特許異議申立
2025-700952
ベンディングロール
- 審判番号
- 2025-700952
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-109687
- 登録番号
- 7656573
- 請求日
- 2025年10月02日
- 審決日
- 2025年12月02日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社栗本鐵工所
- 【権利者代理人】鎌田 直也
- 【権利者代理人】鎌田 文二
- 【権利者代理人】中谷 弥一郎
- 【異議申立人】山田 健司
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 塩澤 如正
- 分類
- P1651.113-Y (B21D) / P1651.121-Y (B21D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7656573号発明「ベンディングロール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7656573号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7656573号の請求項1~2に係る特許についての出願は、令和4年7月7日にされた特許出願であって、令和7年3月26日にその特許権の設定登録がされ、同年4月3日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対し、令和7年10月2日(受理日:同月3日)に、特許異議申立人 山田 健司(以下「申立人」という。)は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)を提出し、請求項1~2に係る特許について、本件特許異議の申立てをした。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明2」という。)は、特許掲載公報に記載された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
上ロールと、前記上ロールの下方に配された複数の下ロールと、前記上ロールと前記複数の下ロールの間の所定のロール軸方向位置を平面視扇形の金属板が通過するように前記金属板を位置決めする位置決め機構とを備え、前記上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、前記各下ロールまたは上ロールまたは上下ロールを回転駆動することにより、前記金属板を曲げ成形して円錐台状の成形物とするベンディングロールにおいて、
前記位置決め機構は、前記金属板を位置決めする際は金属板の幅方向端部と当接し、曲げ成形中は金属板と接触しない位置へ退避する位置決め部材を有しており、
前記位置決め機構は、前記上ロールと各下ロールを含むベンディングロール本体と切り離されて、前記ベンディングロール本体に対して前記金属板を搬入する側に設けられていることを特徴とするベンディングロール。
【請求項2】
前記金属板の曲げ成形の開始前および曲げ成形の途中で金属板を停止させた状態で、前記位置決め機構による金属板の位置決めを行うようになっていることを特徴とする請求項1に記載のベンディングロール。」
第3 申立人が主張する申立ての理由の概要
1 証拠方法(書証)
(1)甲第1号証:国際公開第2019/092629号
(2)甲第2号証:特公昭57-127号公報
(3)甲第3号証:特開平8-187518号公報
(4)甲第4号証:特開2006-159251号公報
(「甲第1号証」~「甲第4号証」を、以下それぞれ「甲1」等という。)
2 申立ての理由
(1)申立ての理由1(申立書5~6、23~26ページ)
ア 条文
特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)
イ 請求項
1~2
ウ 理由
甲1に記載された発明に基づく、新規性欠如
(2)申立ての理由2(申立書5~6、26~29ページ)
ア 条文
特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
イ 請求項
1~2
ウ 理由
甲1に記載された発明及び甲2~甲3に示される周知技術に基づく、進歩性欠如
(3)申立ての理由3(申立書5~6、29~32ページ)
ア 条文
特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
イ 請求項
1~2
ウ 理由
甲4に記載された発明及び甲2~甲3に示される周知技術に基づく、進歩性欠如
(4)申立ての理由4(申立書5~6、32~35ページ)
ア 条文
特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
イ 請求項
1~2
ウ 理由
甲4に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲2~甲3に示される周知技術に基づく、進歩性欠如
第4 申立ての理由1に対する当審の判断
上記第3の2(1)に示される申立ての理由1のとおり、本件発明1~2が甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、本件発明1~2に係る特許が特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、以下検討する。
1 本件発明1について
(1)本件発明1の認定
本件発明1は、上記第2の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(2)甲1に記載された発明の認定
ア 甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審にて付した。以下同様。)。
(ア)明細書第14ページ第10行~第25行
「With reference to the attached Figures, there is・・・and dimensions of themetal sheet 2 to be processed.」
<日本語訳>
(なお、甲1の日本語訳については、申立人が提出した翻訳文(以下「甲1翻訳文」という。)に基づく。日本語訳については、以下同様。)
「 添付図面を参照すると、本発明による装置1が示されており、この装置は、金属製品の加工、特に金属板2を曲げ加工して円筒形構造、円錐台形構造、または多放射状構造を得るための、3本または4本以上のロールを備えた曲げ加工機3に搭載するのに適している。
この装置1は、金属板2を支持し制御された方法で送り出すために使用され、既存の曲げ加工機に接続することも可能であり、既に使用されている様々な構成の機械に極めて容易に適応させることができる。
本発明に係る装置1は、金属板2の進行方向ADに関して曲げ加工機3の上流側に配置可能なベース構造フレーム4と、ベース構造フレーム4に取り外し可能に装着されるように構成された複数の搬送モジュールMとを備え、これによりモジュラー式の支持・進行面Pを形成する。この支持・進行面Pは、加工対象の金属板2の形状及び寸法に応じて幾何学的に構成可能である。」(甲1翻訳文第11頁第3行~第16行)
(イ)明細書第17ページ第7行~第19ページ第2行
「The apparatus 1 comprises a device 5 (or even more) of lifting and tilting ・・・ on each side of the plane P of support and advancement, according to needs.」
<日本語訳>
「 装置1は、搬送モジュールMを支持する構造フレーム4の位置を、水平位置G0から傾斜位置G1へ変化させるように構成された昇降・傾斜装置5(1つ以上)を備える。この傾斜位置G1では、支持・搬送面Pが曲げ加工機3に向かって下方へ傾斜する。
・・・
昇降・傾斜装置5は、金属板の曲率に起因する直接的な外部荷重が伝達されることを防止するため、曲げ加工機3から独立して分離されている。昇降.傾斜装置5は、床面または基礎もしくは独立フレーム上に設置されるように形状が定められており、電動ローラを用いて支持・搬送面Pを大きく持ち上げたり傾斜させたりすることができる。
・・・
ベース構造フレーム4は、ヒンジアーム7を介して曲げ加工機3のベースに回転可能に接続され、曲げ加工機3のローラ15の下方または側方に位置する領域に接続されるのに適した前端部を備える。
ヒンジアーム7との連結は支点として機能し、昇降・傾斜装置5による昇降動作が構造フレーム4の回転に対応する。ヒンジアーム7との接続により、支持面Pから取られた平面が、曲げ加工機3の上部ピンチローラ15と下部ピンチローラ15との間のクランプ領域で金属板2から想定される理想的な変形曲線に対して常に接線方向に維持される。
・・・
装置1は、曲げサイクルの開始前に金属板2を正しい位置に誘導して配置するように構成された再配置部材装置6(再位置決め・位置補正部材とも呼ばれる)を備える。再位置決め・位置補正部材は、特に、曲げサイクル中に金属板2の位置を、連続的に繰り返して再位置決めすることにより補正し、曲げ加工機3に向かって、および曲げ加工機3を通過する所定の進行軌道Tに沿って移動させ、正しい形状を維持するために、サイクル中に複数回再位置決めするように構成されている。
各再位置決め・位置補正部材は、金属板2の長手方向端縁部Eに当接して押圧するように構成された載置ヘッド20を有する押圧部材6を備え、押圧部材6は、支持・進行面Pの両側で横方向に作用するように取り付けられている。支持・進行面Pの一方の側に2つの押圧部材6が設けられ、反対側の側にもさらに2つの押圧部材6が設けられている。しかしながら、必要に応じて、支持・進行面Pの各側に異なる数の押圧部材6を設けることも可能である。」(甲1翻訳文第13頁第8行~第14頁第20行)
(ウ)明細書第26ページ第15行~第30ページ第12行
「Is now described the operation of the apparatus 1 ・・・to keep the coherence with the desired geometry of the frustum of the cone.」
<日本語訳>
「 次に、本発明に係る装置1の動作について説明する。
・・・
金属板2が支持面P上に完全にランダムな位置に置かれると、サイクル開始時に、曲げ加工機3のローラ15に対して金属板2の前端縁EFを自動的に位置合わせ、すなわち直角に合わせる工程が開始される。
・・・
オペレータが制御パネルPCを介して開始コマンドを入力すると、制御ユニットUCは、現在パーキング位置にあり完全に解放されている押圧部材6を自動的に作動させ、押圧部材6が金属板2に向かって移動するように制御し、各押圧部材6が金属板2の正しい配置に対応する位置、すなわちその先端が曲げ加工機3のローラ軸線に対して完全に平行となる位置に到達するまで移動させる。
押圧部材6は、金属板2の端縁部Eと接触した後、曲げ加工機3のローラ15の軸線に対して前面端縁部EFが完全に平行となる理想位置まで移動する。
この時点で、昇降ユニット10が上昇している場合は下降し、搬送モジュールMが作動し、金属板2の前端縁EFが進行して曲げ加工機3のローラ15の間に挿入されて挟持される。
前端縁EF1が把持されると、曲げ加工機の前ローラ(装置1の直前のローラコンベア)が上昇を開始し、金属板2を持ち上げて折り曲げ、曲げ加工を開始する。同時に、昇降・傾斜装置5も作動し、金属板2を水平位置G0から傾斜位置G1へと搬送する。
・・・
続いて、曲げ加工機3の前ローラ(ローラコンベア装置1の直前)は上昇して金属板の前端縁を折り曲げた後、下降を開始し、金属板の上流側の、まだ曲げられていない部分を水平位置に移動させる。同時に、支持面4も水平位置G0に向けて下降させ、金属板が常にその全長にわたって完全に支持された状態を維持する。こうして、金属板2は曲げ加工機3を通って自動モード「半連続」で進行を開始できる。
金属板2は、数値制御によって算出された進行距離だけ直線的に進行し、その後わずかに回転するなどして進行する。
支持・進行面Pと、それによって支持される金属板2の部分が水平位置G0に戻った後、金属板2の進行を再開する前に、曲げ加工機3(図3)の後部ローラ27(金属板2の挿入領域とは反対側)が上昇し、金属板2の前部に到達してわずかに押し付け、進行するとすぐに曲げ加工を開始する。
オペレータは、この送り距離を任意に設定するか、位置および距離を検出するセンサ36を用いて、側方湾曲内端縁の送りを継続的に監視することができる。側方湾曲内端縁が曲げ加工機3のローラ15の端部の境界領域に近づきすぎていること(カレンダー3の構造と衝突する危険性があること)が検出されると、制御ユニットUCは曲げ加工機3のローラ15と支持面Pのローラ8の回転を停止する。
必要に応じて、曲げ加工機3のローラ15による金属板2への圧力を解放して、金属板2を押圧部材6によって自由に回転できるようにする。また、必要に応じて、金属板2を昇降装置10によって支持ローラ8から引き離し、滑り摩擦による相対的な滑りを防止する。
制御ユニットUCは、位置検出器および距離測定器であるセンサ36の信号を、メモリにプログラムおよび保存された基準データと比較することにより、金属板2の端縁に接触する押圧部材6に適切なコマンドを送信し、金属板2を正しい位置に回転するように金属板2を再び移動して、曲げ加工機3のローラ15付近の母線がローラ15の軸と完全に平行になる理想位置に復帰する。
このようにして、曲げ加工機3のローラ15付近の金属板2の母線は、金属板2の位置合わせ/直角に合わせる初期の工程で既に行われたのと同じ方法、ローラ15の軸と同軸に配置される。実質的に、金属板は、曲げ加工機3のローラ15が静止している状態で、並進を伴わないわずかな回転を受ける。
この動作が完了すると、制御ユニットUCは、押圧部材6を支持面Pのローラ8から離れた「パーキング」位置に戻し、金属板2の搬送を完全に自由に行えるようにする。一方、曲げ加工機3のローラ15は、同期された状態で金属板2を把持する位置に配置される。
制御ユニットUCはその後、支持面Pのローラ8の回転を再開し、曲げ加工機3における金属板2の次の部分の搬送を決定する。
上記の工程は、曲げ加工機3に金属板2全体を搬送するために必要な回数だけ繰り返される。
円錐台構造を自動的に形成するために、押圧部材6が繰り返し介入し、金属板を円形の冠部の形状に時々わずかに回転させる。すなわち、金属板2の長手方向端縁部Eに連続的に繰り返し押圧作用を加え、その全長にわたって金属板2を複数回位置合わせする。繰り返しかつ適切に調整された押圧作用により、曲げ加工機のローラ15のローラ軸と同軸の位置に異なる母線が時々生成され、円錐台の形状の所望の形状との整合性が保たれる。」(甲1翻訳文第19頁第38行~第22頁第27行)
(エ)Fig1
「
[図:0001431179000001.jpg]
」
(オ)Fig34、35
「
[図:0001431179000002.jpg]
」
イ 甲1に記載されているといえる事項
上記アから、甲1には次の事項が記載されているといえる。
(ア)上記ア(ア)~(イ)、(エ)から、曲げ加工機3は、3本又は4本以上のローラ15を上下に備えたものであり、1つを上部ローラ15として有しており、上部ローラ15の下方に2本以上の下部ローラ15を有するものであることが開示されているといえる。
(イ)上記ア(ア)、(ウ)~(エ)から、装置1は、曲げ加工機3の上流側に配置されており、曲げサイクルの開始前及び曲げサイクル中に、金属板2の曲げ加工機3のローラ15付近の母線が曲げ加工機3のローラ15の軸に対して平行になる位置まで移動させることで位置決めをする押圧部材6を備えた再配置部材装置6を備えることが開示されているといえる。また、上記ア(オ)から、平面視扇形の金属板2を加工することが開示されているといえる。
(ウ)上記(ア)、上記ア(ウ)、及び、曲げ加工機の分野において曲げ加工時に上部ローラと下部ローラにより挟持されることは技術常識であることから、金属板2は、曲げ加工機3の上部ローラ15及び2本以上の下部ローラ15に挟持された状態で曲げ加工が開始されることが示されているといえる。また、曲げ加工中に所定の状態が検出されたときに制御ユニットUCは曲げ加工機3のローラ15の回転を停止するという記載から、曲げ加工中には上部ローラ15と2本以上の下部ローラ15のうちの1以上のローラは回転駆動していることが開示されているといえる。また、上記ア(ア)より、金属板2を曲げ成形して円錐台形構造を得ることが開示されている。
(エ)上記ア(ウ)から、押圧部材6は、金属板2に向かって移動して端縁と接触して金属板2を移動させ、移動が完了すると、「パーキング」位置に戻され、その後、制御ユニットUCは金属板2の次の部分の搬送を決定すること、すなわち、押圧部材6は、金属板2を位置決めする際には、金属板2の端縁と接触し、曲げ成形中は金属板と接触しない「パーキング」位置へ戻されることが開示されているといえる。また、上記ア(オ)に示されるFig1から、押圧部材6が金属板2の幅方向端部と接触することが開示されているといえる。
(オ)上記ア(ア)~(イ)から、再配置部材装置6を備えた装置1は、既存の曲げ加工機に接続することも可能であり、既に使用されている様々な構成の機械に極めて容易に適応させることができるものであること、装置1のベース構造フレーム4は、ヒンジアーム7を介して曲げ加工機3のベースに回転可能に接続され、ヒンジアーム7との連結は支点として機能し、昇降・傾斜装置5による昇降動作がベース構造フレーム4の回転に対応することが開示されている。また、上記ア(エ)に示されるFig1から、装置1が曲げ加工機3に対して金属板2を搬入する側に設けられていることが開示されているといえる。
ウ 甲1発明
上記ア~イから、甲1に記載された事項を本件発明1に合わせて整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。
「 上部ローラ15と、前記上部ローラ15の下方に配された2本以上の下部ローラ15と、平面視扇形の金属板2の曲げ加工機3のローラ15付近の母線が曲げ加工機3のローラ15の軸に対して平行になる位置まで移動させることで位置決めをする再配置部材装置6とを備え、前記上部ローラ15と2本以上の下部ローラ15との間で金属板2を挟持した状態で、前記上部ローラ15と2本以上の前記下部ローラ15のうちの1以上のローラが回転駆動することにより、前記金属板2を曲げ成形して円錐台形構造とする曲げ加工機3及び装置1において、
前記再配置部材装置6は、前記金属板2を位置決めする際は金属板2の幅方向端部と接触し、曲げ成形中は金属板2と接触しない「パーキング」位置へ戻される押圧部材6を有しており、
前記再配置部材装置6は、前記上部ロール15と2本以上の前記下部ロールを含む曲げ加工機3とベース構造フレーム4やヒンジアーム7を介して接続されており、前記曲げ加工機3に対して前記金属板2を搬入する側に設けられており、ヒンジアーム7との連結は支点として機能し、昇降・傾斜装置5による昇降動作が構造フレーム4の回転に対応している、曲げ加工機3及び装置1。」
(3)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1で相違する。
ア 一致点
「上ロールと、前記上ロールの下方に配された複数の下ロールと、前記上ロールと前記複数の下ロールの間の所定のロール軸方向位置を平面視扇形の金属板が通過するように前記金属板を位置決めする位置決め機構とを備え、前記上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、前記各下ロールまたは上ロールまたは上下ロールを回転駆動することにより、前記金属板を曲げ成形して円錐台状の成形物とするベンディングロールにおいて、
前記位置決め機構は、前記金属板を位置決めする際は金属板の幅方向端部と当接し、曲げ成形中は金属板と接触しない位置へ退避する位置決め部材を有しており、
前記位置決め機構は、前記上ロールと各下ロールを含むベンディングロール本体に対して前記金属板を搬入する側に設けられているベンディングロール。」
イ 相違点1
本件発明1においては、位置決め機構がベンディングロール本体と切り離されているのに対し、甲1発明においては、再配置部材装置6は、ベース構造フレームやヒンジアーム7を介して曲げ加工機3と接続されている点。
(4)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明と相違点1を有しており、甲1発明と同一であるものとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明には該当せず、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
2 本件発明2について
本件発明2は、請求項2が請求項1の記載を引用して記載するものであるところ、本件発明1が上記1のとおり、甲1発明と同一であるとはいえないことから、本件発明2についても同様に、甲1発明と同一であるものとはいえない。
したがって、本件発明2は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明には該当せず、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
3 申立書における主張について
(1)申立書における主張の内容
申立人は、相違点1に関連して、申立書において次の主張をしている。
・甲1発明の装置1は、甲1の詳細な説明には、装置1のベース構造フレーム4は、ヒンジアーム7を介して曲げ加工機3のベースに回転可能に接続され、曲げ機3のローラ15の下方または側方に位置する領域に接続されるのに適した前端部を備える構成が記載されているものの、甲1の出願当時における既存の曲げ加工機は、このようなヒンジアーム7を備えるよう構成されたものではないことは明らかである。すなわち、既存の曲げ加工機に適応させた装置1は、当該曲げ加工機から分離して切り離されたものである。
(2)申立書における主張の検討
本件発明1において、「前記位置決め機構は、・・・ベンディングロール本体と切り離されて、・・・設けられている」いう記載は、「設けられている」という記載、及び、本件発明1が「ベンディングロール」の発明であることを考慮すれば、ベンディングロールとして機能する状態において位置決め機構がベンディングロール本体と切り離されて設けられているものと解釈することが自然である。
そして、甲1発明の装置1は、装置1のベース構造フレーム4が、ヒンジアーム7を介して曲げ加工機3のベースに回転可能に接続されているから、装置1に備えられた再配置部材装置6は曲げ加工機と接続されており、切り離されているとはいえない。
したがって、申立人の申立書における主張は、採用することができない。
第5 申立ての理由2に対する当審の判断
上記第3の2(2)に示される申立ての理由2のとおり、本件発明1~2が甲1発明及び甲2~甲3に示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明1~2に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるか、以下検討する。
1 本件発明1について
(1)本件発明1の認定
上記第4の1(1)と同様である。
(2)甲1に記載された発明の認定
上記第4の1(2)と同様である。
(3)甲2記載の技術的事項の認定
ア 甲2の記載
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)第2欄第17行~第8行
「 この発明はロールベンディング方式による鋼管製造設備に関するものである。」
(イ)第2欄第30行~第3欄第35行
「 以下、この発明の一実施例を図面に従い説明すると、この鋼管製造設備は鋼管搬送装置A、鋼板芯出し装置B、鋼板送込み装置C1、鋼板成形造管機D、鋼板送込量検出装置E、トップロール跳上げ装置F、機内アンローダGA、アンローダガイドGB、鋼管搬出移送装置Hからなる。
・・・
上記鋼板芯出し装置Bは前記ストッパ1に当る位置まで移動された鋼板Kを鋼板成形造管機Dへの挿入芯出し位置に巾寄せする横移動可能な巾寄せフレーム4及びプッシャーフレーム5を具備する。この巾寄せプレート4とプッシャープレート5はローラテーブルからなる鋼板搬送装置Aの上に第1図の如く配置され、モータ4aによりピニオンとラック4bを介して駆動される巾寄せフレーム4が鋼板幅に応じて定められた位置まで移動すると、次にモータ5aによりピニオンとラック5bを介して駆動されるプッシャーフレーム5が定位置に停止している巾寄せフレーム4側に横移動し、該巾寄せフレーム4に鋼板Kを押付けて芯出しを行なう。」
(ウ)第1図、第2図
「
[図:0001431179000003.jpg]
」
イ 甲2に記載されているといえる事項
上記アから、甲2には次の事項が記載されているといえる。
(ア)上記ア(ア)~(イ)から、ロールベンディング方式による鋼管製造設備において、鋼板芯出し装置Bと、鋼板成形造管機Dが備えられることが開示されているといえる。
(イ)上記ア(ウ)に示された第1図及び第2図から、鋼板芯出し装置Bは、鋼板成形造管機Dとが切り離されて、前記鋼板成形造管機Dに対して鋼板を搬入する側に設けられることが開示されているといえる。
ウ 甲2記載の技術的事項
上記ア~イから、甲2には、次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「芯出しを行う鋼板芯出し装置Bが、ロールベンディング方式による鋼板成形造管機Dとは切り離されて、前記鋼板成形造管機Dに対して鋼板を搬入する側に設けられていること。」
(4)甲3記載の技術的事項の認定
ア 甲3の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るベンディングロールの鋼板搬入装置は、ベンディングロールの鋼板供給側へボトムロールBの頂面と同一レベルを頂点とするフリーベアリング11を多数規則的にフレーム1上に設け、フリーベアリング11上に載置した鋼板Wのボトムロール軸線と平行方向に対する位置決めとその寸法を検知する第一の調整手段2と、前記位置決め後の鋼板Wをボトムロール側へ送給して成形時の位置決めとボトムロール軸線と直角方向の寸法を検知する第二の調整手段3とを具えたことによって前記の課題を解決した。」
(イ)「【0020】
この構成において、前記の第一の調整手段2の作用によって左右方向の正しい位置決めが特定した鋼板Wは、第二の調整手段3の作動によって両幅寄せローラ21に挟まれたままで送り台31に押圧されて前後方向へ移動を始める。」
(ウ)図2
「
[図:0001431179000004.jpg]
」
イ 甲3に記載されているといえる事項
上記アから、甲3には次の事項が記載されているといえる。
(ア)上記ア(ア)~(イ)から、ベンディングロールの鋼板搬入装置において、フレーム1上に、鋼板Wの位置決めをする第一の調整手段2が設けられることが開示されているといえる。
(イ)上記(ウ)に示された図2から、フレーム1と、ボトムロールB等からなる成形する機構(以下「ベンディングロール本体」という。)が切り離されて、ベンディングロール本体に対して鋼板Wを搬入する側に設けられていることが開示されているといえる。
ウ 甲3記載の技術的事項
上記ア~イから、甲3には、次の技術的事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「鋼板Wの位置決めをする第一の調整手段2がフレーム1上に配置されており、この第一の調整手段2が配置されたフレーム1は、ベンディングロール本体とは切り離されて、前記ベンディングロール本体に対して前記鋼板Wを搬入する側に設けられていること。」
(5)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、上記第4の1(3)アに示した一致点で一致し、上記第4の1(3)イに示した相違点1で相違している。
(6)相違点1に対する当審の判断
甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成に至るためには、再配置部材装置6が設けられたベース構造フレーム4と曲げ加工機3とのヒンジアーム7による接続(以下「構成A」という。)を切り離すこととなる。
ここで、甲2記載の技術的事項、甲3記載の技術的事項にも示されるとおり、位置決め機構をベンディングロール本体と切り離して設けることは、本件出願前において周知技術(以下「甲2及び甲3記載の周知の技術的事項」という。)であるといえる。
そこで、甲1発明において、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項を適用して構成Aを切り離すことにつき、当業者が容易に想到し得たか否かについて、以下検討する。
検討にあたっては、まず、構成Aの技術的意義について検討し、その上で、甲1発明に、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項を適用することの容易想到性について検討する。
ア 構成Aの技術的意義に関する甲1の記載
甲1発明においては、再配置部材装置6が設けられたベース構造フレーム4と曲げ加工機3とがヒンジアーム7により接続されるものであるが、そのような構造とした背景として、甲1には次のとおり記載される。
(ア)明細書第6ページ第12行~第20行
「A further drawback of the known systems is the fact that・・・ which would negatively influence the mechanical properties of the same sheet metal.」
<日本語訳>
「 既知のシステムの更なる欠点は、特に大型の板材の場合、曲げ加工において、金属板を曲げ加工機に進行方向と反対方向に2回以上通す必要があることである。これは板材の全領域、特に前端縁部分を1回の通過で曲げることが不可能なためである。サイクル開始時から大型板材の前端縁部分を直接曲げようとすると、危険で困難な作業となり、曲げ加工時に生じるものとは反対の機械的応力や変形が板材に生じ、同じ金属板の機械的特性に悪影響を及ぼす可能性がある。」(甲1翻訳文第5頁30行~第35行)
(イ)明細書第8ページ第9行~第33行
「OBJECTS OF THE INVENTION
An object of the invention is ・・・involved in the process also reducing the number of operators required.」
<日本語訳>
「本発明の目的
本発明の目的は、既存の金属板曲げ加工システムを改良することである。
もう一つの目的は、極めて汎用性が高く、モジュール式で、容易に運搬でき、様々な形状の金属板に適応可能な技術的解決策を提供することである。これにより、金属板の形状や形状に関わらず、金属板の全面にわたって均一な効果的な支持作用が確保される。
もう一つの目的は、曲げサイクルの高速化、生産時間の短縮、そしてデッドタイムの大幅な短縮を可能にする技術的解決策を提供することである。特に、相当な寸法の円錐台構造の曲げ加工において、その利点は顕著である。
さらなる目的は、加工対象となる板金に不必要な応力がかかるのを防ぎ、得られる半製品の品質を向上させ、工程エラーのリスクや製品表面全体にわたる寸法差(例えば、円錐台形または円筒形構造の直径差)を排除するソリューションを提供することである。
もう一つの目的は、曲げ加工を容易にし、加工に携わる作業員にとって完全な安全と快適性を保ちながら加工を実施し、必要な作業員数を削減するソリューションを提供することである。」(甲1翻訳文第7頁第4行~第24行)
(ウ)明細書第17ページ第7行~第18ページ第10行
「The apparatus 1 comprises a device 5 (or even more) of lifting and tilting ・・・ between the upper and lower pinching rollers 15 of the bending machine 3.」
<日本語訳>
「 装置1は、搬送モジュールMを支持する構造フレーム4の位置を、水平位置G0から傾斜位置G1へ変化させるように構成された昇降・傾斜装置5(1つ以上)を備える。この傾斜位置G1では、支持・搬送面Pが曲げ加工機3に向かって下方へ傾斜する。
支持・搬送面P全体を傾斜させ、金属板を完全に平坦な状態に維持することで、後述するように、曲げ加工機3を最初に(場合によっては一度だけ)通過した時点で、金属板2の頭部または前端縁部を直接曲げることができる。
昇降・傾斜装置5は、金属板の曲率に起因する直接的な外部荷重が伝達されることを防止するため、曲げ加工機3から独立して分離されている。昇降.傾斜装置5は、床面または基礎もしくは独立フレーム上に設置されるように形状が定められており、電動ローラを用いて支持・搬送面Pを大きく持ち上げたり傾斜させたりすることができる。
・・・
ベース構造フレーム4は、ヒンジアーム7を介して曲げ加工機3のベースに回転可能に接続され、曲げ加工機3のローラ15の下方または側方に位置する領域に接続されるのに適した前端部を備える。
ヒンジアーム7との連結は支点として機能し、昇降・傾斜装置5による昇降動作が構造フレーム4の回転に対応する。ヒンジアーム7との接続により、支持面Pから取られた平面が、曲げ加工機3の上部ピンチローラ15と下部ピンチローラ15との間のクランプ領域で金属板2から想定される理想的な変形曲線に対して常に接線方向に維持される。」(甲1翻訳文第13頁第8行~第39行)
(エ)明細書第32ページ第24行~第28行
「From what has been said and shown in the attached drawings, ・・・then reduction of dead times and in conditions of total security for the operators.」
<日本語訳>
「 これまでの説明および添付図面に示した説明から、本発明が、曲げ加工機3における単一の一方向経路で円錐台構造を成形可能な方法および装置1を提供することを可能とするものであることは明らかである。これにより、曲げ加工サイクルの大幅な高速化、無駄時間の短縮、および作業者の安全性の確保が実現される。」(甲1翻訳文第24頁第13行~第16行)
イ 構成Aの技術的意義
上記アから、ヒンジアーム7による接続は、昇降・傾斜装置5による昇降動作が行われた場合に、構造フレーム4の回転の支点として機能するものであって、これによって、支持面Pから取られた平面が、曲げ加工機3の上部ピンチローラ15と下部ピンチローラ15との間のクランプ領域で金属板2から想定される理想的な変形曲線に対して常に接線方向に維持されることで、曲げ加工機3を最初に(場合によっては一度だけ)通過した時点で、金属板2の頭部または前端縁部を直接曲げることができることで、曲げ加工サイクルの大幅な高速化、無駄時間の短縮及び作業者の安全性の確保が実現されるものといえる。
ウ 進歩性の一般的な判断
一般的に、請求項に係る発明の容易想到性を判断するにあたっては、主引用発明から出発して当業者が請求項に係る発明に容易に到達する論理付けができるか否かを判断するところ、主引用発明に副引用発明を適用すると、主引用発明がその目的に反するものとなるような場合には、阻害要因があるとして、進歩性が肯定される方向に働くといえる。(特許・実用新案審査基準第III 部第2章第2節3.「進歩性の具体的な判断」等を参照。)
エ 甲1発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項を適用することの容易想到性について
上記イ~ウを踏まえ、甲1発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項を適用することが当業者にとって容易であったかについて、以下検討する。
(ア)甲1発明と甲2及び甲3記載の周知の技術的事項とは、いずれもベンディングロールに関する技術である点で技術分野が共通しており、位置決め機構がベンディングロール本体に対して金属板を搬入する側に設けられている点で機能・作用が共通するものといえる。
(イ)しかしながら、上記イのとおり、甲1発明は、支持面Pから取られた平面が、曲げ加工機3の上部ピンチローラ15と下部ピンチローラ15との間のクランプ領域で金属板2から想定される理想的な変形曲線に対して常に接線方向に維持するために、ヒンジアーム7による接続が、昇降・傾斜装置5による昇降動作が行われた場合に構造フレーム4の回転の支点として機能するものであるところ、甲1発明から出発して、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項を適用することで、ヒンジアーム7による接続を切り離そうとした場合には、昇降・傾斜装置5による昇降動作が行われた場合の回転の支点が無くなってしまい、曲げ加工機3の上部ピンチローラ15と下部ピンチローラ15との間のクランプ領域で金属板2から想定される理想的な変形曲線に対して常に接線方向に維持することができなくなり、甲1発明の目的に反するものとなるといえる。
(ウ)すなわち、甲1発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項を適用すると、甲1発明の目的に反するものとなるため、その適用には上記ウに示す阻害要因があるといえ、当業者がその適用を容易に想到し得たといえる十分な事情が存在する、ともいうことができない。
(エ)したがって、甲1発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項を適用することで、上記相違点1に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者にとって容易であるということができない。
オ 申立書における主張について
申立人は、相違点1に関連して、申立書において次の主張をしている。
(ア)甲1発明の装置1は、甲1には、装置1のベース構造フレーム4は、ヒンジアーム7を介して曲げ加工機3のベースに回転可能に接続され、曲げ機3のローラ15の下方または側方に位置する領域に接続されるのに適した前端部を備える構成が記載されているものの、甲1の出願当時における既存の曲げ加工機は、このようなヒンジアーム7を備えるよう構成されたものではないことは明らかであるから、既存の曲げ加工機に適応させた装置1は、当該曲げ加工機から分離して切り離されたものである。(申立書第27ページ)
(イ)円筒形または円錐形構造、特に円錐台形構造を形成するための曲げ加工機において金属板を前進させる装置に関し、搬送モジュールを支持するベース構造フレームの位置を、昇降傾斜装置により水平位置および傾斜位置に移動し得るようにし、更に再位置決め・位置補正手段を備えて、曲げ加工サイクルの開始前、および曲げ加工サイクル中において、金属板を正しい位置に位置決めすることによって、甲1に記載の目的を達成し得ることが記載されているから、甲1において、装置1の前端部を曲げ加工機3にヒンジアーム7を介して接続することは、甲1に記載の発明の目的に照らして、必要不可欠な構成ではない。(申立書第27ページ)
(ウ)甲2記載事項や甲3記載事項から分かるように、金属板を位置決めする部材を備えた装置を、曲げ加工機から切り離された状態として構成することは、本件特許の出願当時における従来周知の技術事項である。(申立書第28ページ)
(エ)甲1発明は、円筒形または円錐形構造を成形するための曲げ加工機に向けて金属板を支持した状態で搬送する装置に関するものであり、甲2記載の技術的事項および甲3記載の技術的事項は、円筒形構造を成形するための曲げ加工機に向けて金属板を支持した状態で搬送する装置に関するものであり、技術分野を一にしている。(申立書第28ページ)
(オ)したがって、甲1発明に、甲2及び甲3記載の従来周知の技術事項を適用し、「押圧部材6を備えた搬送モジュールMを支持する装置1」を曲げ加工機3と切り離されているように構成することは、当業者が容易になし得たことである。(申立書第28ページ)
カ 申立書における主張の検討
上記オについて検討する。
上記イで検討したように、甲1発明では、ヒンジアーム7による接続は、昇降・傾斜装置5による昇降動作を行う際の回転の支点として機能するために必要不可欠とされる構成であり、甲1に記載の発明の目的に照らして、必要不可欠な構成ではないとはいえず、甲1発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項を適用することには上記エで示した阻害要因があるといえる。
また、甲1の出願当時における既存の曲げ加工機は、このようなヒンジアーム7を備えるよう構成されたものではないとしても、甲1発明を主発明として容易想到性を検討する以上、上述のとおり、ヒンジアーム7による接続は、昇降・傾斜装置5による昇降動作を行う際の回転の支点として機能するために必要不可欠とされるから、既存の曲げ加工機に装置1を適応させるに際しても、何らかの形で当該曲げ加工機と接続し、昇降・傾斜装置5による昇降動作を行う際の回転の支点を設けるものと考えられ、甲1発明の目的に反してまで、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項を適用する動機があるものとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
(7)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明、並びに、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
2 本件発明2について
本件発明2は、請求項2が請求項1の記載を直接的に引用して記載するものであって、本件発明1の発明特定事項をすべて包含するから、本件発明2は、少なくとも相違点1で甲1発明と相違し、相違点1に係る本件発明2の構成については、当業者が容易に想到し得たということができない。
したがって、本件発明2は、甲1発明、並びに、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第6 申立ての理由3に対する当審の判断
上記第3の2(3)に示される申立ての理由3のとおり、本件発明1~2が甲4に記載された発明及び甲2~甲3に示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明1~2に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるか、以下検討する。
1 本件発明1について
(1)本件発明1の認定
上記第4の1(1)と同様である。
(2)甲4に記載された発明の認定
ア 甲4の記載
甲4には、以下の事項が記載されている。
「【0008】
本発明の請求項1に記載の発明は、図2に示すごとく従来の平行なロールを使ったロールベンディングマシン (1)に、ロールベンディングマシンライン方向 (11)と直角にセンタリング装置パッド移動方向(39)にセンタリング装置パッド(31)~(34)の総称としているセンタリング装置パッド(3)を配置する、このバッドはセンタリング装置パッド(31)と(33)が対となってあり、(32)と(34)が対となって素材(2)の外側に配置する。
素材(2)は扇形状の平板でテーパ管の素材でその頂点に素材頂点(29)があり、この頂点から放射状に素材折り曲げライン位置(21)~(26)を設定する。」
「【0012】
図3に示すごとくセンタリングする事により素材(2)の素材頂点(29)を、ロールベンディングマシン(1)の図2に示すロールベンディングマシンライン方向(11)に対して平面上90度の方向にあるロールベンディングマシンの中央に一致せしめる。
【0013】
その後センタリング装置パッド(3)は、図3に示すセンタリング装置パッド移動方向(39)に移動すると図4に示すごとくの状態になり、今の場合最も近い素材折り曲げライン位置(23)をロールベンディングマシン(1)のロールベンディングマシンライン方向(11)の中央に図8に示すロールベンディングマシン下ロール(12)を回転せしめてロールベンディングマシンライン方向(11)に移動させ図5の状態となり、再度図5に示すセンタリング装置パッド移動方向(39)にセンタリング装置全パッド(3)を移動して再びセンタリングする事により素材(2)の素材頂点(29)を、ロールベンディングマシン(1)のロールベンディングマシンライン方向(11)に対して平面上90度の方向にあるロールベンディングマシンの中央に一致せしめ、図1に示すごとくし、素材折り曲げライン位置(23)がロールベンディングマシン(1)の成形加工位置に設置出来ることになる。
【0014】
設置された素材(2)は、図8に示すロールベンディングマシン下ロール(12)とロールベンディングマシン上ロール(13)でロール加圧移動方向(4)に移動させて従来通りの曲げ加工を行う。
【0015】
以上示した加工を平行なロールベンディングマシンで扇形状の平板を中央に寄せながら、折り曲げ位置を自動調整し素材折り曲げライン位置(20)~(26)と順次加工位置を変えることによって、素材(2)を所定の形状に折り曲げ環状成形し、溶接前のテーパー管素材を提供することが出来る。
【実施例】
【0016】
請求項1の発明の実施形態は平面で示すと図6で、正面からみて図7で、ラインに直角な方向からみた断面図で有る図8に示すごとく、ロールベンディングマシン(1)には、環状成形曲げ加工用のロールベンディングマシン上ロール(13)とロールベンディングマシン下ロール(12)が設置されている、このロールのライン側外側に、センタリング装置パッド(31)~(34)を配設し、センタリング装置パッド(31)~(34)は、図6に示すごとく配置場所により符号をかえているだけで装置としては同じ物又は勝手反対反対(当審注:「反対反対」は「反対」の誤記と認める。)のものであり装置名としてセンタリング装置全パッド(3)と名付けている。
【0017】
図8、図9に示す如く、ベンディングマシン(1)の入り側(1A)、出側(1B)におのおのセンタリング装置(14)を設置する。」
「【0019】
図12に示すごとく、ライン入り側センタリング装置(14)の出力端にはパッド取付け座面(14A)が具備してあり、パッド取付本体(38)下端に具備されたパッド取付本体取付け座面(38B)が脱着自在に取り付けてあり、図6に示すごとくセンタリング装置パッド(31)~(34)と素材(2)の外側四隅に配置する。
【0020】
各配置されたセンタリング装置パッド(31)~(34)は、どれも同様でセンタリング装置全パッド(3)と称していて(3)がセンタリング装置(14)によって素材(2)を中央に寄せるとき平面的に見ると図10に示すごとく。 接触パッド(35)と接触パッド取付け台(36)、傾転取付け台(37)が具備されている。
【0021】
接触パッド(35)は、図10に示す素材の内側の曲面(2A)の場合でも、図11に示す素材の外側の曲面(2B)の場合でも、曲面に追従するよう接触パッド取付け台(36)に軸着され複数枚設置している。
【0022】
接触パッド取付け台(36)は、接触パッド(35)の後方に位置し素材(2)の大きな全体の傾きや接触パッド(35)で対応できない曲面に追従量を補うため傾転軸(36A)により自在に傾くように傾転取付け台(37)に傾き自在に連結してある。
【0023】
傾転取付け台(37)は図12に示すごとく、パッド取付本体(38)と取付け台傾転軸(38A)によって連結してあり、図13に示すごとく素材(2)がロールベンディングマシン(1)のロールベンディングマシン下ロール(12)とロールベンディングマシン上ロール(13)とに挟まれてロール加圧移動方向(4)に加工圧されたとき成形されて変形したとき取付け台傾転軸(38A)を中心に傾転取付け台(37)が傾くようになっている。」
「
[図:0001431179000005.jpg]
」
「
[図:0001431179000006.jpg]
」
「
[図:0001431179000007.jpg]
」
「
[図:0001431179000008.jpg]
」
「
[図:0001431179000009.jpg]
」
イ 甲4に記載されているといえる事項
(ア)段落【0016】及び図8の記載から、ロールベンディングマシン1において、ロールベンディングマシン上ロール13と、ロールベンディングマシン上ロールの下方に配置された2つのロールベンディングマシン下ロール12を備えることが示されているといえる。
(イ)段落【0008】、【0012】~【0015】及び図8の記載、並びに、ロールベンディングマシン1のロールベンディングマシンライン方向11に対して平面上90度の方向にあるロールベンディングマシン1の中央に素材2の素材頂点を一致せしめるようセンタリングされれば、素材2が所定のロール軸方向位置を通過することとなるものといえることから、センタリング装置パッド3は、ロールベンディングマシン上ロール13と2つのロールベンディングマシン下ロール12の間の所定のロール軸方向位置を扇形状の平板である素材2が通過するように前記平板を中央に寄せることが開示されているといえる。
(ウ)段落【0012】~【0015】及び図8の記載、並びに、曲げ成形時に上ロールと下ロールの間で金属板を挟持した状態で曲げ加工を行うことが出願時の技術常識であることから、ロールベンディングマシン1は、ロールベンディングマシン上ロール13とロールベンディングマシン下ロール12を挟持した状態で、ロールベンディングマシン下ロール12を回転することにより、扇形状の平板である素材2を折り曲げ環状成形してテーパー管素材とすることが開示されているといえる。
(エ)段落【0012】及び図3の記載から、センタリング装置パッド3は、平板である素材2を中央に寄せる際には平板の幅方向端部と当接することが示されているといえる。また、段落【0013】~【0014】及び図4の記載から、センタリング装置パッド3は、曲げ加工を行う際には平板である素材2と接触しない位置へ退避することが示されているといえる。
(オ)段落【0019】~【0023】の記載から、センタリング装置14にセンタリング装置パッド3が設置されていることが開示されているといえる。また、段落【0017】及び図8の記載から、ロールベンディングマシン1の入り側1Aと出側1Bにおのおのセンタリング装置14が設置されることが開示されているといえる。また、段落【0008】及び図8の記載から、ロールベンディングマシン1の入り側1Aにセンタリング装置パッド32及び34が対となってあり、出側1Bにセンタリング装置パッド31及び33が対となってあることが開示されているといえる。
ウ 甲4発明
上記ア~イから、甲4に記載された事項を本件発明1に合わせて整理すると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものといえる。
「 ロールベンディングマシン上ロール13と、ロールベンディングマシン上ロールの下方に配置された2つのロールベンディングマシン下ロール12と、前記ロールベンディングマシン上ロール13と2つの前記ロールベンディングマシン下ロール12の間の所定のロール軸方向位置を扇形状の平板である素材2が通過するように前記平板を中央に寄せるセンタリング装置パッド3とを備え、前記ロールベンディングマシン上ロールと前記ロールベンディングマシン下ロールの間で平板である素材2を挟持した状態で、前記ロールベンディングマシン下ロール12を回転することにより、扇形状の平板である前記素材2を折り曲げ環状成形してテーパー管素材とするベンディングロール1において、
前記センタリング装置パッド3は、平板である素材2を中央に寄せる際には平板の幅方向端部と当接し、曲げ加工を行う際には平板である素材2と接触しない位置へ退避するものであり、
センタリング装置パッド3は、ロールベンディングマシン1の入り側1Aにセンタリング装置パッド32及び34が対となって設けられ、出側1Bにセンタリング装置パッド31及び33が対となって設けられるベンディングロール。」
(3)甲2及び甲3記載の技術的事項の認定
上記第5の1(3)~(4)と同様である。
(4)対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点2で相違する。
ア 一致点
「上ロールと、前記上ロールの下方に配された複数の下ロールと、前記上ロールと前記複数の下ロールの間の所定のロール軸方向位置を平面視扇形の金属板が通過するように前記金属板を位置決めする位置決め機構とを備え、前記上ロールと各下ロールの間で金属板を挾持した状態で、前記各下ロールまたは上ロールまたは上下ロールを回転駆動することにより、前記金属板を曲げ成形して円錐台状の成形物とするベンディングロールにおいて、
前記位置決め機構は、前記金属板を位置決めする際は金属板の幅方向端部と当接し、曲げ成形中は金属板と接触しない位置へ退避する位置決め部材を有している、
ベンディングロール。」
イ 相違点2
本件発明1においては、位置決め機構が、ベンディングロール本体と切り離されて、前記ベンディングロール本体に対して前記金属板を搬入する側に設けられているのに対し、甲4発明においては、センタリング装置パッド3は、ロールベンディングマシン1と切り離されているか明記されておらず、ロールベンディングマシン1の入り側1Aにセンタリング装置パッド32及び34が対となって設けられ、出側1Bにセンタリング装置パッド31及び33が対となって設けられる点。
(5)相違点2に対する当審の判断
甲4発明において、相違点2に係る本件発明1の構成に至るためには、センタリング装置3をロールベンディングマシン1と切り離し、ロールベンディングマシン1の入り側1Aに設けることとなる。
ここで、甲2記載の技術的事項、甲3記載の技術的事項にも示されるとおり、位置決め機構をベンディングロール本体と切り離し、ベンディングロール本体の金属板を搬入する側に設けることは、本件出願前において周知技術(以下「甲2及び甲3記載の周知の技術的事項A」という。)であるといえる。
そこで、甲4発明において、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項Aを適用して、相違点2に係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到し得たかについて、以下検討する。
検討にあたっては、まず、甲4発明における、ロールベンディングマシン1の入り側1Aにセンタリング装置パッド32及び34が対となって設けられ、出側1Bにセンタリング装置パッド31及び33が対となって設けられる構成(以下「構成B」という。)の技術的意義について検討し、甲4発明に、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項Aを適用することの容易想到性について検討する。
ア 構成Bの技術的意義に関する甲4の記載
甲4発明においては、センタリング装置パッド3は、ロールベンディングマシン1の入り側1Aにセンタリング装置パッド32及び34が対となって設けられ、出側1Bにセンタリング装置パッド31及び33が対となって設けられるものであるが、そのような構造とした背景として、甲4には次のとおり記載される。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、従来技術によれば、いずれの場合もロールベンディングマシンを、特別に設置しなくてはその加工が困難であり、少量大口径のテーパ管製造には不向きであり、管理、工程の面で複雑であり、曲げ加工に要するコスト面でも割高になるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、平行管もテーパー管も製作可能なように、管を製作するときに、図1に示すごとく素材(2)をロールベンディングマシン(1)の中央へ寄せる事により、曲げる角度位置を変えて加工し、作業性の向上と折り曲げ工程の集約による加工コストのダウンを行うものである。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、この発明によれば、ロールベンディングマシン(1)に、センタリング装置を設置すれば同一機械で、円筒管もテーパ管もローラー曲げが出来、作業性の向上と折り曲げ工程の集約による加工コストのダウンを得る事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明は、図2に示すごとく従来の平行なロールを使ったロールベンディングマシン(1)に、ロールベンディングマシンライン方向(11)と直角にセンタリング装置パッド移動方向(39)にセンタリング装置パッド(31)~(34)の総称としているセンタリング装置パッド(3)を配置する、このバッドはセンタリング装置パッド(31)と(33)が対となってあり、(32)と(34)が対となって素材(2)の外側に配置する。
素材(2)は扇形状の平板でテーパ管の素材でその頂点に素材頂点(29)があり、この頂点から放射状に素材折り曲げライン位置(21)~(26)を設定する。」
「【0010】
今素材(2)は、センタリング装置パッド(31)~(34)の内側に挿入してあり、ロールベンディングマシンライン方向(11)に対して傾いて挿入され当然ながら素材頂点(29)もロールベンディングマシン(1)のロールベンディングマシンライン方向(11)に対して平面上90度の方向にあるロールベンディングマシンの中央と一致していない。
【0011】
図3は、図2においてセンタリング装置パッド(3)を図2に示すセンタリング装置パッド移動方向(39)に移動して素材(2)をロールベンディングマシンライン方向(11)と直角な方向の中央にセンタリングした直後を模式的に表現している。
【0012】
図3に示すごとくセンタリングする事により素材(2)の素材頂点(29)を、ロールベンディングマシン(1)の図2に示すロールベンディングマシンライン方向(11)に対して平面上90度の方向にあるロールベンディングマシンの中央に一致せしめる。
【0013】
その後センタリング装置パッド(3)は、図3に示すセンタリング装置パッド移動方向(39)に移動すると図4に示すごとくの状態になり、今の場合最も近い素材折り曲げライン位置(23)をロールベンディングマシン(1)のロールベンディングマシンライン方向(11)の中央に図8に示すロールベンディングマシン下ロール(12)を回転せしめてロールベンディングマシンライン方向(11)に移動させ図5の状態となり、再度図5に示すセンタリング装置パッド移動方向(39)にセンタリング装置全パッド(3)を移動して再びセンタリングする事により素材(2)の素材頂点(29)を、ロールベンディングマシン(1)のロールベンディングマシンライン方向(11)に対して平面上90度の方向にあるロールベンディングマシンの中央に一致せしめ、図1に示すごとくし、素材折り曲げライン位置(23)がロールベンディングマシン(1)の成形加工位置に設置出来ることになる。
【0014】
設置された素材(2)は、図8に示すロールベンディングマシン下ロール(12)とロールベンディングマシン上ロール(13)でロール加圧移動方向(4)に移動させて従来通りの曲げ加工を行う。
【0015】
以上示した加工を平行なロールベンディングマシンで扇形状の平板を中央に寄せながら、折り曲げ位置を自動調整し素材折り曲げライン位置(20)~(26)と順次加工位置を変えることによって、素材(2)を所定の形状に折り曲げ環状成形し、溶接前のテーパー管素材を提供することが出来る。」
「【0020】
各配置されたセンタリング装置パッド(31)~(34)は、どれも同様でセンタリング装置全パッド(3)と称していて(3)がセンタリング装置(14)によって素材(2)を中央に寄せるとき平面的に見ると図10に示すごとく。 接触パッド(35)と接触パッド取付け台(36)、傾転取付け台(37)が具備されている。
」
「【0023】
傾転取付け台(37)は図12に示すごとく、パッド取付本体(38)と取付け台傾転軸(38A)によって連結してあり、図13に示すごとく素材(2)がロールベンディングマシン(1)のロールベンディングマシン下ロール(12)とロールベンディングマシン上ロール(13)とに挟まれてロール加圧移動方向(4)に加工圧されたとき成形されて変形したとき取付け台傾転軸(38A)を中心に傾転取付け台(37)が傾くようになっている。
【0024】
以上の装置を4箇所設置していると、素材(2)の寸法が、テーパー管の種類によって変わっても又所定の形状に折り曲げ途中の時でも確実に素材(2)を、センタリング出来る。」
イ 構成Bの技術的意義
上記アから、センタリング装置パッド3は、ロールベンディングマシン1の入り側1Aにセンタリング装置パッド32及び34が対となって設けられ、出側1Bにセンタリング装置パッド31及び33が対となって設けられることで、素材2の素材頂点29を、ロールベンディングマシン1のロールベンディングマシンライン方向11に対して平面上90度の方向にあるロールベンディングマシンの中央に一致せしめる機能を果たし、これにより順次加工位置を変えることによって、素材2を所定の形状に折り曲げ環状成形し、溶接前のテーパー管素材を提供することが出来るとともに、センタリング装置パッド3の傾転取付け台37が、素材2が成形されて変形したときに取付け台傾転軸38Aを中心に傾くようになっており、この装置を4箇所設置していると、素材2の寸法が、テーパー管の種類によって変わっても又所定の形状に折り曲げ途中の時でも確実に素材2をセンタリング出来ることで、作業性の向上と折り曲げ工程の集約による加工コストのダウンを行うものといえる。
ウ 進歩性の一般的な判断
請求項に係る発明の容易想到性の一般的な判断については、上記第5の1(6)ウのとおりである。
エ 甲4発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項を適用することの容易想到性について
上記イ~ウを踏まえ、甲4発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項Aを適用することが当業者にとって容易であったかについて以下検討する。
(ア)甲4発明と甲2及び甲3記載の周知の技術的事項Aとは、いずれもベンディングロールに関する技術である点で技術分野が共通しており、位置決め機構を有する点で機能・作用が共通するものといえる。
(イ)甲4発明におけるセンタリング装置パッド3において、所定の形状に折り曲げ途中の時でも確実に素材2をセンタリングするために、傾転取付け台37が、素材2が成形されて変形したときに取付け台傾転軸38Aを中心に傾くものであるところ、センタリング装置パッド3がロールベンディングマシン1の曲げ加工を行う場所から離れて設置されてしまうと、特に平板が扇型形状であることからも、曲げ加工前の扇型状態で当接すべき位置と、曲げ加工後のテーパー管状態とで当接すべき位置が大きく乖離してしまうから、所定の形状に折り曲げ途中の時でもセンタリング装置パッド3を当接させるためには、より複雑でより大型な機構が必要になるものといえる。そして、甲4発明において、4箇所(二対)のセンタリング装置パッド3を、ロールベンディングマシン1の入り側1Aに設けようとした場合には、二対のセンタリング装置パッド3のうちの一対は、曲げ加工を行う箇所から離れて設置されることになるから、所定の形状に折り曲げ途中の時でもセンタリング装置パッド3を当接させるためにより複雑でより大型な機構が必要となることから、加工のコストが高くなるものといえる。そうすると、甲4発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項Aを適用しようとすることで、二対のセンタリング装置パッド3をロールベンディングマシン1の入り側1Aに設けようとすることは、加工コストのダウンを行うという甲4発明の目的に反するものといえる。
(ウ)すなわち、甲4発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項Aを適用すると、甲4発明の目的に反するものとなるため、その適用には上記ウに示す阻害要因があるといえ、当業者がその適用を容易に想到し得たといえる十分な事情が存在する、ともいうことができない。
(エ)したがって、甲4発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項Aを適用することで、上記相違点2に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者にとって容易であるということができない。
オ 申立書における主張について
申立人は、相違点2に関連して、申立書において次の主張をしている。
(ア)甲2記載事項や甲3記載事項から分かるように、曲げ加工機から切り離された装置に、金属板を位置決めする部材を配置することは、本件特許の出願当時における従来周知の技術事項である。(申立書第31ページ)
(イ)そして、甲2号証、甲3号証および甲4号証は、何れも金属板を曲げ加工するベンディングロールに関するものであり、何れも技術分野を一にしている。(申立書第31ページ)
(ウ)したがって、甲4発明に甲2記載事項や甲3記載事項に記載された周知技術を適用し、甲4発明のセンタリング装置パッドを、曲げ加工機から切り離された装置に配置して、相違点Bのように構成することは、当業者が容易になしえたことである。(申立書第31ページ)
カ 申立書における主張の検討
上記エ(ウ)で示したとおり、甲4発明に甲2及び甲3に記載の周知の技術的事項Aを適用し、甲4発明のセンタリング装置パッドを、曲げ加工機から切り離された装置に配置して、金属板を搬入する側に設けることには阻害要因が存在するから、上記オ(ア)~(イ)の主張を考慮しても、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
また、申立人からは、当該阻害要因の存在に対し、進歩性が否定される方向に働く十分な事情が存在する旨の主張は何らなされていない。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
(6)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲4発明、並びに、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
2 本件発明2について
本件発明2は、請求項2が請求項1の記載を直接的に引用して記載するものであって、本件発明1の発明特定事項をすべて包含するから、本件発明2は、少なくとも相違点2で甲4発明と相違し、相違点2に係る本件発明2の構成については、当業者が容易に想到し得たということができない。
したがって、本件発明2は、甲4発明、並びに、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第7 申立ての理由4に対する当審の判断
上記第3の2(4)に示される申立ての理由4のとおり、本件発明1~2が甲4に記載された発明、甲1に記載された発明及び甲2~甲3に示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明1~2に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるか、以下検討する。
1 本件発明1について
(1)本件発明1の認定
上記第4の1(1)と同様である。
(2)甲4に記載された発明の認定
上記第6の1(2)と同様である。
(3)甲1に記載された技術的事項の認定
上記第4の1(2)から、甲1には、次の技術的事項(以下「甲1記載の技術的事項」という。)が示されているといえる。
「再配置部材装置6を、曲げ加工機3に対して金属板2を搬入する側に設けること。」
(4)甲2及び甲3に記載された技術的事項の認定
上記第5の1(3)~(4)と同様である。
(5)対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、両者は、上記第6の1(4)アに示した一致点で一致し、上記第6の1(4)イに示した相違点2で相違している
(6)相違点2に対する当審の判断
ア 甲4発明に甲2及び甲3記載の周知の技術的事項A並びに甲1記載の技術的事項を適用することの容易想到性について
申立ての理由4は、進歩性欠如の理由として、申立ての理由3に加え、副引用文献としてさらに甲1記載の技術的事項の甲4発明への適用を試みるものである。
しかしながら、上記第6の1(5)で示したとおり、甲4発明において、4箇所(二対)のセンタリング装置パッド3を、ロールベンディングマシンの入り側1Aに設けることには阻害要因がある。そして、甲4発明と、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項A、並びに、甲1記載の技術的事項との間で、技術分野の関連性や機能・作用の共通性があったとしても、甲4発明の目的に反してまで、上記相違点2に係る本件発明1のように改変することを、当業者が容易に想到し得たといえる十分な事情が存在する、ともいうことができない。
したがって、甲4発明に、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項A、並びに、甲1記載の技術的事項を適用することで、上記相違点2に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者にとって容易であるということができない。
イ 申立書における主張について
申立人は、相違点2に関連して、申立書において次の主張をしている。
(ア)甲1には、ヒンジアーム7を備えていない既存の曲げ加工機に「押圧部材6を備えた搬送モジュールMを支持する装置1」を適応した場合に、既存の曲げ加工機から分離して切り離された状態となることが記載されているか、少なく、当該装置1を、曲げ加工機から切り離された状態とすることが、甲1に示唆されている。(申立書第34ページ)
(イ)甲2記載事項や甲3記載事項から分かるように、金属板を位置決めする部材を備えた装置を、曲げ加工機から切り離された状態とすることは、本件特許の出願当時における従来周知の技術事項である。(申立書第34ページ)
(ウ)甲1~甲4は、何れも円筒形または円錐形構造を形成するための曲げ加工機に関するものであり、技術分野を一にしているから、甲4発明に、甲1記載事項および周知技術を適用して、センタリング装置パッド31~34を、ロールベンディングマシン1の上流側に配置した装置に配置し、この上流側に配置した装置を、ロールベンディングマシン1と切り離されているように構成して、相違点のように構成することは、当業者が容易になしえたことである。(申立書第34ページ)
ウ 申立書における主張の検討
上記アで示したとおり、甲1~甲4の技術分野が同一であったとしても、甲4発明に甲1記載の技術的事項、及び、甲2及び甲3に記載された周知の技術的事項Aを適用し、甲4発明のセンタリング装置パッドを、曲げ加工機から切り離された装置に配置して、金属板を搬入する側に設けることには阻害要因が存在するから、上記イ(ア)~(ウ)の主張を考慮しても、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
また、申立人からは、当該阻害要因の存在に対し、進歩性が否定される方向に働く十分な事情が存在する旨の主張は何らなされていない。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
(7)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲4発明、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項A、並びに、甲1記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
2 本件発明2について
本件発明2は、請求項2が請求項1の記載を直接的に引用して記載するものであって、本件発明1の発明特定事項をすべて包含するから、本件発明2は、少なくとも相違点2で甲4発明と相違し、相違点2に係る本件発明2の構成については、当業者が容易に想到し得たということができない。
したがって、本件発明2は、甲4発明、甲2及び甲3記載の周知の技術的事項A、並びに、甲1記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第8 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~2に係る特許は、上記第3に示した申立書に記載された申立ての理由1~4によっては、取り消すことはできない。また、本件特許の請求項1~2に係る特許を取り消すべき他の理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700952