特許異議申立
2026-700043
床清掃システム、床清掃装置、及び床清掃システム若しくは床清掃装置を動作させる方法
- 審判番号
- 2026-700043
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-503999
- 登録番号
- 7713583
- 請求日
- 2026年01月14日
- 審決日
- 2026年04月27日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】アルフレッド ケルヒャー エスエー ウント コンパニー カーゲー
- 【権利者代理人】弁理士法人京都国際特許事務所
- 【異議申立人】岩舘 憲一
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 川口 真一
- 審判官 関口 哲生
- 分類
- P1652.113-Y (A47L) / P1652.121-Y (A47L) / P1652.537-Y (A47L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7713583号発明「床清掃システム、床清掃装置、及び床清掃システム若しくは床清掃装置を動作させる方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7713583号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7713583号の請求項1に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)7月23日を国際出願日とする出願であって、令和7年7月16日にその特許権の設定登録がされ、令和7年7月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和8年1月14日に特許異議申立人 岩舘 憲一は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7713583号の請求項1の特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
床面(16)を清掃するための自走式自己操舵の床清掃装置(10)と、
少なくとも1つの制御可能な表示ユニット(60、120、122)と、
少なくとも1つの保存ユニット(46、124、126)と
を備える床清掃システムであって、
前記床清掃装置(10)が、床面(16)上を走行するための走行ギア(22)、制御ユニット(24)、センサユニット(44)、少なくとも1つの清掃ユニット(26)、及び操作ユニット(56)を備え、
前記床清掃装置(10)を移動中に位置付ける及び/又はナビゲートするために、周囲が前記センサユニット(44)によって検出可能であり、
前記床面(16)上の少なくとも1つの清掃経路(68)が、前記少なくとも1つの保存ユニット(46、124、126)に保存可能である又は保存され、
前記床清掃装置(10)が、前記操作ユニット(56)にて操作者(66)により案内される間に教示動作モードで清掃経路(68)を作成するように設計及び構成され、該清掃経路(68)は、前記保存ユニット(46、124、126)に保存可能であり、
前記床清掃装置(10)と周囲(18)との相互作用に関係する少なくとも1つの相互作用事象(90)が、位置固有の態様で前記清掃経路(68)内に保存可能である又は保存され、
前記清掃経路(68)が、前記少なくとも1つの相互作用事象(90)に関連付けられる態様で、前記少なくとも1つの表示ユニット(60、120、122)上に表示可能であり、
前記床清掃装置(10)が、光学アクチュエータ(52)及び/又は音響アクチュエータ(50)を有する指示ユニット(48)を備え、前記少なくとも1つの相互作用事象(90)が、前記光学アクチュエータ(52)及び/又は前記音響アクチュエータ(50)を介した指示の出力を含む、床清掃システム。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人 岩舘 憲一が特許異議申立書で主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。また、特許異議申立人は、特許異議申立書とともに、甲第1号証~甲第3号証を提出した(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。)。
1 申立理由1(特許法第29条第1項第3号:新規性)
本件発明は、甲1、甲2、甲3のそれぞれに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する発明である。
2 申立理由2(特許法第29条第2項:進歩性)
本件発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明のそれぞれから、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
3 申立理由3(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)
本件発明は、発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
4 申立理由4(特許法第36条第6項第2号:明確性要件)
本件発明は、明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
<証拠一覧>
甲1:特開2014-219723号公報
甲2:特開2006-209644号公報
甲3:特開2020-194415号公報
第4 文献の記載
1 甲1の記載及び甲1発明
甲1には、次の事項が記載されている。
・「 【0017】
図1は、本発明の一実施形態による自律移動体の概略構成を示すブロック図である。
自律移動体1は、制御部11、測距センサ31、操作部32、通知部33、走行部27を備えている。
【0018】
測距センサ31は、自律移動体1の走行方向前側にある障害物を検出するセンサである。測距センサ31は、例えば、レーザ発振器によりパルス発振されたレーザ光を目標物に照射し、目標物から反射した反射光をレーザ受信器により受信することにより、目標物までの距離を算出するレーザレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)である。測距センサ31は、照射するレーザ光を回転ミラーを用いて所定の角度で扇状にレーザ光を操作することができる。このような測距センサ31は、自律移動体1の後方にも配置することができる。
【0019】
操作部32は、自律移動体1を手動操作により走行させる際に、操作者が操作するユーザインターフェイスであって、走行速度の指示を受け付けるスロットル、走行方向の指示を受け付けるハンドルなどを備える。
通知部33は、現在の走行状況に関する情報、その他の各種情報を表示するものであって、液晶ディスプレイ、LEDランプ、スピーカなどで構成される。
走行部27は、走行経路を走行するための複数の走行車輪(図示せず)を備え、これら走行車輪を駆動するためのアクチュエータとしての複数の走行モータ(図示せず)を備えている。
【0020】
制御部11は、CPU、RAM、ROMを備えるコンピュータであり、所定のプログラムを実行することで走行制御を行う。
制御部11は、障害物情報取得部21、記憶部22、自己位置推定部23、教示データ作成部24、走行命令生成部25、走行制御部26を備える。
【0021】
障害物情報取得部21は、測距センサ31の検出信号に基づいて、本体1a(図5及び図6を参照)の周囲に存在する障害物の位置情報を取得する。記憶部22は、走行経路に対応する環境地図を記憶する。自己位置推定部23は、環境地図上における自己位置を推定する。
教示データ作成部24は、教示走行モードにおいて、自己位置推定部23により推定される環境地図上の自己位置を、その通過時刻と対応させた通過点データとして走行スケジュールを作成する。
走行命令生成部25は、再現走行モードにおいて、走行スケジュールに沿って走行するように走行命令を生成するとともに、障害物情報取得部21により取得した障害物の位置情報に基づいて進行方向に障害物が存在する場合に減速又は停止の走行命令を生成し、走行制御部26に入力する。走行制御部26は、アクチュエータに入力する制御量を作成し走行部27に入力する。
【0022】
自律移動体1は、教示走行モードにおいて、操作者が操作部32を手動操作することにより、走行経路を手動走行させながら、通過時刻と通過時刻における通過点データの集合でなる走行スケジュールを作成する。この時、障害物情報取得部21より取得した障害物の位置情報に基づいて、本体1aと障害物との距離が所定値以下である場合に、通知部33を介して、操作者に対して障害物に接近している旨の通知を行う。通知部33をスピーカとした場合には、所定のアラーム音を発生して操作者に障害物の接近を通知することができる。また、通知部33を液晶ディスプレイやLEDランプ等の表示装置とした場合には、所定の通知表示を行うことで、操作者に障害物の接近を通知できる。
【0023】
(2)機能ブロック
本発明の第1実施形態による自律移動体を以下に説明する。
図2は、本発明の第1実施形態が採用される清掃用ロボットの制御ブロック図である。
この清掃用ロボット40は、操作者の手動操作により走行開始位置から走行終了位置まで手動走行させながら、通過時刻と通過時刻における通過点データの集合でなる走行スケジュールと環境地図復元用データを作成する教示走行モードと、走行スケジュールを再現しながら、走行開始位置から走行終了位置まで自律的に走行する再現走行モードとを実行する。
清掃用ロボット40は、自律移動体1と、スロットル42、清掃部ユーザインターフェイス43を備える。清掃用ロボット40は、さらに、清掃部(図示せず)を有している。清掃部は、自律移動体1の下部に設けられており、自律移動体1の移動と共に床面を清掃するための装置である。
【0024】
スロットル42は、図1の操作部32に対応するものであり、操作者の手動操作による指示入力を受け付ける。スロットル42は、軸周りの回転角度により制御の指示入力を受け付けるスロットルグリップを左右独立して設けることができる。また、スロットル42は、前進速度を受け付けるスロットルグリップと、操舵方向の指示を受け付けるハンドルの組合せとすることも可能である。さらに、スロットル42は、スロットルレバーやその他の入力手段を組み合わせたものとすることができる。
【0025】
清掃部ユーザインターフェイス43は、清掃部(図示せず)による清掃動作の指示を操作者から受け付けるものであり、例えば、液晶ディスプレイ、操作ボタン、タッチパネル、その他操作スイッチの組合せで構成できる。清掃部ユーザインターフェイス43に、液晶ディスプレイやタッチパネルなどの表示装置を備える場合には、制御部11から出力される各種情報をこの清掃部ユーザインターフェイス43に表示させることができ、教示走行モードにおいて障害物が接近した旨の通知もこの表示装置を介して表示させることができる。
【0026】
自律移動体1は、コントロールボード51、ブレーカ52、前方レーザレンジセンサ53、後方レーザレンジセンサ54、バンパースイッチ55、非常停止スイッチ56、スピーカ57、走行部27を備える。
【0027】
ブレーカ52は、主電源スイッチであって、操作者の操作に基づいて、自律移動体1の各部にバッテリ(図示せず)からの電源電圧供給のオン、オフを行う。
前方レーザレンジセンサ53は、自律移動体1の前方に位置する障害物の位置情報を検出するものであり、所定の角度範囲で水平方向にレーザ光を照射して、障害物から反射される反射光を受信して、本体1aから障害物までの距離を測定する。
後方レーザレンジセンサ54は、自律移動体1の後方に位置する障害物の位置情報を検出するものであり、所定の角度範囲で水平方向にレーザ光を照射して、障害物から反射される反射光を受信して、本体1aから障害物までの距離を測定する。
【0028】
バンパースイッチ55は、自律移動体1の車体外周に取り付けられた感圧スイッチとすることができ、障害物に接触したことを検出して、検出信号を出力する。
非常停止スイッチ56は、自律移動体1の動作を緊急停止させる指示を受け付けるものであって、操作者による操作が可能なスイッチである。
スピーカ57は、自律移動体1の動作中における各種情報を音により操作者に通知する。
【0029】
コントロールボード51は、CPU、ROM、RAMを搭載する回路基板であり、制御部11、教示データ作成部24、SLAM処理部63、不揮発メモリ64、障害物情報取得部21、記憶部22、走行制御部26を含む。
【0030】
記憶部22は、各種データを記憶するものであり、教示走行モードにおいて作成された走行スケジュール及び走行経路を含むグローバルマップ、又はグローバルマップを復元するための環境地図復元用データを時刻、又はこの時刻に関連付けた識別子と関連付けて記憶する。
【0031】
制御部11は、コントロールボード51に搭載されるマイクロプロセッサであり、所定のプログラムを実行することにより、自律移動体1の各部の動作を制御する。
教示データ作成部24は、教示走行モードにおける通過時刻と通過時刻に対応する通過点データの集合である走行スケジュールを作成する。
【0032】
SLAM処理部63は、自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)処理を実行する機能ブロックであって、地図作成部72、自己位置推定部23、マップマッチング部73を備える。
【0033】
地図作成部72は、障害物情報取得部21により取得した障害物の位置情報を、取得した時刻と対応付けて環境地図復元用データとして記憶部22に記憶させる。また、地図作成部72は、障害物情報取得部21により取得した障害物の位置情報に基づいて、本体1aの周辺領域におけるローカルマップ(局所地図)を作成する。さらに、地図作成部72は、作成したローカルマップに基づいて、自己位置推定用のグローバルマップ(環境地図)を作成する。また、地図作成部72は、再現走行モードにおいて、現在の通過点よりも先の時刻に対応する環境地図復元用データを記憶部22から読み出して、それに基づいてグローバルマップを更新する。」
・「 【0071】
ステップS46において、制御部11は、操作者に対して障害物に接近している旨の通知を行う。具体的には、制御部11は、スピーカ57を介して所定のアラーム音を発生させて、操作者に進路を変更することを促す。これと同時に、制御部11は、清掃部ユーザインターフェイス43の表示部に、障害物に接近している旨の警告表示を作成して表示させることもできる。この後、制御部11はステップS47に移行する。
上記の通知により、教示走行モードにおいて作成される走行スケジュールは、自律移動体1の本体1aと障害物との距離が所定距離以下になる箇所を含みにくい。
【0072】
ステップS47において、制御部11は、障害物情報取得部21により、グローバルマップ上における現在の自己位置の周囲に位置する障害物の位置情報を取得し、これを時刻に対応させて、環境地図復元用データとして記憶部22に記憶させる。
ここで、記憶部22に記載される環境地図復元用データは、グローバルマップ上の自己位置の周囲を所定面積の単位グリッドで分割し、各グリッドに障害物存在確率を対応付けて、障害物の位置情報を取得した時刻(t)と関連つけたものとすることができる。」
・「図1
[図:0001436216000001.jpg]
」
・「図2
[図:0001436216000002.jpg]
」
すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「 床面を清掃するための走行スケジュールを再現しながら、走行開始位置から走行終了位置まで自律的に走行する自律移動体1と、
各種情報を表示する液晶ディスプレイと、
記憶部22と
を備える清掃用ロボット40であって、
前記自律移動体1が、床面上を走行するための走行部27、制御部11、測距センサ31、清掃部、及び操作部32を備え、
前記制御部11の走行命令生成部25は、再現走行モードにおいて、前記自律移動体1が走行スケジュールに沿って走行するように走行命令を生成するとともに、前記測距センサ31の検出信号に基づいて、障害物情報取得部21により取得した周囲に存在する障害物の位置情報に基づいて進行方向に障害物が存在する場合に減速又は停止の走行命令を生成し、前記制御部11の走行制御部26に入力するものであり、
前記床面上の走行経路が、前記記憶部22に記憶され、
前記自律移動体1が、教示走行モードにおいて、前記操作部32にて操作者が手動操作することにより、走行経路を手動走行させられながら走行スケジュールが作成され、前記走行スケジュール及び前記走行経路を含むグローバルマップを記憶部22に記憶し、
前記自律移動体1が、スピーカ57を有し、教示走行モードにおいて、スピーカ57を介して所定のアラーム音を発生させて操作者に障害物の接近を通知し、操作者に進路を変更することを促す、清掃用ロボット40。」
2 甲2の記載及び甲2発明
甲2には、次の事項が記載されている。
・「 【0027】
本実施形態の清掃ロボットは、図1に示すようにロボット本体1と、図2に示す回路とからなり、ロボット本体1には自律走行機能と、自律清掃機能として必要な回路系、駆動系、情報取得系の構成要素とともに電源用のバッテリBTを搭載している。
【0028】
ロボット本体1を床面上で走行させる走行手段は、ロボット本体1の後部<図1(b),(c)において右側>の両側部に設けた2つの駆動輪2,2と、前部中央に設けた1つの偏心キャスタ3と、駆動輪2,2を回転駆動させるモータM1及び偏心キャスタ3の向きを転換をさせるためのモータM2とを備え、これらモータM1、M2の駆動が清掃ロボット全体の中枢を構成するマイクロコンピュータなどからなる制御部20によりモータドライブ部21を通じて制御され、駆動輪2,2の回転と偏心キャスタ3の指示方向によりロボット本体1を図1(b),(c)において左方向へ走行させるようになっている。
【0029】
清掃部はロボット本体1の前側の両側下部に設けられ床面に並行する方向に回転させるサイドブラシ4と、偏心キャスタ3と駆動輪2,2との間に開口したゴミ掃き込み口6内に設けられ床面側に下部が臨み、床面に対して垂直方向に回転駆動されるメインブラシ5と、ゴミ取り込み口6の開閉量を調整するフラッパー7と、ゴミ掃き込み口6から掃き込まれるゴミを吸引する清掃ブロアー8と、清掃ブロアー8の後方のロボット本体1の後部に開口した排気口に装着されたフィルタ9と、サイドブラシ4及びメインブラシ5を回転駆動するモータM3,M4と、フラッパー7の開閉駆動部10と、両ブラシ4,5を上下移動させる駆動部11a,11bとで構成され、サイドブラシ4によりゴミをメインブラシ5方向へ掃き込み、メインブラシ5でゴミ掃き込み口6内に掃き上げると共に清掃ブロアー8によりゴミを吸い込むようになっている。このときフラッパー7によってゴミ掃き込み口6の開閉量を小さくすることでメインブラシ5付近の圧力を負圧にコントロールし、吸い込み効率を上げるようになっている。モータM3,M4の駆動はモータM1、M2と同様にモータドライブ部21を通じて制御部20により制御され、また開閉駆動部10や駆動部11a,1bは適宜な電磁駆動源を用いて構成され、制御部20により制御される。
【0030】
本実施形態の清掃ロボットは、制御部20が上述の走行手段及び清掃部の動作を制御するために用いる外部の環境情報を取得する環境情報取得手段として、進行方向の壁情報の検出及び障害物の検出用のレーザーレーダー12と、ロボット本体1周囲の広い範囲で障害物を検出するための超音波センサ13と、床面の段差及び床面上のゴミを検出するための距離画像カメラ14,14とを装備している。
【0031】
ここでレーザーレーダー12はロボット本体1の前面下部に設けられて走行する水平面の進行方向に対して±90°の範囲を図3(a)に示すように一定角度毎にレーザー照射(図においてAが照射状態を示す)を行って距離計測を行ってロボット本体1から見た障害物Xまたは壁Wの2次元的配置を計測するとともに、後述する進行方向の斜面(坂道)を検知するためのものである。
【0032】
制御部20はこの壁Wの2次元的配置の計測情報を取り込み、記憶手段たる記憶装置23に予め記憶させている清掃対象域を含む走行領域内の地図情報と比較し、図3(b)に示すように計測結果αと地図情報が示す地図βとをマッチングさせる処理を行い、ロボット本体1の位置、つまり自己位置を認識する機能(自己位置認識手段)を備えており、この認識処理を一定時間毎に行うことにより、適宜自己位置を補正しながら、目的地までの走行経路を自動的に生成して、この走行経路に沿って走行するように上述の偏心キャスター3の向きを制御走行する。つまり制御部20はレーザーレーダー12の計測結果に基づいて走行経路生成を生成する走行経路生成手段を構成する。」
・「 【0042】
而して本実施形態の清掃ロボットでは上述のように、上述の環境情報取得手段の情報と記憶装置23に予め記憶させている走行領域の地図情報及びその付加情報に基づいて、制御部20が、目的地までの走行経路の自動生成と、走行中において床面上の障害物Xや大きなゴミYの回避という自律走行に係る制御と、床面の凸段差Tや凹段差Bに対するサイドブラシ4やメインブラシ5の高さ位置の制御や回転停止などの制御、更に床面上のゴミYの大きさの判定に基づいたサイドブラシ4やメインブラシ5の回転数の制御など自律清掃に係る清掃部の制御とを行うことで、きめ細かい清掃を行うことができるのである。
【0043】
尚本実施形態ではロボット本体1の両側面に設けた非常停止スイッチSW1、SW2が操作されると制御部20の制御の下で清掃ロボットの運転を停止させることができる。
【0044】
また何らかの原因でロボット本体1の周囲に設けたバンパー15が壁W、障害物X等に衝突したときにこれを検知する衝突センサ28を設け、この衝突センサ28の検知があると制御部20の制御の下で清掃ロボットの運転を自動的停止させるようになっている。
【0045】
更に上述の地図情報等を制御部20の制御の下で記憶装置23に記憶させる操作や、各種設定を行ったり、運転開始の指令等を制御部20に与える操作を行うための操作パネル及び操作モニタからなる操作表示部27をロボット本体1の後面上部に設けてある。またロボット本体1を手動操作するためのハンドルHをロボット本体1の後部に設けてある。」
・「 【0051】
尚その他の動作は実施形態1と同じであるので説明は省略する。
(実施形態3)
上記実施形態1ではゴミYと見なした物体の体積が閾値より大きい場合にはそれを障害物として回避する制御を行っているが、そのままほっておけば床面上に当該ゴミYが残ることになるので、本実施形態では清掃できなかった当該ゴミYの位置及び体積(大きさ)を、制御部20の制御の下で、記憶装置23に記憶してある地図情報に付加させる機能と、このゴミ位置を作業者に判るように操作表示部27でゴミ位置を示した地図を表示させる機能を持たせた点に特徴がある。
【0052】
尚上記機能以外は実施形態1と同じであるので上記機能以外の動作の説明、構成の図示とその説明は省略する。
【0053】
而して本実施形態ではゴミYと見なされたものの体積が大きく、障害物として掃き込みを回避された物体があると、制御部20の制御の下で、その位置を記憶装置23に記憶している地図情報に付加する処理を行う。ここで制御部20は操作表示部27からの読み出し指令が与えられると記憶装置23から読み出して操作表示部27のモニタ画面上に図9に示すように表示させる機能を備えているので、清掃ロボットによる清掃作業が終了後、作業者は操作表示部27で地図を表示して清掃されなかったゴミYの位置をチェックすることができる。このチェック後、作業者は当該ゴミYの位置に行って回収することで、清掃品質の向上が図れる。また当該位置の物体がゴミでない場合には、作業者は操作表示部27を用いて地図情報上の当該ゴミYの情報を修正し、例えば障害物Xとして修正を加えれば、次回から制御部20はゴミYと認識せず、ゴミYの位置情報を付加する処理を行わなくなる。
【0054】
図9で示す表示例では、掃き込みできなかったゴミYの位置を○印で示すとともに吹き出しにより地図上の座標位置(X,Y)と、その大きさ、更に「掃込不能ゴミあり」などのコメントを表示している。」
・「図1
[図:0001436216000003.jpg]
」
・「図2
[図:0001436216000004.jpg]
」
・「図9
[図:0001436216000005.jpg]
」
すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「 床面を走行させる自律走行機能と、自律清掃機能を搭載しているロボット本体1と、
操作パネル及び操作モニタからなる操作表示部27と、
記憶装置23と
を備える清掃ロボットであって、
前記ロボット本体1が、ロボット本体1を床面上で走行させる走行手段、制御部20、環境情報取得手段、清掃部、及び操作表示部27やハンドルHを備え、
前記ロボット本体1の制御部20が走行手段及び清掃部の動作を制御するために用いる外部の環境情報を環境情報取得手段によって取得するものであり、
前記床面上の走行経路が、前記記憶装置23に記憶され、
清掃できなかったゴミYの位置及び体積(大きさ)を、制御部20の制御の下で、記憶装置23に記憶してある地図情報に付加させ、このゴミ位置を作業者に判るように操作表示部27でゴミ位置を示した地図を表示させる、
清掃ロボット。」
3 甲3の記載及び甲3発明
甲3には、次の事項が記載されている。
・「 【0023】
本発明の実施形態による自律走行作業装置1について説明する。図1に示すように、自律走行作業装置1は、各部を収容するための装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3と、走行部3の手動操作を受け付ける走行操作部4とを備える。自律走行作業装置1は、所定の作業を実行する作業機構(作業部)を装置本体2に搭載することができ、例えば、装置本体2の下方の床面FLの清掃作業を実行する清掃部5を作業部として備えて、自律走行清掃装置として機能する。自律走行作業装置1は、例えば、ショッピングモール等の商業施設、オフィス、ホテル、病院、学校、工場等の全部または一部の領域を清掃エリア(作業エリア)として、清掃エリアの床面FLを清掃の対象とする。
【0024】
また、自律走行作業装置1は、装置本体2と周囲の壁や人や置物等の障害物との位置関係を計測する計測部6と、所定距離内の障害物を検知する障害物検知部7とを備える。また、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各種機能の操作や表示のためのタッチパネル18(図4参照)からなる操作表示部8と、自律走行作業装置1の各部に電力を供給し、バッテリー(図示せず)の残量監視や充電を制御するための電源部9とを備える。更に、自律走行作業装置1は、図2にも示すように、自律走行作業装置1の各部および各種機能(走行部3による走行、清掃部5による清掃作業、計測部6による計測等)を統括制御する制御部10と、走行部3の走行データや清掃部5の清掃データ(作業データ)からなる清掃プラン(作業プラン)を記憶する記憶部11とを備える。
【0025】
次に、自律走行作業装置1の動作の概要を説明する。
【0026】
自律走行作業装置1は、手動操作による走行および自動操作による自律的な走行が可能な車両であって、学習走行モード、自動走行モードおよび手動走行モードの何れかの動作モードに切り替えられて動作する。
【0027】
自律走行作業装置1は、学習走行モードおよび手動走行モードでは、学習走行清掃(学習走行作業)および手動走行清掃(手動走行作業)をそれぞれ行って、操作者による走行操作部4や操作表示部8の手動操作に応じて手動走行や手動清掃(手動作業)を行う。学習走行清掃では、更に、学習走行に伴って清掃エリアの環境地図を作成して記憶すると共に、学習走行時の走行経路や走行状態を示す走行データと、学習清掃時の清掃状態を示す清掃データとを取得して走行データおよび清掃データを含む清掃プランを記憶する。清掃プランには、学習走行時の環境地図が関連付けられて記憶される。」
・「 【0050】
計測部6は、装置本体2と周囲の壁や人や置物等の障害物との位置情報(例えば、装置本体2の進行方向に対する角度や距離)を計測するレーザーレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)6a等を備える。計測部6は、装置本体2が走行している間、例えば、所定のタイミング毎(例えば、25m/s毎)に障害物との位置情報を計測する。
【0051】
障害物検知部7は、装置本体2から所定距離内の壁や人や置物等の障害物の有無を検知する超音波センサや装置本体2付近の床面FLの段差を検知する赤外線センサ等の障害物センサ7aを備える。障害物検知部7は、装置本体2が走行している間、常時稼働していてよい。」
・「 【0061】
また、記憶部11は、清掃プラン作成部22によって作成される1つ以上の清掃プランを記憶すると共に、各清掃プランに対応する環境地図も記憶する。更に、記憶部11は、回避データ作成部26によって反復回避走行のために作成される回避データを記憶すると共に、回避データに対応する障害物検出地図も記憶する。回避データは、清掃プランの環境地図(清掃エリア)に含まれない未知の障害物(不定障害物)を回避して走行するためのデータであり、1つ以上の不定障害物のそれぞれに対して1つ以上作成されてよい。なお、回避データは、図5(2)および(3)に示すように、走行データと同様に構成され、複数のステップを含み、各ステップは、自己位置データ、操舵フラグ、進行方向への走行速度および旋回速度を含む。回避データのステップ間隔は、清掃プランのステップ間隔と同じでよい。
【0062】
モード切替部20は、動作モードを学習走行モード、自動走行モードおよび手動走行モードの何れかに切り替える。モード切替部20は、例えば、上記したモード選択画面30において、学習ボタン32、自動ボタン33および手動ボタン34の操作に応じて動作モードを学習走行モード、自動走行モードおよび手動走行モードにそれぞれ切り替える。
【0063】
地図作成部21は、学習走行モードにおいて学習走行清掃が行われる間、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いて、リアルタイムで自己位置の推定と環境地図の作成とを行う。
【0064】
具体的には、地図作成部21は、所定の清掃エリアの学習走行清掃の間に、計測部6の計測結果である装置本体2と障害物との位置情報に基づいて、所定の時間間隔毎または所定の距離間隔毎に、装置本体2の周囲の局所地図を作成する。また、地図作成部21は、局所地図と走行部3の各エンコーダによる検出結果(走行部3の移動量)とに基づいて、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置(座標)を推定する。
【0065】
そして、地図作成部21は、学習走行清掃を完了する際に、各局所地図をつなぎ合わせる(合成する)ことで清掃エリアの環境地図を作成する。また、地図作成部21は、局所地図中の自己位置(計測部6が計測した各位置情報)をつなぎ合わせる(合成する)ことで環境地図上の走行経路を作成する。
【0066】
清掃プラン作成部22は、学習走行モードにおいて学習走行清掃が行われる間、清掃プランのステップ間隔毎に、走行部3の走行データおよび清掃部5の清掃データを取得して記憶部11に一時的に記憶しておく。清掃プラン作成部22は、操作表示部8の操作に応じて学習走行清掃が開始されると、走行データおよび清掃データの取得を開始する。
【0067】
清掃プラン作成部22は、例えば、走行データとして、計測部6が計測した位置情報に基づいて自己位置データ(X座標およびY座標、角度)を取得する。また、走行部3の前輪3aの前輪回転用エンコーダで前輪3aの走行回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の走行速度を取得する。更に、走行部3の前輪3aの操舵回転用エンコーダで前輪3aの操舵回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の旋回速度を取得する。
【0068】
清掃プラン作成部22は、例えば、清掃データとして、清掃部5の清掃部材12のパッド圧、洗浄液供給部13の供給水量および吸引部14の吸引量について、操作表示部8の操作に応じて設定された段階的な強度を取得する。
【0069】
また、清掃プラン作成部22は、操作表示部8の操作に応じて学習走行清掃が完了すると、走行データおよび清掃データの取得を停止し、記憶部11に一時的に記憶していた走行データおよび清掃データをステップ毎に関連付けて清掃プラン(作業プラン)を作成する。そして、清掃プラン作成部22は、作成した清掃プランを、同じ学習走行清掃で地図作成部21が作成した環境地図と関連付けて記憶部11に記憶する。
【0070】
また、清掃プラン作成部22は、作成した清掃プランの走行データおよび環境地図に基づいて、ステップ毎に、自律走行作業装置1から最も近い障害物(最短障害物)を検出し、最短障害物の方向を検出すると共に最短障害物の最短距離を算出する。例えば、最短障害物は、自律走行作業装置1の進行方向に対して左側または右側に存在する壁等の障害物である。清掃プラン作成部22は、ステップ毎の最短障害物の方向および最短距離を最短障害物情報として清掃プランに記憶する。」
・「 【0077】
障害物判断部24は、手動走行清掃、学習走行清掃および自動走行清掃の実行中に、計測部6による計測結果に基づいて、自律走行作業装置1の周囲の障害物を判断する。例えば、障害物判断部24は、学習走行清掃時に、自律走行作業装置1と障害物との距離が所定の必要離間距離未満になった場合、操作表示部8による表示やスピーカ(図示せず)による音声出力によって、自律走行作業装置1が障害物に近接したことを示す障害物接近通知を出力する。学習走行清掃では、走行操作部4の操作に応じて走行速度を変更することができるところ、走行速度が速くなると、障害物との接触危険性を低下するために必要離間距離が短くなるように設定される。そのため、障害物と必要離間距離を維持して走行していても、走行速度を上昇することで、必要離間距離未満になることがある。これに対して、障害物接近通知を出力することで、操作者は、走行速度に応じて変化する必要離間距離を正確に把握することができる。」
・「図1
[図:0001436216000006.jpg]
」
・「図2
[図:0001436216000007.jpg]
」
すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲3発明)
「 床面FLの清掃作業を実行するための自律走行清掃装置として機能する装置本体2と、
各種機能の操作や表示のための操作表示部8と、
記憶部11と
を備える自律走行作業装置1であって、
前記装置本体2が、床面FL上を走行するための走行部3、制御部10、計測部6、清掃部5、及び走行操作部4を備え、
前記装置本体2が走行している間、装置本体2と周囲の壁や人や置物等の障害物との位置情報を前記計測部6が計測するものであり、
前記床面FL上の走行経路が、前記記憶部11に記憶され、
前記装置本体2が、操作者による前記走行操作部4や操作表示部8の手動操作に応じて学習走行モードで走行経路を作成して、該走行経路は、前記記憶部11に記憶され、
前記装置本体2が、スピーカを備え、学習走行清掃時に、自律走行作業装置1と障害物との距離が所定の必要離間距離未満になった場合、操作表示部8による表示やスピーカによる音声出力によって、自律走行作業装置1が障害物に近接したことを示す障害物接近通知を出力する、自律走行作業装置1。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について
(1)甲1を主引例とした場合
本件発明と甲1発明とを、その有する機能に照らして対比する。
・甲1発明の「床面」は、本件発明の「床面(16)」に相当し、以下同様に、「自律移動体1」は「床清掃装置(10)」に、「液晶ディスプレイ」は「表示ユニット(60、120、122)」に、「記憶部22」は「少なくとも1つの保存ユニット(46、124、126)」に、「清掃用ロボット40」は「床清掃システム」に、「走行部27」は「走行ギア(22)」に、「制御部11」は「制御ユニット(24)」に、「測距センサ31」は「センサユニット(44)」に、「清掃部」は「少なくとも1つの清掃ユニット(26)」に、「操作部32」は「操作ユニット(56)」に、「走行経路」は「清掃経路(68)」に、「操作者」は「操作者(66)」に、「教示走行モード」は「教示動作モード」に、それぞれ相当する。
・甲1発明の「床面を清掃するための走行スケジュールを再現しながら、走行開始位置から走行終了位置まで自律的に走行する自律移動体1」は、本件発明の「床面(16)を清掃するための自走式自己操舵の床清掃装置(10)」に相当する。
・甲1発明の「各種情報を表示する液晶ディスプレイ」は、本件発明の「少なくとも1つの制御可能な表示ユニット(60、120、122)」に相当する。
・甲1発明の「前記制御部11の走行命令生成部25は、再現走行モードにおいて、前記自律移動体1が走行スケジュールに沿って走行するように走行命令を生成するとともに、前記測距センサ31の検出信号に基づいて、障害物情報取得部21により取得した周囲に存在する障害物の位置情報に基づいて進行方向に障害物が存在する場合に減速又は停止の走行命令を生成し、前記制御部11の走行制御部26に入力する」態様は、本件発明の「前記床清掃装置(10)を移動中に位置付ける及び/又はナビゲートするために、周囲が前記センサユニット(44)によって検出可能であ」る態様に相当する。
・甲1発明の「前記床面上の走行経路が、前記記憶部22に記憶され」る態様は、本件発明の「前記床面(16)上の少なくとも1つの清掃経路(68)が、前記少なくとも1つの保存ユニット(46、124、126)に保存可能である又は保存され」る態様に相当する。
・甲1発明の「前記自律移動体1が、教示走行モードにおいて、前記操作部32にて操作者が手動操作することにより、走行経路を手動走行させられながら走行スケジュールが作成され、前記走行スケジュール及び前記走行経路を含むグローバルマップを記憶部22に記憶」する態様は、本件発明の「前記床清掃装置(10)が、前記操作ユニット(56)にて操作者(66)により案内される間に教示動作モードで清掃経路(68)を作成するように設計及び構成され、該清掃経路(68)は、前記保存ユニット(46、124、126)に保存可能であ」る態様に相当する。
・甲1発明の「自律移動体1が、スピーカ57を有し、教示走行モードにおいて、スピーカ57を介して所定のアラーム音を発生させて操作者に障害物の接近を通知し、操作者に進路を変更することを促す」態様は、本件発明の「前記床清掃装置が、光学アクチュエータ及び/又は音響アクチュエータを有する指示ユニットを備え、前記少なくとも1つの相互作用事象が、前記光学アクチュエータ及び/又は前記音響アクチュエータを介した指示の出力を含む」態様と、「前記床清掃装置が、光学アクチュエータ及び/又は音響アクチュエータを有する指示ユニットを備え」た点で共通する。
そうすると、本件発明と甲1発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
<一致点>
「 床面を清掃するための自走式自己操舵の床清掃装置と、
少なくとも1つの制御可能な表示ユニットと、
少なくとも1つの保存ユニットと
を備える床清掃システムであって、
前記床清掃装置が、床面上を走行するための走行ギア、制御ユニット、センサユニット、少なくとも1つの清掃ユニット、及び操作ユニットを備え、
前記床清掃装置を移動中に位置付ける及び/又はナビゲートするために、周囲が前記センサユニットによって検出可能であり、
前記床面上の少なくとも1つの清掃経路が、前記少なくとも1つの保存ユニットに保存可能である又は保存され、
前記床清掃装置が、前記操作ユニットにて操作者により案内される間に教示動作モードで清掃経路を作成するように設計及び構成され、該清掃経路は、前記保存ユニットに保存可能であり、
前記床清掃装置が、光学アクチュエータ及び/又は音響アクチュエータを有する指示ユニットを備えた、床清掃システム。」
<相違点1-1>
本件発明は、「前記床清掃装置(10)と周囲(18)との相互作用に関係する少なくとも1つの相互作用事象(90)が、位置固有の態様で前記清掃経路(68)内に保存可能である又は保存され、前記清掃経路(68)が、前記少なくとも1つの相互作用事象(90)に関連付けられる態様で、前記少なくとも1つの表示ユニット(60、120、122)上に表示可能であり」、「前記少なくとも1つの相互作用事象(90)が、前記光学アクチュエータ(52)及び/又は前記音響アクチュエータ(50)を介した指示の出力を含む」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
以下、<相違点>について検討する。相違点1-1について検討する。
甲1発明は、自律移動体1が、スピーカ57を有し、教示走行モードにおいて、スピーカ57を介して所定のアラーム音を発生させて操作者に障害物の接近を通知し、操作者に進路を変更することを促す構成を備えている。しかしながら、甲1発明のスピーカ57からの通知が、本件発明の相互作用事象に相当するとしても、甲1発明は、当該スピーカ57からの通知を位置固有の態様で清掃経路内に保存するものではない。したがって、相違点1-1は、実質的な相違点であり、本件発明は、甲1発明と相違するものである。
また、甲1発明の当該スピーカ57からの通知は、教示走行モードにおいて、操作者に障害物の接近を通知し、操作者に進路を変更することを促すことを目的としているものであることを鑑みると、その場で操作者に通知をすれば足るものであり、再現走行モードのために清掃経路内に位置固有の態様で保存する必要はなく、その動機もない。さらに、スピーカからの通知を位置固有の態様で清掃経路内に保存することが、周知技術であるとも認められない。
以上のとおりであるから、上記相違点1-1は、実質的な相違点であって、本件発明は、甲1発明であるといえない。また、甲1発明において、上記相違点1-1に係る本件発明の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
(2)甲2を主引例とした場合
本件発明と甲2発明とを、その有する機能に照らして対比する。
・甲2発明の「ロボット本体1」は、本件発明の「床清掃装置(10)」に相当し、以下同様に、「操作表示部27」は「表示ユニット(60、120、122)」に、「記憶装置23」は「少なくとも1つの保存ユニット(46、124、126)」に、「清掃ロボット」は「床清掃システム」に、「ロボット本体1を床面上で走行させる走行手段」は「床面(16)上を走行するための走行ギア(22)」に、「制御部20」は「制御ユニット(24)」に、「環境情報取得手段」は「センサユニット(44)」に、「清掃部」は「少なくとも1つの清掃ユニット(26)」に、「操作表示部27やハンドルH」は「操作ユニット(56)」に、「走行経路」は「清掃経路(68)」に、それぞれ相当する。
・甲2発明の「床面を走行させる自律走行機能と、自律清掃機能を搭載しているロボット本体1」は、本件発明の「床面(16)を清掃するための自走式自己操舵の床清掃装置(10)」に相当する。
・甲2発明の「操作パネル及び操作モニタからなる操作表示部27」は、本件発明の「少なくとも1つの制御可能な表示ユニット(60、120、122)」に相当する。
・甲2発明の「前記ロボット本体1の制御部20が走行手段及び清掃部の動作を制御するために用いる外部の環境情報を環境情報取得手段によって取得するものであ」る態様は、本件発明の「床清掃装置(10)を移動中に位置付ける及び/又はナビゲートするために、周囲が前記センサユニット(44))によって検出可能であ」る態様に相当する。
・甲2発明の「前記床面上の走行経路が、前記記憶装置23に記憶され」る態様は、本件発明の「前記床面(16)上の少なくとも1つの清掃経路(68)が、前記少なくとも1つの保存ユニット(46、124、126)に保存可能である又は保存され」る態様に相当する。
そうすると、本件発明と甲2発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
<一致点>
「 床面を清掃するための自走式自己操舵の床清掃装置と、
少なくとも1つの制御可能な表示ユニットと、
少なくとも1つの保存ユニットと
を備える床清掃システムであって、
前記床清掃装置が、床面上を走行するための走行ギア、制御ユニット、センサユニット、少なくとも1つの清掃ユニット、及び操作ユニットを備え、
前記床清掃装置を移動中に位置付ける及び/又はナビゲートするために、周囲が前記センサユニットによって検出可能であり、
前記床面上の少なくとも1つの清掃経路が、前記少なくとも1つの保存ユニットに保存可能である又は保存される、
床清掃システム。」
<相違点2-1>
本件発明は、「前記床清掃装置(10)が、前記操作ユニット(56)にて操作者(66)により案内される間に教示動作モードで清掃経路(68)を作成するように設計及び構成され、該清掃経路(68)は、前記保存ユニット(46、124、126)に保存可能であ」るのに対し、甲2発明は、そのような構成を有していない点。
<相違点2-2>
本件発明は、「前記床清掃装置(10)と周囲(18)との相互作用に関係する少なくとも1つの相互作用事象(90)が、位置固有の態様で前記清掃経路(68)内に保存可能である又は保存され、前記清掃経路(68)が、前記少なくとも1つの相互作用事象(90)に関連付けられる態様で、前記少なくとも1つの表示ユニット(60、120、122)上に表示可能であり、前記床清掃装置(10)が、光学アクチュエータ(52)及び/又は音響アクチュエータ(50)を有する指示ユニット(48)を備え、前記少なくとも1つの相互作用事象(90)が、前記光学アクチュエータ(52)及び/又は前記音響アクチュエータ(50)を介した指示の出力を含む」のに対し、甲2発明は、そのような構成を有していない点。
以下、<相違点>について検討する。事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
甲2発明は、清掃できなかったゴミYの位置及び体積(大きさ)を、制御部20の制御の下で、記憶装置23に記憶してある地図情報に付加させ、このゴミ位置が作業者に判るように操作表示部27でゴミ位置を示した地図を表示させるものである。しかしながら、甲2発明の操作表示部27は、本件発明の表示ユニットに対応するものであり、光学アクチュエータに対応するものではないことを鑑みると、この清掃できなかったゴミYの位置及び体積(大きさ)を操作表示部27で地図に表示させることは、本件発明の光学アクチュエータ及び/又は音響アクチュエータを介した指示の出力を含む相互作用事象であるとはいえない。また、甲2に、他に、光学アクチュエータ及び/又は音響アクチュエータを介した指示の出力を含む相互作用事象について記載も示唆もされていない。
してみると、上記相違点2-2は、実質的な相違点であって、本件発明は、甲2発明であるといえない。また、甲2発明において、上記相違点2-2に係る本件発明の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
以上より、本件発明は、相違点2-1について検討するまでもなく、甲2発明であるとはいえず、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲3を主引例とした場合
本件発明と甲3発明とを、その有する機能に照らして対比する。
・甲3発明の「床面FL」は、本件発明の「床面(16)」に相当し、以下同様に、「装置本体2」は「床清掃装置(10)」に、「操作表示部8」は「表示ユニット(60、120、122)」に、「記憶部11」は「少なくとも1つの保存ユニット(46、124、126)」に、「自律走行作業装置1」は「床清掃システム」に、「走行部3」は「走行ギア(22)」に、「制御部10」は「制御ユニット(24)」に、「計測部6」は「センサユニット(44)」に、「清掃部5」は「少なくとも1つの清掃ユニット(26)」に、「走行操作部4」は「操作ユニット(56)」に、「走行経路」は「清掃経路(68)」に、「操作者」は「操作者(66)」に、「学習走行モード」は「教示動作モード」に、それぞれ相当する。
・甲3発明の「床面FLの清掃作業を実行するための自律走行清掃装置として機能する装置本体2」は、本件発明の「床面(16)を清掃するための自走式自己操舵の床清掃装置(10)」に相当する。
・甲3発明の「各種機能の操作や表示のための操作表示部8」は、本件発明の「少なくとも1つの制御可能な表示ユニット(60、120、122)」に相当する。
・甲3発明の「前記装置本体2が走行している間、装置本体2と周囲の壁や人や置物等の障害物との位置情報を前記計測部6が計測するものであ」る態様は、本件発明の「前記床清掃装置(10)を移動中に位置付ける及び/又はナビゲートするために、周囲が前記センサユニット(44)によって検出可能であ」る態様に相当する。
・甲3発明の「床面FLの走行経路が、前記記憶部11に記憶され」る態様は、本件発明の「前記床面(16)上の少なくとも1つの清掃経路(68)が、前記少なくとも1つの保存ユニット(46、124、126)に保存可能である又は保存され」る態様に相当する。
・甲3発明の「前記装置本体2が、操作者による前記走行操作部4や操作表示部8の手動操作に応じて学習走行モードで走行経路を作成して、該走行経路は、前記記憶部11に記憶され」る態様は、本件発明の「前記床清掃装置(10)が、前記操作ユニット(56)にて操作者(66)により案内される間に教示動作モードで清掃経路(68)を作成するように設計及び構成され、該清掃経路(68)は、前記保存ユニット(46、124、126)に保存可能であ」る態様に相当する。
・甲3発明の「装置本体2が、スピーカを備え、学習走行清掃時に、自律走行作業装置1と障害物との距離が所定の必要離間距離未満になった場合、操作表示部8による表示やスピーカによる音声出力によって、自律走行作業装置1が障害物に近接したことを示す障害物接近通知を出力する」態様は、本件発明の「前記床清掃装置が、光学アクチュエータ及び/又は音響アクチュエータを有する指示ユニットを備え、前記少なくとも1つの相互作用事象が、前記光学アクチュエータ及び/又は前記音響アクチュエータを介した指示の出力を含む」態様と、「前記床清掃装置が、光学アクチュエータ及び/又は音響アクチュエータを有する指示ユニットを備え」た点で共通する。
そうすると、本件発明と甲3発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
<一致点>
「 床面を清掃するための自走式自己操舵の床清掃装置と、
少なくとも1つの制御可能な表示ユニットと、
少なくとも1つの保存ユニットと
を備える床清掃システムであって、
前記床清掃装置が、床面上を走行するための走行ギア、制御ユニット、センサユニット、少なくとも1つの清掃ユニット、及び操作ユニットを備え、
前記床清掃装置を移動中に位置付ける及び/又はナビゲートするために、周囲が前記センサユニットによって検出可能であり、
前記床面上の少なくとも1つの清掃経路が、前記少なくとも1つの保存ユニットに保存可能である又は保存され、
前記床清掃装置が、前記操作ユニットにて操作者により案内される間に教示動作モードで清掃経路を作成するように設計及び構成され、該清掃経路は、前記保存ユニットに保存可能であり、
前記床清掃装置が、光学アクチュエータ及び/又は音響アクチュエータを有する指示ユニットを備えた、床清掃システム。」
<相違点3-1>
本件発明は、「前記床清掃装置(10)と周囲(18)との相互作用に関係する少なくとも1つの相互作用事象(90)が、位置固有の態様で前記清掃経路(68)内に保存可能である又は保存され、前記清掃経路(68)が、前記少なくとも1つの相互作用事象(90)に関連付けられる態様で、前記少なくとも1つの表示ユニット(60、120、122)上に表示可能であり」、「前記少なくとも1つの相互作用事象(90)が、前記光学アクチュエータ(52)及び/又は前記音響アクチュエータ(50)を介した指示の出力を含む」のに対し、甲3発明は、そのような構成を有していない点。
以下、<相違点>について検討する。相違点3-1について検討する。
甲3発明は、装置本体2が、スピーカを備え、学習走行清掃時に、自律走行作業装置1と障害物との距離が所定の必要離間距離未満になった場合、操作表示部8による表示やスピーカによる音声出力によって、自律走行作業装置1が障害物に近接したことを示す障害物接近通知を出力する構成を備えている。しかしながら、甲3発明のスピーカからの音声出力による障害物接近通知が、本件発明の相互作用事象に相当するとしても、甲3発明は、当該スピーカからの音声出力による障害物接近通知を位置固有の態様で走行経路内に保存するものではない。また、甲3発明の操作表示部8は、本件発明の表示ユニットに対応するものであり、光学アクチュエータに対応するものではないことを鑑みると、甲3発明の操作表示部8の表示による障害物接近通知は、本件発明の光学アクチュエータ及び/又は音響アクチュエータを介した指示の出力を含む相互作用事象であるとはいえない。したがって、相違点3-1は、実質的な相違点であり、本件発明は、甲3発明と相違するものである。
また、甲3発明の当該操作表示部8の表示による障害物接近通知や当該スピーカからの音声出力による障害物接近通知は、学習走行清掃時、つまり学習走行モードにおいて、操作者に自律走行作業装置1が障害物に近接したことを通知することを目的としているものであることを鑑みると、その場で操作者に通知をすれば足るものであり、清掃プランの自動走行清掃時のために走行経路内に位置固有の態様で保存する必要はなく、その動機もない。さらに、スピーカからの通知を位置固有の態様で走行経路内に保存することが、周知技術であるとも認められない。
以上のとおりであるから、上記相違点3-1は、実質的な相違点であって、本件発明は、甲3発明であるといえない。また、甲3発明において、上記相違点3-1に係る本件発明の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
2 申立理由3(サポート要件)について
(1)申立理由3の具体的内容
a.「相互作用事象(90)」を保存するトリガが明示されておらず、発明の詳細な説明に記載された手動保存だけでなく、発明の詳細な説明に記載されていない自動保存も含まれるため、サポート要件を満たさない。(特許異議申立書6頁)
b.「相互作用事象(90)」に関して、発明の詳細な説明に記載された「前記光学アクチュエータ(52)及び/又は前記音響アクチュエータ(50)」だけでなく、発明の詳細な説明に記載されていない他の事象も含まれるため、サポート要件を満たさない。(特許異議申立書6頁)
(2)当審の判断
本件発明が解決しようとする課題は、段落[0007]によると「清掃結果を制御するために、清掃経路に追加の情報を提供することができる」ことであり、その解決手段は、段落[0064]の「本発明によれば、特に少なくとも1つの清掃ユニット26に関係する少なくとも1つの清掃事象、及び/又は少なくとも1つの相互作用事象が、位置固有の態様で清掃経路68内に保存されることができるようになっている。」との記載や、段落[0074]の「障害物108の周りを運転している間に、周囲18内の人に警告するための相互作用事象90がトリガされた。」等の記載によると、清掃ユニット26に関係する清掃事象、及び/又は周囲18内の人に警告するための相互作用事象90が位置固有の態様で清掃経路68内に保存されることと認められる。
そして、本件発明には、「前記光学アクチュエータ(52)及び/又は前記音響アクチュエータ(50)を介した指示の出力を含む」、「前記床清掃装置(10)と周囲(18)との相互作用に関係する少なくとも1つの相互作用事象(90)が、位置固有の態様で前記清掃経路(68)内に保存可能である又は保存され」と特定されているから、課題を解決する手段は反映されている。
してみると、本件発明は、課題解決手段が反映されており、相互作用事象90の保存が手動保存であることは前記課題を解決するために必須の事項とは解されないから、発明の詳細な説明に記載されていない自動保存を含むか否かによらず、サポート要件を満たしていないとはいえない。
また、前記したとおり、本件発明は、課題解決手段が反映されているので、「相互作用事象(90)」が、発明の詳細な説明に記載されていない他の事象を含むか否かによらず、サポート要件を満たしていないとはいえない。
以上のとおりであるから、申立理由3は、理由がない。
3 申立理由4(明確性要件)について
(1)申立理由4の具体的内容
「相互作用事象(90)」に関して、発明の詳細な説明に記載された「前記光学アクチュエータ(52)及び/又は前記音響アクチュエータ(50)」だけでなく、発明の詳細な説明に記載されていない他の事象も含まれ、どのような相互作用を示すか不明であると共に、どのような事象を示すか不明であり、明確性要件を満たさない。(特許異議申立書6頁)
(2)当審の判断
本件発明には、「前記少なくとも1つの相互作用事象(90)が、前記光学アクチュエータ(52)及び/又は前記音響アクチュエータ(50)を介した指示の出力を含む」と記載されており、相互作用事象が、少なくとも光学アクチュエータか音響アクチュエータを介した指示の出力を含んでいることが明確であり、何ら不明確ではない。
以上のとおりであるから、申立理由4は、理由がない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2026-700043