特許異議申立
2025-700527
洗濯機
- 審判番号
- 2025-700527
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-005256
- 登録番号
- 7587069
- 請求日
- 2025年05月14日
- 審決日
- 2026年01月28日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東芝ライフスタイル株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人サトー
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 【異議申立人】金田 綾香
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 芝井 隆
- 審判官 長馬 望
- 分類
- P1651.121-YAA(D06F) / P1651.16 -YAA(D06F) / P1651.537-YAA(D06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7587069号発明「洗濯機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7587069号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7587069号の請求項4及び5に係る特許を維持する。
特許第7587069号の請求項1から3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7587069号の請求項1から5に係る特許についての出願は、平成31年1月7日に出願された特願2019-618号の一部を令和3年4月19日に新たな特許出願とした特願2021-70347号の一部を同年8月25日に新たな特許出願とした特願2021-137078号の一部を令和4年4月27日に新たな特許出願とした特願2022-73306号の一部を令和6年1月17日に新たな特許出願としたものであって、同年11月11日にその特許権の設定登録がされ、同月19日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して2件の特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。
令和7年 5月14日 :特許異議申立人藤江 桂子(以下、「申立人藤江氏」という。)による請求項1から3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年 5月16日 :特許異議申立人金田 綾香(以下、「申立人金田氏」という。)による請求項1から5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年 8月20日付け:取消理由通知書(上記の2つの特許異議の申立てについて併合)
令和7年10月23日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和7年11月 5日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
令和7年12月 9日 :申立人金田氏による意見書の提出
なお、令和7年11月5日付けの訂正請求があった旨の通知に対し、申立人藤江氏は、意見書を提出しなかった。
第2 訂正請求の適否について
1 訂正請求の内容
令和7年10月23日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4について、次の訂正を請求するものである。
ア 本件訂正前の「請求項1から3のいずれか一項」の記載を引用する請求項4のうち、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4の記載をこれらの請求項の記載を引用しないものとする。
イ 本件訂正後の請求項4に係る発明の洗濯機が「外箱を構成する本体と、前記本体内において前記水槽の上部に設けられ、前記水槽内へ給水を行う給水機構と」を備えること。
ウ 本件訂正前の請求項4が引用する請求項1に係る発明で特定されていた「水が溜められる水槽」が本件訂正後の請求項4に係る発明は、「本体内に設けられ」ること。
エ 本件訂正前の請求項4が引用する請求項1に係る発明の洗濯機が備えることが特定されていた「給水源に接続されて電磁的に開閉動作する給水弁と、前記給水弁から出た水を前記水槽内に供給する給水経路と、複数回分の洗濯に使用可能な洗濯処理剤を貯留するタンクと、前記給水経路の途中に設けられた供給部とを有し、前記タンクの洗濯処理剤を前記供給部に供給する自動投入装置」と、請求項4が引用する請求項2及び3に係る発明の洗濯機が備えていることが特定されていた「手動用収容部」を本件訂正後の請求項4に係る発明は、洗濯機が備える給水機構が備えること。
オ 本件訂正前の請求項4が引用する請求項3に係る発明で特定されていた「前記給水経路は、前記供給部の下流で上昇している」位置が、「前記本体の上面方向から見た場合に前記手動用収容部と前記タンクとの間の位置」であり、給水経路がこの位置で「上昇して前記手動用収容部につながって」いること。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項5に「請求項2又は3に記載の洗濯機。」と記載されているのを、「請求項4に記載の洗濯機。」に訂正する。
2 訂正の目的、新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について
(1)訂正事項1から3について
訂正事項1から3は、それぞれ請求項1から3を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項の規定により準用する同法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項4について
ア 本件訂正前の「請求項1から3のいずれか一項」の記載を引用する請求項4のうち、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4の記載をこれらの請求項の記載を引用しないものとする訂正は、本件訂正前の請求項4が「請求項1から3のいずれか一項」の記載を引用していたうち、実質的に請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用するものに減縮すると共に、請求項1から3の記載を引用する請求項の記載を他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項の規定により準用する同法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合する。
イ 本件訂正前の請求項4に係る発明において特定されていなかった洗濯機が「外箱を構成する本体と、前記本体内において前記水槽の上部に設けられ、前記水槽内へ給水を行う給水機構と」を備えることを特定する本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、願書に添付した明細書には、「ドラム式洗濯機の本体(外箱)1は、ほぼ矩形箱状をなし」(【0008】)ていることが記載され、「本体1内には、水槽6の上部左側に位置して該水槽6内への給水を行うための給水機構7が設けられている」(【0009】)ことが記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。よって、特許法第120条の5第9項の規定により準用する同法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合する。
ウ 本件訂正前の請求項4が引用する請求項1に係る発明で特定されていた「水が溜められる水槽」が「本体内に設けられ」ることを特定する本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、願書に添付した明細書には、「本体1内には、・・・洗濯水が溜められる水槽6が、弾性支持機構(図示せず)を介して弾性的に支持されて設けられている」(【0008】)ことが記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。よって、特許法第120条の5第9項の規定により準用する同法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合する。
エ 本件訂正前の請求項4が引用する請求項1に係る発明の洗濯機が備えることが特定されていた「給水源に接続されて電磁的に開閉動作する給水弁と、前記給水弁から出た水を前記水槽内に供給する給水経路と、複数回分の洗濯に使用可能な洗濯処理剤を貯留するタンクと、前記給水経路の途中に設けられた供給部とを有し、前記タンクの洗濯処理剤を前記供給部に供給する自動投入装置」及び本件訂正前の請求項4が引用する請求項2及び請求項3に係る発明の洗濯機が備えていることが特定されていた「前記給水経路の途中に設けられ1回分の洗濯処理剤を収容可能な手動用収容部」であって、「前記供給部より下流側に設けられている」手動用収容部を洗濯機が備える給水機構が備えることを特定する本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、願書に添付した明細書には、「給水機構7は、・・・給水弁ユニット10、・・・洗剤自動投入装置11、それらの中間に設けられた注水ケース12及び手動用収容ケース13、給水弁ユニット10から注水ケース12につながるメイン給水経路14、注水ケース12から水槽6内に給水を行うための給水ダクト15等を備えている」(【0011】)ことが記載され、「前記メイン給水経路14のうち、注水ケース12の前部下側を左から右に延びる部分の中央部が、洗剤自動投入装置11の洗剤供給部25とされている」(【0019】)ことも記載されている。さらに、給水機構7が備える洗剤自動投入装置11は、「タンクケース27・・・を備え」(【0022】)、このタンクケース27内には、「複数回分の洗濯に使用可能な液体洗剤が収容され」る洗剤タンク30と「複数回分の洗濯に使用可能な柔軟仕上剤が収容される」柔軟剤タンク31とが、設けられていることが記載(【0023】)されているから、結局、複数回分の洗濯に使用可能な洗濯処理剤を貯留するタンクを自動投入装置が備えることも記載されているといえる。これらのことから、「・・・給水弁と、・・・給水経路と、・・・タンクと、・・・供給部とを有し、前記タンクの洗濯処理剤を前記供給部に供給する自動投入装置」と、「手動用収容部」を洗濯機が備える給水機構が備えることを特定する本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項の規定により準用する同法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合する。
オ 本件訂正前の請求項4が引用する請求項3に係る発明で特定されていた「前記給水経路は、前記供給部の下流で上昇している」位置が、「前記本体の上面方向から見た場合に前記手動用収容部と前記タンクとの間の位置」であり、給水経路がこの位置で「上昇して前記手動用収容部につながって」いることを特定する本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、願書に添付した明細書には、「手動用洗剤収容部13aの上部前端部に、注水口23が設けられ」(【0016】)ると共に、メイン給水経路14は、「注水ケース12の前面側下部を右方に延びその右端部でほぼ直角に折曲って上方に延び、前記注水口23につながる」(【0017】)ことが記載されている。この記載における「注水ケース12の前面側下部」の「右端部」は、願書に添付した図面の図3及び図4(下図参照)の記載からみて、本体の上面方向から見た場合に手動用洗剤収容部13aと洗剤タンク30及び柔軟剤タンク31との間と解される。
[図:0001434170000001.jpg]
これらのことから、「前記給水経路は、前記供給部の下流で上昇している」位置が、「前記本体の上面方向から見た場合に前記手動用収容部と前記タンクとの間の位置」であり、給水経路がこの位置で「上昇して前記手動用収容部につながって」いることを特定する本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。さらに、上記事項を特定する本件訂正は、「前記給水経路は、前記供給部の下流で上昇している」位置を特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
よって、「前記給水経路は、前記供給部の下流で上昇している」位置が、「前記本体の上面方向から見た場合に前記手動用収容部と前記タンクとの間の位置」であり、給水経路がこの位置で「上昇して前記手動用収容部につながって」いることを特定する本件訂正は、特許法第120条の5第9項の規定により準用する同法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項5について
本件訂正前の請求項5に係る発明は、「請求項2又は3に記載」を引用して特定された発明であったものを、本件訂正により、請求項2及び請求項3が削除され(訂正事項2及び3参照。)、本件訂正前の請求項2及び3で特定されていた事項は、本件発明4において特定される事項に訂正された(訂正事項4参照。)。そうすると、本件訂正前の請求項5に「請求項2又は3に記載の洗濯機。」と記載されているのを、「請求項4に記載の洗濯機。」に訂正する本件訂正は、本件訂正前の請求項5に係る発明をさらに、本件訂正により訂正された請求項4に係る発明の発明特定事項で特定することとなるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項の規定により準用する同法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合する。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2から5は、請求項1を直接または間接的に引用する請求項であるから、請求項1から5は、一群の請求項である。そして、請求項1から5について訂正することを求める本件訂正は、当該一群の請求項ごとに訂正請求をするものであり、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
4 訂正についての結論
以上の1から3より、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、同項ただし書き第4項に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、特許法第120条の5第9項の規定により準用する同法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合すると共に、特許法第120条の5第4項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2に示すように本件訂正が認められるから、本件の請求項1から5に係る発明(以下、請求項4に係る発明を「本件発明4」、請求項5に係る発明を「本件発明5」という。)は、令和7年10月23日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1から5に記載された次の事項に特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
外箱を構成する本体と、
前記本体内に設けられ水が溜められる水槽と、
前記本体内において前記水槽の上部に設けられ、前記水槽内へ給水を行う給水機構と、
を備え、
前記給水機構は、
給水源に接続されて電磁的に開閉動作する給水弁と、
前記給水弁から出た水を前記水槽内に供給する給水経路と、
複数回分の洗濯に使用可能な洗濯処理剤を貯留するタンクと、前記給水経路の途中に設けられた供給部と、を有し、前記タンクの洗濯処理剤を前記供給部に供給する自動投入装置と、
前記給水経路の途中であって前記供給部よりも下流側に設けられ、1回分の洗濯処理剤を収容可能な手動用収容部と、を備え、
前記給水経路は、前記供給部の下流でかつ前記本体の上面方向から見た場合に前記手動用収容部と前記タンクとの間の位置で上昇して前記手動用収容部につながっており、
前記洗濯処理剤の手動での投入が選択されている場合には給水時に前記供給部を通過する水によって前記供給部の洗浄を行う、
洗濯機。
【請求項5】
前記タンクが取り外し可能に設けられたタンクケースと、
前記手動用収容部を有する手動用収容ケースと、を更に備え、
前記給水経路は、前記手動用収容ケースと前記タンクケースとの間で上昇している、
請求項4に記載の洗濯機。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由
令和7年8月20日付けの取消理由通知書により、当審が特許権者に通知した取消理由のうち、請求項4及び5に対するものは、概略、次のとおりである。
(1)本件発明4及び5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された特表2015-531648号公報(以下、「引用文献1」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項4及び5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)本件発明4及び5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)本件発明4及び5は、本件特許出願の日前の特許出願又は実用新案登録出願であって、本件特許出願後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされた特願2018-200515号(特開2020-65741号公報 以下、「引用文献等4」という。)または特願2018-200514号(特開2020-65740号公報 以下、「引用文献等5」という。)の特許出願又は実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に記載された発明又は考案と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願又は実用新案登録出願に係る上記の発明又は考案をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願又は実用新案登録出願の出願人と同一でもないから、請求項4及び5に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
第5 引用文献1を主引例とした新規性・進歩性についての当審の判断
1 引用文献1の記載事項及び記載された発明
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の事項が記載されている(改行、空白の一部を省略した。また、下線は、当審で付与した。以下同様。)
ア 「【0001】本発明は、衣類処理装置に関する。
【背景技術】【0002】一般に、衣類処理装置は、洗濯対象物を乾燥する乾燥機、洗濯対象物を洗濯する洗濯機などを含んでなる。洗濯機は洗濯のために洗剤を使用し、洗濯機には、一般的に洗剤を供給する洗剤貯蔵部が備えられる。
【0003】以下、添付の図面を参照して、従来の洗剤貯蔵部について簡略に説明する。
【0004】図1は、従来技術による衣類処理装置を示したものである。図示のように、従来技術による衣類処理装置1は、外形を形成し、洗濯対象物を投入するためのドアが設けられたキャビネット10と、キャビネット10の内部に設けられ、洗濯水が貯蔵されるタブ20と、タブ20の内部に回転可能に設けられ、投入される洗濯対象物が収納されて洗濯されるドラム30と、タブ20に洗濯水を供給するために弁44が設けられた給水部40と、洗濯を完了した洗濯水を排水するための排水部60とを備えることができる。
【0005】このような衣類処理装置は、ドラム30によって洗濯される洗濯対象物の洗濯効果を向上させるために、タブ20及びドラム30に洗濯水と洗剤を同時に投入するための洗剤貯蔵部50を備えることができる。
【0006】このような洗剤貯蔵部50は、一般的に衣類処理装置1の前方へ一部が引き出されるドロア形態の洗剤投入部52を備えることができ、引き出された洗剤投入部52に洗剤を投入し、洗剤投入部52を洗剤貯蔵部50に収納すると、洗濯水と共にタブ20及びドラム30に供給されて、ドラム30によって洗濯対象物を洗濯できるように設けられる。」
イ 「【0007】上述した従来の洗剤貯蔵部50は、衣類処理装置1の上部一側に位置し得るため、使用者は、洗剤を衣類処理装置1の上部まで持ち上げて洗剤投入部52に投入しなければならないという不便さがあった。
【0008】最近は、衣類処理装置1の下部面を支持する受け台をさらに備えることで、衣類処理装置1の衣類投入口(具体的には、ドア12)の位置を高くする場合がある。しかし、衣類処理装置1に受け台が追加される場合、上述した洗剤投入部の位置はさらに高くなり、使用者の不便さを増加させるという問題があった。
【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0009】本発明は、洗剤が貯蔵される空間の高さを低くすることによって、従来の衣類処理装置の不便さを解消することを解決しようとする課題とする。
【0010】また、本発明は、洗剤が貯蔵される空間の高さを低くすると共に、貯蔵された洗剤を洗濯対象物に容易に供給する洗剤供給モジュールが備えられた衣類処理装置を提供することを解決しようとする課題とする。
【0011】また、本発明は、洗剤供給モジュールから洗濯対象物が貯蔵された空間に洗剤を供給する流路の洗浄及び詰まりを防止することができる衣類処理装置を提供することを解決しようとする課題とする。
【0012】また、本発明は、洗濯対象物の洗濯時に、洗剤供給モジュールに貯蔵された洗剤の一定量を洗濯対象物が貯蔵された空間に供給することができる衣類処理装置を提供することを目的とする。」
ウ 「【課題を解決するための手段】【0013】本発明に係る実施例は、洗濯対象物が投入される投入口が設けられたキャビネットと、前記キャビネットの内部に設けられて洗濯水が貯蔵され、前記投入口に連通するタブ投入口が設けられたタブと、前記タブの内部に回転可能に設けられ、前記タブ投入口に流入する洗濯対象物が収容されるドラムと、前記投入口の下部に位置して液体洗剤が貯蔵され、貯蔵された液体洗剤を前記タブに供給する洗剤供給モジュールと、前記タブに洗濯水を供給し、前記タブに供給される洗濯水を用いて前記洗剤供給モジュールを洗浄する給水部とを含む衣類処理装置を提供することができる。
【0014】前記洗剤供給モジュールは、液体洗剤が貯蔵され、前記投入口の下部に位置するコンテナと、前記コンテナを前記タブに連通させ、前記給水部が連結される洗剤供給管と、前記洗剤供給管に設けられ、前記コンテナの内部の液体洗剤を前記タブに移動させる洗剤ポンプとをさらに含むことができる。」
エ 「【0034】図2乃至図4は、本発明の衣類処理装置の実施例を示し、図5(a),5(b)及び図6は、洗剤供給モジュールの実施例を示したものである。
【0035】本発明の実施例に係る衣類処理装置100は、洗濯対象物の処理(洗濯、乾燥など)のための第1処理装置100aのみが設けられてもよく、図2に示すように、第1処理装置100aと、第1処理装置の下部に設けられ、洗濯対象物の処理(洗濯、乾燥など)を担当する第2処理装置100bとを含むように備えられてもよい。」
オ 「【0039】第1処理装置100aは、外観を形成するキャビネット110と、キャビネット110の内部に設けられ、洗濯水が貯蔵されるタブ130と、タブ130の内部に回転可能に設けられ、洗濯対象物が収容されるドラム140と、タブ130の後方に設けられ、ドラム140を回転させる駆動部170と、タブ130に洗濯水を供給する給水部160と、タブ130の洗濯水を排水する排水部180と、洗剤が貯蔵され、貯蔵された洗剤をタブ130に供給する洗剤供給モジュール200とを含む。
【0040】図3に示すように、キャビネット110は、フロントパネル112、バックパネル(図示せず)、側面パネル116、及び上部パネル119を含むことができる。また、キャビネット110は、上述したパネルを支持できるフレーム111をさらに含むことができる。フレーム111は、各パネル112,116,119によって外部からは見えない。
【0041】フレーム111には、フロントパネル112が固定される上部設置面111aと、洗剤供給モジュール200が固定される下部設置面111bとを備えることができ、上部設置面111aはフレーム111の上部に位置し、下部設置面111bはフレーム111の下部に位置する。
【0042】フロントパネル112には、タブ130に連通するように設けられ、洗濯対象物がタブに投入される投入口113が設けられ、投入口113はドア120によって開閉することができる。
【0043】ドア120には、衣類処理装置100の操作のためのコントロールパネル122を設けることができる。
【0044】フロントパネル112は、フレーム111から遠ざかる方向に傾斜して設けられてもよい。すなわち、フロントパネル112の上部面は上部設置面111aに固定され、フロントパネル112の下部面は、フレーム111と所定距離離隔して設けられてもよい。
【0045】フロントパネル112は、第1処理装置100aの内部空間において下部空間(開口部)115が外部に露出するようにフレーム111に結合されてもよく、フロントパネル112の下部に露出した空間には洗剤供給モジュール200を設けることができる。したがって、フロントパネル112及び洗剤供給モジュール200によって第1処理装置100aの前方面を形成することができる。」
カ 「【0060】キャビネット110の内部には、洗剤が貯蔵され、給水部160が洗濯水を供給すると、貯蔵された洗剤をタブに供給する洗剤貯蔵モジュール190をさらに備えることができる。
【0061】洗剤貯蔵モジュール190は、投入口132の上部に設けられ、洗剤が貯蔵される貯蔵ボディー194と、貯蔵ボディー194とタブ130とを連通させるタブ供給管196とを備えることができる。
【0062】この場合、給水部160は、衣類処理装置100の外部に位置した給水源と貯蔵ボディー194とを連結する給水流路162と、給水流路を開閉する給水弁164とを備えることができる。
【0063】洗剤貯蔵モジュール190は、貯蔵ボディー194がキャビネットから引き出されるドロア(drawer)形態で設けられてもよく、この場合、タブ供給管196は、長さが可変する構造または材料で形成しなければならない。
【0064】ただし、貯蔵ボディー194が、キャビネット110の内部に固定されて、キャビネットから引き出すことができない構造であれば、上部パネル119には、貯蔵ボディー194を開閉するボディードア192(図3参照)を備えなければならない。
【0065】上述した洗剤貯蔵モジュール190は、設置位置及び洗剤供給方式において洗剤供給モジュール200と区別することができる。
【0066】すなわち、洗剤貯蔵モジュール190は投入口113の上部に位置する一方、洗剤供給モジュール200は投入口113の下部に位置するという点で区別することができる。また、洗剤貯蔵モジュール190は、給水部160によって、貯蔵された洗剤をタブに供給するが、洗剤供給モジュール200は、洗剤ポンプ211,213を介して、貯蔵された洗剤をタブに供給するという点で互いに区別される。したがって、洗剤貯蔵モジュール190は洗剤の長期間保管が難しい一方、洗剤供給モジュール200は洗剤の長期間保管が可能である。さらに、洗剤貯蔵モジュール190は、液体洗剤及び粉末洗剤を全て貯蔵することができるが、洗剤供給モジュール200は、別途の洗剤溶解装置がない限り、液体洗剤のみを貯蔵することができるという点で区別できる。」
キ 「【0070】開口部115は、フロントパネル112の下部面、及びフロントパネル122の両側面に設けられた支持パネル117によって形成される空間として定義することができる。この場合、第1処理装置100aの前方面は、フロントパネル112及び洗剤供給モジュール200によって形成される。
【0071】ただし、フロントパネル112のみでキャビネット111の前方面が形成される場合、開口部115は、図5に示したものとは異なり、投入口113の下部にフロントパネル112を貫通するように設けられるホール(投入口113と分離されて設けられる)として定義することができる。
【0072】すなわち、フロントパネル112は、投入口113が設けられる第1領域と、第1領域の下部に位置し、開口部115が設けられる第2領域とを含むように備えられてもよい。この場合、第1領域には、投入口113の開閉のためのドア120が回転可能に設けられ、第2領域には洗剤供給モジュール200が設けられる。
【0073】いずれの場合でも、洗剤供給モジュール200は、投入口113の下部に設けて、開口部115を開閉可能な形態で設けることが好ましい。さらに、洗剤供給モジュール200は、フレーム111の下部設置面111bに結合されるモジュールパネル210と、モジュールパネル210に回転可能に設けられるモジュールドア220と、モジュールドア220に設けられ、洗剤が貯蔵される空間を提供するコンテナ230とを備えることができる。」
ク 「【0075】モジュールドア220は、開口部115を開閉する手段であって、モジュールパネル210にヒンジ227結合され、コンテナ230が収容される収納フレーム221を含むことができる。」
ケ 「【0092】モジュールドア220に備えられるコンテナ230は、1種類の洗剤のみを貯蔵するように備えられてもよいが、2つ以上の互いに異なる洗剤を貯蔵できるように備えられてもよい。一方、図6に示すように、コンテナ230は、第1洗剤が貯蔵される第1コンテナ231と、第2洗剤(第1洗剤と異なる種類の洗剤)が貯蔵される第2コンテナ233とを備えることができる(3つ以上のコンテナを備えてもよい)。
【0093】この場合、収納フレーム221は、第1コンテナ231が収容される第1収納部221aと、第2コンテナ233が収容される第2収納部221bとを備えることが好ましい。第1収納部221aと第2収納部221bは、収納フレーム221が提供する内部空間を区分する隔壁によって互いに分離される。
【0094】第1コンテナ231及び第2コンテナ233は、各収納部221a,221bに着脱可能に設けることができ、この場合、各コンテナ231,233には、コンテナ231,233に貯蔵された洗剤を収納部221a,221bに排出させる洗剤排出管235を設けなければならない。」
コ 「【0106】各コンテナ231,233に貯蔵された洗剤は、ポンプ連結管215,217を介して洗剤ポンプに流入し、洗剤ポンプから排出される洗剤は、洗剤供給管212,214を介して洗剤貯蔵モジュール190に案内される。」
サ 「【0110】第1洗剤ポンプ211に流入した洗剤は、第1洗剤供給管212を介して洗剤貯蔵モジュール190に供給され、第2洗剤ポンプ213に流入した洗剤は、第2洗剤供給管214を介して洗剤貯蔵モジュール190に供給される。」
シ 「【0142】図9のような構造を有する第1処理装置100aは、洗剤供給管212,214が洗剤によって詰まる可能性を排除することができないが、図10は、洗剤供給管212,214が洗剤によって詰まる問題を解決できることが特徴である。
【0143】図10(a)~(d)及び図11は、洗剤供給管の洗浄が可能な衣類処理装置の一例を示すものである。」
ス 「【0147】図10(b)、図10(c)及び図10(d)は、洗剤貯蔵モジュール190が備えられた場合における洗剤供給管を洗浄する構造を示している。
【0148】図10(b)は、洗剤供給管212,214が洗剤ポンプ211,213と貯蔵ボディー194とを連結するように設けられた実施例を示したもので、本実施例は、給水部160が供給する洗濯水が常に洗剤供給管212,214及び貯蔵ボディー194を経てタブ130に供給されるので、洗剤貯蔵モジュール190に貯蔵された洗剤をタブに供給できるだけでなく、洗剤供給管212,214が洗剤によって詰まることも防止することができる。」
セ 「【0164】図10(a)乃至図10(d)に示された構造を有する第1処理装置100aの場合、コンテナ230の洗浄は、給水部160を介して洗剤供給管212,214に供給された洗濯水を洗剤ポンプ211,213がポンプ連結管215,217を介してコンテナ230に供給するステップと、コンテナ230に供給された洗濯水を洗剤ポンプ211,213が洗剤供給管212,214の方向に排出させるステップとを含んで行われてもよい。
【0165】ただし、コンテナ230の内部の洗濯水をコンテナの外部に排出させる過程は、図11の分岐流路を介して行われても構わない。
【0166】図10(a)乃至図10(d)に示された第1処理装置100aは、洗剤供給管212,214の洗浄及びコンテナ230の洗浄を全て行うことができるように、洗剤ポンプ211,213を介してコンテナ230の内部の液体洗剤をタブに供給する洗剤供給ステップと、給水部160を介して洗剤供給管212,214に水を供給して洗剤供給管に残留する液体洗剤を排出させる供給管洗浄ステップと、給水部160を介して水をコンテナ230に供給してコンテナの内部を洗浄するコンテナ洗浄ステップとを行うように制御されてもよい。
【0167】前記供給管洗浄ステップは、前記洗剤供給ステップが既設定の基準回数だけ行われたときに実行されてもよい。
【0168】前記コンテナ洗浄ステップは、給水部を介して洗剤供給管212,214に水を供給する第1洗浄段階と、洗剤ポンプ211,213を介して、洗剤供給管212,214に供給される水をコンテナ230に供給する第2洗浄段階と、洗剤ポンプ211,213を介してコンテナ230に貯蔵された水を排出させる第3洗浄段階とを備えることができる。
【0169】前記洗剤供給ステップは、洗浄ポンプ211,213に設けられたインペラを第1方向(コンテナの内部の液体を排出させる方向)に回転させることによって行われてもよい。
【0170】第2洗浄段階は、インペラを第1方向と反対の方向である第2方向(コンテナの内部に液体を供給する方向)に回転させることによって行われ、前記第3洗浄段階は、インペラを第1方向に回転させることによって行われてもよい。
【0171】前記第3洗浄段階は、洗剤供給管214,212を介してコンテナ230の内部の水をタブ130に排出させるように備えられてもよい。
【0172】ただし、前記第3洗浄段階は、洗剤供給管212,214から分岐してコンテナの内部をキャビネットの外部と連通させる分岐流路241,243,245,247を介して、コンテナ230の内部の水をキャビネット110の外部に排出させても構わない。」
ソ 引用文献1には、次の図が、図3、図4、図6、図10(b)として、記載されている。
[図:0001434170000002.jpg]
[図:0001434170000003.jpg]
(2)上記(1)よりわかること
上記(1)を含む引用文献1の記載より、引用文献1に記載された衣類処理装置100は、次の事項を備えたものであることがわかる。
ア 引用文献1に記載された衣類処理装置の給水部160は、給水流路162と、給水流路を開閉する給水弁164とを備え、給水流路162は、給水源と貯蔵ボディー194とを連結し(【0062】)、この貯蔵ボディー194とタブ130とをタブ供給管196は、連通している(【0061】)。さらに、引用文献1の【0148】、図10(b)には、「給水部160が供給する洗濯水が常に洗剤供給管212,214及び貯蔵ボディー194を経てタブ130に供給される」ことが記載されている。また、「洗剤貯蔵モジュール190は、給水部160によって、貯蔵された洗剤をタブに供給するが、洗剤供給モジュール200は、洗剤ポンプ211,213を介して、貯蔵された洗剤をタブに供給する」(【0066】)ものであり、洗剤供給モジュール200において洗剤を貯蔵するのは、コンテナ230である(【0073】)から、洗剤貯蔵モジュール190は、1回分の洗剤を貯蔵できるものであり、コンテナ230は、複数回分の洗濯に使用する洗剤を貯蔵できるものであると解される。そして、「洗剤が貯蔵される空間を提供するコンテナ230」(【0073】)に貯蔵された洗剤は、「ポンプ連結管215,217を介して洗剤ポンプに流入し、洗剤ポンプから排出される洗剤は、洗剤供給管212,214を介して洗剤貯蔵モジュール190に案内される」(【0106】、図10(b))ものであるから、図10(b)の記載とあわせてみると、洗剤供給管212,214の洗剤ポンプ211(213)から洗剤が排出される箇所は、コンテナ230の洗剤と給水部160からの水が合流する合流部であると解され、洗剤貯蔵モジュール190は、「貯蔵ボディー194を備え」(【0062】)、「貯蔵ボディー194がキャビネットから引き出されるドロア(drawer)形態で設けられて」いるか(【0063】)、そうでなければ、キャビネット110の「上部パネル119には、貯蔵ボディー194を開閉するボディードア192(図3参照)を備えなければならない」(【0064】)ことから、洗剤貯蔵モジュール190の貯蔵ボディー194は、キャビネット110の外部から洗剤を供給できるものと解される。これらのことから、引用文献1に記載された衣類処理装置のタブ130への洗濯水を供給する機構(以下、「洗濯水供給機構」という。)は、給水源と連結する給水流路162を開閉する給水弁164と、前記給水弁164から供給された水をタブ130内に供給する給水流路162、洗剤供給管212及びタブ供給管196とを備えている。さらに、洗濯水供給機構は、複数回分の洗濯に使用する洗剤を貯蔵できるコンテナ230と、前記洗剤供給管212に設けられた合流部とを有し、この合流部に洗剤ポンプ211(213)により前記コンテナ230の洗剤を排出する洗剤の排出装置(以下、「自動洗剤排出装置」という。)も備えている。また、この洗濯水供給機構は、前記洗剤供給管212と前記タブ供給管196との間であって、前記合流部よりも下流に設けられ、1回分の洗剤を貯蔵できる洗剤貯蔵モジュール190も備えている。そして、図4,図10(b)の記載からみて、この洗濯水供給機構は、キャビネット110内に設けられているといえる。
イ 引用文献1に記載された衣類処理装置は、上記コンテナ230と上記洗剤ポンプ211を有する洗剤供給モジュール200が衣類処理装置のフロントパネル112の下部に設けられ(【0045】)、貯蔵ボディ-194が衣類処理装置の上部に設けられるものである(図4)から、これらをつなぐ洗剤供給管212は、上記合流部の下流で上昇する必要があることは、明らかであり、この点は、図10(b)の記載とも整合しているから、洗剤供給管212は、合流部の下流で上昇して洗剤貯蔵モジュール190につながっているといえる。
ウ 引用文献1に記載された衣類処理装置は、「給水部160が供給する洗濯水が常に洗剤供給管212,214及び貯蔵ボディー194を経てタブ130に供給されるので」、「洗剤供給管212,214が洗剤によって詰まることも防止することができる」(【0148】)ものである。ここで、「給水部160が供給する洗濯水」とは、給水部160が備える給水弁164(【0062】)からタブ130に供給される洗濯水であり(図10(b)参照)、洗剤供給管212,214を経て洗濯水がタブ130に供給されることは、洗剤供給管212、214の合流部(上記ア参照)も通過することとなり、この結果、洗剤供給管212、214の合流部も洗剤により詰まることが防止されることとなる。したがって、引用文献1に記載された衣類処理装置は、給水弁164からタブ130に洗濯水が供給される場合には常に合流部を通過する洗濯水によって前記合流部の洗剤による詰まりを防止するものである。
(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)及び(2)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
・引用発明1
「外観を形成するキャビネット110と
前記キャビネット110の内部に設けられ洗濯水が貯蔵されるタブ130と、
前記キャビネット110内に設けられ、前記タブ130内へ洗濯水を供給する洗濯水供給機構と、を備え、
前記洗濯水供給機構は、
給水源と連結する給水流路162を開閉する給水弁164と、
前記給水弁164から供給された水をタブ130内に供給する給水流路162、洗剤供給管212及びタブ供給管196と、
複数回分の洗濯に使用する洗剤を貯蔵できるコンテナ230と、前記洗剤供給管212に設けられた合流部と、を有し、前記コンテナ230の洗剤を前記合流部に排出する自動洗剤排出装置と、
前記洗剤供給管212と前記タブ供給管196との間であって前記合流部よりも下流に設けられ、1回分の洗剤を貯蔵できる洗剤貯蔵モジュール190と、を備え、
前記洗剤供給管212は、前記合流部の下流で上昇して前記洗剤貯蔵モジュール190につながっており、
給水弁164からタブ130に洗濯水が供給される場合には前記合流部を通過する洗濯水によって前記合流部の洗剤による詰まりを防止する、
衣類処理装置。」
2 対比及び判断
本件発明4と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「外観を形成する」ことは、本件発明4の「外箱を構成する」ことに相当し、引用発明1の「キャビネット110」は、本件発明4の「本体」に相当する。したがって、引用発明1の「外観を形成するキャビネット110」は、本件発明4の「外箱を構成する本体」に相当する。
引用発明1の「キャビネット110の内部」は、本件発明4の「本体内」に相当し、引用発明1の「洗濯水が貯蔵される」ことは、本件発明4の「水が溜められる」ことに相当し、引用発明1の「タブ130」は、本件発明4の「水槽」に相当する。したがって、引用発明1の「前記キャビネット110の内部に設けられ洗濯水が貯蔵されるタブ130」は、本件発明4の「前記本体内に設けられ水が溜められる水槽」に相当する。
引用発明1の「前記キャビネット110内に設けられ」ることは、本件発明4の「前記本体内において前記水槽の上部に設けられ」ることと、本体内に設けられる点で共通する。また、引用発明1の「前記タブ130内へ洗濯水を供給する」ことは、本件発明4の「前記水槽内へ給水を行う」ことに相当し、引用発明1の「洗濯水供給機構」は、本件発明4の[給水機構」に相当する。したがって、引用発明1の「前記キャビネット110内に設けられ、前記タブ130内へ洗濯水を供給する洗濯水供給機構」は、本件発明4の「前記本体内において前記水槽の上部に設けられ、前記水槽内へ給水を行う給水機構」と、本体内に設けられ、水槽内へ給水を行う給水機構である点で共通する。
引用発明1の「給水源と連結する」ことは、本件発明4の「給水源に接続されて」いることに相当する。引用発明1の「給水弁164」は、技術的にみて明らかに電磁的な動作により「給水流路162を開閉する」ものであるから、引用発明1の「給水流路162を開閉する給水弁164」は、本件発明4の「電磁的に開閉動作する給水弁」に相当する。したがって、引用発明1の「給水源と連結する給水流路162を開閉する給水弁164」は、本件発明4の「給水源に接続されて電磁的に開閉動作する給水弁」に相当する。
引用発明1の「前記給水弁164から供給された水」は、本件発明4の「前記給水弁から出た水」に相当し、引用発明1の「給水流路162、洗剤供給管212及びタブ供給管196」は、本件発明4の「給水経路」に相当する。したがって、引用発明1の「前記給水弁164から供給された水をタブ130内に供給する給水流路162、洗剤供給管212及びタブ供給管196」は、本件発明4の「前記給水弁から出た水を前記水槽内に供給する給水経路」に相当する。
引用発明1の「複数回分の洗濯に使用する洗剤」は、本件発明4の「複数回分の洗濯に使用可能な洗濯処理剤」に相当し、引用発明1の「貯蔵できる」ことは、本件発明4の「貯留する」ことに相当し、引用発明1の「コンテナ230」は、本件発明4の「タンク」に相当する。したがって、引用発明1の「複数回分の洗濯に使用する洗剤を貯蔵できるコンテナ230」は、本件発明1の「複数回分の洗濯に使用可能な洗濯処理剤を貯留するタンク」に相当する。
引用発明1において「前記洗剤供給管212に設けられた」ことは、本件発明4の給水経路に相当する「給水流路162、洗剤供給管212及びタブ供給管196」の一部である洗剤供給管212に設けられたことになるから、本件発明4の「前記給水経路の途中に設けられた」ことに相当する。また、引用発明1の「合流部」は、本件発明4の「供給部」に相当する。したがって、引用発明1の「前記洗剤供給管212に設けられた合流部」は、本件発明4の「前記給水経路の途中に設けられた供給部」に相当する。
引用発明1の「前記合流部に排出する」ことは、本件発明4の「前記供給部に供給する」ことに相当し、引用発明1の「自動洗剤排出装置」は、本件発明4の「自動投入装置」に相当する。したがって、引用発明1の「複数回分の洗濯に使用する洗剤を貯蔵できるコンテナ230と、前記洗剤供給管212に設けられた合流部と、を有し、前記コンテナ230の洗剤を前記合流部に排出する自動洗剤排出装置」は、本件発明4の「複数回分の洗濯に使用可能な洗濯処理剤を貯留するタンクと、前記給水経路の途中に設けられた供給部と、を有し、前記タンクの洗濯処理剤を前記供給部に供給する自動投入装置」に相当する。
引用発明1において、「前記洗剤供給管212と前記タブ供給管196との間」は、本件発明4の給水経路に相当する「給水流路162、洗剤供給管212及びタブ供給管196」の途中であるから、本件発明1の「前記給水経路の途中」に相当する。また、引用発明1の「前記合流部よりも下流に設けられ」ることは、本件発明4の「前記供給部よりも下流側に設けられ」ることに相当し、引用発明1の「1回分の洗剤を貯蔵できる」ことは、本件発明4の「1回分の洗濯処理剤を収容可能な」ことに相当し,引用発明1の「洗剤貯蔵モジュール190」は、本件発明4の「手動用収容部」に相当する。したがって、引用発明1の「前記洗剤供給管212と前記タブ供給管196との間であって前記合流部よりも下流に設けられ、1回分の洗剤を貯蔵できる洗剤貯蔵モジュール190」は、本件発明4の「前記給水経路の途中であって前記供給部よりも下流側に設けられ、1回分の洗濯処理剤を収容可能な手動用収容部」に相当する。
引用発明1の「前記洗剤供給管212は、前記合流部の下流で上昇して前記洗剤貯蔵モジュール190につながって」いることは、本件発明4の「前記給水経路は、前記供給部の下流で」「上昇して前記手動用収容部につながって」いることに相当する。
引用発明1において、「給水弁164からタブ130に洗濯水が供給される場合」には、手動で洗剤が洗剤貯蔵モジュール190に投入され、給水弁164から洗濯水が洗剤貯蔵モジュール190を通ってタブ130に供給される場合を含んでいるから、本件発明4の「前記洗濯処理剤の手動での投入が選択されている場合」に相当する。さらに、引用発明1の「前記合流部を通過する洗濯水」は、本件発明4の「給水時に前記供給部を通過する水」に相当する。また、引用発明1において、「前記合流部の洗剤による詰まりを防止する」ことは、合流部を通過せずに残っていた洗剤を洗濯水により流して合流部を洗浄して詰まりを防止することと解されるから、本件発明4の「前記供給部の洗浄を行う」ことに相当する。したがって、引用発明1の「給水弁164からタブ130に洗濯水が供給される場合には前記合流部を通過する洗濯水によって前記合流部の洗剤による詰まりを防止する」ことは、本件発明4の「前記洗濯処理剤の手動での投入が選択されている場合には給水時に前記供給部を通過する水によって前記供給部の洗浄を行う」ことに相当する。
引用発明1の「衣類処理装置」は、本件発明4の「洗濯機」に相当する。
以上のことから、本件発明4と引用発明1とは、次の一致点1で一致し、相違点1で相違する。
・一致点1
「外箱を構成する本体と、
前記本体内に設けられ水が溜められる水槽と、
前記本体内に設けられ、前記水槽内へ給水を行う給水機構と、
を備え、
前記給水機構は、
給水源に接続されて電磁的に開閉動作する給水弁と、
前記給水弁から出た水を前記水槽内に供給する給水経路と、
複数回分の洗濯に使用可能な洗濯処理剤を貯留するタンクと、前記給水経路の途中に設けられた供給部と、を有し、前記タンクの洗濯処理剤を前記供給部に供給する自動投入装置と、
前記給水経路の途中であって前記供給部よりも下流側に設けられ、1回分の洗濯処理剤を収容可能な手動用収容部と、を備え、
前記給水経路は、前記供給部の下流で上昇して前記手動用収容部につながっており、
前記洗濯処理剤の手動での投入が選択されている場合には給水時に前記供給部を通過する水によって前記供給部の洗浄を行う、
洗濯機。」
・相違点1
本件発明4は、給水機構が、「水槽の上部に設けられ」るものであって、給水機構が有する給水経路の上昇する位置が「前記本体の上面方向から見た場合に前記手動用収容部と前記タンクとの間の位置で」あるのに対し、引用発明1は、洗濯水供給機構がタブ130の上部に設けられることは特定されておらず、洗濯水供給機構が有する洗剤供給管212は、上昇しているもののその位置は特定されていない点。
まず、上記相違点1は、給水機構の位置、給水機構が有する給水経路の上昇する位置が本件発明4と引用発明1とで相違するというものであって、これは、実質的な相違点であるから、本件発明4は、引用発明1であるとは、いえない。
次に、上記相違点1の容易性について検討する。
引用発明1の洗濯水供給機構は、「複数回分の洗濯に使用する洗剤を貯蔵できるコンテナ230」を有するものである。引用文献1には、従来の衣類処理装置の「洗濯に使用する洗剤を貯蔵できる」部分である洗剤貯蔵部50について、「衣類処理装置1の上部一側に位置し得るため、使用者は、洗剤を衣類処理装置1の上部まで持ち上げて洗剤投入部52に投入しなければならないという不便さがあった」(【0007】)という課題があったことから、「洗剤が貯蔵される空間の高さを低くすることによって、従来の衣類処理装置の不便さを解消することを解決」(【0009】)するために、「洗濯対象物が投入される投入口」の「下部に位置して液体洗剤が貯蔵され、貯蔵された液体洗剤を前記タブに供給する洗剤供給モジュール」を含む衣類処理装置(【0013】)とすることが記載されている。そうすると、引用発明1の洗濯水供給機構が有する「複数回分の洗濯に使用する洗剤を貯蔵できるコンテナ230」をタブ130の上部に設けることは、引用発明1に記載された課題を解決しないものとなり、阻害要因があるから、コンテナ230を有する洗濯水供給機構をタブ130の上部に設けることは、当業者であっても容易であるとはいえない。
また、仮に洗濯水供給機構をタブ130の上部に設けることが容易であるとしても、引用発明1は、「洗濯対象物が投入される投入口」の下部に複数回分の洗濯に使用する洗剤を貯蔵できるコンテナ230を有し、タブ130の上部に洗剤貯蔵モジュール190を有することから、「前記洗剤供給管212は、前記合流部の下流で上昇して前記洗剤貯蔵モジュール190につながって」いるものであって、洗濯水供給機構をタブ130の上部に設けた場合に、洗剤供給管212に上昇する部分があるか否かは不明であり、仮に上昇する部分があるとしても当該上昇する部分をキャビネット110の上面方向から見た場合に洗剤貯蔵モジュール190とコンテナ230との間とすることが容易であるとはいえない。
したがって、上記相違点1に係る本件発明4の発明特定事項を得ることは、当業者であっても容易であるとはいえない。
申立人金田氏は、令和7年12月9日付けの意見書において、「「タンク」を含めた「給水機構」を水槽の上部に設けることは、引用文献1の図1に従来技術として示されているとともに」、特開2016-67810号公報、特開2018-11618号公報にも記載されている。そのため、第2コンテナ233を「前記本体内において前記水槽の上部に設け」ることは、当業者であれば容易に想到できる」(意見書8ページ9行から同ページ13行)と主張する。しかし、第2コンテナ233を備えるコンテナ230(引用文献1の【0092】)を水槽の上部に設けることに阻害要因があることは、上記のとおりであるから、申立人金田氏の主張は、採用することができない。
3 新規性・進歩性についての結論
以上のことから、本件発明4は、引用発明1であるとはいえず、また引用発明1から当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
また、本件発明5である請求項5に係る発明は、請求項5が請求項4を引用して記載され、請求項4に係る発明をさらに限定して特定したものであるから、本件発明4と同様に、引用発明1であるとはいえず、また引用発明1から当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
第6 引用文献等4及び引用文献等5を主引例とした拡大先願についての当審の判断
1 引用文献等4の記載事項及び記載された発明
引用文献等4に記載された洗濯機1は、「給水ユニット20(給水手段)から外槽22に水を供給する」(【0029】)ものであって、「給水ユニット20から第1投入部31に水を供給する」第1給水経路51(【0042】)、「第1給水経路51を介して給水ユニット20から搬送経路53に水を供給する」第2給水経路52(【0043】)、「タンク42から搬送ポンプ46を介して排出された洗濯処理液を搬送する」搬送経路53(【0044】)、「第1投入部31から水槽21に洗濯処理液及び水を投入する」投入経路(【0045】)(以下、これら第1給水経路51と第2給水経路52と搬送経路53と投入経路54をあわせて「洗濯水経路」という。)を備えている。
さらに、水槽21に自動投入する洗濯処理液を収容するタンク42を備え(【0019】)、引用文献等4に記載された洗濯機1は、「搬送ポンプ駆動回路126で搬送ポンプ46を制御し、配送経路53(当審注;「配送経路53」は、「搬送経路53」の誤記)を通過させ、第1投入部31へと、洗濯処理液を供給する」(【0091】)ものであるから、タンク42の洗濯処理液は、搬送ポンプ46により、搬送経路53を通過し、第1投入部31へ供給されるといえ、洗濯処理液の搬送経路53への供給は、引用文献等4の図6の記載からみて、搬送経路53の搬送ポンプ46が接続された部分よりもタンク42側の部分(以下、この部分を「搬送経路53の入口部」という。)であるといえる。これらのことから、引用文献等4に記載された洗濯機1の給水手段は、複数回分の洗濯処理液を収容するタンク42と、洗濯水経路の途中の搬送経路53の入口部と、を有し、搬送ポンプ46により前記タンク42の洗濯処理液を前記搬送経路53の入口部に自動的に供給する装置(以下、「自動洗濯処理液供給装置」という。)を備えているといえる。
また、この第1投入部31は、「使用者が手動で液状の洗剤や柔軟剤(仕上剤)等の洗濯処理液を水槽21(洗濯兼脱水槽)に投入するための手動投入部として機能する」(【0018】)ものであるから、1回分の洗濯処理液が収容できるものである。そして、引用文献等4の図6の記載等からみて、引用文献4等に記載された洗濯機は、これら洗濯水経路、ケース41、搬送経路53の入口部、搬送ポンプ46及び第1投入部31により外槽22に洗濯水を給水しているから、これらは、外槽22へ給水を行う給水手段を構成しているといえる。
また、洗濯機1のケース41は、タンク42を収容するものであって(【0032】)、「ケース41の下方には、搬送ポンプ46が配置されている」(【0033】)ものであり、「タンク42の下部には、排出口49(貫通孔)が設けられ」、「これにより、タンク42は、洗濯処理液を搬送経路53(引用文献等4の図6)に確実に送り出す」(【0068】)ものであるから、搬送経路53は、タンク42の下部の下側を通っているといえる。そして、このタンク42の下部は、引用文献等4の図4の記載より、第1投入部31の下部より下側にあるから、「タンク42と第1投入部31とを結」ぶ搬送経路53(引用文献等4の【0044】)は、搬送経路53の入口部から下流側で上昇していることがわかる。
以上のことを考慮すると、引用文献等4(特に、【0019】、【0032】、【0037】、【0077】、【0092】、【0131】等の記載参照。)から引用文献等4には、次の発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されていると認められる。
・先願発明1
「上面に上面カバー12と外フタ13とタンク収納フタ15とを備えた筐体11と、
筐体11の内部に設けられ洗濯水が溜められる外槽22と、
前記筐体11内に設けられ、前記外槽22へ給水を行う給水手段と、
を備え、
前記給水手段は、
水道に接続されてマイコン110が備える工程制御部112により開弁及び閉弁する給水ユニット20と、
前記給水ユニット20から出た水を前記外槽22に供給する洗濯水経路と、
複数回分の洗濯処理液を収容するタンク42と、前記洗濯水経路の途中の搬送経路53の入口部と、を有し、前記タンク42の洗濯処理液を前記搬送経路53の入口部に供給する自動洗濯処理液供給装置と、
前記洗濯水経路の途中であって前記搬送経路53の入口部よりも下流側に設けられ、1回分の洗濯処理液を収容できる第1投入部31と、を備え、
前記洗濯水経路は、前記搬送経路53の入口部の下流で上昇して前記第1投入部31につながっており、
前記給水ユニット20を開弁して、前記外槽22に洗濯水を供給するときには、前記搬送経路53を水が通ることによって、前記搬送経路53に残留した洗濯処理液を前記第1投入部31へ搬送する
洗濯機1。」
2 引用文献等5に記載された発明
引用文献等5の【0014】から【0108】、【0123】から【0149】、【0161】から【0191】、図1から図20には、引用文献等4の【0009】から【0108】、【0122】から【0148】、【0166】から【0196】、図1から図20と同様の事項が記載されているから、引用文献等5には、上記1に示す先願発明1が記載されていると認められる。
3 対比及び判断
本件発明4と先願発明1とを対比すると、少なくとも次の相違点2で相違する。
・相違点2
本件発明4は、給水機構が「前記水槽の上部に設けられ」るものであって、給水機構が有する給水経路が「前記本体の上面方向から見た場合に前記手動用収容部と前記タンクとの間の位置で上昇して」いるのに対し、先願発明1は、給水手段が外槽22の上部に設けられることは特定されておらず、給水手段が有する洗濯水経路の途中の搬送経路53が上昇しているものの、その上昇している場所が不明な点。
上記相違点2について検討する。
先願発明1は、給水手段が「複数回分の洗濯処理液を収容するタンク42」を有するものである。このタンク42と外槽22との位置関係について、引用文献等4及び引用文献等5の図4の記載をみると、外槽22の前方(当該図4において、左側を前とする。)にタンク42が配置されており、タンク42の上端は外槽22の上方であるものの下端は、外槽22の上端より下に位置するように配されていることがわかる。そして、これにより、給水手段が備える「複数回分の洗濯処理液を収容するタンク42」、すなわち複数回分の洗濯処理液を収容するだけの大きさをもったタンク42を外槽22と前面パネル16との間の限られた間隔の中に収めていると解される。
そうすると、タンク42等を備える先願発明1の給水手段は、外槽22の上部に設けられるものではないから、上記相違点2は、実質的な相違点であって、本件発明4は、先願発明1と同一であるとはいえない。
申立人金田氏は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項4に係る発明に対し、「甲5(当審注:引用文献5のこと)の図4及び図6の図示内容から、供給部である「切替弁64と搬送経路5との接続部分」より下流側で「給水経路」の一部である搬送経路53が上昇していることが看取できる」と主張しているが、当該主張をみても上記相違点2は、実質的な相違点であるから、本件発明4は、先願発明1と同一であるとはいえない。また、申立人金田氏は、令和7年12月9日付けの意見書において、拡大先願については、特段の主張をしていない。
4 拡大先願についての結論
以上のことから、本件発明4は、先願発明1と同一であるとはいえない。
また、本件発明5である請求項5に係る発明は、請求項5が請求項4を引用して記載され、請求項4に係る発明をさらに限定して特定したものであるから、本件発明4と同様に先願発明1と同一であるとはいえない。
第7 取消理由において採用しなかった異議申立理由について
1 請求項4及び5に対する異議申立理由
申立人金田氏が本件特許の請求項4及び5に対して申立てた特許異議の申立て理由のうち、取消理由としなかった理由は、次のとおりである。
(1)本件発明4は、特許出願前に特開2016-67810号公報(以下、「甲2」という。)に記載された発明、特表2016-522729号公報(以下、「甲6」という。)に記載された事項または中国特許出願公開第107287839号明細書(以下、「甲7」という。)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)本件発明4及び5は、発明の詳細な説明及び図面に記載されたものではないため、請求項4及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)本件発明4及び5は、明確でないため、請求項4及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
なお、申立人藤江氏による特許異議の申立ては、請求項1から3に係る特許のみに対してなされたものであり、請求項4及び5に対しては特許異議の申立てはされていない。
2 甲2を主引用例とした進歩性について
上記1(1)に示す甲2を主引用例とした進歩性について検討する。
まず、本件発明4は、上記第3に示すとおりであって、「前記給水経路は、前記供給部の下流でかつ前記本体の上面方向から見た場合に前記手動用収容部と前記タンクとの間の位置で上昇して前記手動用収容部につながって」いるものである。
これに対し、甲2には、給水経路25は、アスピレータ27の下流が注水ケース23につながっていることが記載されているが、アスピレータ27の下流で上昇して注水ケース23につながることは記載されておらず、少なくともこの点で本件発明4と異なるものである。ここで、注水ケース23は、「引出し式の洗剤類投入部が設けられており、この洗剤類投入部に予め洗剤類(粉末洗剤、仕上げ剤、漂白剤など)が投入されていることにより、それら洗剤類が水道水と共に水槽3内に供給される」(【0019】)ものであり、アスピレータ27は、「給水経路25に対し、入口部27aが上流(給水源)側、出口部27bが下流(注水ケース23)側となるように接続され」(【0022】)、「液体洗剤貯留部34に接続された洗剤供給路35」の「先端部は、前記アスピレータ27の吸込部27cに接続され」(【0024】)ているものであって、「液体洗剤貯留部34に液体洗剤が溜められている状態で、前記給水弁26が開放されて給水経路25(アスピレータ27)に水が流れているときに、前記開閉弁36が開放されると、アスピレータ27の吸込部27cにより、洗剤供給路35を通って液体洗剤がアスピレータ27内に吸込まれ」、「吸込まれた液体洗剤は水と混合されながらアスピレータ27の出口部27bから流出」するものである(【0025】)。
そして、給水経路が供給部の下流で上昇している点に関し、申立人金田氏は、甲6には、特に、【0109】、【0110】、【0156】及び図8の記載から洗剤ディスペンサ200’の洗剤をタブ130の上部に供給する第2洗剤供給流路155bが洗剤ディスペンサ200’の下流で上昇していることが記載され、また、甲7には、図14、図15、図16および図18から、弁キャビティA2106にて洗濯洗剤が加えられた液体が供給部であるキャビティA2106の下流で上昇していることが記載されていると主張する(申立人金田氏による特許異議申立書55ページ13行から56ページ4行及び56ページ20行から57ページ6行)。
この点について検討すると、仮に申立人金田氏の主張のとおりの事項が甲6及び甲7に記載されているとしても、これらの文献には、給水経路が、「前記供給部の下流で・・・上昇して前記手動用収容部につながって」いることまでは示されていない。そうすると、甲6及び甲7の記載から、甲2に記載された発明において、「前記給水経路は、前記供給部の下流でかつ前記本体の上面方向から見た場合に前記手動用収容部と前記タンクとの間の位置で上昇して前記手動用収容部につながって」いるとする発明特定事項を得ることは当業者であっても容易であるとはいえない。
したがって、本件発明4は、特許出願前に甲2に記載された発明、甲6に記載された事項または甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは、いえない。
3 サポート要件について
上記1(2)に示すいわゆるサポート要件について検討する。
本件の発明の詳細な説明には、「手動用洗剤収容部13aを用いる場合でも、給水が洗剤供給部25を通過するようになり、これと共に、洗剤自動投入装置11を用いる場合でも、給水が手動用洗剤収容部13aを通過するようになる」ことにより、「毎回の給水時に、洗剤供給部25及び手動用洗剤収容部13aの洗浄を行うことができる」(【0040】)と記載されており、毎回の給水時に洗剤供給部25の洗浄を行うことを課題の一つとしていることが理解できる。そして、発明の詳細な説明には、「給水弁ユニット10から注水ケース12につながるメイン給水経路14、注水ケース12から水槽6内に給水を行うための給水ダクト15等を備えている」(【0011】)洗濯機において、洗剤タンク30に収容されていた洗剤が供給される洗剤供給部25(【0025】)を「メイン給水経路14の上流側に設け」(【0019】)、それより下流側に手動用洗剤収容部13aを設けて、メイン給水経路14が手動用洗剤収容部13aに設けられた注水口(【0016】)につながっている(【0017】)洗濯機が記載されており、これにより、「洗剤の手動投入が選択されていた場合」(【0033】)であっても、「メイン給水経路14を流れる水は、洗剤供給部25部分をそのまま通過し、注水口23から手動用洗剤収容部13a内に注がれ」、「手動用洗剤収容部13a内に予め収容されていた洗剤を溶かしながら注水ケース12に流れ、給水ダクト15を通って水槽6内に洗剤を含んだ洗濯水が給水され」るようにして(【0033】)、上記課題を解決したものが記載されている。
これに対して、本件発明4は、「給水弁から出た水を前記水槽内に供給する給水経路」の「途中に設けられた供給部」を有し、「前記給水経路の途中であって前記供給部よりも下流側に設けられ、1回分の洗濯処理剤を収容可能な手動用収容部」を備え、「前記給水経路は、前記供給部の下流で・・・前記手動用収容部につながって」いることが特定されており、これにより、「手動用洗剤収容部13aを用いる場合でも、給水が洗剤供給部25を通過するようになり、これと共に、洗剤自動投入装置11を用いる場合でも、給水が手動用洗剤収容部13aを通過するようにな」って、発明の詳細な説明に記載された上記課題を解決することができると理解できるから、本件発明4は、発明の詳細な説明に記載された発明である。また、請求項4を引用する形式で記載された請求項5に記載された事項により特定される本件発明5は、本件発明4をさらに減縮したものであって、請求項5に記載された事項により特定された「タンクケース」及び手動用収容ケース」は、発明の詳細な説明の【0014】、【0022】、図3等に記載されているから、本件発明4と同様に発明の詳細な説明に記載されたものである。
申立人金田氏は、特許異議申立書において、「本件発明4及び5の解決課題は、手動用洗剤収容部25内の粉末洗剤を効果的に流す、つまり流し残りなく流出させることである」と主張(申立人金田氏による特許異議申立書82ページ21行から同ページ23行)し、サポート要件違反を主張しているが、本件の発明の詳細な説明に記載された課題は、申立人金田氏が主張する課題だけでなく、上記のように毎回の給水時に洗剤供給部25の洗浄を行うことも課題の一つとして理解できるから、申立人金田氏の主張は、採用することができない。
4 明確性について
(1)本件訂正前の請求項1に係る発明について
申立人金田氏は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1に係る発明について、「前記洗濯処理剤の手動での投入が選択されている場合には給水時に前記供給部を通過する水によって前記供給部の洗浄を行う」とする特定事項と、給水のための給水経路について「前記給水弁から出た水を前記水槽内に供給する給水経路」と特定され、さらに、当該給水経路と供給部との関係について「前記給水経路の途中に設けられた供給部」と特定されている事項との関係が一部重複する内容を特定しているのか、別の技術的事項を特定しているのか理解できないと主張している(特許異議申立書84ページ3行から85ページ1行)。なお、当該主張は、請求項1を引用する形式で記載された請求項2に係る発明においても同じであると主張する(特許異議申立書85ページ8行から同ページ12行)。一方、請求項2を引用する形式で記載された請求項3については、このような主張をしていないことから、訂正前の請求項3に記載された「前記手動用収容部は、前記供給部より下流側に設けられている」こと(このような事項は、本件発明4においても特定されている。)が特定された訂正前の請求項3に係る発明は明確でないとはいえない主張とも解されるが、念のためこの点について検討する。
本件発明4は、上記第3に示すとおりのものであり、「給水弁から出た水を前記水槽内に供給する給水経路」の「途中に設けられた供給部」を有し、「前記給水経路の途中であって前記供給部よりも下流側に設けられ、1回分の洗濯処理剤を収容可能な手動用収容部」を備え、「前記給水経路は、前記供給部の下流で・・・前記手動用収容部につながって」いることが特定されている。そうすると、給水弁から出た水は、洗濯処理剤の手動での投入が選択されている場合であっても、給水経路の途中に設けられた供給部を通過することは、これらの特定事項から明らかであり、本件発明4において特定された「前記洗濯処理剤の手動での投入が選択されている場合には給水時に前記供給部を通過する水によって前記供給部の洗浄を行う」ことは、「前記洗濯処理剤の手動での投入が選択されている場合には給水時に前記供給部を」水が通過することを前提とし、この水により「前記供給部の洗浄」が行われることを特定しているものと理解でき、その特定事項は、明確である。
したがって、申立人金田氏の主張は、採用することができない。
(2)本件訂正前の請求項4及び5に係る発明について
申立人金田氏は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1に係る発明について、「手動用収容部が供給部あるいは上昇している部分に対して如何なる位置関係にあるのかが特定されていないことから、結果的に上昇している部分の存在を特定することによる技術的意味が理解できない」旨の主張をしている(特許異議申立書85ページ15行から86ページ11行)。
この点について検討すると、本件発明4は、上記第3に示すとおりのものであり、「給水弁から出た水を前記水槽内に供給する給水経路」の「途中に設けられた供給部」を有し、「前記給水経路の途中であって前記供給部よりも下流側に設けられ、1回分の洗濯処理剤を収容可能な手動用収容部」を備え、「前記給水経路は、前記供給部の下流で・・・上昇して前記手動用収容部につながって」いることが特定されている。すなわち本件訂正後の発明である本件発明4は、手動用収容部が供給部よりも下流側であり、給水経路が上昇して当該手動用収容部につながっていることが特定されているから、手動用収容部の供給部及び上昇している部分に対する位置関係は明確であり、申立人金田氏の主張は採用することができない。
(3)明確性に関する申立人金田氏の主張は上記(1)及び(2)に示すとおりであって、またほかに本件発明4及び5について、明確でないとする理由もないから、本件発明4及び5を明確でないとはいえない。
第8 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び申立人金田氏が提出した特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項4及び5に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1から3に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人藤江氏及び申立人金田氏による特許異議の申立てについて、請求項1から3に係る申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700527