマー(B)」との合計が100重量部となる割合で含有してなる粘着剤組成物。」という点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
(相違点1)
粘着剤組成物について、本件発明1は、「白濁防止性能を有する粘着剤組成物であって」、「前記粘着剤組成物によって形成された、塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下である白濁防止性能を有する」粘着剤組成物であるのに対し、刊行物発明の粘着剤組成物にこの様な白濁防止性能があるのか明らかでない点。
(相違点2)
共重合体について、本件発明1では、「モノマー(A-1)と、モノマー(A-2)、モノマー(B)、モノマー(C)をカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーを含有させないで共重合させた共重合体」であるのに対し、刊行物発明では、「アクリル酸ブチル、アクリル酸2-フェノキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルの他に、「アクリル酸」を含有するモノマー混合物を共重合させた共重合体である点。
上記(相違点1)について、以下、検討する。
本件発明1の上記相違点1に係る「白濁防止性能」とは、本件明細書の段落【0010】の「光学用粘着剤フィルムに対して、近年求められている要求事項は、粘着剤層を厚塗りした時においても、高い透明性を確保し、且つ、高温・高湿度の雰囲気下に長期間放置した後、室温環境に取り出しても白濁しないことである。
しかし、粘着剤層の厚みを厚塗りにした際の、高い透明性は達成することができても、高温・高湿時の白濁防止性能はなかなか達成できないことが多かった。また、白濁防止性能を改良するために、水酸基含有モノマーの添加量を増やすなどの試みは成され、白濁防止性能は改善されてきたが、その代わりに、耐久性などの性能を保持できないなどの欠点が多かった。これらの欠点を、同時に克服できる粘着剤が必要とされている。」との記載によれば、粘着剤層を「厚塗り」した際にも、高温・高湿度の雰囲気に長期間放置した後室温環境に取り出しても白濁しないことであるといえ、具体的には、本件発明1で特定されるように、「塗工厚み250μmの粘着剤層を、60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の特性を有することであるといえる。
そして、この性能は、「粘着剤層」として発揮されるものである。
一方、刊行物発明の発明の課題は、上記(ア-2)の記載によれば、「高い帯電防止性が付与されるとともに、その帯電防止性が経時によって変化しにくく、大型化しても白ヌケ抑制に優れる粘着剤層を光学フィルムの表面に設けた粘着剤付き光学フィルムを提供する」ことであり、刊行物1には、本件発明1の「白濁防止性能」に関する記載はない。ここで、上記(ア-10)の【表2】に記載される実施例では、上記(ア-9)の段落【0129】、【0130】に記載される「温度60℃、相対湿度90%で300時間保管する耐湿熱試験を行った場合(表2では「耐湿熱」と表記)」の評価基準を、
「◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著に認められる。」とする評価を行っているが、ここで評価している外観変化は、「浮き、剥れ、発泡」等とされ、粘着層の「白濁」が認識されているとはいえない。
また、上述したように、白濁防止性能は、「粘着剤層」として発揮されるものであるところ、刊行物発明の粘着剤組成物には、刊行物発明の発明の課題を解決するための必須の成分として、本件発明1の粘着剤組成物には必須成分としては含まれない、高い帯電防止性を得るための「イオン性化合物」が含まれると共に、「アクリル樹脂」には、単量体成分として、本件発明1では、共重合体に含有させないとする「アクリル酸」も含まれ、刊行物発明の粘着剤組成物は、本件発明1の粘着剤組成物に成分が一致しておらず、これらの成分が存在することによる白濁防止性能に対する影響は不明であるから、粘着剤組成物の成分の類似性を理由として、刊行物発明の粘着剤組成物も、本件発明1の粘着剤組成物と同様に、白濁防止性能、すなわち上記相違点1に係る特性を有しているとまでいうことはできない。
さらに、上記(ア-8)の段落【0125】の記載によれば、この評価に供される粘着剤付き光学フィルムの粘着剤層の厚みは、「20μm」であるところ、上記(ア-5)の「粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常は30μm以下であるのが好ましく、また10μm以上であるのが好ましく、さらに好ましくは15~25μmである。粘着剤層の厚みが30μm以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましく・・・従来から一般に、液晶セルガラスに貼着される粘着剤層の厚みは、25μmが標準とされていたが、本発明においては、その厚みを20μm以下としても、粘着剤層として十分な性能を発揮する。」との記載によれば、刊行物発明が、本件発明での粘着剤層のような「厚塗り」を意識していないこともあって、刊行物1では、「厚塗り」である「塗工厚み250μmの粘着剤層」において「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」であるという「白濁防止性能」が意図されているとはいえない。
そうすると、当業者であっても、刊行物1の記載をもとに、刊行物発明の粘着剤組成物を、「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」とすることは、容易に想到し得ることであるとはいえない。
しかも、他の刊行物を見ても、刊行物5には、加湿により白濁化することなく視認性や外観の保持性に優れる光学用粘着シートを得るために(上記(オ-2)及び(オ-3))、上記(オ-5)の【表1】の実施例1~5の粘着剤組成物について、厚みが175μmの粘着剤層での(上記(オ-4))、60℃、95%RHの環境下に120時間保存し、23℃、50%RHの環境下に取り出した直後(0時間後)の試験片(「スライドガラス/アクリル系粘着剤層/PETフィルム」の構成を有する)の外観を目視で確認し、白濁の有無の評価を行っている(上記(オ-5)の段落【0107】)。
しかしながら、実施例1~5の粘着剤組成物のアクリル系ポリマーのモノマー、及びその割合を見ても、本件発明1の共重合体における必須成分の「フェノキシ基含有(メタ)アクリレートモノマー」が含まれていない点、及び本件発明1の共重合体における必須成分の(C)(0.43~4.0重量部)に対応する「HEA」(アクリル酸2-ヒドロキシエチル)のモノマー割合が、本件発明1の範囲に含まれない点で、刊行物5に記載される粘着剤組成物のアクリル系ポリマーは、本件発明1の粘着剤組成物の共重合体と相違していること、及び、刊行物5での白濁の有無の評価は、本件発明1での塗工厚み250μmより薄い175μmの厚み(最終的な厚み)で行っていることから、刊行物5は、刊行物発明の粘着剤組成物が、「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」であることを示唆するものではないし、また、刊行物発明の粘着剤組成物を、「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」とすることを動機付けるものでもない。
また、刊行物2~4には、本件発明1の「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の「白濁防止性能を有する粘着剤組成物」に関連する記載もない。
そうすると、上記刊行物2~5の記載を考慮したとしても、上記相違点1に係る構成を、当業者が容易に想到し得るものとすることはできない。
そして、本件発明1は、上述したように刊行物発明の粘着剤組成物からは、容易に想到することができないとした、「60℃、90%RHの雰囲気下で240時間放置後、室温環境に取り出した際のヘイズ値が、4.0%以下」の「白濁防止性能を有する」という点で格別の効果を奏するものであるといえる。
よって、上記相違点2を検討するまでもなく、上記相違点1を、当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできないから、本件発明1は、刊行物発明、及び刊行物1に記載された事項又は刊行物2~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえず、本件特許1は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。
(イ)本件発明3~8について
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるし、本件発明4~8は、その発明の中に本件発明1の内容を含むものであるから、本件発明3~8は、本件発明1と同様に、刊行物発明、及び刊行物1に記載された事項又は刊行物2~5に記載さた事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえず、本件特許3~8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。
エ 取消理由に関するまとめ
上記「ウ」で述べたように、本件発明1、3~8は、刊行物発明、及び刊行物1に記載された事項又は刊行物2~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、本件特許1、3~8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。
2 申立理由について
本件発明1、3~8に対して申し立てられた申立理由は、以下のものである。
『本件特許発明1は、文言上、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーが必須成分であると読める。しかし、本件の特許明細書段落0036の表1等に記載されている実施例1~4,6は、フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含んでいない。したがって、本件特許発明1においてフェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーが必須成分であるのか否かが不明確である。
また、本件の特許明細書段落0036の表1等に記載されている実施例7は、本件特許発明1で必須成分とされている架橋剤を含んでいないにも関わらず実施例とされている。
以上のように、本件特許発明1と本件特許明細書の発明の詳細な説明は矛盾しており、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。』
本件発明1の記載を見れば、本件発明1において、「フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマー」が必須成分であることは明らかである。一方、本件明細書段落【0036】の表1等に記載されている実施例1~4、6は、「フェノキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマー」を含むものではなく、実施例とは記載されるものの、本件発明1の「態様」に含まれないことは明らかである。
また、本件発明1の粘着剤組成物には、「架橋剤」が必須成分として含まれるところ、同実施例7は、「架橋剤」を含むものではなく、実施例とは記載されるものの、本件発明1の「態様」に含まれないことは明らかである。
なお、同実施例5は、本件発明1の「態様」に含まれるものである。
そうすると、本件発明1と本件明細書の発明の詳細な説明の記載が矛盾しているということはないし、本件明細書段落【0036】の表1等には本件発明1の態様に含まれる実施例も記載されているのであるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないということはできない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に不備があるとはいえないから、本件特許1、3~8は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
第6 むすび
上記「第5」で検討したとおり、本件特許1、3~8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできないし、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記取消理由、及び上記申立理由によっては、本件特許1、3~8を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1、3~8を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許2は、本件訂正請求により削除されたので、本件特許2に対する特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700658