特許異議申立
2023-701209
冷蔵庫表示システム、冷蔵庫および端末
- 審判番号
- 2023-701209
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-207046
- 登録番号
- 7275244
- 請求日
- 2023年11月16日
- 審決日
- 2025年05月26日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東芝ライフスタイル株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人サトー
- 【異議申立人】藤本 拓也
- 審判長/審判官
- 審判長 大山 健
- 審判官 間中 耕治
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P1651.121-YAA(F25D) / P1651.537-YAA(F25D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7275244号発明「冷蔵庫表示システム、冷蔵庫および端末」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7275244号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第7275244号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7275244号の請求項1~3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年7月18日の出願である特願2014-147797号の一部を平成31年4月23日に新たな特許出願とした特願2019-081889号の一部を令和2年4月14日に新たな特許出願とした特願2020-072265号の一部を令和3年12月21日に新たな特許出願としたものであって、令和5年5月9日にその特許権の設定登録がされ、同月17日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年11月16日 :特許異議申立人 藤本拓也(以下、「申立人」という。) による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 1月30日付け:取消理由通知
同年 3月15日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年 4月15日 :特許権者による手続補正書の提出
同年 6月12日 :申立人による意見書の提出
同年 7月26日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 9月25日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
令和7年 1月 7日 :申立人による意見書の提出
なお、令和6年3月15日に特許権者がした訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1.特許請求の範囲の訂正(訂正事項1)
(1)訂正の内容
訂正前の請求項1に「 冷蔵庫と、当該冷蔵庫と通信する通信機能を有する端末と、で構築される冷蔵庫表示システムであって、
前記冷蔵庫は、当該冷蔵庫の所定機能を設定可能であり、当該冷蔵庫において設定内容に変更が生じた場合には、その変更後の設定内容を示す設定内容情報を前記端末に送信し、
前記端末は、前記冷蔵庫から受信した設定内容情報を反映させて表示するものであって、前記冷蔵庫の機能のうち前記所定機能を除く機能を設定可能であり、且つ、前記冷蔵庫において前記所定機能の設定が変更された場合には、その変更後の設定内容を反映させて前記所定機能に関する情報を表示する冷蔵庫表示システム。」とあるのを、
「 貯蔵室を備える冷蔵庫と、当該冷蔵庫と通信する通信機能を有する端末と、で構築される冷蔵庫表示システムであって、
前記冷蔵庫は、当該冷蔵庫の所定機能を設定可能であり、当該冷蔵庫において設定内容に変更が生じた場合には、その変更後の設定内容を示す設定内容情報を前記端末に送信し、
前記端末は、前記冷蔵庫から受信した設定内容情報を反映させて表示するものであって、前記冷蔵庫の機能のうち前記所定機能を除く機能を設定可能であり、且つ、前記冷蔵庫において前記所定機能の設定が変更された場合には、その変更後の設定内容を反映させて前記所定機能に関する情報を表示可能であり、
前記所定機能は、前記冷蔵庫が備える設定手段を介して前記貯蔵室の設定温度を調整する調整機能であり、
前記所定機能を除く機能は、前記設定手段を介して直接的に設定することができない機能であって、前記調節機能とは異なる機能であって、前記端末からの操作に応じて設定の切り換えが可能な機能であって、前記冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能である冷蔵庫表示システム。」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項3も、同様に訂正する(下線は訂正箇所である。以下同様。)。
(2)訂正の適否
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の冷蔵庫について「貯蔵室を備えること」及び、機能について所定機能に関する情報を表示「可能であり、前記所定機能は、前記冷蔵庫が備える設定手段を介して前記貯蔵室の設定温度を調整する調整機能であり、前記所定機能を除く機能は、前記設定手段を介して直接的に設定することができない機能であって、前記調節機能とは異なる機能であって、前記端末からの操作に応じて設定の切り換えが可能な機能であって、前記冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能である」との発明特定事項を直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であること
訂正事項1について、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)の段落【0009】には、「冷蔵庫11は、貯蔵室として、冷蔵室、冷凍室、野菜室、製氷室などを備える。」こと、段落【0021】には、「冷蔵庫11が備える複数の機能のうち、所定の機能、この場合、必須機能として規定されている冷蔵室の設定温度の調節機能および冷凍室の設定温度の調節機能と、追加機能として規定されている一気冷凍機能および一気製氷機能とを、当該冷蔵庫11が備える操作パネル13を介して設定可能となっている。」こと、段落【0022】には、「冷蔵庫11は、操作パネル13を介して設定可能な上記の所定機能の他に、例えば、野菜冷凍機能、ドライ冷凍機能、熱もの冷凍機能、節電モード機能、タイマー節電機能、おでかけ機能、ピークシフト機能などといった各種の機能を備えている。」こと、段落【0024】には、「冷蔵庫11は、これら所定機能以外の機能については、外部の端末12を介して遠隔により設定する構成となっている。従って、冷蔵庫11は、所定機能以外の機能を、操作パネル13を介して直接的に設定することができないように構成されている。」こと、が記載されている。
ここで、段落【0022】に記載された「野菜冷凍機能、ドライ冷凍機能、熱もの冷凍機能、節電モード機能、タイマー節電機能、おでかけ機能、ピークシフト機能」は、段落【0021】に記載された「所定機能」とは異なる機能であって、冷蔵庫の要素を用いる機能であって、端末からの操作などに応じて時間を限定して冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能といえるから、訂正事項1は、特許明細書等に記載された事項の範囲内の訂正ということができる。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、発明特定事項を直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
エ 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1~3について、請求項2、3は、それぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項〔1~3〕は、一群の請求項であって、訂正事項1は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
2.明細書の訂正(訂正事項2)
(1)訂正の内容
明細書の段落【0005】に「 本実施形態に係る冷蔵庫表示システムは、冷蔵庫と、当該冷蔵庫と通信する通信機能を有する端末と、で構築される冷蔵庫表示システムである。前記冷蔵庫は、当該冷蔵庫の所定機能を設定可能であり、当該冷蔵庫において設定内容に変更が生じた場合には、その変更後の設定内容を示す設定内容情報を前記端末に送信し、前記端末は、前記冷蔵庫から受信した設定内容情報を反映させて表示するものであって、前記冷蔵庫の機能のうち前記所定機能を除く機能を設定可能であり、且つ、前記冷蔵庫において前記所定機能の設定が変更された場合には、その変更後の設定内容を反映させて前記所定機能に関する情報を表示する。」とあるのを、
「 本実施形態に係る冷蔵庫表示システムは、貯蔵室を備える冷蔵庫と、当該冷蔵庫と通信する通信機能を有する端末と、で構築される冷蔵庫表示システムである。前記冷蔵庫は、当該冷蔵庫の所定機能を設定可能であり、当該冷蔵庫において設定内容に変更が生じた場合には、その変更後の設定内容を示す設定内容情報を前記端末に送信し、前記端末は、前記冷蔵庫から受信した設定内容情報を反映させて表示するものであって、前記冷蔵庫の機能のうち前記所定機能を除く機能を設定可能であり、且つ、前記冷蔵庫において前記所定機能の設定が変更された場合には、その変更後の設定内容を反映させて前記所定機能に関する情報を表示可能であり、前記所定機能は、前記冷蔵庫が備える設定手段を介して前記貯蔵室の設定温度を調整する調整機能であり、前記所定機能を除く機能は、前記設定手段を介して直接的に設定することができない機能であって、前記調節機能とは異なる機能であって、前記端末からの操作に応じて設定の切り換えが可能な機能であって、前記冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能である。」に訂正する。
(2)訂正の適否
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正事項1に伴い、請求項1に関する発明の詳細な説明の記載を整合させるために訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であること
訂正事項2は、訂正事項1と同様の理由により、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正ということができる。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正事項1と同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
エ 明細書の訂正に係る請求項について
訂正事項2は、一群の請求項である請求項1~3と関係するものであって、一群の請求項である請求項1~3の全てについて訂正請求がされているから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合するものである。
3.まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
貯蔵室を備える冷蔵庫と、当該冷蔵庫と通信する通信機能を有する端末と、で構築される冷蔵庫表示システムであって、
前記冷蔵庫は、当該冷蔵庫の所定機能を設定可能であり、当該冷蔵庫において設定内容に変更が生じた場合には、その変更後の設定内容を示す設定内容情報を前記端末に送信し、
前記端末は、前記冷蔵庫から受信した設定内容情報を反映させて表示するものであって、前記冷蔵庫の機能のうち前記所定機能を除く機能を設定可能であり、且つ、前記冷蔵庫において前記所定機能の設定が変更された場合には、その変更後の設定内容を反映させて前記所定機能に関する情報を表示可能であり、
前記所定機能は、前記冷蔵庫が備える設定手段を介して前記貯蔵室の設定温度を調整する調整機能であり、
前記所定機能を除く機能は、前記設定手段を介して直接的に設定することができない機能であって、前記調節機能とは異なる機能であって、前記端末からの操作に応じて設定の切り換えが可能な機能であって、前記冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能である冷蔵庫表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫表示システムを構築する冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1に記載の冷蔵庫表示システムを構築する端末。」
第4 取消理由通知(決定の予告)の概要
当審が令和6年7月26日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1.明確性について
本件特許の特許請求の範囲の記載は、請求項1の「前記所定機能を除く機能は、前記冷蔵庫の要素を用いる機能である」なる発明特定事項が不明確であるから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の記載に違反する出願に対してなされたものである。
2.進歩性について
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2012-220186号公報
甲第2号証:特表2001-508207号公報
(以下、甲第1号証及び甲第2号証をそれぞれ「甲1」及び「甲2」という。)
第5 甲号証に記載された発明、事項等
1 甲1について
(1)甲1には、以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。
ア 「【0023】
図1に示すように、本発明に係る冷蔵庫は、貯蔵室を有する本体1と、貯蔵室を開閉するドアと、を備えており、ドアには、使用者に情報を提供し、または情報が入力されるディスプレイ装置200が設けられている。」
イ 「【0034】
後述するが、ディスプレイ装置200には、種々の情報が記憶されており、このような情報がディスプレイ装置200を介して使用者に提供されてもよく、使用者がディスプレイ装置200を介して所定の情報を入力してもよい。
【0035】
該情報は、冷蔵庫の動作に関するものでもよく、冷凍室5や冷蔵室7に貯蔵された貯蔵物に関する情報、または所定の食材料を用いて作ることができる食べ物に関するレシピー情報、または使用者のメモなどでもよい。
【0036】
そして、ディスプレイ装置200は、外部のPDAやスマートフォンのような無線端末機Cと相互通信可能に設けられ、情報の流れが連動する構成とすることができる。
【0037】
即ち、ディスプレイ装置200で処理された情報が、無線通信網を通じて無線端末機Cに表示されてもよい。」
ウ 「【0044】
ディスプレイ装置200は、ディスプレイ部241と、ディスプレイ部241を取り囲むハウジング部243と、ハウジング部243の一方の側に設けられる挿入スロット245と、を備える。」
エ 「【0102】
図6を参照すると、ディスプレイ部241内の左側上段にはWi-Fi受信強度を表示するインジケータ610が表示され、右側上段には現在時刻620が表示される構成とすることができる。インジケータ610は、現在活性化されている無線インターフェースによってその形態を変更可能である。中段部630には、様々なウィジェットが表示され、下段部640には、当該タッチスクリーンを通じて実行できるメニューのアイコンが配置される。例えば、アイコンとしては、食品管理アイコン641、レシピーアイコン642、ショッピングリストアイコン643、環境設定アイコン644、冷蔵庫管理アイコン645、日程アイコン646及びメモアイコン647が下段部640に表示される。以下、各アイコンに対応する機能について順に説明する。」
オ 「【0196】
[冷蔵庫管理]
ディスプレイ部241の下段に設けられる複数個のメニューアイコンのうち冷蔵庫管理アイコン645(図6参照)をタッチすると、図31のような冷蔵庫管理初期画面3101が表示される。
冷蔵庫管理メニューは総数6個で構成される。即ち、冷凍室温度設定ボタン3111、冷蔵室温度設定ボタン3112、冷凍室の冷凍速度を上げることができる特急冷凍設定ボタン3113、特冷室運転設定ボタン3114、フィルター装置設定ボタン3115、及びスマート節電動作ボタン3116とそれぞれ関連するメニューを備える。」
カ 「【0362】
図71は、本発明の一実施例に係る冷蔵庫制御のためのアプリケーションが無線端末機上で表示される形態の一例を示す図である。
【0363】
冷蔵庫制御アプリケーションがスマートフォンにインストールされている場合に、図71(a)のように、背景画面(ホームスクリーン)やメインメニューに、当該アプリケーションのショートカット機能を実行するアイコン7110を表示することが可能である。
【0364】
アイコンが選択されると、図71(b)のように、ログイン画面が無線端末機のタッチスクリーンに表示される。ログインのためのID/パスワードは、冷蔵庫に設定されるID/パスワードと同一であっても異なっていてもよい。
【0365】
ログインが完了すると、図71(c)のように、アプリケーション初期画面が表示される。無線端末機と冷蔵庫がサーバーを介して接続し、またはダイレクトに接続して最新の情報(ショッピングリストまたは貯蔵物情報など)が無線端末機に更新、即ち、同期化される場合、これを知らせるお知らせウィンドウ7120が表示されるとよい。」
キ 「【図1】
[図:0001425716000001.jpg]
」
ク 「【図6】
[図:0001425716000002.jpg]
」
ケ 「【図71】
[図:0001425716000003.jpg]
」
コ 上記イの段落【0034】、【0035】及び【0037】の記載事項、上記カの段落【0365】の記載事項、上記ク及び上記ケから、冷蔵庫のディスプレイ装置200及び無線端末機Cは、冷蔵庫に関する情報を表示するものであることが把握される。
そうすると、冷蔵庫と無線端末機Cとは、冷蔵庫に関する情報を表示するシステムを構成するものであると認められる。
サ 上記エの段落【0102】の記載事項から、冷蔵庫のディスプレイ装置200は、実行できるメニューのアイコンに対応する機能を設定可能であることが把握される。そして、上記イの段落【0037】の記載事項及び上記カの段落【0365】の記載事項から、冷蔵庫のディスプレイ装置200で処理された情報が無線端末機Cに表示され、無線端末機Cと冷蔵庫とが同期化されることが把握されるから、冷蔵庫のディスプレイ装置200において設定内容に変更が生じた場合には、その変更後の設定内容を示す情報を無線端末機Cに送信し、無線端末機Cは、冷蔵庫のディスプレイ装置200から受信した当該情報を反映させて表示するものであると認められる。
シ 上記イの段落【0037】の記載事項及び上記カの段落【0365】の記載事項から、冷蔵庫のディスプレイ装置200で処理された情報が無線端末機Cに表示され、無線端末機Cと冷蔵庫とが同期化されることが把握されるから、無線端末機Cは、冷蔵庫のディスプレイ装置200において実行できるメニューのアイコンに対応する機能の設定が変更された場合には、その変更後の設定内容を反映させて当該機能に関する情報を表示するものであると認められる。
(2)甲1発明
上記ア~シから、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「貯蔵室を有する冷蔵庫と、冷蔵庫のディスプレイ装置200と相互通信可能に設けられる無線端末機Cと、で構成される冷蔵庫に関する情報を表示するシステムであって、
冷蔵庫のディスプレイ装置200は、実行できるメニューのアイコンに対応する機能を設定可能であり、冷蔵庫のディスプレイ装置200において設定内容に変更が生じた場合には、その変更後の設定内容を示す情報を無線端末機Cに送信し、
無線端末機Cは、冷蔵庫のディスプレイ装置200から受信した当該情報を反映させて表示するものであって、冷蔵庫のディスプレイ装置200において実行できるメニューのアイコンに対応する機能の設定が変更された場合には、その変更後の設定内容を反映させて当該機能に関する情報を表示する、冷蔵庫に関する情報を表示するシステム。」
2 甲2について
(1)甲2には、以下の記載がある。(「・・・・・」は、記載の省略を意味する。)
ア 「本発明による家庭用器具の制御システムのプログラミングに関して、第1の条件は、基本的または標準的機能(またはプログラム)および付加的機能(またはプログラム)においてその可能な機能(またはプログラム)を分割することである。
基本的機能とは通常の中級の家庭用器具によって通常実行される機能である。
・・・・・
冷凍機の例では、例えば、押しボタンおよび急速冷凍パイロット・ランプ、温度設定ノブおよび警報パイロット・ライト(灯)(危険温度)を挙げることができる。
・・・・・
一方、本発明による付加的な機能またはプログラムは次の通りである。
・・・・・
冷凍機の例で説明すると、付加的機能は、例えば、所与の食品(食料)の消費期限の日付が近づいているときにそれをユーザに知らせる助言予報を行う機会(機能)を有する保存食品用のファイルの管理機能である。」(第7ページ第19行~第8ページ第24行)
イ 「従って、本発明によれば、その装置の制御システムは、その全てのプログラムまたは機能を使用することができるように、即ち通常のまたは標準的なプログラムまたは機能と本発明に従って設けられた付加的なプログラムまたは機能との双方を使用することができるように予め設置されまたはプリセット(予め設定)されている。」(第9ページ第3~第7行)
ウ 「家庭用装置1の通常の制御パネルは、3で示されており、その基本的動作(操作)機能またはプログラムを選択して起動(活動化)するためのものである。
家庭用装置1の上述のオプションのインタフェース・モジュール4は、一例として、制御システム2のマイクロコントローラと既知の形態で接続された適正なシリアル・ポートで構成されている。
外部装置即ちパーソナルコンピュータまたはPCは5で示されており、そのパーソナルコンピュータ用の適正なソフトウェアが、オーブン1の付加的プログラムまたは機能を制御するのに適した磁気的または光学的支持体(担体、保持体、媒体)に蓄積されている。最後に、シリアル(直列)または2極ケーブル(線)は、7で示されており、PC5をインタフェース・モジュール4と接続し、従って制御システム2と接続するためのものである。」(第11ページ第5行~第15行)
エ 「PCの代わりに例えば遠隔制御装置を用いることができ、家庭用器具の制御システムは、標準機能には含まれていない複雑な機能を実行するための制御データを遠隔制御装置を介して受取ることができる。この場合、明らかにユーザの取扱いがより簡単になるという利点がある。」(第13ページ第28行~第14ページ第2行)
オ 「【図1】
[図:0001425716000004.jpg]
」
カ 上記アから、家庭用装置1の基本的機能と付加的機能とが分割されており、家庭用装置1として冷凍機が例示されることが把握される。
キ 上記ウ~オから、家庭用装置1の制御パネル3によって、家庭用装置1の基本的機能を実行可能であり、家庭用装置1と接続された遠隔制御装置によって、家庭用装置1の付加的機能を実行可能であると認められる。
ク 上記イから、装置の制御システムは、装置の標準的な機能と付加的な機能との双方を使用することができるように予め設置されまたはプリセットされているものである。
(2)甲2に記載された事項
上記ア~クから、甲2には、以下の技術(以下、「甲2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
<甲2に記載された技術>
「冷凍機の基本的機能と付加的機能とが分割されており、冷凍機の制御パネル3によって、冷凍機の基本的機能を実行可能であり、冷凍機と接続された遠隔制御装置によって、冷凍機の付加的機能を実行可能であり、冷凍機の制御システムは、付加的機能を使用することができるように予め設置されまたはプリセットされていること。」
第6 当審の判断
1.明確性について
本件訂正により、本件特許の特許請求の範囲の請求項1は、「前記所定機能は、前記冷蔵庫が備える設定手段を介して前記貯蔵室の設定温度を調整する調整機能」であり、「前記所定機能を除く機能は、前記設定手段を介して直接的に設定することができない機能であって、前記調節機能とは異なる機能であって、前記端末からの操作に応じて設定の切り換えが可能な機能であって、前記冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能」であることが明確となった。
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものである。
申立人は、令和7年1月7日提出の意見書の「3-3」において、「『所定機能を除く機能』がどのような機能を意味するものであるかが明確でない。」、「『所定機能を除く機能』は、冷蔵庫の要素を用いる機能であれば、温度調整機能以外のすべてを含むものか、ある程度限定される機能であるか不明である。」と主張する。
しかしながら、請求項1に記載された「所定機能を除く機能」は、上記のとおり「前記設定手段を介して直接的に設定することができない機能であって、前記調節機能とは異なる機能であって、前記端末からの操作に応じて設定の切り換えが可能な機能であって、前記冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能」であることが特定されているから、申立人の主張を採用することができない。
2.進歩性について
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)甲1発明の「貯蔵庫」、「冷蔵庫」、「無線端末機C」及び「冷蔵庫に関する情報を表示するシステム」は、それぞれ、本件発明1の「貯蔵室」、「冷蔵庫」、「端末」及び「冷蔵庫表示システム」に相当する。
甲1発明の「無線端末機C」が「冷蔵庫のディスプレイ装置200と相互通信可能に設けられる」ことは、本件発明1の「端末」が「当該冷蔵庫と通信する通信機能を有する」ことに相当する。
そうすると、甲1発明の「貯蔵庫を有する冷蔵庫と、冷蔵庫のディスプレイ装置200と相互通信可能に設けられる無線端末機Cと、で構成される冷蔵庫に関する情報を表示するシステム」は、本件発明1の「貯蔵室を備える冷蔵庫と、当該冷蔵庫と通信する通信機能を有する端末と、で構築される冷蔵庫表示システム」に相当する。
(イ)甲1発明の「実行できるメニューのアイコンに対応する機能」は、上記第5の1.(1)オから冷蔵室や冷凍室の設定温度を調整する機能であるから、本件発明1の「当該冷蔵庫の所定機能」及び「前記冷蔵庫が備える設定手段を介して前記貯蔵室の設定温度を調整する調整機能」に相当する。
そうすると、甲1発明の「冷蔵庫のディスプレイ装置200は、実行できるメニューのアイコンに対応する機能を設定可能であり、冷蔵庫のディスプレイ装置200において設定内容に変更が生じた場合には、その変更後の設定内容を示す情報を無線端末機Cに送信」することは、本件発明1の「前記冷蔵庫は、当該冷蔵庫の所定機能を設定可能であり、当該冷蔵庫において設定内に変更が生じた場合には、その変更後の設定内容を示す設定内容情報を前記端末に送信」することに相当する。
(ウ)甲1発明の「無線端末機Cは、冷蔵庫のディスプレイ装置200から受信した当該情報を反映させて表示するものであって、冷蔵庫のディスプレイ装置200において実行できるメニューのアイコンに対応する機能の設定が変更された場合には、その変更後の設定内容を反映させて当該機能に関する情報を表示する」ことは、本件発明1の「前記端末は、前記冷蔵庫から受信した設定内容情報を反映させて表示するものであって、」「且つ、前記冷蔵庫において前記所定機能の設定が変更された場合には、その変更後の設定内容を反映させて前記所定機能に関する情報を表示可能であり、
前記所定機能は、前記冷蔵庫が備える設定手段を介して前記貯蔵室の設定温度を調整する調整機能であ」ることに相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「貯蔵室を備える冷蔵庫と、当該冷蔵庫と通信する通信機能を有する端末と、で構築される冷蔵庫表示システムであって、
前記冷蔵庫は、当該冷蔵庫の所定機能を設定可能であり、当該冷蔵庫において設定内容に変更が生じた場合には、その変更後の設定内容を示す設定内容情報を前記端末に送信し、
前記端末は、前記冷蔵庫から受信した設定内容情報を反映させて表示するものであって、且つ、前記冷蔵庫において前記所定機能の設定が変更された場合には、その変更後の設定内容を反映させて前記所定機能に関する情報を表示可能であり、
前記所定機能は、前記冷蔵庫が備える設定手段を介して前記貯蔵室の設定温度を調整する調整機能である冷蔵庫表示システム。」
<相違点>
本件発明1は、「前記端末」が「前記冷蔵庫の機能のうち前記所定機能を除く機能を設定可能であ」って、「前記所定機能を除く機能は、前記設定手段を介して直接的に設定することができない機能であって、前記調節機能とは異なる機能であって、前記端末からの操作に応じて設定の切り換えが可能な機能であって、前記冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能である」のに対して、甲1発明は、当該構成を有しない点。
イ 判断
相違点について検討する。
甲2に記載された技術の付加的機能は、「例えば、所与の食品(食料)の消費期限の日付が近づいているときにそれをユーザに知らせる助言予報を行う機会(機能)を有する保存食品用ファイルの管理機能である。」(第8ページ第22行~第24行)と例示するように、冷蔵庫の設定温度を調整する調節機能とは異なるものであるが、冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能ということはできない。
そして、申立人が提出した甲第3号証~甲第7号証(以下、「甲3」~「甲7」という。)を参酌しても、「前記所定機能は、前記冷蔵庫が備える設定手段を介して前記貯蔵室の設定温度を調整する調整機能」であるとした上で、「前記所定機能を除く機能は、前記設定手段を介して直接的に設定することができない機能であって、前記調節機能とは異なる機能であって、前記端末からの操作に応じて設定の切り換えが可能な機能であって、前記冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能」であるとし、「前記端末」が「前記冷蔵庫の機能のうち前記所定機能を除く機能を設定可能であ」るよう構成することを開示乃至示唆するものはない。
そして、本件発明1は、上記相違点に係る構成を備えることで、多機能化が進む冷蔵庫を、より低コストで実現することができ、かつ、冷蔵庫の各種機能を、より簡易な態様により設定することができるという顕著な効果を有するものである。
してみると、当業者であっても、甲1発明、甲2に記載された技術及び甲3~甲7の開示内容に基いて、本件発明1を容易に発明することができたということはできない。
ウ 申立人の意見について
申立人は、令和7年1月7日提出の意見書の「3-2-6」において、「前記冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能である」ことが、甲2~甲4に記載されている旨を主張する。
しかしながら、甲2に記載された技術は、上記イで説示したとおりであり、甲3の段落【0114】に記載された「あらかじめ洗浄装置のマイコンやメモリに保存され、操作盤に割り付けられた機能以外も機能させることができる。」との記載、甲4の段落【0210】に記載された「利用者が既に炊飯装置に予め準備されたコース以外の炊飯コースを容易に利用することができる炊飯装置を実現するものである。」との記載を参酌しても、「冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能」を端末から操作し、冷蔵庫の貯蔵室の設定温度を調整する調節機能を冷蔵庫が備える設定手段を介して設定温度を調節することを開示するものとはいえないから、申立人の主張を採用することができない。
(2)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1を引用するものであって、「前記端末」が「前記冷蔵庫の機能のうち前記所定機能を除く機能を設定可能であ」って、「前記所定機能を除く機能は、前記設定手段を介して直接的に設定することができない機能であって、前記調節機能とは異なる機能であって、前記端末からの操作に応じて設定の切り換えが可能な機能であって、前記冷蔵庫の要素を用いる機能であって、前記冷蔵庫自体の動作を通常とは異なる動作に変更する機能である」ことを発明特定事項に含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても、甲1発明、甲2に記載された技術及び甲3~甲7の開示内容に基いて、本件発明2、3を容易に発明することができたということはできない。
第7 まとめ
したがって、請求項1~3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701209