特許異議申立
2024-700435
洗濯機
- 審判番号
- 2024-700435
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-034928
- 登録番号
- 7377134
- 請求日
- 2024年05月08日
- 審決日
- 2025年09月29日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】東芝ライフスタイル株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人サトー
- 【異議申立人】齊藤 恵美子
- 審判長/審判官
- 審判長 窪田 治彦
- 審判官 川口 真一
- 審判官 関口 哲生
- 分類
- P1652.113-ZB (D06F) / P1652.121-ZB (D06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7377134号発明「洗濯機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7377134号の請求項1に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概略
特許第7377134号の請求項1~5に係る特許(以下、請求項1に係る特許を「本件特許1」といい、総称して「本件特許」という。)についての出願は、令和2年3月2日の出願であって、令和5年10月31日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について、令和5年11月9日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和6年5月8日に、本件特許1に対し、特許異議申立人齊藤恵美子(以下「異議申立人」という。)から、特許異議の申立てがされた。
特許異議の申立ての、その後の手続等の概要は以下のとおりである。
令和6年 7月12日付け 取消理由通知書
令和6年 9月 9日 意見書(特許権者)及び訂正請求書の提出
令和6年10月23日 意見書(異議申立人)の提出
令和6年11月20日付け 訂正拒絶理由通知書
令和6年12月13日 意見書(特許権者)の提出
令和7年 1月15日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 3月17日 意見書(特許権者)及び訂正請求書の提出
令和7年 5月16日 意見書(異議申立人)の提出
令和7年 7月16日付け 訂正拒絶理由通知書
令和7年 8月22日 意見書(特許権者)の提出
以下、令和7年3月17日付け訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。
なお、令和6年9月9日にされた訂正の請求は、令和7年3月17日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
第2 本件訂正について
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、「特許第7377134号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」ものであって、そのうち訂正事項1の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に
「水槽と、
前記水槽内に回転可能に配置される回転槽と、
外部の給水源から供給される水を前記水槽に給水する給水経路と、
前記給水経路から前記水槽への給水を制御する制御装置と、
前記給水経路に設けられ前記給水経路を通って前記水槽に供給される水にマイクロバブルを含む微細気泡を発生させる微細気泡発生装置と、を備え、
前記制御装置は、洗い工程又はすすぎ工程において前記回転槽が回転する期間を含む工程期間中に、前記微細気泡発生装置を通過してマイクロバブルを含んだ水を規定水量に至るまでの間に間欠的に給水する間欠給水処理を実行可能である、
洗濯機。」と記載されているのを、
「水槽と、
前記水槽内に回転可能に配置される回転槽と、
外部の給水源から供給される水を前記水槽に給水する給水経路と、
前記給水経路から前記水槽への給水を制御する制御装置と、
前記給水経路に設けられ前記給水経路を通って前記水槽に供給される水にマイクロバブルを含む微細気泡を発生させる微細気泡発生装置と、を備え、
前記制御装置は、洗い工程又はすすぎ工程において前記回転槽が回転する期間を含む工程期間中に、前記微細気泡発生装置を通過してマイクロバブルを含んだ水を規定水量に至るまでの間に間欠的に給水する間欠給水処理を実行可能であり、
前記間欠給水処理は、前記微細気泡発生装置を通過してマイクロバブルを含んだ水を前記間欠給水処理開始時に連続的に給水する処理である初期給水を含み、
前記初期給水の給水時間又は給水量は、前記初期給水の後に前記間欠給水処理において実行される給水及び給水停止を含む一回当たりの間欠的な給水における給水時間よりも長い又は給水量よりも多い、
洗濯機。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。
2 訂正の適否について
(1)訂正事項1は、本件訂正後の請求項1~5に係る発明について、「間欠給水処理」に関し、「前記間欠給水処理は、前記微細気泡発生装置を通過してマイクロバブルを含んだ水を前記間欠給水処理開始時に連続的に給水する処理である初期給水を含み、」更に、「前記初期給水の給水時間又は給水量は、前記初期給水の後に前記間欠給水処理において実行される給水及び給水停止を含む一回当たりの間欠的な給水における給水時間よりも長い又は給水量よりも多い、」ことを付加して特定する訂正を含むものである。
(2)他方、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、以下の点が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
ア 「本実施形態における、制御装置90が実行する給水処理について図7も参照しながら以下に説明をする。図7は、洗い工程における連続給水と間欠給水の場合の給水状態の変化を経時的に示したものであり、横軸に給水時間、縦軸に給水量を示している。給水方式のうち連続給水の状態を点線で示し、本実施形態における間欠給水の状態を実線で示す。」(段落0054)
イ 「次に、本実施形態における間欠給水について以下に説明する。制御装置90は、洗い工程開始時における初期の給水として、モータ14が駆動し回転槽13が回転し洗い動作が開始されるまでは少なくとも第2給水弁33を開放させて第2給水を行う。これにより、水槽12にはマイクロバブルを多量に含んだ洗濯水が給水される。この洗い工程開始後の初期段階における給水量としては、洗濯物を洗浄するために最低限必要な給水量であれば良く、例えば規定水量の半分程度、具体的には50%~70%程度とすることができる。」(段落0057)
ウ 「なお、洗い工程開始時における初期の給水は、第2給水に加えて第1給水も併せて行う構成としても良い。つまり、第2給水の主な目的はマイクロバブルを含む微細気泡水を水槽12に供給することにある。そのため、洗濯物の汚れに程度等に応じて洗浄性能よりも給水時間の短縮を優先する場合には、第2給水に加えて第1給水を併用することがより効果的である。すなわち、第2給水に加えて第1給水を行うことにより給水量が増加し給水時間の短縮を図ることができる。」(段落0058)
エ 「給水を開始し、その後、給水量が所定量に達すると、制御装置90は、第2給水弁33を閉じて第2給水を所定時間停止する。所定時間経過後、制御装置90は、再度第2給水弁33を開放させて所定時間又は所定水位に至るまで第2給水を実行する。この給水サイクルを複数回繰り返し、規定水量に到達するまで給水が行われる。」(段落0059)
オ 「間欠給水の具体的態様の一例としては、洗い工程時間15分、規定水量20Lとした場合、まず初期給水として第2給水を約2分間で約10Lの水量に至るまで行う。ここで、一旦約2分程度給水が停止される。その後、約40秒で約3Lの第2給水を行う。この給水サイクルを3回繰り返し最終的に給水量は規定水量に達する。なお、規定水量に到達するのは洗い工程終了の所定時間前例えば約3分前には完了していることが好ましい。こうすることで、洗濯物とマイクロバブルが接触する時間を適正に確保することができ、洗い動作におけるマイクロバブルの洗浄効果を十分に得ることができるからである。」(段落0060)
カ 「上記した所定時間の洗い工程が終了すると、水槽12からの排水が行われ、引き続き、すすぎ工程が実行される。すすぎ工程においても、少なくとも第2給水による間欠的な給水を実行することによりマイクロバブルが補充される。これにより、マイクロバブルに吸着した汚れの水面での滞留を維持することでき、洗濯水中への汚れの再溶解の抑制を図ることができる。さらに、マイクロバブルと併せて供給されるウルトラファインバブルにより洗濯物の繊維の奥に残存した洗剤成分の除去を効果的に行うことが可能となる。このとき、すすぎ工程における間欠給水の給水サイクルは洗い工程と同様でも良いし異なっていても良い。つまり洗い工程に比べて間欠給水1回あたりの給水時間や給水量、あるいは給水サイクルの回数が異なる構成としても良い。」(段落0064)
キ 「【図7】
[図:0001432025000001.jpg]
」
(3)ア このように、本件特許明細書等には、明細書の段落0057に示されるように、初期給水とは、「回転槽が回転し洗い動作が開始されるまで」の給水であって、「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」「規定水量の半分程度」の給水量であることが示されている。
イ 一方、訂正後の請求項1に記載の「初期給水」という事項は、「マイクロバブルを含んだ水を前記間欠給水処理開始時に連続的に給水する処理である」と特定されるのみで、上述した、「回転槽が回転し洗い動作が開始されるまで」の給水であって、「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」「規定水量の半分程度」の給水量であるもの以外に、例えば、「回転槽が回転し洗い動作が開始される」よりも所定時間前に給水する処理が終了する態様や、「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」給水量に満たない給水量である態様等も含むと理解される。
ウ しかし、本件特許明細書等には、「回転槽が回転し洗い動作が開始されるまで」の給水であって、「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」「規定水量の半分程度」の給水量である点が特定されない初期給水も含むことについて記載されているとは認められない。
また、初期給水の、「回転槽が回転し洗い動作が開始されるまで」に「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」給水量を給水するといった、技術的意義に鑑みると、本件特許明細書等において、「回転槽が回転し洗い動作が開始される」よりも所定時間前に給水する処理が終了する態様や、「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」給水量に満たない給水量である態様等が、本件特許明細書等の記載から自明の事項とも認められない。
(4)ア また、本件特許明細書等には、初期給水の給水時間又は給水量については、明細書の段落0060に、「洗い工程時間15分、規定水量20Lとした場合、まず初期給水として第2給水を約2分間で約10Lの水量に至るまで行う。」といった具体的態様が示されるのみである。そして、明細書の段落0060の「ここで、一旦約2分程度給水が停止される。その後、約40秒で約3Lの第2給水を行う。この給水サイクルを3回繰り返し最終的に給水量は規定水量に達する。」との記載も踏まえると、初期給水の給水時間又は給水量について、「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」「規定水量の半分程度」の給水量及びそのような給水量が提供できるための給水時間のセットが開示されるのみであり、そして、初期給水の給水時間は一回当たりの間欠的な給水における給水時間よりも長く、かつ、初期給水の給水量は一回当たりの間欠的な給水における給水量よりも多いものが開示されるのみである。
イ 一方、訂正後の請求項1に記載の「初期給水の給水時間又は給水量」という事項は、「前記初期給水の後に前記間欠給水処理において実行される給水及び給水停止を含む一回当たりの間欠的な給水における給水時間よりも長い又は給水量よりも多い」と特定されるところ、前記アで示したもの以外に、例えば、初期給水の給水時間は一回当たりの間欠的な給水よりも長いが、給水量は任意(給水量は一回当たりの間欠的な給水よりも少なくてもよい)といった技術思想、また、初期給水の給水量は一回当たりの間欠的な給水よりも多いが、給水時間は任意(給水時間は一回当たりの間欠的な給水より短くてもよい)といった技術思想も含まれ、すなわち、初期給水の給水時間又は給水量を、それぞれ任意に独立して設定できるといった技術思想も含まれると理解される。
ウ しかし、本件特許明細書等には、前記アで示したように、単に、初期給水の給水時間と給水量のセットのひとつの具体的態様が示されるのみであって、初期給水の給水時間又は給水量を、それぞれ任意に独立して設定できるといった技術思想が記載されているとは認められない。
また、初期給水の給水時間と給水量を、それぞれ任意に独立して設定できるといったことが、本件特許明細書等の記載から自明の事項とも認められない。
(5)以上によれば、訂正事項1は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではない。
3 ところで、特許権者は、令和7年8月22日提出の意見書(以下、「意見書」という。)において、「上述した訂正後の請求項1に係る発明の目的である「洗濯物とマイクロバブルが接触する時間を適正に確保して、洗い又はすすぎにおいてマイクロバブルの洗浄効果を十分に得ること」に照らせば、マイクロバブル濃度を高めることについては、初期給水と初期給水後の一回当たりの間欠的な給水との対比における給水時間又は給水量を異ならせることに技術的な意義があり、初期給水後の一回当たりの間欠的な給水と相互に関係しない初期給水自体の給水時間や給水量には技術的な意義はないといえます。このため、初期給水における、「回転槽が回転し洗い動作が開始されるまで」といった時間的な要件、「洗浄に最低限必要な」及び「規定水量の半分程度」といった量的な要件、自体には技術的な意義はないことが明らかです。すなわち、本件特許明細書等に記載された「回転槽が回転し洗い動作が開始されるまで」に「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」「規定水量の半分程度」の給水量であるものは、初期給水の一態様であるに過ぎず、初期給水として、「回転槽が回転し洗い動作が開始されるまで」に「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」「規定水量の半分程度」の給水量である点が特定されない初期給水を含むとしても、新たな技術的事項を導入するものではないといえます。」(意見書の2頁25行~3頁2行)と主張している。
しかしながら、上記2(3)で検討したように、本件特許明細書等には、「回転槽が回転し洗い動作が開始されるまで」の給水であって、「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」「規定水量の半分程度」の給水量である点が特定されない初期給水も含むことについて記載されているとは認められず、また、「回転槽が回転し洗い動作が開始される」よりも所定時間前に給水する処理が終了する態様や、「洗濯物を洗浄するために最低限必要な」給水量に満たない給水量である態様等が、本件特許明細書等の記載から自明の事項とも認められない。
特許権者は、訂正後の請求項1に係る発明の目的に照らせば、初期給水後の一回当たりの間欠的な給水と相互に関係しない初期給水自体の給水時間や給水量には技術的な意義はないから、新たな技術的事項を導入するものではない旨主張するが、本件特許明細書等の記載から自明の事項と認められない事項を導入してよい理由はない。
また、特許権者は、意見書において、「本件特許明細書の段落0059に「給水を開始し、その後、給水量が所定量に達すると、制御装置90は、第2給水弁33を閉じて第2給水を所定時間停止する。所定時間経過後、制御装置90は、再度第2給水弁33を開放させて所定時間又は所定水位に至るまで第2給水を実行する。この給水サイクルを複数回繰り返し、規定水量に到達するまで給水が行われる。」と記載されているように、初期給水後の給水を所定時間又は所定水位によって行う点が本件特許明細書等には記載されています。この記載を踏まえると、間欠給水処理における給水の制御を、給水時間又は給水量のいずれかを独立して設定できる技術思想が本件特許明細書等に記載されていると認められます。このため、本件特許明細書等に、初期給水の給水時間と給水量のセットのひとつの具体的態様が示されていたとしても、本件特許明細書等のその他の記載内容に照らせば、初期給水の給水時間又は給水量を、それぞれ任意に独立して設定できることは明らかです。」(意見書3頁11~23行)と主張している。
しかし、段落0059は、実施形態について説明した記載であるところ、初期給水に関しては、「給水を開始し、その後、給水量が所定量に達すると、」と記載されるにとどまり、初期給水の給水時間又は給水量を、それぞれ任意に独立して設定できることについて、何ら記載されておらず、また、示唆もされていない。そして、上記2(4)で検討したように、本件特許明細書等には、単に、初期給水の給水時間と給水量のセットのひとつの具体的態様が示されるのみであって、初期給水の給水時間又は給水量を、それぞれ任意に独立して設定できるといった技術思想が記載されているとは認められず、また、初期給水の給水時間と給水量を、それぞれ任意に独立して設定できるといったことが、本件特許明細書等の記載から自明の事項とも認められない。
以上によれば、上記特許権者による主張を採用することはできない。
4 以上のとおりであるから、本件訂正の訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであり、本件訂正を認めることはできない。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められないから、本件特許1の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」という。
(本件発明1)
「【請求項1】
水槽と、
前記水槽内に回転可能に配置される回転槽と、
外部の給水源から供給される水を前記水槽に給水する給水経路と、
前記給水経路から前記水槽への給水を制御する制御装置と、
前記給水経路に設けられ前記給水経路を通って前記水槽に供給される水にマイクロバブルを含む微細気泡を発生させる微細気泡発生装置と、を備え、
前記制御装置は、洗い工程又はすすぎ工程において前記回転槽が回転する期間を含む工程期間中に、前記微細気泡発生装置を通過してマイクロバブルを含んだ水を規定水量に至るまでの間に間欠的に給水する間欠給水処理を実行可能である、
洗濯機。」
第4 取消理由の概要
1 本件特許1に対し、令和7年1月15日付け取消理由通知書で通知した取消理由(決定の予告)は、概ね、次のとおりである。
(1)取消理由1
本件発明1は、甲第1号証(後記2)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)取消理由2
本件発明1は、甲第2号証(後記2)に記載された発明及び甲第3号証(後記2)に記載された事項に基いて、本件特許1の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 証拠方法
取消理由通知にて引用した、異議申立人提出の証拠方法は以下のとおりである。証拠番号に従い、「甲1」などという。
甲1:特開2014-108305号公報
甲2:特開2014-83167号公報
甲3:特開2018-64641号公報
第5 取消理由1(新規性)について
1 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
(1)「【0001】
本発明は微細気泡発生機構を備えた洗濯機に関するものである。」
(2)「【0027】
第1実施形態の洗濯機100は、図1に示すように水道水又は水道水に洗剤が溶融した洗濯水に微細気泡を発生させて微細気泡水とする微細気泡発生機構24を備えた洗濯機100である。この洗濯機100は、洗濯槽3の回転軸が水平に設定された横型の洗濯機100であり、洗濯槽3内の図示しないリフターにより洗濯物Cを上部まで巻きあげて、洗濯槽3の側面底部に貯まっている洗濯水中に洗濯物Cを落とし、その衝撃力により洗浄効果を得るように構成してある。
【0028】
さらに、この洗濯機100は前記洗濯槽3内から洗濯水を取水し、前記微細気泡発生機構に供給して、前記微細気泡発生機構24により生成される微細気泡水を前記洗濯槽3内に戻す水循環系2を備えている。
【0029】
より具体的には、この水循環系2は、前記洗濯槽3内から洗濯水を取水する取水部21と、洗濯に必要とされる水道水を供給する給水部23と、前記取水部21からの洗濯水と、前記給水部23からの水道水とが一時的に貯水される貯水部22と、前記貯水部22から水道水又は洗濯水の供給を受けて、その水に微細気泡を発生させる微細気泡発生機構24と、前記微細気泡発生機構24で生成された微細気泡水を前記洗濯槽3内の所定位置Pに所定量だけ間欠的に噴射する微細気泡水噴射機構25とから構成してある。
【0030】
さらにこの洗濯機100はCPU、メモリ、A/D、D/Aコンバータ、入出力手段等から構成されるいわゆるコンピュータを具備し、前記メモリに格納されたプログラムを実行することによって、微細気泡水が噴射されるタイミングを制御するタイミング制御部252としての機能を少なくとも実現するように構成してある。」
(3)「【0034】
前記給水部23は、洗浄工程における最初の工程において洗濯物Cの重量に応じて必要とされる量の水道水を前記貯水部22へと送るものである。」
(4)「【0037】
また、前記微細気泡発生機構24により生成される微細気泡のうち、気泡径50μm以下の微細気泡の気泡密度が10万個/ml以上となるように設定してあり、後述するように微細気泡の圧壊による衝撃力による洗浄効果を得られるようにしてある。
【0038】
前記微細気泡水噴射機構25は、前記洗濯槽3の側面上部側に設けられており、前記微細気泡水を噴射する噴射部材251(噴射ノズル)と、前記タイミング制御部252とから構成してある。」
(5)「【0042】
そして第1実施形態の前記タイミング制御部252は、前記洗濯槽3の回転角を取得し、その取得された回転角に基づいて噴射タイミングを制御するようにしている。前記洗濯槽3の回転角は、例えば前記洗濯槽3を回転させるための図示しないモータの電機子電流や図示しないホール素子により取得することができる。噴射タイミングについては、前記洗濯槽3の回転周期の1/4~1/2周期で微細気泡水を噴射するよう設定するのが好ましい。このような周期で微細気泡水を噴射すれば、複数の洗濯物Cがある場合、それぞれが別々に上昇落下を繰り返している場合にそれぞれの洗濯物Cに対して微細気泡水を噴射し、それぞれで微細気泡を圧壊させて均一な洗浄効果を得ることができる。また、このような洗濯槽3の回転角に基づいた噴射タイミングの制御は、間接的ではあるものの洗濯物Cの位置をある程度の精度で推定でき、しかも余計な付加センサを必要としないため安価に実現することができる。」
(6)「図1
[図:0001432025000002.jpg]
」
(当審注:図中の251は252の、252は251の誤記であると解される。)
(7)甲1において、洗濯機100について、洗濯槽3を収容するための水槽を備えることは明記されていないものの、自明な事項であるといえる。
(8)上記(2)、(4)及び(6)の記載から、甲1に記載された給水部23、貯水部22、微細気泡発生機構24及び噴射部材251を通る経路は、給水部23から供給される水道水を洗濯槽3内に給水するための給水経路を構成しているといえる。
(9)上記(2)~(4)及び(6)の記載から、甲1に記載された給水経路は、給水部23、貯水部22、微細気泡発生機構24及び噴射部材251で構成される給水経路以外見当たらず、他の給水経路からの洗濯槽3内への給水が行われないと解されること、洗浄工程における最初の工程において洗濯物Cの重量に応じて必要とされる量の水道水を貯水部22へ送り、貯水部22からの水道水の供給を受けて、微細気泡発生機構24で微細気泡水を生成し、微細気泡水噴射機構25で洗濯槽3内に間欠的に噴射することから、洗濯槽3内の水量が洗濯物Cの重量に応じて必要とされる水道水の量に至るまでの期間、微細気泡水を間欠的に噴射するものであるといえる。
(10)上記(4)の記載から、甲1に記載された微細気泡は、気泡径が50μm以下であることから、マイクロバブルを含むものであるといえる。
(11)上記(5)の記載から、甲1に記載された噴射タイミングは、洗濯槽3の回転角を取得し、その取得された回転角に基づいて噴射タイミングを制御すること、噴射タイミングは、洗濯槽3の回転周期の1/4~1/2周期であることから、洗濯槽3が回転している期間に、噴射するといえる。
2 甲1に記載された発明
上記1(1)~(11)の記載を総合すると、甲1には、以下の発明が記載されている(以下「甲1発明」という。)。
(甲1発明)
「水槽と、
回転軸が水平に設定された洗濯槽3と、
給水部23から供給される水道水を洗濯槽3内に給水するための給水経路と、
微細気泡水が噴射されるタイミングを制御するタイミング制御部252と、
貯水部22から水道水の供給を受けて、その水にマイクロバブルを含む微細気泡を発生させる微細気泡発生機構24と、を備え、
タイミング制御部252は、洗浄工程において、洗濯槽3が回転している期間に、微細気泡水を、洗濯槽3内の水量が洗濯物Cの重量に応じて必要とされる水道水の量に至るまでの期間に間欠的に噴射するよう制御する、
洗濯機100。」
3 対比及び判断
(1)本件発明1と甲1発明とを、その有する機能に照らして対比する。
ア 甲1発明の「水槽」は、本件発明1の「水槽」に相当する。
イ 甲1発明の「洗濯槽3」は、水平に設定された軸の周りに回転すること、洗濯槽3が水槽に収容されていることは自明な事項であることから、本件発明1の「回転槽」に相当する。
ウ 甲1発明の「給水部23」は、本件発明1の「外部の給水源」に相当する。
エ 甲1発明の「給水経路」は、給水部23から洗濯槽3内に水道水を給水することから、本件発明1の「給水経路」に相当する。
オ 甲1発明の「タイミング制御部252」は、微細気泡発生機構24で水道水から生成された微細気泡水を洗濯槽3内に噴射するタイミングを制御することから、本件発明1の「制御装置」に相当する。
カ 甲1発明の「微細気泡発生機構24」、「洗浄工程」、「洗濯槽3が回転している期間」、「微細気泡水」、「洗濯槽3内の水量が洗濯物Cの重量に応じて必要とされる水道水の量」、「間欠的に噴射するよう制御する」、「洗濯機100」は、それぞれ、本件発明1の「微細気泡発生装置」、「洗い工程」、「前記回転槽が回転する期間を含む工程期間中」、「マイクロバブルを含んだ水」、「規定水量」、「間欠給水処理を実行可能である」、「洗濯機」に相当する。
(2)そうすると、本件発明1と甲1発明との間に相違点は存在しない。
よって、本件発明1は、甲1発明である。
4 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明(甲1発明)である。
第6 取消理由2(進歩性)について
1 甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、回転ドラム内に洗濯物を投入し、温水によって洗い、すすぎなどの各工程を逐次制御して洗濯するドラム式洗濯機に関する。」
(2)「【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決すると共に、洗浄性能の向上および洗濯時間を削減したドラム式洗濯機を提供することを目的とする。」
(3)「【0012】
第1の発明のドラム式洗濯機は、洗濯物を収容し、正面側に開口を有する回転ドラムと、
前記回転ドラムを収容する水受け槽と、
前記水受け槽および前記回転ドラムの間の空間に給水する給水手段と、
前記水受け槽内の水位を検知する水位検知手段と、
前記水受け槽内の洗い水を前記回転ドラム内に吐出させる水循環手段と、
前記水受け槽内の下部に設けられ洗濯水を加熱する加熱手段と、
回転ドラムを駆動させる駆動手段と
前記給水手段、前記水循環手段および前記加熱手段を制御し、洗い工程を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記洗い工程の開始時における給水工程において、前記回転ドラムの回転により前記水受け槽の洗濯水がかき混ぜられる水位より高く、前記洗濯物の大半が含水しない水位まで給水してから前記回転ドラムを回転し、その後、前記加熱手段により洗濯水を加熱した後、前記水循環手段を駆動するものである。」
(4)「【0026】
図1~図3において、ドラム式洗濯機1の内部に水受け槽2が配設されている。水受け槽2の内側に洗濯槽としての回転ドラム3が水平な回転軸によって回転可能な状態で配設されている。回転ドラム3は、背面に接続されたモータ4により回転する。また、回転ドラム3は外周面に複数の通孔23が設けられ、またその内壁面には数個の突起板24が設けられている。回転ドラム3は、洗濯槽、脱水槽、乾燥槽としても機能するものである。
【0027】
水受け槽2の上方には、給水弁11が設けられている。給水弁11の下流で、水受け槽2の上流には、洗剤を収容する洗剤ケースが設けられている。洗い工程において給水された洗濯水は、洗剤ケースを通過し、洗剤とともに水受け槽2に供給される。すすぎ工程においては、洗剤は洗剤ケースに収容されていないため、洗剤を含まないすすぎ水が水受け槽2に供給される。給水は水受け槽2内および回転ドラム3の間の空間になされる。これにより、洗濯水は洗濯物に対し直接給水することがなく、洗剤の濃度ムラの発生を抑制できる。
【0028】
水受け槽2の後部側の最低部には、取水口5が接続されている。取水口5は、排水弁6によって開閉される排水管7につながっている。取水口5と排水弁6の間からは取水口5から取り込んだ洗濯水を回転ドラム3に吐出する吐出口8につながった循環経路9が連通している。循環ポンプ10の駆動により、水受け槽2の洗濯水は循環経路9を通り、回転ドラム3に循環シャワーとして吐出される。このように、回転ドラム3内の洗濯物に循環水をかけることができる。取水口5の下流には、水位検知手段12が設けられており、水受け槽2内の水位を検知する。
【0029】
制御装置13は、マイクロコンピュータで構成された制御手段14を有し、パワースイッチング手段15を介してモータ4、排水弁6、循環ポンプ10、給水弁11などの動作を制御し、洗い、すすぎ、脱水などの一連の工程を逐次制御する。入力設定手段16は、運転コース等を設定するもので、制御手段14は入力設定手段16からの情報を入力して、その情報を基に表示手段17を表示して使用者に知らせる。記憶手段18は、制御手段14により制御するのに必要なデータを記憶している。制御手段14は、回転ドラム3の回転数を検知する回転数検知手段21の情報から、パワースイッチング手段15を介して回転ドラム3の回転数を制御する。水受け槽2の底部には、洗濯水を加熱するヒータ22(加熱手段)が配置されており、モータ4等と同様に制御手段14により制御される。」
(5)「【0032】
次に、制御手段14は、給水弁11を開放して給水を開始する。この時、給水された水は、洗剤ケースを通り、洗剤ケースに投入された洗剤と一緒に水受け槽2に溜められていく。この時、回転ドラム3は一定方向に回転している。水受け槽2の水位が、回転ドラム3の回転によりかき混ぜられる水位に達すると、洗濯水中の洗剤がかき混ぜられて濃度が均一になっていく。洗濯物の大半が含水しないような水位である所定水位Aまで給水されたことを水位検知手段12が検知すると、制御手段14は、給水弁11を閉じることにより、水受け槽2への給水を停止する。なお、水位検知手段12により少なくとも回転ドラム3が回転した時に水受け槽2内に溜まった水をかき混ぜることができる限界の水位である所定水位Aに到達したと判断すると、給水弁11を閉じることにより、水受け槽2への給水を停止することとしてもよい。」
(6)「【0045】
尚、本実施の形態において、水受け槽2および回転ドラム3は水平に配置されたものとしたが、ヒータ22が洗濯水に水没できるような構成であれば、水受け槽2および回転ドラム3は傾斜していてもよい。更に、洗い工程において実施するものとしたが、すすぎ工程において同様の動作をしてもよい。」
(7)「【図3】
[図:0001432025000003.jpg]
」
(8)甲2には、給水弁11が、外部の給水源に接続されることは明記されていないものの、自明な事項であり、外部の給水源、給水弁11、水受け槽2および回転ドラム3の間の空間までを通る経路は、外部の給水源から供給される水を水受け槽2および回転ドラム3の間の空間に給水するための給水経路であるといえる。
2 甲2に記載された発明
上記1(1)~(8)の記載を総合すると、甲2には、以下の発明が記載されている(以下「甲2発明」という。)。
(甲2発明)
「水受け槽2と、
水受け槽2に収容される回転ドラム3と、
外部の給水源から供給される水を水受け槽2および回転ドラム3の間の空間に給水するための給水経路と、
給水弁11を開放して給水を開始する制御手段14と、を備え、
制御手段14は、洗い工程又はすすぎ工程において、回転ドラム3が一定方向に回転している給水開始時に、所定水位Aまで給水を行うよう制御する、
ドラム式洗濯機1。」
3 甲3に記載された事項
(1)「【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。」
(2)「【0005】
そこで、ファインバブル発生装置を設けたものにあって、洗剤との相互作用により洗浄性能を向上させるために、ファインバブルを効果的に用いることができる洗濯機を提供する。」
(3)「【0007】
尚、実施形態におけるファインバブルとは、例えば直径が1μm~数百μm程度のマイクロバブル、及び、直径が50nm~1μm程度のウルトラファインバブルを含んだ概念である。」
(4)「【0015】
前記トップカバー3内には、図2にも一部示すように、前記水槽4(洗濯槽5)内に給水を行う給水機構12が設けられる。本実施形態では、この給水機構12は、給水経路13、3個の給水弁20~22、注水ケース18、注水ケース18の出口部である注水口19等を備えている。前記給水経路13は、基端側に水道等の給水源に接続されるホース接続口14を有している。給水経路13は、ホース接続口14から延びた後、3本に分岐して延び、メイン給水経路15、FB用給水経路16、柔軟剤用給水経路17となる。尚、給水経路13の基端部のうち、分岐部分よりも基端側(上流)側には、水の流量を計測する流量計35が設けられている。」
(5)「【0017】
第1上部空間25の底部には、前記洗剤収容部23に連通する連通孔25aが設けられ、第2上部空間26の底部には、前記柔軟剤収容部24に連通する連通孔26aが設けられている。洗剤収容部23の出口部23a及び柔軟剤収容部24の出口部24aは、注水ケース18内の下部空間27に連通し、下部空間27が前記注水口19に連なっている。そして、前記メイン給水経路15には、メイン給水弁20が設けられ、FB用給水経路16には、ファインバブル用のFB用給水弁21及び後述するUFBユニット28が設けられ、柔軟剤用経路17には、柔軟剤用給水弁22が設けられている。これら給水弁20、21、22は、電磁的に開閉動作する開閉弁からなり、図4に示すように、前記制御装置31により制御される。
【0018】
これにて、メイン給水弁20が開放されると、給水源からの水がメイン給水経路15を通って注水ケース18の洗剤収容部23に流れ、洗剤が収容されている場合にはその洗剤を溶かしながら注水口19から排出され、水槽4(洗濯槽5)内に注水される。この場合、メイン給水経路15を通して、ファインバブルを含まない水道水がそのまま水槽4内に供給される。またこのとき、メイン給水経路15を通って供給される水の流量は、FB用給水経路16の水の流量よりも大きく(例えば2倍程度)なるように構成されている。
【0019】
また、ファインバブル用のFB用給水弁21が開放されると、給水源からの水がFB用給水経路16を通って注水ケース18の洗剤収容部23に流れ、洗剤が収容されている場合にはその洗剤を溶かしながら注水口19から排出され、水槽4内に注水される。このとき、後述するように、FB用給水経路16を流れる水がUFBユニット28を通ることによって、多量のファインバブルを含んだファインバブル水となり、ファインバブル水に洗剤が溶け込んだ洗濯水が、水槽4(洗濯槽5)内に供給されるようになる。」
(6)「【0035】
このように本実施形態によれば、給水の初期段階で、メイン給水経路15を通して大きな流量で水を注水ケース18に供給するメイン給水と、FB用給水経路16を通してファインバブル水を注水ケース18に供給するFB給水とが交互に実行される。これにより、ファインバブル濃度が高い状態の洗濯水中に洗剤分を効果的に分散させることと、洗剤収容部23の洗剤を大流量の水で洗剤残りなく流すこととの両立を図ることができる。また、ファインバブル水と通常の水とが混ざりやすくなる。この結果、ファインバブルを発生させるためのUFBユニット28を設けたものにあって、洗剤との相互作用により洗浄性能を向上させるために、ファインバブルを効果的に用いることができるという優れた効果を得ることができる。」
(7)「【0059】
尚、上記した実施形態に限定されるものではなく、図示は省略するが、例えば次のような拡張、変更も可能である。即ち、上記実施形態では、洗い行程にファインバブル水を用いて、すすぎ行程ではUFBユニット28を通さない水を用いるようにしたが、例えば、すすぎ行程においても、ファインバブル水と一般の水とを混合した水を使用する構成しても良い。また、上記各実施形態で用いた時間や水位(水量)などの具体的数値は、一例を挙げたものに過ぎず、適宜変更することができる。さらに、上記実施形態では、縦軸型の洗濯機に適用したが、縦軸型の洗濯機に限らず、ドラム式洗濯機など洗濯機全般に適用することができる。その他、注水ケース(洗剤収容部)の構成や給水機構の構成等についても、様々な変更が可能である。」
(8)「【図2】
[図:0001432025000004.jpg]
」
(9)「【図5】
[図:0001432025000005.jpg]
」
4 対比
(1)本件発明1と甲2発明とを、その有する機能に照らして対比する。
ア 甲2発明の「水受け槽2」、「回転ドラム3」、「制御手段14」、「回転ドラム3が一定方向に回転している給水開始時」、「ドラム式洗濯機1」は、それぞれ、本件発明1の「水槽」、「回転槽」、「制御装置」、「前記回転槽が回転する期間を含む工程期間中」、「洗濯機」に相当する。
イ 甲2の上記1(5)、(8)の開示内容から、甲2発明の「給水弁11」は、給水経路に設けられ、水受け槽2への給水を制御するものといえるから、甲2発明の「給水弁11を開放して給水を開始する制御手段14」は、本件発明1の「前記給水経路から前記水槽への給水を制御する制御装置」に相当する。
ウ 本件特許の発明の詳細な説明に、「規定水量とは、洗濯物の重量に応じて設定される給水量、又はユーザが任意に設定した給水量を意味する」、「本実施形態において、規定水量は、規定水位と同義である」(【0055】)と記載されていること、及び、甲2発明の「所定水位A」は、洗濯を行うために定められた特定の水位であることから、甲2発明の「所定水位A」は、本件発明1の「規定水量」に相当する。
エ 甲2発明の「制御手段14は、洗い工程又はすすぎ工程において、回転ドラム3が一定方向に回転している給水開始時に、所定水位Aまで給水を行うよう制御する」ことは、制御装置が、洗い工程又はすすぎ工程において、回転槽が回転する期間に、水を規定水量に至るまで給水を行うものであるといえるから、本件発明1と、「前記制御装置は、洗い工程又はすすぎ工程において前記回転槽が回転する期間を含む工程期間中に、」「水を規定水量に至るまでの間に」「給水する」「給水処理を実行可能である」点で共通する。
(2)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、相違するものと認められる。
(一致点)
「水槽と、
前記水槽内に回転可能に配置される回転槽と、
外部の給水源から供給される水を前記水槽に給水する給水経路と、
前記給水経路から前記水槽への給水を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、洗い工程又はすすぎ工程において前記回転槽が回転する期間を含む工程期間中に、水を規定水量に至るまでの間に給水する給水処理を実行可能である、
洗濯機。」
(相違点1)
本件発明1は、「前記給水経路に設けられ前記給水経路を通って前記水槽に供給される水にマイクロバブルを含む微細気泡を発生させる微細気泡発生装置」を備えるのに対し、甲2発明は、そのような構成を備えることについて、明示されていない点。
(相違点2)
本件発明1は、「前記微細気泡発生装置を通過してマイクロバブルを含んだ水」を規定水量に至るまでの間に、「間欠的に給水する間欠給水処理を実行可能」であるのに対し、甲2発明は、そのような構成を備えることについて、明示されていない点。
5 判断
相違点1及び相違点2は、微細気泡発生装置に係る給水という点で関連する相違点であるから、まとめて検討する。
甲3には、洗濯機において、給水経路13は、ホース接続口14から延びた後、3本に分岐して延び、メイン給水経路15、FB用給水経路16、柔軟剤用給水経路17となること(上記3(4)、(8))、洗浄性能を向上させるために、FB用給水経路16に、UFBユニット28を設け、FB用給水経路16を流れる水がUFBユニット28を通ることによって、多量のファインバブルを含んだファインバブル水となること(上記3(2)、(5)、(8))、給水の初期段階で、メイン給水経路15を通して大きな流量で水を注水ケース18に供給するメイン給水と、FB用給水経路16を通してファインバブル水を注水ケース18に供給するFB給水とが交互に実行されること(上記3(6)、(9))が記載されている。また、甲3には、実施形態におけるファインバブルとは、例えば直径が1μm~数百μm程度のマイクロバブルを含むこと(上記3(3))、甲3の実施形態では、縦軸型の洗濯機に適用したが、縦軸型の洗濯機に限らず、ドラム式洗濯機など洗濯機全般に適用することができること(上記3(7))も記載されている。
甲2において、洗浄性能を向上させるという課題が明示されており(上記1(2))、甲2発明と甲3に記載された事項とは、ともに洗濯機に関する点で技術分野が関連し、洗浄性能を向上させるという点で課題、及び作用・機能が共通することから、甲2発明に甲3に記載された事項を適用する動機は十分に認められる。
そうすると、甲2発明において甲3に記載された事項を参照し、給水経路に加えてUFBユニットを備えたFB用給水経路を備えるように構成し、また、回転ドラム3が一定方向に回転している給水開始時において、所定水位Aまで給水を行う際(上記1(7)における「給水工程」を参照。)に、給水経路とFB用給水経路とで交互に給水を行うこと、すなわち、相違点1及び相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
6 小括
よって、本件発明1は、甲2発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
本件発明1は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件特許1は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700435