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特許異議申立

2016-700589

電気掃除機

審判番号
2016-700589
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2011-186355
登録番号
特許第5840424号(P5840424)
請求日
2016年07月04日
審決日
2017年02月21日
公報発行日
2017年05月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東芝ライフスタイル株式会社
  • 【権利者代理人】樺澤 襄
  • 【権利者代理人】樺澤 聡
  • 【権利者代理人】山田 哲也
  • 【異議申立人】浅野 文雄
  • 【異議申立人】山田 宏基
審判長/審判官
  • 審判長 田村 嘉章
  • 審判官 佐々木 正章
  • 審判官 結城 健太郎
分類
P1651.113-YAA(A47L) / P1651.121-YAA(A47L) / P1651.537-YAA(A47L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5840424号発明「電気掃除機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5840424号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、3〕について訂正することを認める。 特許第5840424号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5840424号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成23年8月29日に特許出願され、平成27年11月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人浅野 文雄及び山田 宏基により特許異議申立がなされ、当審において平成28年9月23日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年11月28日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、その訂正の請求に対して特許異議申立人浅野 文雄から平成29年1月4日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成28年11月28日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5840424号の明細書および特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書および特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1、2および3について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1に「電動送風機を収容した掃除機本体と、扁平形状の扁平部を少なくとも一部に備え、前記電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部と、前記扁平部の長手方向に対向配置された発光部および受光部を備え、前記発光部から発光された光の前記受光部での受光量に基づき前記風路を通過する塵埃量を検出する光センサとを具備したことを特徴とした電気掃除機。」とあるのを、「電動送風機を収容した掃除機本体と、扁平形状の扁平部を一部に備え、この扁平部にこの扁平部の上流側を構成する上流側風路部が形成され、前記掃除機本体に配置されて、前記電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部と、前記上流側風路部にて前記扁平部の長手方向に対向配置された発光部および受光部を備え、前記発光部から発光された光の前記受光部での受光量に基づき前記風路を通過する塵埃量を検出する光センサとを具備したことを特徴とした電気掃除機。」と訂正する。 (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項2に「扁平部は、少なくとも一部が屈曲状に形成され、光センサの発光部および受光部は、前記扁平部内の屈曲している部分の屈曲形状の外側寄りに配置されていることを特徴とした請求項1記載の電気掃除機。」とあるのを、「電動送風機を収容した掃除機本体と、扁平形状の扁平部を一部に備え、この扁平部に、この扁平部の上流側を構成する上流側風路部、下流側を構成する下流側風路部、および、これら上流側風路部および下流側風路部を連通して屈曲状に形成された屈曲部が形成され、前記掃除機本体に配置されて、前記電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部と、前記屈曲部にてこの屈曲部の屈曲形状の外側寄りに配置され、前記扁平部の長手方向に対向配置された発光部および受光部を備え、前記発光部から発光された光の前記受光部での受光量に基づき前記風路を通過する塵埃量を検出する光センサとを具備したことを特徴とした電気掃除機。」と訂正する。 (訂正事項3) 特許請求の範囲の請求項3に「扁平部は、下方に向けて傾斜し互いに対向する傾斜面を有し、光センサの発光部および受光部は、前記扁平部の前記傾斜面に配置されていることを特徴とした請求項2記載の電気掃除機。」とあるのを、「扁平部は、下方に向けて傾斜しこの扁平部の長手方向に互いに対向する傾斜面を有し、光センサの発光部および受光部は、前記扁平部の屈曲部にて前記傾斜面に配置されていることを特徴とした請求項2記載の電気掃除機。」と訂正する。 (訂正事項4) 明細書の【0008】に「実施形態の電気掃除機は、電動送風機を収容した掃除機本体を有する。また、この電気掃除機は、扁平形状の扁平部を少なくとも一部に備え、電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部を有する。さらに、この電気掃除機は、扁平部の長手方向に対向配置された発光部および受光部を備え、発光部から発光された光の受光部での受光量に基づき風路を通過する塵埃量を検出する光センサを有する。」とあるのを、「実施形態の電気掃除機は、電動送風機を収容した掃除機本体を有する。また、この電気掃除機は、扁平形状の扁平部を一部に備え、この扁平部にこの扁平部の上流側を構成する上流側風路部が形成され、掃除機本体に配置されて、電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部を有する。さらに、この電気掃除機は、上流側風路部にて扁平部の長手方向に対向配置された発光部および受光部を備え、発光部から発光された光の受光部での受光量に基づき風路を通過する塵埃量を検出する光センサを有する。」と訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 上記訂正事項1は、「扁平部を少なくとも一部に備え」る「風路形成部」に対して、「扁平部を一部に備え、この扁平部にこの扁平部の上流側を構成する上流側風路部が形成され、前記掃除機本体に配置されて」いることを限定し、「発光部および受光部」の位置を「上流側風路部」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項1で限定した事項は、本件明細書の【0015】の「本体ケース25の内部には、これら本体部31と突出受部32とに亘って、内部に風路Wを区画するダクト部である風路形成部33が配置されている。」との記載、【0022】の「風路形成部33は、・・・この導入部67に連通し本体部31内に位置する扁平部としての風路形成部本体68とが連続して形成されている。」との記載、【0024】の「また、風路形成部本体68は、上流側を構成し前後方向に沿って延びる上流側風路部68aと、下流側を構成し上下方向に沿って伸びる下流側風路部68bと、これら風路部68a,68bを連通する屈曲部68cとを備えている。」との記載、【0025】の「そして、この上流側風路部68aには、風路Wを通過する塵埃量を検出する光センサ71が配置されている。」との記載及び図2の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 上記訂正事項2は、請求項1の引用関係を解消するとともに、「扁平部を少なくとも一部に備え」る「風路形成部」に対して、「扁平形状の扁平部を一部に備え、この扁平部に、この扁平部の上流側を構成する上流側風路部、下流側を構成する下流側風路部、および、これら上流側風路部および下流側風路部を連通して屈曲状に形成された屈曲部が形成され、前記掃除機本体に配置されて」いることを限定し、「発光部および受光部」の配置について、「扁平部内の屈曲している部分の屈曲形状の外側寄り」を「屈曲部にてこの屈曲部の屈曲形状の外側寄り」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項2で限定した事項は、本件明細書の【0015】の「本体ケース25の内部には、これら本体部31と突出受部32とに亘って、内部に風路Wを区画するダクト部である風路形成部33が配置されている。」との記載、【0022】の「風路形成部33は、・・・この導入部67に連通し本体部31内に位置する扁平部としての風路形成部本体68とが連続して形成されている。」との記載、【0024】の「また、風路形成部本体68は、上流側を構成し前後方向に沿って延びる上流側風路部68aと、下流側を構成し上下方向に沿って伸びる下流側風路部68bと、これら風路部68a,68bを連通する屈曲部68cとを備えている。」との記載、【0056】の「上記第1の実施形態の光センサ71が、風路形成部33の風路形成部本体68の屈曲部68c内の屈曲形状の外側寄りに配置されているものである。」との記載及び図2、6の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 上記訂正事項3は、互いに対向する傾斜面が「扁平部の長手方向」であることを限定し、光センサの発光部および受光部の配置を「扁平部」から「扁平部の屈曲部」へと限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項3で限定した事項は、本件明細書の【0056】の「上記第1の実施形態の光センサ71が、風路形成部33の風路形成部本体68の屈曲部68c内の屈曲形状の外側寄りに配置されているものである。」及び【0059】の「この第3の実施形態は、上記各実施形態の第1辺部Pa,Paに代えて、下方に向けて傾斜している傾斜面である第1辺部Pa1,Pa1を互いに対向して備えるものである。すなわち、これら第1辺部Pa1,Pa1は、それぞれ上側が下側よりも風路Wの中心側へと突出している。」との記載及び図2、6、7の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 上記訂正事項4は、訂正事項1と整合させるための明細書の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項4は、上記(1)ウのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1、〔2、3〕についての訂正を認める。 第3 特許異議申立について 1 本件発明 本件訂正の請求により訂正された訂正請求項1~3に係る発明(以下訂正請求項1~3に記載された発明を「本件発明1~3」、また、これらをあわせて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 電動送風機を収容した掃除機本体と、 扁平形状の扁平部を一部に備え、この扁平部にこの扁平部の上流側を構成する上流側風路部が形成され、前記掃除機本体に配置されて、前記電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部と、 前記上流側風路部にて前記扁平部の長手方向に対向配置された発光部および受光部を備え、前記発光部から発光された光の前記受光部での受光量に基づき前記風路を通過する塵埃量を検出する光センサと を具備したことを特徴とした電気掃除機。 【請求項2】 電動送風機を収容した掃除機本体と、 扁平形状の扁平部を一部に備え、この扁平部に、この扁平部の上流側を構成する上流側風路部、下流側を構成する下流側風路部、および、これら上流側風路部および下流側風路部を連通して屈曲状に形成された屈曲部が形成され、前記掃除機本体に配置されて、前記電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部と、 前記屈曲部にてこの屈曲部の屈曲形状の外側寄りに配置され、前記扁平部の長手方向に対向配置された発光部および受光部を備え、前記発光部から発光された光の前記受光部での受光量に基づき前記風路を通過する塵埃量を検出する光センサと を具備したことを特徴とした電気掃除機。 【請求項3】 扁平部は、下方に向けて傾斜しこの扁平部の長手方向に互いに対向する傾斜面を有し、 光センサの発光部および受光部は、前記扁平部の屈曲部にて前記傾斜面に配置されている ことを特徴とした請求項2記載の電気掃除機。 2 取消理由の概要 当審において、請求項1~3に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 甲第1号証:特開2010-4997号公報(平成28年7月4日の特許異議申立書(以下「特許異議申立書A」という。)) 甲第3号証:特開平1-314531号公報(特許異議申立書A) 甲第4号証:特許第3327393号公報(特許異議申立書A) 甲第5号証:特表昭64-500060号公報(特許異議申立書A) 甲第6号証:実公平7-26688号公報(特許異議申立書A) 甲第7号証:特開平2-131733号公報(平成28年7月5日の特許異議申立書(以下「特許異議申立書B」という。)の甲第1号証) 甲第8号証:特開2008-49074号公報(特許異議申立書Bの甲第3号証) 甲第9号証:特開2009-22338号公報(特許異議申立書Bの甲第4号証) (1)特許法第36条第6項第2号 請求項1~3の記載は、「掃除機本体」、「風路形成部」、「扁平部」、「発光部および受光部」の関係が不明確であるから、請求項1~3に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)特許法第36条第6項第1号 本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 (3)特許法第29条第1項第3号 本件発明は、甲第1号証記載の発明である。 本件発明1は、甲第7号証記載の発明である。 よって、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (4)特許法第29条第2項 請求項1~3に係る発明は、甲第3号証及び甲第4~6号証に示す周知技術、又は甲第7号証及び甲第8、9号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 3 甲各号証の記載 (1)甲第1号証 甲第1号証(【0016】~【0029】、【0036】、図3、図5)には、「電動送風機7を収容した掃除機本体4と、この掃除機本体4とは別体の掃除機用吸込具1と、この掃除機用吸込具1に設けられ、電動送風機7の吸い込み側に連通する連通路24の左右両側に対向配置された発光ダイオードおよびホトダイオードを備え、発光ダイオードから発光された光のホトダイオードでの受光量に基づき連通路24を通過する塵埃量を検出する検知部40とを備える電気掃除機」という発明が記載されている(以下「甲1発明」という。)。 (2)甲第3号証 甲3号証(1頁左欄下から6~4行、2頁右上欄17行~右下欄7行)には、「操作ハンドル8に一体に形成された吸込み通路7と、この吸い込み通路7に形成されたテーパー部9と、このテーパー部9の上下に対向配置された発光素子3および受光素子4を備え、発光素子3から発光された光の受光量に基づき吸込み通路7を通過する塵埃量を検出する塵検知装置とを備えた電気掃除機」という発明が記載されている(以下「甲3発明」という。)。 (3)甲第7号証 甲7号証(2頁左下欄2行~3頁左上欄末行、3頁左下欄14行~右下欄1行)には、「電動送風機(2)を収容した電気掃除機本体(1)と、この電気掃除機本体(1)とは別体の床ブラシ(10)と、床ブラシ(10)に回転可能に設けられ左右に形成された嵌合部(32)を有し、電動送風機(2)の吸込側に連通する風路を形成するエルボ(15)と、嵌合部(32)の回転中心である両軸に対向配置された発光ダイオード(33)およびホトダイオード(35)を備え、発光ダイオード(33)から発光された光のホトダイオード(35)での受光量に基づき風路を通過する塵埃量を検出する塵埃検知器とを備える電気掃除機」という発明が記載されている(以下「甲7発明」という。)。 4 判断 (1)特許法第36条第6項第2号について (1-1)本件発明1 本件発明1の「扁平形状の扁平部を一部に備え、この扁平部にこの扁平部の上流側を構成する上流側風路部が形成され、前記掃除機本体に配置されて、前記電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部と、」とは、「扁平部」と「上流側風路」との関係について、以下の2つの解釈が取りうる。 (a)「扁平部」の一部として「上流側風路部」が形成されているという解釈。 (b)「扁平部」とは別の構成として、「上流側風路部」が形成されているという解釈。 そこで、本件明細書の記載を参酌すると、本件明細書には、「風路形成部33は、・・・、突出受部32内に位置して前後方向に沿う長手状の導入部67と、この導入部67に連通し本体部31内に位置する扁平部としての風路形成部本体68とが連続して形成されている。」(【0022】)ものであって、「風路形成部本体68は、上流側を構成し前後方向に沿って延びる上流側風路部68aと、下流側を構成し上下方向に沿って伸びる下流側風路部68bと、これら風路部68a,68bを連通する屈曲部68cとを備えている。そして、この風路形成部本体68の全体は、断面形状(風路Wの軸線方向に直交する断面形状)が左右幅方向に長手方向を有する扁平な多角形状である長方形状となっている。」(【0024】)と記載されており、図2も参酌すると、風路形成部33は、導入部67と扁平部としての風路形成部本体68とからなり、風路形成部本体68は、上流側風路部68a、下流側風路部68b及び屈曲部68cとからなるものであるから、上流側風路部68aが風路形成部本体68である扁平部の一部であることは明らかである。 そして、本件明細書には、「扁平部」とは別の構成として、「上流側風路部」を形成するものは記載されておらず、「扁平部」の一部として「上流側風路部」が形成されていると理解できる。 そうすると、本件訂正により、本件発明1は、「掃除機本体」、「風路形成部」、「扁平部」、「発光部および受光部」の関係が明確となったものである。 したがって、本件発明1は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものであり、取り消されるべきものであるとはいえない。 (1-2)本件発明2、3 本件発明2、3は、「扁平形状の扁平部を一部に備え、この扁平部に、この扁平部の上流側を構成する上流側風路部、下流側を構成する下流側風路部、および、これら上流側風路部および下流側風路部を連通して屈曲状に形成された屈曲部が形成され、前記掃除機本体に配置されて、前記電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部と、前記屈曲部にてこの屈曲部の屈曲形状の外側寄りに配置され、前記扁平部の長手方向に対向配置された発光部および受光部を備え、前記発光部から発光された光の前記受光部での受光量に基づき前記風路を通過する塵埃量を検出する光センサとを具備し」たものであるから、「掃除機本体」、「風路形成部」、「扁平部」、「発光部および受光部」の関係は明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものであり、取り消されるべきものであるとはいえない。 (2)特許法第36条第6項第1号について 特許異議申立人浅野 文雄は、上記ア(b)の解釈を採れば、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載した内容を超えるものを含んでいる旨主張する(平成29年1月4日付け意見書2頁11行~3頁20行)。 しかし、上記(1)(1-1)のとおり、本件発明1は上記(a)と解釈出来るものであり、「扁平部」から離れた領域に「発光部および受光部」を「対向配置」させる態様を含まないものである。 したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載した内容を超えるものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものであるから、取り消されるべきものであるとはいえない。 (3)特許法第29条第1項第3号について (3-1)本件発明1 本件発明1と甲1、7発明とを対比するに、甲1発明の「電動送風機7」及び甲7発明の「電動送風機(2)」は、その作用及び構造から、本件発明1の「電動送風機」に相当し、同様に「掃除機本体4」及び「電気掃除機本体(1)」は「掃除機本体」に、「電動送風機7の吸い込み側に連通する連通路24」及び「電動送風機(2)の吸込側に連通する風路」は「電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部」に、「発光ダイオードおよびホトダイオード」及び「発光ダイオード(33)およびホトダイオード(35)」は「発光部および受光部」に、「発光ダイオードから発光された光のホトダイオードでの受光量に基づき連通路24を通過する塵埃量を検出する検知部40」及び「発光ダイオード(33)から発光された光のホトダイオード(35)での受光量に基づき風路を通過する塵埃量を検出する塵埃検知器」は「前記発光部から発光された光の前記受光部での受光量に基づき前記風路を通過する塵埃量を検出する光センサ」に、それぞれ相当する。 そうすると、本件発明1と甲1、7発明とは、少なくとも光センサについて、本件発明1では掃除機本体に配置されているのに対して、甲1発明では掃除機本体4とは別体の掃除機用吸込具に、甲7発明では電気掃除機本体(1)とは別体の床ブラシ(10)に回転可能に設けられたエルボ(15)に配置されている点で相違する。 そして、甲1発明の掃除機用吸込具及び甲7発明のエルボ(15)は掃除機本体とは別体であるから、本件発明1は甲1発明又は甲7発明であるとはいえない。 (3-2)本件発明2、3 本件発明2及び3と甲1発明と対比すると、少なくとも光センサについて、本件発明1では掃除機本体に配置されているのに対して、甲1発明では掃除機本体4とは別体の掃除機用吸込具に配置されている点で相違し、本件発明2及び3は甲1発明であるとはいえない。 (3-3)まとめ したがって、本件発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものとはいえない。 (4)特許法第29条第2項について (4-1)本件発明1 本件発明1と甲3、7発明とを対比するに、少なくとも光センサについて、本件発明1では掃除機本体に配置されており、具体的に、掃除機本体に配置された風路形成部の上流側風路部に備えているのに対して、甲3発明では操作ハンドル8に、甲7発明では電気掃除機本体(1)とは別体の床ブラシ(10)に回転可能に設けられたエルボ(15)に配置されている点で相違する。 当該相違点を検討するに、キャニスター型の掃除機において、掃除機本体の集塵室とホースとの間に風路を設けたもの、すなわち上流側風路部を備える風路形成部を有する掃除機本体が周知であるとする証拠はないから、光センサを掃除機本体の風路形成部、特に上流側風路部に設けることが設計上適宜なし得たことであるとはいえない。 そして、本件発明1は、掃除機本体に配置した扁平形状の上流側風路部にて扁平部の長手方向に発光部と受光部とを対向配置したことにより、塵埃の検出範囲を効果的に絞り込み、かつ塵埃量の検出精度を向上できるという効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、甲第3、7号証の発明及び甲4~6、8、9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (4-2)本件発明2、3 本件発明2、3と甲3、7発明とを対比するに、少なくとも光センサについて、本件発明2、3では掃除機本体に配置された屈曲部に備えているのに対して、甲3発明では操作ハンドル8に、甲7発明では電気掃除機本体(1)とは別体の床ブラシ(10)に回転可能に設けられたエルボ(15)に配置されている点で相違する。 当該相違点は、上記(4-1)で検討したのと同様の理由により、本件発明2、3は、甲第3、7号証の発明及び甲4~6、8、9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (4-3)まとめ したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものとはいえない。 5 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について (1)取消理由に採用しなかった特許異議申立理由 ア 特許異議申立人浅野 文雄は、本件発明について、甲第2号証(特開2005-211365公報)を提出し、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張する。 イ 特許異議申立人山田 宏基は、訂正前の本件発明は、 (イ-1)「扁平形状の扁平部を少なくとも一部に備え、前記電動送風機の吸込側に連通する風路を形成する風路形成部」と記載されているところ、風路形成部の全部が扁平形状の扁平部であるものは、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていないこと、及び (イ-2)【0024】及び平成27年7月8日付けの本件特許出願に係る意見書の記載から、本件発明の扁平部は、その断面積が風路形成部の他の部位の断面積に略等しいことが前提とされているのであるから、扁平部の断面積の大きさが何ら規定されていない本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明の範囲を超えるものであること から、特許法第36条第6項第1号の規定を違反し、取り消されるべきものである旨主張する。 (2)当審の判断 ア 特許法第29条第1項第3号について 甲第2号証には、「ゴミセンサ17は、透過型の光学式センサであり、光を発する発光部17aと、発光部17aからの光を受光する受光部17bとを有している。発光部17a及び受光部17bは、吸引ノズル9の吸引口9a付近の両側部に配置されており、吸引ノズル9がゴミを吸引すると、ゴミは発光部17aと受光部17bとの間を通過するようになっている。ゴミセンサ17は、発光部17aから発せられて受光部17bにて受光される光が遮ることにより、吸引ノズル9により吸引されるゴミを検出する。」(【0024】)と記載されており、図1(a)、(b)も参酌すると、ゴミセンサ17は、吸引ノズル9の吸引口9a付近で吸引ノズル9より上流の両側部に配置されているものである。 ここで、本件発明1の光センサは、扁平部に設けられているところ、甲第2号証では、平成29年1月4日付け意見書に「メインブラシ(7)及びローラ(8)が配された空間、・・・の形状は不明である。」と記載されているように、ゴミセンサ17の配置された吸引ノズル9より上流のメインブラシ(7)及びローラ(8)が配された空間の形状は不明であり、扁平部であるとはいえない。 仮にメインブラシ(7)及びローラ(8)が配された空間が、扁平であるとしても、甲第2号証に 「【0017】 サブブラシ6は、床面に落ちているゴミを掻き集めるものであり、機器本体2の前部に2つのものが配置されており、各々、図中矢印D1方向、D2方向に回転駆動されるようになっている。メインブラシ7は、床面に落ちているゴミを掻き上げるものであり、サブブラシ6の後方に配置されており、図中矢印E方向に回転駆動されるようになっている。ローラ8は、メインブラシ7により掻き上げられたゴミを吸引ノズル9の吸引口9a付近に搬送するものであり、メインブラシ7の回転に従動して図中矢印F方向に回転するようになっている。 【0018】 吸引ノズル9は、メインブラシ7により掻き上げられたゴミ、及びローラ8により搬送されたゴミを吸引口9aから吸引してダストボックス10に排出するものである。吸引ノズル9の吸引口9aは、機器本体2の走行方向(図中矢印A方向)に垂直な方向に長くなっている。ダストボックス10は、吸引ノズル9から排出されるゴミを集めておくものである。」 と記載されているように、メインブラシ7が、床面に落ちているゴミを掻き上げ、ローラ8が、メインブラシ7により掻き上げられたゴミを吸引ノズル9の吸引口9a付近に搬送し、吸引ノズル9が、メインブラシ7により掻き上げられたゴミ、及びローラ8により搬送されたゴミを吸引口9aから吸引してダストボックス10に排出するものであるから、メインブラシ(7)及びローラ(8)が配された空間は、その作用から、本件発明1の「風路形成部」、特に「上流側風路部」に相当するとはいえない。 したがって、本件発明1と甲第2号証に記載された発明とは、少なくとも光センサについて、本件発明1では掃除機本体に配置された上流側風路部に備えているのに対して、甲第2号証に記載された発明では吸引ノズル9の吸引口9a付近で吸引ノズル9より上流の両側部に配置されている点で相違する。 そして、上記のとおり、当該相違点は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。 イ 特許法第36条第6項第1号について (イ-1)本件発明の「扁平形状の扁平部を一部に備え」たことは、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。 (イ-2)本件発明の課題は、「光センサによる塵埃の検出範囲を絞り込み、塵埃量の検出精度を向上した電気掃除機を提供することである。」(【0007】) そして、当該課題を解決するために、本件発明1は、上流側風路部にて扁平部の長手方向に対向配置された発光部および受光部を備え、前記発光部から発光された光の前記受光部での受光量に基づき前記風路を通過する塵埃量を検出する光センサを具備するもの、又は本件発明2、3は、屈曲部にてこの屈曲部の屈曲形状の外側寄りに配置され、扁平部の長手方向に対向配置された発光部および受光部を備え、前記発光部から発光された光の前記受光部での受光量に基づき前記風路を通過する塵埃量を検出する光センサを具備するものである。 そうすると、本件発明は、扁平部の断面積の大きさに拘わらず、本件発明の課題を解決できることは明らかであるから、扁平部の断面積を限定しない本件発明は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。 したがって、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしている。 第4 むすび したがって、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700589

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