特許異議申立
2016-700623
缶蓋
- 審判番号
- 2016-700623
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-120333
- 登録番号
- 特許第5860925号(P5860925)
- 請求日
- 2016年07月15日
- 審決日
- 2017年02月20日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】昭和アルミニウム缶株式会社
- 【権利者代理人】清水 義仁
- 【権利者代理人】清水 久義
- 【権利者代理人】高田 健市
- 【異議申立人】横山 佳孝
- 審判長/審判官
- 審判長 平岩 正一
- 審判官 西村 泰英
- 審判官 長清 吉範
- 分類
- P1651.121-Y (B21D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5860925号発明「缶蓋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5860925号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5860925号の請求項1に係る特許についての出願は、平成26年6月11日に特許出願され、平成27年12月25日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 横山 佳孝により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年11月21日付けで取消理由を通知し、平成29年1月24日付けで意見書が提出されたものである。
2.本件発明
「【請求項1】 センターパネルの外周縁に缶内側に窪んだ環状溝が形成され、該環状溝の外周縁から外方に傾斜して立ち上がるチャックウォールが延設され、さらに該チャックウォールの外周縁からシーミングパネルが延設されてなる缶蓋において、
前記チャックウォールの環状溝側の部分は、缶軸方向に対する傾斜角度が40~60°に形成され、
前記シーミングパネルは、チャックウォール側から外方に向かって、外面曲率半径(R1)のシーミングパネルラジアス部、外面曲率半径(R2)の第1シーミングウォール部、外面曲率半径(R3)の第2シーミングウォール部、外面曲率半径(R4)のカバーフック部が順次連接され、かつ前記カバーフック部の先端が缶蓋の中心方向を向いてなり、各部の曲率半径がR2>R1>R4 かつ R2≧R3>R4の関係を満たすとともに、缶蓋の最大外周からカバーフック部の先端までの缶径方向の距離(X)が0.2~3.0mmに形成され、
前記シーミングパネルラジアス部の外面曲率半径(R1)が1.3~2.3mmであり、前記第1シーミングウォール部の外面曲率半径(R2)が2.5~3.5mmであり、前記第2シーミングウォール部の外面曲率半径(R3)が1.0~2.3mmであり、前記カバーフック部の外面曲率半径(R4)が0.3~1.3mmであり、
前記シーミングパネルの最上端からカバーフック部の下端までの缶軸方向の距離(h)が2.2~2.5mmであり、かつ前記シーミングパネルの最上端からカバーフック部の最大外周までの缶径方向の距離(L)が1.9~2.3mmであり、
前記環状溝は底壁、内側壁および外側壁で構成され、前記底壁の内面曲率半径は0.75mmであり、内側壁および外側壁は強度向上の観点から缶軸と平行、あるいは缶軸に対して15°以下の傾斜角度で開いていることを特徴とする缶蓋。」
3.取消理由の概要
当審において、本件発明に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)甲第1号証(特表平11-505791号公報)に記載された発明に甲第2号証(特開2002-172446号公報)に記載された技術的事項を適用することにより、本件発明は、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)甲第1号証に記載された発明に甲第2号証、甲第3号証(特開平1-167050号公報)、並びに甲第4号証(特開2006-1586号公報)に記載の各々の技術的事項を適用することにより、本件発明は、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
4.甲各号証の記載
甲第1号証には、「周辺のカバーフックと、・・・缶端」の発明であって、カバーフックの代表寸法と図面による図示が示されている。
甲第2号証には、缶蓋のカバーフックに形成されたカール部に関し、中央部寄りの曲率半径R1と周縁部寄りの曲率半径R2について大小関係及び比率を示した技術的事項が記載されている。チャックウォール4の傾斜角度を開示した箇所は無く、図面の図示から看取できる角度は垂線に対して十分に小であると看られる。
甲第3号証には、請求項1に記載した二重巻締用缶蓋に関する要部寸法が示され、チャックウォールの缶軸に対する傾斜角度Θ2は10°~15°であり、具体例では13°であることを前提とした技術的事項が記載されている。
甲第4号証には、缶蓋のカール部に関する要部寸法を示した技術的事項が記載されている。チャックウォールの傾斜角度を開示した箇所は無く、図面の図示から看取できる角度は垂線に対して十分に小であると看られる。
5.判断
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件発明は本件特許明細書【0010】に「本発明の缶蓋は、上述した技術背景に鑑み、チャックウォールの傾斜角度の大きい缶蓋において、・・・」と記載され、上記2.で「前記チャックウォールの環状溝側の部分は、缶軸方向に対する傾斜角度が40~60°に形成され、」という事項を有するのに対し、甲第1号証に記載された発明は「前記チャック壁は、20°と60°の間の角度cで前記中央パネルの外部に垂直な軸に対して傾斜し」、あるいは「垂線に対する前記チャック壁の角度が40°と45°の間にある」という事項を有したものである点で一致し、当該チャックウォールに延設されたシーミングパネルが複数の連接する部分(シーミングパネルラジアス部、第1シーミングウォール部、第2シーミングウォール部、カバーフック部)からなり、各部の曲率半径の好適な範囲を本件発明が定めている点、及び、カバーフック部先端の向き及び長さが特定されている点で、甲第1号証に記載の発明では十分に充足していない点で両者は相違する。
この相違点について検討すると、甲第2号証が開示する事項単独により、もしくは甲第2号証ないし甲第4号証が各々開示する事項により、当該相違点を充足する関係にあり、甲第1号証に記載の発明と技術分野が同一であることをもってしてこれら充足する事項を甲第1号証へ組み合わせることにより本件発明を容易想到とする異議申立がなされたところ、これらの証拠はいずれも上記4.に示したとおり、缶胴の開口端部に缶蓋を取り付ける技術分野に属するとは言えるものの、開示する缶蓋が含むチャックウォールが環状溝から立ち上がる傾斜角度は、甲第2号証、甲第4号証では直接的には不明とされ、甲第3号証では明らかに甲第1号証に記載の缶蓋が採用した角度と外れた関係にある。
そして、当該チャックウォールの傾斜角度が異なる仕様とされる事実は、当該技術分野に属する当業者から見ると、互いに缶蓋設計の仕様を異にする関係にある。そうすると、チャックウォールの傾斜角度を垂線に対して20°から60°、あるいは40°から45°とした前提の仕様とした甲第1号証に記載の発明を起点とした技術的創作を行う場合に、そもそものチャックウォールの傾斜角度の仕様を異にする甲第2号証ないし甲第4号証に記載されたシーミングパネル側の諸量を直ちに採用することは通常考えにくいというべきである。
また、元々の設計仕様の前提を異とするこれら甲第2号証ないし甲第4号証に示されたシーミングパネルに係る諸量を、甲第1号証に記載の発明へ単純に適用できるとする合理的な説明も見あたらない。
そうすると、異議申立人が提出した証拠によっては、仕様を異にする技術を組み合わせる動機がないと考えるのが相当である。
また、特許異議申立人が提出した特許異議申立書の全体を見ても、甲第1号証と、甲第2号証とが、通称ミニシームと通常シームと区別される関係にあることを、12ページ16~21行に記載されるとおり申立人が自認したものと見受けられるが、そのような場合においても互いに要部の設計値を置換できるとする事情説明を伴っていないため、前記した動機の欠如を覆すに足るものではない。
したがって、本件発明は、上記甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項から、あるいは甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載されたいずれかの技術的事項からのいずれを考えた場合であっても、当業者が容易になし得るものではない。
6.むすび
以上のことから、本件発明に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700623