特許異議申立
2017-700158
再剥離型粘着剤
- 審判番号
- 2017-700158
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-066891外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月22日
- 審決日
- 2017年11月14日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東洋インキSCホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】家入 健
- 【権利者代理人】秦 恵子
- 【権利者】トーヨーケム株式会社
- 【権利者代理人】家入 健
- 【権利者代理人】秦 恵子
- 【異議申立人】岩崎 勇
- 分類
- P1651.121-YAA(C09J) / P1651.536-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5974311号発明「再剥離型粘着剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5974311号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第5974311号の請求項1、2、5ないし7に係る特許を維持する。
特許第5974311号の請求項3、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5974311号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成27年3月27日の出願であり、平成28年7月29日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人岩崎勇(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年5月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月21日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、異議申立人からは意見書の提出がなかったものである。
第2 訂正の適否
1 訂正事項
上記平成29年7月21日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記硬化剤(B)は、ポリイソシアネート化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、およびエポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくともいずれかであり、
前記有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は、150℃-10分加熱後の減量が3重量%以下、かつ分子量が300~600であり、ジカルボン酸とアルコールとの反応により得られたエステル、またはトリカルボン酸とアルコールとの反応により得られたエステルであり、
アルコールが、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デシルアルコールイソデシルアルコールおよび2-エチルへキシルアルコールからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、再剥離型粘着剤。」とあるのを、
「前記硬化剤(B)は、前記ウレタン樹脂(A)100重量部に対して1~25重量部含み、かつポリイソシアネート化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、およびエポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくともいずれかであり、
前記有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は、前記ウレタン樹脂(A)100重量部に対して5~50重量部含み、かつ150℃-10分加熱後の減量が3重量%以下、かつ分子量が300~447であり、
コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも一つであり、かつジカルボン酸とアルコールとの反応により得られたエステル、またはトリカルボン酸とアルコールとの反応により得られたエステルであり、
アルコールが、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、イソノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコールおよび2-エチルへキシルアルコールからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、再剥離型粘着剤。」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、5ないし7も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「基材と、請求項1~4いずれか1項に記載の再剥離型粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを備えた、粘着シート。」とあるのを、「基材と、請求項1または2に記載の再剥離型粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを備えた、粘着シート。」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「前記ウレタン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)とを配合することを特徴とする、請求項1~4いずれか1項記載の再剥離型粘着剤の製造方法。」とあるのを、「前記ウレタン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)とを配合することを特徴とする、請求項1または2に記載の再剥離型粘着剤の製造方法。」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1の「硬化剤(B)は」を「硬化剤(B)は、前記ウレタン樹脂(A)100重量部に対して1~25重量部含み」とする訂正、及び「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は」を「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は、前記ウレタン樹脂(A)100重量部に対して5~50重量部含み」とする訂正(「訂正事項1-1」とする)は、訂正前、「硬化剤(B)」及び「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」のウレタン樹脂(A)に対する含有量が特定されていなかったのを、それらのウレタン樹脂(A)に対する含有量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1の「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は・・・分子量が300~600であり」を「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は・・・分子量が300~447であり」とする訂正、及び「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は・・・コハク酸ジオクチル・・・フタル酸ジ-2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも一つであり」とする訂正(「訂正事項1-2」とする)は、前者は、「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」の分子量の範囲をより限定するものであり、後者は、「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」を具体的な化合物に限定するものであるから、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1の「アルコールが、メチルアルコール・・・2-エチルへキシルアルコールからなる群より選ばれる少なくともいずれかである」を「アルコールが、ブチルアルコール・・・2-エチルへキシルアルコールからなる群より選ばれる少なくともいずれかである」とする訂正(「訂正事項1-3」とする)は、訂正前のアルコールの選択肢の中から、「メチルアルコール」、「エチルアルコール」、「プロピルアルコール」、「イソプロピルアルコール」、「イソブチルアルコール」、「ペンチルアルコール」、「ヘプチルアルコール」及び「ノニルアルコール」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項1の「デシルアルコールイソデシルアルコール」を「デシルアルコール、イソデシルアルコール」とする訂正(「訂正事項1-4」とする)は、「デシルアルコールイソデシルアルコール」が、「デシルアルコール」、「イソデシルアルコール」という2つのアルコールを意味していることは明らかであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
そうすると、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものである。
イ 訂正事項1のうち、訂正事項1-1は、本件特許明細書の段落【0050】の「硬化剤(B)は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、1~35重量部を用いることが好ましく、3~25重量部用いることが好ましく、5~20重量部がより好ましい。」との記載、及び段落【0043】の「エステル(C)は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、0.5~50重量部用いることが好ましく、1~40重量部がより好ましく、5~40重量部がさらに好ましい。エステル(C)を5重量部以上用いると濡れ性および再剥離性がより向上する。また、50重量部以下用いると汚染をより抑制できる。」との記載に基づくものである。
そして、訂正事項1-2において、「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」の分子量の上限を「447」とする訂正は、本件特許明細書の段落【0075】【表1】のうち「実施例8」で用いている有機酸エステル(「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」)の「フタル酸ジイソデシル」の分子量が「447」であることに基づくものであり、「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は・・・コハク酸ジオクチル・・・フタル酸ジ-2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも一つであり」とする訂正は、本件特許明細書の段落【0040】の「有機酸ジエステルは、例えば・・・コハク酸ジオクチル・・・アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル・・・アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル・・・アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル・・・セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル・・・マレイン酸ジオクチル・・・フマル酸ジオクチル・・・フタル酸ジオクチル・・・フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジイソデシル・・・フタル酸ジ-2-エチルヘキシル等が挙げられる。」との記載に基づくものである。
また、訂正事項1-3は、訂正前の請求項1に記載されていたアルコールの選択肢の中から、「メチルアルコール」、「エチルアルコール」、「プロピルアルコール」、「イソプロピルアルコール」、「イソブチルアルコール」、「ペンチルアルコール」、「ヘプチルアルコール」及び「ノニルアルコール」を削除するものである。
さらに、訂正事項1-4は、訂正前の請求項1の記載から誤記であることが明らかであった記載を訂正するものである。
そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 訂正事項1のうち、訂正事項1-1は、請求項1の「硬化剤(B)」及び「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」の含有量を限定するものであり、訂正事項1-2は、「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」の分子量の範囲をより限定するものであると共に、「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」を具体的な化合物に限定するものであり、訂正事項1-3は、訂正前の請求項1のアルコールに関する択一的記載の要素を削除するものである。
また、訂正事項1-4に関し、訂正前の「デシルアルコールイソデシルアルコール」が、「デシルアルコール」、「イソデシルアルコール」という2つのアルコールを意味していたことは明らかであり、「デシルアルコールイソデシルアルコール」を「デシルアルコール、イソデシルアルコール」と訂正したとしても、記載されていた内容に特に実施的な変更は生じない。
そうすると、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項1は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(2)訂正事項2、3について
訂正事項2、3は、それぞれ、請求項3、4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると共に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項4、5について
訂正事項4は、請求項5が引用する請求項を、「請求項1~4いずれか1項」から「請求項1または2」とするものであり、訂正事項5は、請求項6が引用する請求項を、「請求項1~4いずれか1項」から「請求項1または2」とするもので、請求項5及び6が引用する請求項数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると共に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
上記「2」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1ないし7〕について訂正することを求めるものであり、それらの訂正事項はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし7に係る発明(以下、請求項1に係る発明を項番に対応して「本件発明1」、「本件発明1」に対応する特許を「本件特許1」などどいい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
ウレタン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)(ただし、エポキシ基を有するエステル化合物、アジピン酸ジイソノニル、またはアジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)である場合を除く)とを含み、
前記ウレタン樹脂(A)は、水酸基を複数有し、
前記硬化剤(B)は、前記ウレタン樹脂(A)100重量部に対して1~25重量部含み、かつポリイソシアネート化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、およびエポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくともいずれかであり、
前記有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)は、前記ウレタン樹脂(A)100重量部に対して5~50重量部含み、かつ150℃-10分加熱後の減量が3重量%以下、かつ分子量が300~447であり、
コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも一つであり、かつジカルボン酸とアルコールとの反応により得られたエステル、またはトリカルボン酸とアルコールとの反応により得られたエステルであり、
アルコールが、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、イソノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコールおよび2-エチルへキシルアルコールからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、再剥離型粘着剤。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が3万~40万であることを特徴とする、請求項1記載の再剥離型粘着剤。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
基材と、請求項1または2に記載の再剥離型粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを備えた、粘着シート。
【請求項6】
ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、ウレタン樹脂(A)を製造し、
前記ウレタン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)とを配合することを特徴とする、請求項1または2に記載の再剥離型粘着剤の製造方法。
【請求項7】
前記ポリオールが、ポリエステルポリオールを含むことを特徴とする、請求項6記載の再剥離型粘着剤の製造方法。」
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし7に係る発明に対して平成29年5月19日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
取消理由1:訂正前の請求項1ないし7に係る発明は、いずれも下記刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載の事項、及び刊行物3~8に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、訂正前の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(異議申立ての理由3(特許法第29条第2項)と同趣旨である。)
取消理由2:訂正前の請求項1ないし7に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものでなく、訂正前の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(異議申立ての理由2(特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号)の特許法第36条第6項第1号の理由と同趣旨である。)
取消理由3:訂正前の請求項1ないし7に係る発明が、明確でなく、訂正前の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(異議申立ての理由1(特許法第36条第6項第2号)の「イ-2」(異議申立書第9頁第10~17行、「イ-3」(同第9頁18行~第11頁第6行)と同趣旨である。)
記
刊行物1:特開2011-190420号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開2008-195927号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開2007-284499号公報(参考資料1)
刊行物4:特開2000-73018号公報(参考資料2)
刊行物5:特開2007-138014号公報(参考資料3)
刊行物6:特開2009-155464号公報(参考資料4)
刊行物7:特開2014-111733号公報(参考資料5)
刊行物8:国際公開第2013/015075号(参考資料6)
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立理由の概要
申立理由1:訂正前の請求項1ないし7に係る発明が、明確でなく、訂正前の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由2:本件特許明細書は、当業者が訂正前の請求項1ないし7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、訂正前の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
1 取消理由1について
(1)刊行物に記載の事項
ア 刊行物1(特開2011-190420号公報)
刊行物1には、以下の記載がある。
(ア-1)「【請求項1】
ポリウレタンポリオール(A)を50~95重量%、多官能イソシアネート化合物(B)を0.5~20重量%、炭素数が10~30である脂肪酸エステル(C)を0.5~50重量%含有することを特徴とするウレタン粘着剤。」
(ア-2)「【0005】
本発明は、再剥離性を維持しつつ、基材への密着性、濡れ広がり性(粘着シートの糊面を基材に接触させた後、粘着シートが自重で基材と密着していく現象)、泡抜け性(貼付時にはさみこんだ気泡が指で押し広げたときに抜けるかどうか)が良好なウレタン系粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、粘着シートを構成するために用いるウレタン粘着剤に特定の脂肪酸エステルを導入すると、基材への密着性、濡れ広がり性、泡抜け性が良好なウレタン粘着剤が得られることを見出した。」
(ア-3)「【0034】
本発明に用いられる脂肪酸エステル(C)は、炭素数が10~30であるものが用いられる。炭素数が10よりも少ない脂肪酸エステルでは、貼付後、脂肪酸エステルが粘着剤表面に移行してしまい、その結果被着体を汚染してしまう。一方、炭素数が30よりも大きくなるとポリウレタンポリオール(A)との相溶性が悪くなり、凝集力が低下し再剥離性が悪化する。
【0035】
本発明で用いる脂肪酸エステル(C)としては、炭素数が8~18の一塩基酸ないし多塩基酸と炭素数が18以下の分岐アルコールとのエステルや、炭素数が14~18の不飽和脂肪酸ないしは分岐酸と4価以下のアルコールとのアルコールのエステルが、好適に用いられる。
【0036】
炭素数が8~18の一塩基酸ないしは多塩基酸と炭素数が18以下の分岐アルコールとのエステルとしては、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジイソセチル、トリメリト酸トリオレイル、トリメリト酸トリイソセチル等が挙げられ、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシルが好ましく、ミリスチン酸イソプロピルが特に好ましい。」
(ア-4)「【0047】
(実施例1)
合成例1で合成したポリウレタンポリオール溶液100重量部に対して、炭素数10~30である脂肪酸エステル(C)としてパルミチン酸イソプロピル(IPP)を8.3重量部と、イソシアネート基を有する化合物(B)としてヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体75重量%酢酸エチル溶液を16.7重量部とを配合し、粘着剤を得た。
得られた粘着剤を剥離紙に乾燥塗膜25μmになるように塗工し、100℃-2分乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚50μm)を貼着した。塗工後室温で1週間経過させ、試験用粘着シートを得た。該粘着シートを用いて、以下に示す方法に従って、粘着力、再剥離性、濡れ広がり性、泡抜け性の試験をした。
【0048】~【0051】(略)
【0052】
(実施例2~3)
パルミチン酸イソプロピル(IPP)の添加量を、16.7重量部(実施例2)、33.3重量部(実施例3)配合した以外は、実施例1と同様にして試験用粘着シートを得、同様に評価した。
【0053】
(実施例4)
脂肪酸エステル(C)としてミリスチン酸イソプロピル(IPM)を、ポリウレタンポリオール溶液100重量部に対し33.3重量部配合した以外は、実施例1と同様にして試験用粘着シートを得、同様に評価した。」
イ 刊行物2(特開2008-195927号公報)
刊行物2には、以下の記載がある。
(イ-1)「【請求項1】
基材の一方の面に、発泡剤を含有していない粘着剤層(A)を有し、且つ他方の面に、発泡剤を含有している粘着剤層(B)を有する両面粘着テープ又はシートであって、粘着剤層(A)が、可塑剤を、粘着剤層(A)を構成するベースポリマー:100重量部に対して5~30重量部の割合で含有しているとともに、引張粘着力(対ポリエチレンテレフタレートフィルム、剥離角度:180°、引張速度:300mm/min、温度:23±2℃、湿度:65±5%RH)が1N/20mm幅以下である特性を有しており、且つ、両面粘着テープ又はシートを、温度:165℃且つ圧力:1気圧の条件下で1時間加熱した際の可塑剤の減量が2重量%以下であることを特徴とする熱剥離型両面粘着テープ又はシート。
【請求項2】
可塑剤が、下記の特性(X)及び/又は特性(Y)を有する可塑剤である請求項1記載の熱剥離型両面粘着テープ又はシート。
特性(X):温度:165℃且つ圧力:1気圧の条件下で1時間加熱した際の減量が2重量%以下である特性
特性(Y):100℃における飽和蒸気圧が0.09Pa以下であり且つ沸点が400℃以上である特性
【請求項3】
可塑剤が、分子量又は重量平均分子量が500以上の可塑剤である請求項1又は2記載の熱剥離型両面粘着テープ又はシート。
【請求項4】
可塑剤が、トリメリット酸エステル系可塑剤、またはピロメリット酸エステル系可塑剤である請求項1~3の何れかの項に記載の熱剥離型両面粘着テープ又はシート。」
(イ-2)「【0028】
[発泡剤非含有粘着剤層(A)]
発泡剤非含有粘着剤層(A)は、発泡剤を含有していない粘着剤層であり、非熱膨張性または非発泡性の特性を有している。すなわち、発泡剤非含有粘着剤層(A)は熱剥離型粘着剤層ではない。この発泡剤非含有粘着剤層(A)は、粘着剤と、粘着剤のベースポリマー:100重量部に対して5~30重量部の割合である可塑剤とを少なくとも含有している。なお、可塑剤の含有量が、発泡剤非含有粘着剤層(A)中のベースポリマー:100重量部に対して5重量部未満であると、発泡剤非含有粘着剤層(A)の粘着力を低下させる効果が低く、一方、30重量部を超えていると、発泡剤非含有粘着剤層(A)の表面に過剰に析出して汚染の原因となったり、発泡剤非含有粘着剤層(A)の粘着力が低くなりすぎて、台座等の被着体より浮いてしまったりするという問題が生じやすくなる。発泡剤非含有粘着剤層(A)中の可塑剤の含有量としては、発泡剤非含有粘着剤層(A)を構成するベースポリマー:100重量部に対して8~25重量部であることが好ましい。
【0029】
本発明では、可塑剤としては、前述の特性(X)及び/又は特性(Y)を有している可塑剤を好適に用いることができる。
【0030】
特性(X)において、温度:165℃且つ圧力:1気圧の条件下で1時間加熱した際の可塑剤の減量としては、2重量%以下であれば特に制限されないが、好ましくは1重量%以下(さらに好ましくは0.5重量%以下)であり、なかでも0.3重量%以下(特に0重量%)であることが好ましい。
【0031】、【0032】(略)
【0033】
なお、発泡剤非含有粘着剤層(A)中の可塑剤の減量(温度:165℃且つ圧力:1気圧の条件下で1時間加熱した際の減量)は、下記の[粘着剤層(A)中の加熱減量の測定方法]により測定された値として定義される。
[粘着剤層(A)中の加熱減量の測定方法]
発泡剤非含有粘着剤層(A)を約10cm2採取し、これをバイアル瓶に入れ、165℃の温度且つ1気圧の圧力の条件下で、1時間加熱させ、加熱状態のガス1.0mLを、前記の[加熱減量の測定方法]でのガスクロマトグラフの測定条件と同様の条件下で、ガスクロマトグラフ測定装置に注入して、蒸発又は揮発した可塑剤の重量を測定し、発泡剤非含有粘着剤層(A)中の可塑剤の減量(重量減少)を計算により求める。
【0034】
このように、可塑剤として、特性(X)及び/又は特性(Y)を有する可塑剤を用いると、高温雰囲気中であっても、蒸発又は揮発が抑制又は防止されており、例えば、発泡剤含有粘着剤層(B)に貼着させた物品(被加工品)を加工したり、加工した加工品を剥離させるために加熱したりした際に、可塑剤が殆ど又は全く蒸発又は揮発せず、物品又は加工品の汚染を有効に抑制又は防止することができる。また、熱剥離型両面粘着テープ又はシートを製造する際でも、粘着剤の塗工時や乾燥時に、可塑剤が殆ど又は全く蒸発又は揮発せず、エアーフィルターなどの汚染を抑制又は防止することができ、しかも、特性が安定した熱剥離型両面粘着テープ又はシートを製造することができる。
【0035】
本発明では、可塑剤としては、特性(X)及び特性(Y)を有している可塑剤が好適である。なお、可塑剤としては、発泡剤非含有粘着剤層(A)を形成するための粘着剤のベースポリマーと相溶性がよいものが好適である。
【0036】
具体的には、可塑剤としては、例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アジピン酸系可塑剤などを用いることができ、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤を好適に用いることができる。可塑剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
トリメリット酸エステル系可塑剤やピロメリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、特性(X)及び/又は特性(Y)を有するトリメリット酸トリエステルや、特性(X)及び/又は特性(Y)を有するピロメリット酸テトラエステルが好適である。このようなトリメリット酸トリエステルやピロメリット酸テトラエステルは、トリメリット酸やピロメリット酸と、1価のアルコール類(特に、1価の脂肪族アルコール類)とのエステル化反応により得られるエステル類である。前記1価のアルコール類としては、炭素数が8以上の1価の脂肪族アルコール類(例えば、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、イソオクチルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコールなど)が好ましく、さらには炭素数が8~12(なかでも炭素数が8~10、特に炭素数が8)の1価の脂肪族アルコール類が好適である。1価の脂肪族アルコール類などの1価のアルコール類は単独で又は2種以上が組み合わせられて用いられていてもよい。なお、1価の脂肪族アルコール類は、直鎖状または分岐鎖状のいずれの形態を有していてもよい。
【0038】
具体的には、トリメリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリメリット酸トリ(n-オクチル)、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリイソオクチル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル等のトリメリット酸トリアルキルエステルなどが挙げられる。また、ピロメリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、ピロメリット酸テトラ(n-オクチル)、ピロメリット酸テトラ(2-エチルヘキシル)等のピロメリット酸テトラアルキルエステルなどが挙げられる。
【0039】
本発明では、可塑剤の分子量[可塑剤がポリマータイプの可塑剤(ポリエステル系可塑剤など)である場合は、重量平均分子量]は、特に制限されないが、500以上であることが好ましく、さらに好ましくは520以上であり、特に540以上であることが好ましい。」
(イ-3)「【0040】
また、発泡剤非含有粘着剤層(A)において用いられている粘着剤としては、特に制限されず、公知の粘着剤の中から適宜選択することができる。より具体的には、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ-プ特性改良型粘着剤などが挙げられる。また、粘着剤としては、放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)を用いることもできる。粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。」
(イ-4)「【0097】
(実施例1)
アクリル系共重合体(アクリル酸エチル:70重量部、アクリル酸2-エチルヘキシル:30重量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル:5重量部、アクリル酸:3重量部をモノマー成分とするアクリル系共重合体):100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):3重量部と、架橋触媒(商品名「エンビライザーOL-1」東京ファインケミカル社製):0.05重量部と、可塑剤としてのトリメリット酸エステル系可塑剤(商品名「モノサイザーW700」大日本インキ工業社製;分子量:546、沸点:430℃、100℃における飽和蒸気圧:0.087Pa、165℃且つ大気圧の条件下で1時間加熱した際の減量:0.1重量%以下):10重量部と、溶媒としてトルエンとを含む樹脂組成物(混合物)を、乾燥後の厚さが10μmとなるように、基材としてのポリエステルフィルム(厚さ:100μm)上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥して、粘着剤層(発泡剤非含有粘着剤層)を形成し、該発泡剤非含有粘着剤層上にセパレータを積層した。
【0098】(略)
【0099】
(実施例2)
発泡剤非含有粘着剤層を構成する樹脂組成物において、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)の使用量を、3重量部に代えて、2重量部とし、且つトリメリット酸エステル系可塑剤(商品名「モノサイザーW700」大日本インキ工業社製)の使用量を、10重量部に代えて、20重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、熱剥離型両面粘着テープ又はシートを作製した。」
ウ 刊行物3(特開2007-284499号公報)
刊行物3には、以下の記載がある。
(ウ-1)「【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、可塑剤5~50重量部、下記の一般式(1)で表されるホスファイト化合物の中から選ばれる少なくとも1種と1分子中に2つ以上のリン原子を含むオリゴホスファイト化合物の少なくとも1種とを含有し、かつ一般式(1)で表されるホスファイト化合物と1分子中に2つ以上のリン原子を含むオリゴホスファイト化合物との合計が0.01~5重量部であることを特徴とする粘着テープ用基材フィルム。
一般式(1)(略)」
(ウ-2)「【0017】
本発明で使用する可塑剤は、特に限定されないが、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレート等のフタル酸系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペート等のアジピン酸系可塑剤;リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等と、二塩基酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等とを用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤;その他、テトラヒドロフタル酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニレンポリカルボン酸系可塑剤等が挙げられる。」
エ 刊行物4(特開2000-73018号公報)
刊行物4には、以下の記載がある。
(エ-1)「【0016】
請求項2記載の発明で使用する塩化ビニル系樹脂シートは、塩化ビニル系樹脂のオルガノゾルを用いてキャスティング成形されたもの、もしくはカレンダー成形によりシート状に成形されたもののいずれでもよいが、特にキャスティング成形されたシートは使用中の寸法安定性にすぐれるので好ましい。
【0017】
キャスティング成形に用いる塩化ビニル系樹脂のオルガノゾルは、常温で塩化ビニル系樹脂を僅かに膨潤し分散を助長する良溶媒と、塩化ビニル系樹脂に対して不溶性でゾルの粘度を下げ、分散溶媒の膨潤性を抑制するための貧溶媒を混合した混合有機溶剤もしくは工業的な採算性を考慮して石油留分からなる混合溶剤に、塩化ビニル系樹脂を分散させ、更に必要に応じて可塑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、その他の添加剤を添加したものである。
【0018】(略)
【0019】
可塑剤としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリフェニル等のリン酸系可塑剤、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸系可塑剤、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ-n-ヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸イソノニル等のアジピン酸系可塑剤等が挙げられる。」
オ 刊行物5(特開2007-138014号公報)
刊行物5には、以下の記載がある。
(オ-1)「【請求項1】
塩化ビニル系樹脂シート(B1)又はアクリル系樹脂シート(B2)いずれか一方の基材(B)、粘着剤層(A)及び剥離性シートが順次積層されてなる粘着シートであって、
前記粘着剤層(A)が、モノマーの全量100重量%中iso-ブチルメタクリレート8~35重量%と他の共重合性モノマーとを共重合してなり、カルボキシル基又は水酸基の少なくとも一方を有し、重量平均分子量が40万~120万であって、ガラス転移温度が-40~-10℃である共重合体(a1)と、カルボキシル基又は水酸基の少なくとも一方と反応し得る官能基を有する架橋剤(a2)とを含有する粘着剤(a)から形成され、
前記アクリル系樹脂シート(B2)が、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種の構造を側鎖に有するビニル系重合体(b1)、イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種類の化合物(b2)、及び2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b3)を含む樹脂組成物(b)から形成されることを特徴とする粘着シート。」
(オ-2)「【0054】
塩化ビニル系樹脂シート(B1)には、種々の性能を改善するために、可塑剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、充填剤などが添加されてもよい。
可塑剤は、塩化ビニル系樹脂シートに柔軟性を付与するために添加され、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソデシルなどのフタル酸系可塑剤、アジピン酸ジ-2-エチルヒキシル、アジピン酸ジシソノニル、アジピン酸ジイソデシルなどのアジピン酸系可塑剤、アゼライン酸-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシリル、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸オクチルジフェニル、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油などが挙げられる。」
カ 刊行物6(特開2009-155464号公報)
刊行物6には、以下の記載がある。
(カ-1)「【請求項1】
活性エネルギー線重合性基(e)を分子内に1個以上有する、数平均分子量2,500~100,000の熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)、活性エネルギー線重合性基(e)を分子内に1個以上有し、ビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物を分子内に有する、数平均分子量600~1,800の熱可塑性ポリウレタン樹脂(B)および活性エネルギー線重合開始剤(C)を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ホットメルト粘着剤組成物。」
(カ-2)「【0063】
[添加剤(E)]
本発明の活性エネルギー線硬化性ホットメルト粘着剤組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて粘着付与樹脂(E1)、可塑剤(E2)、充填剤(E3)、顔料(E4)、紫外線吸収剤(E5)および酸化防止剤(E6)からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含有させることができる。
【0064】(略)
【0065】
可塑剤(E2)としては、炭化水素[プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリイソプレン、流動パラフィン、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、エチレンとα-オレフィン(C3~20)の共重合(重量比99.9/0.1~0.1/99.9)オリゴマー[重量平均分子量(以下Mwと略記。測定はGPC法による。]5,000~100,000)、プロピレンとエチレンを除くα-オレフィン(C4~20)の共重合オリゴマー(重量比99.9/0.1~0.1/99.9)オリゴマー(Mw5,000~100,000)];塩素化パラフィン;エステル〔フタル酸エステル[ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジイソノニルフタレート等]、アジピン酸エステル[ジ(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジオクチルアジペート等]およびセバチン酸エステル(ジオクチルセバケート等)等〕;動植物油脂(リノール酸、リノレン酸等);およびこれらのうちの水素添加可能な不飽和二重結合を有するものの水素添加物等が挙げられる。(E2)は1種でも2種以上組み合わせて用いてもよい。
(E2)の使用量は、(A)、(B)の合計重量に基づいて、通常80%以下、粘着剤の粘着力と凝集力の観点から好ましくは2~30%である。」
キ 刊行物7(特開2014-111733号公報)
刊行物7には、以下の記載がある。
(キ-1)「【請求項1】
ハイドロカルビル基の炭素数が4~18のハイドロカルビル(メタ)アクリレート(a1)60~100重量%及びその他の重合性単量体(a2)0~40重量%からなる単量体成分を重合して得られ、イソシアネート基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び4級アンモニウム塩基のいずれをも有しない(共)重合体(A)と、重量平均分子量が8,000~100,000であり、イソシアネート基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び4級アンモニウム塩基のいずれをも有しないポリウレタン樹脂(B)を含有することを特徴とするディスプレイ用粘着剤組成物。」
(キ-2)「【0080】
本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて粘着性付与樹脂、可塑剤、充填剤、顔料、紫外線吸収剤及び酸化防止剤等の各種添加剤の1種又は2種以上を更に加えることができる。
【0081】(略)
【0082】
可塑剤としては、例えば炭化水素系可塑剤[プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリイソプレン、流動パラフィン、パラフィンワックス、エチレンとα-オレフィン(炭素数3~20)の共重合(重量比99.9/0.1~0.1/99.9)オリゴマー(Mw5,000~100,000)及びプロピレンと、エチレンを除くα-オレフィン(炭素数4~20)の共重合(重量比99.9/0.1~0.1/99.9)オリゴマー(Mw5,000~100,000)等];塩素化パラフィン;エステル系可塑剤、例えばフタル酸エステル(ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート及びジイソノニルフタレート等)、アジピン酸エステル(ジオクチルアジペート等)、セバチン酸エステル(ジオクチルセバケート等)及び動植物油脂(例えばリノール酸及びリノレン酸);並びにこれらの中で水素添加可能な不飽和二重結合を有するものの水素添加物が挙げられる。可塑剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
可塑剤の使用量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、通常50重量%以下、粘着剤の粘着力と凝集力の観点から好ましくは0~30重量%である。」
ク 刊行物8(国際公開第2013/015075号)
刊行物8には、以下の記載がある。
(ク-1)「[0027]なかでも、粘着剤は、ベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、主たる粘着性成分)として、アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤であることが好ましい。ここで「アクリル系ポリマー」とは、典型的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマーとして含み、この主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含んでよいモノマー原料(単一モノマーまたはモノマー混合物)を重合することによって合成された重合体(共重合体)である。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタクリロイルを、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。」
(ク-2)「[0038]本発明の実施に好適な粘着剤には、その物性を調整するために、アクリル系ポリマー、天然ゴム系ポリマー、等のベースポリマー成分の他、種々の副成分が含まれる。・・・
[0039]また、他の副成分として、可塑剤、プロセスオイル等の種々の軟化成分が含まれ得る。粘着剤の汚れ除去性能を向上する観点から、可塑剤を配合させることが好ましい。
例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル、あるいは、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル、あるいは、トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル、セバシン酸エステル、等が可塑剤の好適例として挙げられる。特に、アジピン酸エステルが好ましい。」
(2)刊行物1発明
上記(ア-1)の【請求項1】には、「ポリウレタンポリオール(A)を50~95重量%、多官能イソシアネート化合物(B)を0.5~20重量%、炭素数が10~30である脂肪酸エステル(C)を0.5~50重量%含有するウレタン粘着剤。」(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。
(3)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と刊行物1発明を対比すると、刊行物1発明の「ポリウレタンポリオール(A)」は、本件発明1の「水酸基を複数有」する「ウレタン樹脂(A)」に相当し、刊行物1発明の「多官能イソシアネート化合物(B)」は、本件発明1の「ポリイソシアネート化合物」である「硬化剤(B)」に相当する。
また、刊行物1発明の「ウレタン粘着剤」は、上記(ア-2)の段落【0005】の記載によれば、「再剥離性」を有するものであるから、本件発明1の「再剥離型粘着剤」に相当する。
さらに、刊行物1発明の「炭素数が10~30である脂肪酸エステル(C)」は、本件発明1の「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」と、「有機酸のエステル」という点で共通している。
そうすると、本件発明1と刊行物1発明は、「ウレタン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、有機酸のエステルとを含み、
前記ウレタン樹脂(A)は、水酸基を複数有し、
前記硬化剤(B)は、ポリイソシアネート化合物である、再剥離型粘着剤。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
(相違点1)
再剥離型粘着剤の各成分の含有量について、本件発明1では、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、硬化剤(B)が1~25重量部、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)が5~50重量部含まれているのに対し、本件発明1では、ポリウレタンポリオール(A)が50~95重量%、多官能イソシアネート(B)が0.5~20重量%、炭素数が10~30である脂肪酸エステル(C)が0.5~50重量%含まれている点。
(相違点2)
有機酸のエステルについて、本件発明1では、「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)(ただし、エポキシ基を有するエステル化合物、アジピン酸ジイソノニル、またはアジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)である場合を除く)であり、150℃-10分加熱後の減量が3重量%以下、かつ分子量が300~447であり、
コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも一つであり、かつジカルボン酸とアルコールとの反応により得られたエステル、またはトリカルボン酸とアルコールとの反応により得られたエステルであり、
アルコールが、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、イソノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコールおよび2-エチルへキシルアルコールからなる群より選ばれる少なくともいずれかである」のに対し、刊行物1発明では、炭素数が10~30である脂肪酸エステルである点。
事案に鑑み、上記(相違点2)について、以下、検討する。
上記(イ-1)の【請求項1】の記載によれば、刊行物2には、基材の一方の面に発泡剤を含有していない粘着剤層を有し、且つ他方の面に、発泡剤を含有している粘着剤層を有する熱剥離型両面粘着テープ又はシートが記載されているところ、この「発泡剤を含有していない粘着剤層」に関し、上記(イ-2)の段落【0034】には、「このように、可塑剤として、特性(X)及び/又は特性(Y)を有する可塑剤を用いると、高温雰囲気中であっても、蒸発又は揮発が抑制又は防止されており、例えば、発泡剤含有粘着剤層(B)に貼着させた物品(被加工品)を加工したり、加工した加工品を剥離させるために加熱したりした際に、可塑剤が殆ど又は全く蒸発又は揮発せず、物品又は加工品の汚染を有効に抑制又は防止することができる。また、熱剥離型両面粘着テープ又はシートを製造する際でも、粘着剤の塗工時や乾燥時に、可塑剤が殆ど又は全く蒸発又は揮発せず、エアーフィルターなどの汚染を抑制又は防止することができ、しかも、特性が安定した熱剥離型両面粘着テープ又はシートを製造することができる。」と記載されている。
そして、この「可塑剤」の「特性(X)」とは、同(イ-2)の段落【0030】の記載によれば、「温度:165℃且つ圧力:1気圧の条件下で1時間加熱した際の可塑剤の減量としては、2重量%以下」である特性であり、また、この様な「可塑剤」として、同(イ-2)の段落【0036】には、「トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アジピン酸系可塑剤」などが記載され、さらに、「トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤」が好適に用いることができることが記載され、同(イ-2)の段落【0038】には、「トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤」の具体的な物質の例示がなされている。
また、同(イ-2)の段落【0039】には、可塑剤の分子量は、500以上であることが好ましく、さらに好ましくは520以上であり、特に好ましくは540以上であることも記載されている。
これらの記載を踏まえると、刊行物2には、粘着テープで貼着する物品(被加工品)の加工等で加熱したりする際に、物品又は加工品の汚染を有効に抑制又は防止するため、また、粘着テープ又はシートを製造する際でも、粘着剤の塗工時や乾燥時に、エアーフィルターなどの汚染を抑制又は防止するため、さらに、特性が安定した粘着テープを得るために、粘着テープに用いる有機酸エステル(可塑剤)として、温度:165℃且つ圧力:1気圧の条件下で1時間加熱した際の減量が2重量%以下である、分子量が好ましくは500以上、さらに好ましくは520以上、特に好ましくは540以上である「トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アジピン酸系可塑剤」を用いることが記載されているといえる。
そして、アジピン酸系可塑剤は、本件発明1の「アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル」を含むものである。
しかしながら、刊行物2の記載をみれば、温度:165℃且つ圧力:1気圧の条件下で1時間加熱した際の減量が2重量%以下である有機酸エステル(可塑剤)としては、分子量が好ましくは500以上のものが推奨され、上記(イ-4)の段落【0097】に記載される(実施例1)、段落【0099】に記載される(実施例2)で使用されている有機酸エステル(可塑剤)は、分子量が546の「トリメリット酸エステル系可塑剤」であるように、上記(イ-2)の段落【0036】で「好適に用いることができる」とされている「トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤」が想定されていることが分かる。
そうすると、刊行物2には、粘着テープに用いる有機酸エステル(可塑剤)として、本件発明1の、「分子量が300~447」であり、「コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも一つ」である有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)が、記載されているとはいえないし、また、これらの有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)を示唆する記載があるともいえない。
よって、刊行物1発明に、仮に刊行物2に記載された事項を適用することができたとしても、上記(相違点2)に係る本件発明1の有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)に関する事項を導き出すことはできない。
さらに、アジピン酸系可塑剤に、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソデシル等が含まれることが、刊行物3(上記(ウ-2))、刊行物4(上記(エ-1)の段落【0019】)及び刊行物5(上記(オ-2))に記載されるように周知の技術的事項であり、有機酸エステル(可塑剤)には、フタル酸エステルが含まれることが、刊行物3(上記(ウ-2))、刊行物4の(上記(エ-1)の段落【0019】)、刊行物5(上記(オ-2))、刊行物6(上記(カ-2)の段落【0065】)、刊行物7(上記(キ-2)の段落【0082】)、及び刊行物8(上記(ク-2)の段落[0039])に記載されるように周知の技術的事項であるとしても、刊行物1には、刊行物1発明に上記の周知の技術的事項を適用する動機付けに関する記載はないし、上記の周知の技術的事項を考慮しても、刊行物2に、本件発明1の特定の有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)に対応する有機酸エステルが記載されているとすることはできない。
上記(相違点2)に係る本件発明1の効果についても検討するに、本件発明1の効果の一つに、本件明細書の段落【0009】の記載によれば、「長鎖アルキル鎖を含む脂肪酸エステルは極性が低いため、極性の高いウレタン結合を有するウレタン樹脂との相溶性が悪化してしまうが、本発明では、複数のエステル基を有する有機酸エステルを使用したことでその極性を向上させることができた。これによりウレタン樹脂(A)との相溶性が向上したことで被着体汚染を抑制できた。」という効果がある。
一方、刊行物1発明は、脂肪酸エステル(C)関し、単に「炭素数が10~30である脂肪酸エステル(C)」を用いるものであり、上記(ア-3)の段落【0036】の具体的な化合物の例示を見ても、脂肪酸エステル(C)の分子内のエステル数は、1つ又は複数である化合物が列記されていると共に、上記(ア-4)の段落【0047】、【0052】に記載される(実施例1)及び(実施例2~3)、段落【0053】に記載される(実施例4)では、「炭素数が10~30である脂肪酸エステル(C)」として、エステル基が一つの「パルミチン酸イソプロピル」、「ミリスチン酸イソプロピル」が用いられており、ポリウレタンポリオール(A)とエステル基を複数有する脂肪酸エステル(C)の具体的な組合せは記載されていないから、刊行物1の記載からは、ウレタン樹脂(A)を用いた再剥離型粘着剤において、複数のエステル基を有する有機酸エステルを使用したことでその極性を向上させ、これによりウレタン樹脂(A)との相溶性が向上することを予測することができるとはいえない。
また、刊行物2に記載される粘着剤の有機酸エステル(可塑剤)は、上記(イ-3)のの記載によれば、特にウレタン系粘着剤に限らず、アクリル系粘着剤等、公知の粘着剤に用いられるものであり、上記(イ-4)の段落【0097】に記載される(実施例1)、段落【0099】に記載される(実施例2)で粘着剤に用いられる樹脂は、アクリル系共重合体であり、刊行物2には、ウレタン樹脂とエステル基を複数有する有機酸エステル(可塑剤)の具体的な組合せは記載されていないから、刊行物2の記載からも、ウレタン樹脂(A)を用いた再剥離型粘着剤において、複数のエステル基を有する有機酸エステルを使用したことでその極性を向上させ、これによりウレタン樹脂(A)との相溶性が向上することを予測することができるとはいえない。
さらに、刊行物3~8に、上記の本件発明1の効果に関する事項が記載されていないことは明らかである。
以上を踏まえると、本件発明1の上記の効果は、刊行物1発明、刊行物2に記載の事項、及び刊行物3~8に記載の周知の技術的事項から予測することができない、格別のものである。
従って、上記(相違点1)について判断するまでもなく、上記(相違点2)が、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、刊行物1発明、刊行物2に記載の事項、及び刊行物3~8に記載の周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
イ 本件発明2、5ないし7について
本件発明2、5ないし7は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるか、又は、本件発明1の発明特定事項を前提として、本件発明1の再剥離型粘着剤の製造方法を特定したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2、5ないし7は、刊行物1に記載された発明(再剥離型粘着剤の発明、粘着シートの発明、再剥離型粘着剤の製造方法の発明)、刊行物2に記載の事項、及び刊行物3~8に記載の周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
(4)取消理由1に関するまとめ
上記(3)ア及びイで述べたとおり、本件発明1、2、5ないし7は、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明1、2、5ないし7は、特許法第29条第2項の規定に該当するとはいえない。
2 取消理由2について
取消理由2は、以下の(1)~(4)の点で、「本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである」というものである。
以下(1)~(4)の点について、順次検討する。
(1)ウレタン樹脂(A)、硬化剤(B)及び有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の含有量について
本件発明の課題は、本件明細書の段落【0007】の記載によれば、「汚染性および生産性の問題が生じ難く、汚染を抑制し、濡れ性が良好な再剥離型粘着剤および粘着シートの提供」するというものである。
そして、この課題のうち、再剥離型粘着剤の濡れ性を良好にするには、同段落【0009】の「長鎖アルキル鎖を含む脂肪酸エステルは極性が低いため、極性の高いウレタン結合を有するウレタン樹脂との相溶性が悪化してしまうが、本発明では、複数のエステル基を有する有機酸エステルを使用したことでその極性を向上させることができた。これによりウレタン樹脂(A)との相溶性が向上したことで被着体汚染を抑制できた。さらに有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)を含む再剥離性粘着剤を使用した粘着シートは、濡れ性が向上する効果も得られた。」との記載によれば、濡れ性の向上に寄与しているといえる有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)が、単に、粘着剤に含まれていれば良いだけでなく、所定量含まれていることが必要であるといえる。また、被着体の汚染を抑制することに関連するウレタン樹脂(A)と有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)との相溶性も、ウレタン樹脂(A)と有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)との特定の量的な関係で発揮されるものであるといえる。
一方、本件発明では、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)が5~50重量部含まれることが特定され、本件発明は、本件明細書に記載される、粘着剤の濡れ性の向上、及び被着体の汚染を抑制することに関連するウレタン樹脂(A)と有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)との相溶性の発揮がなされるといえる有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の含有量が特定されている。
また、再剥離型粘着剤および粘着シートで本来必要になる粘着性や再剥離性の特性を有するウレタン樹脂を得るには、ウレタン樹脂(A)と硬化剤(B)との量的な関係の特定も必要であるといえるが、本件発明では、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、硬化剤(B)が1~25重量部含まれることが特定されている。
なお、同段落【0075】~【0077】の【表1】~【表3】に記載される実施例で、上記の発明の課題が解決できることを示す特性(同段落【0085】~【0087】の【表4】~【表6】)を実際確認しているのは、ウレタン樹脂(A)100重量部に対し、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)が8.0~48.0重量部、硬化剤(B)が3.0~20.0重量部の範囲であるが、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)による粘着剤の濡れ性の向上、及び被着体の汚染を抑制や、硬化剤(B)による粘着性や再剥離性の特性は、実施例の範囲を境界として、急にその特性が悪化するという性質のものであるとはいえないから、本件発明の有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)及び硬化剤(B)の含有量の範囲が、本件明細書に記載される実施例の範囲に比べて多少広いとしても、本件発明の有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)及び硬化剤(B)の含有量の範囲で上記の特性が得られないとすることはできない。
よって、本件発明のウレタン樹脂(A)、硬化剤(B)及び有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の含有量の点で、「本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである」とすることはできない。
(2)有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の150℃-10分加熱後の減量について
本件発明では、上記「150℃-10分加熱後の減量」は、「3重量%以下」とされているが、本件明細書の段落【0075】~【0077】の【表1】~【表3】に記載される実施例では、上記「150℃-10分加熱後の減量」が0.2重量%の場合に、上記の発明の課題が解決できることを示す特性(同段落【0085】~【0087】の【表4】~【表6】)が得られることを確認している。
そして、本件発明の有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)ではない150℃-10分加熱後の減量が、本件発明の上限の「3重量%」に比較的近接する4.9重量%の「オレイン酸メチル」を用いた比較例3では、「汚染性」の特性を満たしていない(段落【0087】【表6】)との結果が得られている。
しかしながら、本件明細書の段落【0009】の「長鎖アルキル鎖を含む脂肪酸エステルは極性が低いため、極性の高いウレタン結合を有するウレタン樹脂との相溶性が悪化してしまうが、本発明では、複数のエステル基を有する有機酸エステルを使用したことでその極性を向上させることができた。これによりウレタン樹脂(A)との相溶性が向上したことで被着体汚染を抑制できた。」との記載によれば、比較例3は、有機酸エステルの150℃-10分加熱後の減量の大小というより、複数のエステル基を有するか否か(「オレイン酸メチル」のエステル基は一つ)で、「汚染性」の評価に違いが出たといえるから、「汚染性」の特性を満たさない比較例3の「オレイン酸メチル」の150℃-10分加熱後の減量が4.9重量%であるとしても、それをもって、本件発明の150℃-10分加熱後の減量の「3重量%」という上限付近で、「汚染性」等の特性を満たすことができないとすることはできない。
むしろ、有機酸のジエステルであるが、150℃-10分加熱後の減量が、「18.8重量%」である「アジピン酸イソブチル」を用いた比較例5は、150℃-10分加熱後の減量の大小により、「汚染性」の特性を満たしていない(段落【0087】【表6】)と見ることができ、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の150℃-10分加熱後の減量である「18.8重量%」に比べれば、実施例で発明の課題が解決できることを示す特性が確認されている0.2重量%に近い「3重量%」という上限付近であれば、「汚染性」等の特性において許容される結果が得られていると推認できる。
よって、本件発明の有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の150℃-10分加熱後の減量の点で、「本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである」とすることはできない。
(3)有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)について
上記(2)で述べたように、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の複数のエステル基により、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)とウレタン樹脂(A)との相溶性が向上しているといえるところ、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)とウレタン樹脂(A)との相溶性は、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)のエステル基の個数だけで決まるものではなく、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)のエステル基以外の構造(有機カルボン酸のカルボキシル基以外の構造)によっても決まるものであるといえる。
これに対し、本件発明は、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)が、「コハク酸ジオクチル・・・フタル酸ジ-2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも一つ」と特定され、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)のエステル基以外の構造が明らかにされている。
よって、本件発明の有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の点で、「本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである」とすることはできない。
(4)硬化剤(B)に関して
本件明細書の段落【0075】~【0077】の【表1】~【表3】に記載される実施例では、再剥離型粘着剤の硬化剤として「ポリイソシアネート化合物」を用いた場合に、上記の発明の課題が解決できることを示す特性(同段落【0085】~【0087】の【表4】~【表6】)が得られることを確認している。
これに対し、本件発明は、「硬化剤(B)」に、ポリイソシアネート化合物の他に、「アジリジン化合物、金属キレート化合物、およびエポキシ化合物」も含まれているが、本件明細書の段落【0009】等の記載によれば、本件発明の課題を解決する上で、重要な役割を担っているのは、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)であり、上記「硬化剤(B)」が、ウレタン樹脂(A)に3次元網目構造に硬化させることができるものであれば、硬化したウレタン樹脂(A)は、基本的な粘着特性を発揮することができるといえる。
そうすると、上記実施例では、再剥離型粘着剤の硬化剤として「ポリイソシアネート化合物」を用いているとしても、「ポリイソシアネート化合物」と同じくウレタン樹脂(A)に3次元網目構造に硬化させる「アジリジン化合物、金属キレート化合物、およびエポキシ化合物」でも、ウレタン樹脂(A)の基本的な粘着特性を発現することができるといえる。
よって、本件発明の硬化剤(B)の点で、「本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである」とすることはできない。
(5)取消理由2に関するまとめ
上記(1)~(4)の点で、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではないから、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできない。
3 取消理由3について
取消理由3は、以下の(1)、(2)の点で、「本件発明は、明確でない」というものである。
以下(1)、(2)の点について、順次検討する。
(1)訂正前の請求項1の「デシルアルコールイソデシルアルコール」について
訂正前の請求項1には、「デシルアルコールイソデシルアルコール」なる誤記があったが、「デシルアルコール、イソデシルアルコール」と訂正されることにより、誤記は訂正された。
(2)本件発明の「50℃-10分加熱後の減量」について
本件発明には、「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」に対し、「50℃-10分加熱後の減量が3重量%以下」との特定がなされているところ、この「加熱後の減量」に関しては、本件明細書の段落【0070】に「<重量減少率>
有機酸のジエステルまたはトリエステルの揮発性は、以下の手順で測定する。まず、缶蓋つきメンタム缶を秤量(X)し、次いで缶蓋つきメンタム缶に試料を約2g投入し秤量(Y)した。次に、試料の入った金属缶の蓋を開け、150℃で10分間加熱した後、メンタム缶を取り出し、すぐに蓋をして、常温にて放置し冷却後、加熱後の試料が入った缶蓋つきメンタム缶を秤量(Z)した。150℃で10分間加熱した後の重量減少率は下記数式1を使用して算出した。
(数式3) 重量減少率(%)=100-((Z-X)/(Y-X))×100
〇:加熱後の重量減少率3%以下
×:加熱後の重量減少率3%超」と記載されている。
しかしながら、「メンタム缶」が、形状、大きさ等も含めてどの様な測定用具であるのか明らかでなければ、試料の蒸発量も変化することになり、本件発明1の「150℃-10分加熱後の減量」を、一義的に特定することができないことになる。
ここで、「メンタム缶」とは、蓋付きの金属缶を意味し、一般に販売されているものである(https://hands.net/goods/2400006606127/)。その大きさ(サイズ)は何種類かあるが、上記の「50℃-10分加熱後の減量」の測定に関する記載によれば、試料は「約2g」であり、この試料の量に対して適切な大きさのメンタム缶は技術常識により、十分選択可能なことであるといえる。
実際、平成29年7月21日に提出された意見書で、特許権者は、50℃-10分加熱後の減量の測定には、径57mm×高さ13mm(50g)のメンタム缶を用いたと釈明している。
そうすると、本件明細書の記載では、本件発明1の「50℃-10分加熱後の減量」を正確に測定することができないとまではいえないから、本件発明は、明確でないということはできない。
なお、本件発明では、「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」は、「コハク酸ジオクチル・・・フタル酸ジ-2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも一つ」に限定されており、「50℃-10分加熱後の減量が3重量%以下」との特定の明確性によって、「有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」に含まれる化合物の範囲が不明確になることはないといえる。
(3)取消理由3に関するまとめ
上記(1)及び(2)の点で、本件発明が明確でないということはできない。
4 取消理由に関するまとめ
上記1~3で述べたように、取消理由1ないし3によっては、本件発明1、2、5ないし7は、特許法第29条第2項の規定に該当するとはいえないし、同法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないともいえない。
5 申立理由1について
申立理由1は、要するに、「訂正前の請求項1に係る発明は、ウレタン樹脂(A)と、硬化剤(B)と、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)とを含む粘着剤であるが、粘着剤中の各成分がその意図される役割を果たすためには、一定の濃度で粘着剤中に含有されなければならず、各成分の含有量が規定されていない訂正前の請求項1に係る発明は、発明の目的を十分に達成できない範囲まで権利範囲を包含するものであり、この点で不明確である」というものである。
ここで、申立理由1が、請求項に係る発明が、発明の目的を十分に達成できない(課題を解決できない)範囲まで包含することを問題にする点では、上記2(1)の理由と同趣旨であるといえる。
そして、上記2(1)で述べたように、本件発明は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)が5~50重量部、硬化剤(B)が1~25重量部含まれることが特定されているものであり、本件発明のウレタン樹脂(A)、硬化剤(B)及び有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の含有量の点で、「本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである」とすることはできないものであるから、本件発明は、発明の目的を十分に達成できない範囲まで権利範囲を包含するものであるとすることはできず、本件発明を不明確であるとすることはできない。
6 申立理由2について
申立理由2は、要するに、『訂正前の請求項1に係る発明は、上記2(1)~(4)で述べた、「(1)ウレタン樹脂(A)、硬化剤(B)及び有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の含有量」、「(2)有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の150℃-10分加熱後の減量」、「(3)有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」、「(4)硬化剤(B)」の点について、訂正前の請求項1に係る発明は、発明の効果を十分に奏することが本件特許明細書に示されていない範囲も含み得るから、本件特許明細書は、当業者が訂正前の請求項1~7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない』というものである。
ここで、申立理由2が、請求項に係る発明が、発明の効果を十分に達成できない(課題を解決できない)範囲まで包含することを問題にする点では、申立理由2は、上記2(1)~(4)の理由と同趣旨であるといえる。
そして、上記2(1)~(4)で述べたように、「(1)ウレタン樹脂(A)、硬化剤(B)及び有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の含有量」、「(2)有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)の150℃-10分加熱後の減量」、「(3)有機酸のジエステルまたはトリエステル(C)」、「(4)硬化剤(B)」の点について、「本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである」とすることはできないものであるから、本件発明は、発明の効果を十分に達成できない範囲まで包含するものであるとすることはできず、本件明細書は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとすることはできない。
7 申立理由1及び2に関するまとめ
上記5及び6で述べたとおり、申立理由1及び2によっては、本件発明1、2、5ないし7は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえないし、本件明細書の記載は、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしてないともいえない。
第7 むすび
上記「第6」で検討したとおり、本件特許1、2、5ないし7は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできないし、同法第36条第4項第1号、同法同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとすることはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、取消理由1~3、及び申立理由1、2によっては、本件特許1、2、5ないし7を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1、2、5ないし7を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件発明3、4は削除されたので、本件発明3、4に係る異議申立ては却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700158